自由にしかし楽しく!クラシック音楽

クラシック音楽の演奏会や関連本などの感想を書くブログです。「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ(http://nyaon-c.hatenablog.com/)」の姉妹ブログです。

HTBノンフィクション「札幌交響楽団 喝采」(HTB制作・2019年3月15日放送) レビュー

今回レビューするのはHTB制作のドキュメンタリー番組、HTBノンフィクション「札幌交響楽団 喝采」(2019年3月15日(金)深夜0時50分放送)です。

www.htb.co.jp

放送内容の概要につきましては、上のリンクを参照願います。

昨年12月に「ドキュメンタリー札幌交響楽団 アルプス交響曲」を視聴して以来、私は札響を追いかける番組の放送を心待ちにしていました。12月の番組は後日BSで全国放送があったので、今回も全国放送があるといいなと思います。「水曜どうでしょう」(※個人的に大ファンです)で全国区になったHTBさんですが、こんな良質なドキュメンタリー番組も制作されていること、そして札響の良さをもっと全国の皆さんに知って頂きたいです。なお、私は12月の番組についてもレビューを書いています。以下のリンクからどうぞ。

 

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

では本題に入ります。私の感想はあくまで個人的な考えですので、参考程度に留めて頂きたくお願いいたします。また、ローカル放送で北海道以外にお住まいのかたには申し訳ないのですが、雰囲気だけでも読み取って頂けましたら幸いです。もちろんどなたでも、記事の内容に間違いを見つけた場合はおそれいりますが指摘くださいませ。


今回の「喝采」も大変見応えありました!深夜放送だったのがもったいない。私は録画してから観ましたが、ツイッターではつい夜更かししてリアルタイム視聴したという札響ファンのかたもちらほら。わかります、うっかり見始めたら止まらないですよね。我が街のオーケストラ札響は、hitaruのような大劇場で一流の共演者達と一緒にオペラを創りあげることもあれば、空調や音響設備のない地方の体育館に自家用車で出向き演奏することもあります。その幅広さと懐の深さが、厚かましくもまるで自分のことのように誇らしくなりました。多くのかたが登場しましたが、とにかく音楽を届ける人も聴く人も画面に映ったすべての人の表情がとても良くて、ずっと見ていたいと思える充実した85分間でした。

昨年12月の番組が一つの演奏会をじっくり掘り下げるスタイルだったのに対し、今回の「喝采」は2018年シーズン4月から12月までの活動を追いかける形になっていました。北海道の季節の移ろいを背景に、様々なシーンでの演奏があり、それぞれの会場で観客との一期一会があります。入念に準備をしてきた多くのスタッフや奏者の思いがあるのと同時に、聴く側にもそれぞれの人生がありその音楽に喜んだり涙したりと受け止め方は様々です。当たり前のこととはいえ、演奏会は一つとして同じものはない贅沢な一度きりの時間なのだと改めて認識しました。

順番に見ていきます。初めは「アルプス交響曲」です。昨年12月に放送された番組の単なるダイジェスト版ではなく、未公開シーンもたっぷり。例えばライブラリアン中村さんの「書き込みが蓄積された楽譜は金銭的なもの以上の価値がある」旨のお話に対し、奏者が実際に楽譜に鉛筆で書き込みするシーンを見せて頂けて嬉しかったです。そして今回の放送で驚いたのは、舞台袖の扉の向こう側で演奏するバンダ(別働隊)の存在です。演奏ってステージ上だけではないんですね…。専属の指揮者がついているし、客席から姿は見えないのにきちんと正装しているしで、見ていてとても新鮮でした。また、こういった演奏が活きてくるためにはステージマネージャーの働きが欠かせないことも知りました。リハーサルでは、扉を全開にしたステージマネージャー田中さんに、閉める指示をしたバーメルト氏。聞き比べた上で「きみ(田中さん)の勝ちだね」とおっしゃったときは会場全体に笑いが起きてました。田中さんも余裕の表情でサムズアップして、とってもダンディなんです。ちなみにステージマネージャーの田中さんは、番組を見る限りではどうやら黒地に個性的なプリントがされたTシャツを着るのが信条の様子。ちなみに演奏会本番ではスーツでした。なお昨年12月の放送時、私は田中さんをステージマネージャーとは存じ上げず、Tシャツにばかり気をとられてツイッターで失礼なことを呟いてしまったことを告白します。ごめんなさい!


次は地方公演について。昨年7月に『イチオシ!』道内ニュースで放送された特集の再編成のようです。私はそのときはブログ記事ではなくツイッターで簡単に感想を呟いていました。以下に貼り付けておきます。

 

札響の年間およそ120回の公演のうち、約50回が地方公演なのだそう。北海道はでっかいどうで移動距離は半端ないはずなのに、団員達は自家用車に相乗りして会場に赴くようです。感謝すると同時に、なんとかならないのかなと具体策は出せないままぼんやり思いました。6月の稚内での公演では、毎年楽しみにしているという年配女性のお二人が印象的でした。「北海道の地元の交響楽団だって胸張りたいですよね」…同感です、私もご一緒に胸張りたいです!「生きていて動ける間は通いたいと思います」…その心意気がとても素敵です。年に一度の楽しみがあれば普段の生活にもきっとハリが出ますよね。そして稚内の会場にかなり早い時間に来て自主練をしていたのがフルート副主席奏者の野津さん。ご自身を「不器用」とおっしゃっていましたが、その実直さに頭が下がります。フルートといえば、主席奏者の髙橋さんが番組内でインタビューに応える機会が多く画面にもよく映っておられます。実際すごい演奏をされるかただというのは私もこの耳で確かめてきて知っています(※記事の末尾にその演奏会レビューへのリンクがあります)。そこに序列はなく良し悪しの話でもなくて、目立つ人もいればそうでない人もいる。そんな個性的な約70名の団員全員とまではいかずとも、多くのかたにマイクとカメラを向けて生の声を拾ってくださった番組に感謝です。奏者の誰もがそれぞれの信念を持つ独立した芸術家であり、一つの音楽を奏でるために全員が方向性をすりあわせて演奏し、唯一無二の札響の音を創りあげていることを再確認しました。

7月の夕張中学校の体育館での演奏では、ステージマネージャー田中さんがパーティションを利用して音響を工夫している様子もじっくりと。また演奏の合間には楽器紹介も。オーボエ副首席奏者の岩崎さんが、外して見せていたリードを挿してすぐにさらっとチャイコフスキー白鳥の湖」ソロパートを奏でたときは素直に驚きました。確かオーボエってすごく音が出しにくいんですよね…それを夏の暑い体育館(湿気は木管楽器とリードに酷だと思われます)でも、ぱっとリードを挿していきなり難なく演奏してみせるとは!只者じゃないです。そんな一流奏者ばかりの札響の生演奏を目の前で聴くという希有な経験をした中学生たち。足でリズムをとっていた子も目をキラキラしていた子も口をポカーンと開けていた子もハープを「人魚が弾くやつ」と形容した子もみんな、良い経験になりましたよね。キミたちの未来に幸あれ!なお、テロップで「チャイコフスキー くるみ割り人形より 花のワルツ」と出た曲はルロイ・アンダーソンの「舞踏会の美女」が正しい曲名だそうです。ツイッター上で教えて頂きました。ちなみに他の曲名についてのファクトチェックはしていません、あしからず。

続いては新人ヴァイオリニスト赤間さんを追いかけます。旭川で生まれ育った赤間さんは、4歳でヴァイオリンをはじめ、音大付属の高校進学でお母さんと一緒に上京。大学卒業後に初めて受けたオーディションで札響に入団したそうです。ちなみに経歴紹介で静かに流れたBGMは第九の第3楽章だと思います(※違っていたら申し訳ありません)。厳しいオーディションを勝ち抜いてあがりではなく、まずは試用期間。プロ集団の中でついていくのは大変なことで、帰宅してからも防音室で鏡を見ながら自主練を続けます。一人暮らしの冷蔵庫にはお母さんの作り置き料理があり、またご両親は演奏会を聴きに毎月旭川から札幌へいらしているそう。音楽家として一人前になるためには、ご本人の才能と努力が必要なのは当然のこと。しかし、一人の若い音楽家が目標に向かってひたむきに進む陰には家族の全力サポートがあるのですね。札響の一員として歩み始めたばかりの赤間さん、これからのご活躍を応援しています。

