自由にしかし楽しく!クラシック音楽

クラシック音楽の演奏会や関連本などの感想を書くブログです。「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ(http://nyaon-c.hatenablog.com/)」の姉妹ブログです。

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2023年のコンサート振り返り

おかげさまで2023年もたくさんのコンサートを聴くことができました。その簡単な振り返りをしたいと思います。

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2023年に聴いたコンサートは全部で55回。お忍びの1つ(娘のピアノの先生が出演されたコンサートで、旧ツイッターでもブログでも一切話題にしていません)以外、54のコンサートはすべてブログにレポートを書くことができました。いずれも大切な思い出で、優劣はつけられませんが、いくつかの視点でまとめてみます。

忘れ得ぬ記念となったのは、名古屋遠征して聴いた2つの公演(「セントラル愛知交響楽団 第196回定期演奏会~春・声~」と「名古屋フィルハーモニー交響楽団 第512回定期演奏会〈継承されざる個性〉」)。なお他のオケや宗次ホールも気になっているので、名古屋にはまたうかがいたいと思っています。そしてチェロの石川祐支さんが再びブラームスの二重協奏曲のソリスト(ヴァイオリンは会田莉凡さん!札響のコンマス&チェロ首席の最強デュオ!)としてご出演する札響苫小牧公演(2024/03)と、井上ミッキーのノモス・ガンマが登場する来年度の札響定期(2024/05)を、今からとても楽しみにしています。

また大事件だったのは、石田組との出会いです。今年度は北海道に初上陸!その記念すべき初回の札幌公演(石田組 2023-24 アルバム発売記念ツアー 札幌公演)が私にとっての石田組初体験。その大興奮の熱冷めやらぬ中、約2週間後の網走公演(石田組 2023-24 アルバム発売記念ツアー 網走公演)にも遠征して聴きにうかがいました。すっかり石田組のとりこになった私は、今では日本各地での公演予定を見ては、札幌からどう行けばいいかシミュレーションするようになっています。北海道の2公演以外は今のところ妄想でとどまっていますが、来年は可能なら遠征して1つでも2つでも多く聴けるといいなと思います。

出演者で見ると、聴いた回数が多いのは、団体ではやはり札響(18回)。演奏家ではチェロの石川祐支さん(札響以外で8回)、ヴィオラの青木晃一さん(札響以外で5回)、ヴィオラの鈴木勇人さん(札響以外で5回)。飽きるだなんて、とんでもない!会う度に新鮮な驚きで楽しませてくださり、感激です。いつもありがとうございます!私は来年も「推しは推せる時に推せ」で行きます!また、新たな出会いもたくさんありました。現役音大生のコントラバス・水野斗希さん(歌い、踊り、想うコントラバス!)から、御年86歳のチェロ・土田英順さん(第500回東日本大震災復興支援チャリティーコンサート)まで、素晴らしい音楽家の皆様との出会いに感謝です!

今年はブラームス生誕190年ということで、愛してやまないブラームスの演奏をたくさん聴けたのがうれしかったです。実に延べ32回も(同じ演目でも異なる団体・演奏家の場合はそれぞれ別カウント)。ソロからカルテットまで、数多くの室内楽はどれも良すぎて本当に選べない!確実に言えるのは、札響メンバーによるブラームスは、オケ以外の室内楽でもすごいぞ!と。オケは、こちらも甲乙つけがたいのですが、私の中で懸案事項が感激に昇華された「記念碑的な出会い」となったものとして、いずれも札響と首席指揮者バーメルトさんによる「ドイツ・レクイエム」(札幌交響楽団 第653回定期演奏会)と「ピアノ協奏曲第2番」(札幌交響楽団 hitaruシリーズ定期演奏会 第15回)をあげたいと思います。バーメルトさんはシューベルト「ザ・グレイト」(札幌交響楽団 第650回定期演奏会)と「ハイドン交響曲の朝・昼・晩」(札幌交響楽団 in ふきのとうホール Vol.4)も忘れられない快演でした。

札幌が誇るふきのとうホールの主催公演のうち、今年私が聴けたのは2つ。「藤村実穂子 メゾソプラノ・リサイタル」と「ふきのとうホール レジデント・アーティスト 小菅 優コンサートシリーズ Vol.4 ベネディクト・クレックナー&小菅 優 デュオ・リサイタル」、いずれも大変な衝撃を受けた演奏会でした。

やっぱり私は小編成や弦楽アンサンブルが好き。札響メンバーによる「桐原組」(第26回北洋銀行presentsクラシックコンサート 札響メンバーによる弦楽アンサンブル)に、若手演奏家たちによる「PMF REUNION CONCERT VOL.5」、大好きチェロアンサンブル「クァルテット・エクスプローチェ Quartet Explloce TOUR 2023 札幌公演」も、また聴けるといいなと願っています。

特別な企画に出会えた事も忘れられません。「ウィステリアホール5周年記念事業 ジングシュピール『ファウスト』」は、こんな音楽劇は他にはない、スペシャルな出会い。「札幌・リトアニア文化交流コンサート」は、国境と文化の違いを超えて多くの人が協力して実現した企画でした。こんな素晴らしい企画がある札幌にいてよかったと心から思います。

札幌は素晴らしい演奏会が数多く開催されていて、とてもありがたいです。自分の都合が付かなかったり複数の公演の開催日時が被ったりで泣く泣く見送る場合も多いですが、贅沢な悩みだと自分でも思います。あと私は札幌から日帰り圏内のプチ遠征にはかなり慣れてきたので、今後可能な限りで泊まりがけの遠征も増やせるといいなと思っています。来年もたくさんの素敵な出会いがありますように。

最後にお知らせです。2024年の1月から2月にかけて(場合によっては3月中旬頃まで)、都合によりコンサート通いをお休みします。この期間はX(旧ツイッター)もあわせて停止し、通知もDMも見ません。おそれいりますが、連絡やご用件はX(旧ツイッター)復帰後にX上にてお願いいたします。なおブログの更新はぼちぼち続ける予定です。ちなみに今年書いたブログ記事は、コンサートレビュー以外では本の感想を2本のみでした。コンサート通いをお休みする期間は、本やCDのレビューをいくつか書きたいと考えています。

弊ブログの読者の皆様、2023年もありがとうございました。お読みくださっていること、励みになります。2024年も引き続きよろしくお願いいたします。

シリーズ イギリス音楽 Vol.1 ヴィオラとピアノで奏でるイギリス音楽の花束(2023/12) レポート

イギリス在住のピアニスト・関治子さんがプロデュースするイギリス音楽の演奏会。その第1回目となる公演がStudio26にて開催されました。共演するのは、イギリス音楽好きという札響副首席ヴィオラ奏者の青木晃一さん。私が聴いたのは、同一内容での昼・夜2回公演のうち、昼の第1公演です。年の瀬の慌ただしい時期にもかかわらず、会場の2階席までお客さんが入る盛況ぶりでした。


シリーズ イギリス音楽 Vol.1 ヴィオラとピアノで奏でるイギリス音楽の花束 (第1公演)
2023年12月28日(日)14:00~ Studio26

【出演】
青木 晃一(ヴィオラ) ※札響副首席ヴィオラ奏者
関 治子(音楽監督・ピアノ)

【曲目】
エリック・コーツ:出会い
レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ:『イギリス民謡による6つのスタディ』より「第5曲」
レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ:『ヴィオラとピアノのための組曲』より「第2曲 キャロル」「第3曲 クリスマス・ダンス」「第8曲 ギャロップ
シリル・スコット:チェリー・ライプ
レベッカ・クラーク:子守唄
レベッカ・クラーク:ヴィオラとピアノのためのソナタ

(アンコール)
サミュエル・コールリッジ=テイラー:カバティー
コレッティ:サーカス


ヴィオラとピアノで奏でるイギリス音楽の数々は、すべてが世界に1つだけの花!オンリーワンの魅力にたくさん出会えた、心温まる演奏会でした。私にとっては今回すべてが「お初」の演目であり、作曲家の名前さえよく知らないものばかり。しかし「めずらしい」というだけでなく、この時代のイギリス音楽の親しみやすい個性に触れられたことと、独奏楽器としてのヴィオラの魅力をたっぷり堪能できたことも嬉しいポイントで、めいいっぱい楽しむことができました。イギリス音楽に造詣が深い関さんによる選曲の良さ、そして作品と作曲家への愛あふれるピアノと解説を聴けるのは特別な体験!また青木さんのヴィオラは、今回も様々な表情で聴き手を魅了してくださいました。派手な表現や超絶技巧のすごさはもちろんのこと、素朴な民謡の細やかな表現がとっても素敵!奥ゆかしい音色のヴィオラだからこそ、心にしみ入る懐かしい感じが際立つのかも?もちろん技術と表現力、音楽への愛あってのことと思います。青木さんのヴィオラを通じて、今まで知らなかった音楽とその魅力に出会えるのはとてもうれしいです。これからも追いかけ続けます!

演目の合間には曲目解説をメインとしたトークがたっぷりあり、また終演後の茶話会でも様々なお話をうかがうことができました。心理的・物理的に演奏家と観客の距離が近いのも小さな会場の良いところです。今回取り上げられた作品は、いずれもヴィクトリア王朝の陰りが見え始めた時期(音楽家以外の著名人として、ダーウィンディケンズ、レイトン等の名前があげられました)のもの。この頃のイギリスにヴィオラのための作品が多い理由は、ヴィオラの名手であるライオネル・ターティスがいて、彼を意識した作品が競うように作られたため、とのことです。私はライオネル・ターティスを以前青木さんのコンサートで知り、歌曲のヴィオラ向け編曲者(ブラームスの歌曲の編曲も手がけているようです)として認識していました。同時代のイギリスの作曲家たちへ多大な影響を与えるほどの名ヴィオリストだったのですね!ちなみに、やわらかく歌い、人の声に近いヴィオラは、(民謡を活かす事が多い)イギリス音楽と相性が良いというお話もありました。また今回、大曲のソナタを取り上げたレベッカ・クラークについては特に詳しく解説。女性だった事から、様々な理不尽な目にも遭ったようです。とにかくヴィオラが上手で、当時はかなりの名手でなければ機会が得られなかった演奏録音もあるのだそう。レベッカ・クラークが師事したチャールズ・ヴィリアーズ・スタンフォードの門下には、この日に登場したヴォーン・ウィリアムズホルスト等がいる、といったお話もありました。個人的に、スタンフォードブラームスの回想録を書き残していることで認識しており、ここで名前が出てきてうれしかったです。レベッカ・クラークの作品は、全体の6割ほどが未発表で、埋もれた作品がこれから出てくるのが楽しみ、というお話もありました。今後新たな作品に出会えることを、私も楽しみにしています!関さんと青木さんの演奏で聴けたらなおうれしいです。


開演前に、会場のオーナーである本堂さまよりごあいさつと出演者の紹介、終演後の茶話会の案内がありました。出演者のお2人が拍手で迎えられ、演奏開始です。1曲目は、エリック・コーツ「出会い」。優しく美しいピアノの響きに乗って、ゆったり歌うヴィオラは温かく懐かしい感じがしました。駆け足になるところや高らかに歌うところ、一方で独り言のような深みある低音がゆらぐところと、細やかな変化は内に秘めている様々な感情を映し出しているようで素敵!高音でフェードアウトするラストがとても美しかったです。演奏後に、英語のタイトルは "first meeting" で、フランス語のタイトル "Souvenir" には「お土産」といった意味がある、と解説がありました。

レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ『イギリス民謡による6つのスタディ』より「第5曲」。本来はチェロのための曲だそうです。そっと登場したヴィオラの掴みの1音の繊細さ!フィドルのような掠れた音による、郷愁にかられる歌が心に染み入りました。ピアノにメロディが移ったとき、それまでメロディを歌っていたヴィオラが流れるように伴奏のうねうねした音に変化していったのがすごい!このグラデーションのおかげで、ぐっと奥行きが感じられました。超高音でのフェードアウトがきれい!

