自由にしかし楽しく!クラシック音楽

クラシック音楽の演奏会や関連本などの感想を書くブログです。「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ(http://nyaon-c.hatenablog.com/)」の姉妹ブログです。

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新進演奏家育成プロジェクト~オーケストラ・シリーズ 第68回札幌(2023/01) レポート

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文化庁による新進演奏家育成プロジェクト。今回の演奏会では、オーディション(2022年10月3日に実施)にて選ばれた若手演奏家5名(うち2名は札響メンバー)が札幌交響楽団と協演しました。ちなみに私が新進演奏家育成プロジェクトのオーケストラ・シリーズを聴くのは、2021年の第58回札幌に続いて2回目です。昨年(2022年の第66回札幌)は都合が付かず見送ってしまったので、今回久しぶりに聴けるのを楽しみにしていました。

出演者のかたならびに関係者の皆様におことわりです。弊ブログは素人が趣味で思いつきを書いているだけのものです。今回のレポートも勘違いや大事なところの見逃し等が多々あると思われます。おそれいりますが、私の勝手な感想についてはどうぞ真に受けずに聞き流して頂けましたら幸いです。


新進演奏家育成プロジェクト~オーケストラ・シリーズ 第68回札幌
2023年01月29日(木)15:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
現田 茂夫

【共演】
赤間 さゆら(ヴァイオリン) ※札響ヴァイオリン奏者
金井 知那実(ソプラノ)
外川 莉緒(サクソフォン
福島 さゆり(フルート) ※札響フルート奏者
安藤 有佳(ピアノ)

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島 高宏)

【曲目】
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲ホ短調
マスネ:歌劇「ル・シッド」より“泣け、我が瞳よ”
グラズノフ:アルト・サクソフォンと弦楽オーケストラのための協奏曲
イベール:フルート協奏曲
サン=サーンスピアノ協奏曲第2番


豪華な協演を一度に5つも聴けて幸せです!5名の若手演奏家の皆様は、kitaraで札響と協演するという大変なプレッシャーに打ち勝ち、素晴らしい演奏を聴かせてくださいました。今の北海道には今後が楽しみなお若い演奏家がこんなに大勢いらっしゃることを私は強く実感し、とても感激しました!しかし私がそれをはっきりと認識したのは終演後のこと。5名の皆様の演奏はいずれも札響と対等に渡り合う、大変レベルの高いもので、その時は「お若くてこれからの人たちだから」なんて先入観はいつの間にか消えてしまっていたほど、純粋に夢中になっていました。ひいき目や掛け値なしで、演奏そのものを楽しめたのが本当にうれしかったです。今回ご出演された若手演奏家の皆様よりもずっと年上の私ですが、できるだけ健康を保って、伸び代ある皆様のこれからの演奏をぜひ聴かせて頂きたいと思いました。そして、信頼する私達の札響の演奏は今回も素晴らしく、安心して聴くことができました。手加減はしない真摯な演奏をしつつ、ソリストとオケの呼応だったり攻守交代だったりの流れはスムーズ。指揮の現田さんとオケは、素人目にはそう感じさせないところで、ソリストの呼吸や勢いに合わせてテンポや強弱を細かく変化させ、さりげなくソリストを盛り立てていたのかなと拝察します。ありがとうございます!来年以降の新進演奏家育成プロジェクトのオーケストラ・シリーズも楽しみにしていますので、どうぞよろしくお願いします!

前半、はじめはヴァイオリンの赤間さゆらさんによるメンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲 ホ短調。オケは2管編成にティンパニという基本的な編成でした。また、(作曲家の指示通り)全楽章を続けての演奏でした。第1楽章、ティンパニが印象的なオケに導かれて独奏ヴァイオリンが登場。高音の哀愁あるメロディがすっと心に染み入り、私は最初から演奏に気持ちを預けることができました。流麗な流れの中、重音で音階を上るところがカッコイイ!木管群を引き継いでメロディを奏でた独奏ヴァイオリンがとても美しかったです。ゆったりに見えて実はとても音が多いところも、丁寧かつ滑らかに演奏されていたと感じました。そしてカデンツァがすごい!振り切った高音やぐっと深みのある低音はもちろん、研ぎ澄まされた音すべてにインパクトがあって、赤間さんオリジナルの音をじっくり味わうことができました。楽章締めくくりに向かって加速していく流れは、ソリストもオケも一歩も譲らないものすごい気迫!オケの木管群がそのまま音をのばし、第2楽章へ繋がる流れがお見事でした。ゆったりと歌う独奏ヴァイオリンの幸せな感じにうっとり。続くオケのターンで明るさに影が差してからの、独奏ヴァイオリンが素晴らしかったです。哀しげなメロディと伴奏をお一人で歌うようにかつよどみなく演奏。なんて素敵なんでしょう!五感に訴えかけてくる艶やかな音に酔いしれました。ゆったりした流れに一呼吸置いた後、独奏ヴァイオリンが弦楽合奏に乗って寂しげに歌ったところも印象に残っています。金管ティンパニの華々しい幕開けからの第3楽章は、軽やかに駆け抜ける独奏ヴァイオリンが楽しそうで(演奏自体は難しいと思われますが)、聴いている私も幸せな気持ちに。オケと交互に演奏するところは息ぴったりで、リズム感が心地よかったです。クライマックスでは、壮大なオケをバックに、だんだんと音が増えどんどん加速していく独奏ヴァイオリンの凄技に見惚れました。ラストの音階の駆け上りが超カッコイイ!誰もが知る名曲を、ご自身の音で見事に弾ききって、聴き手を魅了した素晴らしい演奏でした!先陣を切った赤間さんのクオリティの高い演奏を聴いて、私はこの後に続く4名の演奏への期待がさらに高まりました。

ソプラノの金井知那実さんによるマスネ「歌劇『ル・シッド』より“泣け、我が瞳よ”」。オケは1曲目より金管群が増え、ハープも加わる大編成に。クラリネット・ソロが大活躍で、ソプラノが沈黙している時はクラリネットが高らかに歌い、またソプラノが歌う際にはオーボエが影となり寄り添っていました。楽器が増えた以上に壮大な響きになっていたと個人的には思います。しかしこの豪華なオケ以上にソプラノが素晴らしかったです!ほの暗いクラリネットとオケの前奏に続いてソプラノ登場。(演出として)独白のような登場だったにもかかわらず存在感抜群で、会場の空気が一変したと感じました。短い演奏時間の中で、オケとシンクロして陰鬱なところから感情が大きく盛り上がるところまで、表現の幅は広く、細やかな感情の変化が感じられました。全体的に哀しげな雰囲気の中、チェロから始まり高音弦が続く流れのところで、ソプラノの歌声が一瞬光が差したように明るくなったのが特に印象に残っています。クライマックスでは、大音量オケのさらに上を行く、ソプラノの意思あるお声がすごい!メソメソしていない、ヒロインの強さが感じられる演奏に惚れ惚れ!そして演奏後のお辞儀も良かったです。カーテシーというのでしょうか?背筋は伸ばしたまま膝を曲げ、手でスカートの裾を軽く持ち上げるスタイル。日本ではなかなか見かけない、西洋文化圏での所作をスマートに行っていらしたのが素敵でした。説得力あるお声とこの堂々たる所作、オペラの舞台でとても映えることでしょう!

サクソフォンの外川莉緒さんによるグラズノフ「アルト・サクソフォンと弦楽オーケストラのための協奏曲」。単一楽章の曲で、オケは弦のみの編成。美しい弦の序奏に続いて登場した独奏サクソフォンの、パワフルかつ温かな音色に引き込まれました。独奏ヴィオラと会話するようなところがロマンティック!音域と音色の相性がぴったり合っていると感じました。また、独奏サクソフォンがリズムカルに速いテンポで歌うところの弦ピッチカートや、独奏が次第に盛り上がる流れに弦もシンクロしていたのがとても印象的でした。まるで独奏サクソフォンがオケを導いているよう!中盤の、ゆったり歌う独奏サクソフォンが歌心あふれていてとっても素敵でした。優しい響きで寄り添う弦がまた良くて、独奏サクソフォンと今度は独奏チェロとの重なりがあったのが個人的にうれしかったです。カデンツァでは、音を刻みながら(タンギング?)次第にテンポが速くなる演奏に、明から暗へグラデーションで世界が変わったように感じられました。終盤に向かう流れでは、オケと呼応したり重なったりしながら次第に明るくなっていき、独奏サクソフォンは様々な奏法を披露しながら目まぐるしく変化。素人目からは息継ぎのタイミングがわからないほど、ずっとパワフルに歌い続ける独奏サクソフォンに圧倒されました。管楽器と打楽器がいない代わりに、独奏サクソフォンが温かな音色で歌ったり音の抑揚でリズムを作ったりと、一人で何役も演じながらオケを牽引。それを傍目からは難しさを感じさせず、軽やかに演奏されていました。クラシック音楽の基本編成にはいないサクソフォンが、自然にオケと溶け合いながらリードする!素晴らしいです!

後半、はじめはフルートの福島さゆりさんによるイベール「フルート協奏曲」。オケはトランペットが1つで他の管楽器は2つずつにティンパニ、そして弦でした。第1楽章、速いテンポで歌う独奏フルートが超カッコイイ!生き生きとした演奏に引き込まれました。またリズミカルに呼応するオケ、中でも独奏フルートと一緒に歌った木管群のナイスアシストぶりが印象に残っています。独奏フルートが力いっぱい吹ききって頂点に達した時の気迫がすごい!またその頂点でティンパニの強打がバッチリ決まったのが気持ち良かったです。ゆったりとした第2楽章では、独奏フルートの優しく美しい響きをたっぷり堪能できました。この日の福島さんの音は、いつものオケの一員としての音色よりさらに存在感ある美しさ!包み込むオケの澄んだ音色が、独奏フルートの美しさをより一層際立たせてくださいました。独奏フルートと、独奏チェロ、独奏ヴィオラ、独奏ヴァイオリンそれぞれとの語らいがとっても素敵!お互いが思い合うような響き、これは愛ですね!そしてジャズ風なリズムの第3楽章が個人的にとても楽しかったです。ジャン・ジャン・ジャン♪のリズムを刻むオケは、夜の都会(あくまで私個人のイメージです)のような華やかさ。そのオケに乗って、音を刻みながら速いテンポで歌う独奏フルートは、小粋なパリジェンヌを思わせるおしゃれな感じでとても魅力的!オケとシンクロして滑らかにメロディを奏でるところは、私の印象ではすごくノリノリで自然体でした。カデンツァでは、暗闇から次第に浮かび上がってきたような立体感ある響きが素敵!またカデンツァの終盤からオケがシンクロして一緒に盛り上げてくれた流れがすごく良かったです。明るく駆け抜けたラストが清々しい!多彩な響きの独奏フルートは、ホームのオケへ全幅の信頼を寄せた上で思いっきり伸び伸び演奏されていた印象で、聴いていてとても楽しかったです!

