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Trio MiinA トリオ・ミーナ第6回公演 小児がんチャリティーコンサート(2024/09) レポート

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ピアノ三重奏のトリオ・ミーナ(Pf.西本夏生さん Vn.鎌田泉さん Vc.石川祐支さん)による、小児がんチャリティーコンサート。2019年の第1回から毎年開催(第2回は無観客配信)されている公演は、今年で6回目となりました。また今回は、先に蘭越パームホールでも同一のプログラムにて演奏会を開催(2024/08/24)。なお演奏会の収益は「(公財)がんの子どもを守る会」および小児がん研究のために寄付されます。

演奏会当日、いつものように小ホールロビーには子ども達の絵がいくつも飾られていました。そして夜の公演の前(16:30から約1時間)には、活動にゆかりあるお子さんや親御さん達のための「キッズ・コンサート」(北大病院をはじめ、世界各地にリアルタイムでウェブ配信されているそうです)が開催されました。このキッズコンサートも毎年恒例となっていて、トリオミーナが最も大切にしている企画とのこと。今回、ご厚意により私も小6の娘と一緒に会場にて聴かせて頂きました。子ども達からのリクエスト曲を全部で10曲も!子ども達にとってなじみ深い曲の数々を聴けて、聴き手もくじ引きや打楽器(または手拍子)で参加できてと、会場は大いに盛り上がりました。うちの娘も大喜び!きっと病床にいる子ども達にも喜ばれたことと存じます。素敵な企画と演奏を本当にありがとうございます!


Trio MiinA トリオ・ミーナ第6回公演 小児がんチャリティーコンサート
2024年09月20日(金)19:00~ 札幌コンサートホールKitara 小ホール

【演奏】
西本 夏生(ピアノ)
鎌田 泉(ヴァイオリン)
石川 祐支(チェロ)
鈴木 勇人(ヴィオラ) ※賛助出演

【曲目】
ブリッジ:ピアノ三重奏のためのファンタジー ハ短調 H.79
スメタナピアノ三重奏曲 ト短調 Op.15
ブラームス:ピアノ四重奏曲 第1番 ト短調 Op.25

(アンコール)ロンドンデリーの歌(アイルランド民謡)


今回のプログラムノートは、作曲家の久原琉生さん(キッズコンサートの演目の編曲をご担当)による執筆でした。


今年もトリオ・ミーナと出会え、音楽に無心で浸れる夢のような時間を過ごせて幸せです!どんな演目でも、その懐の深さで驚くほど生きた音楽として私達に届けてくださる――それは初めて出会った第1回公演の時から確かにそうなのですが、回を重ねる毎にどんどんレベルアップして、更なるサブライズな再会となるのが本当にうれしい!今回は大曲が並ぶ「濃い」プログラムでした。そのいずれの演奏も、音楽そのものの熱や鼓動や息づかいまでもがガンガン伝わってくるのがすごい!これぞライブの醍醐味!と、私はこの場にいられた喜びをヒシヒシと感じました。ブリッジのファンタジーは、比較的短い演奏時間の中で楽しい要素が盛り盛り!また自身の幼い子を亡くした頃に書かれたというスメタナの作品では、その悲しみを受け入れた上でなお生きていく、作曲家の誠実な思いと強さを感じ取ることができました。もちろん思いは人それぞれであり、とてもセンシティブな事なので安易に一般化はできません。それでも、もしかすると会場にいらしていて同じような悲しみを抱いておられる方たちにとっても、癒やしとなったのでは?そしてブラームスのピアノ四重奏の、とんでもなく充実した演奏が素晴らしかったです!私はちょうどこの前日に大ホールにてブラームス交響曲を聴いたばかりだったのですが、その交響曲にも引けを取らない重厚さパワフルさに驚愕!様々な要素がブラームスらしく絡み合い変化しながら、勢いや熱がうねりとなってグイグイ迫り来るのが快感!加えて室内楽らしい内省的なところや照れ隠しのようなところもあり、前日よりさらにブラームスの本質に近づけたと思えたのがとてもうれしかったです。交響曲を世に送り出すよりはるか前の若い頃に、こんなにも充実した室内楽作品を生み出していたなんて!ブラームスの偉大さ再確認できました。このピアノ四重奏曲第1番は、シェーンベルク管弦楽への編曲をしたことでも有名な作品。しかし個人的には、大胆かつ熱心に編曲し作品の魅力を広く伝えたシェーンベルクに敬意を払いつつも、断然原曲の方が良いと思います!シェーンベルクは「この曲が好きなのに、ピアノが目立ちすぎて弦が聞こえない」(大意)と言っていたそうですが、それは不幸にも良い演奏に出会えてなかっただけなのかも。この日私が出会ったトリオ・ミーナの演奏では、弦の繊細なところも当然ながらハッキリと聞こえました!やはり名曲は素晴らしい演奏があってこそですね!重ねて、この日の出会いに感謝です。

