自由にしかし楽しく!クラシック音楽

クラシック音楽の演奏会や関連本などの感想を書くブログです。「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ(http://nyaon-c.hatenablog.com/)」の姉妹ブログです。

※本ブログの記事はすべて「自由にしかし楽しく!クラシック音楽(https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

札響夏休みスペシャルコンサート~オケパンV「ショウほど素敵な商売はニャー!!」(2020/08) レポート

札響夏休みスペシャルコンサート~オケパンV「ショウほど素敵な商売はニャー!!」

札響夏休みスペシャルコンサート~オケパンV「ショウほど素敵な商売はニャー!!」演目


私にとって自粛明けの初オケは、テレビでおなじみアキラさんによる「オケパン」。約7ヶ月ぶりに我が町のオケ・札幌交響楽団の演奏を聴きに、札幌コンサートホールKitaraへ行ってきました!今回は小2の娘が一緒。私は表向きは付き添いの保護者ですが、その実私に付き合ってくれたのは娘の方です。休憩なしの約1時間の会。お客さんはやはり親子連れがほとんどでしたが、大人のおひとりさまや団体様もちらほらいらしたようでした。


札響夏休みスペシャルコンサート~オケパンV「ショウほど素敵な商売はニャー!!」(午後公演)
2020年8月16日(日)14:30~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮・ピアノ・お話】
宮川彬良

【出演】
黒猫(ピッチカート):miyacawa Ari[出演・振付]
黒猫(レガード):吉岡朋子
ピアニスト他:宮川大典
舞台監督他:松田淳一

構成:新井鴎子
監修:田尾下哲

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島高宏)

【曲目】


※今回はツイッターでの速報はありません。

演出も演奏も期待以上で、最高に楽しかったです!今年は夏休みらしい夏休みではなかったけれど、今回の「オケパン」はこの夏一番の忘れられない思い出になりました。自粛明けは座席数を絞っている関係で、札響の定期や名曲シリーズの席がなかなか取れないんですよね。うまく席をゲットできなかった私はしばらくいじけていましたが、気を取り直して今回のオケパンVのチケットを購入して本当によかったです。「0歳からのパントマイム・オーケストラ」の看板は伊達ではなく、ねんねの赤ちゃんから親の背丈を追い越したローティーンまで、会場の子供達は皆楽しそう。なかなかじっとしていられないうちの娘も夢中になって始終にっこにこで、退屈しのぎのお絵かきノートの出番は遂にありませんでした。当然ながら、子供だましや子供にこびた内容では無く(ちなみにそういうのは子供にはわかります)、大人だって大いに楽しい演奏会。思えば自粛期間中、元気の塊のような子供達は家に閉じこもることを余儀なくされつらい思いをしました。そして子供達のケアをしその心に寄り添う親もまた、同じようにしんどかったのです。なので、子供達だけでなく、私の同志とも言えるお母さん達がマスクをしていてもわかるほど皆笑顔だったのが個人的にはすごくうれしかったです。「お母さんえらい!頑張って!」なんて言われると私は引きますが(メンドクサイ・笑)、メッセージ性のない、エンタメに特化したショーを親子で思いっきり楽しめるのはとてもうれしいです。シンプルに「楽しい!」と感情のゲージをプラス方向に振り切れたら、また前を向こうと、私は自分の意思で決めることが出来ます。このようなご時世にもかかわらず、演出内容を一部変更した上で演奏会開催くださったことに感謝です。しかも午前午後の2回公演!特に小さな子の場合はお昼寝のリズムがあるため、親としてはその子にとって機嫌の良い時間帯に参加したい思いがあり、時間帯を選べるのは助かります。それでも出演者と奏者の皆様は間違いなく大変だと思います。私達親子は今回午後公演を聴きましたが、この全力投球を既に午前中に一通りやった後なのが信じられないほど、ショーも演奏も素晴らしいものでした。ありがとうございます!

構成も演出もかなり練られていて、出演者の皆様と何よりアキラさんのエンターテイナーぶりが光るショーでした。そして、その演奏をやれちゃう札響もまた素晴らしい!今年は同じ企画を在京オケともやったようですが、地方オケだと札響のみのようです。「オケパン」は回数を重ねたイベントとはいえ、今の状況において地方都市である札幌での開催が実現したのは相当すごいことだと思います。アキラさんと札響とは強い信頼関係があるのですね。演奏だけでなく、細かな演出にもすべて楽しそうにこたえられるところは、やはり札響の懐の深さだなとしみじみ。もちろん肝心の演奏だってクオリティ高くて、特に小さな子達が初めてのコンサートでこの音楽に出会えるのはものすごく価値があると思います。また、有名曲ばかりとはいえすべてアキラさんの神アレンジが入っていて、演奏はおそらくかなり難しいのでは?慣れた曲をいつも通りに演奏できないため、むしろすべて新しい曲に取り組むような感覚だったのかもしれません。しかも切れ目無く次々と13,4曲!それをクールに見事にしかも楽しそうに演奏してしまう我が町のオケ、さすがです!


半券の裏に名前と連絡先を記入して自分たちでもぎり、プログラムも自分たちで取って入場。見慣れたステージに目をやって私がまず思ったのが「譜面台が多い」。ひとり一台ずつ用意されていました。ただでさえ編曲された曲ばかりが何曲も続くコンサートのため、楽譜の用意は苦労は多かったことと存じます。また指揮台の前に大きなグランドピアノがでんと鎮座していて、かつ楽器の種類が多くオケの編成は比較的大きい印象でした。その状態でソーシャルディスタンシングを守った結果、多彩な打楽器は背面ギリギリのところに配置されていました。管楽器の間にある透明なアクリル板はよく見ないとわからないほど工夫されていましたし、舞台設営はかなり大変だったのでは?そして開演前の放送による注意事項のアナウンスは、以前よりずっと長かったです。

開演に先立ち、宮川彬良さんがマイクを持ってごあいさつ。テレビで拝見した通りのおしゃれさんで、またテレビのイメージよりもずっと人当たりが良い印象を受けました。1席飛ばしを考慮しても空席が目立つ会場だったにもかかわらず、「これくらいがちょうどいいんですよ」とアキラさん。こちらとしては人が少ないほどホールの音は良くなるためありがたいのですが、興行収入を考えるとかなり厳しいですよね…。来年はきっと満員御礼となりますように。

黒猫さん達が登場し、床掃除からはじまりずっとかわいらしい動きをしていて、客席は皆そちらに目が釘付けに。静かにオケメンバーが入場したのに、拍手するタイミングを見失ってしまいごめんなさい!奏者の皆様は、下は黒、上は白の衣装で、マスク着用の人はグレーのマスクで統一。アキラさんに負けずにおしゃれです。黒の燕尾服が基本の皆様が白い上着を着ているのは新鮮でした。懐かしい顔ぶれを拝見していると、私はなんだか夢みたいに思えてきました。皆様お久しぶりです、お元気そうでよかった、会いたかったです!これはネット配信ではないんですよね、生演奏なんですよね同じ会場にいるんですよね?と、演奏が始まる前から私は一人でおかしなテンションに。

演奏開始は「Willkommen」。宮川大典さんのピアノとオケによる演奏でした。ヴァイオリンが美しいメロディを奏でて、チェロとコントラバスがピッチカートで下支えするのを聴いて、そうこの感じ!と私は7ヶ月前に最後に聴いたときの記憶を少しずつ思い出してきました。アキラさんが「マダーム エーンド ムッシュ、ようこそ。音楽で旅してまいりましょう」といろんな言語ごちゃ混ぜのごあいさつをして、パイロットっぽい男性が登場し指さし確認して、音楽の旅のはじまり。金管と打楽器が入る派手なアレンジだったので、最初は何の曲かわからなかったヴィヴァルディ「春」は、娘の方が私より先に曲名がわかりました。娘が通っていた幼稚園のお片付けタイムに必ず流れる曲だったため、よく覚えていたようです。にぎやかに盛り上げるスタイルも楽しくて良いですね。そしてコンマスのソロ(田島さんは立ち上がって演奏)で、私は本気泣き。我が町のオケにもう会えないのではないかと悲観的になった時期もあったので、またお目にかかれて、そしてその音楽を聴けて本当によかったとしみじみ思いました。

オー・ソレ・ミオ」は太陽がさんさんと照る明るいイメージをオケがとても美しい音で聴かせてくださいました。一転、会場が暗くなり雷の音がしたら、「雨に唄えば」の演奏に。傘を持って踊る黒猫さん達のかわいらしいこと。もちろん、カスタネットを手にタップダンスを踊ったアキラさんもカワイイ。

クラリネット奏者のかたお二人が前に出て、オケの演奏をバックに「クラリネットポルカ」の有名なメロディを二重奏。もうクラリネットのあたたかでまるい音が素敵すぎて、人が少ないkitara大ホールでの響きも素晴らしくて、私は静かに感激していました。ああ聴けてよかった。そしてこれを当たり前と思って育つ札幌の子供達がうらやましい!このままクラリネットつながりで、プログラムにはない「クラリネットをこわしちゃった」の演奏が始まりました。愉快な音楽に合わせて、アキラさんが必死に吹いても音が出ないクラリネット(笑)。その壊れたクラリネットからは手品のように花束が出て、「花祭り」の演奏へ。どこか哀しげな音楽に合わせて、黒猫さん達がまく花びらの鮮やかな色が目にしみました。

娘が「鬼のパンツ」として認識していた「フニクリ・フニクラ」は、今回はオリジナルの登山列車が登場するバージョンです。歌の部分は主にトロンボーンが華やかに歌ってくれました。駅員さんのような男性が登場し、黒猫さん達がロープで電車ごっこを始めて、奏者のかたお二人を電車に乗せて舞台袖へ。戻ってきたとき、奏者のお二人はご丁寧に猫耳まで装着していました。そのまま「トランペット吹きの休日」の演奏へ。トランペット奏者の皆様が立ち上がり、おなじみのメロディを高らかに吹いて超カッコイイ!すっごい!これを当たり前と思って育つ札幌の子供達がうらやましい(2回目)。この選曲はおそらく運動会のイメージなんですね。電車で連れ去られたお二人の腕立て伏せ、腕相撲勝負から、勝者と黒猫さん達との組み体操、リンボーダンスと、見た感じでは超ノリノリでやってくださり、会場は静かに大盛り上がり。本来はお父さん達の参加企画のところ、奏者のお二人が代打で頑張ってくださいました。努力して演奏家となり札響に入団したかたが、オケの演奏をバックに、ソリストではなくまさかの運動会をやるなんて!きっとご本人だって思ってもみなかったですよね。盛り上げてくださりありがとうございます!運動の流れで「ラジオ体操」に。アキラさんのピアノとオケによる超贅沢な演奏で、会場は全員座ったままでラジオ体操です。奏者の皆様は演奏しながら出来る範囲で身体を揺らしていました。大きなコントラバスが右に左にと一生懸命動いているのがカワイイ。最後は奏者の皆様も立ち上がり深呼吸。同じ空気を吸ってる実感、ネット配信ではよくわからない一体感が感じられたのがうれしかったです。

マック・ザ・ナイフ」では、アキラさんは鍵盤ハーモニカを手に。私はオケの美しい演奏に夢中でした。雰囲気ががらっと変わった「大脱走マーチ」で、黒猫さん達は初めて客席へ(※その時だけマスク着用する徹底ぶり)。各国の国旗が色鮮やかに広がり、舞台中央にはPEACEの文字が出て、会場からは大拍手。そのまま「ショウほど素敵な商売はない」の演奏になり、会場のテンションは最高潮になって音楽の旅は大団円。耳で、目で、身体全部で楽しい、あっという間の1時間でした。

アンコールの演奏はおなじみ「ジャジャジャジャーン」で始まり、「運命」だわ子供でも知っている超有名曲だしベートーヴェン生誕250年アニバーサリーイヤーだし、札響の演奏はさすがの安定感、8/6の尾高さん指揮の新定期聴きたかったな、それにしても渋い選曲……と私は色々と思いを巡らせながら聴いていましたが、ん?何か変?マンボ?と気付いた瞬間、奏者の皆様が「アー、ウ!」と一斉にかけ声。えええええー!「シンフォニック・マンボNo.5」は「運命」と「マンボNo.5」をグラデーションで行ったり来たりする面白い曲で、深刻な「運命」のハイクオリティ演奏と陽気な「マンボNo.5」の「アー、ウ!」のギャップがすごくて気持ちが忙しい(※褒めてます)。私、本当は客席から一緒にかけ声をしたかったのですが、今のご時世それはできず、ちゃんと大人しく聴いていました。でも客席の熱があがっているのは肌で感じましたよ。うちの娘もこのアンコール曲は気に入ったようで、帰る道すがらずっと鼻歌で歌っていました。ちゃんと行ったり来たりしながら(笑)。

出演者の皆様を最大限の拍手でお見送りしてお開き。分散退場のため席でアナウンスを待ち、ホールを後にしました。音楽も演出も最高で、親子で超満喫しました。楽しかったです。ありがとうございました!アキラさん、来年もきっとまた札響と一緒にオケパンを演奏してくださいね。お待ちしています!