ラストはピアノの安藤有佳さんによるサン=サーンスピアノ協奏曲第2番。オケは2管編成にティンパニとシンバルが入りました。第1楽章、冒頭はピアノ独奏から。最初の重低音の和音からインパクト大!鐘の音を思わせる重厚で力強い響きが忘れられません。ほどなく登場したオケも大迫力!このオケと一緒に、深刻なところの力強さはもちろんのこと、穏やかなところでの主に木管群と重なるきらびやかな高音にも底力が感じられました。またカデンツァでは冒頭の重低音が再び登場し、そのインパクトにまたしてもやられれました。第2楽章、ティンパニに導かれリズミカルに始まったピアノが鮮烈な印象!前の楽章の深刻さとは違う、オケと一緒にスキップしているような楽しい響きが素敵でした。ピアノは貫禄がありながらも軽快で、まるで即興演奏のような自由さも感じられました。そして第3楽章、はじめの高速でうねるようなピアノにに圧倒されました!呼応するオケも、特に弦の音のうねりが素敵!オケの合間を駆け抜けていくキレッキレのピアノは一時の休みも無く、音が多い(トリル?)響きにゾクゾクしました。クライマックス直前には、再び冒頭の重低音を思わせるインパクト大の強奏が!この作品の要ではないかと思われる重低音がとにかくすごかったです。オケと一緒に全力で駆け抜けた締めくくりまで、熱量高い演奏に私はやられっぱなしでした。ドイツ系の重厚な交響曲にも匹敵する、力強く厚みのある音楽。トリにふさわしい圧巻の演奏でした!

カーテンコールの最後には、今回ご出演された5名の若手演奏家が全員舞台へ戻って来て、会場は拍手喝采に。ソリスト達が退場した後に会はお開きとなりました。今後飛躍していく皆様の、この日の演奏に出会えてうれしかったです。ハイレベルで素晴らしい演奏をありがとうございました!皆様のこれからのご活躍に期待大&今後の演奏会でお目にかかれるのを楽しみにしています!


札響メンバーは室内楽のコンサートでもご活躍です!今回は弊ブログの演奏会レビューから、ヴァイオリンの赤間さゆらさんがご出演されていたものをご紹介します。 ※もちろん以下の2つ以外にも数多くの演奏会に出演なさっています。

アンサンブルコンサート 愛と悲しみを謳ったロマン派時代の音楽家たち」(2022/12/16)。札響からは赤間さゆらさん(Vn)、鈴木勇人さん(Vla)、武田芽衣さん(Vc)がご出演。シューマンシューベルトの歌曲は、一つ一つが短いながらも完結した物語!ブラームスのピアノ四重奏曲第3番は、情熱的で血の通った演奏に、最初から最後まで夢中になれました。

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新進演奏家育成プロジェクト リサイタル・シリーズSAPPORO23 トリオ イリゼ・リサイタル」(2022/01/21)。札響の赤間さゆらさん(Vn)と小野木遼さん(Vc)、そして地元札幌でご活躍の水口真由さん(Pf)のピアノ三重奏団による演奏会。ロマン派のような感情が垣間見えたモーツァルトに、人知れず苦悩を抱えたメンデルスゾーン、そして朗らかで情熱的なブラームス。重厚な独墺プログラムの演奏は圧倒的な熱量で素晴らしかったです!

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

札響七飯公演(2022/12) レポート

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2022年の聴き納めは札響。開催地は札幌から遠く離れた七飯町です!北海道はでっかいどうの隅々まで出向く我が町のオケを追いかけて、一泊二日の遠征に行ってまいりました(今回も気持ちよく送り出してくれた家族に感謝です)。なお七飯町での札響の公演は2017年以来5年ぶりとのこと。また翌日には同じプログラムにて江差町でも公演が開催されました。

札響七飯公演
2022年12月26日(月)18:00~ 七飯町文化センター パイオニアホール

【指揮】
広上 淳一(札響友情指揮者)

【チェロ】
石川 祐支(札響首席奏者)

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島 高宏)

【曲目】
モーツァルトアイネ・クライネ・ナハトムジーク
ハイドン:チェロ協奏曲第1番

ベートーヴェン交響曲第7番

(アンコール)J.S.バッハG線上のアリア


真冬の北海道で超アツイ演奏!最高の一年の締めくくりになりました!私にとってはおなじみの札響による定番曲たちの演奏で、こんなにも楽しめたのは本当にうれしかったです。地方の会場にて普段コンサートを聴く機会が少ないお客さん達を前に、本気の大熱演を披露する――それを当たり前にやる札響はすごいと、私はしみじみ思いました。地元札幌、いえ地元北海道が誇れるオケ!なんて素敵なんでしょう!また、お客さん達がとても真剣に聴き入っていたのも印象に残っています。待望の地元開催で、この出会いを大切に思っているかたが大勢いらっしゃるのですね。私は会場の空気を肌で感じながら、自分はここ最近ここまで一生懸命になれていたっけ……と、供給過多かもしれない札幌で贅沢している我が身を省みたほど。そして今回の会場は、音響・視界ともに良好なとても良いホールだったのもよかったです。札響はどのような環境でも見事な演奏を聴かせてくださいますが、強弱のメリハリや繊細な音がキレイに響くホールなら、札響サウンドはより一層輝けるはず。地方のこんな施設をもっと活用して、助成も活かし、地方の皆様にリーズナブルにコンサートを楽しんで頂ける機会が少しでも増えるといいなと、私は勝手ながらそう思いました。

生命力あふれる大熱演のベト7、透明で美しい弦の本領発揮のアイネ・クライネ・ナハトムジーク。いずれも私は札響による演奏で何度も聴いてきた演目でしたが、今回の丁寧でメリハリがはっきりした演奏を聴き、改めてその良さを実感できました。そしてハイドンのチェロ協奏曲第1番です!おそらくチェロにとってはオーソドックスなレパートリーで、バロック期の薫りもするレトロなイメージ(あくまで個人的な印象です)のこの曲が、もう超素敵で超カッコイイ!独奏チェロは時にロックのようでも映画音楽のようでもあり、目の前で生み出される魅力あふれる音楽にホレボレしました。特にカデンツァでの自由で生き生きとした演奏の素晴らしさは忘れられません。また、もちろん演奏は真剣そのものでしたが、舞台に登場した時のソリスト・石川さんはリラックスした印象で(まずコンマスの田島さんと握手した後、指揮の広上さんと握手したかったのに広上さんが向こうを向いていてすれ違い、笑いが起きたりも)、演奏を楽しもうという心意気が感じられました。その独奏と呼吸を合わせて密に絡むオケがまた良すぎて、とても幸せな協演だったとも感じました。ずっと一緒に演奏してきたオケメンバー同士ならではの信頼感ある協演、胸アツです!今後、札幌での再協演(どんな演目でも歓迎です♪)をぜひお待ちしています。


1曲目は、弦楽アンサンブルによるモーツァルトアイネ・クライネ・ナハトムジーク。繰り返しは省かずに演奏していたと思います。また弦5部の人数は8-7-6-5-4で、以降の演目でも固定でした。第1楽章、思いっきり華やかな冒頭からぱっと会場の空気が変わり、掴みはバッチリOK!軽快で強弱のメリハリが効いた演奏はホールに柔らかく響いて、心地良さに癒やされました。第2楽章は、はじめはとてもゆったりした流れで、1stヴァイオリンを支える2ndヴァイオリンがよく聞こえたのが印象に残っています。また中盤の短調になるところは、1stヴァイオリンと低弦の密な対話に、支える2ndヴァイオリンとヴィオラのざわめきもすごく良かったです!第3楽章、はじめの一歩一歩ステップを踏むようなところでは、指揮の広上さんの動きに目が釘付けになりました。なんだかマリオネットみたいなカクカクした動きで、いつもよりさらに輪をかけて可愛らしかったです。続く滑らかな流れでは、広上さんはオケと一緒にワルツを踊っているように身体を揺らしていらっしゃいました。もちろんオケは指揮に応えて変化のある演奏を聴かせてくださいました。第4楽章、まるでスキャットのようなリズミカルで軽妙な掛け合いが楽しい!時々パンチの効いた低音が入るところも絶妙なタイミングで気持ちよかったです。演奏機会がとても多い「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」。やはり良い曲だとしみじみ思ったのと同時に、札響の弦の良さを再認識。名刺代わりの1曲目で、会場の空気も良い感じに温まったようでした。

2曲目はハイドン「チェロ協奏曲第1番」。首席チェロ奏者の石川祐支さんが今回はソリストとして登場です。オケは1曲目と同じ弦に、オーボエとホルンが2つずつ加わりました。第1楽章、まずはオケのターン。先程のモーツァルトに引けを取らない華やかな演奏に聴き入りました。そして独奏チェロ登場。バーンと低音を重ねた掴みの音からインパクト大で気持ちを全部持って行かれました!ああ来てよかった!何度かあった独奏チェロの登場シーンは、いずれも表情が違っていて、次はどんなふうに来るのかと期待するのも楽しかったです。高音域で高速なのに、明るく優雅に歌う独奏チェロが超素敵!オケはピアニッシモでリズムを作るような演奏にて包み込んだり、ごく自然にメインとサブが入れ替わったりと、独奏チェロとの密なやりとりがとても素敵でした。また、独奏チェロがうねる低音を響かせるところはまるでロックのベースのようで超カッコイイ!かと思うと高音で切なく歌うところに心奪われたりと、一時も目と耳が離せない!そして終盤のカデンツァがすごかったです。今まで出てきたメロディを取り入れながらも即興的で自由な感じで、とても新鮮!もしかするとハイドンのオリジナルのカデンツァにアレンジを加えていたかも?(違っていたら申し訳ありません)。第2楽章、はじめのオケのターンではゆったりした弦楽合奏の優しい響きに癒やされました。そこに滑らかに重なるように独奏チェロが登場。ゆったり美しく歌う独奏チェロは、ただ穏やかなだけでなく喜びも悲しみも内に秘めているような奥行きが感じられました。オケが独奏チェロを見守るようにごく控えめな合いの手を入れていたのが良かったです。終盤のカデンツァでは、水を打ったような静寂の中で独奏チェロがかすれる高音で歌ったのにぐっと来ました!再び快活になる第3楽章は、オケも快速なら独奏チェロも超高速で、独奏チェロは超絶技巧もりもりなのにヴァイオリンを弾くような軽やかさ!時折チェロらしい低音がアクセントで入ったり、映画音楽のように切なく歌うところがあったりと、見どころ聴きどころしかない演奏にただただ引き込まれました。オケが明るく駆け抜けたラストまで、とても清々しい演奏!私は気分爽快になりました!ソリストとオケの厚い信頼関係があってこその、思いきりが良く生き生きとした独奏と密なアンサンブル。これほどまでの幸せな協演をその場で聴けた私達は幸せです!