小児がんチャリティーコンサートとして、演奏会の収益はすべて寄付されるとのこと。また、夜の公演直前の夕方には「キッズ・コンサート」も開催くださいました。今回、私は娘と一緒に会場にて拝聴しましたが、編曲の良さ(作曲家の久原琉生さん、いつもありがとうございます!)と、もちろんクオリティ高い演奏で、大人だって十二分に楽しめる内容でした!ご招待された会場の子ども達(うちの子も!)は、とても楽しんでいましたよ♪重量級の本プログラムの準備と本番だってとても大変な事と存じます。にもかかわらず、普段とは異なるレパートリーを10曲も用意し、闘病中の子ども達とご家族、活動にゆかりあるかた達に聴かせてくださるなんて!改めて頭が下がります。大切な活動がこれからも良い形で続いていきますように。これから先も私はずっと応援&追いかけ続けます!


トリオ・ミーナの皆様が舞台へ。ピアノの西本夏生さんは上は白、下は黒のモノトーンコーデ。ヴァイオリンの鎌田泉さんは緑色のノースリーブのドレス。チェロの石川祐支さんは黒シャツ姿でした。すぐに演奏開始です。1曲目は、ブリッジ「ピアノ三重奏のためのファンタジー ハ短調 H.79」。4楽章構成ですが、すべて続けての演奏でした。本レビューでは、「3つの楽想」に着目して振り返ります。はじめは劇的に。冒頭の弦ユニゾンと続いたピアノがインパクト絶大!壮絶なドラマの幕開けを思わせるものでした。よどみない流れで波を作るピアノに乗って対話する2つの弦は、運命の波に翻弄されているよう。しかし弦がユニゾンでパワフルに突き進むように変化し、その鮮やかさが印象的でした。ピアノ独奏がロマンチック!その後は弦も優美に歌い、世界が一変したと感じました。続いて詩的なシーン。ピアノのアルペジオが美しい。チェロが艶っぽく歌うのが素敵すぎました!一部ヴァイオリンに主役を譲る時は少し抑えて滑らかに支え、ヴァイオリンがお休みの時は伸びやか歌う、この変化もぐっときました。ピアノが駆け出し、スケルツォに。ピアノに乗って弦が小刻みに休符を入れながらピッチカートでメロディを奏でたり、ピアノと弦が丁々発止のやり取りをしたり、ピアノもジャズのように跳ねていたり。個人的にはこのスケルツォのリズムがすごく面白く、ゾクゾクワクワクしました!次第に収束していく流れでの、小さな音でのピッチカートが良い!そして回想的になり、今まで登場した様々なシーンが再び。ほんの短い作品の中でも、人生を歩んで振り返っているような気持ちになりました。終盤は明るい雰囲気になり、ラストは輝かしいピアノと重音盛り盛りの弦で思いっきり華やかに!ドラマチックでロマンチック、かつ遊び心もある作品。15分程のコンパクトな作品でも、楽しい要素満載!とても充実した音楽に没頭することができました。

2曲目は、スメタナピアノ三重奏曲 ト短調 Op.15」。第1楽章 はじめのヴァイオリン独奏の凄み!深く哀しい響きが忘れられません。チェロとピアノが重なると、次第に激しくなり、弦もピアノも全力で来る悲痛な叫びがすごい!少し穏やかになってから(歌う弦が優美!)、再び激しくなるところでは、弦の気迫あふれるトレモロとピアノの力強い重低音に圧倒されました。弦もピアノも音を刻みながら力強く進むのには、悲観しても決して立ち止まらない心身の強さを感じました。ピアノ独奏のこぼれ落ちるような1つ1つの音がなんて美しいこと!はじめのヴァイオリン独奏が戻ってきて、繰り返しに入るも、先ほどよりもやや明るくなり、歩みの力強さが増したと感じました。クライマックスのダイナミックさ豪華さ!たった3人で創っているとは、にわかには信じられないほどの音の厚み迫力がガツンときました!第2楽章 前楽章と似たメロディが今度はポルカ風に。生き生きと踊るような音楽の鼓動にドキドキしました。ピアノに合いの手を入れるピッチカートがドンピシャなタイミングで気持ちイイ!中間部では、歌曲のようにゆったり歌う弦に癒やされました。ヴァイオリンの消えゆく高音、チェロの高音域での包容力ある滑らかな流れ!最高です!厳格なところでは、ピアノの厚みある重低音と弦の堂々たる響きが神々しい!ヴァイオリンが独り言のように歌うところでは、チェロがごく小さな音での重低音でずっと支えていたのが印象的でした。第3楽章 はじめからガンガン来る情熱的な演奏がアツイ!勢いあるよどみない流れはリズミカルで、ピアノにポンポンと合いの手を入れるピッチカートがまた絶妙!そして2拍子になってからの、優雅に歌うチェロと続いたヴァイオリンが超素敵でした!願わくばずっと聴いていたかったほど。しかしパッと切り替えて(この切り替えが見事!)、はじめのタランテラ風のリズムに。前よりもさらに加速した音楽にぐいぐい引っ張られていくのが快感でした。止まらない流れはしかし肩で息をするようにダッダッダッとリズムを刻んでいる(と私は感じました)ようで、それがガンガン来るのに聴く方もドキドキが止まらない!はじめのメロディが葬送行進曲のようになって登場したところでは、重くじっくり弾く弦とがっつり低音のピアノの底知れぬエネルギーがすごい!そこから、ふっと呼吸を合わせて勢いあるラストスパートの気迫とパワフルさが素晴らしかったです!悲しみのどん底にあってもなお生きていく、若き日のスメタナの思いが強く感じられた、スペシャルな体験でした。