2018年は札幌文化芸術劇場 hitaru がオープンした年でもあります。オープン2ヶ月前に札響が初練習したときは、札響の名誉音楽監督で札幌文化芸術劇場芸術アドバイザーでもある尾高さんが「弦楽器を50センチ前へ」と具体的に指示しながら調整していました。最良のホールであっても、さらに良いものを目指すため妥協はしないその姿勢にただただ感服です。こけら落とし公演の「アイーダ」リハーサルでは、天才と名高い若き指揮者バッティストーニさんの気迫に圧倒されました。「彼の心で音楽が燃えているのを感じる。120%の自分たちの実力が出せているかも」とコンマス田島さん。バッティストーニさん談「札幌交響楽団はプロフェッショナルで素晴らしいオーケストラです。私のオペラの経験を共有できていますし、オペラへの挑戦は札響にとって必ず価値あるものになるでしょう」。そして本番。超駆け足での映像でしたが、これは本当に生で鑑賞できたら最高だったろうなと、行けなかった一人として思いました。しかし本来見えないオーケストラピット内をカメラがじっくり映してくれたので、演奏する姿を見たい派の私としてはうれしかったです。トランペット主席奏者の福田さんが「感動しっぱなし。オペラはずっとやっていたいくらい」とおっしゃっていて、長丁場の演奏でも奏者のかたがそんな気持ちで演奏してくださっているのを嬉しく思いました。そして終演後にマイクを向けられた観客の皆さんはどなたも喜びに満ちた表情で公演を讃えていました。コンマス田島さんが「(届ける側が)心から盛り上がり、お客さんが喜んでくれる、最高の循環」とおっしゃっていたのが忘れられません。

そして2018年9月にはあの地震がありました。その約2ヶ月後の11月初旬に、札響コンミスの大平さんがヴァイオリンを持って自ら運転する車で被害が大きかった被災地へ。避難所にもなった公民館等をまわってソロコンサートを行ったそうです。単身で赴き、会場設営の指示も行い、会の進行もした上でのソロ演奏。耳なじみのある曲が次々と流れ、お客さんの中にはそっと涙を拭く人も。小さな子を抱いた若いお母さんらしき人が顔を伏せて涙していた映像では、私も思わずもらい泣きです。おそらく彼女はあの日以来、家族の安全を確保し、生活を立て直すのに精一杯で、ご自分のことを顧みる時間はなかったのかもと想像しました。また演奏後にひときわ大きな拍手を送り、明るい表情で「元気をもらいました」とおっしゃっていた女性も印象的でした。「頑張れ」といった励ましの言葉は時に暴力的です。そんな一方的な言葉ではなく、美しいメロディがそっと気持ちに寄り添ってくれる…こんな尊いことはそうそうないと思います。被災地にて普段着で演奏を聴きにいらした被災者の皆さんは、例えば何万円もするチケットを買って遠方の札幌までオペラを観に行くことは、もしかするとないのかもしれません。それでもこんなかた達にこそ音楽は必要なのだと、番組を見て私はそう思いました。その日その日を生きていくにあたって衣食住が優先されるのはその通りではありますが、張り詰めた精神を癒やしてくれる心の糧がなければ明日に向かって行くことはできないですよねきっと。音楽の力、私も信じたいです。東日本大震災では故郷の仙台のお母さんを思ったという大平さん、本当にありがとうございます。

最後は年末恒例の第九。札響合唱団出身のお若いソプラノ歌手・中江さんを軸に話が進みました。リハーサルの際にはトランペット奏者の前川さんと会釈。その前川さんは札響歴40年の大ベテランで、65歳定年により12月末での退団が決まっているそうです。35年ほど前から札響とご縁がある指揮者の大友さんは、札響を「伝統が引き継がれてとてもいいチームになっていると思います」とおっしゃっていました。そんな大友さん指揮による第九、ソプラノ歌手・中江さんやトランペット奏者の前川さんはもちろんのこと、多くのかたのアップを映してくれるカメラワークがありがたかったです。私はおなじみの第4楽章の合唱を聴くとやはりほっとします。日本人にすっかりなじんでいる第九、毎年コンサートを聴きたくなるのはわかります。同じ曲とはいっても、演奏会にまったく同じものはないわけですから。その時々で携わる人はまるで違い、音楽を届ける人も聴く人もすべてに思いがあるわけで、カメラ越しの鑑賞ではありますがやはり生演奏っていいなとしみじみ思いました。番組は第九を聴きながらそのままエンディングに。

内容は盛りだくさんで、とても見応えのある番組でした。今回は長期密着の取材と撮影はもちろんのこと、素材が多いため編集もさぞかし大変なことだったと拝察します。12月の番組ほどは演奏をじっくり楽しめる時間的余裕はありませんでしたが、限られた時間の中でも曲の良いところをうまく拾ってくださっていました。また細かいシーンを無理なくつなぐために、ナレーションでの説明が多くなるのは致し方ないかもしれません。しかしアナウンサーの語りはお二方ともとても落ち着いていて、邪魔にならずすっと入ってきました。そして番組全体の構成は、最初はチューニングから入り、第九の第1楽章でオープニング。第九の第4楽章の合唱に重ねてエンドロールが流れ、最後は拍手喝采でお開きと、演奏会の形式に似せてあるのが良かったです。そしてエンドロールは圧巻です!先頭に「札幌交響楽団」と出て、コンサートマスターから始まり奏者全員のお名前が出てきました。続いてステージマネージャーやライブラリアンといったスタッフ全員のお名前も。一連の協力団体等の名前が出て、HTBの番組制作スタッフは最後に。これだけ多くのかたが創りあげた札響の音楽そしてそれを私達に伝えてくださった番組に、部屋でテレビを見ている私達視聴者も拍手を送らずにはいられなくなりました。

全体を通して、あえての苦言は3つだけです。簡潔に。1つめ「個人情報がダダ漏れの映像がある」こと。詳細はここには書けませんが、具体的なシーンにつきましては番組プロデューサーにツイッター経由で直接お伝えしましたので、再放送や全国放送がある場合はご対応頂けるはずです。2つめ「地震の地滑りの映像にBGMを使った」こと。曲は第九の第2楽章で、もしかすると番組全体を第九で始まり第九で終わる形にする意図があったのかもしれません。しかし、あの地震では実際に死者が多数出て、復興はまだまだこれからであり、私達の記憶だって生々しいのです。にもかかわらず、ショッキングな映像に重ねて聞き覚えのある曲が流れたのはまるでドラマかバラエティ番組のような演出に感じられ、私は強い違和感を覚えました。あくまで個人的な考えですが、間違いなく私達の心身に爪痕を残したこの厳しい現実に対して、重ねて良い音楽はこの世には存在しないと思います。しかしこれは私の頭が固いだけかもしれませんので参考程度に。3つめ「エンドロールに指揮者の皆様と札響合唱団も入れてください」。せっかくの素晴らしいエンドロールに水を差して申し訳ありません。でもここまでやるのでしたら、なぜ指揮者と札響合唱団が入っていないの?とつい考えてしまうのがもったいないなと感じました。

少しだけ気になった点を述べましたが、言うまでもなく大満足の番組でした。HTB開局50周年ドラマ「チャンネルはそのまま!」(※道民特権でリアルタイム視聴しましたが、もう最高でした!こちらも全国放送希望です)にマンパワーが持って行かれている中、短い期間に番組を仕上げるのは至難の業だったと存じます。良い番組を本当にありがとうございます。今回は深夜にひっそりと放送でしたので、近いうちに再放送や全国放送をぜひお願いします。そして札響を追いかけるドキュメンタリー、きっとシリーズ化して頂けると信じています!次回作を気長にお待ちしています!


