自由にしかし楽しく!クラシック音楽

クラシック音楽の演奏会や関連本などの感想を書くブログです。「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ(http://nyaon-c.hatenablog.com/)」の姉妹ブログです。

第16回 北海道信用金庫 札響クラシック&ポップスConcert(2018/11) レポート

私にとっては久しぶりのオーケストラ生演奏です。早い段階で北海道信用金庫の最寄り店舗で2500円のチケットを買い、私は当日を楽しみに待っていました。札幌はここしばらく冷たい雨が続いて寒かったのですが、この日は小春日和で暖かく、隣接する公園では木々の葉っぱが色づいて美しかったです。池にはまだカモがいて、「そろそろ渡らないと雪が降るよ?」と心の中で声をかけました。

全席自由で、会場前に長蛇の列ができていました。私は割とギリギリについたのですが、おひとりさまの身軽さで、1階中央にぽつんと空いていたS席にあたる席に座ることができてありがたかったです。ちなみに会場はほぼ満席。ざっと会場を見渡すとやはりシニア層が多い印象でしたが、若い世代もちらほら見受けられました。

以下、私が感じたままのコンサートのレポートを書きます。いつものように素人コメントであることをご了承下さい。なお、ひどい間違いは指摘頂けますと助かります。

第16回 北海道信用金庫 札響クラシック&ポップスConcert
2018年11月3日(土)13:30~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
尾高忠明(札響名誉音楽監督
管弦楽
札幌交響楽団

【曲目】

  • (オープニング)虹と雪のバラード(作詞:河邨文一郎、作曲:村井邦彦

(第1部)

(第2部)


指揮の尾高さん、お名前は以前から存じ上げておりました。私が最初にお名前を覚えたのはNHK「らららクラシック」のモーツァルト回です。ジャズピアニスト・小曽根真さんをモーツァルトのとりこにしてしまったのが尾高さんでした。「ジャズならバッハかモーツァルト」と、クラシックにまったく興味がなかった小曽根さんにモーツァルトの協奏曲の何番でも良いからと無茶ぶり(!)して、演奏を実現したという…。うん楽しい。なので、尾高さんにお目にかかるのを楽しみにしていました。事前に尾高忠明&札幌交響楽団ドボルザーク交響曲8番9番が入ったCDを図書館で借りて何度か聴き、予習もバッチリ(笑)。

尾高さんは指揮棒は持たないスタイルでの指揮で、札響とはさすがの信頼関係が窺える演奏でした。曲の合間のトークでは気さくなお話ぶりで、聴いているこちらはリラックスできてよかったです。最後の斉唱やラデツキー行進曲では客席に合図してくださるのですが、リラックスした空気ができていたので、自然に一体感が生まれて「参加」できる喜びを味わえました。なお、札響の2人のコンサートマスターのうち、今回は長身の男性コンマスが出演されていました。

司会の方のお話の後、最初の曲が始まりました。配布された資料によると、1972年の札幌オリンピックテーマソングのようです。恥ずかしながら私は知らない曲でしたが、年配の方にはなじみがある曲なのかもしれません。どこか懐かしい感じがする曲でした。

そして第1部は「新たなステージへ」をテーマに、おなじみ「新世界より」。父が繰り返し聴いていたレコードのおかげで、私は全部口ずさめる程覚えてしまった曲です。ただ生演奏を聴くのは今回が初めてです。第1楽章、冒頭はバイオリン以外の弦楽器たちが静かに奏でるところから。私はここが地味に好きで、その後も舞台向かって右側の低音の弦楽器の動きをつい追いかける感じになりました。第2楽章、日本人でも懐かしさを感じる「家路」のメロディ。それを過ぎて後半のメロディがまた沁みるんです。私事でちょっと実家のことで色々あるのですが、素直に望郷の念にかられました。第3楽章、イメージとしては大陸横断列車がまさに走り出したところ。個人的に好きな楽章です。もちろんどの楽章でも各楽器による主旋律と対旋律の分担は素晴らしいんですよ。それでも第3楽章は特にどの楽器も本領発揮している感じがして、演奏を目で追いかけるのが楽しかったです。やっぱり私は演奏を聴くだけでなく観るのも好きみたいです。盛り上がってきたところで第4楽章、疾走感!早すぎることも逆に遅すぎることもなく、一緒に駆けていけるのがとても良かったです。一度だけ登場する控えめなシンバルは、第3楽章でトライアングルをめいいっぱい鳴らした奏者の方が持ち替えて任務遂行されたのも見届けましたよ。えっと、確かチューバも出番が少ないんですよね?奏者の方が構えておられたのは把握していましたが、出番がどこからどこまでかはよくわからずでスミマセン…。「新世界より」は印象的なメロディが次々と来る聴きやすい曲だとは思いますが、最初から最後までまったく飽きることなく夢中になれたのは、やはり演奏の力によるものだと思います。ありがとうございます!