レイフ・ヴォーン・ウィリアムズヴィオラとピアノのための組曲』より、3つの曲が取り上げられました。「第2曲 キャロル」は、先ほど聴いたフォークソングにも似た素朴さと、清らかな美しさに、私は田舎の家庭で過ごす聖夜をイメージ。ピアノのリズムは、ゆりかごのよう。「第3曲 クリスマス・ダンス」は、ヴィオラがガッガッガッ♪と弦をかき鳴らしたり、滑らかに歌うところはピアノがスキップするようだったりと、リズミカルに踊る音楽が楽しい。手首をクルクルひねりながら弦を擦って跳ねるような音を奏でたのは、見た目にも面白かったです。あっけない感じで終わったのも印象的でした。「第8曲 ギャロップ」、これがすごかったです!速いテンポでガンガン派手に盛り上げる演奏!高速に音階を駆け上ったり、ピアノと丁々発止のやり取りをしたりと、勢いとノリがカッコイイ!掠れた音で思いっきり行く演奏は、かしこまったクラシック音楽のイメージとは異なる個性で面白かったです。終盤にはピアノが沈黙してのヴィオラ独奏もあり、短いながらも協奏曲のカデンツァのようなインパクトでした!

シリル・スコット「チェリー・ライプ」。スコットは「イギリスのドビュッシー」とも呼ばれる作曲家で、詩も書く人、と紹介されました。この曲はライオネル・ターティスによる編曲で叙情的になっているものの、元々は子ども達が口ずさむ童謡だそうです。日本語にそのまま訳すと「熟れたサクランボ」で、これは恋する人の唇の意味合いもあるのだとか。シンプルなメロディをヴィオラは優しく愛らしく歌い、一辺倒ではなくフレーズに丸みをつけるのが色気があってとっても素敵!童謡というよりは、大人の淡い恋のよう、と個人的には感じました。ヴィオラがフェードアウトして、ピアノがそっと和音を鳴らしたラストの奥ゆかしさが素敵!

レベッカ・クラーク「子守唄」。この曲は、今回の演奏会にまずレベッカ・クラークのソナタを取り上げることが決まってから、あと1つと考えて選んだものだそうです。ソナタ第3楽章に似ているというお話も。ゆったり寂しげ歌うヴィオラに、私は少しだけ日本の子守歌の雰囲気を感じました。中盤でヴィオラのメロディが駆け足になったときは、ピアノがキラキラした音で彩り、神秘的な感じに。ピアノが沈黙してのヴィオラ独奏や、ヴィオラの超高音が登場し、ほのぼの系ではない子守歌に私は少しぞわっとしました。

レベッカ・クラーク「ヴィオラとピアノのためのソナタ。このソナタは、レベッカ・クラークが匿名で出したコンクールで、最終選考の2作品に残ったもの。審査員が3対3に別れ、パトロンの鶴の一声でクラークが落選した(優勝はブロッホの作品だったようです)、というエピソード紹介がありました。。ヴィオラの名手のクラークらしく、この曲は超絶技巧だらけでヴィオラに容赦ない書き方(!)で、それでも理にかなっているそう。またピアノの方は「ヴィオラがどれほど美しく聞こえるか」に重きを置かれているため、人間の指に収まりきれない書き方(!)がされているのだとか。初めて聴いても懐かしい感じがするのは、日本でなじみ深い「ヨナ抜き」(ペンタトニック?)で書かれているから、といった解説もありました。第1楽章 掴みのヴィオラの強奏が鮮烈なインパクト!カントリー調に歌うヴィオラの下で、ピアノがずっと和音をのばし続けていたのが印象的でした。少し落ち着いたところでのゆらぐヴィオラはミステリアスな感じ。しかし華やかな盛り上がりと地続きになっていて、生き生きとした流れが素敵でした。静かにメロディを奏でるピアノに、重なるヴィオラが弓をダイナミックに上下させながら音階を細かく上り下りする演奏は、見た目にもインパクト大!第2楽章 こちらの楽章がとても面白かったです!舞曲のようなリズムでピアノと呼応しながら、ヴィオラがリズミカルにピッチカートしたり、小刻みに弦を鳴らしたりと、様々な奏法が次々と。弦をゆっくり動かしながら、ごく小さな音から次第に浮かび上がってくる演奏では、その研ぎ澄まされた空気に引き込まれました。第3楽章 ピアノの序奏は寂しげで、私は日本の子守歌の怖い部分を垣間見た気持ちに。幻想的に歌うヴィオラもまた、先に聴いた「子守唄」のようなほの暗さ得体の知れなさが感じられました。チェロのように弦を押さえる手を震わせていたり、メロディがピアノに移った裏でトレモロをしていたり、そのトレモロを継続しながらメロディも奏でたり(一体どんな仕組みで!?)と、超絶技巧が満載!終盤、ヴァイオリンのような高音で連続してひたすら音を繰り出す演奏がすごい!フィナーレで何度も登場した重音の贅沢な響き!超充実の演奏、見応え聴き応え抜群でした!

カーテンコール。出演者のお2人からごあいさつとお話がありました。「こんな事は初めてです」と青木さん。実は今回の演目すべて、青木さんが演奏するのは「お初」で、札響の第九が終わってから約2週間で仕上げたのだそうです(!)。あまりにも大変で、国際電話をかけて関さんに変更をお願いしようかと何度も考えた、と仰っていました。充実の演奏に無理している様子はまったく感じられなかったので、私は心底ビックリ!おそれいりました。これこそプロのお仕事ですね!そしてアンコールの曲目紹介へ。アンコール1曲目は、サミュエル・コールリッジ=テイラー「カバティーナ」。関さんによると、有名な英文学者と同じ姓のコールリッジ=テイラーは、白人と黒人のハーフで私生児。近年のブラック・ライブズ・マターで注目されるようになったそうです。若くして亡くなった事、ドヴォルザークが好きだった事も紹介されました。なお、この作品は本来ヴァイオリンのためのものだそう。優しいピアノの和音に乗って、落ち着いた美しい音色てゆったり歌うヴィオラが美しい!愛あふれる歌曲のようでした。ヴィオラが感極まるように歌うところでは、ピアノもダイナミックに!ピアノの和音を2回優しく鳴らす締めくくりは、思い出を愛しむよう。心癒やされる素敵な演奏でした。

拍手喝采の会場で、青木さんが耳を澄ます仕草をして、熱いエールに応える形で(ありがとうございます!)、アンコール2曲目へ。コレッティ「サーカス」。キューン♪という導入から異次元のクールさ!小刻みに弦を擦る演奏は目にも留まらぬ早業で、弓をダイナミックに上下に動かしてぐいぐい行く演奏のインパクト!息つく暇も無いほど、気迫あふれる演奏に圧倒されました。すごすぎます!

終演後は、出演者のお2人とお客さん達との茶話会がありました。お菓子のトレーには、関さんのロンドンお土産も!参加者は自由にお菓子と飲み物(ジュースや紅茶の他、ワインも用意されていました)を楽しみながら、ピアノの前に腰掛けた出演者のお2人のお話をうかがい、ざっくばらんに質問する形式。関さんは、オケ団員でもある青木さんが演奏を合わせてくれてやりやすかったと仰っていました。青木さんは、会場の設置や柱の位置関係からピアノに背を向けて演奏する形になり、空気で察して演奏していた(!)とのこと。レベッカ・クラークの事を掘り下げたお話に、関さんが在住するイギリスの事、青木さんが歌劇場のオケ団員として7年滞在していたドイツの事など、様々な話題が登場。約1時間、大いに盛り上がりました。休憩なし1時間10分ほどの公演でお疲れのところ、また夜の公演が控えているにもかかわらず、終演後の歓談にもたっぷりお付き合いくださりありがとうございます!またこのような機会がありましたら、私はぜひうかがいたいです!


青木晃一&石田敏明 ビオラ&ピアノ デュオコンサート」(2023/11/26)。野幌までプチ遠征。メインのブラームスに加え、小品をアンコール含め10曲と盛りだくさん!魅力あふれる演奏で、耳慣れたブラームスソナタが一層愛しくなりました。トークも楽しかったです。

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ヴォーン・ウィリアムズの演奏機会が少ない作品が取り上げられた演奏会です。「ウィステリアホール プレミアムクラシック 2023シーズン 23rd 」(2023/10/29)。信頼のメンバーによる室内楽ブラームスクラリネット三重奏曲とホルン三重奏曲は、作曲家の人生を思わせるものでした。V.ウィリアムズのめずらしい編成の五重奏曲は超充実の演奏!期待を大きく上回る幸せな演奏会でした!

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2020年の記事になりますが、「ブラームス回想録集』全3巻 天崎浩二(編・訳) 関根裕子(共訳)」の感想文を弊ブログにアップしています。レベッカ・クラークを育てたアイルランド系作曲家のチャールズ・ヴィリアーズ・スタンフォードによる回想もありますので、よろしければお読みください。

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

最後までおつきあい頂きありがとうございました。

第500回東日本大震災復興支援チャリティーコンサート(2023/12) レポート

doshin-playguide.jp

www.htb.co.jp

HTBのニュース記事です。この日は新聞やテレビ等の報道機関各社が取材に来ていました。

eijun1.blog.fc2.com

↑土田英順さんのブログにて、この日の演奏会のレポートがUPされています。当日のプログラムに掲載されていたエッセイが全文読めますよ。


元・札響首席チェロ奏者の土田英順さんが、東日本大震災の復興支援として全国各地で行っているチャリティーコンサート。その節目となる500回目の公演が札幌のザ・ルーテルホールにて開催されました。つい1年ほど前にCDを手にしたことから土田英順さんの事を知った私は、ようやく演奏会にうかがうことができる!と、この日を楽しみにしていました。なおチケットは完売し、満席での開催だったそうです。


第500回東日本大震災復興支援チャリティーコンサート
2023年12月17日(日)15:00~ ザ・ルーテルホール

【演奏】
土田 英順(チェロ)
鳥居 はゆき(ピアノ)

【曲目】
カタルーニャ民謡:鳥の歌
カッチーニ(伝):アヴェマリア
バッハ:G線上のアリア
マスネ:エレジー
ゴダール:ジョスランの子守歌
斎藤 歩:春のノクターン
斎藤 歩:秋のソナチネ
ショパンノクターン第2番
ピアソラリベルタンゴ

ルヴォー&フランソワ:マイ・ウェイ
ロイド・ウエッバー:オペラ座の怪人 より「私の想い」
ロイド・ウエッバー:エビータ より「アルゼンチンよ泣かないで」
コスマ:枯葉
フランシス・レイある愛の詩
ハーライン:ピノキオ より「星に願いを」
アラン・メンケン美女と野獣 より「美女と野獣
ロイド・ウエッバー:キャッツ より「メモリー

(アンコール)竹内まりや(作詞:Miyabi 作曲:村松崇継):いのちのうた


名曲の名演奏とトークが盛りだくさん!御年86歳の土田さんの素敵な演奏とお話をたっぷり味わえ、そして勇気づけられた、心温まる会でした。バラエティに富んだ作品たちの演奏を、アンコールを含め18曲も!演奏の合間には多岐にわたるお話があり、土田さんは最初から最後まで弾きっぱなししゃべりっぱなしで、さらには終演後のサイン会まで!このタフさ、おそれいりました!東日本大震災復興支援チャリティーコンサートは、第1回の2011年3月29日から回数を重ね、この日が500回目。土田さんは震災が起きた時「自分には一体何が出来るか?」と考え、「一生懸命チェロを弾く」と決めて、「悲しみや苦しみを少しでも和らげることができたらいい」と、12年9ヶ月にわたり地道に活動を続けてこられたそうです。とはいえ、おそらくは言うは易く行うは難しであり、今日に至るまでには様々な困難や人知れぬご苦労があったことと拝察します。なお土田さんが使用するチェロは、元々は津波の犠牲となった女性のもので、被災してボロボロだったものを修理し蘇らせたものだそう。このチェロを土田さんはまるでご自分の身体の一部のようにごく自然に弾いていらっしゃいました。これもまた険しい道だったのでは?本当に頭が下がります。こんなに立派なかたにもかかわらず、土田さんは演奏も振る舞いも親しみやすくて偉そうなところが一切無いのも素敵です。もちろん演奏は大変素晴らしく、自然体で歌うチェロは人の体温を感じる温かさがありました。また土田さんは独自の素敵な音と表情をいくつもお持ちで、演奏の中で次々と登場する新たな顔に、私は驚かされそして魅了されました。トークでは土田さんがボストン響にいた頃のお話もあり、それによると当時の土田さんは毎週のようにオケの演奏ツアーで都会に出ていて、そこで数多くのミュージカルを観たとのこと。その時の体験も年輪の一部となって、今の土田さんの音楽ができあがったのですね!様々な人生経験を経てここに至った土田さんの音楽に出会ったことで、まだまだ若輩者の部類に入る私も頑張って生きていこうと素直に思えました。この出会いに感謝いたします。