休憩後はベートーヴェン交響曲第7番」。第1楽章、冒頭のパン!と力強い一音と続くオーボエに早速心掴まれ、個人的には意外にお久しぶりだったベト7にワクワク。高音弦と低弦が交互に音階を駆け上るところで少しずつ気分も上昇しました。ヴァイオリンとフルートがこだまするところが丁寧で、続くフルートが歌うところの多幸感が素敵!全員参加の明るく歌うところでは文句なしにテンションあがりました。また今回はピアニッシモからクレッシェンドでフォルテッシモになる流れに強弱の波がしっかりと感じられ、キレイな響きだったのがとても印象的でした。ホームのkitaraではない地方の会場でも札響サウンドはすごい!続いて、この曲で唯一の短調である第2楽章へ。ちなみに私は第2楽章が好きです。木管群の第一声の後、中低弦から入り、2nd続いて1stヴァイオリンが参戦した厳かな葬送行進曲に聴き入りました。全員参加になってからの大迫力!そして今回、はっとさせられたのは後半の管楽器群が穏やかに歌ったところです。第九の第3楽章の天国的な響きにも通じるような、温かな音色がとっても素敵!私は、広上さん指揮による今年の「札響の第九」を聞き逃してしまったのを少し後悔しました。また、例えば1stヴァイオリンとヴィオラが会話するようだったり、チェロが3対2の2つのパートに別れるところがあったりといった、弦の緻密な仕事ぶりが目を引きました。第3楽章、リズミカルでノリノリな演奏が楽しい!ティンパニがキレッキレ!木管群が穏やかに歌ったところから大合奏への流れが爽快でした。トランペットがカッコイイ!華やかに楽章締めくくった後、今回はここで小休止を挟み、第4楽章へ。華々しい出だしから大熱演!2拍子のリズムがノリノリで、弦リレーからの全員参加の全力強奏がアツイ!少しクールダウンするところでエネルギーを溜めて、盛り上がりの波を作る流れはずっと繋がっていて、その生き生きとしたリズムに聴いている私達の血も騒ぎました。フィナーレはさらに輪をかけて強奏になって、その大熱演には圧倒されっぱなし。ジャカジャン!ジャカジャン!の締めくくりまで、ものすごい生命力あふれる演奏でした。ああこの日の演奏が聴けてよかった!どんな場所でもベストを尽くす札響って、本当にスゴイです。そして年の瀬にベートーヴェン、イイですね!この生命力この大熱演は、普段クラシック音楽になじみがないかた達にも喜ばれたに違いありません。

カーテンコールの後、指揮の広上さんがマイクなしでごあいさつ。「来年も皆様にとって幸多き一年となりますように。本日はありがとうございました」と仰って、そのままアンコールへ。J.S.バッハG線上のアリア、弦楽アンサンブルによる演奏でした。先ほどまでの熱さから一転、しっとり美しい響きが心に染み入ります。澄んだ高音弦に、ぐっと深い通奏低音の低弦との重なりがとっても素敵!コントラバスがピッチカートと弦を擦る2パートに別れたところがあったのを発見!おなじみの曲を札響による丁寧な演奏で聴けてうれしかったです。広上さん、札響の皆様、アンコールに至るまで心を込めた素晴らしい演奏をありがとうございました!オケの皆様にとっても来年は幸多き一年となりますように。これからもずっと追いかけます!


本拠地・札幌kitaraでの定期演奏会。札響の弦セクションの底力を再確認したのがこちら。「札幌交響楽団 第646回定期演奏会」(土曜夜公演は2022/06/25)。シトコヴェツキーさん編曲の弦楽合奏ゴルトベルク変奏曲は、緻密かつ心に染み入る演奏でバッハの偉大さを再認識。「白鳥の湖」では、美メロだけじゃないチャイコフスキーの骨太な魅力も堪能できました。

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ハイドン&チェロといえばこちら。「札幌交響楽団 第648回定期演奏会」(土曜夜公演は2022/10/22)。首席指揮者のバーメルトさんが今年5月以来、久しぶりに登場!シーズンテーマ「水」のメンデルスゾーンソリスト佐藤晴真さんとオケの緻密なアンサンブルによる古風な響きのC.P.E バッハ。そしてハイドン「戦時のミサ」では人の声がストレートに心に響き、今の時代に大切な思いを共有できました。

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今年(2022年)は、初めて泊まりがけの遠征をした年でもありました。「仙台フィルハーモニー管弦楽団 第355回定期演奏会」(金曜夜公演は2022/05/06)。指揮・飯守泰次郎さんのフィナーレ第1弾!ソリスト菊池洋子さんのピアノは若き日のブラームスそのもので、私はようやくピアコン1番の良さに気づけました。マエストロとの信頼関係が窺えるブラ4の重厚感と歌心も素敵でした。

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弊ブログの読者の皆様、今年もありがとうございました。お読みくださっていること、励みになります。来年も引き続きよろしくお願いいたします。

最後までおつきあい頂きありがとうございました。

アンサンブルコンサート 愛と悲しみを謳ったロマン派時代の音楽家たち(2022/12) レポート

http://watanabe-museum.com/event/img/2022/20221216.pdf

↑今回の演奏会チラシです。 ※pdfファイルです。


日本シューマン協会札幌支部主催による、「愛と悲しみ」をテーマにロマン派の作曲家3名の作品を取り上げた演奏会。ブラームスの中でも特に好きな曲の一つであるピアノ四重奏曲第3番に、ブラームスが尊敬していたシューマンシューベルトの歌曲が聴けるとあって、私はとても楽しみにしていました。


アンサンブルコンサート 愛と悲しみを謳ったロマン派時代の音楽家たち
2022年12月16日(土)19:00~ 渡辺淳一文学館 地下1階ホール

【演奏】 ※司会:笹尾 雅代
久慈 睦子(ソプラノ)
西原 なつき(ピアノ)
赤間 さゆら(ヴァイオリン) ※札響ヴァイオリン奏者
鈴木 勇人(ヴィオラ) ※札響ヴィオラ奏者
武田 芽衣(チェロ) ※札響チェロ奏者

【曲目】
R.シューマン:『ミルテの花』op.25 より「献呈」「くるみの木」「はすの花」「ズライカの歌」
F.シューベルト:「春に D.882」「初めての喪失 D.226」「糸を紡ぐグレートヒェン op.2(D.118)」
F.シューベルト:弦楽三重奏曲第1番 変ロ長調 D.471
J.ブラームス:ピアノ四重奏曲第3番 ハ短調 op.60


それぞれ個性的な歌を通じて、様々な「愛」の形に触れることができました。シューマンシューベルトの歌曲は、一つ一つが短いながらも完結した物語!ソプラノ・久慈睦子さんの表情豊かな演奏と、ぴったり寄り添うピアノ・西原なつきさんのおかげで、それぞれの物語の世界に没頭し楽しむことが出来ました。シューマンが30歳で書いた『ミルテの花』は、色とりどりの花を束ねてブーケにしたような、連作歌曲としたこと自体も「愛」なのかも?最愛の妻クララは大変魅力的な女性だったに違いありません。またシューベルトの場合、29歳で書いた「春に D.882」はシューマンの『ミルテの花』に近い大人の落ち着きを、10代後半に作曲した2つの歌曲(いずれもゲーテの詩に曲を付けたもの)には若者らしい苦悩が感じられました。若き日のブラームスが叶わぬ恋をした「クララ」に、名作『若きウェルテルの悩み』を書いた「ゲーテ」。前半のシューマンシューベルトの選曲は、後半ブラームスと密接に繋がっていると感じられ、プログラム構成の素晴らしさにも私は感激しました。

そして後半、ブラームスのピアノ四重奏曲第3番の生き生きとした演奏がとっても素敵でした!「ウェルテル四重奏曲」とも呼ばれる、作曲家が20代で書いて塩漬けしていたものに40代で大きく手を入れ世に送り出した作品。私はこの日の演奏を聴いて、「若き日の悩み」を客観視している「大人の余裕」がありながら、何年経っても情熱の炎は消えていない!と思えたのがうれしかったです。力強さの影には繊細な感情の機微があり、一歩間違えるとキャラ崩壊してしまう難しい演目と思われます。しかし奏者の皆様は、間合いと呼吸を揃えてテンポや強弱を変化させながら丁寧に感情を作り、パワフルなところも歌うところも魂を込めた演奏にて、ブラームスの複雑な思いを見事に体現してくださいました。ありがとうございます。やはり札響メンバーが参加する室内楽は素敵です!今後も可能な限り聴きにうかがいたいと、今回改めてそう思いました。


