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第44回もいわ山麓コンサート 櫨本朱音&永沼絵里香 ヴィオラ・ピアノデュオコンサート(2022/06) レポート

hokujun.or.jp
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↑「北海道循環器病院」のサイトにて、今回のコンサートの様子が写真付きでUPされています。

北海道循環器病院が開催する、もいわ山麓コンサート。今回は札幌交響楽団ヴィオラ奏者の櫨本朱音さんと、札幌でご活躍のピアニスト・永沼絵里香さんのデュオコンサートです。前回(2021/10)、札響副首席ヴィオラ奏者の青木晃一さんによる「主役としてのヴィオラ」に触れその魅力を知った私は、今回の演奏会も楽しみにしていました。

第44回もいわ山麓コンサート 櫨本朱音&永沼絵里香 ヴィオラ・ピアノデュオコンサート
2022年06月11日(土)15:30~ 北海道循環器病院 本館1階特設会場

【演奏】
櫨本朱音(ヴィオラ) ※札幌交響楽団ヴィオラ奏者
永沼絵里香(ピアノ)

【曲目】
エルガー:愛のあいさつ
クライスラー:愛の悲しみ
リスト:愛の夢(ピアノ独奏版)
ブラームスヴィオラソナタ第2番 op.120-2

クライスラーシンコペーション
ヴォーン・ウィリアムズ:グリーンスリーブス幻想曲
ヒンデミット無伴奏ヴィオラソナタ op.25-1 より 1,2,4楽章
ピアソラ:タンティ アンニ プリマ
ピアソラ:タンゴの歴史 より 1,2,3曲

(アンコール)サティ:ジュ・トゥ・ヴー


櫨本朱音さん、札響にすごい若手ヴィオラ奏者がいらっしゃいました!お一人お一人がこんなに素晴らしい演奏家なのですから、札響の演奏は良いに決まってますよね!櫨本さんは2019年10月に札響に入団、その時点でオケの最年少だったというお若い女性です。一見、天然キャラでふんわりした雰囲気の櫨本さん。そんなイメージとは裏腹に演奏は真剣そのものかつクオリティ高く、王道クラシックも近現代の作品もお手の物。小品ではかわいらしさや美しさで私達を魅了し、大曲では迫力ある演奏で私達を圧倒しました。もちろんオケとは別のレパートリーを、いつもとは違い「主役になって」演奏することには人知れずご苦労があったことと存じます。オケでの活動がお忙しい中、今回のデュオコンサートでも最高のパフォーマンスをありがとうございます!

また共演のピアニスト・永沼絵里香さんのピアノがとにかく素晴らしかったです。コンパクトなアップライトピアノで、あの華やかさと重厚感!ヴィオラが主役のところでは控えめに、逆にピアノが主役の時は存在感抜群にと、ごく自然に役割を演じ分けながら、ヴィオラとの掛け合いは息ぴったりでした。ちなみに私が永沼さんのピアノを聴くのは、札幌市役所の市民ロビーコンサート(2020年10月)以来。その時はトロンボーン(札響副首席の中野耕太郎さん)との共演で、演目のためかピアノは大人っぽい印象でした。今回は、小品のかわいらしさ美しさに、独奏の華やかさ、ピアソラのカッコ良さ、そしてブラームスの重厚さ!と様々な表情のピアノが聴けてうれしかったです。

そしてなにより、今回も素敵な演奏会を企画・実施くださった北海道循環器病院さんにお礼申し上げます。参加費ワンコインで、一流の演奏が聴けるのは本当にありがたいです。回数を重ねたイベント、会場には常連と思われるお客さんも大勢いらっしゃいました。地域に開かれた、誰もが音楽に親しめる場所を提供し続けてくだり、ありがとうございます。

前半は、「愛」がテーマ。なお私は1曲目の演奏開始ギリギリのタイミングで会場に入ったので(ごめんなさい!)、開演前の様子(あいさつ等があったかも?)についてはわかりません。1曲目はエルガー「愛のあいさつ」。ピアノの短い序奏に続いて登場したヴィオラの深い音色に早速心掴まれ、この時点で来て良かったと実感。甘く歌うところも、中盤の少し寂しげなところも、静かに消え入るラストまで、とっても素敵でした。おなじみの曲による「ごあいさつ」で、掴みはOK!

クライスラー「愛の悲しみ」。はじめの方の有名なフレーズは、ピアノもヴィオラもステップを踏むような音を細かく刻む丁寧な演奏。中盤の切なく歌うところ、終盤のヴィオラの音を震わせる演奏も印象的でした。元々はヴァイオリンのために書かれた曲とはいえ、ヴィオラの影のある音色が驚くほどぴったりで、その響きをしみじみ味わいました。

ここで櫨本さんが一旦退場して、ピアノ独奏でリスト「愛の夢。はじめの方は、低めの音でゆったりと甘く歌ったピアノ。想いが溢れたような高音の盛り上がりが力強く情熱的でインパクト大!感極まった後のキラキラした音が華やかで儚げで素敵すぎて。甘く情熱的な「愛」に、私は胸がいっぱいになりました。こちらのピアノ独奏を拝聴して、私は次のブラームスへの期待値がゲージMAXまで上がりました。

前半の山場、ブラームスヴィオラソナタ第2番 op.120-2」。演奏前に曲についての解説があり、まずは永沼さん、続いて櫨本さんがお話されました。元々はクラリネットソナタとして書かれたものを、作曲家自身がヴィオラ用に編曲。老いて創作意欲を失っていたブラームスが、クラリネットの名手に出会ってから作曲した経緯があり、タイトルに「愛」はないけれどクラリネットへの愛が込められている、といった趣旨のお話でした。「(愛は)こじつけです」と櫨本さん。いえいえ、ブラームスの作品はすべて愛で出来ていますから!第1楽章、穏やかな冒頭から引き込まれました。ヴィオラが高音域で甘く歌うのと、ピアノの下支えが高音で優しく寄り添いながらも重厚感があったのが素敵。またピアノがダイナミックな響きになるところが印象に残っています。幸せな感じから一転、短調になる第2楽章でも冒頭でぐっと心掴まれました。仄暗く切ないヴィオラの歌に、低音で寄り添うピアノ。またヴィオラ小休止のシーンでピアノが情熱的に躍り出るところがすごく良かったです。中盤、ヴィオラが丁寧に音を繋ぎながら少しずつフェードアウトしてからの、じっくりと歩みを進めるようなピアノの重厚な響きと、後から重なったヴィオラ(高音→低音→重音)がドラマチックで素敵すぎました。ここ大好きなんです、ありがとうございます!第3楽章、ヴィオラとピアノが穏やかに会話するような掛け合いが息ぴったりで、優しく美しい響きを堪能。クライマックスではテンポが速くなり、ハンガリー舞曲を思わせる快活な盛り上がりで締めくくり。作曲家最晩年の作品の、優しさと愛に満ち、しかしまだ情熱の火は消えていない良さが伝わってきました。こんなに素敵なブラームスに出会えてうれしかったです。ありがとうございます!


後半は、「20世紀の作曲家の作品」がテーマです。1曲目はクライスラーシンコペーション。タイトルの通り、規則正しいリズムを刻みながら、ウキウキと小さくステップを踏むような楽しい音楽。ピアノとヴィオラが手を取り合い素朴な舞曲を踊っているように感じられました。ラストはピアノの高音の一打とヴィオラのピッチカートの重なりで締めくくったのが、可憐でとても印象に残っています。

ヴォーン・ウィリアムズ「グリーンスリーブス幻想曲」。前の曲とはガラリと雰囲気が変わり、ひとり草原に佇み冷たい風を受けているような、寂しさを感じる曲。高い音から入ったヴィオラが次第に低い音に移るところで引き込まれました。中盤、メロディがピアノに移ってからのヴィオラの重音も素敵。最初のメロディが戻ってくると、ヴィオラが今度は低い音程で切なく歌ったのも心に染み入りました。演奏が終わると櫨本さんは「来週の土曜日にオーケストラでこの曲を演奏します」と、hitaru公演(hitaruのひととき ~尾高忠明 presents 偉大なる英国の巨匠たち~)をしっかり宣伝。抜かりナシ。完璧です!

ピアノの永沼さんが一旦退場し、ヴィオラ独奏でヒンデミット無伴奏ヴィオラソナタ op.25-1」より 1,2,4楽章ヒンデミットヴィオラを弾く作曲家ですと紹介があり、「演奏にびっくりするかも?」と前置きした上で、演奏に入りました。はじめの方の、ヴィオラの深みのある音色による重音や悲鳴のような音に会場の空気が一変。心地よいメロディではないものの、その気迫に圧倒されました。中盤、高低や強弱が細かく変化する音の波がすごい。パワフルなところだけでなく、ごく小さな音での演奏もインパクトありました。そして終盤、弓も弦を抑える手も超高速!超絶技巧と繰り出される音楽に度肝を抜かれました。すっごい!札響はとんでもない秘密兵器を隠し持ってましたね!

「皆さん大丈夫ですか?お子さんは泣いていませんか?」と、お客さん達を気遣った櫨本さん。「次は心が落ち着く曲を選びました。血糖値を下げてください」(!?)……はい!血圧でも中性脂肪でも(笑)。曲は、ピアソラ「タンティ アンニ プリマ」。映画の挿入歌だそうです。穏やかな波のようなピアノに、ゆったりと歌うヴィオラ。美しい音楽に心洗われました。血圧が20くらいは下がったかも(笑)。

プログラム最後はピアソラ「タンゴの歴史」より 1,2,3曲。「盛り上がってください。踊れる人は踊っちゃってください!」と櫨本さん。年齢層が高めの会場で、さすがにタンゴが踊れる猛者はいませんでしたが、所謂クラシック音楽のお上品なイメージとは違う音楽に、会場の熱気が上昇したのが感じられました。はじめ、ヴィオラとの掛け合いで、ピアノが鍵盤ではなくピアノ本体を打楽器のようにリズミカルに叩いて音を発したのが超カッコ良かったです。タンゴ特有のリズムで、ピアノの低音の下支えに乗ってヴィオラが高めの音域で陽気に奏でる音楽。時折ヴィオラがキュンと高音へ駆け上ったところが素敵!中盤のしっとりした美しいところにも聴き惚れました。終盤はぐっと妖艶な雰囲気になり、ヴィオラの音色も少しダミ声に変化。駒の内側の弦を擦ってギーギー鳴らしたところがインパクト大!音を駆け上るのも、1曲目の明るさとは違う、夜の酒場に似合う感じなのがカッコイイ!超楽しかったです!

子供達からの花束贈呈があり、櫨本さんがごあいさつされました。アンコールサティ「ジュ・トゥ・ヴ」。日本語では「あなたがほしい」との訳で知られている有名な曲ですね。ピアノは低音域、ヴィオラは高音域で甘く歌うのがとっても素敵でした。ラストは音を引っ張らずにすぱっと清々しく締めくくり。1曲目の「愛のあいさつ」と好対照のアンコール、素晴らしいです!

終演後は出演者のお二人によるお見送りもありました。コンサートホールとは勝手が違う会場で、演奏は大変だったことと存じます。クラシック音楽の演奏会に慣れていない人達をも魅了した、本物の演奏をありがとうございました!今後、室内楽やもちろんオケでの演奏も楽しみにしています。


北海道循環器病院が開催する、もいわ山麓コンサート。前回は「青木晃一×石田敏明 ヴィオラ・ピアノデュオコンサート」(2021/10/30)でした。味わい深い音色に超絶技巧の数々。札響副首席・青木さんによる「主役としてのヴィオラ」はヴァイオリンに引けを取らない表現力で、「名バイプレーヤーが主役」な演奏を存分に楽しめました!

