自由にしかし楽しく!クラシック音楽

クラシック音楽の演奏会や関連本などの感想を書くブログです。「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ(http://nyaon-c.hatenablog.com/)」の姉妹ブログです。

ウィステリアホール ふれあいコンサート Vol.3(2020/02) レポート

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ウィステリアホールの「ふれあいコンサート」は、事前に先着順でもらえる整理券があれば入れる、入場無料で休憩なし約1時間の演奏会。今回レポートするのはコントラバスとピアノのコンサートです。しかもコントラバスは札響首席奏者の吉田聖也さん!低音の弦が好きな私としては絶対に外せません!私は整理券配布開始直後にホールへ整理券を頂きにうかがい、当日を楽しみに待っていました。また約2週間前の札響定期ではロビコンがなんとコントラバス四重奏で、私は首席奏者の吉田さんはじめコントラバスに大注目しはじめていたので、個人的には超タイムリーでした。

時節柄、ホールの前には手の消毒液が設置されており、入場前に手の消毒を求められました。お年寄りのための施設にあるホールですし、こういった面はしっかり対策を講じるという責任感に頭が下がります。またコンサートを中止にせず開催くださったことに改めて感謝いたします。全席自由席でしたが、私はお一人様の身軽さで、開演ギリギリの時間に着いても前の方の真ん中あたりにポツンと空いた席に座ることができました。

では感想に進みます。いつものように素人コメントであることをご了承下さい。またひどい間違いは指摘くださいますようお願いします。


ウィステリアホール ふれあいコンサートVol.3
2020年2月17日(月)19:00~ ウィステリアホール

【演奏】
吉田聖也(コントラバス
新堀聡子(ピアノ)

【曲目】

ピアノはベーゼンドルファーでした。


ツイッターでの速報は以下。


真冬の札幌なのに、もうとにかくアツイ!キャパ約180名の会場はほぼ満席、奏者との距離が近いホールで一体感を味わえるライブの良さ!曲の合間に上手にかけ声したかたがいらして(ブラボーではなくYEAH!)、地下の薄暗いホールがまるでライブハウスのような雰囲気に。もちろん演奏中はいつものクラシック音楽の演奏会と同様、皆様静かに聴いていましたよ。こんな感じで楽しめたのは新鮮でしたし、言うまでもなく演奏も大変素晴らしくて、これが無料で聴けてよいのかしら?なんて思ったり。とにかくあの場にいた観客の一人だった私は幸せ者です。そしてツイッターでは私は腕の筋肉だの手の甲の血管だのとばかり騒いで、肝心の演奏内容のことをまともにツイートしていなくてごめんなさい。私、子供二人いて上は中学生なんですけど、案外免疫なくて(言い訳)。吉田さんの衣装は、オケだとかっちり燕尾服なのに今回は黒シャツ。首元も開いてましたが、それより袖は肘までだったことに目が釘付けになりました私。せっかくのチャンス(?)、腕から手首から指先から全部遠慮せずにガン見したかったんですが、実はまともに見ることはできなかったんですよ本当です。ちなみに演奏はちゃんと熱心に聴いてました念のため。それに演奏の良さがあってのビジュアルですからねっ!演奏内容についてはこのブログ記事で、私が書ける範囲で書きますので許してください。

吉田さんはコントラバスを抱えて登場し、ピアノの新堀さんもステージへ。拍手で迎えられ、すぐに演奏開始です。1曲目はピアソラ「キーチョ」。いきなり重低音がお腹にぐっと響いてきました。振動が直に来るのは小さな会場ならではの良さ。ピアノ伴奏は入りましたが、コントラバス独奏が多い曲で、タンゴ独特の響きが重低音で奏でられると超カッコイイ!ピアノの見せ場でのベースを作るのもまたコントラバスの本領発揮!最初から良すぎてしびれます!演奏後の吉田さんの解説によると、ピアソラが自身のバンドのベーシスト(キーチョさん)のために書いた曲とのこと。タンゴといえばバンドネオン決め打ちかと思いきや、コントラバスのためのキーチョや、ロストロポーヴィチのために書かれたというチェロのためのル・グラン・タンゴが名曲としてあります。それらを書いたピアソラは偉いです、うん。そして難曲を演奏してくださる演奏家のかたはもっと偉いです。偉そうにスミマセン。

1曲目の演奏後に吉田さんがマイクを持ってお話されました。コントラバスはオケでは下から支える役割で「地味」、目立つ瞬間といえば電車で移動中くらい、とのお話で会場には笑いが起きました。コントラバスの魅力を知って欲しいとの言葉には会場からは拍手。2曲目はラフマニノフ「ヴォカリーズ」。演奏前の解説によると、はじめはコントラバスのために書くつもりだった曲との説もあるそうですね。私はヴァイオリンとピアノでの演奏なら何度も録音で聞いていますが、生演奏で聴くのは初めて。美メロをコントラバスが奏でると、まるで寡黙で口下手な男性が思いを朴訥に語っているかのようでためいきがでます。切ないピアノの音色も相まって、心に染み入りました。吉田さんは「コントラバスのための曲として発表されたらここまで売れなかった気がする」と仰っていましたが、ご謙遜。超素敵でした!

2曲目の後、新堀さんが退場。3曲目はコントラバス独奏でギュットラー「グリーンスリーブスの主題による変奏曲」。ギュットラーはコントラバス弾きなのだそう。おなじみグリーンスリーブスの耳慣れたメロディが、曲が進むにつれ少しずつ変化していきます。いつもの重低音だけでなく、普段はあまり聴けない高音域での演奏や、コントラバス一台なのに高音と低音を同時に奏でたり、ピチカートで歌うようなところがあったりと、もうずっと聴いていたいほどコントラバスの魅力満載な演奏でした。

ピアノの新堀さんがステージへ戻ってきて、4曲目はデザンクロ「アリアとロンド」。演奏前の吉田さんのお話では、ピアノも大活躍する曲との紹介があり、コントラバスはジャズの土台になるとのこと。1曲前は民謡でこの曲はジャズと、様々な表情を持つのがコントラバスの魅力とも仰っていました。前半はジャズの雰囲気ではなくチェロ(といってもチェロには出せないような重低音も入ってきますが)とピアノのような美メロをゆったり楽しめる感じの印象でした。私が聴いたことがある中では一番高いコントラバスの音があり、声の低い男性が裏声を出しているかのようななんだか不思議な感覚に。後半になると、ジャズのノリですねこれ。この会場にぴったりな大人な雰囲気で、ジャズ風のピアノにあわせるコントラバスのピチカートもまたジャズ風。しかしコントラバス独奏も多く、独奏の部分での聴かせどころも存分に楽しませて頂きました。世の中には私が知らないだけで素敵な曲がいっぱいあるんですね。もちろんそれらを素晴らしい演奏で聴かせてくださる奏者の皆様に感謝です。

4曲目の後は特にお話はなくそのまま5曲目いずみたく見上げてごらん夜の星をの演奏へ。歌でいうところの1番を低音、2番を1オクターブ上で演奏したり、ピアノに主旋律を譲ったときにピチカートで伴奏したりと、これまたコントラバスの魅力たっぷりの演奏でした。コントラバスは「歌える」し、縁の下の力持ちにだってなれる、うん。

プログラム最後の曲に入る前に「宣伝」がありました。吉田さんは自身が参加しているコントラバス五重奏団"BLACK BASS QUINTET"とヴァイオリンとのユニット"GALI×BULI"についての紹介とCD販売のご案内、そして「ベースを作るコントラバスも聴きに来てください」と札響の宣伝をして会場からは拍手が。コントラバスは主役だってできるのに、誇りを持って下支えをしておられるんですね。どこまで男前なんでしょう!惚れてまうやろー!そして新堀さんからは3/1の演奏会についてのお話が。配布されたプロフィールによると、新堀さんはピアノ伴奏だけでなくウィステリアホールの演奏会のプロデュースをされているとのこと。いつも素敵な企画とピアノ伴奏をありがとうございます!

プログラム最後となる6曲目は、ヴァイオリンでの演奏でおなじみのモンティ「チャルダッシュコントラバスで。冒頭から重低音が超カッコイイ!そして凄いです超絶技巧!ヴァイオリンは楽器が小さい分、取り回しは比較的ラク(すみません見た感じのイメージだけで言ってます)なのかもしれませんが、こんなに大きなコントラバスを自在に演奏する姿は目で見ても凄すぎでした。素晴らしい!きっとピアノパートも難しい曲なのだと思いますが、私はもうずっとコントラバスの奏でる音と演奏の手元に夢中になっていました。

会場は大拍手の後すぐ手拍子になり、お二人は何度も舞台に戻ってこられました。アンコールはサン=サーンス「象」。同じサン=サーンスの「動物の謝肉祭」では、チェロの場合は「白鳥」がアンコール曲として鉄板です。「白鳥」は優雅で、いつも主役級のチェロにぴったり。しかし今回私はコントラバスが奏でる「象」を聴いて、なんだかユーモラスでコントラバスへの愛しさが増しました。チェロが文武両道かつイケメンでクラスのリーダータイプなら、コントラバスは主役ではないけれどちょっと面白いムードメーカーで、クラスに彼がいて良かったと思える存在なのかも。もう大好きです!

終演後、前のスクリーンに3/1の演奏会(ウィステリアホール プレミアムクラシックⅣ)にご出演のバリトン歌手のかたによる演奏会プログラムの解説動画が流れました(※注:この公演は2/20に中止が発表されました。残念ですが仕方がありません。チケット払い戻しに行かなきゃ…)。私は配布されたアンケートに記入してから退席。そして1階エレベーターホールでCD販売と奏者の皆様によるお見送りがありました。私はコントラバス五重奏のCDを1枚購入して吉田さんにサインを頂き(小さくお書きになったのは他のメンバーのための余白を残してくださったのでしょうか?)、ピアノの新堀さんにもお礼と3/1うかがいますと伝え(※また別の機会に必ず!)、会場を後にしました。


コンサート後に吉田さんがツイッターに「もう一音も弾けないほど抜け殻になりました」と投稿されていました。全力投球、最後の最後まで素晴らしい演奏を本当にありがとうございました。立ちっぱなしでずっと忙しく演奏されているわけですし、高音域での演奏では長身を前屈みにして無茶な姿勢をとることになりますし、大変だったことと存じます。おかげさまで私達は大変幸せな時間を過ごすことが出来ました。次回はチケット喜んで買いますから、またコントラバスが主役の演奏会をぜひ開催お願いします。もちろん、札響でベースを作るコントラバスも聴きにうかがいます!

そして私が購入したCDについては、ツイッターでミニレポートをしましたので以下に貼り付けます。皆様ぜひ聴いてください!


吉田さんが出演されたロビーコンサート、私は2020年2月の札響定期演奏会で聴きました。曲はデトレフ・グラナートコントラバス四重奏のための4つの小品」。このロビコンが超良すぎて、私は本プログラムのオケでもコントラバスばかりを見ていたほど。その時のレポートは弊ブログにあります。以下のリンクからどうぞ。 

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ウィステリアホールのふれあいコンサート、私は前回のVol.2(2019/12)も聴きました。クリスマスをテーマにしたとても楽しいコンサートでした。金管五重奏で、現役札響奏者お二人と元札響奏者お一人が参加した編成。その時のレポートも弊ブログにあります。以下のリンクからどうぞ。 

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

札幌交響楽団 第626回定期演奏会(土曜昼公演) (2020/02) レポート

はじめにお知らせ。今回の札幌交響楽団第626回定期演奏会(金曜夜公演)は、3/1 14:00~ NHK-FMで放送予定だそうです。皆様ぜひご聴取ください。

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また、2/7(金)にはサントリーホールにて札幌交響楽団 東京公演2020があります。今回の定期演奏会の演目のうち、モーツァルト交響曲第39番」はマーラー亡き子をしのぶ歌」に変更となります。バリトンはディートリヒ・ヘンシェル。首都圏にお住まいの皆様はぜひお聴きください!