「自分の体験を全部話すと講演会になってしまうけど、少しずつお話しできれば」と、土田さんは演奏の合間に、ご自身が見聞きした被災地に関する様々な事をお話しくださいました。被災したかたの生々しい証言もあり、私は衝撃を受けたと同時に、自分が出来る事は何かを深く考えさせられました。なお真意が正しく伝わらないおそれがありますので、被災したかたの証言等をここに私が中途半端に書き起こす事は控えます。具体的な内容については、ぜひ土田さんのコンサートに足を運んで直接お話をお聞き頂ければと思います。津波で多くの方が犠牲になった土地や、原発事故で今なお多くの住民が避難生活を余儀なくされている土地に何度も訪れている土田さん。東京オリンピックで「復興」と繰り返し唱えられていた事には怒りを覚えた、とも仰っていました。一方で、演奏に訪れた岩手のある中学校にて、生徒会から会費の一部を支援金として渡され、感激したというお話も。ちなみに土田さんは、子ども達に関しては「今はまっすぐ育つことが仕事で、募金の事は考えなくていい」というスタンス。しかし中学生が自分たちが出来る事は何か?と考えた上で出してくれたお金は、ありがたく預かったそうです。そして被災地の事から離れた楽しいトピックも色々とお話しくださり、特に後半のトーク時間は時折笑いが起きる和やかな雰囲気になりました。土田さんの演奏とお話、私はもっと聴きたいです!これからもぜひご自身のペースで演奏活動を続けてくださいませ。私もできる限り聴きにうかがいます!


出演者のお2人が舞台へ。すぐに演奏開始です。第1部は「クラシックの名曲」。はじめは暗譜で3曲続けて演奏されました。カタルーニャ民謡「鳥の歌」。往年のチェリストであるカザルス編曲のものでしょうか。寂しく切ないピアノの序奏に続いた、力強く哀しいチェロにハッとさせられました。ややゆっくりのテンポでの演奏は、万感の思いが込められているよう。超高音でのフェードアウトするラストがすごい!カッチーニ(伝)「アヴェマリア。ピアノの和音に乗って、チェロははじめから雄弁に歌い、時折ささやくようなところも登場。ビブラートはかけず、切ないメロディをまっすぐに歌い上げるのがストレートに心に響きました。バッハ「G線上のアリア。優しいピアノの響きに、重なるチェロもおなじみのメロディを柔らかに歌うのが心地よかったです。時折入るビブラート、フレーズ最後にふっと消え入る音も素敵でした。

被災地に関連するお話の後、鎮魂歌のような作品を2曲続けての演奏。マスネ「エレジー。最初のフレーズで私はたちまち恋に落ちました!艶っぽい音色による歌は、悲しみも美しい思い出もひとりで飲み込んだ、大人の悲哀のよう。フェードアウトするラストまで愛しい!ゴダール「ジョスランの子守歌」。私は最初に哀しく寂しいピアノの序奏に驚き、子守歌「らしくない」と率直に感じました。ほどなく登場したチェロも最初は哀しく歌い、私は1曲目に取り上げられたカタルーニャ民謡「鳥の歌」をつい連想。そしてこの哀しみから、希望が見える温かな雰囲気に変化して、そこでの柔らかで愛あふれるチェロが素敵すぎました!悲しみの中から希望を見いだせる、強さと愛!人生の年輪があるからこその演奏と私は感じました。この2曲の演奏に強く惹かれた私は、終演後に会場で販売していたCDの中からこの2曲が収録されたものを見つけて即購入。こんな出会いはとてもうれしいです。

斎藤歩さんの作品が2つ取り上げられました。演奏前のトークによると、斎藤歩さんは札幌で活躍する演劇人で、色々なことをされている「21世紀のチャンプルー」。ご縁があり、土田さんは斎藤歩さんの舞台へ役者として(!)出演された事があるそうです。台詞を覚えるのが大変で、その涙ぐましい努力のエピソードを面白おかしくお話くださいました。ちなみに役どころは、「大酒飲みで札響をクビになるチェリスト」(!)だったとか。1曲目「春のノクターンは、明るいピアノに乗って、チェロの柔らかな響きが心地よく、重音のふくよかさ温かさがとても素敵でした。2曲目「秋のソナチネは、「春」から一変、もの悲しい感じに。ピアノは枯れ葉が舞い落ちるよう。チェロの低音に存在感があり、重音の厳しさが印象的でした。2つの曲は、作りはよく似ている(と私は感じました)にもかかわらず、ほんの少しの違いで表情がガラリと変化するのが興味深かったです。音楽家も「役者」なんですね!

被災地に関連するお話の後、前半最後となる2曲が続けて演奏されました。ショパンノクターン第2番」。3拍子のリズムが心地よく、重音で歌うところのふくよかで温かな響きの良さ!音階を上っていき、超高音で歌うところがとても印象的でした。カデンツァのような即興的な独奏が素敵!ピアソラリベルタンゴ。ピアノの序奏にチェロが何度か合いの手を入れ、そのカカカッ♪という鳴り方がカッコイイ!メロディに入ると、とても艶っぽい音色で私は驚愕!今までの曲に登場した音とはまったく違う音!すごい!速いテンポで前のめりに情熱的に歌うチェロにゾクゾクさせられ、ピアノのターンでの弦をかき鳴らすチェロが超カッコイイ!このアツさこの色気!さすがの貫禄、素晴らしかったです!

休憩後、第2部は「ポピュラーの名曲」。後半でのトーク内容は、作品の解説に加え、土田さんが実際にミュージカルを観た時の思い出話、ボストン響での演奏旅行の事などでした。いずれも大変面白かったです!すべてをご紹介したいのは山々ですが、分量が多いため本レポートでは一部を除き割愛いたします。申し訳ありません。ルヴォー&フランソワ「マイ・ウェイ。低音域でじっくり歌う思慮深さ、高音域で思いがあふれるように歌うひたむきさ。ピアノが主役の時の、温かで自信に満ちた重音は最高に素敵でした!堂々とした力強い締めくくりが輝かしい!    ロイド・ウエッバー「オペラ座の怪人」より「私の想い」。ピアノのリズムは気持ちを鼓舞してくれるよう。チェロは前向きで明るく、その音色の良さが心に染み入りました。終盤にピアノが沈黙し、チェロがソロで解放されたように歌ったのがとても良かったです。意思ある強さが感じられました。ロイド・ウエッバー「エビータ」より「アルゼンチンよ泣かないで」。「エビータ」は実在の人物でファーストレディになった女性とのこと。高音域でメロディをゆったり歌うチェロの優しさ美しさ!深い悲しみを思わせる低音のトレモロも素敵で、気持ちにそっと寄り添ってくれる良さを感じました。

コスマ「枯葉」。はじめの方でのチェロのゆらぐ音は、はらはらと舞い落ちる枯葉のよう。タタタター♪のフレーズ最後でふっと丸くなる音がはかなく美しい!盛り上がりではテンポが速くなり、思いを吐露するような歌い方に胸打たれました。フランシス・レイある愛の詩」。切なく哀しく歌うチェロがなんとも色気があって、ずっと浸っていたいと思える響きでした。ハーライン「ピノキオ」より「星に願いを」。おなじみのメロディを優雅に奏でるチェロの音色が良く、聴き入りました。メロディを繰り返す度に、即興的なアレンジがあったのも素敵!アラン・メンケン美女と野獣」より「美女と野獣。チェロが優しく歌うメロディは、美女と野獣の2人が語り合っているようでした。ここから一歩踏み出す決意のような、ダンダンダーン♪と力強く奏でたところがとても印象深かったです。

ロイド・ウエッバー「キャッツ」より「メモリー。ちなみに土田さんは、このミュージカルをロンドンで観たのだそうです。小さな会場は、客席の通路を通って役者が舞台に出るスタイル。そこで土田さんの横を通過した雄猫役の役者に、土田さんはいきなりガブッと耳をかじられた(!)と仰っていました。今でもこの曲を弾くと、その時の災難を思い出すのだとか(笑)。タタン タタン♪と輝かしいピアノに、チェロは切なく美しく、しかし愛ある温かさ優しさ!同じメロディは登場する度に色合いが変化して、単純には割り切れない人の心の機微が感じられました。ピアノもチェロも力強く前向きになっていき、希望に満ちたラストが最高!トリにふさわしい、胸がすく快演でした!ただ困ったことに、今後私は手持ちの土田さんのCD(ミュージカルナンバーや映画音楽が収録されています)を聴く度に、「耳かじられ事件」を思い出してしまいそうです(笑)。

カーテンコールの後、まず土田さんからごあいさつとお話しがありました。お話しの中では、今回の会場であるザ・ルーテルホールの調律師さんのご紹介も(会場にいらしていて、お客さん達から拍手が送られました)。土田さんによると、「日本一の調律師」であるそのかたは、チャリティコンサートの時は調律料金を頑として受け取ってくださらないのだとか。「501回目のコンサートからは受け取ってもらいたいと思います」と、土田さんは仰っていました。続いて鳥居さんからもごあいさつ。土田さんとご一緒にチャリティ活動を始めた時は30代で、今は50代。少し体調面の不安も出てきているとのことですが、たくさんの方々に支えられてここまで続けてこれた事と、これからも支援を続けていけたら、と仰っていました。

アンコールは、竹内まりや(作詞:Miyabi 作曲:村松崇継)「いのちのうた」。鳥居さんのピアノの弾き語りに、土田さんのチェロが彩りを添えるスタイルの演奏で、歌の間奏部分ではチェロが高らかに歌いました。心に染み入る歌に、客席には涙している人もちらほら。土田さんのチャリティ活動をピアノ伴奏として支え続けてくださっている鳥居さんにも大感謝です。ありがとうございます!

私は募金箱に心ばかりの金額を入れ、会場でCDを1枚購入し、サイン会の列へ。土田さんはCDにささっとサインをしてくださってから、ぱっと私の手を両手でしっかり握って握手してくださり、この日のお礼の言葉までかけてくださいました(!)。突然のことで私はビックリし、何とお返事したのかよく覚えていません(ごめんなさい!)。しかし帰る道すがら、盛りだくさんだったコンサートの演奏とトーク、そして土田さんの大きな手の感触を思い返すと、胸がいっぱいになり、じわじわとこみ上げてくるものがありました。この日の出会いに感謝し、私もこれから自分ができる事を少しでもやっていこうと静かに決意。そして今後も土田英順さんの活動を応援するとともに、もっと演奏とお話を聴かせて頂こうと思いました。これからも末永くよろしくお願いいたします!


現・札響首席チェロ奏者の石川祐支さんが参加する、小児がんチャリティの演奏会です。「Trio MiinA トリオ・ミーナ第5回公演 小児がんチャリティーコンサート」(2023/09/22)。彩り豊かな新作初演、凄まじさに打ちのめされたショスタコーヴィッチ、お初のピアノカルテットによるシューマンの充実ぶり!今回もうれしい驚きの連続で、最初から最後までとても楽しかったです!