最初に司会の笹尾さんからごあいさつ。配布されたプログラムには曲目解説と歌曲の日本語訳が掲載されていました。さらに演奏の合間には司会の笹尾さんによる大変充実した解説があり、演目についての理解が深まり演奏をより楽しめるようになりました。まずはシューマンの連作歌曲『ミルテの花』op.25 より4曲。「献呈」は喜びに満ちた感じで、何度も登場する du の呼びかけが素敵!やさしく語りかけるような中間部の美しさが印象的でした。「くるみの木」は、かわいらしい響きのピアノと、穏やかなソプラノが交互に出てくる素朴な感じ。明るい中にほんの少し影を落としたところが印象に残っています。「はすの花」、愛を繊細に歌うソプラノの儚げな美しさ!また、ピアノが繰り返すシンプルな和音が、感情の変化によって静かなところから感情高ぶるところへと変化していたのも素敵でした。「ズライカの歌」では、穏やかな感じでありながらも、ゆらぐ高音に感情の機微を、またはっきりとした発声には意思が感じられました。演奏機会が多い「献呈」のストレートな愛の表現だけでなく、様々な形の「愛の歌」を聴けてうれしかったです。妻クララへの結婚祝いに贈られたという連作歌曲『ミルテの花』op.25、他の曲も聴いてみたいと思います。

シューベルトの歌曲から。「春に D.882」は、春の暖かな日差しを思わせるピアノと、やさしい響きのソプラノに心温まる印象。中盤ほんの少し不穏な感じになり、微妙な感情の機微が感じられました。明るい雰囲気から一転、「初めての喪失 D.226は、「ああ」の第一声からものすごい衝撃!独白のような演奏は、とにかく寂しく切なく、胸打たれました。そして「糸を紡ぐグレートヒェン op.2(D.118)」。糸車が回るようなピアノに、激しい思いを歌うソプラノに圧倒されました。感情が高まり頂点に達して(『ああ彼の口づけ!』のところ?)、一時の沈黙があったところの気迫がすごい!後半2曲はいずれもゲーテの詩にシューベルトが18歳と17歳の時に曲を付けたものとのこと。これらの歌曲を聴く限り、「若きウェルテルの悩み」は若き日のシューベルトにもある!と私はそう思えました。

シューベルト「弦楽三重奏曲第1番」シューベルトが父親との関係で苦悩していた頃の作品だそうです。司会の笹尾さんからシューベルトがこの頃に書いた詩「私の夢」の紹介があり、その一部が朗読されました。未完成の作品で、完成された第1楽章のみの演奏です。私にとって初聴きだったこちら、個人的には「苦悩」とはすぐには結びつかない、春に鳥が歌っているような明るさを感じました。流れるように美しい歌の中で、3名がユニゾンで弾く堂々としたところや、主にヴィオラが音を刻んでリズムを作っていたところが印象に残っています。弦楽四重奏でもピアノトリオでもない、この編成ならではの掛け合いを楽しめました。


後半はブラームス「ピアノ四重奏曲第3番」。第1楽章、最初のピアノの力強い一打と、続くゆっくり歩みを進める弦に早速心掴まれ、ピッチカートを皮切りに重厚パワフルな歩みになって、ほの暗いザ・ブラームスな音楽にゾクゾク。音の刻みが脈を打つような、まさに生きた音楽に聴き惚れました。次第に盛り上がって高らかに歌うところの流れは、相反する性格が自然に繋がっていて素敵!自らの若き日の苦悩を客観視して、それを大人の余裕で昇華させる、この曲の良さを実感しました。そして力強く生き生きとした第2楽章がすごく良かったです。リズミカルにピアノと弦が呼応しながら、感情が頂点に達したときの強響による堂々たる響きがすごい!個人的には「泣き笑い」とも感じられる、感情を爆発させるヴァイオリンに、それを鼓舞するようなヴィオラ&チェロの音の刻み、そしてドラマチックなピアノと、全力での演奏に圧倒されました。この凄みに、楽章終わりには会場に自然と拍手が起きたほど。ガラリと雰囲気が変わる第3楽章は、ゆりかごのようなピアノに乗ってゆったり歌うチェロがとっても素敵!後からヴァイオリンがメロディを引き継いでからの支えになったチェロも良くて、ブラームスのチェロを堪能しました。ピアノが主役のところでチェロとヴィオラが交互にピッチカートでリズムを作るところや、後半のヴィオラ&チェロ&ピアノの三重奏も印象に残っています。第4楽章、高音で哀しげに歌うヴァイオリンに引き込まれ、ドラマチックな流れから弦による感情の波が頂点に達するところが超カッコイイ!続くゆったりした流れでは、ピアノがピアニッシモで何度も音階を駆け下りるのがブラームスらしくて素敵!最初のメロディを今度は低音域で歌ったヴァイオリンの深みのある音色にぐっと来ました。終盤の分厚いピアノの存在感!ラストは音がだんだん消えいってからのインパクトあるジャンジャン!で締めくくり。情熱的な曲の大熱演、血の通った音楽に最初から最後まで夢中になれました!

最後は出演者のかた全員が舞台へ。司会の笹尾さんからのごあいさつと、赤間さんから「新進演奏家育成プロジェクト・オーケストラシリーズ」のお知らせがあり、会はお開きとなりました。今回のような、テーマを設定して歌曲と室内楽を組み合わせる企画、これからもぜひお願いします!シューマンシューベルトブラームス、いずれも歌曲と室内楽に素晴らしい作品を数多く残していますから、次はどんな作品と出会えるか、とても楽しみです。


渡辺淳一文学館で聴いた室内楽のコンサート。こちらもテーマを設定して複数の作曲家の作品を取り上げた会でした。「フォーレ、そして彼と出会った作曲家たち」(2022/10/01)。フォーレピアノ五重奏曲をはじめ、ドビュッシーラヴェルサン=サーンスの作品は、重厚さでガツンとくるドイツ系とは異なる繊細な響き。しみじみ素敵でした。

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愛の歌といえばこちらも。「ウィステリアホール プレミアムクラシック 17th ソプラノ&ピアノ」(2022/07/31)。ソプラノ中江早希さん&ピアノ新堀聡子さんによる愛の物語。シューマン「女の愛と生涯」や中田喜直「魚とオレンジ」、直江香世子さんの小品等、魂の込められた演奏を通じて様々な人生を生きたスペシャルな体験でした。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

『ところで、きょう指揮したのは? 秋山和慶回想録』 秋山和慶(著) 冨沢佐一 (著) 読みました

 

今回ご紹介するのは『ところで、きょう指揮したのは? 秋山和慶回想録』 秋山和慶(著) 冨沢佐一 (著) です。2015年2月 アルテスパブリッシング。文化功労者顕彰&指揮者生活50年記念出版。2014年に中国新聞文化面で連載された聞き書き「生きて」をもとに、大幅な加筆をして再構成されたものとのこと。巻末には索引と年表、CD・DVD一覧も掲載されています。

読みやすい構成と充実した内容で一気に読める、超おすすめの本です!弊ブログをお読みくださる皆様は、私のレビューはあくまで参考程度にとどめ、どうか本そのものを手に取りご一読くださいませ。では感想に入ります。以下、ネタバレが含まれます。ご了承頂けるかたのみ「続きを読む」からお進みください。

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オリジナル楽器で聴くブラームスⅡ 佐藤俊介×鈴木秀美×スーアン・チャイ(2022/11) レポート

https://www.rokkatei.co.jp/wp-content/uploads/2022/08/221127.pdf

↑今回の演奏会チラシです。 ※pdfファイルです。

今回(2022/11/27)のふきのとうホール主催公演は、「オリジナル楽器で聴くブラームス」の第2回目です(第1回は2017/07/04)。ブラームスの時代に一般的だった、フォルテピアノとガット弦を張った弦楽器による演奏。大好きなブラームス室内楽を、作曲当時のものと近い楽器による演奏で聴ける!とあって、私は企画発表当初から楽しみにしていました。


オリジナル楽器で聴くブラームス佐藤俊介×鈴木秀美×スーアン・チャイ
2022年11月27日(日)16:00~ ふきのとうホール

【演奏】
佐藤 俊介(ヴァイオリン)
鈴木 秀美(チェロ)
スーアン・チャイ(フォルテピアノ

【曲目】
R.シューマン:幻想小曲集 op.73
J.ブラームス:チェロ・ソナタ第2番 ヘ長調 Op.99
J.ブラームスピアノ三重奏曲第2番 ハ長調 Op.87

(アンコール)J.ブラームスピアノ三重奏曲第3番より 第3楽章

ピアノはフォルテピアノ(持ち込みとのことです)。ヴァイオリンとチェロはガット弦を張ったもので、またチェロはエンドピンがないものでした。


ブラームス自身が意図していたであろう響きで、ブラームスと出会えた喜び!オリジナル楽器の「音」を楽しめたのに加え、何よりブラームスの本質に迫った演奏そのものが大変素晴らしかったことに私は感激しました。音の表情には血の通った温かさがあり、ブラームスがとりわけ重視したテンポには呼吸や鼓動が感じられる、まさに生きた音楽。そんな音楽が生まれたのは、奏者の皆様が作品そのものと真摯に向き合い、作曲家の想いを心を込めて体現くださったからと拝察します。しかもモダン楽器とは勝手が違うオリジナル楽器による演奏。一筋縄ではいかないはずですのに、奏者の皆様は、端から見る限りはスマートな演奏姿にて、思いっきり情熱的に生き生きと演奏してくださいました。本当にありがとうございます。私は第1回公演を聞き逃してしまったことが悔やまれてなりません。今回ご出演された皆様による「オリジナル楽器で聴くブラームス」、ぜひ今後も第3回、第4回……とシリーズ化して聴かせてくださいませ。ヴァイオリンソナタチェロソナタ、ピアノトリオはもちろんのこと、例えばゲスト奏者をお招きしてのナチュラルホルンによる「ホルン三重奏曲」や、ミュールフェルトが愛用した型の楽器による「クラリネット三重奏曲」など、聴いてみたい演目はいくつもあります。いつかきっとお願いいたします。札幌にてお待ちしています!