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2019-2020シーズン「バーメルトの四季」のラストとなる「冬」公演は正統派独墺プログラム。キタラに隣接する公園の池はスケートリンクのように凍り、道もツルツルになっている冬真っ盛り。しかし開演前に当日券売り場前には長蛇の列ができていて、真冬の公演でも始まる前から大変な熱気を感じました。

それでは演奏会の感想に進みます。いつものように素人コメントであることをご了承下さい。またひどい間違いは指摘くださいますようお願いします。


札幌交響楽団 第626回定期演奏会(土曜昼公演)
2020年02月01日(土) 14:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
マティアス・バーメルト

管弦楽
札幌交響楽団

【曲目】


今回のコンサートマスターは田島高宏さんでした。

ツイッターでの速報は以下。


個人的にはベト7がとにかく良かったんです!私は以前企業主催の札響の演奏会でベト7を聴いていますが、今回は前回よりずっと楽しめました。以前は塊でしか聞こえなかった音が、今回は各パートがはっきりと捉えられた気がします。私の経験値が上がった?いえ演奏の質そのものが向上しているのだと思います。ベートーヴェン生誕250年のはじめにこんなに素敵なベートーヴェンが聴けたことに感謝します。私はこの日ちょっと貧血がひどくて体調最悪だったのですが、聴きに来て本当に良かったです。

ロビーコンサートデトレフ・グラナートコントラバス四重奏のための4つの小品」。バラード、ワルツ、シャンソン、ロマンスの4曲を続けての演奏。コントラバス大好きな私は超楽しみにしていました。コントラバスは下川朗さん、首席奏者の吉田聖也さん、副首席奏者の稲橋賢二さん、飯田啓典さん。奏者の皆様が大きなコントラバスを抱えて颯爽と歩いてこられる姿を拝見した時点で、既に私の完敗です。しかも4人も!どうしよう!正式入団したばかりの下川さんが弦楽四重奏で言うところの第1ヴァイオリンのポジションを担当し、少し小ぶりのコントラバスで主に主旋律を演奏されていました。コントラバスは意外に音域広くて、メロディを奏でるのもお手の物なんですね。しかし楽器が大きいため、高音域では楽器の上から前屈みになって下の方の弦を押さえる姿勢になってなかなかツラそうでした。でも聴き手としては音楽そのものを大変楽しませて頂きました!私は4曲の最初から最後まで全部好きになったのですが、特にシャンソンのリズム感と響きが印象的で、あっという間に終わったのが惜しいと思ったほど。「歌う」のはチェロのようでありながら、低音域やピチカートの迫力はやはり格が違う感じで、理屈じゃなくお腹の下の方に響いてくる振動がたまらなく良いです。まってまって!ああすごい!といちいち心の中で叫んでいました。低音がズンズン響いてくるのを全身で感じ取れるのは、演奏をすぐ近くで聴けるロビコンならでは。大袈裟じゃなく「立っていられない」って思ったのは、貧血のせいではないはず(笑)。


会場に入ると、つい先ほどまでロビコンで演奏していらしたコントラバスの皆様が既に舞台上で自主練をしていました。ベト7という鉄板の演目のためか客入りは上々で、9割以上の席が埋まっていました。ちなみに今回私が割り当てられた席は2階LBブロック。少しステージは遠かったですが全体が俯瞰できてよかったです。ただ、ちょうど首席チェロ奏者のかたが指揮のバーメルトさんの影に隠れてしまう角度で、個人的にそれだけはツラかったです(苦笑)。そして今回はバーメルトさんは全曲暗譜(!)で、指揮者の譜面台はありませんでした。

1曲目はウェーベルン編曲によるシューベルト「ドイツ舞曲D820(管弦楽版)」。曲目解説によると、バーメルトさんの強い思い入れがあり演目に組まれた曲とのこと。演奏機会は少なく、札響では1981年4月の定期演奏会(指揮:岩城宏之)に一度演奏したきりだったようです。編成は小さく、弦と木管(フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2)のみ。ウェーベルンの師であるシェーンベルクが編曲したブラームスのピアノ四重奏曲第1番には金管と多彩な打楽器が入っていたので、少し意外でした。「舞曲」とはいっても、全体的にゆったりしていたためか私には「踊る」ようにはあまり感じられず、弦の美しさと木管の温かみのある音色が心地よかったです。ピアノ独奏曲という原曲とも聞き比べてみたいと思いました。今回聴いたオケでの演奏では時々ほんの一瞬悲しげな雰囲気になるところが印象的で、そこがピアノではどのような演奏をされるのかが気になります。

2曲目はモーツァルト交響曲第39番」。1曲目の編成にティンパニとトランペット2人が加わり、弦の人数も増えてコントラバスは7人体制に。金管が少ないのはともかく、木管オーボエはナシでフルートも1人というのが珍しいなと思いました。しかしフルートは1人でも圧倒的な存在感。もちろん掛け合うクラリネットも負けてないです。第1楽章と第4楽章では、ヴァイオリンが高音の美メロを奏でているときの低音の弦が個人的にはツボでした。チェロだけでなくコントラバスも忙しそう。それでもベートーヴェンブラームスとは違う活かし方のように感じ、主旋律以外のところに作曲家の個性が出るのかもしれないなと思ったり。モーツァルトのゆったりした美メロを楽しめるはずの第2楽章は睡魔に襲われて(ごめんなさい!でも寝てません)、その鼓動について行けば大丈夫と勝手に頼りにしているティンパニもお休みしているしで、ぼんやり聴いていたのを告白します。第3楽章は第1楽章と少し似た堂々としたところがあったおかげで比較的聴けました。私はモーツァルトには慣れていないだけで、聴き方さえマスターできれば楽しめるようになると思っています。体調万全なときに再チャレンジします。

休憩後はベートーヴェン交響曲第7番」。プログラムによると、札響での演奏歴は実に140回(!)。人気がある曲は演奏機会も多いんですね。木管とトランペットは2管ずつのオーソドックスな編成。最初からパワフルなベートーヴェン節全開の第1楽章、全員合奏では低音の弦にいちいちゾクゾクしていました。やはりモーツァルトとはチェロとコントラバスの使い方が違います。穏やかなところで歌う木管が素敵。バーメルトさんがこだわるという強弱の「弱」の部分でも、各パートがしっかりと演奏しているのが伝わってきました。個人的にはこの曲で唯一の短調である第2楽章が好きです。冒頭、管楽器の音が「ブラ4第4楽章とそっくり」と感じ、トロンボーンはいないのに不思議だなと。基本は葬送行進曲のような独特のリズムとメロディの繰り返しですが、変化をつけながら主旋律を各パートでリレーしていてずっと聴いていたいほど。そして何より低音が効いているのが良くて、私はこの日特にコントラバスに注目していたのでうれしかったです。第2楽章があるからベト7は映えるんだと思います。第3楽章は前の楽章から雰囲気ががらりと変わって、このリズム感が良いです!途中少しゆったりするところでは、ホルンはじめ木管が歌うのに伴奏する控えめな高音の弦がまた素敵で。そしてティンパニがここぞというときにバシッとキメてくださる!頼りにしてますティンパニ!そのまま続けて大盛り上がりの第4楽章へ。すっごい!全員が全力投球の素晴らしい演奏で、文句なしに気分が高揚します。ベートーヴェンは生命力あふれる人物だったんでしょうねきっと。これを聴いて「良い」と感じられるうちは私もまだ大丈夫と思いたいです。そして、うん確かにブラボーが早い人がいましたね。私も気になりました。ただ、個人的にはこの後のモーツァルトの繊細な音楽の最中にビニールがさごそする音が響いたのがもっと残念でした。色々な人がいますね…。演奏が素晴らしかっただけに、演奏とは違うところでがっかりさせられると気になってしまいます。自分も気を付けようと思いました。

今回はほぼ同じ演目での東京公演を控えていることもあり、通常の定期演奏会では行われないアンコールがありました。モーツァルト「カッサシオンK.63より"アンダンテ"」。弦のみでの演奏で、穏やかな美しい曲を札響の透明感のある響きで楽しませて頂きました。面白いなと思ったのが、コントラバスとチェロはひたすらピチカートで、ヴィオラもごくたまに弦を擦っていましたが基本ピチカートだったこと。録音だとおそらくよくわからないピチカートの響きも堪能でき、ライブの良さを改めて実感しました。サントリーホールでの東京公演でもきっと喜ばれると思います!東京公演のご盛会をお祈りいたします。

 

きっと私は何もわかっていないんです。分かる人であれば気づけるところだって華麗にスルーしてしまっているはず。それでも今ここにしかない音楽を、その場にいて肌で感じることができるのはなによりうれしい。いつだってその時の自分なりに楽しむ、それでいいと考えています。そしてどんなに内容が薄くても、その時の気持ちを書き記しておきたいなという気持ちもあり、実行しています。私のような素人の言うことを鵜呑みにする人はいないと思いますが、私が「こんなふうに感じたよ」と発信することはどうぞ大目に見てやってください。


私が札響定期演奏会デビューしたのはちょうど一年前のバーメルトさん指揮による演奏会でした。私はブラ2がお目当てでしたが前半2曲にも打ちのめされて、大変思い出深いデビュー戦となりました。おそるおそる書いたレビューは以下のリンクからどうぞ。 

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2019-2020シーズン「バーメルトの四季」の「春」公演はフランスプログラム。普段自分では聞かない曲を大いに楽しませて頂きました。また練習見学会もあり、人が少ないキタラは音がものすごくキレイでびっくりしたんですよ。レビューは以下のリンクからどうぞ。 

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「バーメルトの四季」の「夏」公演はブラームス中心のプログラム。個人的に大好きな演目揃いでしかもテレビ放送まであった記念すべき演奏会です。以下のリンクは演奏会そのもののレビュー記事です。なおテレビ番組のレビューも別途弊ブログにアップしています。 

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「バーメルトの四季」の「秋」公演はモーツァルトワーグナー。私は初めての名曲シリーズで、普段聞かない作曲家の曲を思いの外楽しめたのはうれしい誤算でした。また、セット券購入者対象のバーメルトさんとの交流会もあり、すぐ近くでバーメルトさんとお話したり記念撮影をしたりと生涯忘れられない思い出となりました。レビューは以下のリンクからどうぞ。 

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最後に。「2020-2021シーズン『札幌交響楽団主催演奏会』ラインナップ」が発表されています!

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セット券もバラエティに富んだ企画揃い。私はセット券を複数購入する方向で検討していて、最終的には演目と特典で決めようと考えています。札響のある人生は素敵です♪


最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

「さっぽろ劇場ジャーナル」第4号(2019年9月発行) 感想

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2019年9月末に発行された「さっぽろ劇場ジャーナル」第4号。年が明けてしまいましたが、遅ればせながら感想を書くことにしました。実は発行された当初、個人的に少し思うところがあって感想を書けずにいました。ところが年末年始の帰省中に読み返したところ、なにこれ面白い!と素直に感じ、とにかく今の自分の考えを書き留めておこうと思ったのです。ふとした瞬間に改めて手に取り、読み返すことができるのが紙媒体の強みですね。何年か後に読み返したとき、私はきっと今とは違う感じ方をするでしょうし、そうであるなら今どのように読んだのかを書き留めておきたいと考えました。誰のためでもなく未来の私のために。

少し本筋とはズレた話になりますが、ジャーナル本紙の紙質は良いようで、スーツケースの中でもクシャクシャにならず、広げて読むときにはビシッときれいな状態になっていました。この先ずっと保存して何度も読み返すことを考えると、上質な紙で作られているのはありがたいです。余談ついでに。ブラームスは、自作品を売り込みに来た無名の作曲家に「良い五線紙だね、どこで買ったの?」と言ったそうですね。ひどい人だわ(笑)。もちろん私は紙のことばかりではなくちゃんと中身について書きますよ。言うまでも無く、「さっぽろ劇場ジャーナル」の文章はいずれも骨太で内容充実していますから、中身こそが大事!

ちなみに前回第3号の感想も弊ブログにアップしています。以下のリンクからどうぞ。お取り寄せ方法についても紹介しています。 

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熱心に書いたつもりの第3号のレビュー記事、なんと検索圏外なんですよね…。もしかするとステマと判断されてペナルティを受けたのかもしれません。改めてお断りしておきますが、弊ブログの記事はいずれも私自身が書きたいことを自由に書いています。アフィリエイトすら行っていない弊ブログにおいて、誰かに頼まれたテーマで書いたり宣伝を請け負ったりすることは、今までもこれからも絶対にありません。そして全ページレビューをする人はめずらしいので目立つかもしれませんが、読者代表を気取るつもりはさらさらないです。専門的なことは何も分からず思いつきしか書けない私ですから、意味があるとするなら書いている私が楽しい、それだけです。なお前回第3号の感想は結果的にほぼ100%肯定になりましたが、今回第4号では否定的なことも書いています。また前回と異なり、今回は感想を書くことを事前に編集部の皆様に伝えていませんし、私のツイッターアカウントでの案内もしません。ブックマークや検索経由で見つけてくださったかたのみに読んで頂けたらそれで良いと考えています。いつも私の長文にお付き合いくださる読者の皆様には感謝しています。

それでは目次に沿って順番に見ていきます。ちなみに「さっぽろ劇場ジャーナル」第4号にレビューが掲載されているコンサートのうち、私が実際に聴いたのは「PMF GALAコンサート」と「札響定期演奏会(4月から8月の4公演すべて)」です。思えばKitara大ホールにばかり足を運んでいた2019年度上半期でした。また今回は弊ブログのコンサートレビュー記事へのリンクは貼りませんので、興味を持たれたかたはお手数ですが過去記事アーカイブを遡ってお読み頂けましたら幸いです。