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この日の8日前に聴いた、フルート&ピアノ&チェロの演奏会。こちらにもチェロの石川祐支さんがご出演されています。「クリスマスコンサート ~チャペルに響くフルート・チェロ・ピアノの調べ~」(2023/12/09)。めずらしい編成による難曲からおなじみのレパートリーまで盛りだくさん!信頼のデュオと新進フルーティスト・類家千裕さんによる演奏をたっぷり聴けた、幸せな時間でした!

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クァルテット・エクスプローチェ Quartet Explloce TOUR 2023 札幌公演」(2023/10/23)。宇宙空間を旅したような「シャコンヌ」や、ミュージカルのシーンが目の前に浮かぶような「オペラ座の怪人」の超充実した演奏。「響炎する4本のチェロ」の完全燃焼に身も心も焦がされた、熱いアツイ夜でした!

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なの花薬局 Presents 子どもといっしょに聴きたいコンサート Vol.3 (2023/12) レポート

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ウィステリアホールが主催し、なの花薬局が協力する「子どもといっしょに聴きたいコンサート」。Vol.3となる今回の演目は、ドビュッシー「おもちゃ箱」です。事前応募・抽選による無料招待の演奏会に、私はありがたいことに当選し、小5の娘と一緒にうかがいました。なお私達が聴いたのは、同じ内容で4回開催された公演のうちの第3公演です。


なの花薬局 Presents 子どもといっしょに聴きたいコンサート Vol.3 (第3公演)
2023年12月17日(日)13:00~ ウィステリアホール

【出演】
谷石 奈緒子(ナレーション)
新堀 聡子(ピアノ)

【曲目】
ドビュッシー:おもちゃ箱

 アンドレ・エレ(台本・絵)
 青柳いづみこ(日本語訳 Gakken刊)


休憩なしの約30分の公演。子への愛あふれる作品を、心を込めた演出と演奏で楽しめ、親子で心温まる体験ができました!おもちゃ箱の中の人形が動き出すという素朴なお話に、素敵な絵、そしてきめ細やかに物語の世界を表現する音楽。そのすべてが語りかける子ども達への愛と思いやりに満ちていました。また全部を語り尽くさず想像の余地が残されていた(と私は感じました)ため、子と一緒に大人も楽しめたのもうれしかったです。私が見た限りの印象では、小さい子から大きい子まで会場の子ども達はとても熱心に聞き入って、それぞれの子なりに楽しんでいた様子。それは「音楽が楽しい・ピアノが素敵」でも「お話が面白い・ナレーションの声が好き」でも「絵がカワイイ・色がキレイ」でも、あるいは「お母さん・お父さんが楽しそう」でも、何だって良いはず。正解は無く、自由な楽しみ方ができるのが、絵本(今回は素晴らしい音楽も!)の良いところです。刺激の多いコンテンツに慣れている現代っ子たちではありますが、それらはあくまで「刺激」。絵本の読み聞かせのような、自分に向けて語りかけてもらえる時間は、子ども達にとってやはりかけがえのないものだと私は思います。親子のためにこんな素敵な企画を開催しご招待くださった、主催者のかたへ改めてお礼申し上げます。

ドビュッシー「おもちゃ箱」は、ドビュッシーが愛娘クロード・エマ(愛称:シュシュ、当時8歳)のために作曲したもの。台本と絵本を仕上げたのはドビュッシーと親交があった画家のアンドレ・エレ。ドビュッシーはナレーションが入る場所等、細かな所まで指示を書き込んでいるそうです。今回は、音楽と絵は原作のまま、お話は青柳いづみこさんによる日本語訳を用いて上演されました。信頼の新堀聡子さんのピアノは繊細にもダイナミックにもなって物語世界を作り上げてくださり、谷石奈緒子さんのナレーションは落ち着いた優しい語り口で聴き手の心にすっと入ってきました。演奏中のスクリーンには、絵本の絵と、ピアノの手元、ナレーターの表情が映し出され、照明による演出もありました。こういった小さな舞台の演出は、ウィステリアホールさんがお得意とするところですね。また来場者へのお土産として、今回の絵本をモチーフとした記念品(ランチ巾着と卓上カレンダー)も用意されました。重ねてありがとうございます!

以下、個人的に印象深かったところを中心にレポートします。ストーリー等の詳細は省きますので、物語自体の内容を知りたい方はお手数ですがご自身でお調べくださいませ。出演者のお2人が舞台へ。お2人とも白いブラウスのシンプルな装いでした。すぐに演奏開始です。物語のはじめに、主な登場人物の紹介がありました。「お人形ちゃん」「ブルチネッラ(道化師)」「兵隊さん」そして「花」を1人ずつ順に紹介。私がハッとしたのはその紹介のスタイルでした。ナレーションで例えば「お人形ちゃん」と言うと、ピアノでその登場人物のテーマ(ライトモチーフ?)が演奏され、スクリーンには登場人物の絵と、その下になんとライトモチーフが書かれた小さな楽譜が!中途半端に小さい子向けに忖度しない、この心意気!もちろん気にとめない子は多かったと思いますが、ピアノを少しやっているうちの娘の場合、耳に入る音楽と同時に楽譜とピアノの手元の映像が来たのはとても良かったようです。それぞれのキャラクター「らしい」テーマが続いた後、最後の「花」が少しミステリアスな感じで私は意表を突かれました。はかなさや寂しさも感じさせるピアノが、そのまま続けてお話の導入になったのも印象的。スクリーンには、おもちゃ箱と目を閉じている人形たち。やや暗い音楽と照明の暗さも相まって、世の中が寝静まった夜のお話であることがうかがえました。おもちゃ達が動き出すと音楽は賑やかになり、ライトモチーフも密かに織り込まれていた感じ。明かりが付いたり音楽が流れたりの描写も楽しい。「ゾウの踊り」は、迫力あるピアノと可愛らしい絵のコントラストが良かったです。「アルルカンの踊り」の異国風なピアノが素敵!兵隊さんの行進曲風な音楽に、私は同じドビュッシーの「ゴリウォークのケークウォーク」を連想。シーン毎に色とりどりのピアノ小品が次々と登場して、それらを生演奏で聴けるのはなんとも贅沢でした。ブルチネッラに駆け寄るお人形ちゃんが花を落とし、兵隊さんがそれを拾うあたりから、ピアノのテンポも速くなり、観客の方もドキドキ。ブルチネッラがお人形ちゃんに「情熱的なキス」(!)をするというのは、日本のお話にはなかなか出てこない表現で新鮮でした。緊迫感ある音楽に、スクリーンにはブルチネッラ軍と兵隊さん軍の戦いの絵。しかし「(大砲の)弾はグリンピース」(!)というナレーションに、会場にはクスッと笑い声が起きました。月明かりの下で、「ニュルンベルクの木の間に」怪我をした兵隊さんが花を持ったまま横たわっているシーンでは、ピアノは哀しげで、フレーズ末尾の音の余韻が月明かりを思わせる、とても美しい響き。有名なドビュッシー「月の光」とはカラーが異なる、これもまた美しい月の光ですね!お人形ちゃんが兵隊さんを介抱。空き家を見つけ、2頭の羊と2羽のガチョウを買って……と、いつの間にか新生活の準備をしている流れ。羊飼いやガチョウ売りが登場する度に「らしい」音楽になったのが素敵でした。「羊飼いの草笛が、彼らの木で出来た魂を、メランコリックな気持ちにさせた」……この一文がなんて詩的で美しいこと!2人は結婚することになり、音楽は前向きな感じに。「結婚行進曲!」のナレーションに続いて、有名なメンデルスゾーンの「結婚行進曲」のメロディが登場し、一層華やか!お話は20年後に。音楽は壮大で明るくなり、私はなんとなくワーグナーを連想しました。夫婦はたくさんの子宝に恵まれ、お人形ちゃんはすっかり太って、白いヒゲを生やした兵隊さんは既にしおれた「花」をずっと持っている。大切なものを大事に持ち続けるって、素敵なことですね!踊れなくなったお人形ちゃんは「代わりに歌う」、子ども達は「ポルカを踊る」、とシーン毎に楽しい音楽!そして「すべてが消える」と、ピアノのトレモロの後、ナレーションでお話が最初のシーンに戻ったことが知らされました。ピアノは最初に聴いた物語の幕開けと同じ(と私は思いました。違っていましたら申し訳ありません)、ミステリアスな感じに。スクリーンには最初に登場したおもちゃ箱が映し出され、その箱には"FIN"の文字。物語は幕を下ろし、会場に温かな拍手が起きました。

カーテンコールにて、ナレーターの谷石さんからごあいさつとお話しがありました。ドビュッシー「おもちゃ箱」についての解説、会場には小さな子も来てくれた事へのお礼、谷石さん自身も1歳のお子さんの子育て中というお話も。最後に「こんなコンサートがあるといいな」といった事をぜひ教えてください、とアンケートのお願いがあり、会はお開きになりました。親子の楽しい時間と、かわいい記念品のお土産まで、ありがとうございました!素晴らしい企画が今後も良い形で続きますように。


札響 読み聴かせコンサート『おばけのマールとたのしいオーケストラ』」(2022/08/11)。描き下ろし(書き下ろし)たっぷりの絵本の世界に、大人が聴いても十二分に楽しめる選曲と演奏。森崎博之さんの朗読と進行も素敵で、親子で思いっきり楽しめました!

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ウィステリアホール5周年記念事業 ジングシュピールファウスト」(2023/05/28)。ミニマムなキャストと仕掛けによる、歌とお芝居で作るオリジナル舞台。魅力的な登場人物と音楽に心揺さぶられ、壮大な世界にどっぷり浸れた得がたい体験でした。再演&映像作品化をぜひ!

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ピアノの新堀聡子さんが出演されています。「札幌・リトアニア文化交流コンサート」(2023/08/28)。リトアニアの大スター・ミシュクナイテさんの圧倒的なお声と表現。信頼のメンバーによるピアノと弦。「歌の国」リトアニアの精神に触れ、その音楽にどっぷり浸れた幸せな時間でした。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

リッカ弦楽四重奏団 結成記念コンサート (2023/12) レポート

札響メンバーで結成された、リッカ弦楽四重奏団。その結成記念コンサートがふきのとうホールにて開催されました。チーム名は、雪の別名「六花(りっか)」に由来し、「ひとつとして同じものはない雪の結晶のように、きらめきのある音楽をしたい」という意味があるそうです(プログラムノートより)。錚々たるメンバーによるカルテットの旗揚げ公演ということで、札幌市民の期待は大きく、当日の会場は9割ほどの席が埋まる盛況ぶりでした。

リッカ弦楽四重奏団 結成記念コンサート
2023年12月13日(水)19:00~ ふきのとうホール

【演奏】
会田 莉凡(1stヴァイオリン) ※札幌交響楽団コンサートマスター
桐原 宗生(2ndヴァイオリン) ※札幌交響楽団首席ヴァイオリン奏者
鈴木 勇人(ヴィオラ) ※札幌交響楽団ヴィオラ奏者
石川 祐支(チェロ) ※札幌交響楽団首席チェロ奏者

【曲目】
ハイドン弦楽四重奏曲 第77番 「皇帝」 ハ長調 Hob.III:77
ショスタコーヴィチ弦楽四重奏曲 第1番 ハ長調 op.49
ブラームス弦楽四重奏曲 第2番 イ短調 op.51-2

(アンコール)チャイコフスキー弦楽四重奏曲 第1番 より 第2楽章 「アンダンテ・カンタービレ


ハートに火がついた音楽家たちの本気を目の当たりにした、最高にアツイ夜!札幌にスケール桁違いのカルテットが「爆誕」した瞬間に居合わせて幸せです!今回のメンバーそれぞれの演奏には、ピアノとのデュオ等でそれなりになじんできた私。このメンバーが組むなら良いに決まっている!と、聴く前から大船に乗った気持ちでいました。そしていざ実演に触れると、事前予想をはるかに超えてきた事に驚愕!なんというか「率なくこなす」方向ではなく、もっと行けるまだ行けると更なる高みを目指す、とんでもなく熱量高い演奏でした。実力・経験ともに十二分に兼ね備えた音楽家たちが、お互いの信頼関係をベースに本気で挑むと、ものすごいことになるのですね!そもそも、オケでもオケ以外でも超ご多忙な4名が、新たなカルテットを結成し、自主公演をする事自体だって相当大変だったはずです。ここまでやれるほど、メンバーの「ハートに火を付けた」のは一体!?私は、やはり会田莉凡さんの存在が大きいと思います。会田さんは、2022年4月に札響のコンサートマスターに就任して以来、オケを牽引してくださっています。今回のカルテットでも1stヴァイオリンが抜群の切れ味で先陣を切り、それに他のメンバーが食らいつくように熱い演奏で続くスタイルだったと私は感じました。それだけ人を惹きつけるものがあり、さらに自身の演奏でチームをぐいぐい引っ張っていく会田さん。めちゃくちゃカッコイイ!会田さん、改めまして札響に来てくださりありがとうございます!これからもずっと、札幌の希望の星でいてください。頼りにしています!