休憩を挟み、第2部は「実写化されたヒーロー特集」と題してのポップスの有名どころが次々と。ちなみに尾高さんは映画監督になりたかったのだそう。私はリアルタイムでは聴いていない世代ですが、いずれも超メジャーな曲なのでさすがにわかりました。「サンダーバード」は冒頭のスリー・ツー・ワンも演奏で表現するんだなと妙なところでまず感心し、打楽器や金管楽器が本領発揮でどんどん気分が上がってきたところで流暢な弦楽器の旋律…すごく素敵で、1曲目からポップスをオーケストラが演奏する良さを感じました。「宇宙戦艦ヤマト組曲は、これはもう所謂クラシック音楽にもまったくひけをとらない壮大さ。ちなみに作曲家の宮川泰さんは、テレビでおなじみ宮川彬良さんのお父さんですね。アキラさんがNHK「らららクラシック」のJ.シュトラウス二世の回で、「(お父さん作曲の)ヤマトは一世のラデツキー行進曲のよう」とおっしゃられていたのが印象に残っています。「パイレーツ・オブ・カリビアン」は、おなじみのあのメロディでゾクゾクして。曲の合間のトークで指揮の尾高さんが「演奏が難しいんですよ。特にビオラ」と、ビオラの第一奏者にいきなりマイクを向けてビックリ。でもそのかたも臆せず「はい難しいです」と応えておられました。難しいところを弾いてとの無茶ぶりはキッパリ断ってましたが(笑)。「スーパーマン」は「スターウォーズ」で有名なJ.ウィリアムズ作曲。私は詳しくは存じませんが、映画音楽を多く手がけている作曲家のようですね。尾高さんはトークで「スピルバーグは彼の音楽のおかげで映画が売れたと言った」とのエピソード紹介をした一方で、「ヤマトがJ.ウィリアムズの曲に影響を与えてる」といった趣旨のこともお話されていました。

尾高さんは他にもお住まいのイギリスのアニメ事情や大阪の演奏会でのお話等、楽しいトピックを色々と。その中から一つだけ、ライナー・キュッヒルさんを招きN響と映画音楽を演奏したときのエピソードをご紹介します。楽団員は「ワルツは得意だろうけど映画音楽は?」とキュッヒルさんにやや懐疑的だったのに、キュッヒルさんはほぼ全部を暗譜してこられたため、全員が身が引き締まる思いになったそう。当たり前かもしれませんが、本来のご自身の守備範囲を超えたものであっても必ずものにして演奏するのがプロのお仕事なんですよねきっと。今回の演奏会にしても、普段はほとんどクラシック音楽を奏でているオーケストラがポップスの名曲を演奏して下さったわけで。演奏者はもちろんのことですが、守備範囲にない(しかも確固たるフルオーケストラ版がある確証はなさそうな)楽譜を用意して各人と意識をすりあわせる裏方のスタッフにもご苦労があったのでは?本当に頭が下がります。

指揮者とコンマスへの花束贈呈もありました。最初の曲をもう一度演奏し、それにあわせて客席が歌い、お開きかな?と思ったら、司会者が「もう一曲、聴きたいですよね?」と。会場は拍手に包まれ、「ラデツキー行進曲」の司会者の言葉でどよめきが。そのまま演奏に入り、全員が手拍子でノリノリに。大盛り上がりのフィナーレでした。最初から最後までずっと楽しかったです。ありがとうございました!