1面から3面は「PMF30周年」。まず1面では、さっぽろ芸術文化研究所代表の伊藤佐紀さんとPMFフレンズ(賛助会員)の吉川宗男さん、そして多田編集長による寄稿文が掲載されています。紙面を手に取り、一番はじめに目に入るところに一般のかたの文章があり、私は良い意味で驚きました。我が街札幌における音楽祭への思いは人それぞれあると思いますし、そんな私達と目線が近い人のお考えを紙面で読めるのはうれしいです。今後もこんな寄稿文や座談会などの企画があると面白いと思います。もちろんご無理のない範囲でお願いします。そして多田編集長による文章を拝読し、やはり私達とは別の目線で物事を見ていらっしゃるなと改めて思いました。昭和の「空洞化された理想主義」が平成で「露悪的な本音主義」に振り子の針が振れたというお話は、私も肌感覚でぼんやりそう思っていたことだったので大変面白く拝読しました。平成の30年とともにあったPMFが時代の変遷とともに今後どのようになっていくのか、私もしっかり見届けようと思います。しかし私今までこんなこと考えもしなかったです…。マーラーを頻繁に取り上げるのは、大編成のためアカデミー生が全員参加できるから程度にしか思っていませんでした。とはいえ機械的な決定のような無意識の部分にこそ本質が現れるのかもしれませんね。

2面の上半分はPMF Pick up!(1)としてGALAコンサート(マリン・オルソップ指揮)を取り上げています。私が今年のPMFの大きなコンサートで唯一聴いたものだったので、興味深く拝読しました。今年のオーケストラ公演で一番かつ近年でも最高レベルの演奏との評価、素直にうれしいですし私はこの公演を選んでよかったと思いました。またGALAコンサートは演目が多いためか、記事で触れられた演目はごく一部のピックアップでした。メインで解説しているのはプロコフィエフ「古典交響曲」。正直私はノーマークの曲でしたが(申し訳ありません)、素晴らしい演奏だったのですね。私もう一度聴き直したいです。続いて講師陣も参加したR.シュトラウス「バラの騎士組曲」も高評価。なお、多くの人が注目するであろう、ゲストのスターソリストについてはごく軽く触れるにとどめていました。

2面の下半分はPMF2019 その他の公演をダイジェストで。大小様々なコンサートが開催されるPMF、今回こちらで取り上げられているのは「ホストシティオーケストラ演奏会(バボラク指揮)」「PMFプレミアムコンサート(エッシェンバッハ指揮)」「hitaruスペシャルコンサート(クリスチャン・ナップ指揮)」そして「PMFオーケストラ演奏会(ゲルギエフ指揮)」。重量級の公演揃いにもかかわらず、この限られた字数で重要ポイントをきちっとおさえているのはさすがです。連日コンサート三昧だった音楽ファンのかたなら、復習にきっと役立ちますね。なお上のGALAコンサートとは違い、レビューは全体的に注文が多い印象でした。今回のアカデミー生の技量は高いとのことなので、やはり超多忙な世界的指揮者の問題?と考えるのは自然の流れかも。最後の方に書かれてある、カリスマ指揮者が統率する20世紀のカルチャーからの脱却は、確かにこれから考えるべき課題なのかもしれません。有名な世界的指揮者が札幌に来る!と市民の一部のミーハーな向きには歓迎されても、肝心の音楽の完成度がイマイチならいずれはそっぽ向かれてしまうでしょうし。そもそもアカデミー生の勉強の場としてうまく機能しないのは問題です。また、私は演奏そのものとは別の部分で「hitaruは大編成のオケが本当にクリアに響く」とあったのが目にとまりました。私が見えている範囲では、hitaruって評判が良くないので…。別の機会にhitaruの良さについて解説して頂けたらうれしいです。いずれはkitaraもぜひ!

しかし2面のこのスタイル、ぺらっと一枚めくって4面の札響定期も同じくピックアップとダイジェストの構成なんですよね。オケも指揮者も演目も違いますから内容は当然異なるものの、ぱっと見て似た感じのページが続くと、読者の中には読み飛ばしてしまう人もいるかもしれないなと少しだけ思いました。PMFは毎年のことなので、もし可能でしたら来年は少し変化をつけてみるとメリハリがつくかもしれません。PMFのオケは毎年一夏限りでお祭り要素もあると思いますから、札響定期よりは遊び心が入れやすそうです。例えば、その他の公演については多くのコンサートを聴き歩くファン数人と多田編集長による座談会をやってみるとか。実現可否を考えずに勝手を言っていますからどうぞ軽く聞き流してください。

3面上段ではPMF Pick up!(2)としてPMFウィーン演奏会を取り上げています。編集長は毎年お聴きになっているようで、例年の様子と比較しつつ今年のレポートをしておられます。今年は例年よりもお客さんを楽しませようという姿勢が見られたとのこと、よかったです。そしてたとえ相手が大ベテランであってもその演奏をまるっと信じず、弾けていなかった部分の指摘も容赦ないところはさすがです。また前年2018年の公演のレビューを拝読したときも同じ事を思ったのですが、この講師陣による弦楽四重奏団の演奏は、詰まるところ第1ヴァイオリンのライナー・キュッヒル次第で善し悪しが決まるのかな?という印象を受けました。

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なお、2018年の公演についてはweb版でレビューが公開されています。上のリンクから読めます。ちなみに2018年の公演は私も聴きました。猫に小判状態で当時の私はその良さをきちんとわからなかったのですが、「さっぽろ劇場ジャーナル」のレビューのおかげで復習でき助かりました。

3面下段の連載コラムについては最後に書きます。


4面から5面は「札幌交響楽団」。見開きで、左ページは定期演奏会のレビューです。偶然にも私は今回レビューされている札響定期はすべて聴いたので、私は自分の記憶を辿りつつレビューを拝読しました。そして自分が何もわかっていないことがわかり凹むわけですが(苦笑)、これは今に始まったことではないですし、めげずに読み進めます。上半分では、4月(尾高忠明指揮)・6月(ユベール・スダーン指揮)後半・8月(マティアス・バーメルト指揮)の公演を駆け足でレビューしています。私が自分のコンディションのせいでまともに聴くことが出来なかった4月、この日の尾高さんのお仕事はここ数年と比べて「元気がなかった」とのこと。尾高さんは休養に入る直前でしたし、精神的にも肉体的にもしんどかったのかもしれませんね。そんな大変な中でお仕事してくださったことに頭が下がります。私が前半の竹澤恭子お姉さまで燃え尽きてしまった6月後半は、こちらのレビューでは辛口評価。もしかすると指揮者にもオケにも疲れが出たのかな?とちらっと思いました。前半は1曲目も長かった上に、協奏曲はソリストの気迫を全力で受け止めなければならず、そこに来て後半は大編成かつ演奏時間も長かったので。そして個人的に大好きなブラームス中心プログラムで超気合いが入っていた8月は、ダイジェストコーナーの半分近くの字数を使ってレビューされており、こちらは良い点だけが書かれていました。個人的に大絶賛なのは私のえこひいきかも?と心配だったのが、少しだけ安心できました。

下半分のピックアップでは5月のフランスプログラム(マティアス・バーメルト指揮)を詳細に。私はセット券「バーメルトの四季」の特典である練習見学会にも参加した演奏会です。練習見学会でのバーメルトさんは私達に一つも専門的なことはおっしゃらず、一般的な言葉で曲についてのイメージをお話してくださいました。ちなみに1曲目は「緻密」、2曲目は「道化」、3曲目は「シリアス」とのこと。しかしお客さんにはそんなふわっとした言葉で説明したにもかかわらず、マエストロは細部までしっかりと音楽を創りあげていらしたわけですね。私、何も分からず聴いていたのが申し訳ないです。レビュー冒頭では「音楽はいつも統制下にある」「オーケストラとはこのように細かくコントロールすることが可能なのであり、また、そうしたときにだけ立ち現れる美があることを21世紀の私たちは知ってしまった」とバーメルトさんを高く評価。もちろんそれに応えられる札響だってすごい!と私は思います。「幻想という作品は、曲のプログラムがすべて言葉で説明されてしまっており演奏家に解釈の余地がないところがある」…そうですよね。なので私はてっきり高いレベルの指揮者とオケならどの演奏でも大差ないのではないかと誤解していました。ところがバーメルトさんと札響による演奏は「醒めたバーメルトの視線が、リアルよりもハイパーリアル的虚構の世界を切り開いた」と、大変素晴らしかったとのこと。スコアに忠実でありながら、そのすべてに意味があるように聴こえるとか、(バーメルトさんがこだわるという)弱音はオーケストラ芸術の極致のような難しさが目の前で難なく展開されているとか、大絶賛。上のダイジェストとは違い字数があるため、スコアの細かな部分でどのように演奏したかという分析も丁寧。私はこれしか聴いていないのは恵まれているはずなのですが、同時に比較対象を知らないためその良さをきちんとわかっていないもどかしさを感じます。前半2曲についても高評価でした。しかしたった一度通して聴いただけの生演奏をこれだけ細部にわたり分析できるとは、編集長はものすごい集中力で聴いておられますね。私は素人な上に音楽的知識がないため比べてはおこがましいのを承知の上で書きますが、自分がレビュー書くときはこんな細かなこと思い出せないです。まず知識がないため重要なところでも素通りしてしまうのが大きいとは自覚しています。そもそも演奏中の集中力はそんなに長くは続かず、お目当て以外の曲ではぼんやり聴いていたり、好きな曲でも緩徐楽章ではBGMのように聴いたりしているせいでもあると思います。演奏会から帰宅したら数日はぐったりしてレビュー着手まで時間も空くためますます忘れてしまいますし、結果「楽しかった!」という気持ちだけしか書けません(苦笑)。私の場合は一個人の趣味ですから自分が楽しければそれでいいのですが、それでも後からこうして詳細で専門的なレビューを拝読できるのはありがたいです。自分が感激したところの理由がわかることもあれば、スルーしてしまった部分でも後からその重要さを認識できることもあり、本当に助かっています。そしてできれば全部の公演をこのピックアップくらいの詳しさで読みたいです。とはいえ紙面に限りがある上に執筆のご負担は大きいと思われますから、贅沢は言えません。また個人的にはピックアップするならテレビ放送もあった8月にしてほしかったですが、これは個人の趣味ですので軽く流してください。

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なお6月公演の前半、ソリスト竹澤恭子によるプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第2番についてのレビューが特別篇としてWeb公開されています。上のリンクから読めます。私は3月のふきのとうホールでの竹澤恭子リサイタルで人生変わるほどの衝撃を受け、完全に彼女のとりこになってしまっていたため、札響と共演するこの定期演奏会はとても楽しみにしていました。金曜夜と土曜昼の2回聴き、またもや打ちのめされて、確かに魂が震える経験をしたのに「お姉様カッコ良すぎ!しびれる!」と語彙力お留守なことしか言えないのがもどかしかったです。しかし「さっぽろ劇場ジャーナル」のレビューではその詳細が明文化されているので助かります。同じ演奏を聴いていた強みで、演奏のどの部分の解説なのかがわかるのもうれしいです。「空間的多様性」なんて私は逆立ちしても出てこない表現にすごい!となったり、そうそうここはお姉様めちゃくちゃ速い演奏だったとうなずいたり。あといつも思うのが、四分=138といったテンポの判断はどうしているのかということ。時計を見ながら聴いている?それとも体感でわかる?そして譜例をあげての詳細な解説では、私の記憶がはっきりしているところとあいまいなところがあって、もう一度聴いて確かめたいなと叶わぬ願いですがついそう思ってしまいました。それにしても、編集長は竹澤恭子お姉様のこと大好きすぎますよね!いえ私も人のことは言えません(笑)。


札幌交響楽団」右ページは定期演奏会以外の記事です。左上では名曲シリーズから、下野竜也指揮で「作品の価値を刷新するような音楽が連続し唖然とさせられた」という6月を簡潔に、そして2018年あの地震で中止となり一年越しの本番が実現した鈴木秀美指揮の9月を取り上げています。2公演ともツイッター上での評判が良く、私も行けば良かったなと後から思った公演でしたので、レビューを拝読できうれしいです。往年の指揮者との比較で、札響の演奏が優れている趣旨の記述を拝見すると、私はまるで自分のことのようにうれしくなります(図々しい)。そして右上の札響の名盤(2)は、朝比奈隆指揮・1978年第188回定期演奏会の録音であるブルックナー交響曲第4番(ハース版)。朝比奈さんはブルックナーの大家で、当時の彼の特徴がわかるという73年に大フィルで振ったブル5も「ついでにぜひ聴いてほしい」と紹介されています。しかし「大自然のエネルギーに飲み込まれていく」と朝比奈さんを讃える一方で、当時の大フィルの下手さ(!)の形容がなかなかに辛辣です…。かたや78年の札響は「美感に驚く」(褒めてる!)。40年以上前の演奏ですので札響のメンバーは今ではほほとんど入れ替わっていると思われますが、「弦の明るい響きと伸びやかな歌はまぎれもなく今に通じる札響のそれだ」とのこと。人が入れ替わっても受け継がれる性質というのがあるのですね。また、ハース版とありますが、フィナーレだけはノヴァーク版になっているのだそうです。聞き取れる人であればこういったところも楽しめますね。朝比奈さんと札響の個性の「素晴らしい邂逅の記録」と大絶賛なので、私も機会があれば聴いてみたいと思います。ブルックナーは私にはまだ早い気がするのでそのうちに。あと、もしかするとツッコミ待ちかもしれないので一応触れておくと「厚生年金が吹っ飛ぶような宇宙の咆哮」って、「厚生年金会館」ですよねきっと。厚生年金は吹き飛んじゃ困るかなと。たんに誤字脱字の見落としでしたらごめんなさい。