今回の重量級の3つの演目、それぞれの個性もめいいっぱい楽しめました。ハイドンは、華やかさ楽しさだけでなく、常に1stヴァイオリンがリードし、4人の役割分担で奥行きを作り、また特に第4楽章では重厚さもあって、私は小さなオーケストラを見ているような気持ちになりました。ショスタコーヴィチ1番は、一見ノーマルなのに隠しきれない狂気をはらんでいるよう。そしてブラームス2番の、柔和な顔をした激情に震撼!今回の本気の演奏が、作品のコアな部分を容赦なく露わにしてくださったおかげで、聴き手は表面的なイメージに惑わされず音楽の本質に触れることができました。弦楽四重奏は奥が深い!今回のリッカ弦楽四重奏団との出会いが決定打となり、ビギナーだった私が弦楽四重奏の沼にハマりつつあります。我が最愛のブラームスはあいにく3曲しか残していないものの、弦楽四重奏は名曲の宝庫ですから!これからどんなサプライズな演奏と出会えるのか、とても楽しみです。リッカ弦楽四重奏団との出会いが、私のハートにも火を付けてくださいました!


出演者の皆様が舞台へ。会田莉凡さんは上が黒で下が白のノースリーブドレス、男性奏者の皆様は黒シャツの装い。すぐに演奏開始です。はじめは、ハイドン弦楽四重奏曲 第77番 『皇帝』」。第1楽章 明るくウキウキした感じで、鳥がさえずるようだったりスキップするようだったりと、歌うヴァイオリンが華やか。軽快なリズムと美しい流れが同居する音楽が素敵でした。チェロから始まるところでは少し陰りを見せ、楽章締めくくりに向かう流れでは一層賑やかになる等、生き生きとした表情の変化も楽しい。第2楽章 ドイツ国歌に採用されている事で有名なこの楽章。はじめの4名でゆったり美しく奏でるメロディの良さ!うっとり聴き入りました。その後、2ndヴァイオリンがメロディを美しく歌い1stヴァイオリンが軽快に彩る二重奏だったり、チェロがメロディを優雅に歌い他の弦がハモる形になったり、ヴィオラが主役になったりと、組み合わせが変わる度に味わいが変化するのを楽しく聴きました。チェロが音を長くのばすベースの上で、他の3つの弦が清らかに歌うところが最高に素敵!第3楽章 快活な舞曲で、1stヴァイオリンが低めの音ではじめの1歩を踏み込んで、他の弦が合いの手を入れる間合いの良さ!タッタッタッタ♪と軽快に跳ねるところや、少しシリアスなところでも、まず1stヴァイオリンがパッと登場し他の弦がついて行くスタイルで、このチームならではの呼吸と掛け合いの良さを実感できました。第4楽章 はじめのユニゾンによる強奏からアツイ!ささくようなところと交互に来る力強さはインパクト大でした。高速演奏での丁々発止のやり取りがすごい!また、2ndヴァイオリンが音を刻んだり、チェロがぐーっと低い音をのばしてベースを作ったりと、がっちりした土台もあって、この奥行きや重厚さがたったの4名で生み出されているのにも驚き!フィナーレでの自信に満ちた明るさは気分爽快!何度も力強く弓を振り下ろす様子は見た目にも圧巻でした。カルテットの本気の演奏に、最初から気分があがりました!

2曲目は、ショスタコーヴィチ弦楽四重奏曲 第1番」。第1楽章 はじめの方は穏やかな美しい歌で、ショスタコーヴィチはこんな風にも書けるんだなと、のんびり構えて聴いていた私。しかし2ndヴァイオリンとヴィオラがやや不穏な音を繰り出すあたりから雲行きが怪しくなってきました。ヴィオラとチェロのベースに乗って1stヴァイオリンが歌うところは、美しいのにどこか不気味。私はぞわっとしました。また2つのヴァイオリンがベースを作ってヴィオラが歌うところもあり、三重奏の組み合わせが変化していくのは興味深かったです。一見穏やかで幸せな音楽なのに、一皮剥けば狂気があるような、不思議な感じがした演奏に心がざわめきました。第2楽章 はじめはヴィオラ独奏から。子守歌のようなメロディを、ぽつぽつと暗く歌うヴィオラ。思わず引き込まれましたが、底知れなさを恐ろしくも感じました。チェロのピッチカートが重なるとさらに妖しく、2つのヴァイオリンによる二重奏は神秘的。また組み合わせを変えながら二重奏が何度か登場し、それぞれの響きを楽しめました。4人での強奏では、超高音の1stヴァイオリンと重低音のチェロのギャップに心かき乱されたり、逆にチェロが超高音で歌ったり、一瞬スキップするような明るさがあったりと、一筋縄ではいかない感じ。ただ、最初の子守歌のようなメロディがずっとベースにあったためか、私はなんとか迷子にならずに聴けたと思います。ポン!と弱いピッチカートでの締めくくりが思いの外インパクトがあって、思わずビクッとなりました(私だけ?)。第3楽章 ヴィオラトレモロに乗って、2ndヴァイオリンから順に参戦していき、スピードと気迫ある盛り上がりに!この張り詰めた空気がすごい!かと思うと温かく楽しそうに歌い出したり、いきなり止まったり、各楽器で掛け合いがあったり。一糸乱れぬ展開での間合いがすごく面白かったです。第4楽章 チェロに誘われて1stヴァイオリンが超高音で軽快に歌い出し、すぐに気迫ある掛け合いに。ガッガッ♪と全員が力強く弦を鳴らし続け、ものすごく速く各楽器が呼応し合い、一瞬の隙も見せない展開がすごいことすごいこと。超パワフル&超高速で駆け抜けたラストの気迫たるや!ショスタコーヴィチとリッカ弦楽四重奏団、恐るべし……想像をはるかに超えた演奏に打ちのめされました!

後半は、ブラームス弦楽四重奏曲 第2番」。第1楽章 重厚なベースに悲劇的なヴァイオリン。はじめからブラームスらしさ全開の演奏に引き込まれました。1stヴァイオリン独奏の後は、柔和な感じに。チェロのピッチカートのリズムに乗って、歌うヴァイオリンやヴィオラが甘く優しく、歌曲のような心地良さでした。ユニゾンで奏でる堂々とした響きの良さ!穏やかな中で時折パンチのある強奏が顔を見せていたのが、次第に気迫あふれる激しさが優位に。ダダダーン♪と全員が全力で弦を鳴らすのがものすごい迫力!1stヴァイオリンの悲痛な叫び!4名の張り詰めた空気と底知れぬエネルギーがすごい。楽章締めくくりに向かうクライマックスの凄みは、甘ちゃんな私など真正面からはとても受け止められないほど!第2楽章 中低弦のベース(渋い!)に乗って、低めの深みある音色でゆったり歌う1stヴァイオリンがなんて素敵なこと!ゆったりと美しい音楽は、タッタッタ♪と控えめで愛らしいステップに幸せな気持ちが垣間見えるよう。しかし突如、ガガガ……と激しく鳴る他の弦に乗って、1stヴァイオリンが切れ味鋭く思いを叫び、度肝を抜かれました!再び穏やかになっても、私はいつ嵐が来るかと思うと緊張してしまい、目の前の音楽とは裏腹に気持ちはリラックスできないままでした(私だけかも?ごめんなさい!)。第3楽章 チェロに誘われて他の弦が続くシーンが何度かあり、その掴みのチェロと続く演奏の表情の変化を興味深く聴きました。神秘的で研ぎ澄まされたところでのヴィオラの存在感、駆け足のところでの舞曲のリズム、強奏を各奏者でリレーしていくところのアツさ、低音からぐーっと盛り上がるところでの下から沸き上がるエネルギー!息つく間もないほどのめり込みました。静かな締めくくりは、まるで深淵に落ちてしまったかのよう。第4楽章 最初の1stヴァイオリンが強烈なインパクトでガツンとやられました!ガッガッ♪と力強く鳴らす他の弦によるリズムにドキドキ、キレッキレの弦の振り下ろしにゾクゾク。穏やかなところと熱量高いところが交互に来て、タッタッ♪と囁くように全員で息を合わせた後に、ぱっと切り替わるのが鮮やかでめちゃくちゃカッコイイ!合間に入る滑らかなチェロにほっとしつつ、熱量高いところのすごさには圧倒されっぱなしでした。1stヴァイオリンのメロディを2ndヴァイオリンとヴィオラが力いっぱいリフレインしたり、ユニゾンで強奏したりと、どのシーンも情熱を超えた激情!力強く駆け抜けたラストまで、これ以上無いほどの大熱演!ブラームスがこんな顔を持っていたなんて……。私は感激とショックとで、しばし呆然としてしまったほど、個人的には大事件な出会いでした。

カーテンコールの後、会田莉凡さんからごあいさつとトークがありました。平日夜の開催にもかかわらず、たくさんの人に来場頂いた事への御礼(最終的に180名超の客入りだったようです)、予想以上のお客さんが集まったことで当日券の「券が足りなくなる」ハプニングがあったというお話も。またフライヤー作成やプログラム作成といった事務的な事は、ヴィオラの鈴木勇人さんがご尽力くださったとのことです(大拍手!)。限られた時間での練習や合わせが大変だったことや、「初回の公演でこんなに大変なプログラムをやるのは私達だけ」(!)。そして会田莉凡さんと石川祐支さんがソリストを務める、札響苫小牧公演2024(2024/03/23 開催予定)の宣伝(この日来場した人限定の先行販売案内まで!)もありました。

「ほっこりした気持ちでお帰り頂きたくて」と、アンコールは、チャイコフスキー弦楽四重奏曲 第1番」 より 第2楽章 「アンダンテ・カンタービレ。穏やかで美しい歌に心癒やされました。1stヴァイオリンのメロディを各楽器が優しく繰り返すのが素敵!これはまさに愛!2ndヴァイオリンに導かれた、素朴で哀しげな歌もハッとする美しさで、フレーズ最後に音がゆらぐところがぐっと来ました。最初のメロディが戻って来ると、先ほどよりももっと優しく愛に満ちた感じに。美しい1stヴァイオリンと、支える他の弦の温かなピッチカートに、うっとり聴き入りました。次第にゆっくりになり、フェードアウトするラストの余韻まで、優しさと愛があふれた演奏。ああなんて素敵なのでしょう!超充実の本プログラムから、ほっこりアンコールまで、私達聴き手を夢中にさせてくだりありがとうございました!リッカ弦楽四重奏団、第2回以降の公演もぜひお待ちしています。そして苫小牧でのブラームスの二重協奏曲、とても楽しみにしています!


R弦楽四重奏団 Vol.1 」(2023/11/18)。ハイドンショスタコーヴィチブラームス演奏家との距離が近いギャラリーにて、信頼のメンバーによる充実の演奏を肌で感じられる贅沢!お堅いイメージだった弦楽四重奏を身近に感じ、自然体で楽しめた幸せな時間でした。

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ブラームス室内楽シリーズ イ調で結ぶ作品集」(2023/06/26)。会田莉凡さんのヴァイオリンを堪能できたソナタ、「音楽する」三重奏曲、ピアノ四重奏曲の「化学反応」の素晴らしさ!ブラームスの隠れた名曲たちの充実した演奏に浸れた、とても幸せな時間でした!