終演後のロビーでは開場時と同じく北海道信用金庫の重役の皆様と思われる方々が並んで挨拶してくださいました。合併があってバタバタしていたと拝察しますが、札幌信用金庫時代からの企画を受け継ぎ、例年通り開催くださったことに感謝です。

なお、まったく同じ時間帯に小ホールでは田部京子さんのピアノリサイタルがありました。そちらにも私は行きたかったのですが、今回はオーケストラのほうを選びました。申し訳ありません。田部京子さんのCD、私はブラームスの後期ピアノ小品集およびピアノ五重奏曲・ピアノ四重奏曲第3番が収録されたものを持っています。田部京子さんのピアノの音色は好きなので、次に来札されるときは必ず演奏会にうかがいたいと思っています。その時はぜひブラームスを弾いてほしいです!

 

少し思うところがありますので、以下少しだけ続けますね。

この会に限った話ではないのですが、企業が主催する企画物のコンサートには、普段生演奏に触れる機会がない人も集まっています。今回の演奏中にも、楽章の途中での拍手やバッグの中をがさごそする音、ステンレス製の水筒を派手に落とす音なんかもありました。こういったマナー違反に関し、私は聴衆の一人として演奏する皆様に心からお詫びしたいです。しかし同時に、失敗した人達に対しては寛容でありたいとも思っています。そもそも、私だってまだ聴き始めの初心者なので、人のことをとやかく言う資格はありません。それでも私はこの先ずっと演奏会を楽しみたいので、もやっとした感情は整理しておきたいと考えました。もちろんお叱りは受け止めます。

拍手は、一生懸命聴いていて「よかった」と感じたからこそ。失敗した人達に対し、事前に「楽章の区切りでは拍手しない」というマナーを覚えてこなかったことを殊更責め立てては、初めての演奏会が悲しい思い出になってしまうかもしれません。「やっちゃった…」と気まずい表情の人を睨み付けるのではなく、こんなことで萎縮してはもったいないですよ!次は大丈夫、別の演奏会でぜひまたお目にかかりましょう!と心の中で応援する人でありたいなと思います。また演奏会に少しは慣れている人であっても、例えば拍手のタイミングが難しいチャイコフスキー「悲愴」で絶対に間違えない!と言い切れる人はそう多くないのでは?拍手のタイミングばかりを気にして曲を聴くなんて、既に「鑑賞」ではない気がします。聴衆が心から「よかった」と演奏者に伝えるのが拍手であって、決まり事よりも感受性のほうが大事だと私は考えます。

また物音に関しては、フライングブラボーのような悪意が感じられるものや、おしゃべりをやめない等のあまりに度が過ぎたものでなければ、ある程度はお互い様の部分もあると思うのです。誰だって生理現象としての咳やくしゃみがどうしても出る場合もあるわけで、演奏中に絶対に物音を立てずにいられるワザはそれこそ場数を踏むことでマスターしていくのかなと。それから、他にも細かなマナーはおそらくたくさんあり、その全てを完璧にマスターしている人はほとんどいないのではないかと思います。だからこそ、自分の無意識の行動が気付かないうちに周りを不愉快にしてしまう可能性はあるのだと、私は常に自覚しておきたいです。これは私のような初心者に限らず、きっとどなたにでも言えることでしょう。

もちろん、演奏に集中したいからこそノイズは気になるというのはわかります。私だって、変な物音には「あらら」と思わなくはないです。それでも、プログラムが進むにつれ、演奏にどんどん引き込まれ迫力に圧倒され歌や手拍子で楽しくなって…こうなるともう周りはまったく気にならなくなっていきませんか?少なくとも私はそうなります。人のことが気になるのは、結局は自分が元から持っている「雑念」が「雑音」を必要以上に感じ取ってしまうからかも。そんな邪な感情がまっさらになる、生演奏ってやはり良いものだとしみじみ思います。

なにより、本物の演奏を格安で聴くことができる企業主催のコンサートは大変ありがたいです。普段クラシック音楽や生演奏になじみがない人でも「これなら聴いてみようかな」と思える企画があって、様々な客層の人達が集まり演奏に耳を傾けるわけです。しかも札幌には良いホールとプロの楽団がいて、世界的な指揮者が振ってくださるという、最高の環境があります。素晴らしい環境で良い音を直接肌で感じる機会はプライスレス。そんな機会が多い札幌に暮らせることは大変恵まれていると私は思いますし、終演後に思い思いの感想をお話しながら駅まで歩く皆さんとは勝手に同志の気分になっています。PMFやリスト音楽院セミナーといった若手音楽家を育てる土壌があるこの街では、今回のような企業主催のコンサートやkitaraファーストコンサートといった子供向けの企画もあり、クラシック音楽の聴き手もまた育てて頂いています。とても感謝しています。