演奏会再開したとはいえ、当面は座席数を半数以下に絞るためチケット収入は激減します。札響にはまだまだ支援が必要です。私はこの先もずっと札響の演奏を聴きたい!以下は私が以前書いた札響支援についてまとめた記事です。ぜひ参考にしてください。 

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

私が自粛明けに初めて行ったコンサートは、お菓子の「きのとや」さん主催によるアンサンブル演奏会でした。住宅街の小さな集会所でも親子で本格的な演奏に触れられるなんて、札幌は音楽を聴く環境に恵まれていると改めて思います。レビュー記事は以下のリンクからどうぞ。 

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

きのとやサロンコンサート Vol.65(2020/08) レポート

www.sankakuyama.co.jp

 

私にとって、実に半年ぶりの演奏会です。ネットで偶然知って、きのとやの店舗でチケット購入しました。中3の息子を誘い、無理矢理コンサートデート。休憩なし1時間ほどの演奏会でした。なおこちらの様子は8/22(土)10時から三角山放送局で放送されるそうです。ぜひどうぞ。ちなみに録音と音響を担当されていた放送局スタッフのかたが、ヘッドフォンで音を聴きながら左右に身体をゆらしてノリノリでしたので、きっと良い音で収録できていると思います!

会場の入り口では、本番衣装を着た奏者の皆様がお出迎えしてくださいました。手の消毒を済ませ、名簿に連絡先を記入し、お土産のお菓子を頂いて(「福かしわ」おいしかったです、ありがとうございます!)、私達親子は隅の方のイス席に着席。イスは間隔を空けて配置、窓と扉は開けてあって、小さな会場でしたが密ではなかったです。感染症の心配がなければもっと定員数は増やせるのに、仕方が無いとはいえもったいないなと正直思いました。今回は「夏休みスペシャル!!」ということで、小中学生とその保護者を対象とした会だったようですが、大人のお一人様が比較的多い印象でした。前の方はゴザが敷いてあり、小さなお子さんとその保護者の方々が座っていました。未就学児やハイハイの赤ちゃんもいて、みんな楽しく聴いていましたよ。


きのとやサロンコンサート Vol.65
2020年8月8日(土)11:00~ 琴似会館

【演奏】
アンサンブルグループ 奏楽(そら)
岩崎弘昌(オーボエ) ※札響副首席奏者
長谷川加奈(ヴァイオリン)
石黒怜(ファゴット
前田朋子(ピアノ)

【曲目】

ピアノはヤマハの電子ピアノでした。

※今回はツイッターでの速報はありません。


久しぶりに生演奏を聴けて、なんだかほっとしました。誰しもが多かれ少なかれダメージを受けて疲弊している今、音楽は変わらずに私達に寄り添ってくれたと私は感じたので。実は私、今のこんな状況で何かを学ぼうとかこれを機にあれこれ変えようとか、ご立派だとは思いますが、個人的にはとてもそんな気にはなれません。だから、星の数ほどあるネット配信の演奏でも、「メッセージ性」が強いものは申し訳ないですが苦手です。もちろん感染症とともに生きていかなければならない以上、その存在を無視することはできず、それこそ蜜を避けた会場設営をしたり管楽器の飛沫を配慮したりお客さんの方もマスク着用と手の消毒をしたりと、以前とまったく同じようにはいきません。それでも、私達は音楽を楽しく聴きたいがために足を運んでいるわけですから、せめて演奏を聴くときは何もかも忘れて音楽そのものを楽しみたいと個人的には思っています。今回のアンサンブルグループ奏楽の皆様の演奏は、心を込めた演奏自体はもちろんのこと、選曲や演出でメインターゲットの子供達に楽しんでもらいたいと頑張ってくださっていました。子を持つ親としてはとてもうれしかったですし、何より「子供向け」って言っても子供だましではなく、本物は大人でも子供でも皆楽しめると再確認。奏者の皆様とお客さんの距離が近く、そこにいる人達がお互いに気持ちのやりとりもできるようなアットホームな会、楽しかったです。私は今回が初めてでしたが、「きのとやサロンコンサート」は今回Vol.65ということで、回数を重ねたイベントなんですね。このような会を企画し続けてくださっていることに感謝です。8月から再始動している札響の席が取れないといじけている場合ではないですね私。代替手段としてではなく、むしろ今回のような住宅街の小さな集会所で開催されるイベントにこそ積極的に足を運ぼうと思いました。

ピアノの前田さんとヴァイオリンの長谷川さんはマスクを着用、ファゴットの石黒さんとオーボエの岩崎さんはマスクなしで登場。管楽器の飛沫は50センチ以上離れていれば大丈夫という検証結果が出ているとの説明がありました。曲の合間のトークはピアノの前田さん。アンサンブルグループ奏楽がお客さんの前で演奏会をするのは半年ぶりなのだそうです。ネット配信は続けていたものの、何よりお客さんの顔を見て演奏すること、拍手をもらえることがうれしいとおっしゃっていました。

1曲目、バッハ「主よ人の望みの喜びよ」の冒頭オーボエの音を聴いてもう私は涙が。こんなに心に響く音だったんですね。すぐに緊張はほぐれて、演奏にうっとりできる余裕はできましたが。後から中3の息子も「つかみのバッハが良かった。同じメンバーでバッハの別の曲も聴いてみたい」と言っていました。続く4曲は、各楽器の紹介も兼ねた二重奏およびピアノ独奏。皆様とってもステキでしたが、何と言ってもオーボエが激ウマです。「君をのせて」のメロディでオーボエのあたたかな音色を堪能。トークの楽器紹介でリードだけ吹いたときから良い音でした。ちなみに岩崎さんはリード1本を5分もかからずに作れるのだそうです。子供達の反応が良かったのはやはりディズニーの曲で、「ハイホー」は普段は脇役に徹するファゴットの良さを知りました。モンティ「チャルダッシュ」はヴァイオリンが主役のカッコイイ演奏で、本来入らないオーボエファゴットも良い味を出していました。珍しい編成ですから、この編成用に曲をアレンジするのも、全体を短く圧縮するのも大変かと存じます。シャーマン「小さな世界」は、「世界一周バージョン」と題して、様々な国の音楽の要素が登場。アルゼンチンタンゴだったり、日本の「さくらさくら」だったり、他にも色々。カルメンっぽいところでは岩崎さんがご自分を指さしながら「オレ!」とかけ声。雰囲気に合わせて音を変えられるのは電子ピアノの利点だなと思いました。そして、「プログラムにない曲」として、ジブリの曲を演奏しますとだけ説明があり、演奏開始。演奏が終わると幼稚園児くらいの男の子が「ポニョ」と正解を言いました。もう10年ほど前の作品なのに、今の小さな子も知っているとは、おそるべしジブリ。続くジブリの曲は大人の雰囲気なので、その前に楽しい曲で子供達にサービスしてくださったんですね。ファゴットはお休みで、三重奏による「さよならの夏~コクリコ坂から」は心に染み入りました。歌うオーボエが素敵すぎ。「パイレーツ・オブ・カリビアン」の前に、奏者の皆様は「海賊のイメージで」バンダナや帽子を着用。変装用衣装を探したのだそうですが、ハロウィンの時期ではないためなかったと説明がありました。この小さな編成でゾクゾクする演奏を聴かせてくださいました。個人的に苦手意識があった「パプリカ」は、フラットな気持ちで聴くととても良い曲だなと感じました。踊れる子達が遠慮がちに小さく踊っていたのも、色々な大人の事情は一旦忘れて、素直に良いなと。曲自体に罪はないですよね。パプリカ、演奏はとても大変なのだそうです。アンコールの前に、奏者の皆様はおもむろにアフロヘアーのカツラを取り出し装着(※岩崎さんのみ帽子)。曲名発表で、会場から「あー!」という声が。葉加瀬太郎さんのイメージだったんですね。おなじみ「情熱大陸」はノリノリのカッコイイ演奏で、客席からは自然に手拍子が始まり、小さな会場に一体感が生まれました。楽しかったです!


終演後はアンケートに記入し、退席。奏者の皆様がお見送りもしてくださいました。アンサンブルグループ奏楽の皆様、きのとやさん、そしてスタッフの皆様、楽しい時間をありがとうございました!


自粛前に最後に聴いたコンサートは、ウィステリアホールでの札響首席奏者の吉田さんによるコントラバスのコンサートでした。レビューは以下のリンクからどうぞ。ウィステリアホールさんも、いつも素敵な演奏会を企画・開催してくださっています。お年寄りのための施設内にあるホールのため、不特定多数が出入りするイベント開催は今は難しいのかもしれません。感染症拡大が落ち着いたら、きっと演奏会の再開を。いつまでもお待ちしています。

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

『ベートーヴェンの愛弟子 フェルディナント・リースの数奇なる運命』かげはら史帆(著) 読みました

今回ご紹介するのは『ベートーヴェンの愛弟子 フェルディナント・リースの数奇なる運命』かげはら史帆(著) です。2020年4月 春秋社。

www.shunjusha.co.jp


かげはら史帆さんの文壇デビュー作は『ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく』(2018年10月 柏書房)。シンドラーによる「会話帳改竄事件」を描いた御本で、私はハラハラしながら夢中になって読みました。感想も弊ブログにアップしています。以下のリンクからどうぞ。 

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

今回は待ちに待った2冊目の御本です。私は早い段階で通販サイトで予約を入れ、届いたら一気に読んでしまいました。そうそうこの感じ!お話に引き込む筆力はさすがです。まだまだ読みたいので、第3弾以降もぜひお願いします。希望は言ってみる!

haruaki.shunjusha.co.jp


↑今回の御本はこちらの連載「フェルディナント・リース物語 かげはら史帆」がベースとなっていると思われます。未読のかたはぜひご一読ください。web掲載の文章は比較的淡々としている印象(あくまで私見)ですが、著書はかなりドラマチックな展開になっていて、言うまでも無く分量・内容ともに充実しています。そして巻末の資料がすごい!年表や参考文献だけでなく、全作品リスト(!)に録音紹介まで。フェルディナント・リースの「おそらく世界初の伝記」は、資料としても大変重要なものになっています。超有名で研究者も多いベートーヴェンとは勝手が違い、調査や資料集めは大変だったことと存じます。頭が下がります。

ところで、フェルディナント・リース is 誰?と思ったかたもおられるかもしれません(失礼)。フェルディナント・リース(1784-1838)は「あの」ベートーヴェンの弟子の一人で、同時期の弟子仲間にはピアノ教則本で有名なカール・チェルニーがいます。フェルディナント・リースの名前は初耳だったかた、安心してください。私だって知ったきっかけはマンガ本です。NAXOS IAPAN(著)、IKE(イラスト)による『運命と呼ばないで ベートーヴェン4コマ劇場』(2004年4月 学研プラス)。フェルディナント・リース目線でアラサーのベートーヴェンと仲間たちのドタバタ大活躍を描いた、もうページをめくる度に爆笑する楽しい本です。私はこちらの感想文もかなり前に書きました(※レビュー記事へのリンクは上の『ベートーヴェン捏造』の感想記事にあります)。

私は『ベートーヴェンの愛弟子 フェルディナント・リースの数奇なる運命』を読んで、「運よば」のリースくんがこんなに大活躍してくれるなんて!と、なんだかずっと成長を見守ってきた親戚のおばちゃん目線で胸アツでした。そして「運よば」を読み返してみたのですが、マンガ初見ではよくわからなかった部分の答えがわかり(例えばベートーヴェンがフェルディナントに「お前はウィーンより他の場所が向いているんじゃねーかと思った」と言ったところ、ベートーヴェンが親友ヴェーゲラー宛の手紙に「パリの方がいい」と理由付きで書いてあったんですね!)、色々と繋がって超気持ちよかったです!ぜひ読み比べてみるのをオススメします。

ちなみに『運命と呼ばないで』の原案となったのは、フェルディナント・リースとフランツ・ゲルハルト・ヴェーゲラーの共著『ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンに関する覚書』。この本がソースとなった逸話には「ハイリゲンシュタットの散歩道で、フェルディナントには聞こえた『羊飼いの笛の音』がベートーヴェンには聞こえなかった」、「ナポレオンが皇帝になったことをフェルディナントが告げると、ベートーヴェンは激怒し交響曲第3番のタイトルを『英雄』に変えた」といったものがあります。ちなみに私はベートーヴェンの子供向け伝記漫画を図書館で片っ端から借りて読んだのですが、これらの逸話が描かれているシーンにはたいてい天パの気が弱そうな青年フェルディナントが登場します。それだけなら良いのです。問題なのは「運命はこのように扉を叩く」を聞き出したり、最晩年の病床にあるベートーヴェンのそばにいたりといった、シンドラーの役目を吸収してまとめられている残念な例が少なくないこと(本によってはその便利な脇役はホルツだったりもします)。脇役をまとめるのは伝記漫画では「あるある」とはいえ、これはすなわちフェルディナント・リースの知名度が低いから出来る芸当なわけで…。しかし存命中はピアニスト・作曲家・ディレクターとして一世を風靡し、多数の作品も残している人物です。それにフェルディナントがベートーヴェンのそばにいたのは10代後半のほんの数年で、その後の人生の方が長いわけです。ベートーヴェンの脇役ポジションでしかないのは、やはりあんまりですよね。

前作のシンドラーそして今回のフェルディナント・リース――偉大すぎるベートーヴェンの影に隠れがちな人物を真正面から見つめ、その人生を丁寧に描く。筆者の眼差しの優しさと真摯さに、私はまず胸打たれました。そして著書を読み進めていくうちに、フェルディナントは「気が弱そうな」人では断じて無く、むしろベートーヴェンの「運命の喉首を締め上げる」スタンスにだって負けないアツイ男であるとの認識に至りました。フランス革命に始まり世の中が大きく変化した時代にあって、筆者の言葉を借りると「大胆な冒険者」の生き様にどんどん引き込まれ、いつの間にかフェルディナント・リースにシンクロして彼の喜怒哀楽を我が事のように感じていたのです。歴史に埋もれた人物を見つけ出し、こんなに夢中になれる読み物で私達に教えてくださった筆者に大感謝です!これからお読みになるかたはどうぞお楽しみに!