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クリスマスコンサート ~チャペルに響くフルート・チェロ・ピアノの調べ~(2023/12) レポート

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北星学園大学が主催し、同窓会と後援会が後援するチャペルコンサート。今回はチェロの石川祐支さんとピアノの大平由美子さんのデュオに、フルートの類家千裕さんが加わったトリオによる「クリスマスコンサート」です。事前申込制・入場無料の一般の人達にも開かれたイベントで、私は申し込みした上で大谷地までプチ遠征して聴きにうかがいました。なお事前受付は早期に定員に達し、当日は満席での開催だったようです。


クリスマスコンサート ~チャペルに響くフルート・チェロ・ピアノの調べ~
2023年12月09日(日)14:00~ 北星学園大学チャペル

【演奏】
類家 千裕(フルート)
石川 祐支(チェロ) ※札幌交響楽団首席チェロ奏者
大平 由美子(ピアノ)

【曲目】
P.ゴーベール:ロマンティックな小品 (フルート&ピアノ&チェロ)
F.ダンツィ:フルートとチェロの為のデュエット 第3番 (フルート&チェロ)
F.クーラウ:協奏的三重奏曲 (フルート&ピアノ&チェロ)

J.S.バッハ:「管弦楽組曲 第2番」より ポロネーズバディネリ (フルート&ピアノ)
J.S.バッハ:「無伴奏チェロ組曲 第1番」より プレリュード/ジーグ (チェロ)
L.v.ベートーヴェン:「月光」より 第1楽章 (ピアノ)
A.ピアソラ:「ブエノス・アイレスの四季」より“冬” (フルート&ピアノ)
G.カッチーニ(V.F.ヴィヴァロフ):アヴェ・マリア (フルート&ピアノ)
J.シベリウス:樅の木 (ピアノ)
S.ラフマニノフ:ヴォカリーズ (チェロ&ピアノ)
C.サン=サーンス:白鳥 (チェロ&ピアノ)

(アンコール)
E.モリコーネニューシネマパラダイス・メドレー (フルート&ピアノ&チェロ)


信頼の石川祐支さん&大平由美子さんデュオと、新進フルーティストの類家千裕さんによる演奏をたっぷり聴けて、幸せな時間を過ごすことができました!めずらしい編成による難曲の演奏も、おなじみのレパートリーも、どれも楽しい♪また今回は、大好きなデュオの演奏の良さに加え、若手フルーティストの類家さんと出会えたのが個人的にとてもうれしかったです。ベテランの共演者お2人と堂々と渡り合い、フレッシュで美しくも力強くもあるフルートが素晴らしい!これからの類家さんのご活躍に大注目したいと思います。もちろん石川さんと大平さんのデュオの演奏は何度でも聴きたいので、年1回のリサイタルのみならず、このような企画にどんどんご出演くださるとうれしいです。どこまでも追いかけていきます!

今回初めてうかがった北星学園大学チャペル。とても素敵な会場でした!小さなパイプオルガンがあり、高い天井。規模的にも今回のような小編成の演奏会にぴったりで、音の響きは良かったと思います。今回はクリスマスらしく、ポインセチアの鉢植えがいくつも飾られていたのも素敵でした。一般にも開かれた参加費無料の演奏会を継続して開催くださっている北星学園大学さんには頭が下がります。誰もが気軽に生演奏に触れられるのはとてもありがたいことです。チャペルコンサート、今後も良い形で続きますように。私は次回以降もぜひうかがいたいです。


開演に先立ち、司会のかたからあいさつと簡単な案内(出演者の紹介等)の後、学校代表のかた(役職とお名前を私が聞き取れず申し訳ありません)からごあいさつと「チャペルコンサート」についてのお話がありました。「チャペルコンサート」は年3回開催されているそうです。本年度に開催された過去2回について触れた後、「今回は札幌にゆかりあるプレーヤーによる、クリスマスコンサートです」と紹介。またこれからの抱負もお話しくださいました。出演者の皆様が拍手で迎えられ(大平さんは白地に花模様・緑のエリのドレス、類家さんは黄緑色のふわっとしたドレス、石川さんは黒シャツの装い)、いよいよ開演です。

前半は「クラシック・コンサート」として、めずらしい編成の演目が並びました。1曲目は、フルート&ピアノ&チェロによる、P.ゴーベール「ロマンティックな小品」。はじめのピアノの和音は親しみやすい感じ。ほどなく登場したチェロは、ロマンチックかつ雄大に歌うのが素敵で、早速心掴まれました。この大きな存在のチェロが、フルートの登場でさっと音量を下げたのが印象に残っています。美しいピアノに乗って、重なったり交互になったりして歌うフルートとチェロ。優雅な響きと美しい音色が心地良かったです。盛り上がりの後、フルートが舞曲のようなメロディを奏でたのにハッとさせられました。チェロが加わるとフルートとチェロがダンスしているように感じられ、掛け合いとリズム感が素敵!高音を長くのばしてフェードアウトするラストまで、春を思わせる温かで柔らかな響きが素敵な演奏でした。

ここで出演者の皆様のごあいさつとトークが入りました。大平さんから、出演メンバー紹介と、今回の「めずらしい編成」、そして「盛りだくさん」なプログラムについてのお話があった後、類家さんによる1曲目の解説に。一般になじみが薄い作曲家・ゴーベールは、フルーティストなら全員が知っている人で、ピアノなら「ハノン」にあたる教則本を書いた人なのだそうです。フルートのための作品も数多く書いていて、温かな和声が特徴、と仰っていました。

フルート&チェロによる、F.ダンツィ「フルートとチェロの為のデュエット 第3番」。演奏前に石川さんから解説がありました。日本ではあまり知られていない作曲家のダンツィについては、「ぼくも知りませんでした」(!)と石川さん。フルート&チェロの編成はとてもめずらしく、今回の演目は、石川さんがお知り合いのフルーティストのかたに相談して教えて頂いた曲なのだそうです。また石川さんがダンツィについて調べたところ、モーツァルトと同時代の人で、紹介文には「宮廷楽団員の首席チェロ奏者」(!)と、「作曲家」「指揮者」より先にチェロが書かれてあった事に驚かれた様子。だから今回の曲も「チェロがとても難しい」(!)と、納得(?)されたようでした。こちらの演奏、聴き手としてはとても面白かったです!素朴なメロディはフルートが担当し、チェロはずっと支える役目。しかし、そのチェロの変化が曲の表情を変えていると感じられ、私はチェロに目と耳が釘付けになりました。はじめは古風な舞曲風(メヌエットのような?)で、ゆったりした(ン)タッタ♪のリズムを刻むチェロと、優しい響きのフルートが一緒にダンスしているよう。チェロは基本高音域で、時折低音が入るのが印象的でした。続いて、フルートは同じメロディを少し速く、チェロはタタタ タタタ♪と少し駆け足になり、ウキウキした感じに。弦を押さえる左手の指が大忙しで動いているのは、見ている分には楽しかったです。フルートが華やかになると、チェロはズンチャ ズンチャ♪と明るく歩みを進める感じに。フルートと重なってメロディを奏でたり、輝かしい重音があったりと、チェロの変化の度に曲の色合いが変わるのが楽しい!チェロの堂々とした鳴りの貫禄!鳥のさえずりのような華やかなフルートと、明るく寄りそうチェロが一緒に駆け抜け締めくくり。短いながらも聴き応え見応えある演奏に引き込まれました!

フルート&ピアノ&チェロによる、F.クーラウ「協奏的三重奏曲」。大平さんはクーラウをピアノ曲「子供のためのソナチネ」の可愛らしいイメージで捉えていたそう。しかしこの三重奏曲はとても難しくて大変だったと仰っていました。また石川さんは、この曲は元々フルート2本とピアノで演奏するものと解説した上で、2番フルートの置き換えであるチェロは「そりゃあ難しいですよね」。類家さんも演奏の難しさに触れ、「3人の協奏を楽しんで頂ければ」と仰っていました。第1楽章 はじめはピアノによる序奏から。優しいメロディに跳ねるような音が可憐でした。ほどなくフルートとチェロが一緒に登場。チェロとフルートが明るく会話するように演奏したところは、お互いが鏡映しのようで、チェロもフルートもうねうねした音が面白かったです。ピアノに導かれて、明るいところから一旦激しくなるも、再び穏やかに。チェロとフルートの会話が少し切ない感じに変化し、その後も対話の度に少しずつ表情が移り変わっていたように思います。ダイナミックに音階を駆け上ったり下りたりするピアノが存在感ありました。第2楽章 こちらもピアノの序奏から。ピアノが奏でたメロディをフルートとチェロが繰り返すスタイルで、ゆったりした流れの中、様々な舞曲のようなメロディが登場。いずれも身体になじむリズムが素敵でした。第3楽章 快活でステップを踏むようなリズムが楽しく、フルートが朗らかに歌うのが素敵!チェロが管楽器のタンギングのようにタタタタ……♪と音を刻んだのがすごい!ピアノはずっと忙しく、紙芝居のように次々と場面が移り変わるのをリードしていました。チェロがフルートの歌をピッチカートで支えた後、ぱっと主役に躍り出てメロディを切なく奏でたのがすごく素敵!もしこれが2番フルートだったらシンプルに1番の繰り返しになるところを、音色がまったく異なるからこその面白さ!この賑やかな流れの終盤、チェロが余韻を残した後、フルート独奏が登場。ピュアで美しい音色を聴かせてくださった後、3人一緒に明るく堂々と締めくったのが素敵でした!目の前で展開する3人の「協奏」、すごかったです!とても楽しく聴くことができました。

休憩の終わり頃、後半に入る前に、司会のかたによるアナウンス。アンケートのお願いと、募金のお願い、来年度の「チャペルコンサート」の予定のお知らせ、といった内容でした。

後半は「名曲アルバム」と題し、おなじみの名曲たちをソロやデュオによる演奏で聴かせてくださいました。大平さんと類家さんが舞台へ。大平さんが「時間がおしているとのことなので、(トークなしで)どんどん演奏します」と仰ってから、早速演奏に入りました。はじめは、フルート&ピアノで、J.S.バッハ管弦楽組曲 第2番」より。「ポロネーズ」は、ほの暗い感じで、タータタッタ♪と音を刻み、タ~タタタ♪とコロコロ歌うのがミステリアスで素敵!中盤の駆け足になったところは、ピアノとシンクロして空を泳いでいるよう!「バディネリ」は、タッタタ タッタタ♪とフルートが軽快にステップするようで、美しくも力強い音とリズムが良かったです。高速でぐいぐい進む気迫がすごい!耳なじみのあるメロディを、類家さんの華やかで力強いフルートで楽しく聴くことができました。

バッハの舞曲が続きました。チェロ独奏で、J.S.バッハ無伴奏チェロ組曲 第1番」より。「プレリュード」の輝かしさ!4つの音の連なりが数珠つなぎになって、目の前で次々と湧き出てくる、自然と身体のバイオリズムに添う感じのとても心地よい響きでした。弓をうねうねする動きに伴って次第に音が浮かび上がってくるのは一層輝かしい!「ジーグ」では、ダイナミックな弓の動きと跳ねるようなリズムが楽しい!フレーズ末尾での低音の余韻が印象深く、軽快さと重厚さが同居する良さを味わえました。小さな教会にて、石川さんのチェロでバッハの無伴奏を聴ける贅沢!音楽に心地良く浸りながらも、尊さ崇高さを感じられたスペシャルな体験でした。願わくば、バッハの無伴奏チェロ組曲の6曲×6組すべてを石川さんの演奏で聴きたい!

ピアノ独奏で、L.v.ベートーヴェン「月光」より 第1楽章。タタタ タタタ♪のリズムがずっとベースにあり、時折入る重低音の余韻が印象的。シンプルなメロディが、強弱の波で変化し続け、陰影ある立体的な響きに引き込まれました。まるで月に雲がかかったり晴れたりしているようで素敵!いつか全楽章の演奏をぜひ聴かせてください!