演奏自体の素晴らしさはもちろんのこと、今回はオリジナル楽器だからこその新たな発見がありました。以下に書くことは音楽経験ナシのいち個人による感覚的なものですので、間違いや勘違いがありましたら申し訳ありません。今回のオリジナル楽器について、私はいずれも生演奏では初対面でした。しかし、ふきのとうホールの最高な音響のおかげで、録音ではよくわからなかったモダン楽器との違いを自分なりに感じ取ることができました。率直な印象として、フォルテピアノの響きはモダンピアノよりも素朴で、ガット弦の響きは温かさがあり、いずれも残響は少ないようでした。また「温かさ」は音質そのものだけでなく、うまく言えないのですが音を発した後のゆらぎ(ヴィブラート等で演出するのではなく自然に響く音)の味わい深さにあるのでは?と感じました。音のゆらぎは、スチール弦は振れ幅が安定していて、ガット弦はその時その時で違う(これが人間らしくて親近感ある?)気がします。演奏方法自体もモダン楽器とは異なると思われますが、私が特に注目したのはチェロです。エンドピンがないため、楽器を脚の間に挟み身体全体で抱えこむような体勢での演奏。弓のあて方もモダン楽器とは異なっていたかもしれません。この体勢でガット弦を強奏するのは、もしかすると相当な力が必要なのかも?そしてこのことをブラームスは把握して曲作りをしていたのでは?と私が思ったのは、チェロ・ソナタ第2番のはじめの方の、強奏の合間に細かく入れられた休符の存在です。なぜわざわざそうしているのか、私は以前からずっと疑問に思っていました。おそらく強奏に力が必要なオリジナル楽器の場合、休符で一呼吸おくことによって、都度全力で強奏できてインパクトある音を生み出せるからですね!今回ようやく腑に落ちました。また、ピアノトリオ第2番での3つの楽器の重なりにもブラームスの工夫が感じられました。どうやら弦の響きの合間にピアノを鳴らすことで、細かく呼応し合ってリズムを作り、音楽を生き生きとさせている?これは残響が多いモダン楽器による演奏では気付きにくい発見でした。改めて、ブラームスってすごい!言うまでもなく、オリジナル楽器による素晴らしい演奏を聴かせてくださった奏者の皆様のおかげです。重ねてありがとうございます。


最初の演目はシューマン「幻想小曲集 op.73」。元々はクラリネット&ピアノのために書かれたものですが、クラリネット以外の楽器でもよく演奏される作品。この日はヴァイオリン&ピアノによる演奏でした。第1曲、ピアノは美しくも素朴な感じでした。続いて登場したヴァイオリンの、穏やかで心温まる音色がとても新鮮!特にぐっと深い低音と、感極まった高音のゆらぎが印象に残っています。第2曲は、ヴァイオリンとピアノが楽しく会話しているよう。残響が少ない(あくまで私の素人感覚です)ためか、きっちり交互に姿を現す印象。何度も音階を駆け上るところは、穏やかながらも少し前のめりで、秘めた想いが感じられて素敵でした。そして第3曲へ。情熱的に音階を駆け上るヴァイオリンの、最初の低音に心掴まれました!何度も登場する音階の駆け上りですが、起点となる低音はこの一番初めが特に良かったです。中間部の独白のようなヴァイオリンは、あふれる想いがありながらも一言一言を大切に発しているように感じられました。堂々たるフィナーレは、すぱっと潔い締めくくり。個人的にモダン楽器(チェロ&ピアノ)による演奏で何度も聴いてきた演目でしたが、この日の演奏でのラストは想像よりもずっと早く音が消えてしまったので少し戸惑ってしまいました(ごめんなさい!)。しかし、これがガット弦の弦楽器とフォルテピアノ「らしさ」であり、作曲家が意図した本来の響き(クラリネットでの演奏ならあえて息をのばさない)なのかも?とも思いました。

ブラームス「チェロ・ソナタ第2番」。第1楽章、ピアノの分厚い響きに乗っての、チェロの強奏は最初の1音から骨太でものすごく圧倒されました。細かく休符が入るそのタイミングで深く呼吸し、また次の瞬間は強奏になるため、新たな音が来るたびに鮮烈で強いインパクトが感じられました。なんと情熱的で力強いこと!またチェロの低音は、コントラバスのような少しくぐもった音で、私は瞬時にこの低音のとりこに。高音のゆらぎも、やはりスチール弦とは振れ幅が違う感じなのがとても良かったです。盛り上がりが重音で頂点に達した後の、弓をダイナミックに動かしながら音が沈んでいく様がドラマチックで超素敵!ピアノのターンでの、チェロの弓を大きくうねらせる演奏(トレモロ?)が、うごめく感情のようだったのも印象的でした。第2楽章、訥々と語るようなピアノに合わせた、チェロのピッチカートの音色に私は魅了されました。ガット弦のピッチカートは初めて聴きましたが、弦を強くはじいても奥ゆかしい感じの響き。ピッチカートと滑らかに歌うところが交互にくる流れで、優しく穏やかな歌にもしみじみ聴き入りました。そしてこの楽章で圧巻だったのは、音を長くのばしながらフェードアウトするラストです。放っておけばすぐに音が消えてしまうところを、少しずつ力を抜きながらギリギリまで弦を擦る演奏で表現されていたとお見受けしました。男性的な性格の作品の中で異彩を放った、この繊細な音が忘れられません。第3楽章、冒頭のピアノが私には新鮮に感じられました。残響が残るモダンピアノのきらびやかな響きがツヤ肌なら、フォルテピアノの落ち着いた響きはマット肌!どちらも素敵!ブラームスの遊び心ある音楽を、ピアノとチェロが呼応しながらリズミカルに生き生きと情熱的に演奏。自信に満ちあふれた力強いチェロが超カッコイイ!中盤の高音域で歌うところも素敵でした。低く太い音をバーンとのばしたラストが前の楽章と好対比で強く印象に残っています。第4楽章、はじめのピアノとチェロは歌曲のような優しい響き。変化が多い流れの中で、低音での音の刻みやパワフルな重音、軽快なピッチカート、哀愁を帯びた歌と、精力的な演奏によるチェロの様々な表情が魅力的!低く太い音をのばす堂々たる締めくくりに、私は気分爽快になりました。骨太で力強くしかし繊細な、これこそがブラームスのチェロ!個人的に愛してやまないブラームスのチェロ・ソナタを、「ブラームスのチェロ」で聴けた喜びはひとしおでした。


後半はブラームス「ピアノトリオ第2番」。第1楽章、冒頭の堂々たる弦のユニゾンがすごい!ガット弦を全力で弾いたこの音色は格別でした。音階を上る高揚感!穏やかなところからクレッシェンドで浮かび上がるところは、音の自然なゆらぎも相まって生命力あふれる感じ。また、弦の響きの間隙を縫うようにピアノの響きが聞こえて、細かく呼応しあうリズム感が心地よかったです。ヴァイオリンとチェロが甘やかに歌ったり、時折ふと陰りを見せたり、ピアノがドラマチックだったりと、変化の多い生き生きとした流れが素晴らしい!第2楽章は、弦が奏でる哀しげなメロディが、やわらかな響きなのに胸に来る感じで、ここでもピアノが弦に合いの手を入れるような響きだったのが印象的でした。一瞬ピアノが沈黙して弦2つが重音を重ねる、悲劇的な響きがインパクト大!しかし、音がキツすぎず温かな印象でした。ピアノの支えの上でチェロとヴァイオリンが交互に歌ったところが、高音域の自然な音のゆらぎもありとても美しかったです。第3楽章、はじめのピアノと小刻みな弦の妖艶さにぞわぞわ。研ぎ澄まされたヴァイオリンの神秘的な音色がすごく素敵!下支えするキラキラしたピアノとぐっと重低音のチェロも神秘性を際立たせていました。続いてヴァイオリンとチェロが一緒に甘やかに歌ったところがまた素敵で、喜びが感じられる落ち着いた優しい音色が心に染み入りました。楽章締めくくりの低音ピッチカートとピアノの一打は、渋いのにとても温かみがある響き!第4楽章では、冒頭の弦の音色がとっても良かったです!穏やかでも幸せな思いを内に秘めている感じ。高らかに喜びを歌い出すヴァイオリンが素敵!またピアノが速いテンポで軽快に歌うところでは、シンクロしたチェロの渋さが印象的でした。緩急の波をつけながら朗らかに歌う音楽は、聴いていて清々しかったです。ラストは分厚い音の重なりで、明るく輝かしい締めくくり。なんて幸せな音楽!3つの楽器が密に絡み合う響きには、情熱だけでなく愛が感じられ、まさにブラームスの本質に触れたと感じました。

カーテンコールの後、アンコールへ。ブラームス「ピアノトリオ第3番」より 第3楽章。弦2つの重なりとピアノが交互に出てくる流れは、穏やかな大人の会話を思わせる優雅な響き。甘やかなピアノに、ポンポンと合いの手を入れた弦のピッチカートが可憐!中盤やや不穏な空気になり、少し影を感じる音色による演奏には温かな雰囲気を感じました。まるでシューマン家の居間でくつろぐ3人(ロベルトとクララそしてブラームス)のような親密さ!大熱演の後に心温まるアンコールまでありがとうございます!「オリジナル楽器で聴くブラームス」、今後ふきのとうホールにて再会できる日を心待ちにしています!


ふきのとうホール主催公演で、ブラームスの再発見があったこちらのレポートを紹介します。「レジデント・アーティスト 小菅 優コンサートシリーズ Vol.3 吉田 誠&小菅 優 デュオ・リサイタル」(2022/10/15)。独仏3つのクラリネットソナタ、それぞれ独立した歌曲を一つの物語のように構成した演奏、小菅優さんによるプログラムノート。待ち焦がれていた私達に最高の演奏で聴かせてくださいました。

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こちらの演奏会でも素晴らしいブラームスとの出会いがありました。「Kitaraアフタヌーンコンサート〉東京六人組」(2022/11/12)。3つのホールによる共同委嘱新作・ハイドンバリエーションやきらきら星変装曲等、オーケストラの響きをぎゅっと濃縮したカラフルな演奏はとっても楽しかったです!