以下に詳細な感想および個人的な考えを書いています。私の見方はあくまで主観によるものですので参考程度にとどめ、ご自身の見方は必ず著書をお読みになってご自身でお考えください。また過剰なネタバレは避けたつもりですが、本の内容の一部がわかる記述が含まれます。ざっくり乱暴にまとめちゃって本当にごめんなさい!厚さ約3センチの充実した内容の御本、私の切り取りでは魅力が伝わらないのが心苦しいです。以下、著書を既にお読みになったかたおよびこれから読む予定で多少のネタバレは気にならないかたのみ、「続きを読む」からお進みください。

 

続きを読む

札幌交響楽団への支援(寄附、ふるさと納税ほか)について(2020年04月現在)

※2020/04/19 少額寄附について追記しました。
※2020/05/11 札響クラウドファンディング日本オーケストラ連盟北海道ガスポイント寄附について追記しました。


札響存続のためのクラウドファンディングが2020/05/11から始まりました!非売品CDほかユニークな返礼品が揃っています♪なお寄附とは異なり税控除は受けられません(2020/05/11追記)。

www.sso.or.jp

 

本記事は、我が町のオーケストラ・札幌交響楽団への支援について、少し前に私がツイッターでバラバラ書いたことをまとめ、加筆したものです。ツイッターは話題があっという間に流れていきますし、良くも悪くも熱しやすく冷めやすいので、改めてブログ記事に残すことにしました。ツイッターをチェックしていない皆様にもぜひ知って頂きたい内容です。そして札響を例に書いてはありますが、日本全国にあるプロオケの多くは似た状況と思われますので、他のオケへの支援の参考にもどうぞ。

なお、特定オケに限らず幅広く支援したいかたは、「日本オーケストラ連盟」への寄附という方法もあります。ご参考までに(2020/05/11追記)。

www.orchestra.or.jp


感染症拡大の影響で、現在は世界的に人が集まる催しは取りやめが相次いでいます。札幌交響楽団も2020/02/22の名曲シリーズを最後に、以降の演奏会が5月の定期演奏会まで開催中止または延期となっています(2020/04/15現在)。公益財団法人は利益をためておけない性質があるそうなので、経営への打撃は計り知れません。あまり考えたくありませんが、このままでは最悪の事態になるおそれもあります。今の状況が収束したら、私は愛するオケの演奏を今までと同じように聴きたいんです!地元オケにはそのままの形で存続してほしいので、国や自治体による保護を求めていくのは当然のこととして、私もいちファンとして個人で出来ることを少しずつでもやっていきたいと思います。そしてお一人でも多くのかたに札響を応援してほしいと願っています。同じ思いのかたは、我が町のオケを応援する一つのアイデアとして、以下目を通して頂けましたら幸いです。

本記事では金銭的なことをメインに書きますが、もちろん事情は人それぞれですから、支援する場合でもどうぞご自身の無理の無い範囲でお願いいたします。また、私は専門家でないため税関係の記述はざっくりです。詳しく知りたいかたはご自身でお調べください。


まずは「寄附」について。

  • ◎個人でできる支援ですぐに団体の力になれる
  • ◎確定申告で税控除を受けることができる
  • ◎特典はコスパ良し
  • △税還付を受けたい場合は確定申告が必要
  • △金額によっては負担感がある

何と言っても寄付金がすぐに団体の力になるのは大きいです。確定申告をすれば寄付金の一部は税控除されます。 

www.sso.or.jp

札響の場合、個人向けプランは現在のところ大きく「パトロネージュシステム(1口5万円)」と「札響応援プラン(1口1万円)」の2つ。札響応援プランにはA席チケット2枚(座席指定不可)が頂ける「聴いて支援」コースもあります。既に定期会員でマイシートを持っているかたや、遠方にお住まいで頻繁に来札できないかたなどは、シンプルに寄附のみのコースも選べます。そしてパトロネージュですが、実は公式サイトにもパンフレットにも書かれていない特典があります。今回私は1口だけ寄附したのですが、確定申告すれば実質3万円強の自己負担でこれだけの特典があるのはコストパフォーマンス的にも良いと感じましたし、もっと早くに始めればよかったとさえ思いました。ただし特典をおおっぴらにしていないのには理由があるので、詳しく知りたいかたは事務局にお問い合わせください。

そしてもっと小口でも応じて頂けるはずですので、そういった場合も「その他寄附等のお問い合わせ」から問い合わせてみてください。とはいえ、数百円から数千円単位でわざわざスタッフのお手を煩わせるのは気が引ける…とためらってしまう人もいるかもしれません。現在「インターネット決済」も検討中とのことですので、そうなると少額でも気軽に出来るようになるはず
※2020/04/19 追記
一口1000円から任意の額で、寄附できるようになりました。クレジットカードでも振り込みでも可能です。

そして例えば各社のポイント移行する等、もっとさくっとライトな支援ができる仕組みもあると良いなと個人的には考えます。
※2020/05/11追記
北海道ガスのポイントを寄附する方法があります。以下ツイートを参照ください。



なお、国の制度として「チケットを払い戻さず『寄附』することにより、税優遇を受けられる制度が新設される」とのこと。こちらも通常の寄付と同様、税還付を受けたい場合は確定申告が必要です。関係省庁による資料は以下のリンク(※pdfファイルです)にあります。

https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/sonota_oshirase/pdf/2020020601_05.pdf


そして「ふるさと納税」について。既に納税している住民票がある自治体(例:札幌市民が札幌市に)対しても「ふるさと納税」は可能です!上の寄附とも併用できます。

  • ◎中長期的な団体の支援になる
  • ◎使用目的を納税者が選べる
  • ◎実質2000円の自己負担で納税の一部を支援に回せる
  • ◎医療費控除など他に何も無ければ確定申告はしなくてOK(※ワンストップ特例)
  • △税の先払いとなるため一時的にまとまった金額を立て替えることに
  • △その自治体に住民票がある住民は「返礼品」はもらえない
  • △札幌市の場合、全額が札響支援になるとは限らない(2020年04月現在)

 www.city.sapporo.jp

先述した通り、公益財団法人は利益をためておけないそうなので、基金自治体にプールしてもらえる点は大きなメリットだと思います。また、納税は必ずするものですから、使用目的を納税者が選べて、給与天引きで納めている税(改めて確認するとその額の大きさに驚きます)の一部を支援に回せるのであれば行う価値は十分にあるのでは?しかも実質自己負担額は2000円のみ。また、給与所得者で医療費控除や別の寄附など他に確定申告が必要なものがない人であれば、ワンストップ特例を使うと確定申告の手間が省けます。ただし、一時的にせよまとまった金額を立て替えることになりますから、高額寄附は比較的余裕がある人向きかも。なお、札幌市民が札幌市に「ふるさと納税」した場合は「返礼品」はもらえません。

札幌市が寄付金を募集している事業は以下のリンクにあります。

www.city.sapporo.jp

このうち札響支援につながるのは「文化芸術振興基金」になると思います。札響に全額行くわけではないにせよ、今のこの状況ですから割合を増やして頂くことを行政へ働きかけたいです。また文面を読む限りでは「Kitaraファーストコンサート」の資金にもなっているようなので、その意味での支援も大いにアリだと思います。しかしPMFには専用の枠があるのですから、札響も専用枠欲しいですよね!あと、札幌市外の人への「返礼品」に札響のチケットやCDがあるとなお良いです。

 

www.city.sapporo.jp

私は取り急ぎ、上のリンクにある「インターネット市政提案」フォームから意見を送りました。まずは札響を急ぎ支援し保護、そして「文化芸術振興基金」の札響の割合を増やしてほしいこと。今後「ふるさと納税」に札響の専用枠を設け、「返礼品」に札響のチケットやCDを用意してほしいこと。そんなことを書きました。早く実現しますように。


そして、個人的に一番大事な応援は「ファンであり続けること」だと思います。金銭面で個人ができることには限度があります。長期戦になることを覚悟しなければならない以上、どうしても国や自治体による保護あるいは体力のある企業や団体の支援が必要です。ここ最近「不要不急」という表現を何度も目にしました。確かに感染症拡大を食い止めなければならない今、演奏会は「不急」なのかもしれません。しかし「不要」ではないということを世の中に広く認識して頂くためには、一人でも多くのファンがいることが大事なのでは?もし地元オケを必要とする人がいなくなれば、悲しいですが保護する流れにはならないと思われます。演奏会がご無沙汰だと気持ちが離れてしまう人もいるかもしれませんが、ここはCDや過去のテレビ番組の録画等で録音に触れてモチベーション保ってほしいところです。

大丈夫、以下にご紹介する一連の動画を観たら、誰もがきっと札響サウンドのとりこになりますよ!オーケストラの生の演奏に触れられない今、札響奏者の皆様が You Tube で動画配信してくださっています。ありがとうございます!

 

www.sso.or.jp
主に吹奏楽部の皆さんが、長い休校期間中に自主練するのに役立つ動画です。札響のプロ奏者に指導頂けるなんて贅沢♪私はまったくの素人ですが、ふむふむと動画拝見して楽しませて頂いています。

 

www.sso.or.jp


オーケストラとは勝手が違うはずなのに、札響奏者の皆様は室内楽だってお手の物なんですね。どの演奏も最高です!私は新たな動画がアップされる度に、ツイッターで「全人類聴いてください!」と語彙力なしダイマをしてしまいます。本当に皆さん聴いてください!この素晴らしい演奏を聴かせてくださる札響奏者の皆様と、私は絶対にKitaraで再会したいです。


色々書きましたが、とにかく私はこれからも我が町のオケを聴いていきたいです。もちろんオーケストラに限った話ではなく、室内楽やオケのエキストラ等で演奏されるフリーランスの音楽家の皆様にだって音楽を続けていける環境があって然るべきと思っています。そのために自分で出来る支援は続けたいですし、公的な保護を求めていきたい意思もあります。しかし、音楽家に限らず、自粛要請により収入が激減してしまい、現在進行形で差し迫った危機にある多くのかた達への生活保障が先だとも認識しています。それすらも満足にできないこの国において、オーケストラはじめ音楽や芸術の保護なんて、言っていいのでしょうか…という不安も抱いているのです。もとより格差社会において、今回の感染症に関するもろもろが追い打ちをかけ、世の中にはさらに不安や怒りの負の感情が渦巻いています。そんな状況において、生きるのに直結しない「オーケストラや音楽家の保護」を声高に叫ぶことで、「上級国民」が贅沢を言っていると反感を買い、人々の更なる分断を進めてしまうかも…杞憂なら良いのですが。それでも、大切なものがこのまま消えていくのをただ指をくわえて見ていることしかできないのはつらすぎます。例えば三大Bを生んだドイツのように、文化の土壌も音楽の歴史も異なる国における音楽の手厚い保護を羨んでも始まりません。きっとかの国では音楽はライフラインのような「必需品」。日本では残念ながら「贅沢品」扱いになっています(私は音楽を贅沢品だとは思ってませんが)。言うまでも無く、今すぐ日本がドイツのように変わるのは無理な話です。そんな中で、一体どうすれば、我が町のオケを、音楽家の皆様を、クラシック音楽の演奏会が聴ける環境を、守っていけるのでしょうか?私の足りない脳みそではいくら考えても妙案は出てこないのです。どうか皆様、お知恵をお貸しください。お願いいたします。