右ページの下半分は9月4日の海道東征レビュー。北海道初演で、ネット上では大変話題となっていました。ちなみに配られた歌詞カードのルビがめちゃくちゃだというのも話題でしたが、これについては記事では触れられていませんでした。演奏については八章すべてを詳細にレビューしていて、記録としての価値も高いと思います。和製賛美歌・和製第九・ヨナ抜きといった MADE IN JAPAN を思わせる表現が見られる一方で、使用されている和声等がワーグナー的との指摘が大変興味深かったです。また、年末恒例の第九以外で独唱数名と合唱団が入る比較的めずらしい演奏でもあり、各独唱と合唱団の歌い方について詳細に書かれてあるのも大変良いと思いました。「太平洋戦争中に出陣の壮行に幾度も演奏」されたという海道東征。終盤の「音楽は常に政治利用と隣り合わせだった」は、ワーグナーヒトラーの例をあげるまでもなく、そんな危険性を聴き手である私達は常に意識しておく必要があると改めて思います。

そして、2019年9月には札幌交響楽団名誉指揮者のラドミル・エリシュカ氏の訃報がありました。個人的にはほんの一言でもいいので紙面で触れて頂きたかったなと思いました。印刷にまわった後なら致し方ないかもしれませんが、9月7日の名曲シリーズについて言及しているので(札響から訃報のお知らせが出たのは9月2日)、掲載タイミングは間に合ったようです。ギリギリでのレイアウト変更は難しかった、編集方針と合わない等の事情がありましたら申し訳ありません。


6面は「トゥーランドット』全幕レビュー」。私は公演直後のツイッター上での賛否両論の評判と編集長のツイートを拝見し、紙面では一体どのような記事になるのかと少しハラハラしながら発行を待っていました。編集長はご自身を「否」の立場と明言した上で、どこが良くないのかは根拠を示した上で書き、それでも細かな部分では良かったところにも言及しています。どうやら演出が斬新だったようですが、作曲者のプッチーニ自身が迷った部分でもあり、絶対に間違いとは言い切れないそう。それでもわかりやすさを追求したために辻褄が合わなくなったり安っぽくなったりといった無理が表出したとのこと。私は観ていないため書いていることを信じるしかないのですが。とはいえ演奏や歌手の歌い方の分析や、日本語訳で難アリ箇所の指摘といった部分は、演出の賛否とは関係なくどなたでも読んで参考になるはず。そして「否」の根拠の一つとして、この作品は一般的に言われているよりもワーグナーの影響が強いと書かれていましたが、知識のない私にはピンときませんでした。申し訳ありません。編集長はどっち付かずの態度は取らず、対立構造にはしないで「否」の立場を貫いたのは誠実だと思います。一方、その膨大な知識量と圧倒的な筆力で「否」と書かれては、「賛」の人の中には自分の感じ方を否定された気がして腹が立つ人や、「賛」の自分が間違っているかもと不安になる人もいるかもしれません。しかし、そんな人たちでも自分の正直な気持ちで「賛」なら何も恥じることはないはずです。娯楽作品の感じ方にただ一つの正解があるわけではないので、本心で「よかった」と思えるのなら何も問題はないと個人的には考えます。お話そのものに重きを置かず、その壮大な音楽に歌声にビジュアルに、積極的に酔うのは大いにアリかと。そもそもオペラのお話はどれも無茶苦茶ですし。また、私自身マミーブレインの時期はとにかくわかりやすいお話を好んだ覚えがあるので(今も大して変わらないかも・汗)、わかりやすいお話の存在とそれを好きな人の気持ちは否定したくないです。そうではなく、その「よかった」は心からの「よかった」なのか?が重要なのだと思います。違和感を覚えたにもかかわらず、オペラの古典的演目だから、有名な演出家の斬新な演出だから、チケット代が高かったから等で、もし自分の気持ちに嘘をついて「よかった」と思うことにしたのなら、それは大問題なのでは?

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皆様にはweb公開された「ゴジラvs札響~伊福部昭の世界~」をぜひあわせてお読み頂きたいです。上のリンクから読めます。私自身は行っていない演奏会ですが、ツイッター上の感想では「よかった」の声が多かったと記憶していますし、終盤で取り上げられているKitaraの印刷物も話題となっていました。私、このゴジラの記事を拝読したとき震えたんですよ。権威的なものに従う等で自分の正直な感受性を押し殺すことがクセになってしまうと、本当に自分の感受性がだめになってしまうというのはとても恐ろしいこと。ただ、私自身がそうなのですが、踏んだ場数が少ないと自分の中にしっかりした判断基準がないんですよね。自分は何も分かっていないと自覚するからこそ、実績や権威がある団体や人の言うことなら間違いないだろうとつい頼りたくなってしまう。それでも、何のために生演奏を聴くのか?と問われれば、自分が楽しみたいからに決まっているわけです。誰のためでもなく自分のための楽しみなら、なおさら自分の感受性は大事にしないといけないなと改めて思います。そのためには安易に流されないこと、そして何より自分自身を一番に信じてあげることを肝に銘じます。もちろん経験値と知識が増えることによって、後から捉え方が変化するのだってアリです。どんな場合でも、その時の自分の感受性を信じ自分で決めることが肝要。


7面は「ふきのとうホール」。上半分はPick up!として8月の小菅優ピアノリサイタルを取り上げています。私が行くかどうか悩んでいたら、あっという間にチケット完売になった公演です。実演を聴けなかったのは残念ですが、レビューを拝読すると素晴らしい演奏だったのがうかがえ、雰囲気だけでも文章で楽しめてよかったです。実際に会場で聴いたかたなら、感激を思い出せてさらに理解が深まったのでは?ペダルの使い方などの奏法や調律等にも触れており、やはり編集長は相当ピアノが弾けるかたとお見受けしました。もちろん譜例をあげての詳細な解説も充実していて、さらに楽譜とは異なる弾き方をした部分も見逃していません。こういったところは、一般の人で気づける人は滅多にいないと思われ、記録の意味でも大変重要なはず。そして私のような素人にも響く詩的な表現、例えば「滝が水しぶきをあげるように」「子供の頃に聴いたうろ覚えの曲を思い出そうとして口ずさむように」といった表現も盛り込まれているのがニクイです。演目については、1曲目ヤナーチェクの「内面的」というのがとても印象的で、実際の演奏を聴いて確かめてみたいと思いました。そして休憩中にブラームス作品にあわせて調律していたとは!ブラームスは小品が2曲「だけ」と思ってチケット買うのをためらったのが悔やまれます。ベートーヴェンピアノソナタ2曲はいずれも演奏機会が多い曲で、それだけに耳の肥えたお客さんも多かったはずですが、そんなお詳しいかたをも唸らせる詳細な分析が素晴らしいです。詳細部分については、私は書かれてあることをそのまま信じるしかできませんが、音楽にお詳しいかたでしたらあるいは別の見方があるのかも?とぼんやり思います。内容の正誤は別としても、そういったことを言ってくださるかたが現れるとレビューを読み返すのがもっと面白くなりそうです。

そして下半分は4月から8月の主催公演をまとめてレポート。バラエティに富んだ公演揃いで、7月を除くすべてをお聴きになった編集部の皆様がうらやましいです!気になる公演すべてに足を運べる人というのはなかなかいないと思うので、レポートは実際に聴けなかった人にとってもありがたいと思います。しかし編集長の知識の多さには毎度驚かされます。ドイツ語にもお詳しければ、チェロで出せない音色をギターで奏でたとの分析(どちらの楽器もわからないとこんなことは言えないですよね)まで、お一人でそこまで理解できている人はそうそういないのでは?そして限られた字数でぎゅっと内容の濃いレポートはさすがですが、高望みとはいえここで書き切れなかったことも知りたいなと思いました。例えば5月の大谷康子とイタマール・ゴランの演奏会。事前にweb公開されたインタビュー記事ではR.シュトラウスソナタがイチオシとして語られていたので、それは一体どんな演奏だったのか気になります。「取り上げたすべての作品の様式美を大切にしていた」とのまとめ方では、具体的に各作品をどのように演奏したのかがわからないので…。あと、ふきのとうホールは大変素晴らしいホールですが、札幌には他にも小さなホールがたくさんあり様々なコンサートが開催されています。今後もし可能であればそういったホールでの演奏会も取り上げて頂けたらうれしいです。もちろんご無理のない範囲でお願いします。


8面は「ジャン・チャクムルと辻井伸行 二つの身体」と題し、8月のコンサートレビューとあわせて、タイプが異なるお二人のピアニストについての独自の分析が書かれています。舞踏家・最上和子を例に挙げての身体表象についてのお話は哲学的で、私自身まだきちんと把握できていませんが大変面白かったです。そして、ジャン・チャクムルは「まず外に形を作る身体」で辻井伸行は「内側に作る身体」と分析。また辻井さんが全盲であることに理由を求めていないのは好印象です。もちろん分析はあくまで一つの考え方であり絶対ではありませんが、それぞれのファンが別のピアニストに興味を持つきっかけになるはずですし、それによって下に続くコンサートレビューも両方読んでみようと思うきっかけになるかもしれません。こんな読者の興味を広げる工夫は大歓迎です。レビューに移ると、「ジャン・チャクムルの場合」では、彼は注目度は高いもののまだ発展途上でこれからどのように成長を遂げるのかは未知数なのかな?と個人的には感じました。彼の個性である部分は最大限に尊重し良さを認めつつも、演奏の細かな部分をきちんと分析してなぜ今の演奏がまだまだなのかという根拠を示しているのはさすがです。一般の人には、たとえ違和感を覚えたとしてもそれを言語化できない人は多いと思われますので、このような分析は大変助かります。そして「辻井伸行の場合」では、「純粋」との表現がありましたが、彼は世間に惑わされず自分自身をしっかり確立している演奏家なのかもと感じました。レビューしている8月の演奏会は、まずテレビで人気の辻井さんが主役ですし、ピアノ独奏だけでなく室内楽と協奏曲もというてんこ盛りかつ室内楽はスターソリスト揃いで、こういっては失礼ですがミーハーな人向けの企画という印象は否めないです。しかし記事ではそういった面には一切触れず、演奏のどの部分がどのように素晴らしかったのかを限られた字数の中でも効果的に語られています。すぐ上のチャクムルさんの記事よりは音楽の専門用語は控えめで感情に訴える表現が比較的多く、ミーハーな人であっても腑に落ちる感じで書かれてあるのも親切だと思いました。とにかくきちんと辻井さんの音楽について書かれてあるのが良かったです。よく考えれば当たり前のことなのに、メディアに登場する彼はいつも全盲であることばかりが強調されている気がしていたので。今注目される若手ピアニストお二人についての書き方は、いずれもイメージ先行ではなくしっかりと音楽性を見極めている印象で、他のメディアのかたにもぜひ読んで頂きたいと思える記事でした。

 

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皆様にはweb公開された「舘野泉 特別インタビュー」をぜひあわせてお読み頂きたいです。上のリンクから読めます。舘野さんは「左手のピアニスト」。辻井さんが一般的にそう見られているように、ハンディキャップのあるかたというのはその部分ばかりクローズアップされ「物語」を消費されがちです。しかしそのせいで音楽家として大事な部分を見落としてしまうのは本末転倒。ハンディキャップは個性の一つとして捉える程度でちょうど良いのかもしれませんね。インタビューでは音楽作品そのものだけでなくその文化的な背景、ピアノ演奏や作曲についても踏み込んだ質問が次々となされ、それにこたえる舘野さんもノリノリで語っておられます。舘野さんはきっとうれしかったのでは?読み手の私達も、「物語」ではない音楽家としての考え方やそこに至る経緯等を知ることが出来、大変興味深く拝読しました。この回に限らずインタビュー記事は毎回読み応えがあって、私はとても楽しみにしています。あと個人的には舘野泉とラ・テンペスタ室内管弦楽団による日本フィンランド国交樹立100周年記念公演(5/27札幌)のコンサートレビューも読んでみたかったです。しかし札幌で開催されるコンサートは多いですから、すべての公演のレビューを書いて公開するのは至難の業ですよね。編集長のほかにも執筆者がいるとよいのですが、編集長ほどのレベルで書ける人はなかなかいないのかもしれないなとも思います。しかしできるだけ高いレベルの知識と筆力があるかたで、コンサートレビューの一部を任せられるかたが現れてくださることを一読者として願っています。腕に覚えのある音楽ライターのかたがいらっしゃいましたらぜひ名乗り出てください!