おまけ。12月の番組に背中を押されて、私もついに定期演奏会デビューしました。本当に行ってよかったです!こちらのコンサートは今回の放送分には含まれていませんが、もしかすると次回以降の番組で取り上げられるかもしれません。私の愛が重いレビュー記事は以下のリンクからお進みください。

 

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 長くなりました。最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

 

『ルードウィヒ・B』手塚治虫(著) 読みました

今回の読書感想文は『ルードウィヒ・B』手塚治虫(著) です。手塚治虫先生の逝去により、未完の絶筆となった作品です。

 

ルードウィヒ・B 1 (潮漫画文庫)

ルードウィヒ・B 1 (潮漫画文庫)

 

 

私が手元に持っているのは「潮ビジュアル文庫」の全2巻。既読の漫画ですが、今回レビューを書くにあたり読み返しました。

タイトルからおわかり頂ける通り、ルートヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェンLudwig van Beethoven)の物語です。いわゆる伝記ではなく、架空の登場人物(フランツというよくある名前の貴族)が密接に関係するフィクションになっています。なお「ルードウィヒ」という表記については、巻末エッセイに簡単な解説がありました。

以下に本の感想および個人的な考えを書いています。今回はややネタバレが多いです。既にお読みになったかたおよびこれから読む予定でネタバレは気にならないかたのみ、「続きを読む」からお進みください。

続きを読み進めてくださる皆様へおことわりです。感じ方は人それぞれですので、私の考えはあくまで参考程度にとどめて頂けますようお願いいたします。また私は育った家庭の考えで漫画や小説を子供の頃に読ませてもらえず、親元を離れてから少しずつ読むようになったクチです。手塚作品も指折り数えるほどしか読んでいません。そのため読み方や解釈が一般的ではない部分があると思われます。そこは申し訳ありませんが大目に見て頂けましたら幸いです。もちろん、ひどい間違いは指摘くださいませ。

 

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札幌交響楽団 第615回定期演奏会(金曜夜公演) (2019/01) レポート

私にとっては初の札響定期演奏会です。ずっと前から気になっていたコンサートにもかかわらず、年末の第九そして今回のブラ2の2公演を海外オケの1公演とトレードした個人的な経緯からチケットを買えずにいました。また前の週にインフルエンザに罹患してしまい、病み上がりだったのですが「やはり行きたい!」と思い、急遽チケットを購入。快く送り出してくれた家族に感謝です。

私は病気を人に移す時期は過ぎていたものの、咳が残っていたため咳止め薬と龍角散を服用しマスク着用した上で出発。最寄りの地下鉄駅から外界に出るとKitara隣接の公園は完全に雪景色で、静寂の中で雪を踏みしめるグッグッという音を聴きながら会場に向かいました。

なお、1/30には2曲目のみが異なるプログラムで東京公演が予定されています。そちらについて指揮のマティアス・バーメルトさんへのインタビュー記事がweb上にありましたのでリンクを貼っておきます。1曲目モーツァルトと3曲目ブラームスの解釈について理解の手助けになると思います。

ebravo.jp


また、弊ブログ記事『「ドキュメンタリー札幌交響楽団 アルプス交響曲」(HTB制作・2018年12月22日放送) レビュー』へのリンクも貼っておきます。「マティアス・バーメルトさん指揮の札響定期演奏会に行きたい」と私の背中を押したのは、この番組と言っても過言ではありません。

 

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今回はこちらの演奏会の感想を書きます。いつものように素人コメントであることをご了承下さい。なお、ひどい間違いは指摘頂けますと助かります。


札幌交響楽団 第615回定期演奏会(金曜夜公演)
2019年1月25日(金) 19:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
マティアス・バーメルト
管弦楽
札幌交響楽団

【曲目】


まず入口が「チケット」「会員証」の2種類に別れていることに軽く驚き、そうか今日は定期に来たんだった…と再認識しました。ガチ勢に私のような一見さんが混ざるなんて…とおそるおそるでしたが、ロビーコンサートを聴きながらだんだんと気持ちがほぐれていきました。演奏を聴きながらロビーを見渡すと、「私ももっと自然体でいよう」と思えてきたのです。割と皆さん普段着で気負わずに来場している印象で、良い意味でクラシック音楽を身近に感じておられる方達とお見受けしました。またご家族やお友達同士でいらしたかたもいれば、おひとりさまも大勢いらっしゃって、とても自由な印象でした。勝手に高い壁を作っていたのは自分のほう。直接言葉を交わすことはありませんでしたが、クラシック音楽を愛する皆さんとあの場で生演奏を共有できたことはとても幸せでした。

私はドヴォルジャークの「アメリカ」は曲名は聞き覚えがあったものの、演奏を聴くのは初めて。約15分の短縮版でしたがインパクトのある曲で、個人的にはベースにずっと「シュッポシュッポ」と汽車が走るような音が聞こえていました(※気のせいかも)。至近距離で演奏を拝見できる貴重な機会に感謝です。演奏後、第1ヴァイオリンのコンミス大平さんが第2ヴァイオリンの織田さんをハグ。プログラムによると織田さんは1月末で退団が予定されているのだそうです。なお配布されたプログラムは、各曲の解説には楽器構成に加え「札響演奏歴・初演・前回の演奏」の情報まで書かれてあり、また「おしらせ」記事等が大変充実していました。こちら大事に保管しようと思います。

私はCD販売や展示をざっと見てからホールに入りました。ステージでは自主練をされている奏者のかたが数名。ヴィオラのかたがブラ2第1楽章の美メロ(少し「ブラームスの子守歌」と似ているところ)を練習されていて、ああやはり聴かせどころなんだわ…と少し嬉しくなりました。

きっと今回の選曲テーマなのでしょう。ポスターには「夜想、協奏、交響」とありました。そして私はもう一つ隠しテーマを見つけました。偶然なのかもしれませんが、メインのブラ2およびモーツァルトの最初の曲とアンコール曲が「ニ長調」。ネット情報によるとニ長調モーツァルトの曲には多いのだそう。しかしブラームス短調の曲の印象が強いです。にもかかわらず、ブラームス交響曲第2番はニ長調。そしてこれまた偶然かもしれませんが、先日プラハ響の演奏会で聴いたブラームスの「ヴァイオリン協奏曲」もニ長調でした。改めて聴くとこの2曲は冒頭部分が少し似ている気がします。調べたところ、「ヴァイオリン協奏曲」op.77は1878年、「交響曲第2番」op.73は1877年に作曲されていて、いずれも避暑地ペルチャッハで作曲を進めたようです。ちなみに同じくペルチャッハではヴァイオリンソナタ第1番ト長調『雨の歌』op.78が1879年に作曲されています。いずれも美しい曲ばかりで、ペルチャッハはきっと良いところなんだろうなと想像をかき立てられます。もちろんこの頃のブラームス交響曲第1番のプレッシャーから解放されて、心穏やかに創作活動ができた時期でもあるのだと思います。夏に生まれた曲を真冬の札幌で聴くのも何かのご縁。モーツァルトでは当然かもしれない「伸びやかさ」は、ブラームスではある意味レア。開演前は新たな扉が開かれる期待感でワクワクしていました。