最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

ウィステリアホール ふれあいコンサート Vol.3(2020/02) レポート

www.msnw-wishall.jp

ウィステリアホールの「ふれあいコンサート」は、事前に先着順でもらえる整理券があれば入れる、入場無料で休憩なし約1時間の演奏会。今回レポートするのはコントラバスとピアノのコンサートです。しかもコントラバスは札響首席奏者の吉田聖也さん!低音の弦が好きな私としては絶対に外せません!私は整理券配布開始直後にホールへ整理券を頂きにうかがい、当日を楽しみに待っていました。また約2週間前の札響定期ではロビコンがなんとコントラバス四重奏で、私は首席奏者の吉田さんはじめコントラバスに大注目しはじめていたので、個人的には超タイムリーでした。

時節柄、ホールの前には手の消毒液が設置されており、入場前に手の消毒を求められました。お年寄りのための施設にあるホールですし、こういった面はしっかり対策を講じるという責任感に頭が下がります。またコンサートを中止にせず開催くださったことに改めて感謝いたします。全席自由席でしたが、私はお一人様の身軽さで、開演ギリギリの時間に着いても前の方の真ん中あたりにポツンと空いた席に座ることができました。

では感想に進みます。いつものように素人コメントであることをご了承下さい。またひどい間違いは指摘くださいますようお願いします。


ウィステリアホール ふれあいコンサートVol.3
2020年2月17日(月)19:00~ ウィステリアホール

【演奏】
吉田聖也(コントラバス
新堀聡子(ピアノ)

【曲目】

ピアノはベーゼンドルファーでした。


ツイッターでの速報は以下。


真冬の札幌なのに、もうとにかくアツイ!キャパ約180名の会場はほぼ満席、奏者との距離が近いホールで一体感を味わえるライブの良さ!曲の合間に上手にかけ声したかたがいらして(ブラボーではなくYEAH!)、地下の薄暗いホールがまるでライブハウスのような雰囲気に。もちろん演奏中はいつものクラシック音楽の演奏会と同様、皆様静かに聴いていましたよ。こんな感じで楽しめたのは新鮮でしたし、言うまでもなく演奏も大変素晴らしくて、これが無料で聴けてよいのかしら?なんて思ったり。とにかくあの場にいた観客の一人だった私は幸せ者です。そしてツイッターでは私は腕の筋肉だの手の甲の血管だのとばかり騒いで、肝心の演奏内容のことをまともにツイートしていなくてごめんなさい。私、子供二人いて上は中学生なんですけど、案外免疫なくて(言い訳)。吉田さんの衣装は、オケだとかっちり燕尾服なのに今回は黒シャツ。首元も開いてましたが、それより袖は肘までだったことに目が釘付けになりました私。せっかくのチャンス(?)、腕から手首から指先から全部遠慮せずにガン見したかったんですが、実はまともに見ることはできなかったんですよ本当です。ちなみに演奏はちゃんと熱心に聴いてました念のため。それに演奏の良さがあってのビジュアルですからねっ!演奏内容についてはこのブログ記事で、私が書ける範囲で書きますので許してください。

吉田さんはコントラバスを抱えて登場し、ピアノの新堀さんもステージへ。拍手で迎えられ、すぐに演奏開始です。1曲目はピアソラ「キーチョ」。いきなり重低音がお腹にぐっと響いてきました。振動が直に来るのは小さな会場ならではの良さ。ピアノ伴奏は入りましたが、コントラバス独奏が多い曲で、タンゴ独特の響きが重低音で奏でられると超カッコイイ!ピアノの見せ場でのベースを作るのもまたコントラバスの本領発揮!最初から良すぎてしびれます!演奏後の吉田さんの解説によると、ピアソラが自身のバンドのベーシスト(キーチョさん)のために書いた曲とのこと。タンゴといえばバンドネオン決め打ちかと思いきや、コントラバスのためのキーチョや、ロストロポーヴィチのために書かれたというチェロのためのル・グラン・タンゴが名曲としてあります。それらを書いたピアソラは偉いです、うん。そして難曲を演奏してくださる演奏家のかたはもっと偉いです。偉そうにスミマセン。

1曲目の演奏後に吉田さんがマイクを持ってお話されました。コントラバスはオケでは下から支える役割で「地味」、目立つ瞬間といえば電車で移動中くらい、とのお話で会場には笑いが起きました。コントラバスの魅力を知って欲しいとの言葉には会場からは拍手。2曲目はラフマニノフ「ヴォカリーズ」。演奏前の解説によると、はじめはコントラバスのために書くつもりだった曲との説もあるそうですね。私はヴァイオリンとピアノでの演奏なら何度も録音で聞いていますが、生演奏で聴くのは初めて。美メロをコントラバスが奏でると、まるで寡黙で口下手な男性が思いを朴訥に語っているかのようでためいきがでます。切ないピアノの音色も相まって、心に染み入りました。吉田さんは「コントラバスのための曲として発表されたらここまで売れなかった気がする」と仰っていましたが、ご謙遜。超素敵でした!

2曲目の後、新堀さんが退場。3曲目はコントラバス独奏でギュットラー「グリーンスリーブスの主題による変奏曲」。ギュットラーはコントラバス弾きなのだそう。おなじみグリーンスリーブスの耳慣れたメロディが、曲が進むにつれ少しずつ変化していきます。いつもの重低音だけでなく、普段はあまり聴けない高音域での演奏や、コントラバス一台なのに高音と低音を同時に奏でたり、ピチカートで歌うようなところがあったりと、もうずっと聴いていたいほどコントラバスの魅力満載な演奏でした。

ピアノの新堀さんがステージへ戻ってきて、4曲目はデザンクロ「アリアとロンド」。演奏前の吉田さんのお話では、ピアノも大活躍する曲との紹介があり、コントラバスはジャズの土台になるとのこと。1曲前は民謡でこの曲はジャズと、様々な表情を持つのがコントラバスの魅力とも仰っていました。前半はジャズの雰囲気ではなくチェロ(といってもチェロには出せないような重低音も入ってきますが)とピアノのような美メロをゆったり楽しめる感じの印象でした。私が聴いたことがある中では一番高いコントラバスの音があり、声の低い男性が裏声を出しているかのようななんだか不思議な感覚に。後半になると、ジャズのノリですねこれ。この会場にぴったりな大人な雰囲気で、ジャズ風のピアノにあわせるコントラバスのピチカートもまたジャズ風。しかしコントラバス独奏も多く、独奏の部分での聴かせどころも存分に楽しませて頂きました。世の中には私が知らないだけで素敵な曲がいっぱいあるんですね。もちろんそれらを素晴らしい演奏で聴かせてくださる奏者の皆様に感謝です。

4曲目の後は特にお話はなくそのまま5曲目いずみたく見上げてごらん夜の星をの演奏へ。歌でいうところの1番を低音、2番を1オクターブ上で演奏したり、ピアノに主旋律を譲ったときにピチカートで伴奏したりと、これまたコントラバスの魅力たっぷりの演奏でした。コントラバスは「歌える」し、縁の下の力持ちにだってなれる、うん。

プログラム最後の曲に入る前に「宣伝」がありました。吉田さんは自身が参加しているコントラバス五重奏団"BLACK BASS QUINTET"とヴァイオリンとのユニット"GALI×BULI"についての紹介とCD販売のご案内、そして「ベースを作るコントラバスも聴きに来てください」と札響の宣伝をして会場からは拍手が。コントラバスは主役だってできるのに、誇りを持って下支えをしておられるんですね。どこまで男前なんでしょう!惚れてまうやろー!そして新堀さんからは3/1の演奏会についてのお話が。配布されたプロフィールによると、新堀さんはピアノ伴奏だけでなくウィステリアホールの演奏会のプロデュースをされているとのこと。いつも素敵な企画とピアノ伴奏をありがとうございます!

プログラム最後となる6曲目は、ヴァイオリンでの演奏でおなじみのモンティ「チャルダッシュコントラバスで。冒頭から重低音が超カッコイイ!そして凄いです超絶技巧!ヴァイオリンは楽器が小さい分、取り回しは比較的ラク(すみません見た感じのイメージだけで言ってます)なのかもしれませんが、こんなに大きなコントラバスを自在に演奏する姿は目で見ても凄すぎでした。素晴らしい!きっとピアノパートも難しい曲なのだと思いますが、私はもうずっとコントラバスの奏でる音と演奏の手元に夢中になっていました。

会場は大拍手の後すぐ手拍子になり、お二人は何度も舞台に戻ってこられました。アンコールはサン=サーンス「象」。同じサン=サーンスの「動物の謝肉祭」では、チェロの場合は「白鳥」がアンコール曲として鉄板です。「白鳥」は優雅で、いつも主役級のチェロにぴったり。しかし今回私はコントラバスが奏でる「象」を聴いて、なんだかユーモラスでコントラバスへの愛しさが増しました。チェロが文武両道かつイケメンでクラスのリーダータイプなら、コントラバスは主役ではないけれどちょっと面白いムードメーカーで、クラスに彼がいて良かったと思える存在なのかも。もう大好きです!

終演後、前のスクリーンに3/1の演奏会(ウィステリアホール プレミアムクラシックⅣ)にご出演のバリトン歌手のかたによる演奏会プログラムの解説動画が流れました(※注:この公演は2/20に中止が発表されました。残念ですが仕方がありません。チケット払い戻しに行かなきゃ…)。私は配布されたアンケートに記入してから退席。そして1階エレベーターホールでCD販売と奏者の皆様によるお見送りがありました。私はコントラバス五重奏のCDを1枚購入して吉田さんにサインを頂き(小さくお書きになったのは他のメンバーのための余白を残してくださったのでしょうか?)、ピアノの新堀さんにもお礼と3/1うかがいますと伝え(※また別の機会に必ず!)、会場を後にしました。


コンサート後に吉田さんがツイッターに「もう一音も弾けないほど抜け殻になりました」と投稿されていました。全力投球、最後の最後まで素晴らしい演奏を本当にありがとうございました。立ちっぱなしでずっと忙しく演奏されているわけですし、高音域での演奏では長身を前屈みにして無茶な姿勢をとることになりますし、大変だったことと存じます。おかげさまで私達は大変幸せな時間を過ごすことが出来ました。次回はチケット喜んで買いますから、またコントラバスが主役の演奏会をぜひ開催お願いします。もちろん、札響でベースを作るコントラバスも聴きにうかがいます!

そして私が購入したCDについては、ツイッターでミニレポートをしましたので以下に貼り付けます。皆様ぜひ聴いてください!


吉田さんが出演されたロビーコンサート、私は2020年2月の札響定期演奏会で聴きました。曲はデトレフ・グラナートコントラバス四重奏のための4つの小品」。このロビコンが超良すぎて、私は本プログラムのオケでもコントラバスばかりを見ていたほど。その時のレポートは弊ブログにあります。以下のリンクからどうぞ。 

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

ウィステリアホールのふれあいコンサート、私は前回のVol.2(2019/12)も聴きました。クリスマスをテーマにしたとても楽しいコンサートでした。金管五重奏で、現役札響奏者お二人と元札響奏者お一人が参加した編成。その時のレポートも弊ブログにあります。以下のリンクからどうぞ。 

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

札幌交響楽団 第626回定期演奏会(土曜昼公演) (2020/02) レポート

はじめにお知らせ。今回の札幌交響楽団第626回定期演奏会(金曜夜公演)は、3/1 14:00~ NHK-FMで放送予定だそうです。皆様ぜひご聴取ください。

www.sso.or.jp


また、2/7(金)にはサントリーホールにて札幌交響楽団 東京公演2020があります。今回の定期演奏会の演目のうち、モーツァルト交響曲第39番」はマーラー亡き子をしのぶ歌」に変更となります。バリトンはディートリヒ・ヘンシェル。首都圏にお住まいの皆様はぜひお聴きください!

www.sso.or.jp


2019-2020シーズン「バーメルトの四季」のラストとなる「冬」公演は正統派独墺プログラム。キタラに隣接する公園の池はスケートリンクのように凍り、道もツルツルになっている冬真っ盛り。しかし開演前に当日券売り場前には長蛇の列ができていて、真冬の公演でも始まる前から大変な熱気を感じました。

それでは演奏会の感想に進みます。いつものように素人コメントであることをご了承下さい。またひどい間違いは指摘くださいますようお願いします。


札幌交響楽団 第626回定期演奏会(土曜昼公演)
2020年02月01日(土) 14:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
マティアス・バーメルト

