自由にしかし楽しく!クラシック音楽

クラシック音楽の演奏会や関連本などの感想を書くブログです。「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ(http://nyaon-c.hatenablog.com/)」の姉妹ブログです。

長尾春花・加藤洋之 ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会(2018年8月) レポート

2018/8/25 16時から、六花亭札幌本店ふきのとうホールで行われたコンサートに行ってきました。ずっと前から楽しみにしていたコンサートです。今回はこちらの演奏会の感想を書きます。私は音楽を専門的には学んでいませんので、素人コメントであることをご了承下さい。なお、ひどい間違いは指摘頂けますと助かります。

【出演】

  • 長尾春花(ヴァイオリン)
  • 加藤洋之(ピアノ)

【プログラム】

(アンコール)


配布されたプログラムには出演のお二方の経歴があり、華々しい実績に演奏への期待が高まります。ピアノの加藤洋之さんはライナー・キュッヒルさんとの共演が多いのだそう。キュッヒルさん、私は先日のPMFコンサートでの演奏を聴いて大ファンになりました。その時の感想記事(姉妹ブログ「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ」の記事です)へのリンクをはっておきます。

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ほか、プログラムには曲名のみで、曲の解説はありませんでした。ブラームスという作曲家は自分の作品について語ることが極端に少なかった人ですし、標題音楽は一切書いていないので、先入観なしで聴くのが一番いいと思います。私も最初にCD全集で聴いたときは予備知識は何もない状態でした。そこでまず心を奪われて、背景を色々と調べたクチです。絶対音楽を「物語」で聴く方法は邪道だとは重々承知の上で、私は音楽を言葉で説明できないため一つの方法として「あくまで自分だけの物語」でレビューを書こうと思います。この解釈が絶対だとは思いませんし、聴くたびに変化していくものとも思っています。以下、私が知る限りの背景と私の個人的な解釈も織り交ぜて書きますので、これから録音音源等で聴く予定で先入観を持ちたくないかたは、聴き終わってから読むようお願いします。

ブラームスのヴァイオリン・ソナタは全部で3曲残されています。あとは合作のF.A.E.ソナタの第3楽章。1番の前に少なくとも4曲が破棄されていて、中にはロベルト・シューマンから出版を勧められた作品もあったようです。シューマン夫妻と出会った直後のF.A.E.ソナタは別として、ヴァイオリン・ソナタの3曲はいずれも40代から50代の作品。ブラームス交響曲弦楽四重奏曲だけでなく、ヴァイオリン・ソナタにおいてもベートヴェンを意識しすぎたようです。ちなみにピアノ・ソナタは3曲とも20歳前後で書かれていて、若い感情が迸る感じ。それに比べるとヴァイオリン・ソナタの3曲は大人の落ち着きがあり、でもまだ枯れていない印象があります。完全に私個人の考えですが、ピアノ・ソナタが青年の自分語りであるならば、ヴァイオリン・ソナタは大人の男女の語らいであり、ピアノが男性でヴァイオリンが女性のイメージです。私は今回の演奏会を聴いて、そのイメージが確信に近いものになりました。ヴァイオリンの長尾春花さんの演奏は、力強さがありつつも全体的に優雅でまさに大人の女性を体現していると感じました。あれだけ大きな音が出るなら弓の繊維が切れてもおかしくないのに、まったく切れることはなかったので、おそらく無理な力は使っておられないのでは?ピアノの加藤洋之さんの演奏は基本力強くはありますが、ヴァイオリンの音色に寄り添う感じの演奏。繊細さや時に強く主張するところまで、まさに作曲家自身の想いを雄弁に語ってくださっているようでした。私は前の方の席で、ブラームスのトリルはどう指が動くんだろう?とか始まる前は色々と観察したいなと考えていました。しかし演奏が始まるとそんなことはどうでもよくなって、ヴァイオリンとピアノのやりとりに聴き入ってしまいました。本当に素晴らしい演奏をありがとうございます。お二方の演奏するブラームスのヴァイオリン・ソナタ全曲のCDがあれば絶対に欲しいです。