オーケストラメンバーが入場し(コンミス大平さんはパンツスーツからロングスカートにお着替えしていましたね)、続いて指揮のマティアス・バーメルトさんの登場。いよいよ開演です。最初の曲はモーツァルト「セレナータ・ノットゥルナ」。楽器の構成は、弦楽の4名(第1ヴァイオリン・第2ヴァイオリン・ヴィオラコントラバス)のソリストと各弦楽器、およびティンパニ(胴体が金属製のものでした)で、他の打楽器および管楽器はナシの小規模なもの。チューニングにオーボエがいないのは新鮮でした。チェロではなくコントラバスがソロとして入ってくるのでなじみのある弦楽四重奏の構成とも少し違っていて、また密かにティンパニが良い仕事をしているような印象。ソロの部分も全員参加の部分も聴き応え十分で、限られた楽器編成でも各パートが最大限に魅力を発揮していたように感じました。15分ほどの短い曲ですが、弦楽器の音色を存分に堪能でき「私やっぱり弦楽器好き」と再認識。札響を形容する「透明感のあるサウンド」とは、弦楽器の響きによるものなのかも?とも思いました。ちなみにこの曲での指揮のマティアス・バーメルトさんの動きは少なく、奏者の皆様のペースにほぼ任せていたようにも感じました。なお、ソリストは第1ヴァイオリンはコンマス田島さんだとわかりましたが、他のソリストのかたはお名前がわかりませんでした。続くマルタンの曲も同様です。申し訳ありません。

2曲目はマルタン「7つの管楽器とティンパニ、打楽器、弦楽のための協奏曲」。これまた珍しい楽器編成の曲で、1曲目とは違い今度は管楽器が主役。指揮者を要にして扇状に7名の管楽器ソリストが並ぶ様子は壮観でした。またティンパニもソロ扱いで重要なポジションに。他の打楽器と弦楽器は縁の下の力持ちとして支えます。プログラムによると、札響は過去に1回だけこの曲を演奏したことがあって、その時のソリストはPMF2001の皆様だったようです。ということは、札響オリジナルメンバーから各管楽器のソリストを出して演奏するのは今回が初。激レアなこの演奏を拝聴できたことに感謝します。私は漠然と「弦楽器が好き」と思っていて、失礼ながら管楽器に注目することは今までほとんどなかったため、ソロで活躍する管楽器がとても新鮮で「もう一度聴いてみたいな」と素直に思えた演奏でした。フルートがあんなに雄弁だとは知らなかったですし、オーボエは優雅なだけじゃない力が感じられました。ついオーボエに耳を奪われがちでしたが、オーボエに負けない美メロを奏でるクラリネットファゴットにも個性があると今更ながら認識。ホルンは長くのばす音だけでなく小刻みに音を変化させながらメロディを奏でる演奏もあるのだと知りました。トランペットもトロンボーンもソロで主旋律を演奏して主役になれるし、他の個性的な楽器達と喧嘩することなく調和するのも初めてわかった気がします。金管楽器はけたたましいと今までこっそり思っていたことを反省…。前半2曲を聴き終えた時、私は静かに感動していました。演奏が良かったのはもちろんのこと、客演でスター的なソリストを迎えなくても札響には既に素晴らしいソリストが管楽器にも弦楽器にも揃っていると知ったのが何より嬉しかったです。後半ブラ2がお目当てだったはずなのに、前半2曲に完全に打ちのめされたのが嬉しい誤算でした。

休憩を挟み、3曲目はいよいよブラームス交響曲第2番」。第1楽章が穏やかに始まり、だんだん盛り上がってきたところであの美メロが。湖畔の心地よい涼しい風に癒やされた感じで思わず涙…待て待てまだ早いと気を取り直して演奏に集中しましたが。素朴でも美しいメロディが次々と来て、聴いていてだんだんと心穏やかになってきます。基本は伸びやかで自然の美しさを感じる部分が多いですが、時に強風や雷鳴のような部分もあり。また、バカンスをウキウキ楽しんでいるというよりは、都会の喧噪から離れ自然に身を置くことで自分の内面を見つめ直している感じ。私の感じ方が正しいかどうかはわかりませんが、演奏を拝聴して「ブラームスらしい」人間の本質を見ようとする思考のようなものが感じ取れました。そういった意味では「ブラームスの田園交響曲」というよく知られた形容は当たっていないのかも。ベートーヴェンの田園は好きなんですよ、念のため。最後は全員参加で大盛り上がりのフィナーレ。金管楽器の力強いメロディが印象的で、札響の「パワフル」なサウンドを存分に聴かせて頂きました!

他のロマン派の作曲家が肥大化させたオーケストラの編成を、ブラームスはベートヴェンの時代と同じ編成にしています。完全に私の推測ですが、援軍を頼まずに札響オリジナルメンバーで演奏できるというのも東京公演のメインに選ばれた理由の一つかもしれません。そしてブラームスの4つの交響曲のうち、演奏機会が多い1番4番ではなく2番を選んだというのがまたニクイです。4つとも良い曲で優劣はつけられませんが、2番は他とは毛色が違います。実を言うと私は2番は4曲の中では一番録音を聴く機会が少ない曲でした。嫌っていたわけではないのですが、何となく他の3曲と違って「らしくない」と思っていたのです。しかし今回初めて生演奏を聴いて、食わず嫌いだったとはっきりしました。それどころか2番が猛烈に愛しくなりました。頑張って頑張って構築したブラ1も大好きですが、1番をふまえて2番を聴くと誰にも遠慮せず素直な気持ちを表現できたのかな?と感じ、まるで彼のお母さんになったかのように心から「よかったね」と思えてくるのです。今回の演奏を拝聴して私自身も素直になれた気がします。ツイッターで少しふざけましたが、お肌のコンディションが良くなる嬉しいおまけは本当ですよ。余談失礼。

通常、定期演奏会でアンコールは行わないそうですが、今回はアンコールがありました。冒頭を少し聴いただけで「たぶんモーツァルト」と私は勝手に推測。当たっていてよかったです。1曲目同様、弦楽器のみの編成の曲で、札響の弦の美しさを再認識できました。第3楽章だけだったので、機会があれば最初から最後まで通しての演奏を聴いてみたいです。

そして、1月末で退団される第2ヴァイオリンの織田さんに花束が。マティアス・バーメルトさんが彼女の手を引いて指揮台の方へ連れて行き、観客に一礼。戻る際にバーメルトさんが織田さんの手の甲にキス!会場がわーっと盛り上がったところ、バーメルトさんが両手を下に向けお静かにのポーズをして笑いが起きました。私、マティアス・バーメルトさんと札響の皆様にお目にかかれて、そして生演奏を聴けて本当によかった。楽しかったです!ありがとうございました!

私は良い演奏を聴けて満足なのは間違いありません。しかし今回座席がちょっと惜しかったです…。S席とはいえ第1ヴァイオリンのほぼ目の前で、ステージの後ろの方が見えなかったのと、ヴァイオリンの音が強く聞こえてバランスが悪かったかもしれません。直前だったため、とあるプレイガイドのオンラインストアで購入したのですが、選べた席はそこしかありませんでした。会場を見渡すと中央のSS席に近いS席にも空きは沢山あったのに…。次からは直接Kitaraチケットセンターで購入しようと思います。

お開きの後、ロビーには奏者の方が何名かいらして、お客さんと写真撮影に応じたりお話をされたり。その様子はとてもまぶしかったのですが、私は何とお声をかけたらよいかわからず、そっと会場を出てしまいました…。またバーメルトさん指揮のCDを購入すればサインを頂けるとのことでしたが、今回はそこにも参加できず。ちょっと心残りです。しかし今後またお目にかかれるのを楽しみにしています。私は当面は定期会員としてではなく一回券で時々お邪魔する形になりそうですが、気になる回には万難を排してうかがいます。

 

今回お邪魔した金曜夜公演、空席が目立ちました。冬真っ盛りの夜ですし、演目も玄人向けな印象だったので結果的にそうなってしまったのかもしれないのですが、もったいないと思います。私を含めツイッターでそうつぶやいているかたは多かったです。しかしどうやら土曜昼の公演は金曜夜より客入りは良く、しかも今回の場合は金曜夜からのリピーターがいつもより多かったとのこと。そのリピーターのお一人によると「土曜昼は金曜夜よりさらに良かった」とのことです。定期だと同じプログラムを2回聴くという贅沢もできるので、私も事情が許せばそうしてみたいなと思いました。