管弦楽
札幌交響楽団

【曲目】


今回のコンサートマスターは田島高宏さんでした。

ツイッターでの速報は以下。


個人的にはベト7がとにかく良かったんです!私は以前企業主催の札響の演奏会でベト7を聴いていますが、今回は前回よりずっと楽しめました。以前は塊でしか聞こえなかった音が、今回は各パートがはっきりと捉えられた気がします。私の経験値が上がった?いえ演奏の質そのものが向上しているのだと思います。ベートーヴェン生誕250年のはじめにこんなに素敵なベートーヴェンが聴けたことに感謝します。私はこの日ちょっと貧血がひどくて体調最悪だったのですが、聴きに来て本当に良かったです。

ロビーコンサートデトレフ・グラナートコントラバス四重奏のための4つの小品」。バラード、ワルツ、シャンソン、ロマンスの4曲を続けての演奏。コントラバス大好きな私は超楽しみにしていました。コントラバスは下川朗さん、首席奏者の吉田聖也さん、副首席奏者の稲橋賢二さん、飯田啓典さん。奏者の皆様が大きなコントラバスを抱えて颯爽と歩いてこられる姿を拝見した時点で、既に私の完敗です。しかも4人も!どうしよう!正式入団したばかりの下川さんが弦楽四重奏で言うところの第1ヴァイオリンのポジションを担当し、少し小ぶりのコントラバスで主に主旋律を演奏されていました。コントラバスは意外に音域広くて、メロディを奏でるのもお手の物なんですね。しかし楽器が大きいため、高音域では楽器の上から前屈みになって下の方の弦を押さえる姿勢になってなかなかツラそうでした。でも聴き手としては音楽そのものを大変楽しませて頂きました!私は4曲の最初から最後まで全部好きになったのですが、特にシャンソンのリズム感と響きが印象的で、あっという間に終わったのが惜しいと思ったほど。「歌う」のはチェロのようでありながら、低音域やピチカートの迫力はやはり格が違う感じで、理屈じゃなくお腹の下の方に響いてくる振動がたまらなく良いです。まってまって!ああすごい!といちいち心の中で叫んでいました。低音がズンズン響いてくるのを全身で感じ取れるのは、演奏をすぐ近くで聴けるロビコンならでは。大袈裟じゃなく「立っていられない」って思ったのは、貧血のせいではないはず(笑)。


会場に入ると、つい先ほどまでロビコンで演奏していらしたコントラバスの皆様が既に舞台上で自主練をしていました。ベト7という鉄板の演目のためか客入りは上々で、9割以上の席が埋まっていました。ちなみに今回私が割り当てられた席は2階LBブロック。少しステージは遠かったですが全体が俯瞰できてよかったです。ただ、ちょうど首席チェロ奏者のかたが指揮のバーメルトさんの影に隠れてしまう角度で、個人的にそれだけはツラかったです(苦笑)。そして今回はバーメルトさんは全曲暗譜(!)で、指揮者の譜面台はありませんでした。

1曲目はウェーベルン編曲によるシューベルト「ドイツ舞曲D820(管弦楽版)」。曲目解説によると、バーメルトさんの強い思い入れがあり演目に組まれた曲とのこと。演奏機会は少なく、札響では1981年4月の定期演奏会(指揮:岩城宏之)に一度演奏したきりだったようです。編成は小さく、弦と木管(フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2)のみ。ウェーベルンの師であるシェーンベルクが編曲したブラームスのピアノ四重奏曲第1番には金管と多彩な打楽器が入っていたので、少し意外でした。「舞曲」とはいっても、全体的にゆったりしていたためか私には「踊る」ようにはあまり感じられず、弦の美しさと木管の温かみのある音色が心地よかったです。ピアノ独奏曲という原曲とも聞き比べてみたいと思いました。今回聴いたオケでの演奏では時々ほんの一瞬悲しげな雰囲気になるところが印象的で、そこがピアノではどのような演奏をされるのかが気になります。

2曲目はモーツァルト交響曲第39番」。1曲目の編成にティンパニとトランペット2人が加わり、弦の人数も増えてコントラバスは7人体制に。金管が少ないのはともかく、木管オーボエはナシでフルートも1人というのが珍しいなと思いました。しかしフルートは1人でも圧倒的な存在感。もちろん掛け合うクラリネットも負けてないです。第1楽章と第4楽章では、ヴァイオリンが高音の美メロを奏でているときの低音の弦が個人的にはツボでした。チェロだけでなくコントラバスも忙しそう。それでもベートーヴェンブラームスとは違う活かし方のように感じ、主旋律以外のところに作曲家の個性が出るのかもしれないなと思ったり。モーツァルトのゆったりした美メロを楽しめるはずの第2楽章は睡魔に襲われて(ごめんなさい!でも寝てません)、その鼓動について行けば大丈夫と勝手に頼りにしているティンパニもお休みしているしで、ぼんやり聴いていたのを告白します。第3楽章は第1楽章と少し似た堂々としたところがあったおかげで比較的聴けました。私はモーツァルトには慣れていないだけで、聴き方さえマスターできれば楽しめるようになると思っています。体調万全なときに再チャレンジします。

休憩後はベートーヴェン交響曲第7番」。プログラムによると、札響での演奏歴は実に140回(!)。人気がある曲は演奏機会も多いんですね。木管とトランペットは2管ずつのオーソドックスな編成。最初からパワフルなベートーヴェン節全開の第1楽章、全員合奏では低音の弦にいちいちゾクゾクしていました。やはりモーツァルトとはチェロとコントラバスの使い方が違います。穏やかなところで歌う木管が素敵。バーメルトさんがこだわるという強弱の「弱」の部分でも、各パートがしっかりと演奏しているのが伝わってきました。個人的にはこの曲で唯一の短調である第2楽章が好きです。冒頭、管楽器の音が「ブラ4第4楽章とそっくり」と感じ、トロンボーンはいないのに不思議だなと。基本は葬送行進曲のような独特のリズムとメロディの繰り返しですが、変化をつけながら主旋律を各パートでリレーしていてずっと聴いていたいほど。そして何より低音が効いているのが良くて、私はこの日特にコントラバスに注目していたのでうれしかったです。第2楽章があるからベト7は映えるんだと思います。第3楽章は前の楽章から雰囲気ががらりと変わって、このリズム感が良いです!途中少しゆったりするところでは、ホルンはじめ木管が歌うのに伴奏する控えめな高音の弦がまた素敵で。そしてティンパニがここぞというときにバシッとキメてくださる!頼りにしてますティンパニ!そのまま続けて大盛り上がりの第4楽章へ。すっごい!全員が全力投球の素晴らしい演奏で、文句なしに気分が高揚します。ベートーヴェンは生命力あふれる人物だったんでしょうねきっと。これを聴いて「良い」と感じられるうちは私もまだ大丈夫と思いたいです。そして、うん確かにブラボーが早い人がいましたね。私も気になりました。ただ、個人的にはこの後のモーツァルトの繊細な音楽の最中にビニールがさごそする音が響いたのがもっと残念でした。色々な人がいますね…。演奏が素晴らしかっただけに、演奏とは違うところでがっかりさせられると気になってしまいます。自分も気を付けようと思いました。

今回はほぼ同じ演目での東京公演を控えていることもあり、通常の定期演奏会では行われないアンコールがありました。モーツァルト「カッサシオンK.63より"アンダンテ"」。弦のみでの演奏で、穏やかな美しい曲を札響の透明感のある響きで楽しませて頂きました。面白いなと思ったのが、コントラバスとチェロはひたすらピチカートで、ヴィオラもごくたまに弦を擦っていましたが基本ピチカートだったこと。録音だとおそらくよくわからないピチカートの響きも堪能でき、ライブの良さを改めて実感しました。サントリーホールでの東京公演でもきっと喜ばれると思います!東京公演のご盛会をお祈りいたします。

 

きっと私は何もわかっていないんです。分かる人であれば気づけるところだって華麗にスルーしてしまっているはず。それでも今ここにしかない音楽を、その場にいて肌で感じることができるのはなによりうれしい。いつだってその時の自分なりに楽しむ、それでいいと考えています。そしてどんなに内容が薄くても、その時の気持ちを書き記しておきたいなという気持ちもあり、実行しています。私のような素人の言うことを鵜呑みにする人はいないと思いますが、私が「こんなふうに感じたよ」と発信することはどうぞ大目に見てやってください。


私が札響定期演奏会デビューしたのはちょうど一年前のバーメルトさん指揮による演奏会でした。私はブラ2がお目当てでしたが前半2曲にも打ちのめされて、大変思い出深いデビュー戦となりました。おそるおそる書いたレビューは以下のリンクからどうぞ。 

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

2019-2020シーズン「バーメルトの四季」の「春」公演はフランスプログラム。普段自分では聞かない曲を大いに楽しませて頂きました。また練習見学会もあり、人が少ないキタラは音がものすごくキレイでびっくりしたんですよ。レビューは以下のリンクからどうぞ。 

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

「バーメルトの四季」の「夏」公演はブラームス中心のプログラム。個人的に大好きな演目揃いでしかもテレビ放送まであった記念すべき演奏会です。以下のリンクは演奏会そのもののレビュー記事です。なおテレビ番組のレビューも別途弊ブログにアップしています。 

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

「バーメルトの四季」の「秋」公演はモーツァルトワーグナー。私は初めての名曲シリーズで、普段聞かない作曲家の曲を思いの外楽しめたのはうれしい誤算でした。また、セット券購入者対象のバーメルトさんとの交流会もあり、すぐ近くでバーメルトさんとお話したり記念撮影をしたりと生涯忘れられない思い出となりました。レビューは以下のリンクからどうぞ。 

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

最後に。「2020-2021シーズン『札幌交響楽団主催演奏会』ラインナップ」が発表されています!

www.sso.or.jp

セット券もバラエティに富んだ企画揃い。私はセット券を複数購入する方向で検討していて、最終的には演目と特典で決めようと考えています。札響のある人生は素敵です♪


最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

「さっぽろ劇場ジャーナル」第4号(2019年9月発行) 感想

www.sapporo-thj.com


2019年9月末に発行された「さっぽろ劇場ジャーナル」第4号。年が明けてしまいましたが、遅ればせながら感想を書くことにしました。実は発行された当初、個人的に少し思うところがあって感想を書けずにいました。ところが年末年始の帰省中に読み返したところ、なにこれ面白い!と素直に感じ、とにかく今の自分の考えを書き留めておこうと思ったのです。ふとした瞬間に改めて手に取り、読み返すことができるのが紙媒体の強みですね。何年か後に読み返したとき、私はきっと今とは違う感じ方をするでしょうし、そうであるなら今どのように読んだのかを書き留めておきたいと考えました。誰のためでもなく未来の私のために。

少し本筋とはズレた話になりますが、ジャーナル本紙の紙質は良いようで、スーツケースの中でもクシャクシャにならず、広げて読むときにはビシッときれいな状態になっていました。この先ずっと保存して何度も読み返すことを考えると、上質な紙で作られているのはありがたいです。余談ついでに。ブラームスは、自作品を売り込みに来た無名の作曲家に「良い五線紙だね、どこで買ったの?」と言ったそうですね。ひどい人だわ(笑)。もちろん私は紙のことばかりではなくちゃんと中身について書きますよ。言うまでも無く、「さっぽろ劇場ジャーナル」の文章はいずれも骨太で内容充実していますから、中身こそが大事!