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札幌はリーズナブルな価格で本物の演奏が聴ける機会に恵まれていると思います。この日の9日前に聴いた、札幌市と札響の主催による特別演奏会「札幌交響楽団演奏会 Kitaraでクラシック!」(2022/06/02)。チケットはサービス価格設定(一般1000円、65歳以上500円)で、平日昼間にもかかわらず会場はほぼ満席でした。有名曲の数々にサプライズなアンコール、それぞれの個性が際立つ楽器紹介と盛りだくさん。ちなみに演目にはエルガー「愛のあいさつ」の管弦楽版もありました。

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この日の前日に聴いた「藤木大地 カウンターテナー・リサイタル」(2022/06/10)。この声を知る驚き、触れる喜び!加えて「真心に触れる喜び」でもありました。「死んだ男の残したものは」と続く演目の流れが圧巻!日本とフランスの曲を中心に、唯一無二の演奏は魂を揺さぶられるスペシャルな体験でした。ちなみにリスト「愛の夢」はオリジナルの歌曲が演奏されました。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

藤木大地 カウンターテナー・リサイタル(2022/06) レポート

https://www.rokkatei.co.jp/wp-content/uploads/2022/04/220610.pdf


ふきのとうホールにて、世界的なカウンターテナーの藤木大地さんのリサイタルが開催されました。ピアノ伴奏は、2022年4月に札響と共演されたばかりの岡田奏さん。これは間違いなく「聴き」と、私は早い段階でチケットを入手。当日を楽しみにしていました。


藤木大地 カウンターテナー・リサイタル
2022年06月11日(土)19:00~ ふきのとうホール

【演奏】
藤木 大地(カウンターテナー
岡田 奏(ピアノ)

【曲目】 ※()は作詞
山田耕筰:この道(北原白秋
橋本國彦:お菓子と娘(西条八十
伊福部 昭:ウムプリ ヤーヤー(サハリン島ロッコ族伝承曲)
三善 晃:林の中(高田敏子)
山田耕筰:野薔薇(三木露風

G.フォーレ:月の光(P.ヴァルレーヌ)
C.ドビュッシー:星の夜(T.パンヴィル)
F.プーランク:美しき青春(作詞者不詳)
P.ルイギ:薔薇色の人生(E.ピアフ)
M.モノー:愛の賛歌(E.ピアフ)

E.モリコーネ:愛のテーマ(M.モリコーネ
武満 徹:死んだ男の残したものは(谷川俊太郎
加藤昌則:サンクタ・マリア(作詞者不詳)
加羽沢美濃日々草星野富弘
木下牧子:鴎(三好達治

R.シュトラウス:あなたは私の心の王冠(F.ダーン)
R.ヴォーン・ウィリアムズ:リンデン・リー(W.バーンズ)
P.チャイコフスキー:ただ憧れを知るものだけが(L.W.ゲーテ
F.リスト:愛の夢(F.フライリヒラート)
R.シューマン:献呈(F.リュッケルト

(アンコール)
G.フォーレ:リディア
F.プーランク:愛の小径
加藤昌則:もしも歌がなかったら(宮本益光)

ピアノはスタインウェイでした。

まさに唯一無二の演奏、魂を揺さぶられるスペシャルな体験でした!この出会いに感謝いたします。プログラムの表紙には「この声を知る驚き、触れる喜び!」とありましたが、加えて「真心に触れる喜び」でもあったと私は言いたいです。美しいお声の響きだけでなく、スケールの大きさや深みが感じられる演奏には、血の通った人間の心があると確かに思えました。以前、新聞記事(2020/09/12 朝日新聞土曜版)にて藤木さんが語っていらした「どんな曲も、美しい言葉を思いついた瞬間の詩人のような、みずみずしい心で歌い続けられるかどうか」という目標は、この日の藤木さんの演奏を聴いた限り、有言実行されていらっしゃると感じました。もとより「言うは易く行うは難し」であり、今日に至るまでには様々な積み重ねがあったと拝察します。どの演目も素晴らしい演奏でしたが、中でもやはり「死んだ男の残したものは」と、その後の数曲の流れに深く感銘を受けました。この重いテーマをエンタメ消費するのではなく、真摯に向き合いベストな形で私達聴き手に届けてくださったと私は思います。私は、「死んだ男の残したものは」を藤木さんの演奏でもう一度、いえ何度でも聴きたいです。きっと出会う度に受け止め方は変化すると思いますし、藤木さんの真心ある演奏に触れれば、重いテーマにもその時の自分なりに向き合える気がします。せめてそうしていくことが、平和な今の世の中で不自由なく暮らせている一人の人間としての責務なのかも。そんな大切な気づきを頂けたことにも感謝です。

今回の演目は、日本とフランスの曲を中心に、作曲家の出身地や作曲時期は多種多様。どの曲も大切に演奏してくださり、一つ一つの曲がまるで小さな物語の世界のようでした。また藤木さんは特別なお声を完全にご自分のものにされていて、安定感がある上でささやくようだったり力強かったりと、シーンに合わせて演じ分けておられました。アンコールを含め実に23曲も!レパートリーの幅広さと見事な演奏、敬服します。同時に、岡田さんのピアノ伴奏が大変素晴らしかったです。藤木さんとは初共演だった岡田さん。いつもとは違う演目の数々、しかもすべて性格が違うものをいくつもご準備するのはとても大変だったことと存じます。しかし岡田さんのピアノに不安要素は一切無く、まるで長年のパートナーのように、藤木さんとの阿吽の呼吸での掛け合いをした上で、各曲の個性が際立つ表情豊かな演奏を聴かせてくださいました。プロのお仕事とはいえ、頭が下がります。

そして今回、私はふきのとうホールの良さをしみじみ実感しました。他では聴けないここだけの企画に、音の響きが最高!私の演奏会通いの歴史はふきのとうホールから始まっていることもあり、この場所に戻ってこれた喜びはひとしおでした。ここ数年はコロナ禍のため主催公演の公演中止が続きましたが、今後は状況が許す限り演奏会を開催頂きたいと切に願っています。


出演者のお二人が舞台へ。すぐに演奏開始です。なお藤木さんは全曲暗譜での演奏でした。前半、1曲目は山田耕筰「この道」。おなじみの日本の歌を、しっとりと美しい演奏で。「ああー」の高い声が儚げだったのが印象的でした。橋本國彦「お菓子と娘」は、可憐で小粋な感じ。「パリジェンヌ」や「エクレール」といった言葉を日本語でまっすぐに歌ったのが、素朴なメロディと相まってなんとも素敵でした。ちなみに個人的には、この2曲目から藤木さんのお声がしっくり来て演奏を心から楽しめるようになりました。まだ1曲目の時点では、自分の想像を超えた高く美しい声にちょっと戸惑ってしまったので(ごめんなさい!)。伊福部昭「ウムプリ ヤーヤー」は、前奏の力強いピアノから既に伊福部ワールド!リズムの初めの方にアクセントがあると、私にはどうしてもゴジラのイメージが浮かびます。このピアノに乗るカウンターテナーも生命力あふれる感じで、独特なリズムと声の揺らぎがインパクト大!言葉の意味はわからなくても、エスニックな響きを楽しめました。三善晃「林の中」は、先ほどとはガラリと雰囲気が変わり、ピアノのやさしい響きに、いたいけな少女を思わせるカウンターテナーの歌声がとっても素敵。またラストの高音の余韻がとても印象に残っています。山田耕筰「野薔薇」は、素朴でも芯の強いイメージ。シューベルトはじめ多くの作曲家がゲーテの詩に曲をつけたドイツ歌曲とは違う、「日本の野バラ」の良さをしみじみと味わいました。なお私は後からネット検索で知ったのですが、ここでの「野薔薇」は北海道のハマナスを指すようです。今回の会場のふきのとうホールを運営する、六花亭の包装紙に描かれた花!粋な計らいをありがとうございます。ここまでの演奏が終わると、出演者のお二人が一旦退場されました。

日本の歌に続いては、フランス系の作品。G.フォーレ「月の光」。月明かりを思わせる仄暗いピアノにまず引き込まれ、ほどなく登場したカウンターテナーの透明感ある声は、まるで月の精。幻想的でとっても素敵!C.ドビュッシー「星の夜」。ピアノがキラキラと夜空に瞬く星々のよう。カウンターテナーの美しくも力強い声は、地に足を付けた人の強さを感じました。前の曲の「月」と好対照なのもよかったです。F.プーランク「美しき青春」は、テンポが速く言葉数が多い曲で、勢いのある演奏。中でも「ラララ」と高い声で弾むところがパワフルで、こんなに高い声なのにがっちり太い!と圧倒されました。ちなみに私は帰宅後に詩の対訳をネットで探してみて……なかなか過激な内容でびっくり!作詞者は不明とのことですが、もしかして名乗れないのかも?藤木さんの美しいお声がこんな内容の言葉を発していたのかと思うと、ちょっと複雑です(笑)。前半最後は有名なシャンソンを2曲。P.ルイギ「薔薇色の人生」は、高く美しい、しかし意思あるお声で、大人のムードたっぷりの歌を聴かせてくださいました。M.モノー「愛の賛歌」は、甘えて依存することはない、自立した人の愛が感じられ、その美しさにはっとしました。中盤のささやくようなところでも内に秘めた情熱が感じられ、またピアノがピアニッシモで寄り添ったのが素敵でした。


休憩後の後半、1曲目はE.モリコーネ「愛のテーマ」。哀愁を感じる、切なく美しい歌声に胸を焦がされました。またピアノが少しずつ高い音へ上昇していくところに希望が感じられたのも素敵。山場となる曲の前に、有名な映画音楽をしみじみと聴かせる演奏で楽しませてくださりありがとうございます。そして、武満徹「死んだ男の残したものは」へ。藤木さんは精神を集中させ、心身共に準備が整ってから演奏に入りました。1番の「男」は無伴奏で、ピアノ伴奏が入ったのは2番の「女」以降。研ぎ澄まされた第一声から、別次元の世界へ引き込まれたような不思議な感じに。事実を淡々と語る歌詞に、過剰な装飾のない音楽。なのにものすごい魂の叫びが感じられ、私はただただ打ちのめされました。「他には何も残さなかった」人達のことを思うとこみ上げてくるものがあり、「子供」のところでかなり参ってしまった私。しかしこの時は泣いてはいけない気がして必死で堪えていました。戦争はむごい、そう言うのは簡単でも、私はそのむごさを絶対にわかっていないから……その時の私は自分にそう言い聞かせていました。しかし実際は、言いようのない感情に真正面から向き合うのが怖かったのかもしれません。後からそう思えてきて、自分が情けなくなりました。会場の人達はそれぞれの受け止め方をなさったと思いますが、ものすごい衝撃を受けたのはきっと皆さん同じ。演奏が終わってもしばらく客席は静まりかえっていました。そのまま続けて次の曲へ。加藤昌則「サンクタ・マリア」。重厚感のあるピアノに、天国的な響きのカウンターテナー。純粋で崇高な「アーメン」が強く印象に残っています。鎮魂と祈りの音楽は、今生きている私達の救いでもあると感じました。加羽沢美濃日々草。作詞の星野富弘さんは、事故で身体が不自由になってから絵と詩の創作をされるようになったかたですね。私は著作を読んだことがあります。日々を生きていく中で、笑ったり泣いたり望んだり諦めたり……「諦めたり」で更に高い声になったところが胸に来ました。こんなふうに感情が揺れ動くのも、生きている証。木下牧子「鴎」は、穏やかなピアノに、透明感に力強さも感じられるカウンターテナー。何度も登場する「ついに自由は彼らのものだ」が泣けて泣けて。翼を折られ傷ついた「彼ら」が、これから飛翔できますように。ここまでの演奏が終わると、出演者のお二人が一旦退場されました。

クライマックスは愛あふれる曲がテーマでしょうか?作曲家の出身地はドイツ・イギリス・ロシア・ハンガリーと様々で、個性豊かな曲の数々が演奏されました。R.シュトラウス「あなたは私の心の王冠」。中盤ほんの少し陰りがあったものの、愛する人を信じまっすぐに歌う感じが素敵でした。R.ヴォーン・ウィリアムズ「リンデン・リー」。イギリスの片田舎の風景が目に浮かぶような、素朴な民謡風のメロディが心地よかったです。流れるようなピアノとのびやかな歌声が、終盤に少しだけ細かく音を刻む演奏になったのが印象に残っています。P.チャイコフスキー「ただ憧れを知るものだけが」ゲーテの詞ということはドイツ語でしょうか?穏やかなピアノに、独白するようなカウンターテナー。感極まったところではピアノも大きな音になる等、声の感情にピアノが自然にシンクロしていたのも素敵でした。F.リスト「愛の夢。ピアノ独奏曲としても有名な曲で、オリジナルの歌曲の演奏を聴くのは私は初めてでした。ささやくようなところも感極まって情熱的なところも、すべてに「愛」が溢れていて、ただ甘いだけじゃなく力強さも感じられました。また、一瞬カウンターテナーが沈黙するところや、ピアノが沈黙してカウンターテナーのみで演奏するところがあったのも印象に残っています。R.シューマン「献呈」。私はこの曲に何度も登場するドイツ語で du と呼びかけるところが好きで、今回は藤木さんのお声でそれが聴けてうれしかったです。ちなみに私は、この日の5日前にバリトンによる「献呈」の演奏を聴いたばかり。男気ある低い声もイイけど、高いかつ芯のある声での演奏も素敵です!