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

〈Kitaraアフタヌーンコンサート〉東京六人組(2022/11) レポート

www.kitara-sapporo.or.jp

kitaraの公式サイトにて、PR動画を観ることができます。

木管五重奏&ピアノの編成による「東京六人組」は、オケの首席奏者やソリストとして活躍する同世代のメンバーで結成された、今注目のアンサンブルです。その演奏会がKitara小ホールにて開催されました。札幌市民の期待は大きく、開演前の小ホール入り口には当日券を求める人達による長蛇の列が出来ていました。また会場はほぼ満席に近い盛況ぶりでした。なお今回(2022年)の企画は、日本各地のコンサートホール企画連携会議事業(札幌・新潟・すみだ・所沢・京都・福岡)の一環のようです。


Kitaraアフタヌーンコンサート〉東京六人組
2022年11月12日(土)15:00~ 札幌コンサートホールKitara小ホール

【演奏】
東京六人組
 上野 由恵(フルート)
 荒 絵理子(オーボエ
 金子 平(クラリネット
 福士 マリ子(ファゴット
 福川 伸陽(ホルン)
 三浦 友理枝(ピアノ)

【曲目】
ブラームス/岩岡 一志 編曲:ハンガリー舞曲より 第1番、第5番、第6番
プーランク:六重奏曲 FP100
デュカス/浦壁 信二 編曲:交響詩魔法使いの弟子

磯部 周平:きらきら星変装曲
  1.主題 きらきら星  2.三星のテーマ  3.ケッヘル博士の忘れ物  4.嵐のハイリゲンシュタット  5.クララのためのロマンス  6.紅葉のマズルカ  7.指輪(リング)はお嫌い?  8.コスモスの舞踏  9.オレンジ色の行進曲  10.星に憑かれた12音  11.たそがれどきのレント  12.もう一つのフーガ  13.主題 きらきら星

ブラームス/夏田 昌和 編曲:ハイドンの主題による変奏曲(札幌コンサートホール・所沢ミューズ・アクロス福岡共同委嘱新作)

(アンコール)ハチャトゥリアンバレエ音楽「ガイーヌ」より レズギンカ


「オーケストラの響きをぎゅっと濃縮」した「カラフルな」演奏、とっても楽しかったです!お一人お一人の個性的な音色は、シーンによって様々に変化して、次はどんな音に出会えるかと最初から最後までわくわくしながら聴けました。それらが重なる良さと、何よりアンサンブルの緻密さが素晴らしい!指揮者なしで6名の呼吸を合わせるのはおそらくとても難しいことと思われますが、素人目には音楽の流れはごく自然で、足並みを揃えながらも全員が遠慮無く表現していたと感じました。また自称ブラームスおたくの私としては、ブラームスが重視していたバス(低音)がしっかり聞こえたのがうれしかったです。土台が堅牢だからこそ奥行きが感じられ、主役のメロディが引き立つ!しかし人数が多く得意分野で分業できるオーケストラとは違い、この少人数で、有り体に言えば無茶なこと(音域や音の出し方や息継ぎする暇がない忙しさなど)をなさっていると拝察します。それでも「<無理>の二文字は我々の辞書に存在しません」(by.三浦 友理枝さん)なのですよね!安全策をとらずに最高のパフォーマンスを追求する姿勢と、無茶を無茶だと感じさせない完成度の高さに、ただただ敬服いたします。私にとっては「お初」だった東京六人組。その魅力は、オリジナル作品が少ない編成という物珍しさよりも、このアンサンブルだからこそ創れる音楽そのものにあると強く実感しました。この出会いに感謝です。

そして曲の合間のトークも楽しかったです。その時によってお一人だったりお二人だったりしましたが、メンバーの一部が代表して舞台に出てお話してくださいました。曲の解説のみならず、編曲についての思い入れやホールの印象(kitaraのことを絶賛!)、札幌で食べたもの(ジンギスカンとかスープカレーとか)や「紅葉を見て、気分が高揚(!)」なんてダジャレまで!ちなみにこの渾身のダジャレを、後から登場した他のメンバーがあえて繰り返したりも(会場は大ウケでした)。お互いが信頼し合う仲間だからこそのノリの良さが素敵です♪


東京六人組の皆様が舞台へ。すぐに演奏開始です。配置は、ピアノの前に木管が扇形に並び、向かって左からフルート・オーボエファゴット・ホルン・クラリネットの順に着席。また演目によってフルートはピッコロ、クラリネットは数種類の持ち替えがありました。「名刺代わりの」最初の演目は、ブラームス(岩岡 一志 編曲)「ハンガリー舞曲」より3曲を抜粋で。まずは、PR動画にも少しだけ入っていた第1番。ほの暗いメロディの上を高音で彩るフルートがインパクト大!ベースを作るファゴットの低音のリズムと、ホルンとクラリネットによる対旋律が印象的でした。第5番は、低音が効いた勢いある演奏がクール!第6番は、オーボエが歌うメロディが心地良く、クライマックスの華やかさが素敵!また3曲とも、中間部のテンポが細かく変化していく流れが阿吽の呼吸でぴったり揃っていて、とても気持ち良かったです。耳慣れたハンガリー舞曲なのに、木管とピアノによるカラフルな響きが新鮮!しかも、このコンパクトな編成でオーケストラに引けを取らない壮大さと奥行き!この後に続く演奏への期待が一気に高まりました。

木管楽器といえばこの人!フランス六人組の一人であるプーランクの「六重奏曲 FP100」木管五重奏とピアノの編成にとって「金字塔」という、この編成のために書かれたオリジナル作品です。「この編成ならではのカラフルさが一番よく出ている作品」とトークの中で紹介がありました。第1楽章、リズミカルでがっちりしたピアノのベースの上を、自由な感じで跳ね回る各木管の響きが楽しい!シーンを切り替えた、ファゴットの語るような長い独奏がとても素敵でした。続くピアノ独奏がドラマチック!中間部のゆったりしたところは、ホルンと他の木管が会話しているように感じました。オーボエから入った第2楽章は、穏やかな流れの中で各楽器が順番に主役となったり、2つの木管が同じ旋律をユニゾンで演奏したり、一部の木管が即興的に駆け足の演奏で彩ったりと、細やかな変化とそれらが重なる良さが素敵でした。第3楽章は、フランスの流の軽快なリズム感が楽しい!高音が華やかな中で、クラリネットの低い音を刻むような演奏が差し色になっていたのが印象的でした。盛り上がるところのホルンがカッコイイ!ラストはゆったりになって、ぐっと重厚なピアノの上を順番に歌った木管の音色を味わいました。そして全員揃っての強奏で締めくくり。ピアノ&単独の木管によるデュオ作品にはない、木管同士の重なりや呼応が楽しい、彩りある演奏。重要なレパートリーを緻密なアンサンブルで聴けてうれしかったです。

デュカス(浦壁 信二 編曲)の交響詩魔法使いの弟子。原曲はゲーテの詩を元に作られた作品で、ディズニー「ファンタジア」でアニメ化もされていると紹介がありました。ちなみに、編曲版初稿は木管の息継ぎ等に配慮してからか、ピアノが引き受ける部分が多かったそうですが、メンバーが「もっともりもりで!」と希望して、木管群にとって難易度の高いものになったとのことです。冒頭の神秘的なところでは、ベースの低音とキラキラしたピアノの上で、高音パートの長くのばす澄んだ音がとても印象的でした。歩みを進めるようなファゴットクラリネットの存在感!ホルンがトランペットのような高音で音を刻んだのには驚きました。しかも次のシーンはザ・ホルンの伸びやかな音に戻っている!また、ホルンは時折ミュートを使用(?間違っていたら申し訳ありません)して、ザラザラした重低音を発していたのも印象に残っています。ストーリー上でどんどんピンチになっていく様を、だんだんとテンポが速くなる演奏で表現。その緊迫感に、聴いていた私達も引き込まれました。ピッコロの悲鳴のような盛り上がりがインパクト大!一瞬の静寂の後、持ち替えたフルートで今度は怪しげな雰囲気の響き!そしてファゴットクラリネットの歩みは、先ほどよりも速くなり、クライマックスの盛り上がりも一層パワフルに。またもや一瞬の静寂の後、次に登場したフルートは不安と安堵がごちゃまぜになったような音色だったのがとても印象的でした。全員によるジャジャジャジャン!の強奏で締めくくり。物語を見ているような、テンポや音の変化がとても面白く、最初から最後まで夢中になれた演奏でした!


後半。はじめは磯部周平「きらきら星変装曲」。「変奏」ではなく「変装」なのがポイントだそうです。有名な「きらきら星」のテーマを、様々な作曲家風に着替えていくスタイルの作品。どの作曲家が登場するかは、各副題と「音楽史の順に登場」がヒントです、と解説がありました。はじめの「主題」は、キラキラしたピアノの上を各木管が伸びやかに歌う「きらきら星」。音を震わせるフルートの余韻が印象的でした。「変装」のトップバッターはおそらくバッハ(小フーガト短調フーガの技法?)。チェンバロ風に音をのばさないピアノから入り、各木管が追いかけっこをしながら重なる厳かな響き。次はモーツァルト「きらきら星変奏曲」の更なるアレンジでしょうか?明るい音楽に私はついブラームス「大学祝典序曲」を連想……。その次はベートーヴェンと思われますが、明るさから悲壮感までてんこ盛りで、次から次へと展開される音楽を(途中で曲名推測は諦めて・苦笑)素直に味わいました。そして個人的に楽しみにしていた「クララのためのロマンス」へ。副題からシューマンかな?ブラームスかな?と始まる直前までワクワクドキドキ。フタを開けたらブラームスでした!ホルンが歌ったのはピアノトリオ第1番の最初のメロディでは!?クラリネットはブラ1の第4楽章の穏やかなメロディ?いずれも原曲では弦が奏でるメロディを、作曲家が愛した楽器による温かな響きにて聴けてうれしかったです。他の楽器も重なった壮大なクライマックスに、私は胸がいっぱいに。以降は副題からショパンワーグナーサン=サーンスシェーンベルクを思い浮かべましたが、原曲をよく知らない私は具体的に誰のどのメロディが引用されているかはピンとこなくて(ごめんなさい!)。しかし元を知らなくても、例えばスウィングのようなノリの良さだったり、調性が掴みにくい感じだったりと、表情が変化する演奏はフラットに聴いて楽しかったです。そして「変装」のトリである「もう一つのフーガ」(こちらについては、オマージュしたのは「ブリテン青少年のための管弦楽入門』のフィナーレのフーガ」と後から補足がありました)の演奏に圧倒されました。バッハとはカラーが違う、テンポが速く音が多い追いかけっこは百花繚乱の華やかな響き!ラストはもう一度はじめの「主題」が登場。よく知る「きらきら星」のテーマがそのままの形で帰ってきてほっとすると同時に、このシンプルなメロディが様々な作曲家風に衣替えした今回の「変装」曲のすごさを改めて実感しました。とてもとても面白かったです!こんなにも様々な要素が詰まった遊び心あふれる演目を、各楽器の多彩な響きによる演奏で聴けた私達は超ラッキーでした。