最後に、3面下段の連載コラム「言葉と文化(4)」について。同じ内容をweb版で読むことが出来ます。

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紙媒体が配布される直前にweb公開されたため、私は本紙を手に取る前に拝読しました。ツイッターで紹介してくださった事務局さんの評価では「今までで一番面白いコラム」とのことでしたし、「いいね」もかなりの数がついていたと記憶しています。また手元でざっと検索かけて感想を探してみましたが、特に批判的な内容は見つけられませんでした。おそらくほとんどの人が好意的に受け止めたか、特に何も思わないか、あるいは読むのをやめてしまったのだと思われます。しかしごめんなさい。率直に申し上げると、私は今回のコラムは今までの高評価を全部ひっくり返すレベルでまずいと感じましたし、今回の第4号本紙を手に取るのはよそうかとまで思ったほど受け入れがたかったのです。あくまで私個人の感想です。大変申し訳ありませんが、今回の連載コラムについての私の感想は否定的なものになってしまいます。ご了承頂けるかたのみ、以下お進みください。長いです。

私が今回のコラムを肯定できない理由は大きく3つあります。1つめは「大多数の読者が置いてけぼりになる題材」、2つめは「ダブルスタンダード問題」、そして3つめは「未来や希望を語っていないこと」。まずは1つめの題材について。コラムでは、昭和と平成を振り返るのに特撮コンテンツを題材としています。きっと編集長はお好きなのでしょう。観察眼は鋭く分析視点も大変面白い読み物でした。私だってオタクの端くれですから、こんなディープな話は大好きです。しかし、「さっぽろ劇場ジャーナル」で読みたい話ではありません。比較的年齢層が高めのクラシック音楽ファンがメイン読者である媒体で、一体どれだけの読者が最後まで読みとおせるのか、甚だ疑問だからです。そして例えばゴジラなら伊福部昭の音楽があるのでまだ大丈夫かもしれませんが、残念ながら今回の題材は音楽とは関係ないようです。1面のPMFの記事のように、ほんの一部にアクセントとして入れるならともかく、音楽とは無関係の特撮の話が9割なら興味の無い人はすぐに読むのをやめてしまうと思います。折しも2019年度上半期には京アニの事件や元事務次官による長男殺害事件があり、一部の人達にはオタク的なものへの嫌悪感すら生じています。そんな今の状況で、こんな題材を取り上げたのはタイミングとしても最悪。題材に選ぶなら、前号で取り上げた国民的アニメであるドラえもんあたりがギリギリかと。「さっぽろ」という大きな看板を掲げている以上は、「わかるやつだけついてこい」の姿勢で音楽以外の話題でマニアック路線に走るのはまずいと個人的には考えます。どんなに素晴らしいことを語ったところで、読んでもらえなければ意味がないわけですから。万人受けを目指せとか内容をわかりやすくしてとか、そんなことを言っているのではありません。さまざまな読者がいる媒体に載せる文章であるなら、独りよがりになってはいけない、ただそれだけです。

2つめのダブルスタンダード問題について。前回の第3号のコラム「言葉と文化(3)-のび太の夢」には、「人間は過去の成功体験に囚われる。それは仕方がない。しかし、『あのころはよかった病』からはそろそろ足を洗うべきではないか」とありました。私は前号のコラムに大変感銘を受けただけに、今号のコラムには驚きました。悪い意味で。前号から半年しか経っていないのに、同じ書き手が過去作品のリメイクを疑いも無く題材にするなんて、一体何の冗談ですか?過去にヒットした作品のリメイク(今の時代こればっかりですね)なんて典型的な「あのころはよかった病」だと、私は素朴に思うのですが。どんなに優秀な監督が手がけようとも、またどんなに今の時代に即した見事な作品に仕上がったとしても、過去のヒットの栄光にすがっている以上は同じことです。もちろん、人間は矛盾だらけの存在ですし、好きなものについては理屈抜きで語りたくなる気持ちはわかります。それが人間の魅力でもあり、ダブルスタンダードでも個人として発信するならまだ許されるのかもしれないとも思います。しかしこれは「さっぽろ」を名乗る媒体の編集長が、札幌の代表として責任を持って発信している文章です。ダブルスタンダードは頂けないです。そして私がさらに憂えるのは、ネット上の悪意ある第三者に格好の攻撃材料を与えてしまったことです。毎号コラムはweb公開しているため、ネットにアクセスできる誰もが読めます。さらに印刷した紙媒体でも同じ内容を出している以上、取り下げたり大幅に書き換えたりはできません。編集長は札幌外のメディアにも文章を書く機会が増えてきており、今後ますます注目される存在になっていくはずです。しかし注目されればされるほど、妬みアラ探しをする輩も出てきます。そんなネット民が発言力のある人をやり込めるのに、ダブスタは非常においしいのです。編集長なら誰になんと言われても論破できそうですが、そんなつまらない対応に無駄な時間と労力を使うのはもったいないですよね。ただ、ダブスタ指摘は最初に発見した人のモノという風潮があるようですので、まだ誰も言っていないならいっそのこと私が言います。私は敵でも味方でもない一読者ですが、悪意ある第三者に言われるよりはマシかと。やり込める意図はありません念のため。「何を偉そうに。ダブスタ人間の言うことなんか信用できないんだよ!」…無理、私が痛い(涙)。

そして致命的なのが3つめの「未来や希望を語っていないこと」です。これに比べたら上の2つなんてたいした問題ではないです。今のお先真っ暗な日本で生きている私達は、誰もが未来に希望が持てず不安を感じています。時間的にも経済的にもギリギリの生活をしている人が標準になっている今、多くの人が余裕をなくしてイライラしたり攻撃的になったりしていて、とにかく息苦しいです。ささやかな趣味を楽しむことさえ罪であるかのような空気感の中で、クラシック音楽のコンサートを聴きに行くのは現実逃避でしかないのではないか、それだって長くは続けられないのではないか、あとは絶望するしかないのかと私は悲しくなることがあります。巷には怒りや嘆きの言葉はもううんざりするほどあふれかえっているのに、暗いトンネルを抜け出す光はどこにも見当たらない…。そこに登場したのが「さっぽろ劇場ジャーナル」!私は最初期に編集長が創刊への思いを語った「批評精神の躍動を願って」(下の方に当該記事のリンクがあります)および創刊号のコラムを拝読した時、「この人(編集長)は『文句ばかり言って何も行動しない人』とは違うのではないか。少しはその言葉に耳を傾けてみようかな」と思ったのです。そうでなければ、こんな小さい活字びっしりの肩の凝る文章を読もうなんて思いません。そして今までの連載コラムはすべて、最後には必ず編集長自身が考える未来を見据えた展望が書かれてありました。現状がどんなに嘆かわしいものであっても、かすかな希望の光が見えることが救いでした。編集長はその文章を拝読する限り、物事がよく見えていて目を背けたくなる現状さえもしっかりと見定めており、ただの気休めで叶わぬ望みを言っているわけではないと私は信じています。だからこそ、その発言には重みがあると感じましたし、私も自分の頭で考えようそして未来を少しでも明るいものにしようと勇気が持てたのです。

さて今回のコラム。タイトルから考えると、本来これからの未来である「令和」について書かなければならないはずなのに、ほぼすべてを昭和と平成という過去の分析に費やしています。しかも字数がつきたのか、最後は未来の展望をリメイク作品の監督に丸投げして文章が終わっています。これは完全にアウトです…。タイトル詐欺という以上に、今までの信頼をふいにしたという意味で。私は「さっぽろ劇場ジャーナル」の文章は紙でもwebでも一般公開されたものはすべて拝読していますが、たとえどんなに辛辣なことを書いていて読み手が痛みを感じようとも、編集長は必ず未来を見据えた言葉を語ってくれると信じたからこそ、私は読むのをやめずついてきたのです。だから、勝手に期待した私が悪いと言われればそれまでですが、大事な大事な未来の展望を語らないばかりか人任せにした今回のコラムに、私は大いに失望しました。私は何もその発言にすがり盲信したいわけではありません。そもそも権威的なものに異を唱える媒体が、新たな権威になるなんておかしな話です。そうではなく、お先真っ暗な今の世の中の、ほんの少し先を照らしてほしいのです。だって札幌の地域文化を言葉で牽引するメディアなんですよね?ならそれにふさわしい言葉を語ってくださいよ!その先どう進むかあるいは別の道を模索するかは自分たちで考えますから。

以上、コラムを拝読して私が感じたことを率直に書きました。相変わらず重くて恐縮です。そして何か大きな勘違いをしていたらごめんなさい。今回のコラムについては、1面のPMFの寄稿文で似た内容を書いているため、思い切って切り口を変える必要があったのだと拝察しますし、たまには毛色の違う記事を出してみようという試みだったのかもしれません。それでも、杞憂であれば良いのですが、もしこんなところで読者が離れることがあってはあまりにももったいないと私は思うのです。こんなこと考えるのは私だけ?とためらいつつも、こんなふうに読んだ読者もいますよということで。でも一匹見つけたら20匹から30匹は隠れていると言いますから(?)、私みたいに考える人は他にも潜んでいるかも?皆さん隠れてないで出てきてください!一斉に出てきて編集部の皆様をあたふたさせましょう(笑)。


私は本来、少しでも違和感を覚えたらスパッと関係を断ち切り別のステージに進むタイプです。人間関係においてもドラマやマンガ等の創作を楽しむにしても、長く続いたものは数えるほどしかありません。そんな私はしかし、確かに引っかかることがあったにもかかわらず、「さっぽろ劇場ジャーナル」を見限ることができませんでした。なんだかんだ言いながらも結局今回の第4号本紙を手に取り、そして自分が感じた違和感を整理した上で、もう少し付き合ってみようかなと思い直したのです。

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上の「批評精神の躍動を願って」に書かれている「聴き手も、表現の語彙や論理に習熟するほどに、よりよく聴くことができるようになる。様々な意見に触れることで、その語彙や論理はより洗練されてゆく」のに、私はやっと入り口に立ったばかり。まだまだこれからなんです!偶然にも私がアニメレビューブログからクラシック音楽ブログにシフトチェンジしたのとほぼ同じ時期に、「さっぽろ劇場ジャーナル」創刊号が発行されました。不思議なご縁を感じ、以来ずっと愛読しています。記事を拝読することで、本質的なことは何もわかっていない私のフワフワしたイメージが整理でき、聞きっぱなしでは得られない深い理解、そして感激を少しでも鮮明に記憶する手助けになりとても助かっています。余生の趣味にしようくらいに考えていたクラシック音楽鑑賞、まさかこんなに深く味わい楽しめる可能性があるなんて思ってもみませんでした。「可能性」と書いたのは、まだ私自身は底が浅すぎるからです。私は今はまだ思いつきしか語れませんが、私自身が今より物が分かるようになればもっとクラシック音楽鑑賞は楽しくなると思っています。その一つの手助けとなる媒体、同じ札幌の地で同じコンサートを聴き専門的な視点でレビューしてくださる「さっぽろ劇場ジャーナル」があるのは何よりありがたいこと。今回私は否定的なことも書きましたが、それだって考えるきっかけを提示してくださっているからできることで、大変感謝しています。私はこれからも「さっぽろ劇場ジャーナル」の記事を読みたいですし、さらに自分自身が変化した数年後に過去記事を読み返したいとも思っています。そしてこのブログ記事の冒頭で「未来の私のために」と書いたように、つらいけど自分が書いたものも同時に読み返すつもりです。将来の私が、「何勘違いしてるの私。しかもムダに長い!」と今の自分にツッコミ入れられるようになるため精進します。そんな未来が楽しみです。


最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

STピアノinクリスマス オープニングイベント(2019/12) ミニレポート

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2019年の聴き納めはこちら。札幌市交通局が期間限定で地下鉄大通駅に「駅ピアノ」を設置し、そのオープニングイベントとして「ピアノ&チェロ」演奏会がありました。私が密かに応援している札響チェロ首席奏者の石川祐支さんが出演されて、しかもピアノは大平由美子さん!このお二方は一緒にブラームスチェロソナタCDを出しておられます。お二方の演奏を無料で聴けるなんて、信じられません!平日午前中のイベントに、私は予定を調整して駆けつけました。

今回は関連ツイートに補足する形のミニレポートです。いつものように素人コメントであることをご了承ください。また、ひどい間違いは指摘くださいますようお願いします。

STピアノinクリスマス オープニングイベント「ピアノ&チェロ」演奏会
2019年12月19日(木)10時00分~10時30分 地下鉄大通駅 大通交流拠点西側コンコース

【演奏】
大平由美子(ピアノ)
石川祐支(チェロ)※札響チェロ首席奏者

(デモ演奏として)坂下史郎さん

ピアノはなんと1976年製スタインウェイのグランドピアノ。昨年閉館した「さっぽろ芸術文化の館」で使用されていたものだそうです。看板に説明文の掲示が添付されていました。期間限定とはいえ、こんな立派なピアノを誰もが自由に弾くことができるんですよ!札幌の芸術関係はものすごく恵まれた環境にあると改めて思います。

まずはツイッターでバズったこちらから。


制服を着た駅員さんがショパンの幻想即興曲を演奏するという話題性で、ツイッター上では大変話題になったため、こちらの動画を目にしたかたは多いかもしれません。私は目の前で聴いて度肝を抜かれました。そしてまださほど拡散されていない段階では、リプに実演を聴いた人のコメントがついていなかったんですよね。そこで参考までにと私がリプをつけたところ、私のツイートまでバズりの余波を頂いてしまいました。おこぼれにあずかったまでではありますが、本来のイベント出演者であるPf大平由美子さんとVc石川祐支さんのことも皆さんに知って頂けたので結果としてよかったと思っています。駅員さんの注目度に比べ、本来こんな場所で演奏すること自体がありえないようなプロのお二人がスルーされているのは心苦しかったので。プロは弾けて当たり前の前提で勝負しているのが本当に大変だと、今更ながら思った出来事でした。

ちなみにその場にいた大手メディアは北海道新聞だけで、記者さんは早速駅員さんの演奏動画を撮影しインタビューまで行っていました。翌日20日にも駅員さんはアンコール演奏を行ったそうで、そちらはテレビ各局や他の新聞社も取材したようです。私が各メディアの報道を確認したところ、見事に駅員さんのピアノの話題ばかりで、プロのお二人の演奏に触れたものは見当たりませんでした。これはあんまりです報道の皆様…。あと個人的にちょっと閉口したのは、取材なしでネット上の話題を発信するネットメディアの記事です。ツイッターのコメント引用があり、私のツイートが部分的に切り取られて掲載されていたのが残念で。言いたいのはそこだけじゃないんですよ…。たいして長くないわけですし、ツイート丸ごと載せてほしいです。ちゃんと「ピアノ&チェロ」演奏会にも言及しているんですから!