カーテンコールの後、アンコールへ。1曲目はG.フォーレ「リディア」。ゆったりと穏やかなピアノに、美しく時折感情が揺らぐようなカウンターテナー。フランス流の品のある響きを味わえました。アンコール2曲目はF.プーランク「愛の小径」。前半のほの暗く大人っぽい雰囲気と、後半のスキップするような明るさ(ピアノのタンタタン♪も素敵)、表情の変化を楽しめました。

ここで初めて藤木さんと岡田さんがマイクを持ってトーク。私は初めて耳にした藤木さんの地声にびっくり!良いお声でしたが音域はテノールでは?カウンターテナーは裏声を使うとの予備知識はあったものの、実際に違いを目の当たりにするとそのギャップに驚かされます。ちなみに藤木さんは「しゃべらずにいようかと85%(微妙な数字・笑)くらい思っていた」そうです。しかし、残り15%の方が勝ってトーク時間を設けてくださりありがとうございます!すごすぎる演奏を聴いてきた私達は、藤木さんが「雲の上の存在」のように思えていたのですが、トークのおかげで心の距離感がぐっと縮まりました。藤木さんはとっても気さくなお人柄で、トークの間は何度も笑いが起き会場は和やかな雰囲気になりました。藤木さんの札幌での公演は2年半ぶりとのこと。滞在中に何回食事する機会があるかを数えて、函館出身の岡田さんや札響のお友達(!)に色々と教えてもらい、「食べに行きたいところマップ」を作ったとおっしゃっていました。また藤木さんと岡田さんは初共演。直接の面識がない時に、藤木さんの方から岡田さんにお声がけ(インスタで!)されたそうです。岡田さんは、普段とは勝手が違う歌曲の伴奏に緊張されていたものの、今回はとっても幸せな共演ができたとおっしゃっていました。終わりには岡田さん、続いて藤木さんのCDの宣伝もありました。なお藤木さんの公式サイトから申し込むと、藤木さんのサイン入りで送って下さるそうですよ。楽しいトークの後、「水を一口飲んで、声を戻してから戻ってまいります」と、出演者のお二人が一旦退場されました。

アンコール3曲目は加藤昌則「もしも歌がなかったら」。今回の演奏会のラストにふさわしい選曲!藤木さんはここまでずっと歌い続けているにもかかわらず、声量や声の質は最初から最後まで保ち、極上の美しい響きを聴かせてくださいました。「あなたと あなたと 出会うことはなかっただろう」の「あなたと」のところで、まずはピアノの岡田さんを指さし、2回目は客席に両手を広げるジェスチャー。本当に、歌があって、この日の演奏会での出会いがあったことに大感謝です!私は胸いっぱいになりました。演奏が終わって、最後の最後に藤木さんは客席に投げキッスをして胸の前で2回手でハートを作りラブラブきゅんきゅんの仕草。珠玉の名曲の数々を、唯一無二の演奏でたっぷり聴けて、私は幸せいっぱいな気持ちになれました。ありがとうございました!札幌には春夏秋冬それぞれに美味しい物がありますから、またぜひ札幌にいらしてください。お待ちしています!

終演後、ロビーにてお土産(六花亭のお菓子の詰め合わせ)を頂きました。最高の演奏が聴けた上にお土産まで頂いて、ありがたいやら申し訳ないやらです。ふきのとうホールと六花亭がある札幌に住んでいて本当に良かった!これからも上質な企画をぜひお願いします!


この日の5日前に聴いた、「ウィステリアホール プレミアムクラシック 16th バリトン&ピアノ」(2022/06/05)。ヴォルフとシューマン、いずれも詩人・アイヒェンドルフの詩に曲をつけたドイツ歌曲。作曲家の個性の違いが楽しく、愛あふれるトークと演奏のおかげで食わず嫌いの私でもヴォルフを楽しく聴けました。ちなみにアンコールでR.シューマン「献呈」が取り上げられました。

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ピアノの岡田奏さんが札響と共演した「札幌交響楽団 hitaruシリーズ定期演奏会 第9回」(2022/04/15)。ラヴェルのピアコンはピアノが緩急つけて高音低音を自在に行き来し、オケと息のあった掛け合い。豪華な演目を気合いの入った演奏で聴けた、幸先の良い新体制・新年度のスタートでした。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

ウィステリアホール プレミアムクラシック 16th バリトン&ピアノ(2022/06) レポート

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ウィステリアホールのプレミアムクラシック、今回はドイツ歌曲です。ヴォルフとシューマン、いずれも詩人・アイヒェンドルフの詩に曲をつけた作品が取り上げられました。昨年度のブラームス『美しきマゲローネのロマンス』の演奏会(今回と同じくバリトン駒田さん&ピアノ新堀さんがご出演)が大変素晴らしかったので、私は今回の演奏会も楽しみにしていました。


ウィステリアホール プレミアムクラシック2022シーズン 16th バリトン&ピアノ
2022年06月05日(日)14:00~ ウィステリアホール

【演奏】
駒田敏章(バリトン
新堀聡子(ピアノ)

【曲目】
ヴォルフ:アイヒェンドルフ歌曲集 より
「友人」「音楽師」「寡黙な愛」「セレナーデ」「望郷」「愛の喜び」「海の男の別れ」

シューマン:リーダークライス 作品39 (全12曲)
「1.異郷にて」「2.間奏曲」「3.森の対話」「4.静けさ」「5.月の夜」「6.美しき異郷」「7.古城にて」「8.異郷にて」「9.悲しみ」「10.たそがれ」「11.森にて」「12.春の夜」

(アンコール)シューマン:献呈


ピアノはベーゼンドルファーでした。


バリトン駒田さん&ピアノ新堀さんによる演奏で、ドイツ歌曲をたっぷり聴けて幸せです!同じ詩人を題材にしていても、詩の選び方も曲そのもののカラーも作曲家によって個性が違うのは楽しく、1曲1曲を新鮮な気持ちで聴けました。また前半のヴォルフでは、演奏の合間の駒田さんによるトークがすごく面白かったです!トークそのものが楽しかったのはもちろんのこと、事前に作曲家やその曲について少し知ることができたおかげで、食わず嫌いの私でもヴォルフを楽しく聴けました。ヴォルフはブラームスを敵対視していた作曲家なので(これについては今回の演奏会では一切触れられていません。念のため)、「私の推しとは合わない人」イメージで今までずっと避けてきました。そして初聴きだった今回、もしトークなしの演奏のみだったなら「なにこれ!?」となってしまい、私はうまく受け止められなかったかもしれません。今回の演奏を聴いて、私はヴォルフの歌曲を「好き」と言えるには至りませんでしたが、少なくとも独特の個性を「面白い」と感じ、これからも聴いてみたいと思えるようになりました。駒田さんと新堀さんの、作曲家への愛あふれるトークと真摯な演奏のおかげです。ありがとうございます!

そしてシューマン。しみじみ素敵で聴き入りました。ブラームスとはまた違う個性でも、シューマンの歌曲は心に身体にすっと入ってきて、私にはしっくり来ます。また今回の作品については、感情は揺れ動くものの極端に大きな揺さぶりはなく、心穏やかに聴けました。なおシューマントークなしで全曲続けての演奏。現実に引き戻されることなく、音楽の世界にずっと浸ることができました。私は、ドイツ音楽が好き、ドイツ語の響きも好き、そして低い声LOVEなので、音の響きを味わうだけでも十分楽しめます。しかしせっかく歌詞がある歌曲ですから、今回は字幕を追いできるだけ言葉の意味を把握しながら演奏を聴いてみました。すると、歌詞の言葉そのものよりむしろ声とピアノの表情に「言外の意味」があると感じるように。奥が深い世界!今の私はまだ気づきが少ないですが、今後も自分なりに歌曲を聴いていき、今よりも色々なことが見えてきたらもっと楽しめそうな気がしています。

今回、歌詞の印刷物は配布されず、歌詞の日本語訳は正面のスクリーンに大きく表示される形式でした。演奏の様子と歌詞を同時に見ることができるのと、今どの部分を歌っているのかが一目瞭然なので、個人的にはこのスタイルは歓迎です!詩の中での引用符で囲まれた部分はフォントを変える等の工夫も親切でした。一つ思ったのは、ドイツ語を知らなくてもアルファベット表記で発音は想像できるので、ドイツ語を併記しても良いかも?ということ。しかし画面がごちゃごちゃになったり、文字が小さくなって読みづらくなったりするようでしたら、今回のように日本語のみでOKだと思います。いち個人の思いつきでした。


ピアノの新堀さんとご一緒に舞台へ登場したバリトンの駒田さんは、「髪を後ろで束ねてメガネをかけると、ショパンコンクール第2位のあの人に間違えられる駒田です」と自己紹介。会場が和み、掴みはOK!なお駒田さんは前半・後半ともすべて暗譜でした。本記事ではまず、前半でのトーク内容のうち曲の解説(これは各曲のレビューの中に書きます)以外について、私が聞き取れた範囲でまとめてレポートします(※トピックの順番は前後しています)。内容について間違いや漏れ等がありましたら、どなたでもご指摘くださいませ。日本ではなじみが薄いヴォルフ。しかし駒田さんはヴォルフが大好きで、大学院の卒業試験も日本音楽コンクールでもヴォルフを演奏されたそうです。今回の作品集の詩人・アイヒェンドルフの詩は「ストーリーがあまりなく雰囲気を味わう詩」。ヴォルフは「詩」をとても大切にしていた作曲家で、基本的にわかりやすいメロディではなくハーモニーで詞の世界観を表現している。詩の内容によっては後奏で引っ張らずに詩が終わると同時に曲が終わったり、「朗読付きピアノソロ」とも言えるものだったり。転調を多用するもそれが想像を外してくる独特なもので、例えば……と「狸小路商店街」(!?)のテーマソングをまず普通に歌い、続けてヴォルフ風にアレンジ(すごいものを聴いてしまいました……)。確かに終わり方が落ち着かないかも?と私は感じましたが、駒田さんは「これにハマれるとヴォルフが好きになる」とおっしゃっていました。ちなみに歌曲伴奏のスペシャリストであるピアニストのジェラルド・ムーアは、「シューベルトかヴォルフ、選べない」と言うほど、ヴォルフの歌曲を高く評価していたとのことです。またヴォルフを語る上で外せないのはワーグナー。ヴォルフはワーグナーを神のように崇拝していたそうです。ワーグナーの楽劇を休憩なしで長時間続けて聴くのがつらい人にはヴォルフの歌曲をお勧めしたい、というお話では会場が和みました。ワーグナーに関連して、宮崎駿監督のジブリ作品『崖の上のポニョ』のワンシーンにワーグナーの「ワルキューレの騎行」が使われているというトリビア紹介も。そして前半のトークの中で、後半のシューマンについての紹介もありました。シューマンは一定期間を1つのジャンルに集中して作曲する傾向があり、クララと結婚した1840年は「歌曲の年」。今回の「リーダークライス 作品39」も「歌曲の年」の作品とのこと。シューマンの愛の喜びと憂いや不安が混ざっている作品、といったお話でした。