なお「さっぽろ劇場ジャーナル」さんによる専門的なレビューは第3号の誌面に掲載されると思われます。そちら心待ちにしています。


おまけ。先日のプラハ響の演奏会レビューへのリンクを貼っておきます。肝心の「音」のことを何も具体的に書けておらずもどかしいですが、こちらも良い演奏会でした。

 

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 


最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

 

プラハ交響楽団ニューイヤー名曲コンサート 札幌公演(2019/01) レポート

私にとっては年明け初めてのコンサートかつ初hitaruです。ベルリン・フィルコンサートマスターである樫本大進さんがソリストで、しかも大好きなブラームスのヴァイオリン協奏曲!それだけですぐに飛びついて、発売開始直後にチケット購入し、当日を心待ちにしていました。

今回はこちらの演奏会の感想を書きます。いつものように素人コメントであることをご了承下さい。なお、ひどい間違いは指摘頂けますと助かります。

プラハ交響楽団ニューイヤー名曲コンサート 札幌公演
2019年1月10日(木) 19:00~ 札幌文化芸術劇場 hitaru

【指揮】
ピエタリ・インキネン
【ヴァイオリン】
樫本大進
管弦楽
プラハ交響楽団

【曲目】

 


プラハ交響楽団の皆様、ようこそ札幌へ!私達地方に住む人間が、世界的なソリストと指揮者そしてオーケストラの生演奏をご近所で聴けるのはとてもありがたいこと。雪の季節で飛行機には不安もある中、はるばるお越しくださったことに大変感謝しています。

www.nhk.or.jp

樫本大進さん、私はBSプレミアム「クラシック倶楽部」でお名前を知りました。ベルリンフィルコンマスでありながら、室内楽や今回のようなソリストとしてもご活躍のようです。私は未見ですが、過去にNHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」に出演された様子。幼い頃から才能発揮してきた樫本大進さん。転機となった恩師の言葉「自由に、楽しく」がいいですね。この録画はいつか見てみたいです。

指揮者のピエタリ・インキネンさん、私は浅学で大変申し訳ないことにお名前は存じませんでした。プログラムによると、お若いですが既に実績のある指揮者のようです。フィンランド出身のピエタリ・インキネンさんは「チェコの大使になったような思い」。樫本大進さんとは同年代で、ヴァイオリニストとして同じ先生に師事し10代の頃からの友人関係にあるとのこと。何が嬉しいって、ヴァイオリニストとして一流のかたが、数あるヴァイオリン協奏曲の中からブラームスのそれを選んでくださったこと。本当にありがとうございます!

そして演奏は良いに決まっていて、私は聴けただけで満足…で終わっても良いくらいです。でもそれではレビューになりませんので、ざっくりと感じたことを記したいと思います。

前半は「ヴァイオリン協奏曲」。第1楽章は「ブラームスらしい」重厚なオーケストラに、超絶技巧のヴァイオリンソロ。樫本さんのヴァイオリンは「重い」感じはなく、それでいて無理なくオケとシンクロしている印象でした。なお、カデンツァは誰のものかはわかりませんでした。申し訳ありません。第2楽章は「オーボエの弱々しいアダージョ」に聴いているこちらがリラックスしているところに、「歌う」ヴァイオリンソロが入ってきて心地よかったです。華やかな第3楽章は全身全霊引き込まれて、生演奏ならではの奏者と聴衆の一体感が味わえました。録音では散々聴いてきたこの曲ですが、初めての生演奏で「やっぱり私ブラームスのヴァイオリン協奏曲が好き!」と再認識しました。

ソリストアンコール。バッハのヴァイオリン独奏の曲で、あの大きなホールでの独奏にもかかわらず良い響きを聴かせてくださいました。プログラムのインタビューでは「ソリストとしては"トシ"」だと謙遜されていましたが、身体的なことや技術以上に、音楽家として積み重ねてきたことや人生経験がきっと音楽に反映されるのだと個人的には考えます。今年40歳の節目を迎えられる樫本さんの渾身の演奏を目の前で聴くことが出来たことに、改めて感謝です。

後半は「新世界より」。チェコドヴォルザークの超有名曲ですから、プラハ交響楽団の皆様にとっては演奏機会はきっと多いのだと思います。それでも当たり前なのかも知れませんが丁寧な演奏で、誇りを持って地元の作曲家の曲を演奏している印象でした。他会場でのスメタナ「我が祖国」もぜひ聴いてみたかったです。また、同じスラブ系であるロシアの作曲家チャイコフスキー交響曲第5番とピアノ協奏曲第1番の演奏にも興味があります。話を「新世界より」に戻すと、こんなまとめかたをしてはもったいないのですが「『新世界より』はやっぱり名曲」と思える良い演奏でした。静かでゆっくりしたところ、疾走感のあるところとどこをとっても印象的なメロディがリズム良く響くメリハリのある演奏で、私が元々記憶していた「新世界より」の曲の印象を良い意味で上書きしてくれました。東京のサントリーホールは後半チャイ5なのに、「新世界より」にしたのは地方だから?と私は少しだけ穿った見方をしていたのを反省します。ドヴォルジャークアメリカ滞在中に書かれたこの曲は、ウィーンでブラームスが楽譜の校正をした曲の一つ。二人の作曲家の深い絆が窺える曲でもありますし、やはり札幌公演でのこの組み合わせがベストだと今はそう思えます。あとこれは個人的なことですが、途中からノリノリのティンパニ奏者のかたに目が釘付けになりました。腕まくりして、肩や頭をゆらしながら時折マレットをくるっと回して演奏する姿が楽しくて。そう、音楽は楽しくなくちゃつまらない!どうでもいいですが、ティンパニ奏者にあまりに注目していたため私はうっかり終盤のシンバルを聞き逃してしまいました…。

アンコール。私はスラブ舞曲がハンガリー舞曲が来ると予想していたところ、当たりました(笑)。しかもスラブ舞曲の超有名どころから2曲。指揮のピエタリ・インキネンさんは1曲が終わったら舞台袖に戻り、拍手が鳴りやまずにまたステージに戻ってきてくださり2曲目を演奏、という流れでした。2回もアンコールに応えて下さりありがとうございます!

私のチケットはA席でした。後ろの方にいくのは少し我慢して、左右のバランス重視でステージに向かって真ん中あたり席を確保。ステージ後ろのデコボコの板(反響板?)のおかげか、とても良い音を堪能することができました。またhitaruは縦に長いホールで、後方の席でも案外ステージが近くなるように設計されているようです。でも、やっぱりステージ遠い(涙)。奏者の手元の動きは追えないですし、表情はおろかお顔そのものだって見えません…。オペラグラスがあればよかったのかしらん?私は演奏を「見る」のも楽しみな人なので(そのためかオペラやバレエはまだ先でいいかなと思うクチなので)、もう少しチケット代を奮発すればよかったかも?とちょっとだけ後悔しました。あと、会場に少し空席があったのがもったいないです。海外オケはやはりチケット代がネックになるのかもしれません。しかし、大勢の団員とスタッフと楽器の移動も滞在費もかかりますし、こんな良い演奏を堪能できるなら決して高くはないと思いました。