後半は、ヴィオラの鈴木勇人さん(衣装は黒シャツでした)をゲストにお迎えし、ピアノカルテットの編成によるブラームス「ピアノ四重奏曲 第1番 ト短調 Op.25」。第1楽章 はじめは寂しげなピアノから。ほどなく入ったチェロの音色にゾクッとし、ヴィオラが哀しく歌いヴァイオリンが重なったのに引き込まれました。この最初だけで、ものすごい奥行きと厚み!力をぐっと溜めてから(チェロの重低音の良さ!)、弦とピアノが交互に出てぶつかり合うパッション!すごい!寄せては返す波のように強弱を変化させながら、弦が主役になったりピアノが躍り出たりと、滑らかな流れ。そこから大きな波が来て情熱的に盛り上がる、この勢いと熱を何度も体感できるのがたまらなくうれしかったです!また、例えばヴィオラやヴァイオリンが歌う下で、ピアノや他の弦が作る音楽の鼓動を感じ取るのが気持ちイイ!ブラームスはとても良く作っているなと改めて思うと同時に、こんなにも生きた音楽として私達に聴かせてくださるカルテットのお力を痛感しました。そして私がハッとさせられたのは、楽章終盤での弦楽三重奏から静かに始まったところです。今まで外に向かっていたエネルギーが内向きになり、じっくり内面を掘り下げるような音楽。そこから再び力一杯盛り上がる、この熱量!心揺さぶられずにはいられない!重く暗く沈みゆく締めくくりに、私は思わず感嘆のため息です。第2楽章 タタタタタタ……♪とチェロが刻むリズムにリードされて、ヴァイオリン&ヴィオラがそっと歌い始める、この出だしがぐっと来ました!音の刻みをヴィオラが引き継いでも、途切れることなく続く舞踏的なリズムが印象深かったです。ヴァイオリン&ヴィオラによる悲痛な歌のインパクト!メロディをピアノが引き継ぎ、その跳ねる音を、弧を描くような滑らかな演奏で支えるチェロが超素敵でした。やや明るくなる中間部のトリオでは、超スピードでの生き生きした掛け合いがとても面白かったです。そして終盤コーダでは、駆け足でささっと通り過ぎ静かに締めくくるのがイイ!「なーんてね」と、ブラームスの照れ隠しのようで、個人的に好きなところです。小粋に演奏してくださりうれしい!第3楽章 どっしり大らかなピアノと優美に歌う弦の美しさ!大編成のオケにも引けを取らない、厚みある響きと、どこまでも広がっていきそうな壮大さでした。さらなる奥行きを生み出す「地を這うような三連符」の存在感。じっくり進む重い足取りには秘めたエネルギーが感じられ、中間部で軽やかになってからのタタタッタタタッ♪のリズムが小気味よく、ガツンと盛り上がるパッション!はじめの方の優雅さとは対照的なその力強さはインパクト絶大で、クラクラしました。ヴァイオリン&ヴィオラのトリルの多幸感!弦が重音をのばし、ピアノがかわいらしく音階を上るラストが幸せな感じ!第4楽章 「ジプシー風ロンド」の前のめりで情熱的なメロディとリズムにゾクゾク!ピアノの音盛り盛り超高速演奏がカッコイイ!弦の合いの手が入るタイミングが絶妙で、目と耳が釘付けになりました。パッと登場した力強い盛り上がりの華やかさは、目が覚めるようなインパクト!ピアノのリズムに乗って、やや哀しく歌う弦がとても繊細で、ここは室内楽ならではの良さと感じました。ピアノ独奏にて、はらはらと音階を下っていくのがドラマチック!続いた弦楽三重奏がすごく良かったです。メロディを三者で少しずつずらして奏で、織り成す美の奥行きと繊細さ!ピアノ独奏を経てからの、弦楽三重奏の掛け合いと疾走感!そこから一気にアクセル踏み込んで、全員合奏で熱狂的に駆け抜けるラストは圧巻でした!熱量と厚みとリズムと勢いがグイグイ来て、繊細さ美しさがじんわりきて、ブラームスの情熱と秘めた思いと、そして息づかいと鼓動まで、すべてを体現してくださった演奏に大感激です!本当にありがとうございます!