演奏内容に入ります。前半はヴォルフのアイヒェンドルフ歌曲集 より、7曲をチョイス。「友人」は、人生の荒波を乗り越えた人を私は友としたい、という趣旨の曲。演奏は、緩から急へ移ったのが私には唐突に感じられ、いきなりクライマックス!?まって心の準備が!と面食らってしまいました(ごめんなさい!)。しかし揺るぎない決意が感じられるインパクト。また歌とピアノはほぼ同時に終わりました。「音楽師」は、路上でルンペン生活をする音楽師が、真冬の外(ドイツの冬だと札幌と同じく命に関わる寒さ)で陽気に生きていて、ピアノパートは音楽師が奏でる音楽、とのことです。ピアノの明るい素朴なメロディに合わせて、音楽師が「彼女(自分を憐れむ道行く女性)に家がある旦那を与えますよう!」と努めて明るく歌うのがとても刺さりました。「寡黙な愛」は、内面の愛を見つめる曲で、転調を多用しているそう。バリトンもピアノも揺れる心をひとり静かに噛みしめている感じ。男前が繊細な心を持ち合わせているようで、この曲のバリトンは個人的にツボでした。また後奏のピアノのやさしい響きもとっても素敵でした。「セレナーデ」は、夜、女性の家の前で求愛する若い男が歌う(セレナーデとはそんな曲)のを、聞いている年老いた自分(愛した女性は既に他界)の思いを歌った曲で、ピアノが若い男の歌、バリトンが年老いた自分、とのこと。ピアノは素朴でも美しいのに、重なるバリトンの心情は寂しくて、このズレに心がざわつく感じ。またラストにピアノが低い音をのばさず2回、ボン、ボン、と発したのが私はすごく気になりました。これは一体何の描写なんでしょう……。「望郷」は、一人で言葉が通じない外国にいるときに感じる孤独と故郷への懐かしさ。ピアノによる後奏で激しい内面を表現しているとのこと。ちなみに東西ドイツ統一の時によく歌われた曲だそうです。初めの方では、穏やかに語るようなバリトンがとっても素敵!私は詩の内容とは直接関係なく「子守歌」のような雰囲気を感じました。クライマックスは前向きで勇ましくなり、あ、フロイデだ!ドイッチュランドだ!と、何となくわかる単語が聞き取れたのがちょっとうれしかったです(このレベルで申し訳ないです)。ピアノの堂々とした締めくくりも素敵でした。「愛の喜び」は、ドイツ語で話しているのに一番近い演奏で、短い詩に対して前奏や後奏で引っ張らずにパッと始まりパッと終わる曲、と解説。ピアノもバリトンもウキウキと恋の喜びを饒舌に語っているようで、とっても楽しかったです。青臭い詩にはこんな曲をつけた方が、冗談っぽくできていいのかも?この演奏を聴いて、私はついブラームスの「我が恋は緑」を連想。「我が恋は緑」は個人的に大好きな曲ですが、青臭い詩を大袈裟な曲にして笑えない感じになっちゃったなとは思います。最後の「海の男の別れ」は、駒田さんが大好きな曲とのこと。飲んだくれの海の男が、自分を振った女や仕事の同僚に対して、あばよ!と捨て台詞を吐き、おまえらにもう一度ノアの洪水をお見舞いしてやる!俺は楽園に行く!と啖呵を切る、というストーリー。ピアノの後奏では男が妄想する楽園を表現しているとのこと。また海の荒波を表現するピアノの和声が強烈(人によっては耳障り)で、この和声にはブルックナーが嫉妬したのだそうです。確かにピアノの和声はインパクトありました。ただ、個人的にはちょっと無理(ごめんなさい!)。しかしバリトン演じる海の男が、大きな声で強がってみたり、ささやき声になったり(悪だくみ?)と表情豊かで、どうしようもない男なのに憎めない感じがして楽しく聴けました。ピアノによる明るい締めくくりには「楽園へ行ってらっしゃい!」と、聴いている私達の気分も晴れやかに。演奏が終わると、駒田さんの「休憩です」との一言で、前半終了。


後半はシューマンのリーダークライス 作品39 (全12曲)。トークは無く、全曲続けての演奏でした。「1.異郷にて」は、既に父母が他界して自分自身も消え入りたいといった歌で、寄せては返す波のようなピアノに、パリトンの揺らぐ声が深い悲しみを表しているよう。「2.間奏曲」はラブソング。思いはあふれているのに、貴女の元へ急ぐのだという決意表明(?)のところで、なぜかふっと寂しげな感じになったのが印象的でした。「3.森の対話」は、男女の会話形式の詩で、女性の発言は字幕のフォントを変えてありました。ピアノとバリトンも人物を演じ分け、とてもドラマチックな演奏。穏やかで明るい感じだったのが、女が魔女だとわかったときのパリトンの「ローレライ!」がインパクト大!その後の対話を経て、何事も無かったようにピアノが最初の穏やかな響きになったのにはぞっとしました。一体どうなってしまったのでしょう……。「4.静けさ」は、控えめにスキップするようなピアノに、恋心を秘めたバリトンのささやくような声が素敵でした。「5.月の夜」は、ひそやかな月の光を思わせるピアノとバリトンのゆったりとした響きが心に染み入りました。「6.美しき異郷」は、夜の情景を描いていても内に秘めた情熱が感じられ、希望に満ちた力強いラストが印象的。「7.古城にて」は、時が止まった古城を、重々しいピアノと語るようなバリトンで。ラストはピアノの後奏なしでふっと消え入ったのが印象に残っています。「8.異郷にて」(同じタイトルでも1曲目とは別の曲)は、ピアノとテンポ良く掛け合うバリトンが、どこか落ち着かない印象で、心がざわつきました。彼女との死別はずっと前のことでも、時間が経ってから感じる喪失感?「9.悲しみ」は、大泣きするのではなくて、深い悲しみを心の奥にしまい穏やかに受け入れている印象。個人的には子守唄のようにも感じる、心地よい響きでした。「10.たそがれ」は、淡々としているようで、歌詞を読むと「友を信じてはいけない」等、何かつらい過去があった?と。音楽の響きも心なしか孤独で悲しげに感じました。ラストに音を区切って2回、ボン、ボン、と発したピアノ……ヴォルフにも似た終わり方があったのを思い出しました。これは一体……。「11.森にて」は、陽気で力強く始まったのに、後半はやや不穏な感じに。ものすごく暗いわけではなく、穏やかなのがかえってインパクトありました。「12.春の夜」は、華やかなピアノに自信に満ちたバリトンの響き!最後に幸せに満ちた曲の演奏が聴けてうれしかったです。12の小さな物語の世界、最初から最後まで夢中になれました。

カーテンコールでは、駒田さんから次回のウィステリアホール公演(2022/07/31 ソプラノ&ピアノ)の宣伝がありました。クララ・シューマンの作品と、ロベルト・シューマンの「女の愛と一生」が取り上げられること。「女の愛と一生」は男から見た女性像でけしからんという向きがあるけれど、「僕はそうは思いません」と駒田さん。そしてアンコールの演奏へ。シューマン「献呈」。ウィステリアホールの公式YouTubeチャンネルで公開されている演奏を、今回は生演奏で聴ける!と、私は心の中で大喜びでした。男性から女性への愛あふれる歌詞は、作曲当時新婚だったシューマン夫妻のロベルトから妻クララへの熱烈な愛情表現そのもの。幸せな響きのピアノに、語りかけるようなバリトン。貴女と呼びかける、ドイツ語の du が最高!何度でも呼んでほしいです!バリトンは次第に自信に満ちあふれた感じになり、愛をまっすぐに歌うのがとっても素敵でした。演奏が終わると、駒田さんの「おしまいです!」でお開きに。個性豊かなドイツ歌曲の数々をたっぷり聴けて楽しかったです!今回も素敵な演奏をありがとうございました。次の開催もお待ちしています!


WISTERIAHALL WEBCAST にて、今回のアンコールで取り上げられたシューマン「献呈」のバリトン駒田敏章さんによる演奏(日本語字幕付き)が公開されています。超おすすめです!


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バリトン駒田さん&ピアノ新堀さんがご出演された、昨年度のウィステリアホールプレミアムクラシック 朗読と歌で綴る「マゲローネのロマンス」(2021/10/24)。ピアノとバリトンと朗読のみで創る、中世の物語の世界。おそらく首都圏でもめずらしい、ブラームスの連作歌曲の演奏会を札幌にいながらにして聴けたのはとてもスペシャルな体験でした。

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ウィステリアホールのプレミアムクラシック、前回は「クラリネットファゴット&ピアノ」(2022/04/29)でした。ふくよかな音色のクラリネットに、カッコ良くて頼もしいファゴット。フランス系中心のプログラムは聴いていて心地よく、木管の魅力をたっぷり堪能できました。

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この日の1週間前に聴いた「札幌交響楽団 第645回定期演奏会」(日曜昼公演は2022/05/29)では、シューマン交響曲第3番「ライン」が取り上げられました。華やかな「水上の音楽」に、アンヌ・ケフェレックさんの可憐で繊細なピアノによるモーツァルトライン川を思わせる壮大な響きのシューマン。シーズンテーマ「水」がよどみなく流れるような演奏に、清々しい気持ちになれました。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

札幌交響楽団演奏会 Kitaraでクラシック!(2022/06)レポート

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札幌市と札響の主催による特別演奏会「札幌交響楽団演奏会 Kitaraでクラシック!」が開催されました。私はコンサート当日に行くと決め、当日券で3階席へ。聴きやすい演目が並び、チケットはサービス価格設定(一般1000円、65歳以上500円)のためか、平日昼間にもかかわらず会場はほぼ満席でした。また企画の趣旨から、お客さんはやはりシニア層が多いようでした。


札幌交響楽団演奏会 Kitaraでクラシック!
2022年6月2日(木)13:30~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮とお話】
中田 延亮

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島高宏)

【曲目】
ロッシーニ:「ウィリアム・テル」序曲より『スイス軍の行進』
モーツァルト:「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」より第1楽章
チャイコフスキー:「白鳥の湖」より“情景”“チャルダッシュ
スッペ:「美しきガラテア」序曲
エルガー:愛の挨拶
ドヴォルジャーク:スラブ舞曲op.46-8
J.シュトラウスⅡ:ワルツ「美しく青きドナウ

(アンコール)外山 雄三:管楽器のためのラプソディ(スペシャルバージョン)


やっぱり札響 in kitaraは鉄板!超楽しかったです!思い立ったらすぐに聴きに行けるご近所に札響とkitaraがあるなんて、札幌は最高!と、今回改めてそう思えました。思い切って参加して本当によかったです。また会場の空気から、おそらく演奏会ビギナーと思われるかたたちも心から楽しんでいる様子が感じられました。言うまでもなく聴く側にとっては気楽な会でも、演奏は真摯で丁寧。指揮の中田延亮さんによる演奏は、メリハリがはっきりして聴き所がわかりやすく親切な印象を受けました。高音が主役の華やかな曲でも低音の存在感があったのが個人的にはうれしいポイントでしたが、これは中田さんがコントラバス奏者でもいらっしゃるためかも。プログラムに掲載されたプロフィールによると、中田さんは医学部在学中に音楽の道に転向した大変ユニークな経歴をお持ちで、欧州を本拠に活躍されておられるそう。この日に私が感じた限りでは、中田さんは大変親しみやすいお人柄で、曲の合間のトークでは客席は和やかでとても良い空気が出来ていました。

また演目が気が利いていました。クラシック音楽に詳しくない人にも耳なじみのある曲を揃え、作曲家の出身地はバリエーション豊か。差し色として、ややマイナーな「美しきガラテア」序曲が入っていたのも良かったです。先にストーリー解説をした上でシーンの移り変わりがはっきりとわかる演奏をすることで、初聴きの人達(私もそうでした)にもすんなり受け入れられたと思います。こんな出会いは素直にうれしい!さらに驚いたのはアンコールです。プログラムの最後が定番の「美しく青きドナウ」だったので、これは「ラデツキー行進曲」で手拍子するお決まりパターンだと私は思い込んでいました。まさか「管楽器のためのラプソディ」が来るなんて!編曲版ではありましたが、最後の最後にオケ渾身の演奏で思いっきり盛り上げてくださり、日本人の血が騒ぐ音楽に会場の熱気も最高潮に。粋なサプライズをありがとうございます!あとは、プログラムには特に書かれていなかった「楽器紹介」がすごく面白かったです!この日の編成にあった楽器すべてを順番に短い演奏で紹介していくスタイル。各楽器の音色を知るだけでなく、演奏家それぞれの個性が際立つ演奏をすべてのパートで聴けるなんて、とても贅沢な体験でした。お客さん達はきっとご自分の「推し」が見つかったのでは?

そして、たとえワンコインでも、生演奏を聴くためにチケットを購入してホールに足を運んだかたが大勢いらしたことに、私は感激しました。もちろん札響定期は「おねだん以上」の素晴らしいものではありますが、やはり価格面や場違い感(ガチ勢の中には入れない)のために敬遠してしまう人は多いのかも。私もつい最近までそうだったので気持ちはよくわかります。そんなかたたちが気兼ねなく最高のホールでクオリティの高い演奏を聴けるなんて、最高に素敵!人生100年時代ですから、例えば生オケ初体験の時点で70歳の人でも、元気でいられれば後30年は楽しめます。それに楽しみがあればずっと元気でいたいとも思うのでは?せっかく札響とkitaraがある街ですから、ガチ勢向けだけではもったいない。今回のような企画を札幌市はこれからもどんどんやってください!お願いします!