なおプログラムは別売り500円で、私は終演後に購入。人の流れが落ち着くまではロビーに残り、プログラムを熟読しました。CD販売もあり、演奏を聴いた直後だと全部欲しくなって一式大人買いしそうな勢いになってしまいました。待て待て冷静になれ、と思い直して今回は購入を見送りましたが、サインがもらえるなら2、3枚は購入したかもしれません…。ピエタリ・インキネンさんと日本フィルハーモニー交響楽団のブラ1と悲劇的序曲が!シベリウス交響曲全集も!樫本大進さんはベートーヴェンのヴァイオリンソナタ全曲演奏のCDがあるんですね。いつかブラームスのもお願いします。またもっとお若い頃のブラームス・ヴァイオリン協奏曲の録音があって、そちらはプログラムのインタビューでは「重い」と自己評価されていました。CDはおいおい購入を検討しようと思います。

hitaruはオープンしたばかりの会場です。こけら落としアイーダ』も『白鳥の湖』も見逃した私は、この会場に入り自分の耳と目で確かめるのもまた楽しみでした。実際に聴いてみて、Kitaraとの違いはよくわからなかったものの、hitaruの音はきっと良いのだと思いました。断言できないのは、私は良いホールでしか生演奏を聴いたことがなく「良くない音」を知らないためです。本当に恵まれているなとこの環境に改めて感謝です。また、hitaruは地下鉄駅に直結していて、冬だと外に出ずに済むのは助かります。そのかわり、「着いた」と思ってからが長い(苦笑)。とにかく上へ上へと登っていかなければならず、なかなか目的地にたどり着けなくて私はもう少し早めに家を出れば良かったと内心焦りました。クロークは十分な広さと多くのスタッフがいましたが、ぎりぎりに着いた私は少し並びました。開演直前に、既に着席している皆さんの前を通りながら自席に着くのは申し訳なかったです。また、帰りに一斉に人が出るときは、噂には聞いていたとんでもない混雑ぶり!スタッフのかたはエスカレーター前で人数調整をして事故防止に努めておられました。しかし、もし可能ならば階段やエスカレーターを増設した方が良いかも。そして早い段階で観客も入れた避難訓練はした方がよさそうです。今後、演奏付き避難訓練があるのでしたら私参加しますので(※結局それ・笑)。

なお、「さっぽろ劇場ジャーナル」さんによる専門的なレビューは以下のリンクにあります。

 

www.sapporo-thj.com

いつもながら分析視点が大変参考になります!「新世界より」にブラームスとの共通点を見いだせるとは嬉しい驚きでした。

知識も経験もない私は物見遊山的なフワフワした感想しか書けないですが、わからないなりに恥を忍んでレビューを残しておきたいと考えています。私の場合は奏者の名前でありがたがっているのがせいぜいでまだ聴く耳は育っていませんが、良質な生演奏を聴ける機会はやはり大切にしたいです。常に一度きりの演奏で、その都度言葉にできない感激を味わえるのはなにより嬉しいですし、きっとそうしているうちに聴く耳も出来てくると勝手に思っています。うろおぼえですが、真珠の品質を見極める訓練を新人にする際は、来る日も来る日も最高級品に触れさせ、ある日いきなり品質が劣るものを混ぜるのだと聞いたことがあります。ずっと良いものを見てきた人は、そこで見分けがつくのだそうです。ですので、まだ聴き始めたばかりの私は、最初のうちだからこそ上質なものに触れたいと思います。ありがたいことに札幌には札幌交響楽団がいて、Kitaraをはじめ良いホールが身近にあり世界的な奏者のかたも来て下さるという、大変恵まれた環境があります。もちろんただ聴くばかりではなく、曲や作曲家や奏者の背景を学び、あとはできれば楽譜が読めるようになればさらに楽しめるはず。物を知らないことを正当化するつもりはないですし、純粋に「知る喜び」を感じたいので、知見を広げる努力もできる範囲でコツコツと楽しくやっていきます。

おまけ。尾高さん&札響による『新世界より』を聴いた際のレビューは以下のリンクからどうぞ。

nyaon-c-faf.hatenadiary.com


最後までおつきあい頂きありがとうございました。


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「ドキュメンタリー札幌交響楽団 アルプス交響曲」(HTB制作・2018年12月22日放送) レビュー

今回レビューするのはHTB制作のドキュメンタリー番組「ドキュメンタリー札幌交響楽団 アルプス交響曲」(2018年12月22日(土) あさ6時半から7時55分 放送)です。とても良いものを視聴した感激を記録に残したくて本記事を書くことにしました。ローカル放送で北海道以外にお住まいのかたには申し訳ないのですが、雰囲気だけでも読み取って頂けましたら幸いです。

 

www.htb.co.jp

放送内容の概要および出演者プロフィールにつきましては、上のリンクを参照願います。

はじめに率直な印象から。ご近所に札響というプロオーケストラがいること、しかもマティアス・バーメルト氏のような世界的な指揮者が首席指揮者に就任してくださり、Kitaraをはじめ良いホールも複数あることがいかにありがたいことか!札幌はクラシック音楽を聴く環境についてはとにかく恵まれていると再認識しました。私はこの環境にまず感謝したいです。私は札幌に住んでかれこれ14年近くになりますが、せっかくの良い環境をつい最近まで意識していなかったのがもったいない。今からでも遅くはないと信じ、これからは自分の手の届く範囲で追いかけていきたいです。

番組はマティアス・バーメルト氏の来札、記者会見、歓迎パーティーに始まり、3日間のリハーサルと定期演奏会本番を追いかけます。合間に奏者やスタッフへの数多くのインタビューが入ってきました。私は普段、オケのリハを見る機会はほぼないため、その様子を垣間見られたのがまず新鮮で画面に見入ってしまいました。マエストロの言葉一つ一つにうなずきながら皆さん真剣に取り組んでおられる様子がうかがえましたが、雰囲気はとても和やか。普段使い慣れない風や雷を表現する楽器を、打楽器奏者が何度もアドバイスを受けながら繰り返し演奏しているときは、他の皆さんはにこやかに温かく見守っている印象でした。コンミス大平さんが「すごく楽しかった」とおっしゃっていたのはきっと皆さんの総意なのでは?また私の場合、音を合わせて演奏するオーケストラはつい楽団を一つの人格として見てしまいがちでした。しかし今回は個別のインタビューが多かったためお一人お一人の考えを知ることができ、お一人お一人が名前を持った演奏家であるという当然のことを今更ながら実感しました。完成度が高い演奏をすればするほど、もしかすると奏者個々人の存在は目立たなくなってしまうのかも。しかし、奏者は誰もがプライドを持って演奏をしている芸術家に違いありません。私は次にオーケストラの演奏を聴くときは、つとめて個々の演奏者のかたを注視したいと思いました。

また、ライブラリアンのお仕事についても興味深かったです。楽譜は曲毎に収納棚に格納されていて、演奏前には各パーツ毎に分けてセットするとか、著作権消滅していない楽譜はレンタルが基本で購入するより費用がかかる場合が多い(具体的な数字もお話がありました)とか。購入して保管している楽譜は、都度書き込みがされているため次使うときの手がかりが増えていき、金銭的な価値以上のものというお話にはなるほどと頷きました。いつもツイッターで情報発信してくださっているらいぶらり庵さん( @ssolibrary )の中の人!とお顔とお名前を知る事ができたのも嬉しかったです。

何と言っても良かったのはマティアス・バーメルト氏へのロングインタビューです。言葉の一つ一つに重みがあり、私は一度ざっと見ただけではもったいないと感じて、録画を少しずつ再生しながらすべて書き起こした程です。お話されているのは英語でしたので、日本語字幕があって助かりました。ここにすべては書ききれないのですが、特に印象に残った部分を厳選して引用にて紹介します。アルプスの美しい山々を映し出す映像に重ねた「アルプス交響曲」の解釈と解説についても興味深いお話がたくさんありました。しかしそれをすべて書き起こすとかなり長くなってしまいますので、大変心苦しく申し訳ないのですが今回は割愛いたします。

私の野望は世界一の指揮者になることではなく、札響にとっての最高の指揮者になることなのです。

ほとんどの音楽をオーケストラは指揮者がいなくても演奏はできるのです。そのオーケストラが何を必要としているのか見極めなくてはなりません。もうすでに演奏出来ていることへの指示はそのオケにとって必要ないのです。実際これまで多くの指揮者がオケの演奏の邪魔をするということをしてきました。指揮者はオーケストラの演奏を助けるために精一杯のことをしなければなりません。