カーテンコールにて、出演者の皆様へ花束贈呈がありました。ピアノの西本さんがマイクを持ち、ご挨拶とトーク。今回は「濃い」プログラムで、「思いが逃げそうな気がして」ここまでトークはナシで演奏したとのこと。「お楽しみ頂けましたでしょうか?」の問いかけに、会場から大きな拍手が起きました。トリオとしては6年目、カルテットとしては2年目となるミーナ。これまでに色々なことがあった、と仰っていました。ここまで続けてこられたのは、活動を支えるスタッフや支援者、そして聴きに来てくれるお客さん達のおかげ、といった事を仰り、再び会場から温かな拍手。最後に来年の開催日時の予告(2025/10/11土曜、kitara小ホール)をしてから、アンコールの曲目を口頭で告げられ、演奏に移りました。

アンコールは、「ロンドンデリーの歌」。アイルランドの民謡で、私は歌詞付きの「ダニー・ボーイ」として認識していました。ピアノカルテットによる演奏です。語りかけるようなピアノの序奏の優しさ!弦がゆったり歌い始めると、穏やかでどこか懐かしいメロディが心に染み入りました。主にヴァイオリンが主旋律を歌い、ヴィオラとチェロが対旋律やメロディのユニゾンを担当。3つ弦があると、素朴な歌でも彩りが増してさらに素敵になります!終盤では、ヴィオラのソロやチェロのソロも登場し、それぞれの音色による歌の良さも味わえました。超充実の「濃い」本プログラムの後に、そっと心に寄り添ってくれる民謡の素敵な演奏に感謝です。私達聴き手の高ぶった気持ちが静まり癒やされました。

終演後、いつものように私はロビーにて心ばかりの寄附をして、帰路につきました。今年もトリオ・ミーナに出会えてよかった!大切な活動が末永く続いていきますように。来年の公演も、私は今から楽しみにしています!


この日の前日にkitara大ホールで聴いた、札響の演奏会です。「あいプランPRESENTS ラブ&サンクスコンサート」(2024/09/19)。地元北海道で活躍するヴァイオリニストの小野寺百音さんは、メンコンにて丁寧で美しくかつ安定した独奏を披露。個人的に愛してやまないブラ1の超充実した演奏に大感激!指揮の藤岡幸夫さんと札響による、生きた音楽と共に「生きる」喜びに、札幌市民でよかったと心底実感しました。

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今年(2024年)、生誕200年のスメタナ。札響の演奏会にて連作交響詩「わが祖国」が取り上げられました。「札幌交響楽団 hitaruシリーズ定期演奏会 第18回~モルダウ・・・『わが祖国』全曲」(2024/08/01)。若き日の早坂文雄が書いた作品は、和の「雅」な響きが魅力的!スメタナ「わが祖国」は、長編大河ドラマを一気見したような充実のひととき!札響首席客演指揮者に就任した下野竜也さんと札響による誠実で愛情あふれる演奏から、「地元を愛する気持ち」の尊さを肌で感じられたのは何よりの喜びでした。

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昨年度の公演のレポートです。「Trio MiinA トリオ・ミーナ第5回公演 小児がんチャリティーコンサート」(2023/09/22)。彩り豊かな新作初演、凄まじさに打ちのめされたショスタコーヴィッチ、お初のピアノカルテットによるシューマンの充実ぶり!今回もうれしい驚きの連続で、最初から最後までとても楽しかったです!