団員の皆様、続いて指揮の中田さんが入場し、コンマスと肘タッチ。すぐに演奏開始です。最初の曲はロッシーニの「ウィリアム・テル」序曲より『スイス軍の行進』。トランペットのファンファーレから始まり、馬が駆けるようなリズミカルで勢いのある演奏にゾクゾク。華やかさに一気に気分があがります。最初から大盛り上がりで掴みはOK!この演奏については文句なしで素敵でした。しかし個人的にはできれば「ウィリアム・テル」序曲はフルで聴きたかった……冒頭の独奏チェロからのチェロアンサンブルが超素敵なのに!と心の中でちょっとだけ悔しい思いをしていました。内緒ですが。

指揮の中田さんがマイクを持ってごあいさつ。大勢のお客さんにお集まり頂いたことに感激しています、幕の内弁当のように様々な曲が楽しめる欲張りな企画です、といったお話がありました。またプログラムに曲の解説はなく、トークの中で楽しく紹介されました。なお中田さんはトークの時はマスク着用されていました。

舞台から管楽器と打楽器の皆様が退場。次の曲は弦楽アンサンブルです。演奏に移る前に、4種類の弦楽器の「楽器紹介」がありました。田島コンマスによるヴァイオリン(♪虹と雪のバラード♪)から始まり、ヴィオラ(♪花は咲く♪、ヴァイオリンとの大きさ比較もありました)、チェロコントラバスと、だんだん音が低くなる順に、それぞれ首席奏者による本気の独奏。一瞬で会場の空気を変えてしまうソロ演奏は、皆様さすがの貫禄です!それぞれの弦楽器の音色を覚えてから、「クラシック音楽と言えばこの曲」、モーツァルトアイネ・クライネ・ナハトムジーク」より第1楽章の演奏へ。キャッチーな冒頭のメロディから気分があがります。弦のみでこんなに華やかで明るい音楽。何度聴いてもイイ!団員の皆様は数え切れないほど演奏されているはずですが、今回も素敵な演奏を聴かせてくださいました。なお今回は繰り返しはナシでした。

弦奏者の皆様が退場し、舞台には指揮の中田さんのみが残りました。弦以外の「楽器紹介」は、それぞれの楽器奏者のかたが順番に舞台に出てきて、木管金管、打楽器、ハープの順に進行。中田さんによる解説は、小難しいことは一切なく、その楽器を初めて見聞きする人にもわかりやすい印象でした。フルートは木製と金属製の2つを続けて吹きましたが、私の耳ではほぼ同じ音に聞こえました……。「フルートの妹分」のピッコロ(♪エーデルワイス♪)は最後にあえて一番高い音を発するサービス。オーボエはまずリードだけで音を発してから、楽器による演奏へ(♪「イーゴリ公」よりダッタン人の踊り♪のオーボエソロ)。オーボエとの形の比較をしたクラリネットは、おそらく先日の名曲シリーズ(2022/05/14)で取り上げられた♪プロコフィエフピーターと狼」♪の猫のテーマを演奏されたと思います(間違っていましたら申し訳ありません)。他の方はたいてい有名なフレーズを採用されているのに、なかなかマニアックな選曲!ファゴットは演歌?(曲名がわからずごめんなさい!)で、演奏後に中田さんが「お母ちゃーん!と懐かしい気持ちになりますね」とおっしゃって会場が和みました。ホルンはソロではなく四重奏で、♪威風堂々♪のホルンが担当する主題を演奏。もちろんソロ演奏でも素敵なはずですが、メロディと下支えが重なる四重奏は奥行きと壮大さがあって更に素敵!トランペットはソロ演奏(♪大空と大地の中で♪)で低めの音程による演奏。トロンボーン2つとチューバによる三重奏(♪この木なんの木♪)では、歌で言うところの1番をトロンボーン、2番をチューバが歌いました。打楽器は4名による演奏で、ティンパニ以外は楽器を次々と持ち替えての大迫力!そして最後に「弦楽器の一種」とハープが紹介されました。個性豊かな演奏をたっぷり聴けてとっても楽しかったです!

次に登場するチャイコフスキーがロシアの作曲家ということで、現在の戦禍について少し触れられました。「チャイコフスキー自身は、ウクライナにルーツがあることを誇りに思っていた」とのこと。また演奏前に「チューニング」の説明をして、オケが実際にチューニングを行い、演奏に移りました。チャイコフスキーの「白鳥の湖より、まずこれを知らない人はおそらくいない“情景”。弦のトレモロ、ハープに続いて、あのオーボエソロ!壮大なクライマックスでの金管群の迫力!一度聴いたら忘れないメロディの良さに加え、楽器の活かし方がとても上手い!チャイコフスキーはメロディメーカーであり、かつ管弦楽の魔術師でもあると私はいつも思います。続いて“チャルダッシュ”。前半の哀愁漂う音楽がとっても素敵!高音弦の切なさ美しさを、呼応する低弦がぐっと締めてくれました。後半はテンポが速くなり、金管打楽器も加わった華やかな盛り上がりに。親しみやすいハンガリー風のメロディとリズムを、チャイコフスキー流に料理するとこうなるんですね!「白鳥の湖組曲が演奏される次回の札響定期も楽しみです♪ちなみにプログラムには「こんどは『白鳥の湖組曲の全曲をお聴きになりませんか?」と、次回(2022/06)の札響定期演奏会の宣伝がしっかり書かれていました。抜かりナシ♪

スッペの「美しきガラテア」序曲。演奏前にオペレッタの簡単なあらすじ紹介がありました。「これぞ理想の女性」と石の彫刻であるガラテアに恋した男が、神に頼んで彼女を人間にしてもらうも、人間になったガラテアは食べ物や宝石を要求するリアルな女だったので、あらあら……といったお話。明るく華やかな演奏の中で、石像が人間になるシーンでしょうか?ホルンとフルートの掛け合いが印象的なゆったりした木管群に続いて、低弦ピッチカートに支えられた透明感ある高音弦の美しさ!ごく小さな音から次第に浮かび上がる高音弦がとっても素敵で強く印象に残っています。こんなに麗しい女性が、次のファゴットを皮切りにリアルな存在に様変わり。すったもんだの末、ラストは華やかに締めくくり。短い演奏時間でも、ぎゅっと濃縮された物語の世界に浸れて楽しかったです。

ここからは作曲家の出身国もあわせて紹介されました。イギリスの作曲家・エルガーの「愛の挨拶」。愛妻家のエルガーが愛する妻を思って書いた有名な曲です。私はピアノと他の楽器(弦や木管など)のデュオによる演奏になじんでいて、管弦楽版での演奏を聴くのはこの日が初めて。低弦が効いたぐっと大人っぽいイントロから早速引き込まれました。甘いメロディをやさしく歌う高音弦が素敵!メロディは木管やホルンにも引き継がれていき、それぞれの音色による甘い歌を楽しみました。

チェコの作曲家・ドヴォルジャークの「スラブ舞曲op.46-8」。大ヒットして作曲家の生活が潤ったという「スラブ舞曲集」の中の1曲。「フリアント」という、3拍子でも「1,2」のリズムが強調される舞曲のリズムで書かれているとの解説がありました。私、知りませんでした!勉強になります!勢いがあって、緩急強弱のメリハリがはっきりした演奏がカッコイイ!「1,2」のリズムを意識して聴くと、確かに初めの方にアクセントが来ているようでした。派手なところでの金管打楽器による盛り上がりはもちろんのこと、少しゆったりするところで木管が歌うのが素敵でした。

プログラム最後の曲は、ウィーンの作曲家・J.シュトラウスⅡのワルツ「美しく青きドナウ。「ウィーンフィルニューイヤーコンサートでは必ず取り上げられる」と紹介された超定番曲、もちろん札響での演奏機会もとても多いです。ズンチャッチャのワルツのリズムに合わせた、川の流れのように移り変わるメロディ。華やかな王道ワルツ、何度聴いてもイイですね!今回の演奏もとっても素敵でした!あと今回私は3階席だったので、舞台全体が見渡せて各楽器の活躍ぶりがよくわかったのがうれしかったです。独奏チェロと重なる伴奏が、初めの方と終盤では変化しているのも確認できました。

カーテンコールの後に指揮の中田さんがごあいさつ。「最後は日本の曲で」ということで、アンコール外山雄三「管楽器のためのラプソディ」スペシャルバージョン、と曲名が紹介されました。ええっ、ラデツキーマーチではない!?しかも想像の斜め上をいく選曲……と、私はびっくり。でもこんなサプライズは大歓迎です!はじめの、金管奏者の皆様が打楽器に持ち替え一斉にカンカンカン……と速いテンポで叩くところから血が騒ぎます。鐘がコーンと入ったところで会場に笑いが起きてしまいましたが(いきなりで驚かれたのかも?)、その後はフルオケのド迫力で日本人のDNAに刻まれたメロディの数々が繰り出される様に、お客さん達は皆引き込まれていました。先ほどの優雅なウィンナ・ワルツとはガラリと変わり、日本の民謡ベースのリズムでノリノリに演奏するオケの皆様さすがです!演奏は最初から最後まで素晴らしいものでしたが、今回は特にフルートソロに大注目。プログラムによると、今回の客演首席フルート奏者は東京フィル首席の斎藤和志さん。和楽器の横笛を思わせる、いぶし銀のような響きのフルートが実に見事でした。最後の最後に最高の盛り上がり!超楽しかったです!

今回は「休憩なし約70分」の予定が、時間がおしてしまい90分続けての演奏会になりました。このハードスケジュールでバラエティに富んだ演奏するのは大変だったことと存じます。指揮の中田さん(指揮もトークもあって一瞬たりとも休みなし!)、奏者の皆様、最後まで素晴らしい演奏を本当にありがとうございました。個人的には盛りだくさんで大満足でした!ただ、お客さんの中には終盤にお疲れを見せたり、途中退場されたり、分散退場を待ちきれずに席を離れたりしたかたがいらっしゃったのも確かです。長時間同じ姿勢で演奏を聴くのは、慣れている人ならともかく、演奏会ビギナーとりわけご年配のかたには厳しいかも。今後同様の企画をする際には、休憩を挟むスタイルの方がよいかもしれません。ぜひご検討くださいませ。


札幌市と札響の主催による特別演奏会。本年度は2022年6月現在のところあと2つが予定されています。「おんぷでステップ♪みんなのオーケストラ in 教文」(2022/07/29)、「hitaruでシネマ・ミュージック!」(2022/09/05)。いずれも演奏時間短めの有名曲が取り上げられ、チケット料金は格安です。気になる公演がありましたらぜひ♪同じ札響でも会場や指揮者の違いで響きは変化しますから、全公演行って聴き比べるのも楽しいと思います。

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音楽に関しては素人の私ですが、普段はうんと背伸びして札響定期もよく聴きに行きます。この日の4日前には「札幌交響楽団 第645回定期演奏会」(2022/05/29)を聴きました。首席指揮者マティアス・バーメルトさんが今シーズン初出演!華やかな「水上の音楽」に、アンヌ・ケフェレックさんの可憐で繊細なピアノによるモーツァルト。大きなライン川を思わせる壮大な響きのシューマン。シーズンテーマ「水」がよどみなく流れるような演奏に、清々しい気持ちになれました。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

札幌交響楽団 第645回定期演奏会(日曜昼公演)(2022/05)レポート

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↑札響の公式サイトにて、今回のソリストであるアンヌ・ケフェレックさんのメッセージ動画が視聴できます。

2022年5月の札響定期に、首席指揮者マティアス・バーメルトさんが今シーズン初出演です!シーズンテーマ「水」にかかわる音楽として、「水上の音楽」と「ライン」の2曲。またソリストにアンヌ・ケフェレックさんをお迎えし、モーツァルト最後のピアノ協奏曲が取り上げられました。

なお、土曜夜公演についてはラジオ放送が予定されています。7月17日(日)14:00からの放送予定。札幌圏外のかたもネットラジオで聴くことができます。

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また今回の「オンラインプレトーク」は、札響トランペット首席奏者の福田善亮さんとトロンボーン首席奏者の山下友輔さんがご出演。演奏の細かなところまで踏み込んだ演奏家ならではのお話や、ソリストの昔の思い出話など、興味深い話題がてんこ盛りです♪

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札幌交響楽団 第645回定期演奏会(日曜昼公演)
2022年5月29日(日)13:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
マティアス・バーメルト

【ピアノ】
アンヌ・ケフェレック

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島高宏)

【曲目】
ヘンデル:「水上の音楽」第2組曲
モーツァルト:ピアノ協奏曲第27番
ソリストアンコール)ヘンデル(ケンプ編):メヌエット ト短調 HWV434 No.4