プログラム最後の演目は、ブラームス(夏田 昌和 編曲)「ハイドンの主題による変奏曲」。こちらは東京六人組のために今回新たに編曲されたもので、3つのホール(札幌コンサートホールkitara・所沢ミューズ・アクロス福岡)の共同委嘱新作とのことです。はじめの主題は、原曲でも木管大活躍のところですが、今回の東京六人組も温かみのあるメロディを各木管が美しく柔らかな響きにて聴かせてくださいました。また下支えとなる低弦ピッチカートを、低音が出せる木管群とピアノで自然に表現していたのがすごい!このように、原曲と同じ楽器のところの良さはもちろんのこと、置き換えで演奏するところの工夫と表現が素晴らしかったです。最初から最後まですべて良かった上で、以降については個人的なイチオシ部分に絞って書きます。ほの暗く情熱的な第2変奏の、小刻みでリズミカルなメロディと、対する低音の重厚さ!第4変奏では、各木管の追いかけっこがフーガのようでもあり、その緻密さと重なる美しさが素敵!ホルンとファゴットから入った第6変奏は、各木管が高らかに歌い上けるところがまさに演奏家の真骨頂!また原曲の弦パートの再現(ピアノとその時に主役ではない木管が担当)の壮大さが素晴らしかったです。美しいフルートと牧歌的なクラリネットファゴット・ホルンの第7変奏では、澄んだ高音弦を表現したオーボエがとにかく素敵でした。第8変奏では、ミステリアスな雰囲気による各木管の掛け合いが素晴らしい!あえてホルンが沈黙して、他の4つの木管の密なアンサンブルを演出していたのが印象的でした。そして終曲では、クライマックスでの音の多い盛り上がりがすごい!それぞれの楽器が次々と音階を何度も駆け上ったり駆け下りたり、最初の素朴な主題が華やかでパワフルになっていて、聴いている私達も気分があがりました。ラストは力強く明るく締めくくり。たった6人による演奏で、こんなにも贅沢な響き!ブラームスハイドンバリエーションはこんなに面白い曲だったんですね!すごいものを聴かせて頂きました。夏田昌和さまによる「もりもり」な編曲と、何より見事な演奏で披露くださった東京六人組の皆様、ありがとうございます!


カーテンコール。ごあいさつと、kitaraのスタッフ手作りによる「東京六人組のPRパネル」(ホワイエに展示されていました)の紹介、CD販売(先着順で6名のサイン入りポストカード付き!)についての案内がありました。アンコールは最新CDにも収録されている、ハチャトゥリアのバレエ音楽「ガイーヌ」より レズギンカ。速いテンポの元気な舞曲で、各木管が切れ目無く音を小刻みに演奏するのがすごい!重なるところと各ソロが順番に演奏するところの変化も楽しい!クライマックスでは、パワフルなピアノとホルンの咆哮(超カッコイイ!)に乗って、他の4つの楽器による強奏が最高潮の盛り上がりを見せてくださいました。最後に最高に気分があがる演奏!本プログラムからアンコールに至るまで多彩な響きに浸れて、とっても楽しかったです!最後は6名の皆様が会場ににこやかに手を振ってくださいました。ありがとうございます!この日会場にいたお客さん達は皆、東京六人組のとりこになったはず!近い将来、新たなレパートリーと一緒に再び札幌にいらしてくださいね。紅葉だけでなく、雪の白さにも春の息吹にも夏の爽やかさにも、きっと気分が高揚することうけあいです♪お待ちしています!



木管クラリネット)とピアノによる演奏で、ブラームスの再発見があったこちらの公演のレポートを紹介します。「レジデント・アーティスト 小菅 優コンサートシリーズ Vol.3 吉田 誠&小菅 優 デュオ・リサイタル」(2022/10/15)。独仏3つのクラリネットソナタ、それぞれ独立した歌曲を一つの物語のように構成した演奏、小菅優さんによるプログラムノート。待ち焦がれていた私達に最高の演奏で聴かせてくださいました。

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「きらきら星」のテーマを使った遊び心あふれる新作(委嘱作品・初演)が聴けたこちらの公演も。「Trio MiinA トリオ・ミーナ第3回公演 小児がんチャリティコンサート」(2021/11/23)。クオリティの高さと楽しさ親しみやすさが同居する、心温まる演奏会。隠れた名曲グラナドスに王道メントリの素晴らしさ。そして世界初演パスカル・ヒメノは斬新で超面白かったです!

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

札響名曲シリーズ 森の響フレンド名曲コンサート~日曜日の宗利音(2022/11) レポート

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今回(2022年11月)の札響名曲シリーズは、若手指揮者の松本宗利音さん(~2021年3月 札響指揮者)によるオールロシアプログラムです。協奏曲のソリストは、6歳からロシアで研鑽を積んだというピアニストの松田華音さん。親しみやすい演目が揃っていたためか、会場は9割ほどの席が埋まっていました。また、今回私は高2の息子を誘い一緒に聴きました。


札響名曲シリーズ 森の響フレンド名曲コンサート~日曜日の宗利音
2022年11月06日(日)14:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
松本 宗利音

【ピアノ】
松田 華音

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:会田 莉凡)

【曲目】
バラキレフ:3つのロシア民謡の主題による序曲
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番
ソリストアンコール)チャイコフスキー:18の小品op.72より第18曲「踊りの情景(トレパークへの誘い)」

グリンカ:「ルスランとリュドミラ」序曲
ムソルグスキーリムスキー=コルサコフ編曲):「ホヴァンシチナ」より"モスクワ川の夜明け"
ボロディン:「イーゴリ公」より"だったん人の踊り"
ハチャトゥリアン:「ガイーヌ」より剣の舞、子守歌
チャイコフスキー:スラヴ行進曲
(アンコール)チャイコフスキー:「弦楽セレナーデ」よりワルツ


松本宗利音さん、おかえりなさい!松本さんが大好きというロシア(スラブ)音楽は、民族色の濃いものから都会的なものまで個性豊か。いずれも気合いの入った演奏でとっても楽しかったです!若きマエストロの里帰りに、札響メンバーもノリノリだったのでは?オケは、金管打楽器の大活躍ぶりに、木管の歌心、そして土台を作る弦の美しさと安定感――奏者の皆様が、帰ってきた私達のシューリヒトの思いをすべてくみ取ろうと、全身全霊で応えていらした好演と私は感じました。また、「ロシア音楽の伝道師」である松田華音さんのピアノは、力強さと音の厚み(ロシアピアニズム?)に加えて、1音1音がキレイ(※素人の感覚的な話で失礼します)で洗練された印象と、特に中間楽章では繊細さも感じられる、とても贅沢なものでした。この布陣でロシア音楽をたっぷり堪能できた私達は幸せです!ロシアによるウクライナへの侵攻が行われている現在、もしかするとオールロシアプログラムの演奏会開催への抵抗感はあったかもしれません。しかし松本さんも仰った通り「芸術に罪はない」ですよね。当初の予定通りで開催し、かつ素晴らしい演奏で客席を沸かせたことに敬意を表します。

今回、耳なじみのある演目が多いこともあってか、うちの高2の息子(※授業以外での音楽経験ナシ)も楽しく聴いたようです。のめり込むように聴きながら、演奏の様子を3階席から双眼鏡で熱心に観察していました。そして終演後は、例えばピアノ協奏曲のピアノのすごさや、"だったん人の踊り"の「異国の雰囲気」など、彼なりに感じたことを私に話してもくれました。私が息子に教えられることは何もありませんが、親子で同じ演奏を聴いてフラットに色々とおしゃべりできたのはうれしかったです。U25のチケット料金はお安く設定されていますし、今回のように聴きやすい名曲が揃った会ならビギナーでも無理なく聴けます。若い人達への門戸を広くしている札響に改めて感謝です。


指揮の松本宗利音さんによるプレトーク。昨年に3年間の任期満了で札響を離れたことと、その札響に戻ってこれたことに感謝している、といったお話から始まりました。札響とのご縁は、2017年に札響から松本さんへFacebookのメッセージャー経由で出演依頼が来たのが始まりだそう。まだ事務所に所属していなかったため直接連絡となったわけですが、最初は「詐欺かと思った」そうです(笑)。その後2018年に北広島でのコンサートに登壇したのが初仕事。プロデビュー後のお仕事としてもまだ2回目だったそうで、その時のプログラムはベートーヴェンの序曲「コリオラン」と交響曲第2番という「玄人向けの選曲をしてしまった」。しかし初仕事以降、当時のコンミス・大平まゆみさんが目をかけてくださって、大平さんにはとても感謝していると仰っていました。2019年に札響指揮者に就任してからは紋別や釧路など様々なところに行き、「美味しい物を食べた」(!)……旅の楽しみはなんといっても食べる事ですよね。わかります!また、コロナ禍で半年ほど仕事が無くて「やべえ」(お若いですね・笑)となったことも。ちなみに持続化給付金を元手にして車を購入したそうですよ。任期満了後も札響とは良い関係でいられて幸せ、と仰る松本さんが今回挑むのは「大好きなロシア(スラブ)の演奏会」。なおプログラムが決まったときはまだ戦争は起きていなかったことと、「芸術に罪はない」とも仰っていました。今回共演するピアニストの松田華音さんについては、小さい頃からロシアで研鑽を積んだことをご紹介くださり、「ロシア音楽の伝道師」である素晴らしい音楽家、と絶賛。演目については、「ロシア五人組の中では比較的マイナーな」バラギレフの作品について、「チャイコフスキーストラヴィンスキー?と思うようなメロディが登場します」と解説。「しゃべりすぎてもいけないので」と、ここで区切り、ごあいさつしてトーク終了となりました。