第1番クララ・シューマンが「天国に持っていきたい」と言ったとされる曲。シューマン家の末子フェリックスが亡くなった年に発表されています。通称が『雨の歌』になっているのは、同名の歌曲の旋律が第3楽章に登場するからで、この歌曲はクララが好んだ曲だそう。この情報のみだと湿っぽい暗い曲と思いがちですが、とんでもない。冷たい雨ではなく、例えるなら「春雨じゃ濡れて参ろう」(※どうなんだこの例えは)。ヴァイオリンが静かに語るのに寄り添うピアノが温かく、美しい曲です。ゆったりとした第1楽章はまさに天国的な響きで、最初からぐっと引き込まれます。第2楽章後半と第3楽章にて時折ヴァイオリンがまるい音…うまく言えないのですが、少しリラックスしたような音色になるのが好きです。哀しみに向き合う人を無理に励ましたりせずさりげなく支える、そんな控えめなピアノが本当に良い仕事をしているなと思います。どの楽章も最後は静かに明るく締めくくるので、やまない雨はないのだと希望が持てます。

第2番は結婚まで考えた女性(※クララではないです)がいた頃の作曲。1番よりはピアノが語るシーンが増えています。第1楽章は穏やかに会話が始まって、緩急つけながら盛り上がったり落ち着いたり。まずピアノが奏でた旋律を次にヴァイオリンが奏でるパターンが多く、印象としては少し口下手なピアノ(※演奏は流暢ですが演出として)にヴァイオリンが素直に応えているような感じです。そしてヴァイオリンが自らの言葉で語って明るく締めくくります。第2楽章は先にヴァイオリンが語り、それに対してピアノが訥々と疑問を投げかけ、質問が終わる前にヴァイオリンが返事をする感じなのかなと。この章のピアノ、最初は少し遠慮がちだったのがだんだん楽しくなっていくように感じられるのが好きです。最後は二人で同じ旋律を奏でて明るく締めくくり。第3楽章は主にヴァイオリンが語るのをピアノが丸ごと受け止めている感じで、途中少し寂しげになるところはあるものの、最後はやはり明るく締めてくれます。

休憩を挟んで第2部の最初に登場したのはなんとクララ・シューマンの曲。ピアニストとして有名な彼女が少しだけ作曲もしていたのは知っていましたが、実際に曲の演奏を聴いたのは私は初めてでした。作曲された時期はロベルトの病状が落ち着いていた頃で、初めてブラームスシューマン家を訪れた時期とも被っているようです。ヴァイオリンとピアノによる小さな曲が3曲。同時期のF.A.E.ソナタと同様、ヴァイオリニストのヨーゼフ・ヨアヒムに献呈されています。ヴァイオリンの旋律はブラームスの曲に少し似ている印象で、やはり共通の友人ヨアヒムの存在が大きいのかなと。一方ピアノは明確に違います。こちらの「男女」はまさに夫婦の距離感で、かつ夫(ピアノの旋律)はかなり落ち着いた包容力のある大人です。妻(ヴァイオリン)が思いつくままに話し気分の浮き沈みが忙しいのを、いつも大らかに受け止めてくれます。大人の女性に向かって失礼なのは承知の上で、3曲ともとても可憐な印象です。2曲目なんて何だか悩み事があるような雰囲気なのに、最後軽やかなピッチカートで終わらせて「もう大丈夫」とさらっと言う感じなのがカワイイ。ブラームスの1番2番は比較的優雅な曲なので女性的だと思っていたのですが、クララの曲を聴いてからは「ブラームスの曲はやはり男性的だ」と思い直しました。この後にパワフルな3番が来るので、このタイミングにクララの曲を持ってきたセンスともちろん演奏に脱帽です。

第3番は第2番の幸せな頃とは異なり、親しい人が亡くなった時期に作曲されたようです。3つのヴァイオリン・ソナタの中では唯一短調の曲で、3曲の中では最も「ブラームスらしい」曲だと私は思います。また1番2番は3楽章なのに対し、3番は4楽章構成です。第1楽章、静かに心配事を語っていそうなヴァイオリンが途中一度だけ感情が昂ぶった感じになります。第2楽章は少し落ち着いて、ここまでずっとピアノはヴァイオリンの感情の波に合わせて寄り添ってくれています。第3楽章では今までとうって変わって、ピアノが先に語り出します。それに応じるヴァイオリンと一緒に盛り上がって落ち着いて。この3分ほどの短い章が個人的に大好きです。この後にくるガチンコ勝負の前に必要な序奏になっているのだと思います。第4楽章は最初からパワフルな演奏で、ヴァイオリンもピアノも遠慮無しに本音で語っている印象です。目の前での生演奏はそれはそれは迫力があって、これぞまさにライブの醍醐味。最後は二人で全力でバシッと締めて本当にカッコ良かったです。会場は拍手とブラボーの嵐!