シューマン交響曲第3番「ライン」


シーズンテーマ「水」をはっきりとイメージできた、よどみなく流れるような演奏。とても清々しい気持ちになれました!1曲目の「水上の音楽」は、船上という限られたスペースに合わせた小編成でもとても華やかで、各楽器の見せ場が盛りだくさん!作曲家のサービス精神がうかがえる明快な響きの音楽が楽しかったです。また後半メインのシューマン「ライン」は、作曲家自身がつけたタイトルではないにせよ、まるで大きなライン川の流れを思わせる壮大な響き。川の流れは変化しつつもよどむことはなく、生命力あふれた迷いのない音楽には、ずっと夢中になれました。中でも私は第4楽章が特に印象深かったです。全体の流れの中に溶け込んでいながらも、荘厳な響きで特別な存在感!ちなみにシューマン交響曲第2番でも唯一の短調である第3楽章が気になった私。曲全体の中での少し異質な部分になぜ惹かれるのか?このあたりを追求したら、私はシューマンとはもっと仲良くなれそうな気がしています。

そして「水」とは直接関係ないように思えるモーツァルトの協奏曲の演奏でも、個人的には「水」のイメージが浮かびました。アンヌ・ケフェレックさんの可憐で繊細なピアノは、とても自然体で湧き水のように生まれた音がさらさらと流れていく印象。力んだところや過剰な演出がない、ただただ純粋な音楽には聴いている私達の心も洗われるようでした。ちなみに私は2019年4月定期でも、ケフェレックさんと札響によるモーツァルトの協奏曲(この時は第22番)を聴いています。しかし当時の私にはその良さがまるでわかっていませんでした。そして今回、今の自分なりに聴いて、しみじみ素敵と感じられたことが素直にうれしかったです。ケフェレックさんと札響の協演が再び実現し、今回の演奏に出会えたことに心から感謝します。

なおプログラムには、「61年目の札響と共に目指すこと」と題したバーメルトさんのメッセージが掲載されていました。他ページよりも小さなフォントで1ページぎっしり詰まった文章からは、札響と今シーズンへかけるマエストロの熱い想いが伝わってきます。私は先日の札響えべつコンサートにて、バーメルトさんには意外に熱い一面があると感じたばかり。クールな印象のバーメルトさんが、シーズンテーマ「水」の本年度はどんな形で熱い情熱を見せてくださるか、とても楽しみです。


1曲目はヘンデル「『水上の音楽』第2組曲。今回はハーティ編曲版ではなくオリジナル版の演奏です。この曲のみバーメルトさんは指揮棒ナシ。また動きは「ここぞ」というときの最小限で、演奏は基本的に奏者の皆様に任せていた印象でした。この曲は、何と言ってもトランペットとホルンですよね!トランペットが高らかに歌い、呼応するようにホルンが歌うのが華やかかつ壮大で超カッコイイ!また同じメロディの繰り返しと思える部分でも少しずつ変化をつけてあり、例えばトランペットがフレーズ末尾で音を震わせたのを、こだまのようにホルンも同じ感じに演奏したのが楽しかったです。木管とホルンとの掛け合いも素敵でした。トランペットには高音弦、ホルンには中低弦が寄り添うのが基本スタイルで、弦が華やかさをさらに盛り上げてくれました。加えて金管が小休止して弦が主役になるところはとても美しく、まさに「水」のイメージがぴったりの澄んだ響き。あと個人的に「お?」と思ったのは、管楽器の見せ場で弦が沈黙するシーンがあったことです。弦は常に働いているイメージだったので新鮮でした。そして、弦と重なり控えめに音を刻んだチェンバロの存在感!声高な主張はしないのに、音楽にぐっと高貴な印象を与えてくれました。各楽器の個性が際立ち、小編成ながら華やかで開放感のあるとても贅沢な気持ちになれる演奏でした。


ソリストのアンヌ・ケフェレックさんをお迎えして、2曲目はモーツァルト「ピアノ協奏曲第27番」。第1楽章、はじめのオケのターンはモーツァルトらしい穏やかで美しい音楽。心穏やかに聴き入りました。満を持して独奏ピアノが登場。つま先からそっと踏み出すバレエのステップのような開始がとっても素敵で、早速引き込まれました。キラキラと流れるように美しい音を奏でるピアノは、清水が湧き出てくるような印象。このピアノと会話するオケも澄んだ瑞々しい響きで、幸せあふれる時が流れていました。明るい流れの中で、独奏ピアノが転調しふと寂しげな響きになり、続くオケも哀愁を帯びた感じに。1つのみのフルートが存在感ありました。またピアノに寄り添う弦ピッチカートが印象に残っています。カデンツァは、ややゆっくりと始まり少しずつ早くなって、確実にステップを踏んでいるよう。低音から高音へじっくりと上昇していくところがとても良かったです。オケによるかわいらしい締めくくりも印象的でした。第2楽章では、独奏ピアノが可憐で美しい!時にハンマーやペダルの物理的な音が聞こえる程の繊細な演奏による、ピアノの1音1音はまさに珠玉の音色!対話するオケも優しく温かな響きで心地よかったです。どの木管も個性的なまるい音色がとっても素敵でしたが、個人的にインパクト大だったのはホルンです。ピアノに寄り添う長くのばす音が繊細で美しい!ホルンは大きな音による咆哮だけでなく、柔らかで繊細な演奏も素敵ですね!第3楽章は、軽やかで明るいピアノから入り、ピアノとオケが一緒にスキップするように、タッタタッタターのリズムにのる幸せな音楽が楽しい。ピアノと掛け合う、オーボエファゴットの大人びた音色が素敵!中盤のピアノソロでは、この明るさにふと陰りが見えました。ほんのちょっとした変化なのに場の空気変えたピアノに、私は思わず感嘆のため息。ラストはオケによる明るい締めくくり。しみじみ素敵で、ずっと聴いていたい演奏でした!なおカーテンコールではバーメルトさんとケフェレックさんが手を取り合い、会場はひときわ大きな拍手で包まれました。

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ケフェレックさん自ら口頭で曲名をお知らせくださり、ソリストアンコールへ。ヘンデル(ケンプ編)「メヌエット ト短調 HWV434 No.4」。オケ1曲目の作曲家の作品をチョイスする、小粋な演出。この演奏がまた素晴らしかったです!ぽつぽつと語るような左手の伴奏に、右手のメロディの切なさ美しさ!一つ一つの音を大切に紡ぐ演奏は、派手さも過剰な演出もなく、とても純粋な響きでした。こんなに少ない音で胸打たれるとは……私は思わず涙が。今の世の中の情報過多な状態にやや疲れていた身としては、いっそう心に沁み入りました。聴けて本当によかったです。ありがとうございました!

ちなみにソリストアンコール後のカーテンコールでは、ケフェレックさんは何度もバーメルトさんを呼びましたが、バーメルトさんは舞台に戻ることはありませんでした(私の座席位置から舞台袖でのやり取りが見えてしまったので……)。またケフェレックさんがオケメンバーに起立を促しても、メンバーは着席のまま。盛大な拍手はソリストのみへ、という配慮だったのかもしれません。でもちょっとお気の毒(笑)。しまいには、んもう!といった感じで鍵盤のフタを閉じたケフェレックさん。チャーミングな振る舞いに、客席が和みました。素晴らしい演奏はもとより、お人柄の良さまで!私はすっかりケフェレックさんのファンになりました。ぜひまた札響との協演にいらしてくださいね。お待ちしています!


後半はシューマン交響曲第3番「ライン」。バーメルトさんは暗譜でした。勢いのある第1楽章は、華やかな冒頭に早速引き込まれ、少し切なさが垣間見える弦に心掴まれました。最初のテーマをホルンが歌ったのが壮大でカッコイイ!ロマンティックな木管が素敵!華やかな弦が、もう一段階上昇してさらに華やかな盛り上がりを作るのがインパクト大でした。この勢いこの多幸感!作曲家はこの曲を書くにあたりベートーヴェンの第3番を意識したという説がプログラムノートに書かれていましたが、高音が歌う多幸感と低音が効いた重厚感の合わせ技は、むしろベートーヴェンの第8番に近いイメージを個人的には感じました(素人の思いつきです)。堂々たる締めくくりも良かったです。穏やかな第2楽章、はじめの中低弦のメロディがとっても素敵!引き継いだ高音弦、続いて木管によるメロディも美しく、心穏やかになれました。弦はメロディのときはもちろんのこと、木管のターンではごく小さな音を刻む演奏で寄り添ったのも素敵でした。また個人的に印象深かったのはホルンです。牧歌的ではあっても、明るかったり少し影を見せたりと、登場する度に表情が異なる歌い方をしたのが新鮮!せせらぎのような第3楽章は、美しい木管から入り、高音弦のやさしい響きが素敵。コントラバスのピッチカートと、チェロのタリラリラ……という感じの下支えが、控えめなのにぐっと奥行きを作ってくれました。ピッチカートによるかわいらしい締めくくりも印象に残っています。荘厳な第4楽章、温かみのある音色で厳かに歌う金管群が素晴らしかったです!中でも、この楽章で初登場かつ通常より高い音域で歌ったトロンボーン!ホルンやトランペットとの重なりがとっても素敵でした。弦も音がキツくなりすぎず、やや深刻でもささやくように美しく歌ったのが心に染み入りました。終盤では金管木管も重なり、まるでオルガンのような響きに。そのまま続けて快活な第5楽章へ。勢いある弦の明るく流れるような演奏が爽快!しかし速度や強弱は一定ではなく、木管が歌うところで少し穏やかになる等の変化があり、生き生きとした流れでした。また金管は前の楽章とは雰囲気が変わり、華やかで力強い!個人的にはティンパニの鼓動に乗るトランペットのファンファーレとホルンが高らかに歌ったところが印象に残っています。そしてクライマックスの金管オールスターズによる堂々たる響きが最高でした!演奏は明るくパワフルに締めくくり。バーメルトさんの十八番(きっとそうですよね?)は、とても気持ちの良い演奏でした。ありがとうございました!8月のブラームスも楽しみにしています!



バーメルトさんは、この日の1週間前に開催された「札響えべつコンサート2022」(2022/05/22)にもご出演。前半はモーツァルト、後半はシベリウスでした。特にシベリウスでは、清廉で美しいだけでなく、情熱的で感情が湧き上がる力強さが感じられ、マエストロの新たな一面を発見しました。

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2022年1月に開催された「札幌交響楽団 第642回定期演奏会」(土曜夜公演は2022/01/29)では、シューマン交響曲第2番が取り上げられました。東京公演にも同じ布陣で臨んだ気鋭のプログラム。しかし当初予定されていたバーメルトさんの来日が叶わず、指揮者は当時来日中のユベール・スダーンさんへ交代。この公演を聴いて以来、私にとってシューマンは、「ものすごく好き」とは言えないけれど気になって仕方が無い存在になりました。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

札響えべつコンサート2022(2022/05) レポート

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毎年恒例の札響えべつコンサート。ここ数年はコロナ禍のため中止や延期が続いていましたが、今回(2022年度)は当初の予定通りかつ人数制限なしで無事開催されました。そして今回の指揮は、なんと半年ぶりの来日が実現した札響首席指揮者のマティアス・バーメルトさん!札幌より一足先に、お隣の江別に登場です。お久しぶりのバーメルトさんに早く会いたい!ということで、私は札幌からプチ遠征することに。ちなみに今回、私にとっては3年ぶりの札響えべつコンサートでした。

当日の会場は9割以上の席が埋まっている盛況ぶり。またプログラムと一緒に、えべつ楽友協会による会報誌「がくゆう倶楽部」が配布されました。丁寧なコンサートレビューには、地元で開催される演奏会と音楽への愛情が感じられます。なお公式サイト(この記事の一番上にリンクがあります)にて電子版が公開されていますので、皆様ぜひご一読を!


札響えべつコンサート2022
2022年5月22日(日) 14:00~ 江別市民会館

【指揮】
マティアス・バーメルト

管弦楽
札幌交響楽団(ゲストコンサートマスター:須山暢大)

【曲目】
モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」序曲
モーツァルト:セレナード第13番「アイネ・クライネ・ナハトムジーク
シベリウス交響曲第2番

(アンコール)シベリウス:悲しきワルツ


慣れ親しんできた札響による定番曲の演奏で、こんなに胸打たれるとは、うれしい誤算でした。プチ遠征して本当によかったです!バーメルトさん流の強弱がはっきりして各楽器の個性が際立つ演奏は、今回のえべつでも健在。さらに今回は、清廉で美しいだけでなく、情熱的で心の奥底にあるドロドロした感情や湧き上がる力強さも感じられました。特に後半のシベ2が素晴らしかったです!バーメルトさんの新たな一面を発見!また、ダイレクトに音が来る会場にて、シャープな高音もうねる低音も金管打楽器の力強さも、聴き手の私達はそのままの形で楽しめました。バーメルトさんと団員の皆様は、限られた準備期間で、この日の会場での最適解を見つけ形にしてくださったのだと思います。ありがとうございます!どんな場所でもベストな演奏ができるのは本当に素晴らしいです。特に地方公演の場合は、その時の演奏がオーケストラ初体験だったり年に一度きりだったりするお客さんは多いと思われます。そのような会場ではなおさら一期一会の出会いは大切。そして今回のえべつでは、熱量高い演奏に客席が熱くなっているのが感じられたので、地元の皆様にもきっと喜んで頂けたのでは?