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あいプランPRESENTS ラブ&サンクスコンサート(2024/09) レポート

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冠婚葬祭の「あいプラン」グループによる主催で、今年も札響のコンサートが開催されました。今回の協奏曲のソリストは、ヴァイオリニストの小野寺百音さん。地元北海道で活躍する音楽家を対象としたオーディションにて選ばれた、期待の若手音楽家さんです!交響曲ブラームスの1番で、指揮はおなじみ藤岡幸夫さん!私は早い段階でチケット入手し、楽しみにこの日を迎えました。また当日の会場はほぼ満席の盛況ぶりでした。


あいプランPRESENTS ラブ&サンクスコンサート
2024年09月19日(木)19:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
藤岡 幸夫

【ヴァイオリン】
小野寺 百音(2024年ラブ&サンクスコンサートソリスト

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島 高宏)

【曲目】
モーツァルト:「フィガロの結婚」序曲
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲ホ短調 op.64

ブラームス交響曲第1番ハ短調 op.68
(アンコール)エルガー:夕べの歌


札幌に住んでいてよかった!この日私は心底そう実感しました。愛する札響によるクオリティ高い演奏で大好きな演目を聴けて、会場は地元が誇るkitara大ホール。それをリーズナブルなチケット料金で聴けるなんて!加えて地元で活躍する若手音楽家との素敵な出会いまで!主催のあいプラン様に心から御礼申し上げたいです。北海道でのスポーツ・文化活動への長期にわたる支援と素晴らしい企画を、本当にありがとうございます!

今回のソリストである小野寺百音さんは、この大舞台にて堂々たる独奏を聴かせてくださいました!きっと想像を絶する緊張があったと存じますが、そんな事は一切表には出さず、丁寧で美しくかつ安定した演奏を披露。聴き手は大船に乗った気持ちで音楽に浸ることができました。そして個人的に愛してやまないブラ1の超充実した演奏に大感激!ブラームス流の情熱と力強さ、加えて歌心と繊細な美も、うねる波やさざ波になって迫り来るのが快感!弦ピッチカートやティンパニが作るリズムはまさに生きた音楽の鼓動そのもの!ブラ1の演奏は、札響でも他のオケでも繰り返し聴いてきた私。もちろんそれぞれの良さがありましたが、今回の演奏では特に「波」と「鼓動」がグイグイ迫り来て、自分の感情の波や胸の高まりが連動し音楽と一体化できたのがすごくうれしかったです!生きた音楽と共に「生きる」、その場でしか得られない体感があるからこそ、やっぱり演奏会通いは止められない!昨年12月のシベ2でも札響からものすごい力を引き出してくださった、指揮の藤岡幸夫さん。今回ブラ1でさらなる高みへ連れて行ってくださり、ありがとうございます!「日本で一番シベリウスを得意とするオケ」は、ブラームスだってすごい♪


開演前に、「あいプラン」グループの代表のかたからごあいさつがありました。事業内容の紹介に続き、北海道でのスポーツ・文化活動の支援についてのお話に。札響への支援だけでなく、地元北海道で活動するフリーランスの音楽家への支援も行っているとのことです。今回のソリストである小野寺百音さんもオーディションにて選ばれたと説明されてから、「趣旨をご理解頂き、一緒に演奏を楽しみましょう」と客席に呼びかけ。「皆様のご健康、ご多幸をお祈りし」、「あいプラングループをよろしくお願いいたします」と結ばれました。


前半1曲目は、モーツァルトの「フィガロの結婚」序曲。オケは12型で、管楽器はそれぞれ2管、そしてティンパニの編成でした。札響でもよく演奏される定番曲です。ファゴットと弦による出だしからワクワク。伸びやかホルン、幸せな木管、華やかな盛り上がりでの威勢の良いリズム!勢いがあり、高音弦が美しくて、追いかける低弦が渋い!フィナーレのパンパカ鳴る金管が楽しい!オープニングにふさわしい、軽快かつパワフルに駆け抜けていく楽しい音楽。札響の響きの紹介にもなる、ごあいさつにぴったりな1曲目でした!