では、私の一連のツイートに補足を入れる形で順番に見ていきます。

石川さんは前日の室内楽演奏会と同じ、黒い長袖シャツとスラックス姿で真っ赤なネクタイを着用。大平由美子さんはブラームスチェロソナタCDのジャケット写真と同じドレスをお召しになっていました。冬の寒い札幌でこの薄着、少し心配になりましたが、厚着するときっと演奏の邪魔になってしまうのですよね。ただ、見物客は大勢いたので、その熱気で私はさほど寒くは感じませんでした。でも私はコートを羽織っていましたごめんなさい!

司会のお若い駅員さんはマイクを持ってお話されていましたが、奏者のお二方はマイクなし。奏者自ら演奏する曲を紹介してから演奏を始めるというスタイルでした。曲名のみの紹介が多かったですが、例えばG線上のアリアでは「何かと話題の」と人気ドラマをにおわせる発言があったり、別れの曲では「今年一年、お別れした大切な人への想いをこめて」といった趣旨のお話があったり。誰もが一度は耳にしたことがある有名曲ばかりで、聴いている私達はとても幸せな気持ちになれました。

チェロは休みを挟みながらの形になりましたが、ピアノはチェロの伴奏とピアノソロを交互にずっと演奏し続けていたことになります。しかもすべて表情が異なる曲を連続して休む間もなく。しかし大平由美子さんはさすがの貫禄で、すべての曲をそれぞれの個性を表現した上で演奏してくださいました。素晴らしい!ありがとうございます!そして私がいた場所からはピアノの手元は見えなかったのですが、チェロの手元はばっちり見えたので、私はずっと石川さんの手元に注目して演奏を拝聴していました。素人目ではそんなに苦労しているようには見えないんですよね…。それでいてこんなに色彩豊かでふくよかで艶っぽいなんとも素敵な音色を奏でるのですから、まるで魔法みたいです。本当に、弦楽器は奏者によって音がまったく違うと私は感じます。そして理屈抜きで石川さんのチェロが好きなんです。石川さんのチェロ、私は前日夜の室内楽コンサートでも堪能したにもかかわらず、さらに何度もアンコールに応えて頂いたかのような短めの有名曲をたっぷり聴く機会に恵まれました。感謝しています。

そしてお二方が退場の後は、話題になった駅員さんのデモ演奏です。司会のかたがお名前を呼ぶと、観客の中から制服姿の坂下史郎さんが登場しました。坂下さんはおもむろに白い手袋を外して着席。演奏が始まるとあたりは騒然となりました。他にもその場には制服を着た駅員さんは大勢いらしていて、まさかそのお一人がこんなピアノがお上手だなんて誰も想像できなかったのだと思います。すごいものを見せて頂きました。演奏が終わると先ほどのプロによる演奏では出なかった「ブラボー」が出て、割れんばかりの拍手。坂下さんはにこやかに手袋を投げるポーズをして笑いまでとっていました。ピアノの魔術師リストさんかな!と私は心の中でツッコミ。

 

余計なことかもと思いつつ、どうしても気になってしまったことも繋げてツイートしてしまいました。このような場に出てきてくださっている以上、ある程度は奏者のかたも覚悟はされているとは思うのですが、やっぱり演奏中の写真撮影は失礼だと私は思うのです。確かにスマホも一眼レフもそんなにシャッター音は大きくないですし、フラッシュたいている非常識な人はいなかったです。それでも確実に演奏の邪魔にはなるのでは。カメラに夢中なら当然耳の方はお留守になっているでしょうし。プロの演奏をありがたがれとまでは言いません。でも真剣勝負をしている奏者の演奏はしっかり聴きましょうよ皆様!クラシック音楽が特別なのではなくて、一般的なマナーだと私は思います。そしてヘンデルの演奏中にチェロのエンドピンが滑ったときは、私心臓止まるかと思いました。もし固い床に打ち付けられて楽器に何かあったら大問題です。愛器を守り、ピアノの大平由美子さんに一言二言何かを告げて、メロディを少し戻って演奏再開した石川さんはさすがです。しかしエンドピンが立たないようなツルツルの固い床でのチェロ演奏は、やはり無理難題ですよね。ちゃんとした演奏台の用意が難しければ、地下鉄には乗り降りの段差対策用の木の板の簡易スロープがあるわけですから、せめてそれを敷くとか工夫があればよかったなと思いました。今回エンドピンが滑ったのは一度きりでしたが、それは石川さんが内腿を鍛えるバロックスタイルでチェロをホールドしていらしたからだと想像します。大変な思いをさせてしまって、申し訳ないです。

 

なんですかこの重い女は(笑)。でも安心してください。私はお相手が誰であってもこんなふうです。家族や普段接している顔見知り以外の人と会って直接お話するのは無理な人種です。あこがれの人であればなおさら。それでも「好き」の力はすごくて、私は生演奏が聴きたいからと演奏会に足を運ぶようになり、サインを頂く名目があれば列に並びあこがれの演奏家に近づくこともできるようになったのです。少しは進歩しているんですよ(笑)。来年2020年はさらに進歩できるといいなと思います!そして来年も素敵な演奏会をたくさん聴けますように。


この演奏会の前日に開催されたピアノ三重奏のチャリティコンサートについても弊ブログにレポートをあげています。今回のイベントに出演された札響首席チェロ奏者の石川さんがトリオ・ミーナのお一人として出演。後半のメインプログラムはブラームスピアノ三重奏曲第1番です!以下のリンクからどうぞ。
それにしても石川さんは連日の本番続き…。年末の札響は第九やクリスマスやジルベスターや銀行主催等の特別演奏会多数の過密スケジュールで、その合間を縫う形でチャリティコンサートや地下鉄構内のイベントまで。頭が下がります。 

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そうなんです。いつかは今回のお二方によるCD収録曲での演奏会を音響の良いホールで聴きたい!ブラームスチェロソナタ2曲に加え、シューマンドヴォルザークの作品も入った聴き応えあるCDは以下のリンクのものです。言葉ではその良さをうまく言えないので、とにかく聴いてください! 

ブラームス チェロ・ソナタ(全2曲)

ブラームス チェロ・ソナタ(全2曲)

 

 

最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

Trio MiinA 第1回公演 小児がんチャリティコンサート(2019/12) レポート

ありがたいことに11月のピアノ五重奏曲に始まり、ピアノ四重奏曲第1番、そして今回ピアノ三重奏曲第1番と、今年の年末は3回もブラームス室内楽を聴く機会に恵まれました。今回レポートするのはピアノ三重奏のコンサートです。私が密かに応援している札響チェロ首席奏者の石川さんが出演されて、しかもブラームスを演奏してくださるなんて、聴きたいに決まっています!

レポートはいつものように素人コメントであることをご了承ください。また、ひどい間違いは指摘くださいますようお願いします。


Trio MiinA 第1回公演 小児がんチャリティコンサート
2019年12月18日(水) 18:30~ 札幌コンサートホールKitara小ホール

【演奏】
西本夏生(ピアノ)
鎌田泉(ヴァイオリン)
石川祐支(チェロ)※札響チェロ首席奏者

【曲目】

(アンコール)

なお会場のピアノはスタインウェイでした。


ツイッターでの速報は以下。


しみじみと心にしみる良い演奏でした。ちょうど1週間前のピアノ四重奏がゾクゾクなら、今回のピアノ三重奏はときめき!親しい人同士の会話のような印象から、きっと親しい人にしか明かさない胸の内まで音楽で聴かせてくださったように思えました。理由は演目によるものが大きいかもしれません。いずれも個性的な演目が揃った演奏会でしたが、1週間前のピアノ四重奏ではすべて短調かつ抑えきれない感情の発露が感じられる曲で、今回は2曲が長調かつ短調フォーレも含め美メロが穏やかに感情を語る曲が揃っていました。室内楽って奥深いです。そして今回もまた、足し算ではなく掛け算の良さ!ピアノもヴァイオリンもチェロも単体で十分に活躍できる楽器にもかかわらず、主役級の3つが共演するとぐっと表現の幅が広がるのを感じました。また第2ヴァイオリンやヴィオラがいないため、奥深さを出すためにはどの楽器も脇役に徹する力量だって必要で、それも難なくやっておられた印象です。奏者の皆様はそれぞれにお忙しく、トリオ結成して日が浅いにもかかわらず、素晴らしい演奏を披露してくださいました。ありがとうございます!私は正直チェロの石川さんが出演されるからとの理由で足を運んだわけですが、ピアノもヴァイオリンも良い意味で想定外の良さでうれしかったです。トリオ・ミーナの演奏会、今後も第2回第3回と末永く続いてくださるのを願っています。そして演目にはぜひブラームスを入れて頂けましたらうれしいです。生粋のピアノ三重奏曲は他に2番と3番があり、編曲も視野に入れればまだまだ候補はたくさんあります!

また今回のピアノトリオで印象的だったのは、チェロ奏者とピアノ奏者が目配せして演奏開始していたことです。もしかするとチェロが牽引していたのかも。ちなみに1週間前のピアノ四重奏および1カ月前のピアノ五重奏では、奏者の皆様は第1ヴァイオリンに注目しそこに合わせて演奏している様子でした。このあたりはガチガチの決まりはなくて、そのユニットがやりやすいスタイルで進めているのかもしれません。

小児がんチャリティコンサートということで、収益はすべて小児がんのための活動に寄付されるとのこと。頭が下がります。会場の客入りは上々で、キャパ453席のKitara小ホールにおいて、2階席はわかりませんが1階席は9割近く埋まっていました。トリオ・ミーナとしては第1回目の記念すべき演奏会、ご盛会おめでとうございます!また未就学児は無料で入場可となっていましたが、私が見たところ未就学児はいないようでした。ちなみに小学生くらいの子は親同伴で来ていたのを見ました。私はギリギリの時間に到着したものの、お一人様の身軽さで比較的前寄りのちょうど真ん中あたりに空いた席に着席。最前列も空いてはいましたが、私が目の前で凝視しては奏者の皆様はきっと演奏しづらいと考えて遠慮したんですよ(笑)。

拍手で迎えられた奏者の皆様、チェロの石川さんは黒い長袖シャツとスラックス姿で真っ赤なネクタイを着用。ピアノの西本さんはラメをちりばめ少しグレーがかった黒のドレス、ヴァイオリンの鎌田さんは落ち着いたえんじ色のドレス姿でした。石川さんは女性奏者お二人の衣装の色を取り入れていたのですね。肩を出したデザインのカラードレスの女性奏者がお二人もいると、やはり華やかです。そして石川さんは入場は一番目でも退出するときには最後で、しかもピアノの譜めくり係の人に会釈していたのが好印象です。また、配布されたプログラムの曲目解説は、奏者の皆様がそれぞれ分担して執筆されていました。