フルート&ピアノで続けて2曲。A.ピアソラ「ブエノス・アイレスの四季」より“冬”。はじめはフルート独奏から。美しく孤高の存在感!ほどなくピアノが重なり、一呼吸置いてから、タンゴのリズムを低音で力強く奏で始めたピアノが超カッコイイ!この貫禄、しびれる!その上を情熱的に歌うフルートがまたカッコ良く、パワフルな高音は思いがあふれているようでした。前のめりで情熱的なところから、少し穏やかに変化したところの希望が見える明るさも素敵!クライマックスでのフルートの強奏にはとても驚かされました。こんなに力強いフルート、私は初めて聴いたかも!情熱的でリズムが超絶カッコイイ音楽、聴き応え抜群でした!

G.カッチーニ(V.F.ヴィヴァロフ)のアヴェ・マリア。ピアノの和音に乗って、はじめは囁くように歌ったフルート。その美しく儚げな響きに引き込まれました。フルートはピアノと一緒に次第に音が大きくなっていき、終盤のクライマックスにはなんとフルート独奏(!)が登場。こちらは類家さんのオリジナルでしょうか?切なく情熱的に歌うフルートが素晴らしかったです。ラストに向かう流れでのフルートの超強奏は、思いの丈を全部ぶつけたような気迫!個人的にはヴィオラやチェロによる演奏(ちなみに石川さんの演奏でも私は聴いたことがあります)でなじんでいたこの曲を、類家さんの美しくも力強いフルートで聴けて新鮮&その良さに聴き惚れました。

ピアノ独奏で、J.シベリウス「樅の木」。クリスマスの時期にぴったりな選曲ですね!冬のモノトーンの景色を思わせる、素朴で芯のあるメロディの良さ!メロディを追いかける伴奏は、時に美しく時に厳しい、様々な色合いを感じました。中盤の盛り上がりでは、タラララン タラララン♪とダイナミックにうねるベースのインパクト!強く心に響きました。私、やっぱり由美子さんのピアノ大好きです!

チェロ&ピアノで続けて2曲。S.ラフマニノフ「ヴォカリーズ」。哀しげなピアノの和音に、切なく歌うチェロの良さ!盛り上がりでの高音には今回も胸打たれ、言葉は無くとも思いがあふれている歌にぐっと来ました。C.サン=サーンス「白鳥」。ゆったり優雅に歌うチェロの美しさと貫禄!ピアノは、キラキラした水面のような音や盛り上がりのしっかり土台となる低音等、チェロにぴたっと寄り添い波長も思いもシンクロ。長く一緒に活動してこられたデュオ、さすがの安定感です!優雅で美しい音楽に、会場には感嘆の溜息が。身近でこの演奏が聴けるのはとてもありがたいことと改めて思います。デュオの十八番である2曲、今回も素敵でした。何度でも聴きたい!

カーテンコールで出演者の皆様が戻ってきてくださり、大平さんがごあいさつ。チャペルコンサートには、大平さんと石川さんは過去数回出演されていて、今回お若い才能の類家さんを皆さんにご紹介できてうれしい、と仰っていました。開催するにあたりご尽力くださった皆様への感謝、「サーカスみたいな」クーラウの三重奏曲をはじめ、常に演奏をサポートしてくださった譜めくり担当のかたへの感謝の言葉も述べられ、会場からも温かな拍手が送られました。

アンコールは、フルート&ピアノ&チェロによるE.モリコーネニューシネマパラダイス・メドレー」。演奏前に石川さんから解説がありました。今回の曲、本来は「フルート&ピアノ&ヴァイオリン」の編成で、今回はヴァイオリンパートをチェロに置き換えての演奏(!)なのだそうです。また以前、ギター&ピアノ&チェロでも演奏した事(2023/10/12のトリオコンサートでしょうか?このページの下の方にレビュー記事のリンクがあります)にも触れられました。「メインテーマ」は、包容力あるピアノの序奏に続いた、歌うチェロの温かさ優しさ!メロディを引き継いだフルートは柔らかで美しく、支えるチェロと重なった陰影がとっても素敵!懐かしい感じに心温まりました。「トトとアルフレード」は、はじめチェロ、続いてフルートがゆっくり音階を上がっていくのにじんわり気持ちが高揚し、切なさに胸焦がされました。「成長」はトリオでの演奏(ちなみに10月に聴いたギター&ピアノ&チェロの演奏会ではピアノ独奏でした)。チェロとフルートがメインを交代しながら、大切な存在を愛しむように優しく歌うのが素敵で、心に染み入りました。またこの愛に満ちた雰囲気に、私は先日(2023/11/21)の札響hitaru定期で聴いたブラームス ピアノ協奏曲第2番 第3楽章(チェロ独奏は石川さん)をふと思い出したりも。そして来ました「愛のテーマ」。涙がこぼれ落ちる様にも似た、キラキラ儚い響きのピアノ序奏に続いて、切なく歌うチェロが最高に素敵!またもや胸に来ました。メロディを引き継いだフルートがまた美しく、ハモるチェロはさらに心に訴えかけてくるように高音域で切なく歌うのが素敵すぎて……こんなにも全力で聴き手を泣かせに来るスタイル。やっぱり敵いません!ラストは「メインテーマ」再び。ピアノのタラララン♪の締めくくりまで、優しさあふれる演奏に心癒やされました。

大平さんから締めくくりのごあいさつ(「次にお呼び頂けた時は、アンコールを2曲やります」と仰ってくださり、会場に大きな拍手が起きました!)と、お弟子さんである本堂竣哉さんのリサイタル(2023/12/21)のお知らせがありました。出演者の皆様とお客さん達の集合写真を撮影した後、会はお開きに。最後に石川さんが12/13の「リッカ弦楽四重奏」の旗揚げ公演をお客さん達に宣伝。私は募金箱に心ばかりの募金をして、帰路につきました。素敵な演奏に浸れて、私は少し早めのクリスマスプレゼントを頂いた気持ちに。幸せな時間をありがとうございました!チャペルコンサート、これからも楽しみにしています。


石川祐支さんと大平由美子さんのデュオにギターの宮下祥子さんが加わったトリオによる演奏会。こちらもアンコールは「ニューシネマパラダイス・メドレー」でした。「第1568回札幌市民劇場 石川祐支・宮下祥子・大平由美子トリオコンサート」(2023/10/12)。「新しいトリオによる多彩な音楽」の演奏会。直江さん編曲・カルメン組曲や南米&スペインの作品での独特のリズムやメロディに魅せられ、「初めて」の感激がいっぱいの幸せに満ちた時間でした!

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こちらも学校が主催する定期イベントです。この日は、札響首席ファゴット奏者の坂口聡さん、新日本フィル首席フルート奏者で元札響副首席フルート奏者の野津雄太さん、ピアノの坂口睦さんによる演奏会でした。「第39回潮陵記念館コンサート 札響、新日本フィルの首席奏者、ピアノによる ~初秋に響く木管の美音、ソロとトリオによる室内楽の夕べ~」(2023/09/02)。小樽にプチ遠征。坂口さんのファゴットと野津さんのフルート、それぞれの魅力あふれる「音」とアンサンブルの良さ!ベートーヴェンのトリオは、対等なピアノと木管2つの三つ巴で超充実の演奏でした。トークも楽しかったです。

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地域の人達のための気取らない演奏会はこちらも。「青木晃一&石田敏明 ビオラ&ピアノ デュオコンサート」(2023/11/26)。野幌までプチ遠征。メインのブラームスに加え、小品をアンコール含め10曲と盛りだくさん!魅力あふれる演奏で、耳慣れたブラームスソナタが一層愛しくなりました。トークも楽しかったです。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

まなみーるDEクラシック 2023(2023/12) レポート

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岩見沢市にて毎年開催されている札響の演奏会。今年は「序曲、名曲、そして大曲」として、指揮に藤岡幸夫さんをお迎えし、オペラ序曲の数々とシベリウス交響曲第2番」が聴ける会でした。シベリウスを得意とする藤岡幸夫さん&札響による演奏でシベ2が聴ける!オペラ序曲も楽しみ!と、私は岩見沢までプチ遠征。なお北海道新聞の報道によると、当日の客入りは500名ほどだったようです。

まなみーるDEクラシック 2023
2023年12月03日(日)15:00~ まなみーる岩見沢市民会館大ホール

【指揮】
藤岡 幸夫

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:会田 莉凡)

【曲目】
スッペ:喜歌劇「軽騎兵」序曲
モーツァルト:歌劇「後宮からの逃走」序曲
ウェーバー:歌劇「魔弾の射手」序曲
ロッシーニ:歌劇「ウィリアム・テル」序曲

シベリウス交響曲第2番 ニ長調 op.43

(アンコール)エルガー:夕べの歌


シベリウスに造詣と愛が深い指揮者の藤岡幸夫さんが、「日本で一番シベリウスを得意とする」札響を指揮したシベ2。胸がすく快演に心打たれた、素晴らしい出会いでした!岩見沢までプチ遠征して本当によかった。オケの士気をあげた上でぐいぐい引っ張ってくださった藤岡さんと、プレッシャーに負けず全力で演奏くださったオケの皆様、ありがとうございます!熱い思いが最高の形で実を結んだのは、やはり実力があってのことと思います。すべて良かった上で、個人的には第4楽章の熱さを特筆したいです。演奏前に「ロシアへの勝利」というお話がありましたが、それだけでなく「自分との戦いに勝利した」と私は感じました。負の感情をすべて飲み込んだ上で愛に昇華した強さ!すごい!いえ、どんなに言葉を尽くしても足りない、あふれる思いや熱がヒシヒシと伝わってくる演奏は、理屈抜きで心揺さぶられました。藤岡幸夫さんと札響によるシベ2、最高です!また、前半のオペラ序曲の数々も楽しかったです。親しみやすいトークを交えながら、全部がクライマックスのオペラ序曲を華やかな演奏で聴かせてくださいました。たまたまかもしれませんが、今回取り上げられた演目は、9月に聴いた名曲シリーズ・オペラ名序曲集(2023/09/16)との被りはナシ。札響のレパートリーの幅広さを改めて実感しました。もちろん聴き手としては、色々な演目と演奏に出会えるのはうれしいです。

まなみーる岩見沢市民会館、とても良いホールでした!新しい建物でキレイなだけでなく、音響も良かったと私は思います。余韻までしっかり響き、金管打楽器が遠慮無く大きな音を出せるのは、演奏する上でもストレスが少ないのでは?このような地方のホールを活かして、定期的にプロオケの公演が行われるのは素敵なことですね!今回は札幌から日帰り圏内でしたが、いつも北海道はでっかいどうを隅々まで回ってくださる札響の皆様には感謝の気持ちでいっぱいです。「地元北海道が誇るオケ」として、これからもどうぞよろしくお願いします!


オケの皆様、続いて指揮の藤岡幸夫さんが舞台へ。弦の人数は最初から最後まで固定で、10-10-8-6-5でしょうか?木管は基本の2管編成、金管打楽器は演目によって編成が異なりました。すぐに演奏開始です。1曲目は、スッペの喜歌劇「軽騎兵」序曲。開口一番のトランペットが超カッコいい!ジャーン!と盛り上げるオケが大迫力!ホルンは勇ましく、クラリネットのほの暗さにハッとさせられ、目まぐるしく展開する演奏に気持ちを持っていかれました。金管打楽器の大活躍に、超高音で彩るヴァイオリンの華やかさ、ずっと重厚に支える低弦の存在感!弦のシリアスさ、行進曲風のリズムが楽しい!シーンが移りゆく流れの中で、孤高のクラリネット独奏が異彩を放ち、世界が一変。弦によるハンガリー舞曲風のところは渋くて、金管打楽器がメインのこの曲の中でとても新鮮でした!再び行進曲風になり、思いっきり賑やかなフィナーレ。最初にガツンとテンション上げてくれる演奏でした!