ちなみに前回第3号の感想も弊ブログにアップしています。以下のリンクからどうぞ。お取り寄せ方法についても紹介しています。 

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

熱心に書いたつもりの第3号のレビュー記事、なんと検索圏外なんですよね…。もしかするとステマと判断されてペナルティを受けたのかもしれません。改めてお断りしておきますが、弊ブログの記事はいずれも私自身が書きたいことを自由に書いています。アフィリエイトすら行っていない弊ブログにおいて、誰かに頼まれたテーマで書いたり宣伝を請け負ったりすることは、今までもこれからも絶対にありません。そして全ページレビューをする人はめずらしいので目立つかもしれませんが、読者代表を気取るつもりはさらさらないです。専門的なことは何も分からず思いつきしか書けない私ですから、意味があるとするなら書いている私が楽しい、それだけです。なお前回第3号の感想は結果的にほぼ100%肯定になりましたが、今回第4号では否定的なことも書いています。また前回と異なり、今回は感想を書くことを事前に編集部の皆様に伝えていませんし、私のツイッターアカウントでの案内もしません。ブックマークや検索経由で見つけてくださったかたのみに読んで頂けたらそれで良いと考えています。いつも私の長文にお付き合いくださる読者の皆様には感謝しています。

それでは目次に沿って順番に見ていきます。ちなみに「さっぽろ劇場ジャーナル」第4号にレビューが掲載されているコンサートのうち、私が実際に聴いたのは「PMF GALAコンサート」と「札響定期演奏会(4月から8月の4公演すべて)」です。思えばKitara大ホールにばかり足を運んでいた2019年度上半期でした。また今回は弊ブログのコンサートレビュー記事へのリンクは貼りませんので、興味を持たれたかたはお手数ですが過去記事アーカイブを遡ってお読み頂けましたら幸いです。


1面から3面は「PMF30周年」。まず1面では、さっぽろ芸術文化研究所代表の伊藤佐紀さんとPMFフレンズ(賛助会員)の吉川宗男さん、そして多田編集長による寄稿文が掲載されています。紙面を手に取り、一番はじめに目に入るところに一般のかたの文章があり、私は良い意味で驚きました。我が街札幌における音楽祭への思いは人それぞれあると思いますし、そんな私達と目線が近い人のお考えを紙面で読めるのはうれしいです。今後もこんな寄稿文や座談会などの企画があると面白いと思います。もちろんご無理のない範囲でお願いします。そして多田編集長による文章を拝読し、やはり私達とは別の目線で物事を見ていらっしゃるなと改めて思いました。昭和の「空洞化された理想主義」が平成で「露悪的な本音主義」に振り子の針が振れたというお話は、私も肌感覚でぼんやりそう思っていたことだったので大変面白く拝読しました。平成の30年とともにあったPMFが時代の変遷とともに今後どのようになっていくのか、私もしっかり見届けようと思います。しかし私今までこんなこと考えもしなかったです…。マーラーを頻繁に取り上げるのは、大編成のためアカデミー生が全員参加できるから程度にしか思っていませんでした。とはいえ機械的な決定のような無意識の部分にこそ本質が現れるのかもしれませんね。

2面の上半分はPMF Pick up!(1)としてGALAコンサート(マリン・オルソップ指揮)を取り上げています。私が今年のPMFの大きなコンサートで唯一聴いたものだったので、興味深く拝読しました。今年のオーケストラ公演で一番かつ近年でも最高レベルの演奏との評価、素直にうれしいですし私はこの公演を選んでよかったと思いました。またGALAコンサートは演目が多いためか、記事で触れられた演目はごく一部のピックアップでした。メインで解説しているのはプロコフィエフ「古典交響曲」。正直私はノーマークの曲でしたが(申し訳ありません)、素晴らしい演奏だったのですね。私もう一度聴き直したいです。続いて講師陣も参加したR.シュトラウス「バラの騎士組曲」も高評価。なお、多くの人が注目するであろう、ゲストのスターソリストについてはごく軽く触れるにとどめていました。

2面の下半分はPMF2019 その他の公演をダイジェストで。大小様々なコンサートが開催されるPMF、今回こちらで取り上げられているのは「ホストシティオーケストラ演奏会(バボラク指揮)」「PMFプレミアムコンサート(エッシェンバッハ指揮)」「hitaruスペシャルコンサート(クリスチャン・ナップ指揮)」そして「PMFオーケストラ演奏会(ゲルギエフ指揮)」。重量級の公演揃いにもかかわらず、この限られた字数で重要ポイントをきちっとおさえているのはさすがです。連日コンサート三昧だった音楽ファンのかたなら、復習にきっと役立ちますね。なお上のGALAコンサートとは違い、レビューは全体的に注文が多い印象でした。今回のアカデミー生の技量は高いとのことなので、やはり超多忙な世界的指揮者の問題?と考えるのは自然の流れかも。最後の方に書かれてある、カリスマ指揮者が統率する20世紀のカルチャーからの脱却は、確かにこれから考えるべき課題なのかもしれません。有名な世界的指揮者が札幌に来る!と市民の一部のミーハーな向きには歓迎されても、肝心の音楽の完成度がイマイチならいずれはそっぽ向かれてしまうでしょうし。そもそもアカデミー生の勉強の場としてうまく機能しないのは問題です。また、私は演奏そのものとは別の部分で「hitaruは大編成のオケが本当にクリアに響く」とあったのが目にとまりました。私が見えている範囲では、hitaruって評判が良くないので…。別の機会にhitaruの良さについて解説して頂けたらうれしいです。いずれはkitaraもぜひ!

しかし2面のこのスタイル、ぺらっと一枚めくって4面の札響定期も同じくピックアップとダイジェストの構成なんですよね。オケも指揮者も演目も違いますから内容は当然異なるものの、ぱっと見て似た感じのページが続くと、読者の中には読み飛ばしてしまう人もいるかもしれないなと少しだけ思いました。PMFは毎年のことなので、もし可能でしたら来年は少し変化をつけてみるとメリハリがつくかもしれません。PMFのオケは毎年一夏限りでお祭り要素もあると思いますから、札響定期よりは遊び心が入れやすそうです。例えば、その他の公演については多くのコンサートを聴き歩くファン数人と多田編集長による座談会をやってみるとか。実現可否を考えずに勝手を言っていますからどうぞ軽く聞き流してください。

3面上段ではPMF Pick up!(2)としてPMFウィーン演奏会を取り上げています。編集長は毎年お聴きになっているようで、例年の様子と比較しつつ今年のレポートをしておられます。今年は例年よりもお客さんを楽しませようという姿勢が見られたとのこと、よかったです。そしてたとえ相手が大ベテランであってもその演奏をまるっと信じず、弾けていなかった部分の指摘も容赦ないところはさすがです。また前年2018年の公演のレビューを拝読したときも同じ事を思ったのですが、この講師陣による弦楽四重奏団の演奏は、詰まるところ第1ヴァイオリンのライナー・キュッヒル次第で善し悪しが決まるのかな?という印象を受けました。

www.sapporo-thj.com


なお、2018年の公演についてはweb版でレビューが公開されています。上のリンクから読めます。ちなみに2018年の公演は私も聴きました。猫に小判状態で当時の私はその良さをきちんとわからなかったのですが、「さっぽろ劇場ジャーナル」のレビューのおかげで復習でき助かりました。

3面下段の連載コラムについては最後に書きます。


4面から5面は「札幌交響楽団」。見開きで、左ページは定期演奏会のレビューです。偶然にも私は今回レビューされている札響定期はすべて聴いたので、私は自分の記憶を辿りつつレビューを拝読しました。そして自分が何もわかっていないことがわかり凹むわけですが(苦笑)、これは今に始まったことではないですし、めげずに読み進めます。上半分では、4月(尾高忠明指揮)・6月(ユベール・スダーン指揮)後半・8月(マティアス・バーメルト指揮)の公演を駆け足でレビューしています。私が自分のコンディションのせいでまともに聴くことが出来なかった4月、この日の尾高さんのお仕事はここ数年と比べて「元気がなかった」とのこと。尾高さんは休養に入る直前でしたし、精神的にも肉体的にもしんどかったのかもしれませんね。そんな大変な中でお仕事してくださったことに頭が下がります。私が前半の竹澤恭子お姉さまで燃え尽きてしまった6月後半は、こちらのレビューでは辛口評価。もしかすると指揮者にもオケにも疲れが出たのかな?とちらっと思いました。前半は1曲目も長かった上に、協奏曲はソリストの気迫を全力で受け止めなければならず、そこに来て後半は大編成かつ演奏時間も長かったので。そして個人的に大好きなブラームス中心プログラムで超気合いが入っていた8月は、ダイジェストコーナーの半分近くの字数を使ってレビューされており、こちらは良い点だけが書かれていました。個人的に大絶賛なのは私のえこひいきかも?と心配だったのが、少しだけ安心できました。

下半分のピックアップでは5月のフランスプログラム(マティアス・バーメルト指揮)を詳細に。私はセット券「バーメルトの四季」の特典である練習見学会にも参加した演奏会です。練習見学会でのバーメルトさんは私達に一つも専門的なことはおっしゃらず、一般的な言葉で曲についてのイメージをお話してくださいました。ちなみに1曲目は「緻密」、2曲目は「道化」、3曲目は「シリアス」とのこと。しかしお客さんにはそんなふわっとした言葉で説明したにもかかわらず、マエストロは細部までしっかりと音楽を創りあげていらしたわけですね。私、何も分からず聴いていたのが申し訳ないです。レビュー冒頭では「音楽はいつも統制下にある」「オーケストラとはこのように細かくコントロールすることが可能なのであり、また、そうしたときにだけ立ち現れる美があることを21世紀の私たちは知ってしまった」とバーメルトさんを高く評価。もちろんそれに応えられる札響だってすごい!と私は思います。「幻想という作品は、曲のプログラムがすべて言葉で説明されてしまっており演奏家に解釈の余地がないところがある」…そうですよね。なので私はてっきり高いレベルの指揮者とオケならどの演奏でも大差ないのではないかと誤解していました。ところがバーメルトさんと札響による演奏は「醒めたバーメルトの視線が、リアルよりもハイパーリアル的虚構の世界を切り開いた」と、大変素晴らしかったとのこと。スコアに忠実でありながら、そのすべてに意味があるように聴こえるとか、(バーメルトさんがこだわるという)弱音はオーケストラ芸術の極致のような難しさが目の前で難なく展開されているとか、大絶賛。上のダイジェストとは違い字数があるため、スコアの細かな部分でどのように演奏したかという分析も丁寧。私はこれしか聴いていないのは恵まれているはずなのですが、同時に比較対象を知らないためその良さをきちんとわかっていないもどかしさを感じます。前半2曲についても高評価でした。しかしたった一度通して聴いただけの生演奏をこれだけ細部にわたり分析できるとは、編集長はものすごい集中力で聴いておられますね。私は素人な上に音楽的知識がないため比べてはおこがましいのを承知の上で書きますが、自分がレビュー書くときはこんな細かなこと思い出せないです。まず知識がないため重要なところでも素通りしてしまうのが大きいとは自覚しています。そもそも演奏中の集中力はそんなに長くは続かず、お目当て以外の曲ではぼんやり聴いていたり、好きな曲でも緩徐楽章ではBGMのように聴いたりしているせいでもあると思います。演奏会から帰宅したら数日はぐったりしてレビュー着手まで時間も空くためますます忘れてしまいますし、結果「楽しかった!」という気持ちだけしか書けません(苦笑)。私の場合は一個人の趣味ですから自分が楽しければそれでいいのですが、それでも後からこうして詳細で専門的なレビューを拝読できるのはありがたいです。自分が感激したところの理由がわかることもあれば、スルーしてしまった部分でも後からその重要さを認識できることもあり、本当に助かっています。そしてできれば全部の公演をこのピックアップくらいの詳しさで読みたいです。とはいえ紙面に限りがある上に執筆のご負担は大きいと思われますから、贅沢は言えません。また個人的にはピックアップするならテレビ放送もあった8月にしてほしかったですが、これは個人の趣味ですので軽く流してください。

www.sapporo-thj.com


なお6月公演の前半、ソリスト竹澤恭子によるプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第2番についてのレビューが特別篇としてWeb公開されています。上のリンクから読めます。私は3月のふきのとうホールでの竹澤恭子リサイタルで人生変わるほどの衝撃を受け、完全に彼女のとりこになってしまっていたため、札響と共演するこの定期演奏会はとても楽しみにしていました。金曜夜と土曜昼の2回聴き、またもや打ちのめされて、確かに魂が震える経験をしたのに「お姉様カッコ良すぎ!しびれる!」と語彙力お留守なことしか言えないのがもどかしかったです。しかし「さっぽろ劇場ジャーナル」のレビューではその詳細が明文化されているので助かります。同じ演奏を聴いていた強みで、演奏のどの部分の解説なのかがわかるのもうれしいです。「空間的多様性」なんて私は逆立ちしても出てこない表現にすごい!となったり、そうそうここはお姉様めちゃくちゃ速い演奏だったとうなずいたり。あといつも思うのが、四分=138といったテンポの判断はどうしているのかということ。時計を見ながら聴いている?それとも体感でわかる?そして譜例をあげての詳細な解説では、私の記憶がはっきりしているところとあいまいなところがあって、もう一度聴いて確かめたいなと叶わぬ願いですがついそう思ってしまいました。それにしても、編集長は竹澤恭子お姉様のこと大好きすぎますよね!いえ私も人のことは言えません(笑)。