演目に入ります。1曲目はハイドンピアノ三重奏曲第25(39)番。プログラムの解説は鎌田さん。別名ジプシー・トリオとも呼ばれる、ハイドンのピアノトリオの中では比較的演奏機会が多い曲のようです。第1楽章、朗らかなヴァイオリンがずっと楽しくおしゃべりをしていて、チェロがヴァイオリンに相槌入れながら傾聴している印象。ピアノはモーツァルトのキラキラに似た感じでずっとキラキラしていました。私はヴァイオリンとピアノの高い音での美メロを楽しみつつ、脇役に徹しているチェロがすごく良いなと思って聴いていました。この楽章に限らず、この曲でのチェロはずっと脇役。しかも通奏低音のような決まった形ではなく、ちゃんと主旋律にそって変化しながら下支えです。妄想ですが、女の結論の無い長い話にいやな顔ひとつせず寄り添っている知的な男性のよう。そう、共感が大事なんですよ。結論やら解決策やらは言わなくてよろしい(笑)。こんな男性は絶対にモテますよね。余談失礼。第2楽章になると、今度はピアノのターンです。ピアノの美メロを弦2つが支えますが、途中からまたヴァイオリンが主張し始めて、そんな変化も楽しかったです。第3楽章、楽しく時々は憂いを帯びてハンガリー舞曲風のメロディが駆け抜けていきます。実演を聴いた時点で私はプログラムの解説は未読でしたが、「ジプシー風」と言われる第3楽章を「ハンガリー舞曲風」だとその時の私は感じたのでした。私が何を持ってハンガリーっぽいと感じたのか、自分では説明できなのですが…。ハイドンの楽曲はほとんど聴いてこなかった私でもまったく退屈せず素直に楽しめた曲でしたし、解説にある通り肩肘張らない曲なのがリラックスできてよかったです。最初の曲で体も心も温まりました。

1曲目の演奏が終わっても奏者の皆様は退出せず、ピアノの西本さんがマイクを持って簡単にお話をされました。この日集まった人達へのお礼と、活動の趣旨、演目について等のお話でした。

2曲目はフォーレピアノ三重奏曲。プログラムの解説は西本さん。フォーレ最晩年の作品で、体調が思わしくない中で書かれたようです。なのに溜息が出るほどの美メロとみずみずしさ!素晴らしいです。第1楽章、短いピアノの導入の後はすぐチェロの聴かせどころが来て気持ちを持って行かれます。続いてヴァイオリンもチェロのメロディを繰り返し、その後はチェロとヴァイオリンが会話しているかの印象でした。大人っぽく基本は静かに、時には激しく。歌う弦も良いですが、バックのピアノもとても素敵。第2楽章、私はプログラムを読む前に「二人で湖畔で月を眺めているよう」と感じたのですが、あながち間違ってもいなくて、第2楽章のみ湖に面した街で書かれたのだと後で知りました。この湖だの月だのと私が想像する根拠は何なのか、自分でも分かりません(笑)。そしてこの楽章だったと思うのですが、チェロが高音でヴァイオリンが低音を担う通常とは逆のところがあって、チェロとヴァイオリンそれぞれの音域の広さと可能性を知りました。第3楽章、今まで比較的ゆったりしていた曲がこの楽章で加速しました。チェロとヴァイオリンの会話は議論白熱な感じに。でも若者の殴り合いではなくあくまで大人の知的な会話な印象です。一度だけピチカートで空気を一変させたところはラヴェルのような雰囲気を一瞬だけ感じました。確かラヴェルフォーレに師事したことがあったんですよね。そして今まで脇役に徹していたピアノが思いっきり変化しました。聴いていたその時の私が「まるでジャズみたい」と思ったほど、即興演奏のような音とテンポが素晴らしくて、この曲の世界観がぐっと広がったように感じました。人生の終わりが見えていたフォーレが、美メロを生み出しかつ遊び心も忘れていなかったことに拍手を送りたいです。もちろんこの魅力を私達に伝えてくださった素晴らしい演奏に感謝します。

休憩中に私はプログラムを熟読。フォーレピアノ三重奏曲はヴァイオリンをクラリネットに置き換えて演奏されることもあると知ります。そこで私が思い出したのは、ブラームスクラリネット三重奏曲でした。こちらも作曲家の晩年の作品で、クラリネット・チェロ・ピアノの編成。私は好きな曲ですが、弦楽四重奏クラリネットを加えたクラリネット五重奏曲の知名度と演奏機会の多さに比べて影が薄いようです。またクラリネットソナタ同様、クラリネットヴィオラに置き換えての演奏がある様子。素人がよくわからずに言っていますが、これ、ヴァイオリンでも可能でしょうか?もし可能ならトリオ・ミーナの演奏で、クラリネットをヴァイオリンに置き換えてブラームスクラリネット三重奏曲の実演を聴いてみたいとふと思いました。勝手な思いつきですので軽く聞き流して頂けましたら幸いです。

休憩後の後半はいよいよブラームスピアノ三重奏曲第1番です。プログラムの解説は石川さん。作品を徹底的に管理するブラームスにはめずらしく、版が2つある作品です。21歳の1854年出版の初版と、58歳の1891年出版の改訂版。今回演奏されたのは改訂版だと思います(※間違っていましたら指摘ください)。1854年ロベルト・シューマンの自殺未遂と入院があった年ですが、構想を練っていたと思われる前年の1853年はブラームスシューマン夫妻と出会った幸せな年で、まだクララへの想いも顕在化していない心穏やかな時期と考えられます。3つの楽器がまるで会話をする3人の音楽家のようだなと個人的には思っています。第1楽章、冒頭のピアノから既に素敵で、続くチェロに早速心奪われます。こんな作品番号1桁台の作品で、もう最初からブラームス節全開。ブラームスがあの苦悩に満ちたチェロソナタ第1番よりも前にチェロが静かに喜びを語る美しい曲を書いてくれたのがとにかく良かったと思いますし、それを今この時代にチェリスト石川さんが奏でてくださるのがなによりうれしい。ヴァイオリンが参戦するとさらに喜びが増します。少し不穏な雰囲気になってからもまた良いんです。頭の中がお花畑じゃない人が、大はしゃぎせずに喜びを噛みしめているから良いんですよ。ヴァイオリンとチェロの対話を、ピアノがオーケストラのような響きで支えてくれるのもブラームスらしいです。第2楽章は、まだ掴みきれない何かを探るような雰囲気のチェロから入り、ピアノ、ヴァイオリンも続きます。メリハリが効いていて小刻みな音の後にダダダーンと強く弾くところがツボで、この楽章の不穏な雰囲気と明るさが同居している感じがとても好きです。第1楽章で聴いたメロディが帰ってくるとまた美しく、主旋律をチェロに任せてヴァイオリンが高い音で小刻みに音を刻んで伴奏する高揚したところがとても良くて。ブラームス独特のピアノのキラキラは「らしい」ですし、でもキラキラで終わらず低音で力強いところも。おそらくピアノ演奏はものすごく難易度が高いと思われますが、見た感じの印象では難なく弾きこなしておられました。ピアノの高い音に続いて弦のピチカートが2回入るところも可憐で良いです。第3楽章、ゆったりしたピアノ伴奏に合わせて静かに語るヴァイオリンとチェロが素晴らしい。その後チェロが低めの音程で歌うところはチェロの魅力たっぷりでうれしくて、私はまばたきを忘れてチェロの手元を凝視していました。ヴァイオリンのターンに入ってからもチェロの低音が効いています。もう一度楽章のはじめのメロディが戻ってきて、次の楽章へ。第4楽章、冒頭はまたもやチェロ!もうブラームスピアノ三重奏曲第1番、大好きです!この選曲でしかも石川さんが弾いてくださるのに感謝します。激しくなったり少し不安な感じになったりまた喜びを語ったりと雰囲気がめまぐるしく変化するのですが、演奏は流暢で楽器は3つしかないのにスケール大きいです。しかし第1楽章が喜びで始まったこの曲は、喜びのままでは終わらず、新たな不安に対峙したかのような締めくくり。素晴らしい!プログラムには「どこまでブラームスを表現できるか挑戦するつもり」とありましたが、なんというか「ザ・ブラームス」だと私は感じました。ブラームスはメンタル強いと思わせるエピソードには事欠かないですし、特に管弦楽ではいかめしく武装しがちなのですが、室内楽ピアノ曲や歌曲を聴くと本当は繊細でロマンチストで情に厚い人ではないかと私は思えるのです。20歳そこそこのまだ何者でも無かった彼が、既に人間のむき出しの欲や醜さも知ってるにもかかわらず、素直にかつ控えめに喜びを表現していること。そして晩年になって曲を改訂し完成度を上げたにもかかわらず、初稿はそのまま残したこと。一言ではとても言い表せない様々な感情を、すべて飲み込んだ上で昇華させたこと。なにもかもがブラームスらしいと私は感じました。以前は私は正直このピアノ三重奏曲第1番をどう聴けばいいのか掴みかねていました。しかし今回の演奏を聴いて、様々な感情が同居する矛盾を素直に受け入れられた気がしたのです。大好きな曲になりました。本当にありがとうございます!


カーテンコールで舞台へ何度も戻ってこられた奏者の皆様。何度目かに着席して、ピアノの西本さんがマイクを持ってお話されました。息も絶え絶えでご挨拶なさって、演奏に全力投球なさったのだとよくわかりました。曲名紹介のあと、アンコールへ。アンコールピアソラリベルタンゴ。大人の妖艶な雰囲気が本プログラムの3曲とはまったく違っていて素敵。はじめはヴァイオリンとピアノ、次にチェロとピアノ、続いて三重奏と、組み合わせが色々の演奏でした。ずっとピアノがタンゴ独特のリズムを奏でていて、重なる弦が歌う感じ。同じメロディでも当然ヴァイオリンとチェロの表情は違っていて、どちらもゾクゾクしました。テンポがやや速い気がしたのですが、それは私が感覚的にそう感じただけで楽譜の指示と違うかどうかはわかりません。会場は拍手喝采。アンコールまで全力疾走の、素晴らしい演奏をありがとうございました!

この演奏会のちょうど1週間前に開催されたピアノ四重奏のコンサートについても弊ブログにレポートをあげています。後半のメインプログラムはブラームスのピアノ四重奏曲第1番!8月に札響定期で演奏されたシェーンベルク編曲による管弦楽版の原曲です。奏者はピアノの浅沼さんに、弦のメンバーには札響コンマスと副首席奏者が揃っている強力な布陣でした。以下のリンクからどうぞ。 

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今回出演された札響首席チェロ奏者の石川さんが、ソリストとして札幌室内管弦楽団と共演したコンサートが2019年10月にありました。石川さんのチェロ独奏、痺れましたよ!何度でも聴きたい!よろしければそのレビュー記事もお読みください。以下のリンクからどうぞ。 

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

浅沼恵輔コンサートシリーズ Vol.3 ~ピアノ四重奏の世界~(2019/12) レポート

11月に引き続き、六花亭本店のふきのとうホールでブラームス室内楽がメインの演奏会を聴いてきました。11月はピアノ五重奏曲で、今回はヴァイオリンが1つ減った編成のピアノ四重奏曲第1番。ブラームス室内楽が聴けて、しかも弦のメンバーは札響コンマスと副首席奏者が揃っているわけですから、行きたいに決まっています!

レポートはいつものように素人コメントであることをご了承ください。また、ひどい間違いは指摘くださいますようお願いします。

浅沼恵輔コンサートシリーズ Vol.3 ~ピアノ四重奏の世界~
2019年12月11日(水) 18:30~ ふきのとうホール

【演奏】
浅沼恵輔(ピアノ)
田島高宏(ヴァイオリン)※札響コンサートマスター
青木晃一(ヴィオラ)※札響ヴィオラ副首席奏者
猿渡輔(チェロ)※札響チェロ副首席奏者

【曲目】

(アンコール)

なお会場のピアノはヤマハでした。


ツイッターでの速報は以下。


素晴らしい演奏でした!合うのは当たり前、加えて感情表現もメリハリが効いていてカッコイイ!勢いがあって素直に「乗れる」演奏でした。譜めくりのタイミングは長めの休符に合わせて行われており、不自然に曲が止まる印象はまったくなかったです。また、おそらくお一人ずつの演奏を聴いてもきっと素敵なのではないかと思うほど、各奏者のかたの演奏は完成度が高い上に個性的。それがアンサンブルになると足し算ではなく掛け算の相乗効果でもっと良くなるんですね。ピアノソロやオケとは勝手が違うはずなのにこの完成度、すごすぎます!札響奏者である弦のお三方のお顔とお名前は存じておりましたが、コンマス田島さんは別として、副首席奏者の青木さんと猿渡さんの単独での演奏をじっくり聴けたのは今回が初めてでした。なにこのクオリティの高さ!当たり前ですが、札響の音を作っているのは首席奏者だけじゃないことを再確認。もちろん札響丸ごと好きな前提の上で、私は今回また注目したい奏者が増えました。そして札響で普段一緒に活動している人達の中に入って弾いたピアノの浅沼さんも、まるで昔からユニットを組んでいるような演奏の完成度とチームワークでした。今回だけとは言わず、また同じチームでピアノ四重奏を演奏してほしいです。その際には演目にぜひまたブラームスを入れてくださいね。

今回は六花亭主催公演ではなかったため、スタッフの制服が違っていたり、開演前に流れたBGMがCMの「♪花咲く六花亭♪」のオルゴール版だったりと、会場の雰囲気はいつもとは少し違っていました。キャパ約220席の座席は9割以上が埋まっていたと思います。全席自由席で、私はいつものように前の方の中央よりの席に着席しました。

奏者の皆様は全員が黒い長袖シャツとスラックス姿でキメていて、シャツの首元のボタンは外したスタイルでした。華やかさはなく、見た目から既に漢(オトコ)集団(笑)。選曲もすべて短調の曲ですし、こちらは聴く前から骨太な演奏を期待してしまいました。実際に演奏が始まると、力強さは当然として、クールでありながら繊細さや甘美さも表現しちゃうんですからもう参りました!