過去の演奏会レビュー記事は姉妹ブログ「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ」にもあります。よろしければそちらもお読み下さい。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

 

長尾春花・加藤洋之 ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会(2018年8月) レポート

2018/8/25 16時から、六花亭札幌本店ふきのとうホールで行われたコンサートに行ってきました。ずっと前から楽しみにしていたコンサートです。今回はこちらの演奏会の感想を書きます。私は音楽を専門的には学んでいませんので、素人コメントであることをご了承下さい。なお、ひどい間違いは指摘頂けますと助かります。

【出演】

  • 長尾春花(ヴァイオリン)
  • 加藤洋之(ピアノ)

【プログラム】

(アンコール)


配布されたプログラムには出演のお二方の経歴があり、華々しい実績に演奏への期待が高まります。ピアノの加藤洋之さんはライナー・キュッヒルさんとの共演が多いのだそう。キュッヒルさん、私は先日のPMFコンサートでの演奏を聴いて大ファンになりました。その時の感想記事(姉妹ブログ「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ」の記事です)へのリンクをはっておきます。

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ほか、プログラムには曲名のみで、曲の解説はありませんでした。ブラームスという作曲家は自分の作品について語ることが極端に少なかった人ですし、標題音楽は一切書いていないので、先入観なしで聴くのが一番いいと思います。私も最初にCD全集で聴いたときは予備知識は何もない状態でした。そこでまず心を奪われて、背景を色々と調べたクチです。絶対音楽を「物語」で聴く方法は邪道だとは重々承知の上で、私は音楽を言葉で説明できないため一つの方法として「あくまで自分だけの物語」でレビューを書こうと思います。この解釈が絶対だとは思いませんし、聴くたびに変化していくものとも思っています。以下、私が知る限りの背景と私の個人的な解釈も織り交ぜて書きますので、これから録音音源等で聴く予定で先入観を持ちたくないかたは、聴き終わってから読むようお願いします。

ブラームスのヴァイオリン・ソナタは全部で3曲残されています。あとは合作のF.A.E.ソナタの第3楽章。1番の前に少なくとも4曲が破棄されていて、中にはロベルト・シューマンから出版を勧められた作品もあったようです。シューマン夫妻と出会った直後のF.A.E.ソナタは別として、ヴァイオリン・ソナタの3曲はいずれも40代から50代の作品。ブラームス交響曲弦楽四重奏曲だけでなく、ヴァイオリン・ソナタにおいてもベートヴェンを意識しすぎたようです。ちなみにピアノ・ソナタは3曲とも20歳前後で書かれていて、若い感情が迸る感じ。それに比べるとヴァイオリン・ソナタの3曲は大人の落ち着きがあり、でもまだ枯れていない印象があります。完全に私個人の考えですが、ピアノ・ソナタが青年の自分語りであるならば、ヴァイオリン・ソナタは大人の男女の語らいであり、ピアノが男性でヴァイオリンが女性のイメージです。私は今回の演奏会を聴いて、そのイメージが確信に近いものになりました。ヴァイオリンの長尾春花さんの演奏は、力強さがありつつも全体的に優雅でまさに大人の女性を体現していると感じました。あれだけ大きな音が出るなら弓の繊維が切れてもおかしくないのに、まったく切れることはなかったので、おそらく無理な力は使っておられないのでは?ピアノの加藤洋之さんの演奏は基本力強くはありますが、ヴァイオリンの音色に寄り添う感じの演奏。繊細さや時に強く主張するところまで、まさに作曲家自身の想いを雄弁に語ってくださっているようでした。私は前の方の席で、ブラームスのトリルはどう指が動くんだろう?とか始まる前は色々と観察したいなと考えていました。しかし演奏が始まるとそんなことはどうでもよくなって、ヴァイオリンとピアノのやりとりに聴き入ってしまいました。本当に素晴らしい演奏をありがとうございます。お二方の演奏するブラームスのヴァイオリン・ソナタ全曲のCDがあれば絶対に欲しいです。