ここで指揮の藤岡さんがマイクを持ってごあいさつとトーク。以降も曲の合間にはトークがありました。「札幌交響楽団!」とはじめにオケを紹介くださってから、「指揮の藤岡幸夫です」と自己紹介。藤岡さんは、1997年に改修前の岩見沢市民会館にてシベリウス交響曲第1番を指揮されたのだそうです。「すばらしいホールで、またシベリウスを振れるのが楽しみ」と仰っていました。前半は序曲集ですと紹介くださってから、「なるべく話を短くして(進めたい)」と、お話が得意な藤岡さんが茶目っ気たっぷりに仰って、会場に笑いが起きました。

モーツァルトの歌劇「後宮からの逃走」序曲。演奏前の解説によると、トルコの軍隊が大人気だった頃(様々な作曲家が「トルコ行進曲」を生み出した時代)の作品だそうです。トルコ風味を出すために、打楽器陣には「安っぽく!」とオーダーしたのだとか。「札響の楽器は上等だから、安っぽくならないのよ!」とも(笑)。演奏は、軽快な出だしから、ぱっと華やかに盛り上がり。打楽器陣がシャンシャンと景気付けてくれたのが楽しい!トライアングルのインパクト!弦による力強い音階駆け上りに、聴いている私達の気分も上がりました。強弱の波と勢いの良さに引っ張られた序盤から、シリアスに変化した中盤へ。やや深刻な弦に重なった、高貴な感じの美しいオーボエがとっても素敵でした!はじめと同じメロディ再び。しかしここでは「逃走」らしく、前よりも緊迫感が増したと感じました。華やかに締めくくり。短いながらも劇の場面が目に浮かぶような演奏、楽しかったです!耳なじみの良い音楽に、打楽器陣がとても良いアクセントになっていました。「安っぽい」とは感じなかったですが(笑)。

ウェーバーの歌劇「魔弾の射手」序曲。今回取り上げる序曲については「ハープを使わないものなら自由に決めてOK」と言われたそうで、藤岡さんが真っ先に決めたのがこの「魔弾の射手」なのだそうです。ベートーヴェンの第九とほぼ同時期の作品で、ワーグナーの先駆け、と仰っていました。「緑の匂いがする」(!)と興味をそそる事をちらっと仰ってから、「全部楽しんで!」と、演奏へ。ごく小さな音から始まり、少しずつ浮かび上がってくるのに、私は森の奥深さをイメージ。世界を広げてくれたホルンが素敵!ゆったり歌うホルンに心洗われました。チェロが哀しげに歌い、他の弦がトレモロで支えるところにゾクゾク。次第に緊迫感が増し、金管打楽器が力強い盛り上がりを作るところの勇ましさ壮大さ!おそらく一番の山場であるここが超カッコ良かったです!クラリネットがシーンを変えて、弦と木管群がダンスしているような楽しいところへ。一旦盛り上がりの後、オーボエとフルートがシーンを変えて……と、場面転換で木管が登場し、鮮烈な印象を残してくれました。終盤にほんの少し葬送行進曲のようなところが登場したの興味深かったです。ラストは華やかに盛り上げて締めくくり。パワフルで壮大、ドラマチック!大熱演に圧倒されました!

ロッシーニの歌劇「ウィリアム・テル」序曲ロッシーニはイタリアの作曲家で、この作品を書いた後に作曲をやめて美食の道へ進んだというエピソード紹介がありました。この作品は4つの部分からできていて、最後の「スイス軍の行進」が特に有名とか、最初にチェロが活躍する等の解説も。ちなみに「ウィリアム・テル」序曲は、藤岡さんがデビューしたての頃、札響で初めて指揮した演目だそうです。オケがチューニングをしてから、演奏へ。チェロトップ(今回は副首席でした)によるソロ演奏がカッコイイ!アンサンブルで支える他のチェロも素敵!そして驚いたのはここからでした。通常はトップ奏者がすべて弾くソロのメロディを、なんとチェロセクションの各奏者で交代しながら演奏するスタイル。なんて粋な計らい!また各奏者が持つそれぞれの音を味わえて、聴き手としてもとてもうれしかったです。こんな楽しみ方ができるなんて、最高にうれしい!チェロセクション全員推せる!タッタッタ♪の木管群と弦のトレモロから、次第に盛り上がっていくのにゾクゾクし、「嵐」のシーンのトロンボーンのド迫力!「牧歌」では、コールアングレとフルートの温かな会話に癒やされました。フレーズ最後で転がすような音の可憐さ、トライアングルがそっと寄り添うのも素敵!パーンパパパーン♪とトランペットな鳴り、「スイス軍の行進」へ。リズミカルで勇ましい音楽にドキドキワクワクしました。少し穏やかになったところから、弦が音階を駆け上ってぱっと華やかに盛り上げたところが個人的ツボ。金管打楽器も遠慮無しに全力で鳴っているのが気持ちイイ!演奏はド派手に締めくくり。演奏機会の多い「ウィリアム・テル」序曲ですが、今回は安定の演奏に加えサプライズ演出もあって、とても楽しかったです!何度でも聴きたい!


後半は、シベリウス交響曲第2番」。はじめに指揮の藤岡さんがお一人で舞台へ出て、作曲家と演目について解説してくださいました。シベリウスフィンランドの作曲家で、地味なイメージがあるかもしれないけど、牢屋に入ったりお金を使いすぎて破産したりといった「破天荒」な人だったと紹介。交響曲第2番を書いた頃は、娘を亡くし傷ついていて、パトロンに勧められイタリア旅行へ行ったのだそう。心の闇の部分や愛国心、支配者ロシアへの怒り等がうかがえると仰っていました。楽章毎の詳細な解説もあり、中でも個人的には第4楽章がとても印象に残っています。藤岡さんによると、フィンランド国民が第4楽章を聴いて「ロシアの圧政に打ち勝った」と熱狂するも、シベリウス自身は否定したのだそう。しかし、ロシアを意識して(捕まえられないよう?)否定しただけであって、内心はシベリウスも「ロシアに勝利した」と思っていたのではないか?と、藤岡さんはお考えのようでした。「札響は日本で一番シベリウスを得意とするオーケストラですから」(!)と聴き手の期待をゲージMAXまで引き上げてから(そしてオケにはプレッシャーをかけながら・笑)、「これから演奏するのを楽しみにしています」と仰って、トーク終了となりました。

トークの終盤にはオケの皆様が舞台へ登場し、トーク終了後、いよいよ演奏開始です。編成は、各木管2、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、テューバティンパニ、弦。第1楽章 北国の風がそよぐような出だしの美しさ!否応なしに後に続く演奏への期待が高まりました。跳ねるような木管に続いた、ゆったりしたホルンの響きの良さ!第4楽章の先取りのようなところから、続いたヴァイオリンによる澄んだ音色の美しさ!弦による冷涼な空気と、管による温かさの共存が素敵でした。弦によるピッチカートから次第に盛り上がっていく流れにドキドキ。オーボエクラリネットが寂しげで影を感じる響きに。そして、ティンパニと一緒に浮かび上がってきた金管群が鳥肌モノでした!この大迫力、シベリウスの「闇」の底知れぬエネルギー!めちゃくちゃカッコイイ!各シーンが回想され、ひとしきり盛り上がった後、楽章締めくくりはとても穏やかにフェードアウトしていったのが印象的でした。第2楽章 ティンパニと低弦ピッチカートにドキドキし、ファゴットの暗く重い歌にゾクッとしました。木管群の歌のもの悲しさ。続いた弦が次第に加速していき、そこからの盛り上がりでは、またしても金管群がガツンと来ました!ティンパニと一緒にぐーっと盛り上がる金管群はメロディの高音も支える低音もすさまじいエネルギー!それを支える低弦が超男前!余韻がまた良くて、次第に音が小さくなっていくティンパニと低弦がとても印象に残っています。弦の高速演奏(すごい!)に乗っての、低音のインパクト!哀愁あるトランペット独奏がなんて素敵なこと!悲劇的な楽章締めくくりでは、弦が渾身のピッチカートを数回鳴らしたのが印象深かったです。言葉にできない思いが心の奥底にあるよう。第3楽章 冒頭から高速の弦の緊迫感がすごい!他の楽器が加わって激しさが増し、このヒリヒリした空気にゾクゾク。盛り上がった後、ティンパニの弱音が残ったのが印象的でした。来ましたオーボエ独奏!他の管による温かな響きに乗ってのオーボエはなんとも美しく、それにこたえるチェロ独奏は愛あふれる感じで超素敵!銃声のような金管(キレッキレ!ドキっとしました)を皮切りに緊迫感再び。第4楽章の先取りのようなところもあり、オーボエ&チェロの愛ある対話に再び出会えて、全員合奏でエネルギーをためつつじっくりと上昇していく流れがアツイ!盛り上がりの頂点から、そのまま続けて第4楽章へ。 弦が奏でるメロディは、強くかつ愛あふれる感じで、心に染み入りました。怒りややりきれなさを抱えながら、人は生きている事をこんなにも愛せるのかと思うと、涙がでます。華やかなトランペットは今この時を祝福してくれているよう!ベースで低音がぐおんぐおん鳴っていたのもカッコイイ!低音金管の勇ましさ!壮大な音楽に胸がすく思いでした。中低弦のうねうねした低音に乗って、木管群がほの暗く歌うのは胸がざわつく感じで、そこから再び盛り上がって力強い金管群につながる流れが良かったです。木管群メインのやや穏やかなところから、楽章はじめと同じような盛り上がり再び。盛り上がりの波が何度も来て、その度に胸が熱くなりました。クライマックスではさらに低音のうねりも高音の力強いメロディもパワーアップして、嵐の中にいるよう!弦のトレモロに彩られた金管のド迫力!低弦がピッチカートでメロディを奏でた後、高音弦の華やかなトレモロに乗って、低弦がぐおんぐおんうねりながら重低音でメロディを奏でたのが最高!ティンパニの大音量連打に、金管群の堂々たるメロディで、華々しく締めくくり。演奏の音が消えてから、しばらくの静寂の後、会場に割れんばかりの拍手が起きました。ああすごいものを聴きました……。私は今、生きている、そして生きていたいと思わせてくれた、心揺さぶる大熱演に大感激です!ありがとうございます!

カーテンコールで指揮の藤岡さんは何度も舞台へ戻ってきてくださいました。口頭でアンコールの曲名が伝えられ、演奏へ。アンコールは、エルガー「夕べの歌」。2年前のクリスマスコンサート(2021/12/21)でもアンコールで聴かせてくださったあの曲!待ってました!調べたところ、藤岡さんと関西フィルによるシベ2のCDにも収録されている、藤岡さん十八番の演目のようです。牧歌的なホルンのリズムと木管群の柔らかな響きをベースに、弦による落ち着いた低めの音程での艶っぽい歌がとっても素敵!少し切ないメロディになっても、管楽器の温かさが良い感じで深刻になりすぎない、とても優しい音楽に癒やされました。終盤では、ふとまどろんだように一瞬沈黙があり、澄んだ音色でしっとり優しく締めくくり。素敵な序曲の数々とシベ2の大熱演の後、心穏やかになれる素敵なアンコールまで、ありがとうございます!藤岡さんと札響の共演をこれからも楽しみにしています!


札幌交響楽団 hitaruシリーズ定期演奏会 第15回」(2023/11/21)。オピッツさんの「ブラームスのピアノ」と、バーメルトさん率いるオケの演奏によるブラームスピアノ協奏曲第2番は、あこがれの曲と最高の出会い!間宮芳生さんの作品、モーツァルトではオーケストラの奥深さと面白さを改めて実感しました。

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森の響フレンド 札響名曲コンサート~発掘!発見!オペラ名序曲集」(2023/09/16)。スケール無限大、クライマックスしかないオペラ序曲の数々をアンコール含め全10曲。重厚・壮大なオベロン序曲や極限弱音が印象深かったルスランとリュドミラ序曲など、まっさらな気持ちで思いっきり楽しめました!CD化を切望します!

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。