札幌交響楽団」右ページは定期演奏会以外の記事です。左上では名曲シリーズから、下野竜也指揮で「作品の価値を刷新するような音楽が連続し唖然とさせられた」という6月を簡潔に、そして2018年あの地震で中止となり一年越しの本番が実現した鈴木秀美指揮の9月を取り上げています。2公演ともツイッター上での評判が良く、私も行けば良かったなと後から思った公演でしたので、レビューを拝読できうれしいです。往年の指揮者との比較で、札響の演奏が優れている趣旨の記述を拝見すると、私はまるで自分のことのようにうれしくなります(図々しい)。そして右上の札響の名盤(2)は、朝比奈隆指揮・1978年第188回定期演奏会の録音であるブルックナー交響曲第4番(ハース版)。朝比奈さんはブルックナーの大家で、当時の彼の特徴がわかるという73年に大フィルで振ったブル5も「ついでにぜひ聴いてほしい」と紹介されています。しかし「大自然のエネルギーに飲み込まれていく」と朝比奈さんを讃える一方で、当時の大フィルの下手さ(!)の形容がなかなかに辛辣です…。かたや78年の札響は「美感に驚く」(褒めてる!)。40年以上前の演奏ですので札響のメンバーは今ではほほとんど入れ替わっていると思われますが、「弦の明るい響きと伸びやかな歌はまぎれもなく今に通じる札響のそれだ」とのこと。人が入れ替わっても受け継がれる性質というのがあるのですね。また、ハース版とありますが、フィナーレだけはノヴァーク版になっているのだそうです。聞き取れる人であればこういったところも楽しめますね。朝比奈さんと札響の個性の「素晴らしい邂逅の記録」と大絶賛なので、私も機会があれば聴いてみたいと思います。ブルックナーは私にはまだ早い気がするのでそのうちに。あと、もしかするとツッコミ待ちかもしれないので一応触れておくと「厚生年金が吹っ飛ぶような宇宙の咆哮」って、「厚生年金会館」ですよねきっと。厚生年金は吹き飛んじゃ困るかなと。たんに誤字脱字の見落としでしたらごめんなさい。

右ページの下半分は9月4日の海道東征レビュー。北海道初演で、ネット上では大変話題となっていました。ちなみに配られた歌詞カードのルビがめちゃくちゃだというのも話題でしたが、これについては記事では触れられていませんでした。演奏については八章すべてを詳細にレビューしていて、記録としての価値も高いと思います。和製賛美歌・和製第九・ヨナ抜きといった MADE IN JAPAN を思わせる表現が見られる一方で、使用されている和声等がワーグナー的との指摘が大変興味深かったです。また、年末恒例の第九以外で独唱数名と合唱団が入る比較的めずらしい演奏でもあり、各独唱と合唱団の歌い方について詳細に書かれてあるのも大変良いと思いました。「太平洋戦争中に出陣の壮行に幾度も演奏」されたという海道東征。終盤の「音楽は常に政治利用と隣り合わせだった」は、ワーグナーヒトラーの例をあげるまでもなく、そんな危険性を聴き手である私達は常に意識しておく必要があると改めて思います。

そして、2019年9月には札幌交響楽団名誉指揮者のラドミル・エリシュカ氏の訃報がありました。個人的にはほんの一言でもいいので紙面で触れて頂きたかったなと思いました。印刷にまわった後なら致し方ないかもしれませんが、9月7日の名曲シリーズについて言及しているので(札響から訃報のお知らせが出たのは9月2日)、掲載タイミングは間に合ったようです。ギリギリでのレイアウト変更は難しかった、編集方針と合わない等の事情がありましたら申し訳ありません。


6面は「トゥーランドット』全幕レビュー」。私は公演直後のツイッター上での賛否両論の評判と編集長のツイートを拝見し、紙面では一体どのような記事になるのかと少しハラハラしながら発行を待っていました。編集長はご自身を「否」の立場と明言した上で、どこが良くないのかは根拠を示した上で書き、それでも細かな部分では良かったところにも言及しています。どうやら演出が斬新だったようですが、作曲者のプッチーニ自身が迷った部分でもあり、絶対に間違いとは言い切れないそう。それでもわかりやすさを追求したために辻褄が合わなくなったり安っぽくなったりといった無理が表出したとのこと。私は観ていないため書いていることを信じるしかないのですが。とはいえ演奏や歌手の歌い方の分析や、日本語訳で難アリ箇所の指摘といった部分は、演出の賛否とは関係なくどなたでも読んで参考になるはず。そして「否」の根拠の一つとして、この作品は一般的に言われているよりもワーグナーの影響が強いと書かれていましたが、知識のない私にはピンときませんでした。申し訳ありません。編集長はどっち付かずの態度は取らず、対立構造にはしないで「否」の立場を貫いたのは誠実だと思います。一方、その膨大な知識量と圧倒的な筆力で「否」と書かれては、「賛」の人の中には自分の感じ方を否定された気がして腹が立つ人や、「賛」の自分が間違っているかもと不安になる人もいるかもしれません。しかし、そんな人たちでも自分の正直な気持ちで「賛」なら何も恥じることはないはずです。娯楽作品の感じ方にただ一つの正解があるわけではないので、本心で「よかった」と思えるのなら何も問題はないと個人的には考えます。お話そのものに重きを置かず、その壮大な音楽に歌声にビジュアルに、積極的に酔うのは大いにアリかと。そもそもオペラのお話はどれも無茶苦茶ですし。また、私自身マミーブレインの時期はとにかくわかりやすいお話を好んだ覚えがあるので(今も大して変わらないかも・汗)、わかりやすいお話の存在とそれを好きな人の気持ちは否定したくないです。そうではなく、その「よかった」は心からの「よかった」なのか?が重要なのだと思います。違和感を覚えたにもかかわらず、オペラの古典的演目だから、有名な演出家の斬新な演出だから、チケット代が高かったから等で、もし自分の気持ちに嘘をついて「よかった」と思うことにしたのなら、それは大問題なのでは?

www.sapporo-thj.com


皆様にはweb公開された「ゴジラvs札響~伊福部昭の世界~」をぜひあわせてお読み頂きたいです。上のリンクから読めます。私自身は行っていない演奏会ですが、ツイッター上の感想では「よかった」の声が多かったと記憶していますし、終盤で取り上げられているKitaraの印刷物も話題となっていました。私、このゴジラの記事を拝読したとき震えたんですよ。権威的なものに従う等で自分の正直な感受性を押し殺すことがクセになってしまうと、本当に自分の感受性がだめになってしまうというのはとても恐ろしいこと。ただ、私自身がそうなのですが、踏んだ場数が少ないと自分の中にしっかりした判断基準がないんですよね。自分は何も分かっていないと自覚するからこそ、実績や権威がある団体や人の言うことなら間違いないだろうとつい頼りたくなってしまう。それでも、何のために生演奏を聴くのか?と問われれば、自分が楽しみたいからに決まっているわけです。誰のためでもなく自分のための楽しみなら、なおさら自分の感受性は大事にしないといけないなと改めて思います。そのためには安易に流されないこと、そして何より自分自身を一番に信じてあげることを肝に銘じます。もちろん経験値と知識が増えることによって、後から捉え方が変化するのだってアリです。どんな場合でも、その時の自分の感受性を信じ自分で決めることが肝要。


7面は「ふきのとうホール」。上半分はPick up!として8月の小菅優ピアノリサイタルを取り上げています。私が行くかどうか悩んでいたら、あっという間にチケット完売になった公演です。実演を聴けなかったのは残念ですが、レビューを拝読すると素晴らしい演奏だったのがうかがえ、雰囲気だけでも文章で楽しめてよかったです。実際に会場で聴いたかたなら、感激を思い出せてさらに理解が深まったのでは?ペダルの使い方などの奏法や調律等にも触れており、やはり編集長は相当ピアノが弾けるかたとお見受けしました。もちろん譜例をあげての詳細な解説も充実していて、さらに楽譜とは異なる弾き方をした部分も見逃していません。こういったところは、一般の人で気づける人は滅多にいないと思われ、記録の意味でも大変重要なはず。そして私のような素人にも響く詩的な表現、例えば「滝が水しぶきをあげるように」「子供の頃に聴いたうろ覚えの曲を思い出そうとして口ずさむように」といった表現も盛り込まれているのがニクイです。演目については、1曲目ヤナーチェクの「内面的」というのがとても印象的で、実際の演奏を聴いて確かめてみたいと思いました。そして休憩中にブラームス作品にあわせて調律していたとは!ブラームスは小品が2曲「だけ」と思ってチケット買うのをためらったのが悔やまれます。ベートーヴェンピアノソナタ2曲はいずれも演奏機会が多い曲で、それだけに耳の肥えたお客さんも多かったはずですが、そんなお詳しいかたをも唸らせる詳細な分析が素晴らしいです。詳細部分については、私は書かれてあることをそのまま信じるしかできませんが、音楽にお詳しいかたでしたらあるいは別の見方があるのかも?とぼんやり思います。内容の正誤は別としても、そういったことを言ってくださるかたが現れるとレビューを読み返すのがもっと面白くなりそうです。

そして下半分は4月から8月の主催公演をまとめてレポート。バラエティに富んだ公演揃いで、7月を除くすべてをお聴きになった編集部の皆様がうらやましいです!気になる公演すべてに足を運べる人というのはなかなかいないと思うので、レポートは実際に聴けなかった人にとってもありがたいと思います。しかし編集長の知識の多さには毎度驚かされます。ドイツ語にもお詳しければ、チェロで出せない音色をギターで奏でたとの分析(どちらの楽器もわからないとこんなことは言えないですよね)まで、お一人でそこまで理解できている人はそうそういないのでは?そして限られた字数でぎゅっと内容の濃いレポートはさすがですが、高望みとはいえここで書き切れなかったことも知りたいなと思いました。例えば5月の大谷康子とイタマール・ゴランの演奏会。事前にweb公開されたインタビュー記事ではR.シュトラウスソナタがイチオシとして語られていたので、それは一体どんな演奏だったのか気になります。「取り上げたすべての作品の様式美を大切にしていた」とのまとめ方では、具体的に各作品をどのように演奏したのかがわからないので…。あと、ふきのとうホールは大変素晴らしいホールですが、札幌には他にも小さなホールがたくさんあり様々なコンサートが開催されています。今後もし可能であればそういったホールでの演奏会も取り上げて頂けたらうれしいです。もちろんご無理のない範囲でお願いします。


8面は「ジャン・チャクムルと辻井伸行 二つの身体」と題し、8月のコンサートレビューとあわせて、タイプが異なるお二人のピアニストについての独自の分析が書かれています。舞踏家・最上和子を例に挙げての身体表象についてのお話は哲学的で、私自身まだきちんと把握できていませんが大変面白かったです。そして、ジャン・チャクムルは「まず外に形を作る身体」で辻井伸行は「内側に作る身体」と分析。また辻井さんが全盲であることに理由を求めていないのは好印象です。もちろん分析はあくまで一つの考え方であり絶対ではありませんが、それぞれのファンが別のピアニストに興味を持つきっかけになるはずですし、それによって下に続くコンサートレビューも両方読んでみようと思うきっかけになるかもしれません。こんな読者の興味を広げる工夫は大歓迎です。レビューに移ると、「ジャン・チャクムルの場合」では、彼は注目度は高いもののまだ発展途上でこれからどのように成長を遂げるのかは未知数なのかな?と個人的には感じました。彼の個性である部分は最大限に尊重し良さを認めつつも、演奏の細かな部分をきちんと分析してなぜ今の演奏がまだまだなのかという根拠を示しているのはさすがです。一般の人には、たとえ違和感を覚えたとしてもそれを言語化できない人は多いと思われますので、このような分析は大変助かります。そして「辻井伸行の場合」では、「純粋」との表現がありましたが、彼は世間に惑わされず自分自身をしっかり確立している演奏家なのかもと感じました。レビューしている8月の演奏会は、まずテレビで人気の辻井さんが主役ですし、ピアノ独奏だけでなく室内楽と協奏曲もというてんこ盛りかつ室内楽はスターソリスト揃いで、こういっては失礼ですがミーハーな人向けの企画という印象は否めないです。しかし記事ではそういった面には一切触れず、演奏のどの部分がどのように素晴らしかったのかを限られた字数の中でも効果的に語られています。すぐ上のチャクムルさんの記事よりは音楽の専門用語は控えめで感情に訴える表現が比較的多く、ミーハーな人であっても腑に落ちる感じで書かれてあるのも親切だと思いました。とにかくきちんと辻井さんの音楽について書かれてあるのが良かったです。よく考えれば当たり前のことなのに、メディアに登場する彼はいつも全盲であることばかりが強調されている気がしていたので。今注目される若手ピアニストお二人についての書き方は、いずれもイメージ先行ではなくしっかりと音楽性を見極めている印象で、他のメディアのかたにもぜひ読んで頂きたいと思える記事でした。

 

www.sapporo-thj.com


皆様にはweb公開された「舘野泉 特別インタビュー」をぜひあわせてお読み頂きたいです。上のリンクから読めます。舘野さんは「左手のピアニスト」。辻井さんが一般的にそう見られているように、ハンディキャップのあるかたというのはその部分ばかりクローズアップされ「物語」を消費されがちです。しかしそのせいで音楽家として大事な部分を見落としてしまうのは本末転倒。ハンディキャップは個性の一つとして捉える程度でちょうど良いのかもしれませんね。インタビューでは音楽作品そのものだけでなくその文化的な背景、ピアノ演奏や作曲についても踏み込んだ質問が次々となされ、それにこたえる舘野さんもノリノリで語っておられます。舘野さんはきっとうれしかったのでは?読み手の私達も、「物語」ではない音楽家としての考え方やそこに至る経緯等を知ることが出来、大変興味深く拝読しました。この回に限らずインタビュー記事は毎回読み応えがあって、私はとても楽しみにしています。あと個人的には舘野泉とラ・テンペスタ室内管弦楽団による日本フィンランド国交樹立100周年記念公演(5/27札幌)のコンサートレビューも読んでみたかったです。しかし札幌で開催されるコンサートは多いですから、すべての公演のレビューを書いて公開するのは至難の業ですよね。編集長のほかにも執筆者がいるとよいのですが、編集長ほどのレベルで書ける人はなかなかいないのかもしれないなとも思います。しかしできるだけ高いレベルの知識と筆力があるかたで、コンサートレビューの一部を任せられるかたが現れてくださることを一読者として願っています。腕に覚えのある音楽ライターのかたがいらっしゃいましたらぜひ名乗り出てください!