第1番クララ・シューマンが「天国に持っていきたい」と言ったとされる曲。シューマン家の末子フェリックスが亡くなった年に発表されています。通称が『雨の歌』になっているのは、同名の歌曲の旋律が第3楽章に登場するからで、この歌曲はクララが好んだ曲だそう。この情報のみだと湿っぽい暗い曲と思いがちですが、とんでもない。冷たい雨ではなく、例えるなら「春雨じゃ濡れて参ろう」(※どうなんだこの例えは)。ヴァイオリンが静かに語るのに寄り添うピアノが温かく、美しい曲です。ゆったりとした第1楽章はまさに天国的な響きで、最初からぐっと引き込まれます。第2楽章後半と第3楽章にて時折ヴァイオリンがまるい音…うまく言えないのですが、少しリラックスしたような音色になるのが好きです。哀しみに向き合う人を無理に励ましたりせずさりげなく支える、そんな控えめなピアノが本当に良い仕事をしているなと思います。どの楽章も最後は静かに明るく締めくくるので、やまない雨はないのだと希望が持てます。

第2番は結婚まで考えた女性(※クララではないです)がいた頃の作曲。1番よりはピアノが語るシーンが増えています。第1楽章は穏やかに会話が始まって、緩急つけながら盛り上がったり落ち着いたり。まずピアノが奏でた旋律を次にヴァイオリンが奏でるパターンが多く、印象としては少し口下手なピアノ(※演奏は流暢ですが演出として)にヴァイオリンが素直に応えているような感じです。そしてヴァイオリンが自らの言葉で語って明るく締めくくります。第2楽章は先にヴァイオリンが語り、それに対してピアノが訥々と疑問を投げかけ、質問が終わる前にヴァイオリンが返事をする感じなのかなと。この章のピアノ、最初は少し遠慮がちだったのがだんだん楽しくなっていくように感じられるのが好きです。最後は二人で同じ旋律を奏でて明るく締めくくり。第3楽章は主にヴァイオリンが語るのをピアノが丸ごと受け止めている感じで、途中少し寂しげになるところはあるものの、最後はやはり明るく締めてくれます。

休憩を挟んで第2部の最初に登場したのはなんとクララ・シューマンの曲。ピアニストとして有名な彼女が少しだけ作曲もしていたのは知っていましたが、実際に曲の演奏を聴いたのは私は初めてでした。作曲された時期はロベルトの病状が落ち着いていた頃で、初めてブラームスシューマン家を訪れた時期とも被っているようです。ヴァイオリンとピアノによる小さな曲が3曲。同時期のF.A.E.ソナタと同様、ヴァイオリニストのヨーゼフ・ヨアヒムに献呈されています。ヴァイオリンの旋律はブラームスの曲に少し似ている印象で、やはり共通の友人ヨアヒムの存在が大きいのかなと。一方ピアノは明確に違います。こちらの「男女」はまさに夫婦の距離感で、かつ夫(ピアノの旋律)はかなり落ち着いた包容力のある大人です。妻(ヴァイオリン)が思いつくままに話し気分の浮き沈みが忙しいのを、いつも大らかに受け止めてくれます。大人の女性に向かって失礼なのは承知の上で、3曲ともとても可憐な印象です。2曲目なんて何だか悩み事があるような雰囲気なのに、最後軽やかなピッチカートで終わらせて「もう大丈夫」とさらっと言う感じなのがカワイイ。ブラームスの1番2番は比較的優雅な曲なので女性的だと思っていたのですが、クララの曲を聴いてからは「ブラームスの曲はやはり男性的だ」と思い直しました。この後にパワフルな3番が来るので、このタイミングにクララの曲を持ってきたセンスともちろん演奏に脱帽です。

第3番は第2番の幸せな頃とは異なり、親しい人が亡くなった時期に作曲されたようです。3つのヴァイオリン・ソナタの中では唯一短調の曲で、3曲の中では最も「ブラームスらしい」曲だと私は思います。また1番2番は3楽章なのに対し、3番は4楽章構成です。第1楽章、静かに心配事を語っていそうなヴァイオリンが途中一度だけ感情が昂ぶった感じになります。第2楽章は少し落ち着いて、ここまでずっとピアノはヴァイオリンの感情の波に合わせて寄り添ってくれています。第3楽章では今までとうって変わって、ピアノが先に語り出します。それに応じるヴァイオリンと一緒に盛り上がって落ち着いて。この3分ほどの短い章が個人的に大好きです。この後にくるガチンコ勝負の前に必要な序奏になっているのだと思います。第4楽章は最初からパワフルな演奏で、ヴァイオリンもピアノも遠慮無しに本音で語っている印象です。目の前での生演奏はそれはそれは迫力があって、これぞまさにライブの醍醐味。最後は二人で全力でバシッと締めて本当にカッコ良かったです。会場は拍手とブラボーの嵐!