ソリストの小野寺百音さん(衣装はシャンパンベージュ色のドレス)をお迎えして、2曲目はメンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲ホ短調 op.64」。オケは弦の人数が少し減って10型に。作曲家の指示通り、すべての楽章を続けての演奏でした。第1楽章 そっと始まる序奏のティンパニの鼓動がイイ!ヴァイオリン独奏が登場するとそっと静まったのもニクイです。ヴァイオリン独奏の柔らかな美音!ゆったりなところも音が多く速いところも丁寧に音を紡いで、かつ流麗な独奏がとっても素敵でした。独奏にオケは自然と寄り添い、強弱やテンポをピタッと揃えていたのはさすがです。重音を繰り返しながら音階を上る独奏の凄み、引き継いだオケの壮大さ!比較的小さな編成でも、弦の重低音の厚みに管の華やかさがしっかりあり、迫力充分でした。再び登場した独奏の儚げな美しさ!オケの弦による、独奏と一緒に音をのばしたりリズムを刻んだりするアシストはさすが!そして高音で寂しげに歌うフルートが、遠くに聞こえるのに存在感抜群でした!オケのパワフルなトリルと対話した後、独奏がぐっと深い低音でじっくり歌ったところが印象深かったです。カデンツァは低音から消えゆく高音まで、トリルで揺らぐ音もくっきり聞こえる、堂々たる演奏でした!音階の上下を繰り返す演奏のキレ味!独奏がじっくりのばす音の上で、木管群が歌うのが天国的な響きで心洗われました。そのメロディを引き継いだ独奏が、美しさに加え哀しみを秘めた感じになるのがまたニクイ!楽章終盤でどんどん加速していくのがすごい!第2楽章 前の楽章からそのまま続けての、ファゴットののばす音の温かみ!オケの澄み渡る弦楽合奏に乗って歌う独奏は、まるでソプラノが穏やかに歌曲を歌っているような美しさ!ふと寂しげな表情を垣間見せる繊細さも素敵で、独奏のフレーズをオケの弦がリフレインするそのさりげない優しさがまた素敵。オケの悲劇的な響きに続き、来ました独奏がメロディと伴奏を一人で演奏する流れ!ベースのタラタラタラ……♪も、その上で歌う高音域もしっかりとした、素晴らしい演奏でした!明るい光が見えるように変化してからは、中でもオケのオーボエの美しさが染み入りました。いったんフェードアウトしてから、一呼吸置いて始まった独奏と弦楽合奏が、なんて繊細で美しいこと!第3楽章 金管群の華やかなファンファーレのインパクト!オケと呼応しながら軽快に駆け抜ける独奏が華やかかつカッコイイ!驚くほど速い流れでも、音はしっかりしていて、聴いていてとても気持ちがよかったです。独奏が一気に音階駆け上って、引き継いだオケがガツンと華やかに盛り上げてくれたのも気持ちイイ!ティンパニのドンドン鳴り響くリズムはイケイケドンドンな感じ!終盤の幸せな流れでは、コロコロ歌うクラリネットが可憐で印象的でした。トレモロも重音も盛り盛りな独奏は、最後の最後まで勢いと力を保ったまま駆け抜け、オケの一緒に華やかに締めくくり。素晴らしいです!個人的に(聴く専門ですが)慣れ親しんできたメンコンで、こんなに清々しい気持ちになれるなんて、すごくうれしい!ソリストの小野寺さんと指揮の藤岡さん、そして札響の皆様、ありがとうございます!