アンコールハンガリー舞曲から3曲と、ヴァイオリンソナタ第1番第3楽章に引用された歌曲のさわりが演奏されました。素朴な歌曲の旋律を聴いて、第1番を思い返せたのがよかったです。ハンガリー舞曲は超有名な1番5番ではなく、ああ聴いたことあるけど何番だっけ?と思わせる曲のチョイスがお見事です。出演のお二方は1つ演奏する毎に舞台袖に帰り、拍手が鳴り止まない舞台に再び戻って演奏するスタイルでした。4回もアンコールに応えてくださりありがとうございます!もしかしてハンガリー舞曲全部演奏してくださるとか?いやまさかね。なんて途中で淡い期待を抱いてしまいましたが…。いえ、でもいつかハンガリー舞曲も全曲演奏を聴いてみたいです。ちなみに私はハンガリー舞曲のピアノとヴァイオリンはどちらも男性のイメージで聞こえます。若き無名時代の演奏旅行で、押しの強いヴァイオリン(レメーニ)と、派手ではないもののしっかり自分の音楽を主張するピアノ(ブラームス)。最初に出版されたのはピアノ連弾曲ですが、ルーツは若いヴァイオリニストとピアニストが演奏旅行で披露した演奏にあるのだと思います。なのでピアノとヴァイオリンによる演奏を聴けて嬉しかったです。

ブラームスは少しでも難があると自己判断した曲は徹底的に処分する人で、残された曲は思いの外少ない印象です。私はピアノソナタにしてもヴァイオリンソナタにしても「3曲しかない」と思っていたんです。しかし今回の演奏会を聴いてから「珠玉の名曲が3曲もある」と思えるようになりました。現存する曲がすべて傑作で、一度のコンサートで全曲演奏ができる分量でもあることから、これからもおそらく生演奏を聴ける機会が度々ありそうな予感がします。私の席の後ろあたりにおられた老夫婦のご婦人が「私やっぱりブラームスが好き」とおっしゃられていたのを耳にして、うれしくなりました。私もです(笑)。いつかまた別の機会にお目にかかれるかもしれませんね。


姉妹ブログ「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ」の過去記事「『クラシカロイド』にブラームスが登場するためには / おすすめの曲(ピアノ小品ほか)についても」もよろしければお読み下さい。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。


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ごあいさつ

こちらでははじめまして。にゃおん(nyaon_c)と申します。このたびクラシック音楽の演奏会や関連本の感想を書くこちらのブログ「自由にしかし楽しく!クラシック音楽」を始めることにしました。

私がクラシック音楽を自分で聴くようになったのはつい1年半ほど前からです。きっかけはEテレのアニメ『クラシカロイド』に親子でハマったこと。子供が観ていた番組に親の私のほうが夢中になり、「好き」が高じて番組の感想ブログ「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ(http://nyaon-c.hatenablog.com/)」を立ち上げたほどです。

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「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ」は番組レビューをメインでやっていて、演奏会や関連本の感想は番組のメイン視聴者層である子供達にもわかる内容のものを目指してきました。しかし最近「もう少し踏み込んだ内容にしたい」と考えるようになり、思い切って番組レビュー以外のカテゴリーは独立させることにしたのです。それが本ブログ「自由にしかし楽しく!クラシック音楽」になります。

更新頻度は当面は不定期です。『クラシカロイド』の振り返りレビューが一段落したらこちらに軸足を移し、週に1本程度書けたらいいなと考えています。ブロガーのプロフィールは公表しませんが、記事内容から大まかにおわかり頂けるかと思います。なお、アフィリエイトは行いません。

ブログタイトルは、私が好きな作曲家ブラームスのモットー(Frei aber froh = 自由にしかし楽しく)を拝借しました。今はブラームスに夢中ですが、少しずつ幅を広げていこうと考えています。ちなみに父がクラシック音楽マニアだったため、私はベートーヴェンを中心に「耳で覚えている」曲は少しですがあります。しかし、自分で熱心に聞きこんできたわけではないので、まだまだこれからです。

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それでは、皆様どうぞよろしくお願いいたします。


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