最後に、3面下段の連載コラム「言葉と文化(4)」について。同じ内容をweb版で読むことが出来ます。

www.sapporo-thj.com


紙媒体が配布される直前にweb公開されたため、私は本紙を手に取る前に拝読しました。ツイッターで紹介してくださった事務局さんの評価では「今までで一番面白いコラム」とのことでしたし、「いいね」もかなりの数がついていたと記憶しています。また手元でざっと検索かけて感想を探してみましたが、特に批判的な内容は見つけられませんでした。おそらくほとんどの人が好意的に受け止めたか、特に何も思わないか、あるいは読むのをやめてしまったのだと思われます。しかしごめんなさい。率直に申し上げると、私は今回のコラムは今までの高評価を全部ひっくり返すレベルでまずいと感じましたし、今回の第4号本紙を手に取るのはよそうかとまで思ったほど受け入れがたかったのです。あくまで私個人の感想です。大変申し訳ありませんが、今回の連載コラムについての私の感想は否定的なものになってしまいます。ご了承頂けるかたのみ、以下お進みください。長いです。

私が今回のコラムを肯定できない理由は大きく3つあります。1つめは「大多数の読者が置いてけぼりになる題材」、2つめは「ダブルスタンダード問題」、そして3つめは「未来や希望を語っていないこと」。まずは1つめの題材について。コラムでは、昭和と平成を振り返るのに特撮コンテンツを題材としています。きっと編集長はお好きなのでしょう。観察眼は鋭く分析視点も大変面白い読み物でした。私だってオタクの端くれですから、こんなディープな話は大好きです。しかし、「さっぽろ劇場ジャーナル」で読みたい話ではありません。比較的年齢層が高めのクラシック音楽ファンがメイン読者である媒体で、一体どれだけの読者が最後まで読みとおせるのか、甚だ疑問だからです。そして例えばゴジラなら伊福部昭の音楽があるのでまだ大丈夫かもしれませんが、残念ながら今回の題材は音楽とは関係ないようです。1面のPMFの記事のように、ほんの一部にアクセントとして入れるならともかく、音楽とは無関係の特撮の話が9割なら興味の無い人はすぐに読むのをやめてしまうと思います。折しも2019年度上半期には京アニの事件や元事務次官による長男殺害事件があり、一部の人達にはオタク的なものへの嫌悪感すら生じています。そんな今の状況で、こんな題材を取り上げたのはタイミングとしても最悪。題材に選ぶなら、前号で取り上げた国民的アニメであるドラえもんあたりがギリギリかと。「さっぽろ」という大きな看板を掲げている以上は、「わかるやつだけついてこい」の姿勢で音楽以外の話題でマニアック路線に走るのはまずいと個人的には考えます。どんなに素晴らしいことを語ったところで、読んでもらえなければ意味がないわけですから。万人受けを目指せとか内容をわかりやすくしてとか、そんなことを言っているのではありません。さまざまな読者がいる媒体に載せる文章であるなら、独りよがりになってはいけない、ただそれだけです。

2つめのダブルスタンダード問題について。前回の第3号のコラム「言葉と文化(3)-のび太の夢」には、「人間は過去の成功体験に囚われる。それは仕方がない。しかし、『あのころはよかった病』からはそろそろ足を洗うべきではないか」とありました。私は前号のコラムに大変感銘を受けただけに、今号のコラムには驚きました。悪い意味で。前号から半年しか経っていないのに、同じ書き手が過去作品のリメイクを疑いも無く題材にするなんて、一体何の冗談ですか?過去にヒットした作品のリメイク(今の時代こればっかりですね)なんて典型的な「あのころはよかった病」だと、私は素朴に思うのですが。どんなに優秀な監督が手がけようとも、またどんなに今の時代に即した見事な作品に仕上がったとしても、過去のヒットの栄光にすがっている以上は同じことです。もちろん、人間は矛盾だらけの存在ですし、好きなものについては理屈抜きで語りたくなる気持ちはわかります。それが人間の魅力でもあり、ダブルスタンダードでも個人として発信するならまだ許されるのかもしれないとも思います。しかしこれは「さっぽろ」を名乗る媒体の編集長が、札幌の代表として責任を持って発信している文章です。ダブルスタンダードは頂けないです。そして私がさらに憂えるのは、ネット上の悪意ある第三者に格好の攻撃材料を与えてしまったことです。毎号コラムはweb公開しているため、ネットにアクセスできる誰もが読めます。さらに印刷した紙媒体でも同じ内容を出している以上、取り下げたり大幅に書き換えたりはできません。編集長は札幌外のメディアにも文章を書く機会が増えてきており、今後ますます注目される存在になっていくはずです。しかし注目されればされるほど、妬みアラ探しをする輩も出てきます。そんなネット民が発言力のある人をやり込めるのに、ダブスタは非常においしいのです。編集長なら誰になんと言われても論破できそうですが、そんなつまらない対応に無駄な時間と労力を使うのはもったいないですよね。ただ、ダブスタ指摘は最初に発見した人のモノという風潮があるようですので、まだ誰も言っていないならいっそのこと私が言います。私は敵でも味方でもない一読者ですが、悪意ある第三者に言われるよりはマシかと。やり込める意図はありません念のため。「何を偉そうに。ダブスタ人間の言うことなんか信用できないんだよ!」…無理、私が痛い(涙)。

そして致命的なのが3つめの「未来や希望を語っていないこと」です。これに比べたら上の2つなんてたいした問題ではないです。今のお先真っ暗な日本で生きている私達は、誰もが未来に希望が持てず不安を感じています。時間的にも経済的にもギリギリの生活をしている人が標準になっている今、多くの人が余裕をなくしてイライラしたり攻撃的になったりしていて、とにかく息苦しいです。ささやかな趣味を楽しむことさえ罪であるかのような空気感の中で、クラシック音楽のコンサートを聴きに行くのは現実逃避でしかないのではないか、それだって長くは続けられないのではないか、あとは絶望するしかないのかと私は悲しくなることがあります。巷には怒りや嘆きの言葉はもううんざりするほどあふれかえっているのに、暗いトンネルを抜け出す光はどこにも見当たらない…。そこに登場したのが「さっぽろ劇場ジャーナル」!私は最初期に編集長が創刊への思いを語った「批評精神の躍動を願って」(下の方に当該記事のリンクがあります)および創刊号のコラムを拝読した時、「この人(編集長)は『文句ばかり言って何も行動しない人』とは違うのではないか。少しはその言葉に耳を傾けてみようかな」と思ったのです。そうでなければ、こんな小さい活字びっしりの肩の凝る文章を読もうなんて思いません。そして今までの連載コラムはすべて、最後には必ず編集長自身が考える未来を見据えた展望が書かれてありました。現状がどんなに嘆かわしいものであっても、かすかな希望の光が見えることが救いでした。編集長はその文章を拝読する限り、物事がよく見えていて目を背けたくなる現状さえもしっかりと見定めており、ただの気休めで叶わぬ望みを言っているわけではないと私は信じています。だからこそ、その発言には重みがあると感じましたし、私も自分の頭で考えようそして未来を少しでも明るいものにしようと勇気が持てたのです。

さて今回のコラム。タイトルから考えると、本来これからの未来である「令和」について書かなければならないはずなのに、ほぼすべてを昭和と平成という過去の分析に費やしています。しかも字数がつきたのか、最後は未来の展望をリメイク作品の監督に丸投げして文章が終わっています。これは完全にアウトです…。タイトル詐欺という以上に、今までの信頼をふいにしたという意味で。私は「さっぽろ劇場ジャーナル」の文章は紙でもwebでも一般公開されたものはすべて拝読していますが、たとえどんなに辛辣なことを書いていて読み手が痛みを感じようとも、編集長は必ず未来を見据えた言葉を語ってくれると信じたからこそ、私は読むのをやめずついてきたのです。だから、勝手に期待した私が悪いと言われればそれまでですが、大事な大事な未来の展望を語らないばかりか人任せにした今回のコラムに、私は大いに失望しました。私は何もその発言にすがり盲信したいわけではありません。そもそも権威的なものに異を唱える媒体が、新たな権威になるなんておかしな話です。そうではなく、お先真っ暗な今の世の中の、ほんの少し先を照らしてほしいのです。だって札幌の地域文化を言葉で牽引するメディアなんですよね?ならそれにふさわしい言葉を語ってくださいよ!その先どう進むかあるいは別の道を模索するかは自分たちで考えますから。

以上、コラムを拝読して私が感じたことを率直に書きました。相変わらず重くて恐縮です。そして何か大きな勘違いをしていたらごめんなさい。今回のコラムについては、1面のPMFの寄稿文で似た内容を書いているため、思い切って切り口を変える必要があったのだと拝察しますし、たまには毛色の違う記事を出してみようという試みだったのかもしれません。それでも、杞憂であれば良いのですが、もしこんなところで読者が離れることがあってはあまりにももったいないと私は思うのです。こんなこと考えるのは私だけ?とためらいつつも、こんなふうに読んだ読者もいますよということで。でも一匹見つけたら20匹から30匹は隠れていると言いますから(?)、私みたいに考える人は他にも潜んでいるかも?皆さん隠れてないで出てきてください!一斉に出てきて編集部の皆様をあたふたさせましょう(笑)。


私は本来、少しでも違和感を覚えたらスパッと関係を断ち切り別のステージに進むタイプです。人間関係においてもドラマやマンガ等の創作を楽しむにしても、長く続いたものは数えるほどしかありません。そんな私はしかし、確かに引っかかることがあったにもかかわらず、「さっぽろ劇場ジャーナル」を見限ることができませんでした。なんだかんだ言いながらも結局今回の第4号本紙を手に取り、そして自分が感じた違和感を整理した上で、もう少し付き合ってみようかなと思い直したのです。

www.sapporo-thj.com


上の「批評精神の躍動を願って」に書かれている「聴き手も、表現の語彙や論理に習熟するほどに、よりよく聴くことができるようになる。様々な意見に触れることで、その語彙や論理はより洗練されてゆく」のに、私はやっと入り口に立ったばかり。まだまだこれからなんです!偶然にも私がアニメレビューブログからクラシック音楽ブログにシフトチェンジしたのとほぼ同じ時期に、「さっぽろ劇場ジャーナル」創刊号が発行されました。不思議なご縁を感じ、以来ずっと愛読しています。記事を拝読することで、本質的なことは何もわかっていない私のフワフワしたイメージが整理でき、聞きっぱなしでは得られない深い理解、そして感激を少しでも鮮明に記憶する手助けになりとても助かっています。余生の趣味にしようくらいに考えていたクラシック音楽鑑賞、まさかこんなに深く味わい楽しめる可能性があるなんて思ってもみませんでした。「可能性」と書いたのは、まだ私自身は底が浅すぎるからです。私は今はまだ思いつきしか語れませんが、私自身が今より物が分かるようになればもっとクラシック音楽鑑賞は楽しくなると思っています。その一つの手助けとなる媒体、同じ札幌の地で同じコンサートを聴き専門的な視点でレビューしてくださる「さっぽろ劇場ジャーナル」があるのは何よりありがたいこと。今回私は否定的なことも書きましたが、それだって考えるきっかけを提示してくださっているからできることで、大変感謝しています。私はこれからも「さっぽろ劇場ジャーナル」の記事を読みたいですし、さらに自分自身が変化した数年後に過去記事を読み返したいとも思っています。そしてこのブログ記事の冒頭で「未来の私のために」と書いたように、つらいけど自分が書いたものも同時に読み返すつもりです。将来の私が、「何勘違いしてるの私。しかもムダに長い!」と今の自分にツッコミ入れられるようになるため精進します。そんな未来が楽しみです。


最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c