演目に入ります。1曲目はW.A.モーツァルトのピアノ四重奏曲第1番。偉大なモーツァルトが前座だなんて、ブラームスも気後れしちゃうかもしれませんね。ブラームスの1番と同じト短調ということで、聴く前から期待が高まります。第1楽章、いきなり冒頭の低音が効いた全員合奏にズキュンとやられました。まだこちらの気持ちの準備ができていない段階でがしっと心掴まれ、もうこれは頑張ってついて行くしかないと最初からのめり込む姿勢に。掴みってすごく大事。ピアノがキラキラしていたり、ヴァイオリンがきれいに歌ったりするところは本来のモーツァルトらしさで素敵ですが、そんなところですら重ねる低音が効いていて「らしくない」感じ。だがそれがイイ!そしてやはり繰り返し出てくる冒頭の不穏なメロディが登場する度にゾクゾクして良いです。比較的穏やかな第2楽章は、最初のゆったり聴かせるピアノに続いて弦が重なるととても美しく、第1楽章の不穏さとは違った良さがありました。それでも病院の待合室で流れているタイプの曲とは違い、完全に明るいわけではなく少し影が感じられるのが素敵。また思いの外ヴィオラが活躍している印象を受けました。チェロが歌うときにヴァイオリンとヴィオラが音を細かく刻まず流れるように伴奏するのがモーツァルトっぽいなと思ったり。第3楽章、基本明るいのにやはりここも少し影がありそうでした。ピアノがずっとキラキラしていて、もしかするとピアノだけでも十分曲として成立するかもしれないのに、弦が一緒に演奏することでさらに深みが増している感じ。私の印象ではヴァイオリンとヴィオラがペアで演奏をすることが多く、チェロは通奏低音のように低い繰り返しの音でベースを作っているときもあれば、ヴァイオリンとヴィオラと同じメロディを同時にあるいは呼応するように演奏することも。そんな変化が楽しかったです。この曲は、作曲当時出版社から(家庭で楽しむアマチュア向きではない)難解な曲とクレームがついたそうなので、きっと演奏は難しいのだと思います。しかしモーツァルトお得意の次々と新しいメロディが展開されるのが流暢で自然体で、素人目と耳ではありますが、奏者が苦労しているとはまったく思えない演奏でした。この完成度、ただただ敬服します。おかげさまで聴いているこちらは肩凝らず素直に楽しめました。私は拍手を送りながら、そんな1曲目からこんなに良くて良いんでしょうか…前半はあと1曲あるし、後半は大曲が控えているんですよ…と変な心配をしていました。当たり前のことかもしれませんが、奏者の皆様は最初から全員集中しての全力投球。素晴らしいです!ありがとうございます!

2曲目はJ.トゥリーナのピアノ四重奏曲。私は作曲家の名前すら初耳でした。開演前にプログラムノートを熟読。それによると、トゥリーナはスペイン人作曲家で、パリで学んだ経験あり。このピアノ四重奏曲はパリからスペインに帰国後に作曲されたそう。第1楽章、冒頭は弦3つで力強く入り、ほどなくピアノも参戦。ピアノがモーツァルトのキラキラとはまったく違うパワフルで悲劇的な印象でした。弦がスペイン風なメロディを奏ではじめると舞曲のような雰囲気に。チェロが艶めかしく主旋律を奏でるときに、他の2つの弦が小刻みに弓を引いて音を刻むような伴奏をしたのがインパクト大でした。この後の楽章でも、担当は入れ替わるものの、弦の小刻みに音を刻む演奏が度々出てきて、私はそれが強く印象に残っています。演奏技術があってこそと思いますが、楽器内部から漏れ出る空気の音も含めてザワザワした感じに聞こえるのがたまらなく良かったです。第2楽章は、強めのピチカートが入りその後に伸びやかに弦が歌うところにほんの少しだけラヴェル風味を感じました。しかしすぐにピアノも弦もスペインの踊りのような音楽になって、ピチカートが合いの手を入れる打楽器のよう。メロディそのものの異国風味の良さだけでなく、リズム感がすごく良かったです。第3楽章はやはり冒頭の情熱的なヴァイオリンソロ!札響コンマスの貫禄!もちろんkitara大ホールでオケをバックにしてのソロも良いですが、ふきのとうホールでのソロも私はとても好きです。何せ奏者との物理的距離が近いですし、小さなホールで音に包まれる感じは素敵な演奏を独り占めしているような贅沢な気分になれます。合いの手のピチカートもカッコイイ!続くピアノソロも妖艶で素敵!情熱的で力強い演奏で駆け抜け最後バシッとしめてくださいました。すっごい!知らない曲は新鮮で当たり前ですが、それ以上に演奏の凄みに圧倒されました。耳慣れたドイツ・オーストリア圏の作曲家とはまったく違った個性に、最高の演奏で触れることが出来、感謝です。

休憩後の後半はいよいよJ.ブラームスのピアノ四重奏曲第1番です。8月に札響定期でシェーンベルク編曲による管弦楽版が演奏され、全国放送もされたので、これで原曲の存在を知ったかたも多いかもしれません。もちろんブラシェンは良い曲で私も好きですが、それは原曲があってのこと。小さな編成でこんなに奥行きのある曲が作れる、ブラームスってやっぱりすごいと思います。それに原曲を聴くと、私の場合は特にピアノやヴィオラが良いところを弾くとうれしくなるんですよね。管弦楽版だと良いところは管楽器や打楽器に持って行かれちゃうから(笑)。第1楽章、冒頭はピアノから。続いてチェロ、ヴィオラ、ヴァイオリンがゆっくり順番に入ってきて、あっという間に切なくて情熱的な盛り上がりに。最初から奏者全員が同じように流れに乗っている上に感情まで込めて、すごいです…。のめり込みすぎてしまうと途中で燃え尽きてしまうのがイヤだったので、私はつとめて冷静に聴こうと心がけていましたが、どうしたって引き込まてしまいます!各弦が順番に良いところを奏でるときの、寄り添うピアノがキラキラしているところはブラームスらしいピアノで、同じキラキラでもモーツァルトのそれとはまったく違います。一方、弦に応戦してピアノが低音を弾くときもありここでも当たり前のようにシンクロ。私はピアノはまったく弾けませんが、ブラームス作品のピアノはどれも難易度高そうだなとは感じています。派手では無いけれどめちゃくちゃ凝っている印象。ピアノが主役のときの細かく休符を挟みながら伴奏する弦もとっても素敵。弦がピアニッシモで弾くときや控えめなピチカートでもちゃんと音が響いていて、札響でバーメルトさんに鍛えられた(?)強弱と、ホールの音響の良さに感激。力強く演奏するところになっても音がキレイですし、やはりこのかたたち只者じゃないです。第2楽章、哀愁漂うメロディをヴァイオリンやピアノがリレーしていくのが素敵。ヴィオラはヴァイオリンと一緒に動くことが多い印象ですが、時には主役になることも。ベースを作るチェロに着目すると、やはりブラームスはロックなんじゃないかと思いました。ブラシェンだったら木管がリードする、メロディが変わるところも疾走感があって良かったです。第3楽章、冒頭はやはり美メロ!キタラ大ホールのオケで聴いたときも素敵でしたが、小さなホールのピアノ四重奏という小さな編成で聴けるのも手が届く感があって好きです。中盤の盛り上げ方も美メロとの対比になっていて、比較的ゆったりした楽章でもだらだらしたところはまったくなく、ずっと夢中になって聴いていられました。途中、私の耳でミスタッチかなと思えた部分がありその後ほんの少しだけピアノがゆっくりになったように感じましたが、すぐに勢いを取り戻していました。これは私の聞き間違いかもしれませんし、もしかすると私が気づいていないレベルの細かなミスは他にもあるかもしれません。なによりお客さんは普通に聴いていましたし、リカバリーは早かったので、とにかく、まったく問題ないです!そして情熱的な第4楽章へ。もう、すごく良いです!ほら原曲だってこんなに情熱的なんですよ!誰一人遠慮しない本気の演奏にゾクゾクします。ピアノの超絶技巧の聴かせどころでは、ここでも弦のピチカートや音を細かく刻む演奏でのアシストが完璧。中盤ほんの少しゆっくりになるところ以外はとにかく展開が早くて演奏は大変だと思われるにもかかわらず、皆さんものすごい集中力で演奏されていました。一度だけ譜面がめくりにくかったのか、バサッと紙の音がしましたが、たいした問題では無いです。終盤、弦だけで演奏されるブラシェンでも原曲そのままの箇所があります。今回は当然8月の札響定期とは違う布陣での演奏で、なんだか胸が熱くなりました。オケでは各パート代表で弾くとなれば必ず首席奏者になるわけですが、誰だってこんな聴かせどころ弾きたいに決まってますよね。そしてとても良かったです!そんな感慨にふけっている暇もなく、曲はスピードを上げて最後まで駆け抜けました。素晴らしかったです!ありがとうございました!


カーテンコールで舞台へ何度も戻ってこられた奏者の皆様。何度目かに着席して、ピアノの浅沼さんがマイクを持ってお話されました。浅沼さんのコンサートシリーズは今回3回目で、初めてのピアノ四重奏だったそう。お話ぶりから弦のメンバーとすっかり意気投合している様子がうかがえました。アンコールはなんとブラームスの子守歌のピアノ四重奏アレンジ!誰もが知る超有名な歌曲をこんな素敵な演奏で聴けるなんて、大袈裟ではなく生きていてよかったなと思いました。ブラームスは深刻で重い曲ばかりと誤解している人にこそ聴いてほしい、かわいらしくちょっと切ない美しい曲。メロディは基本繰り返しでも、主役の楽器が次々と交代して演奏する形で、もうずっと聴いていたいと思えたほどでした。


お開き後はホワイエで奏者の皆様によるお見送り。お着替えはなく、奏者の皆様は舞台衣装のままでした。私は「ありがとうございました」とだけお声がけして失礼しました。ヴィオラの青木さんに、演奏後の拍手の時に目が合いましたねと言おうかと思いましたが、思っただけです(笑)。こんなこと言われたってご迷惑でしょうし、その先お話を続けられる自信は私にはないですから…申し訳ありません。重ねて、素晴らしい演奏をありがとうございました!


ブラシェンこと「ブラームス ピアノ四重奏曲第1番(シェーンベルクによる管弦楽版)」は2019年8月の第621回定期演奏会で演奏されました。今回はEテレで放送された番組レビュー記事ではなく、演奏会そのもののレポート記事の紹介です。以下のリンクからどうぞ。ブラシェン終盤に原曲と同じところが出てくるのですが、その時の布陣はコンマス大平まゆみさん、首席ヴィオラ奏者の廣狩さんそして首席チェロ奏者の石川さんでした。 

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11月にブラームスピアノ五重奏曲を聴いた演奏会についても弊ブログにレポートをUPしています。情熱的なピアノ四重奏曲第1番も好きですが、いつもきちんとしているブラームスが取り乱したような印象があるピアノ五重奏曲も私は大好きです!以下のリンクにありますので、よろしければお読みください。 

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

『100歳まで弾くからね!』大平まゆみ(著) 読みました

shopping.hokkaido-np.co.jp

今回紹介するのは『100歳まで弾くからね!』大平まゆみ(著) です。発売日は2013年12月19日、北海道新聞社の本です。 

www.sso.or.jp

札幌交響楽団コンサートマスターを約21年半の長きにわたりつとめた大平まゆみさん。健康上の理由で2019年11月末日に退団されました。急なお知らせで、私たちファンは大変驚きました。そして言葉が軽いツイッターにおいて、日々消費される数多のトピックの一つとしてTLを流れていくのに違和感を覚えつつ、私は新しく配信されるニュース記事やファンの皆さんのツイートをただ追うことしかできませんでした。しかしその過程で、大平まゆみさんに著書があることを知ったのです。できればこのようなことになる前に読みたかったですが、それは今更悔やんでも詮無きこと。各通販サイトでも近くの本屋でも在庫が無かったため、私は図書館に予約を入れ、ようやく順番がまわってきて一気に読みました。エッセイの内容自体が波瀾万丈のドラマチックな人生で面白いのに加え、大平まゆみさんをよく知る皆様からの寄稿文や対談そして写真が充実しており、夢中になって読むことが出来ました。

本記事では私なりの感想を書きます。未読のかたは、できれば実際に本をお読みになった後こちらに目を通して頂けましたら幸いです。また私の考えはあくまで主観に過ぎませんので、参考程度にさらっと読み流して頂きますようお願いします。

内容に触れる部分は畳みました。続きは「続きを読む」からお進み下さい。

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