1曲目は、バラキレフ「3つのロシア民謡の主題による序曲」。パワフルな序奏に続いて登場した主題は、素朴でゆったりした優しい響き。木管が歌うのを支える、高音弦の透明感や弦ピッチカートのパート毎のリレーが印象的でした。次に登場した主題が、チャイ4でも引用されている「野に立つ白樺」でしょうか?クラリネットから始まった素朴な主題が変化しながらテンポ良く流れ、派手な盛り上がりに。弦ピッチカートやシンバルと大太鼓が活躍するところ等、楽しく聴けました。ただ、私はストラヴィンスキーバレエ音楽ペトルーシカ」にも引用された「ピーテル街道に沿って」がどこに登場したかを掴めず(ごめんなさい!)。静かに消え入るラストは木管群、中でもフルートの余韻がとても印象的でした。

ソリスト松田華音さんをお迎えして、チャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番」。第1楽章、開口一番のカッコ良すぎるホルンとパワフルなオケに続いて、ピアノの登場。なんて華やか!なんて生命力!低音から高音まで自在に駆け抜ける躍動感や音のきらびやかさに、私は瞬時に心掴まれました。ゴージャスなオケの、シーンを変えた金管群の温かな音色が心に染み入り、続くピアノは細かくステップを踏むような前のめりな演奏。また次にシーンを変えた木管群に続いたピアノは切なく美しく歌う演奏と、その変化が素敵でした。そこから厚みを増していくピアノの力強さがインパクト大!弦のピッチカートに乗って細かく音を刻むピアノと、弦の滑らかな流れに乗ってピアノもまた滑らかに奏でる、ここにも表情の変化が。長いピアノ独奏では、キラキラした高音にぐっと深みのある低音といった多彩な音を、緩急つけドラマチックに聴かせてくださいました。オケと一緒に駆け抜けた楽章締めくくりの重厚さがすごい!第2楽章、穏やかな流れで、やわらかなフルート独奏とオーボエ独奏にまず心奪われました。対話するピアノ独奏もまたやわらかな響きで、前楽章とは違う魅力がありました。同じメロディをチェロの2トップが歌ったのも素敵!後半、ホルンの牧歌的な響きに重なるピアノ独奏は、やわらかさだけでなくきらびやかさが加わったと感じ、その繊細な変化がとても印象的でした。第3楽章は、ピアノが奏でる有名なメロディがクールでカッコイイ!輪郭がくっきりと感じられ、舞曲のようなリズム感でも洗練された都会的な印象を受けました。オケとテンポよく掛け合うのが気持ちイイ!オケが沈黙したところでのピアノ独奏は、華やかと力強さそして音の厚みが素晴らしく、圧倒されました。クライマックスでは、壮大なオケと対等な、ピアノの音の多さとパワフルさがすごい!なんて贅沢な音の響き!ロシア音楽の伝道師・松田華音さんと札響によるチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番。この最高のコラボによる好演はとても清々しく、私は気分爽快になりました。

ソリストアンコールは、チャイコフスキーの18の小品op.72より第18曲「踊りの情景(トレパークへの誘い)」。はじめのうちは休符を挟みながらタッ・タンというリズムで、ダンスする2人が互いに距離感を確かめているようにも感じました。次第にテンポが速くなり、2人がくるくると回って踊るような音楽が楽しい!また私はチャイコフスキーの「くるみ割り人形」にある「トレパーク」を思い起こし、それと同じリズムを感じられたのもうれしかったです。協奏曲のダイナミックで厚みのあるピアノから、素朴な舞曲の楽しさまで、松田華音さんのピアノの魅力を堪能できました。素晴らしい演奏をありがとうございました!


後半。最初は、グリンカルスランとリュドミラ」序曲。冒頭、弦の高速演奏がすごい!勢いのある華やかな音楽に気分があがりました。独特のリズムが楽しく、一度聴いたら忘れられない元気なメロディ!それを弦が歌うと華やかで、木管が歌うとなんだかかわいらしい感じがしました。また、チェロが優雅に奏でた民謡風のメロディを引き継いだヴァイオリンがふと陰りを見せたのが印象に残っています。金管群が華々しいフィナーレがカッコイイ!

ムソルグスキー「ホヴァンシチナ」より"モスクワ川の夜明け"。今回はムソルグスキーと同じくロシア5人組リムスキー=コルサコフによる編曲版が取り上げられました。ヴィオラ、続いてフルートによる出だしは、穏やかに朝日が差し込んできたかのよう。木管が順番に歌う、美しくどこか哀しいメロディが心に染み入りました。主役の木管を下支えする弦も良い仕事をしていて、高音のトレモロや音階を駆け上る演奏は川のさざ波のよう。壮大なホルンの下で、ティンパニタムタムがごく控えめに入っていたのも印象的でした。ラストのフルートの余韻が素敵!

ボロディンイーゴリ公」より"だったん人の踊り"。個人的には、実家の父が聴いていた合唱入りバージョンの録音でなじんでいましたが、今回のように管弦楽のみでの演奏もとても楽しめました。冒頭の木管群の美しさ!そして、来ましたオーボエ独奏!東洋的なメロディを首席の関さんが艶やかに魅力的に聴かせてくださいました。引き継いだイングリッシュホルン独奏は宮城さん。オーボエより低い音色での歌が音楽に深みを作って素敵でした。北の大地を駆け抜けるような壮大なところを経て、ティンパニの強打からの全員参加の大盛り上がり!打楽器大活躍!音階を一歩ずつ上がるところも、一気に下るところも、重低音が効いたところも、超カッコイイ!ダイナミックな響きに理屈抜きで血が騒ぎます!また低音金管とホルンが個性的なザラザラした音を発して、ある種の不気味さを演出したのもとても良かったです。盛り上がりの谷間での、次を期待させる弦のピッチカート&音を刻む演奏とスピード感ある木管にゾクゾク。冒頭のオーボエのメロディを弦が奏でたところが美しく、ほっと一息つけました。パワフルで明るいフィナーレまで、気合いの入った全力疾走の演奏に、会場の熱気も最高潮に達したようでした。

ハチャトゥリアン「ガイーヌ」より。まずは「剣の舞」。はじめのティンパニ&打楽器陣からガツンと来る、高速大迫力テンションMAXの演奏!否応なしに勢いに飲み込まれました。木琴がキレッキレ!メロディを高速で歌う木管群と金管群の大音量が気持ちイイ!中盤ほんの少し落ち着いたところがあり、チェロとサックスの重なりが素敵でした。続いて「子守歌」は、雰囲気がガラリと変わり穏やかな音楽に。オーボエ独奏から入った、木管群の少し哀しげな歌がとっても素敵!メロディを引き継いだ弦が美しい!鉄琴(演奏は先ほどの木琴と同じく大家さん)が控えめにアクセントを入れたのも印象的でした。ラストの高音でフェードアウトしたフルートが素敵!ちなみに息子は有名な「剣の舞」とのギャップからか、この「子守歌」の演奏がとても印象に残っていると後から言っていました。

プログラム最後の演目は、チャイコフスキー「スラヴ行進曲」。低弦とティンパニによるぐっと重厚な出だしに心掴まれ、ロシアの民謡風の哀愁あるメロディが心に染み入りました。音の数が多い弦楽合奏(この演奏には圧倒されました)は確実に歩みを進めながら徐々にエネルギーを増していき、感情の高まりが頂点に。そこからの壮大な演奏がすごい!金管のパワフルかつ温かな音色と、リズムを刻むパンチの効いた打楽器群。中でも何度もジャーンと鳴るシンバルの存在感!3日前の「新世界より」で一度きりのシンバルを控えめに鳴らした大垣内さんの快演はとても清々しかったです。フィナーレでは、打楽器だけでなく弦も音を刻んで行進曲のリズムを作り、全員参加の大迫力の中、トランペットのファンファーレが超カッコイイ!可憐さ美しさのバレエ音楽とはひと味違う、チャイコフスキーの骨太な魅力が感じられ、最後に思いっきり気分があがりました!

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アンコールは、チャイコフスキー「弦楽セレナーデ」よりワルツ。優雅で美しい音楽を札響の弦で味わえる幸せ!他の弦が沈黙し、ヴァイオリンだけで奏でたところは天使が舞い降りたかと思うほどの美しさ!そしてチェロが主役となって最初のメロディを奏でた、甘く優しい音色が素敵すぎました。このチェロはヴァイオリンに恋してますよきっと。私はバレエ音楽の華やかなワルツももちろん好きですが、弦のみで穏やかに美しく奏でるワルツも好き!ちなみに息子はこの曲を気に入ったようで、演奏が終わってすぐ「今のは何て曲?」と私に質問。「チャイコちゃんの弦楽セレナーデの第2楽章だと思う」と答えた私は、ホールを出てからロビーでアンコールボードを確認し、ほっとしました。よかった合ってた(笑)。おかげさまで親子で楽しい時間を過ごすことが出来ました。松本宗利音さんと札響の皆様、素敵な演奏をありがとうございました!松本さん、これからも時々は札響に里帰りしてくださいね。既に決まっている2023年年末の第九の指揮、楽しみです!


この日の3日前に聴いた「第19回 北海道信用金庫 札響クラシック&ポップスConcert」(2022/11/03)。尾高忠明さん指揮による定番曲の安心感とジョン・ウィリアムズの映画音楽。ソロ演奏はさすが私達のコンミスと首席!耳なじみある音楽を迫力のサウンドで思いっきり楽しませて頂きました。

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こちらも私は高2の息子と一緒に聴きました。「Kitaraあ・ら・かると きがるにオーケストラ ココロおどるアメリカン・ミュージック」(2022/05/03)。札響を指揮したのは、松本宗利音さんと同期の太田弦さん!角野隼斗さんのピアノは自由な感じで、ソリストもオケもノリノリ♪マエストロのコスプレまで、モリモリMAXな楽しい演奏会でした。

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約1年半前の演奏会になりますが、こちらも息子と一緒に聴きました。「北海道応援コンサート~親子で聴くチャイコフスキー@市民ホール」(2021/03/19)。指揮・松本宗利音さんと札響による、チャイコフスキーバレエ音楽の「いいとこ取り」コンサート。休憩なしの約60分間、親子でずっと夢中になれた演奏会でした。高校受験が終わってほっとしていたこの頃がまるで昨日のことのように感じられるのに、来年はもう大学受験……月日の経つのが早すぎます(苦笑)。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。