アンコールハンガリー舞曲から3曲と、ヴァイオリンソナタ第1番第3楽章に引用された歌曲のさわりが演奏されました。素朴な歌曲の旋律を聴いて、第1番を思い返せたのがよかったです。ハンガリー舞曲は超有名な1番5番ではなく、ああ聴いたことあるけど何番だっけ?と思わせる曲のチョイスがお見事です。出演のお二方は1つ演奏する毎に舞台袖に帰り、拍手が鳴り止まない舞台に再び戻って演奏するスタイルでした。4回もアンコールに応えてくださりありがとうございます!もしかしてハンガリー舞曲全部演奏してくださるとか?いやまさかね。なんて途中で淡い期待を抱いてしまいましたが…。いえ、でもいつかハンガリー舞曲も全曲演奏を聴いてみたいです。ちなみに私はハンガリー舞曲のピアノとヴァイオリンはどちらも男性のイメージで聞こえます。若き無名時代の演奏旅行で、押しの強いヴァイオリン(レメーニ)と、派手ではないもののしっかり自分の音楽を主張するピアノ(ブラームス)。最初に出版されたのはピアノ連弾曲ですが、ルーツは若いヴァイオリニストとピアニストが演奏旅行で披露した演奏にあるのだと思います。なのでピアノとヴァイオリンによる演奏を聴けて嬉しかったです。

ブラームスは少しでも難があると自己判断した曲は徹底的に処分する人で、残された曲は思いの外少ない印象です。私はピアノソナタにしてもヴァイオリンソナタにしても「3曲しかない」と思っていたんです。しかし今回の演奏会を聴いてから「珠玉の名曲が3曲もある」と思えるようになりました。現存する曲がすべて傑作で、一度のコンサートで全曲演奏ができる分量でもあることから、これからもおそらく生演奏を聴ける機会が度々ありそうな予感がします。私の席の後ろあたりにおられた老夫婦のご婦人が「私やっぱりブラームスが好き」とおっしゃられていたのを耳にして、うれしくなりました。私もです(笑)。いつかまた別の機会にお目にかかれるかもしれませんね。


姉妹ブログ「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ」の過去記事「『クラシカロイド』にブラームスが登場するためには / おすすめの曲(ピアノ小品ほか)についても」もよろしければお読み下さい。

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こちらでははじめまして。にゃおん(nyaon_c)と申します。このたびクラシック音楽の演奏会や関連本の感想を書くこちらのブログ「自由にしかし楽しく!クラシック音楽」を始めることにしました。

私がクラシック音楽を自分で聴くようになったのはつい1年半ほど前からです。きっかけはEテレのアニメ『クラシカロイド』に親子でハマったこと。子供が観ていた番組に親の私のほうが夢中になり、「好き」が高じて番組の感想ブログ「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ(http://nyaon-c.hatenablog.com/)」を立ち上げたほどです。

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「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ」は番組レビューをメインでやっていて、演奏会や関連本の感想は番組のメイン視聴者層である子供達にもわかる内容のものを目指してきました。しかし最近「もう少し踏み込んだ内容にしたい」と考えるようになり、思い切って番組レビュー以外のカテゴリーは独立させることにしたのです。それが本ブログ「自由にしかし楽しく!クラシック音楽」になります。

更新頻度は当面は不定期です。『クラシカロイド』の振り返りレビューが一段落したらこちらに軸足を移し、週に1本程度書けたらいいなと考えています。ブロガーのプロフィールは公表しませんが、記事内容から大まかにおわかり頂けるかと思います。なお、アフィリエイトは行いません。

ブログタイトルは、私が好きな作曲家ブラームスのモットー(Frei aber froh = 自由にしかし楽しく)を拝借しました。今はブラームスに夢中ですが、少しずつ幅を広げていこうと考えています。ちなみに父がクラシック音楽マニアだったため、私はベートーヴェンを中心に「耳で覚えている」曲は少しですがあります。しかし、自分で熱心に聞きこんできたわけではないので、まだまだこれからです。

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