どんなオケを指揮するとしてもまず抱かなければいけない気持ちは、演奏するメンバーに楽器の演奏をお願いする気持ちです。そしてメンバーからは逆に『指揮をお願いします』という気持ちを持たれること。その根底にあるのは、お互いを信頼し尊敬することです。


謙虚で誠実…そんなありきたりな言葉では表現できません。良い演奏を聴かせて頂けるなら人間性や発する言葉は二の次三の次で構わないという建前が瞬時に吹き飛ぶインタビューでした。こんなかただからこそ、団員の投票でダントツで選ばれ、待ち望まれての首席指揮者就任だったのですね。本当に、こんなかたが我が町の札響の首席指揮者を引き受けてくださったことに改めて感謝したいです。

リハーサルでは強弱の特に「弱」について丁寧に追求している印象でした。指揮者になる以前は木管楽器を演奏されていたとおっしゃるマティアス・バーメルト氏が、弦楽器の奏法についても詳しく指示しておられました。バーメルト氏は「すでに演奏出来ていることへの指示は必要ない」とのお考えの持ち主ですから、別の見方をするなら、札響メンバーは強弱以外の部分についてはほぼ完成形の状態で指揮者を迎えたわけですね。「アルプス交響曲」は難曲だそうですが、各奏者のかたが入念に準備をした上で全体練習に臨んでいることがうかがえ、頭が下がりました。

そして本番当日。会場前に人が集まってきているとき、奏者一人一人が最後の練習を個々人でしている姿や会場スタッフが最後の打ち合わせをする様子が映し出されます。マエストロ入場、いよいよ演奏開始です。約50分の「アルプス交響曲」を20分に短縮しての演奏映像でしたが、不自然な印象はなく家にいながら良い演奏を堪能することができました。「ここで美しいオーボエソロ!」とか「風の音!雷の音!聞こえてますよ!」とか、マエストロのインタビューで強調されていた部分やリハーサルで特に練習を重ねたところをアップで映し出すカメラワークがとてもありがたかったです。会場は拍手喝采。舞台袖でのインタビューではソロをつとめた首席オーボエ奏者のかたが「(100点満点の)98点。高めでいいですか」と興奮気味にこたえておられました。コンマス田島さんは「お客さんが喜んでいた、心から感動したと感想を頂けた」とおっしゃていて、演奏会は大成功だった様子がうかがえました。

そしてマティアス・バーメルト氏「私は何も音を出していませんよ。オーケストラが奏でたんです。まさに素晴らしい、そして美しいオーケストラでした。もちろん最高でしたよ。大満足です!素晴らしい私のオーケストラ、最高に幸せです!」…どこまでもマエストロらしいコメントでした。しかし彼だからこそ、オーケストラの可能性をとことん引き出してくださったのだと思います。「北風と太陽」にたとえるなら、マティアス・バーメルト氏は間違いなく太陽。素晴らしい演奏を本当にありがとうございます。私は「場違い感」から定期演奏会は未体験なのですが、近い将来必ず定期演奏会にうかがいます!

この番組では、画面に出てくるのは出演者および札響の関係者のみで、音楽は札響が奏でる音のみ。ドキュメンタリーなので当たり前なのかもしれませんが、民放バラエティにありがちなタレントやアナウンサーが前面に出て派手に盛り上げるスタイルでなかったのが好印象です。番組の最初は演奏前のチューニングから入り、最後はアンコール曲(今回は「ラデツキー行進曲」)で締めくくる、実際の演奏会と同じ構成にしたのも粋な演出だと思います。失礼ながら民放ローカル局でこんな硬派なドキュメンタリーの制作をしているとは存じませんでした。とても見応えのある良質な番組をありがとうございます。この番組を一人でも多くのかたに見て頂きたいので、もし可能でしたら近いうちに再放送をお願いします。そしてこれからの番組にも期待しています。いつか再び札響を追いかける番組を制作頂けたらうれしいです。


最後までおつきあい頂きありがとうございました。


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『ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく』かげはら史帆(著) 読みました

今回ご紹介するのは『ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく』かげはら史帆(著) です。

www.kashiwashobo.co.jp
柏書房ウェブサイトにある紹介ページに概要や目次が書かれてあります。プレイリストは本書を読みながら聴くとより楽しめるかも。

 

kage-mushi.hatenablog.com
また、著者のかげはら史帆さん(twitter ID: @kage_mishi )がご自身のブログにて本の参考資料となる記事をいくつか書かれています。ぜひお読みください。どの記事も楽しいのですが、特にプレイリストの各曲の一言コメントは秀逸です! ※上のリンクは一連の記事の一番目です。

ontomo-mag.com

そして、同じくかげはら史帆さん執筆のコラム『ベートーヴェンの葬儀に参列した「2万人」とは誰だったのか? ――社会に浸透する音楽家』(Webマガジン「ONTOMO」)も、今回ご紹介する本の理解の手助けになると思います。タイトルにある「ベートーヴェンの葬儀に参列した人達」とはどんな人達なのか?の解説に加え、当時の人々の生き様が窺える会話帳とはどのようなものか?そして晩年のベートーヴェンに仕え葬儀を取り仕切ったアントン・フェリックス・シンドラーによる「会話帳改竄」とは?…いずれも実例をあげて説明くださっています。お堅いテーマとタイトルにもかかわらず、こちらもすっと読める文章です。上のリンクからどうぞ。


このような記事を書かれるかげはら史帆さんの著書ですから、面白いに決まってます!私は出版のお話しをうかがってすぐに予約。手元に届いたら早速読み始めました。まずは睡眠時間を天秤にかけながら3日ほど(※私の自由時間は家族が寝静まってからの数時間です)でほぼ一気に。次はメモを取りながらじっくり少しずつ。活字の本でこんなに夢中になれたのは久しぶりです。忘れた頃に読み返すとまた別の発見がありそうで、今後何度でも読み返したいと思っています。今回はたった2回通読しての感想になりますが、大掴みであっても良書に出会った新鮮な気持ちを書き残しておきたいと考え本記事を書くことにしました。

え?マンガならいいけど活字の本はちょっと…と思われたかたへ。安心して下さい。ベートーヴェンに少しでも興味があれば楽しく読めますよ!当時のドイツ愛国主義ウィーン会議といった時代背景をよく知らなくても、本文中に簡潔な説明が入ってくるので置いてけぼりにはなりません。なによりページをめくる手が止まらない!続きが気になる怒濤の展開に目が離せなくなり、気付いたらのめり込んでいます。それから本文中に「やりがい搾取」とか「あのコのLINEゲットした?」といった、最近の流行やクスッと笑える小ネタをさりげなく仕込んであるので油断できません(笑)。もちろんテーマそのものは硬派ですし、小さな活字が詰まったボリュームある本ではあります。太字のキャッチコピーが並ぶ余白だらけのジャンクフードのようなものとは一線を画すものです。かといって、薬だと思って我慢して摂取する類いのものではなく、例えるなら遊び心があるコース料理を楽しく頂いているかのような本です。素材は一筋縄ではいかないグリル厄介ですから、調理にはさぞかしご苦労があったことと拝察します。活字離れが言われて久しい昨今ですが、こんな本が新刊として登場したのがうれしいです。活字の本の未来はきっと明るいと希望が抱けます。

以下に本の感想および個人的な考えを書いています。過剰なネタバレは避けたつもりですが、本の内容の一部がわかる記述が含まれます。既にお読みになったかたおよびこれから読む予定で多少のネタバレは気にならないかたのみ、「続きを読む」からお進みください。

 

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安永 徹&市野 あゆみ ブラームス ピアノとヴァイオリンのためのソナタ全曲演奏会 レポート

ブラームスのヴァイオリン・ソナタの全曲演奏。私の大好きな3曲ですし、なんと今回は元ベルリンフィルコンサートマスターである安永徹さんの演奏とのこと。ご近所で世界的なソリストの生演奏を聴ける絶好のチャンス!これはぜひとも行きたい!と、幼稚園行事のあとに急いで駆けつける形で行ってまいりました。