なお今回は、ゲストコンサートマスターに大阪フィルの須山暢大さん、ゲスト首席フルート奏者にN響の甲斐雅之さんはじめ(ツイッターで教えて頂きました。ありがとうございます!)、多くの客演奏者のかたが入ってくださいました。また首席が降り番のパートでは主に副首席がトップを務められました。いつもとは少し違うチームによる演奏を聴くのは、主催公演以外の演奏会での密かな楽しみだったりします。そして今回のチームも、各パートやソロ演奏での見事な仕事ぶりはもちろんのこと、バーメルトさん指揮の下での一体感と情熱が感じられる素晴らしいチームでした!


団員の皆様、続いて指揮のバーメルトさんが入場し、バーメルトさんはコンマスと握手。すぐに演奏開始です。1曲目はモーツァルトの「フィガロの結婚」序曲。弦とファゴットによる出だしから、木管とホルンに続いて弦による華やかな盛り上がり!初めから気分があがります。木管のターンで弦がごく小さな音からクレッシェンドして主役に躍り出る等、緩急や強弱のメリハリある演奏に、これぞバーメルトさん!と私はうれしくなりました。流麗な音楽に、リズム良くパン!とアクセントが入るのが気持ちいい。低弦が主役になる力強いところや多幸感あふれるフルートが素敵なところ等、短い曲でも内容は盛りだくさんで楽しく聴けました。フィナーレで快活にリズムを刻むティンパニとトランペットも印象的でした。

2曲目はモーツァルトアイネ・クライネ・ナハトムジーク。弦のみでの演奏です。超有名曲にもかかわらず、全楽章フルで生演奏を聴く機会は意外に少なく、私も今回が初めてでした。第1楽章、キャッチーで華やかな出だしから掴みはOK!メロディの高音弦も下支えの低弦も素敵!堂々としたところと囁くようなところの強弱の変化はさすがです。また生き生きとした音楽の流れの中での役割交代がごく自然で、例えば1stヴァイオリンから2ndヴァイオリンにメロディが移ったときに、1stがさらっと音を刻む演奏にシフトした流れが見事でした。あとは、一通り終わったと思った後、最初に戻って繰り返されたことに少しだけ驚きました(間違っていたらごめんなさい)。私は繰り返しナシの演奏になじんでいたのですが、繰り返しアリが本来の姿なのかも?第2楽章、はじめのゆったりしたところのテンポが心地よく、美しい音色に聴き入りました。そして中盤、テンポが速くなり雰囲気がガラリと変わった(短調に?)ところの演奏が大変素晴らしく、強く印象に残っています。ひたすら明るい曲の中にふと影を落とすこの部分で、全体がぐっと輝きを増したように感じました。第3楽章は、ステップを踏んだり優雅に踊ったりするような、美しい音色での素朴な舞曲が素敵でした。再び速いテンポになる第4楽章では、細かな音の刻みがウキウキしているイメージに感じられました。ただ音楽自体は滑らかに繋がって美しく流れている印象。ずっと高音が主役なのに、低音が効いたところが一度だけ出てくるのが個人的にツボでした。明るく美しい音楽は快活に締めくくり。とっても素敵な演奏でした!やっぱり私は札響の弦が好き!


後半はシベリウス交響曲第2番」。第1楽章、冒頭のごく小さな音から始まり次第に浮かび上がる弦が、清涼で壮大で素敵すぎて、最初から鳥肌が立ちました。名演奏になる予感!弦ピッチカートに乗ってスキップするような木管とホルンが心に染み入り、私は早くも涙が。1stと2ndのヴァイオリンの透明感ある美しい響き!ここに中低弦が重なると深みが増して更に素敵!バーメルトさん流の強弱がはっきりした演奏から、美しいだけでない感情のうねりが感じられました。続く第2楽章がまた素晴らしかったです。はじめティンパニに導かれ、コントラバスとチェロが交互にピッチカート。もうこれだけで大満足な私(←まだ早い)。ここに重なるファゴットの深みある音色での歌が胸に来て、後から加わった他の木管の哀しげな音色も印象的でした。弦と木管による感情の高まりに続いた、金管がすごく良かったです!音がダイレクトに来るこのホールで、このパワフルさ重厚さ!強弱の波を作りながらの絶妙なバランスでのまさにここでしか聴けない響きが最高でした。来ました、蜂の大軍のような、うなる弦!重なるコントラバス(2回目の時は低音金管)の重低音が超カッコイイ!トランペットソロと続くフルートの哀しげな響きがとっても素敵。中低弦が効いたところに弦の高速演奏にと、クールなのに熱量高い、聴き所しかない演奏にはずっと夢中になれました。第3楽章、はじめの不穏な雰囲気での速い音楽の流れにゾクゾク。強弱や速さが細かく変化する演奏が素晴らしかったです。勢いがピタッと止まったシメも見事でした。対照的にゆったりとなったところでは、オーボエがメインとなる木管群の歌が美しい!一瞬重なる独奏チェロも素敵でした。オケ全員参加の演奏はエネルギーを溜めながら少しずつ上昇していき、そのままフィナーレの第4楽章へ。清々しさ高揚感、ああやっぱりイイですね!こう来るとわかっていても(実はよくわかっていないのかも?)、私は自然と涙が。華やかな金管がカッコイイ!ティンパニと低音のうねり、高音のメロディが明るいのにどこか哀しげで心に染み入りました。中低弦に下支えされ、木管が順番に哀しく歌ったところが素敵。中でもクラリネットの低い音での演奏がとても印象に残っています。弦の美しいメロディに、重なるコントラバス木管、パワフルな金管。この感情のうねり熱量の高さ!そしてフィナーレでは、弦の音の刻みに乗ってコントラバスがメロディを弾き、力強いティンパニ金管インパクト大!全員参加による清々しいラストが最高に気持ちよかったです。この日この会場だけの特別なシベ2、聴けて本当に良かった!

カーテンコールの後、アンコールの演奏へ。ああこの曲は……シベリウス「悲しきワルツ」!名曲シリーズ「バーメルトとワルツを」(2021/11/27)で私が一目惚れした曲です。再びバーメルトさんと札響による演奏で聴けるなんて!と、私は心の中で大喜び。先ほどのシベ2は明るさの中に哀しみがあるのに対し、「悲しきワルツ」は哀しみの中にかすかな明るさが垣間見えるように私は感じました。美しく澄んだ音色で、まるで独白のように歌う弦がとにかく素敵!またこれはホールの響きのためかもしれませんが、kitaraでの演奏よりは今回少し音が大きめだったかも?弦が一瞬ウィンナ・ワルツのように明るくなったところに、華やかなフルート&クラリネットが登場!一緒に踊る(?)弦が、今度は音量を上げて切なく妖しげな響きになったのが強く印象に残っています。宴が終わったのか、最後はヴァイオリン数台の演奏で消え入るような締めくくり。なぜかぞわっとなった、静かなのに鮮烈な印象のラスト。短い曲なのにすごくドラマチックな演奏で、とても引き込まれました。シベリウス最高!バーメルトさん、札響の皆様。普段とは違う環境において、ここでしか聴けない最高の演奏をありがとうございました!札幌での定期演奏会も楽しみにしています!


前回のバーメルトさん来日&札響との演奏はこちら。「札響名曲シリーズ 森の響フレンド名曲コンサート~バーメルトとワルツを」(2021/11/27)。今回アンコールで取り上げられたシベリウス「悲しきワルツ」をはじめ、演目はすべてワルツ!バーメルトさん流の強弱のメリハリがあって各楽器の個性が際立つ澄んだ響きで、バラエティ豊かなワルツを楽しめました。

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なお、名曲シリーズ「バーメルトとワルツを」のライブ録音はCD化されています。「The Waltz 夢幻∞ワルツ」、とっても素敵ですので超おすすめです♪以下のリンク先で試聴できます。

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この日の約1週間前に聴いた「札響名曲シリーズ 森の響フレンド名曲コンサート~ようこそマエストロ川瀬!」(2022/05/14)。楽しく物語の世界に浸れた音楽劇2つに、ラドヴァン・ヴラトコヴィチさんのホルンに魅了された協奏曲。そして各楽器の職人技が光るボレロではオケの魅力を堪能しました。ちなみにボレロにてスネアドラムを見事な職人技で演奏されたのは、今回のえべつでティンパニを担当された札響副首席打楽器奏者の大家和樹さんです。

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ブラームスを愛してやまない私が、初めて泊まりがけの遠征をした「仙台フィルハーモニー管弦楽団 第355回定期演奏会(金曜夜公演)」(2022/05/06)。指揮・飯守泰次郎さんのフィナーレ第1弾!ソリスト菊池洋子さんのピアノは若き日のブラームスそのもので、私はようやくピアコン1番の良さに気づけました。マエストロとの信頼関係が窺えるブラ4の重厚感と歌心も素敵でした。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

札響名曲シリーズ 森の響フレンド名曲コンサート~ようこそマエストロ川瀬!(2022/05) レポート

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2022年度最初の名曲シリーズに、4月から札響の正指揮者となった川瀬賢太郎さんが登場です。代役での登板となった先月のhitaru定期(2022年4月)に引き続き、ようこそようこそマエストロ!また昨年コロナ禍で来日が叶わなかったホルン奏者のラドヴァン・ヴラトコヴィチさんと札響との協演が今回ようやく実現しました。注目の出演者と、子供達にも親しみやすい演目のおかげか、会場は9割程の席が埋まっていました。


札響名曲シリーズ 森の響フレンド名曲コンサート~ようこそマエストロ川瀬!
2022年05月14日(土)14:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
川瀬 賢太郎(札響正指揮者2022年4月~)

【ホルン】
ラドヴァン・ヴラトコヴィチ

【ナレーション】
駒ヶ嶺 ゆかり

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島高宏)

【曲目】
ラヴェル:「マ・メール・ロワ組曲
プロコフィエフピーターと狼(ナレーション付)

R.シュトラウス:ホルン協奏曲第1番
ソリストアンコール)メシアン:峡谷から星たちへ...より 恒星の呼び声

ラヴェルボレロ
(アンコール)ビゼー:「カルメン」より"トレアドール"


豪華4本立ての演目とソリストアンコールにオケのアンコール。盛りだくさんな内容はいずれも大変素晴らしい演奏で、気分爽快になれました!明るく視界が開けるような響きは、まさに今の新緑の季節にぴったり。前半の子供向け音楽劇2つは、多彩な音色で情景や動きが感じられ、楽しく物語の世界に浸れました。また指揮者が牽引し奏者お一人お一人が職人技で緻密に各パートの音を重ねていくボレロでは、オーケストラの良さを堪能。そしてラドヴァン・ヴラトコヴィチさんとの協演が最高でした!ヴラトコヴィチさんのホルンは、「スケール大きい」とか「豊か」とかありきたりの言葉では足りない、初めて聴く人をも一瞬で虜にしてしまう魅力がありました。素人コメントで申し訳ないのですが、金属を鳴らす音ではなく、体温を感じる生きた人の声のようにも私は感じ、とても心地かったです。聴けて本当によかった!指揮の川瀬さんはヴラトコヴィチさんのことを「神様」と仰っていましたが、世界的な演奏家を迎えて見事な協演ができる札響と川瀬さんもまた「神」です。いずれの演目も、川瀬さん指揮による演奏は、思い切りの良さに加えて細かなニュアンスの変化も感じられる素晴らしいものでした。マエストロの指揮の導きに添ってオケの演奏が変化するのを目の当たりにし、札響との信頼関係が生まれていることを実感。これからきっと長いお付き合いとなる指揮の川瀬さん、改めまして我が町のオケにようこそ!これからの演奏も楽しみにしています!