後半は、ブラームス交響曲第1番ハ短調 op.68」。オケは12型で、木管は基本の2管に加えてコントラファゴット1。金管はホルン4、トランペット2、トロンボーン3。そしてティンパニの編成でした。第1楽章 ティンパニの力強い鼓動!深刻な弦!はじめから重厚なブラームスがガツンときて、しびれました!木管群を支える弦ピッチカート、何度も来るクレッシェンドでぐーっと盛り上がる波、魅惑的なオーボエ&チェロパートなど、個人的な好きポイントが次々と来るのがうれしい。休符がビシッと揃って、各シーンの切り替わりでは阿吽の呼吸で無理なく展開するのが快感でした。エネルギッシュな全員合奏でのホルン&トランペットの骨太な響きがカッコイイ!少し穏やかになるところでは、フルートの透明感ある響きに吸い込まれそうでした。地を這うような低音から次第に盛り上がり、重厚パワフルな全員合奏につながる流れの良さ!12型の比較的コンパクトな編成で、この厚みと迫力が来るのはうれしすぎるオドロキでした。クラリネットとホルンの掛け合いが良い!この後の予告のような、弦の爽やかさ壮大さもぐっと来ました。雄大な楽章締めくくりはじっくりと進み、第4楽章でのメロディを先取りした弦の美しさと木管群の幸せな響きに、聴いている方もとても幸せな気持ちになれました。第2楽章 先ほどまで大波だった音楽は、凪のように変化。弦楽合奏が美しい!高音弦の澄んだ音色、追いかける低弦の重低音、どっちも好き!すごくうれしい!オーボエ独奏が、1回目は幸せな感じで、やや哀しげになった弦楽合奏を経て、2回目はやや陰りのある響きに。色合いの変化が繊細!さざ波を起こした弦のタタータ タタータ♪に、音階を上るピッチカート、その音色もリズムもとても心に染み入りました。来ましたコンマス独奏!ああなんて素敵なの!美しくて大らかで、あらゆるものを包み込んでくれそうな包容力。オケはコンマスに全幅の信頼を寄せて、併走したり交互に演奏したりがとても自然!ティンパニの鼓動に乗って、弦が低音から高音へピッチカートをリレーして最終的にコンマス独奏につなげる、この流れの滑らかさはきっと田島コンマスと札響メンバーだからこその一体感ですよね。うちのオケ、最高かよ!第3楽章 温かみのあるクラリネットと低弦ピッチカートのリズムがすっと心に入ってきました。少し足早になった展開に心がざわめき、管と弦が対話するところに癒やされました。この愛を感じる対話が少しずつ盛り上がっていく、その壮大な広がりが超素敵!はじめと似たメロディが戻ってきてからは、先ほどより幸せな感じに変化。中でもクラリネットの草木の芽吹きのような響きが印象深かったです。そして第4楽章へ。 最終楽章の充実ぶりは半端なくすごかったです!ティンパニのクレッシェンドと一緒に浮かび上がってきた、重厚なオケにゾクゾク。研ぎ澄まされたピッチカートにドキドキ。深刻な音楽を最終的に一手に引き受けたティンパニの連打のド迫力!続く雄大なホルン(クララへのメッセージ)、木管群の歌からの、ようやく登場したトロンボーン!崇高で温かくて、ジーンと来ました。低めの落ち着いた音で歌う弦はまるで雪解けのようで、苦悩を経てここに至るまでのことを思うと私は胸が熱くなりました。ヴァイオリンの対旋律を伸び伸び弾くヴィオラは気持ち良さそう!歌う木管は幸せそうで、支える弦ピッチカートが愛らしい。全員合奏の華やかな盛り上がりがうれしくて、個人的にはやはり重低音で支え音階駆け上る低弦が好き!やや穏やかなところからヴィオラが先陣切って駆け足になったり、全員合奏の盛り上がりでティンパニが堂々と鳴ったり、ノリノリな演奏に聴いている方も気分あがりました。爽やかなところから、ガツンと強奏でヴァイオリンと中低弦が鏡映しに演奏するところ、キター!弦だけでこの大迫力、しびれる!大波になったり凪になったりする流れが気持ちよく、こんなにも喜びに満ちあふれた演奏にて、ブラームス流の歓喜を全身全霊で浴びる喜び!永遠に続いてほしい時間でした。そして終盤、トロンボーンのコラールを金管群すべてで奏でたところの神々しさ!それを待ち、ティンパニがダン ダン と力強く2回鳴り、ティンパニの自信に満ちた響きをベースに華々しく駆け抜けるラストが最高でした!こんなにも音楽の鼓動と熱量を肌で感じられて、ブラームスと一緒に「生きた」、最高に贅沢な体験!この演奏に出会えてよかった!本当にありがとうございます!


カーテンコールで舞台へ戻ってきてくださった指揮の藤岡さん。「ありがとうございます」と簡単にごあいさつされてから、口頭で「イギリスの作曲家の……」とアンコールの曲名が伝えられ、演奏へ。アンコールは、エルガー「夕べの歌」。藤岡サッチーといえばこの曲!待ってました!2024年2月に急遽代役で指揮くださった札響定期(オール・エルガーのプログラム、残念ながら私はうかがう事が叶いませんでした)の演目にもあったはずです。温かみのある管の響き、弦による艶っぽい歌、低弦ピッチカートの優しさ!美しいメロディとゆりかごのようなリズムは心地よく、聴き手の高ぶった気持ちをゆっくり静めてくれました。少し切ないメロディに変化したところの盛り上がり!そのまま眠りに誘ってくれそうな、ゆったり穏やかな締めくくりがまた素敵でした。大熱演の後、心穏やかになれるアンコールまで、ありがとうございます!藤岡さんと札響の共演をこれからも楽しみにしています!


藤岡幸夫さんが指揮した札響の地方公演。私は岩見沢までプチ遠征して聴きにうかがいました!「まなみーるDEクラシック 2023」(2023/12/03)。シベリウスに造詣と愛が深い指揮者の藤岡幸夫さんと「日本で一番シベリウスを得意とするオケ」によるシベ2は、心揺さぶる大熱演!親しみやすいトークを交えながらのオペラ序曲の華やかな演奏も楽しかったです。

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この日の4日前に聴いた札響定期公演です。「札幌交響楽団 第663回定期演奏会」(日曜昼公演は2024/09/15)。札響名誉音楽監督尾高忠明さん指揮による「2人のリヒャルト」。協奏曲は、ヴラトコヴィチさんのホルンの豊潤で温かな響きと札響との優しく幸せな共演!ワーグナーでは「交響的選曲」の良さと、大編成によるサウンドの厚みと壮大さを十二分に楽しむことができました。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