なお、8月に行った「長尾春花・加藤洋之 ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会(2018年8月) レポート」の記事は以下のリンクからどうぞ。

 

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今回は8月のような長文にはせずできるだけ簡潔にまとめたいと思います。いつものように素人コメントであることをご了承下さい。なお、ひどい間違いは指摘頂けますと助かります。


安永 徹&市野 あゆみ ブラームス ピアノとヴァイオリンのためのソナタ全曲演奏会
2018年11月17日(土) 16:00~ 札幌コンサートホールkitara 小ホール

【出演】

  • 安永 徹(ヴァイオリン)
  • 市野 あゆみ(ピアノ)

 

【プログラム】


席は事前に前の方を確保。私はホールの音響について詳しくはわからないのですが、室内楽はできれば演奏する手元を見たいので、可能なら前側中央寄りの席を選ぶようにしています。今回はピアノの手元が見える角度ではなかったですが、そのかわりヴァイオリンの手元はバッチリ見ることができました。私の席からは、ヴァイオリンの内側から漏れ出る空気の流れまで感じられる程、繊細な音の違いを聴けたので本当によかったです。

始まる前に席に着いてから配布されたプログラムに目を通しました。プログラムノーツは市野あゆみさん(安永徹さんとはご夫婦)によるもの。各曲の解説にとどまらず、作曲家の実績や作曲にかける想いについても詳しく載っていました。ブラームスが「内なる魂の力」にどう動かされているかについて、興味深い証言が残されているとは恥ずかしながら存じませんでした。親しい人達にも決して明かさなかったことなのに…。このソースとなったインタビュー記事が何かしらの形でのこっているのであれば、ぜひ読みたいと思います。また、作曲家自身はヴァイオリン・ソナタではなく「ピアノとヴァイオリンのためのソナタ」と書いており、ピアノの位置づけが重要であることも。さらに、奏者が演奏するにあたり作曲家について学んでも「(作曲家の意図を読み取ろうとするのは)演奏者の感性のフィルターを通したものでしかありえない」と。こちらの一文で、市野さんともちろんパートナーである安永さんも大変誠実な演奏家であることがうかがえて、私は静かに感激しました。このプログラムノーツはずっと大事にとっておこうと思います。

開演5分前位に注意事項等のアナウンスがありました。これはいつものこと。しかし、その直後に客席がしーんと静まりかえり、咳払い一つない状態になったのには驚きました。ああ今日集まっている人達はコアなクラシック音楽ファンなのだわ…せめて私はその場にいて恥ずかしくないふるまいをしようと背筋がのびました。そんな静寂の中、舞台袖のほうでヴァイオリンのチューニングが聞こえ、程なくお二人が登場。拍手で迎えられました。チューニングは済んでいるので、早速演奏開始。ピアノに譜面をめくる係の人はつかず、市野さん自らが演奏しながらめくっておられました。

第1番。やはり私は1番が好きです。演奏前にガチガチに緊張していた私は、いつの間にかリラックスして聴いていました。第2番。比較的穏やかなこの曲は、私は第2楽章が好きです。以前にも書いたのですが、ここは好きな女性との距離を少しずつ詰めていこうとする不器用な男の様子だと私は勝手に思っています。しかし、演奏は既に熟年夫婦な印象で、ちょっと緊張してためらっていたりだんだん楽しくなったりといったふうには聞こえませんでした。ただ、ここは解釈の違いなだけなので、美しい旋律を流暢に聴かせてくださる今回のような形式もアリと思います。休憩を挟み、第3番。もちろん第4楽章が大本番なのですが、私はその前の第3楽章が好きです。この第3楽章は後に続くガチンコ勝負の前に必要不可欠な部分だと思っていて、ドキドキする心臓の鼓動のようなあるいは何かが近づいてくる足音のような、緊張感がキモなのかなと。いざ演奏の印象は「ん?ちょっと遅い?」…これも私が手持ちの録音で慣れているものとの違いであり、じっくり聞かせて下さる今回のような形式も決して間違ってはいないのだと思います。第4楽章はお二方ともさすがの安定感で難しい演奏を見事に体現してくださいました。演奏後、会場は拍手とブラボー。なお、当たり前なのかもしれませんが、この日の観客は楽章の区切りでの拍手が起こるハプニングはありませんでしたし、曲が終わってからも余韻が味わえて拍手が早すぎることはなかったです。演奏者も一流なら聴衆も一流で、同じ空間に身を置くことができた私は良い時間を共有できたことに感謝しています。

アンコールでは安永さんがまずお話をされました。「F.A.E.ソナタの第3楽章」をやるのが本来の流れかもしれないけれど、今回は歌曲の歌の部分をヴァイオリンで演奏する形式で歌曲を、とのこと。私は先日ブラームス歌曲のコンサートに行ったばかりで、歌曲の気分が盛り上がっていたところでしたのでうれしかったです。op.105-1 は、ピアノとヴァイオリンのためのソナタ 第2番第1楽章に似た主題が出てくるとのこと。ブラームスがちょうど歌手のヘルミーネ・シュピーズと懇意だったころ、彼女がこのop.105-1と続くop.105-2を歌ったことがあったようです。今回は人の声ではなくヴァイオリンが歌ったわけですが、とても美しい歌でした。ブラームスはクララとの仲が有名ですが、他の女性との恋バナもいくつかあるようですよ。ちなみに声フェチです。op.105-2 は、私は先日の歌曲のコンサートで先に聴いていました。歌詞は死に行く人がいまわの際に心情を吐露する様子なのですが、ブラームスらしい曲だと思います。そしてアンコール3曲目で、ローベルト・シューマン先生の歌曲が登場!この曲のみ、歌詞の日本語訳を市野あゆみさんが読み上げてくださいました。2曲目に続いて、こちらは死の床にある想い人への心情とは…。きっとブラームスのop.105-2との比較のために選んでくださったのだと思います。シューマンの歌曲もとても美しかったですが、なにより「ああピアノが全然違う!」と感じました。8月のコンサートでのクララの曲のときもそう感じたので、もしかすると作曲家の個性は主旋律よりも伴奏のほうに際だってあらわれるのかもと改めて思いました。今回は拍手喝采のたびに舞台に戻って1曲ずつ披露する形でのアンコールでした。3回もアンコールに応えてくださり感謝です。

コンサート後はCD購入者対象のサイン会。私も1枚だけですが購入し列に並びました。厚かましくもお二方の握手までして頂き感激!舞い上がってしまい、「ありがとうございました」くらいしか言えず申し訳なかったです。重ねて、素敵な演奏をありがとうございました!

 

ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」&第10番

ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」&第10番

 

 

↑サインを頂きたくて、コンサート後にその場で購入したCDです。私は初めて聴きましたがベートーヴェンの10番は有名な5番9番に負けず劣らず素敵な曲でした。お二方の演奏によるベートーヴェンのヴァイオリンソナタは全曲がCDになっているようです。いつかブラームスのCDもぜひ出して頂きたいです。

 

www.sapporo-thj.com

そして専門家によるレビュー記事をあわせて紹介します。私は「よかった!」しか言えないので、理論的な分析や同じ奏者の実績との比較が大変参考になります。今回について私は「やっぱりそうだったのね…」と思った部分もありましたが、少し気の毒かなと思うところも。安永徹さん、もし体調の面で何かしらの不安を抱えておられるのでしたら、まずはお身体を労って頂きたいです。そしていつかベストなパフォーマンスでの演奏を私達に聴かせてくださることを願っています。


同じく11月に行った「第9回川村英司レクチャー・コンサート 僕の好きなブラームス歌曲 ~ブラームスはお好き~(2018/11) レポート」の記事は以下のリンクにあります。やはりブラームスは秋の季語!?

nyaon-c-faf.hatenadiary.com


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