名曲シリーズでは、本年度から開演前のプレトークが始まりました。今回のトーク担当は指揮の川瀬さん。「ようこそマエストロ川瀬!」という演奏会タイトルを「小っ恥ずかしい」(!)と正直にぶっちゃけて、会場が和みました。正指揮者就任後、今回が本来の初登場となる予定だったものの、(先月hitaruで代役を務めたので)2回目です、とのこと。今回のプログラムについては「オーケストラの魅力、楽器の魅力」を味わって欲しいと仰った上で、各曲についてもお話されました。「マ・メール・ロワ」は、楽器の組み合わせで色の移り変わり・グラデーションを札響と作ったのだそう。「ピーターと狼」について、プロコフィエフは動物を描くのが上手で、配役が適材適所、性格まで想像できる。オペラのようにすべてが有機的に繋がっている分、演奏が崩れると現実に引き戻されてしまうとか。また川瀬さんは、「ホルン協奏曲」ソリストのラドヴァン・ヴラトコヴィチさんのCDを子供の頃から愛聴していらしたそうです。ヴラトコヴィチさんはまさに神様のようで、彼の身体から音楽が生まれている――と、リハでの印象はかなりの好感触だった様子。そして「ボレロ」は、オーケストラの楽器を隅々まで味わえる曲で、札響の魅力を隅々まで味わって!といったお話でした。


団員の皆様、続いて指揮の川瀬さんが入場し、すぐに演奏開始です。1曲目はラヴェルの「マ・メール・ロワ組曲。子供達のために、様々な童話を音楽で描いた作品。元々はピアノ連弾曲ですが、今回取り上げられたのは管弦楽の魔術師ラヴェル自らによる管弦楽編曲版です。ちなみに私は2021年3月に尾高さん指揮の札響定期でも聴いています。その時は丸腰で臨み、音の響きそのものを楽しみました(これもアリだと私は思います)。しかし今回は物語の内容を少しだけ予習してきたため、どのシーンの演奏なのかを想像しながら聴くことができました。「眠りの森の美女パヴァーヌ」では、神秘的な木管と澄んだ音色の弦が素敵。「おやゆび小僧」は、薄暗い森の中のような弦に、道なき道を行く子供達は木管群。中でもオーボエイングリッシュホルンがおやゆび小僧との理解でOKでしょうか?オーボエイングリッシュホルンそれぞれのソロは、ほの暗さがありながらも前向きな感じ。また、コンマスがソロで鳥の鳴き声のようなキュイキュイ♪という音を奏でたのと、ラストのオーボエの余韻も素敵でした。「パゴダの女王レドロネット」は、華やかでエキゾチックな中華風の音楽が新鮮。ホルンから始まり管楽器が順番にメロディを演奏したところが壮大で、大蛇のイメージが浮かびました。「美女と野獣の対話」では、美しい序奏の後に登場した重低音の木管コントラファゴット?)がインパクト大!これが野獣のイメージでしょうか?重なる低弦も妖しげな効果を倍増させてくれました。対するハープや木管が美女?重なる高音弦が不安そうな雰囲気でした。オケの音の盛り上がりは二人の間の緊迫感のよう。そしてラストのコンマスソロとチェロのソロがとっても素敵!野獣が王子の姿に戻った、ここはやはりチェロですよね!終曲「妖精の園」は、まず冒頭の繊細な弦アンサンブルにぐっと引き込まれました。コンマスソロと今度はヴィオラのソロが登場。美しい!眠りの森の美女は王子のキスで目を覚まし、オケの華やかな演奏で締めくくり。ハッピーエンド!様々な物語を描いた、多彩な音色によるカラフルな演奏はとっても楽しかったです!


続く2曲目のプロコフィエフピーターと狼も子供向けの音楽物語です。ナレーションはメゾソプラノ歌手・駒ヶ嶺ゆかりさん。聴きやすい落ち着いた語り口でした。まずは登場人物の紹介。各楽器は、それぞれのテーマ(ライトモチーフ?)を演奏して自己紹介しました。小鳥(フルート)、アヒルオーボエ)、猫(クラリネット)、おじいさん(ファゴット)、は楽器1台ずつ。そして3台のホルンによる狼が、不気味な感じでありながらもクールでカッコイイ!私、この狼になら食われてもいい(真顔)。狩人たちは大音量のティンパニと大太鼓。銃のイメージでしょうか?ピーターは弦楽器たち。品の良い響きで、育ちがよさそう。ナレーションでストーリーは全部わかるシステムですが、テーマの演奏に細かな変化を付けてあったことで各登場人物の振る舞いが生き生きと感じられました。例えばピーターのテーマを1stヴァイオリンだけでなく2ndが演奏したり(その間1stはスキップするような伴奏)、低弦が力強く入ったり、おじいさんと会話するときは少しトーンを落としたりと、動きや心情の細やかな変化を表現。また、小鳥とアヒルの口喧嘩が楽しく、スペシャルごはん(小鳥)を狙う猫はなんだかコミカルで憎めない感じ。不気味な音色で忍び寄る狼には、ぞわっとしました。みんな逃げて!のんびり屋のアヒルが精一杯急いでいる様がオーボエの演奏から伝わってきました。結局アヒルが狼にひと飲みにされてしまい(オケの演奏がスリリングでした)、ピーターは狼を生け捕ることに。ピーターの作戦で小鳥が狼を挑発するとき、小鳥役のフルートが速いテンポでピーターのテーマを演奏したのが面白かったです。狼の捕獲成功。狩人が現れた!でも「撃たないで!」とピーターは懇願。優しい世界。動物園へ向かう行進は全員が一緒で、ピーターのテーマをオケ全体が壮大に演奏したのがとっても素敵!ついてきたおじいさんは、ぶつぶつ文句言っているのに、ファゴットのまるい音色にピーターへの愛情が感じられました。そして物語のオチは、狼のお腹の中にいるアヒルの台詞「ここはどこ?まあ、いっか……」。まずい、このままじゃアヒルは消化されて狼の養分になっちゃう……?ちなみに、昨年度に札響が演奏した際は、狼に吐き出させる結末だったらしいです。楽譜によって色々あるのかも?いずれにしても、今回の演奏は登場人物のキャラクターが際立ち、またテンポ良いストーリー展開のおかげで、大人の私も子供向け音楽劇に夢中になれました。


後半1曲目はソリストのラドヴァン・ヴラトコヴィチさんをお迎えして(指揮者・コンマスとは握手で挨拶されました)、R.シュトラウス「ホルン協奏曲第1番」。作曲家が18歳で書いた曲は、後年の管弦楽作品の大編成とは異なり、基本的な2管編成。全3楽章を切れ目無く演奏するスタイルでした。オケのパワフルな冒頭に続いて登場した独奏ホルン!スケールの大きさに加え、包容力や温かみも感じられる音色に私は一瞬で引き込まれました。この特上の響きはずっと聴いていられる!華やかで壮大なオケと交互に登場する独奏ホルンは、力強く歌う中にも歌曲のような柔らかさやふと寂しげな表情を垣間見せたのが印象に残っています。特にチェロ2台と会話するような、独奏ホルンの繊細な演奏が素敵すぎました!チェロの音をかき消さないようにホルンは音量を下げているにもかかわらず、ささやくように歌うのがとても良く響いて、チェロの音色と絶妙に溶け合っていました。続けてその柔らかい響きの独奏ホルンに寄り添ったオケが、独奏ホルンとシンクロして一緒に盛り上がった流れも素晴らしかったです。中盤の、ほの暗い独奏ホルンと木管群の会話するようなやり取りも素敵でした。そして音量下げたオケをバックにして歌った独奏ホルンがすごく良かったです!かなり息が長いのに、途切れることなく流れるように、切なく美しい音色での演奏を聴かせてくださいました。再び明るくなってからの、清々しいオケと視界が開けるような独奏ホルンは聴いていて気持ちが良かったです。ラストはオケと一緒に独奏ホルンの堂々たる響きで締めくくり。ホルンの豊かな響きを堪能できた、素晴らしい演奏でした!

カーテンコールの後、ヴラトコヴィチさんがマイクなしでご挨拶。声がよく通り聴きやすいお話でしたが、英語で話されたため私には細かい内容はわかりませんでした(ごめんなさい!)。ソリストアンコールメシアン「峡谷から星たちへ...」より 恒星の呼び声。電波が乱れているようなガーピーといった音や、扇風機に向かって「ワレワレハウチュウジンダ」と言っているような(例えがひどい)ガラガラした音、モールス信号のような途切れ途切れな音……。特殊奏法によるホルンのユニークな音色の数々、私は初めて耳にするものばかりでした。それをさらりと演奏できるヴラトコヴィチさん、やはりすごいお方です!交信が途絶えたような、静かに消え入るラストも印象的でした。先ほどの協奏曲の優等生的な音色とは全く違う、個性的な音色が聴けて楽しかったです。スケールの大きな協奏曲から難易度が高いアンコール曲まで、「神様」の形容がふさわしい唯一無二の演奏をありがとうございました!

プログラム最後の曲は、ラヴェルボレロ。同じラヴェルでも前半のマメロワよりさらに多彩な楽器が入る大編成です。メインのスネアドラムは2ndヴァイオリンとチェロの間、指揮者の真正面に配置されました。ちなみに終盤で援護射撃に入るサブのスネアドラムは、舞台向かって左奥のハープの後ろに配置。この曲の要となるスネアドラムは実に見事な仕事ぶりでした!ごく小さな音から始まりゆっくりとクレッシェンドしながらずっと同じリズムを刻み続ける様は、まさにラヴェルの神髄である時計職人のよう。終盤に重なったサブのスネアドラムも、メインと驚くほど完全にシンクロしていました。なお私がスネアドラムと同じ位に注目していたのは、メインのスネアドラムの隣にいたチェロです。他の弦は後から入ってきて比較的早くメロディに移りますが、チェロは最初からピッチカートで参戦しメロディに移るのも最後。ひたすらピッチカートのためか、チェロ奏者の皆様は弓を床に置いていました(!)。またヴァイオリンとヴィオラは、ピッチカートの際は楽器をギターのようにお腹の前に構えて演奏していたのが印象的でした。このスネアドラムと弦ピッチカートが刻む職人技のリズムに乗って、順番にメロディを演奏する各楽器がいずれも素晴らしかったです。どの楽器もそれぞれ個性的な音色が素敵でしたが、いくつか例をあげると、先陣を切ったフルートはいつもより低い味わい深い音色で掴みはバッチリOK!いつもより高い音程で登場したファゴットは「ピーターと狼」の低音とはまるで違う都会的な雰囲気だったのが印象に残っています。ハモる役目では、他楽器とあえて調が違う演奏をするピッコロの重なりが良かったです。倍音の効果って、もしかしてオルガンのような奥行きが作られることでしょうか?メロディへ参戦する楽器が徐々に増えていくに従って、聴いている私達の気分も少しずつ上昇。チェロ奏者の皆様が一斉に身をかがめて弓を手に取り(!)、盛り上がりに加わったのも見届けました。そして大音量となったオケが転調でさらに高みへ上ったのが超カッコ良くて、私達のテンションも最高潮に。クライマックスは、ドラやシンバル等の打楽器群が強烈なインパクト、低音管楽器群のパワフルさで、ド派手な盛り上がり!ラストのみのメロディで(スネアドラムも最後だけ違うリズムを刻みました)、オケ全員参加による全力のビシッとした締めくくりが気持ちよかったです。これぞオーケストラの醍醐味!とっても楽しかったです!

ボレロの興奮冷めやらぬ会場は拍手喝采。カーテンコールの後、会場が熱量高い状態のままアンコールの演奏へ。アンコールビゼーの「カルメン」より トレアドール。最初からテンションモリモリMAXな演奏が超楽しい!先ほどのボレロとカラーが異なる、1,2,1,2のリズムでスピード感ある音楽はとても新鮮な気持ちで聴けました。中盤の弦が美しくメロディを奏でるところも素敵。音楽は再び盛り上がり大迫力のまま締めくくり。札響の皆様、マエストロ川瀬、大好きです!今後の演奏も楽しみにしています!


指揮の川瀬賢太郎さんがご出演された「札幌交響楽団 hitaruシリーズ定期演奏会 第9回」(2022/04/14)。私が守備範囲外の幻想交響曲に期せずしてドハマリした、記念すべき出会いでした!ラヴェルのピアコンはピアノが緩急つけて高音低音を自在に行き来し、オケと息のあった掛け合い。豪華な演目を気合いの入った演奏で聴けた、幸先の良い新体制・新年度のスタートでした。

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R.シュトラウス交響詩英雄の生涯」が聴けた「札幌交響楽団 第644回定期演奏会(土曜夜公演)」(2022/04/23)。指揮は川瀬さんの師匠である広上淳一さん。「英雄の生涯」は、驚きの一体感の大編成による壮大な物語の世界。新コンマス会田さんのソロと各パートの掛け合いは素晴らしく、ラストが圧巻!またベートーヴェンのピアコン第3番に胸打たれ、意欲的な武満作品に札響の底力を再確認しました。

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