札幌交響楽団 第663回定期演奏会(日曜昼公演)(2024/09) レポート

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今回(2024年9月)の札響定期は、札響名誉音楽監督尾高忠明さん指揮による「2人のリヒャルト」の会でした。協奏曲のソリストは、札響とは2度目の共演となるラドヴァン・ヴラトコヴィチさん。R.シュトラウスのホルン協奏曲を、2年前(2022年5月)の「第1番」に続き、今回は「第2番」!前回の札響定期(2024年6月、急遽代役として指揮してくださいました)での大熱演が記憶に新しい尾高忠明さんと、2年ぶりのラドヴァン・ヴラトコヴィチさんとの再会を楽しみに、私は当日を迎えました。

札響公式youtubeの企画「札響プレイヤーズトーク」。今回(2024年9月)は、トランペット首席奏者の福田善亮さんとホルン首席奏者の山田圭祐さんによるトークです!2024年9月末で退団される山田さんは、しばらくはエキストラで札響に来てくださるとのこと。そして今回の定期は「いずれもホルン冥利に尽きる(!)」演目揃いなのだそうです。心して拝聴いたします!

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札幌交響楽団 第663回定期演奏会(日曜昼公演)

2024年09月15日(日)13:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
尾高 忠明<札響名誉音楽監督

【ホルン】
ラドヴァン・ヴラトコヴィチ

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島 高宏)

【曲目】
(ロビーコンサート)パーヴェル・ハース:弦楽四重奏曲第2番「猿山より」第4楽章 ワイルドナイト
(出演:ヴァイオリン:飯村真理、桐原宗生、ヴィオラ:櫨本朱音、チェロ:小野木遼、パーカッション:入川奨)

R.シュトラウス:13管楽器のためのセレナード
R.シュトラウス:ホルン協奏曲第2番

ソリストアンコール)ロッシーニ:狩のランデブー(ホルン四重奏版)

ワーグナー:「パルジファル前奏曲
ワーグナージークフリート牧歌
ワーグナー:「タンホイザー」序曲


尾高忠明さん指揮による札響の響き、ラドヴァン・ヴラトコヴィチさんの唯一無二の音を全身で浴びることができた、幸せな時間でした!前半リヒャルト・シュトラウスでは、作曲家の出世作となった「13管楽器のためのセレナード」で木管楽器たちの響きに心地よく浸れ、協奏曲ではソリストのヴラトコヴィチさんのホルンをたっぷり堪能できました。ヴラトコヴィチさんのホルンは、ヴラトコヴィチさん自身のお声そのもの!と私には思えます。豊潤で温かな響きは、それこそご自分の声のように無理なく発していると感じられ、優しく歌うようでも語りかけてくるようでもあって、すっと気持ちに入ってくる良さ!共演するオケはソリストと気持ちを1つにして、ごく自然に穏やかになったり盛り上げたりしていました。加えてオケの各ソロ(ホルンやオーボエ、チェロ等)の安定感!今回も幸せな共演を目の当たりにできて幸せです!また後半のリヒャルト・ワーグナーでは「交響的選曲」の良さと、大編成によるサウンドの厚みと壮大さを十二分に楽しむことができました。ただダイナミックなだけでなく、「愛」の存在が感じられる繊細さや細やかさもあったのが個人的にはうれしかったです。私は正直「2人のリヒャルト」に強い思い入れはなく(ごめんなさい!)、作品の背景も歌劇の内容自体もまったく知らないまま聴いた今回の演奏会。しかし感じるままに聴いても心揺さぶられたのは、やはり演奏のお力があればこそです。地元のオケが札響でよかったと改めて思います。いつもありがとうございます!

そして個人的には、今回の「ロビーコンサート」の素晴らしさも特筆したいです。もちろん毎回素敵な企画と演奏で楽しませて頂いていますが、今回は選曲の良さに加え、SNS上で1stヴァイオリン・飯村さんが解説してくださったことで、聴き手はさらに入り込むことができました。こんなにも非凡な才能を持つパーヴェル・ハースが、アウシュビッツで命を奪われたとは……。同時代のリヒャルト・シュトラウスは長生きして天寿を全うしたことや、リヒャルト・ワーグナーはそれこそナチスに持ち上げられたことを思うと、私はやり切れない気持ちになりました。私にとっては作曲家の名前からして初耳だった、パーヴェル・ハース。こんな機会がなければ、一生知らないままだったかもしれません。大変良い機会を作ってくださったことと、何より素晴らしい演奏に感謝です。


開演前のロビーコンサート。今回の演目はパーヴェル・ハースの弦楽四重奏曲第2番「猿山より」第4楽章 ワイルドナイト でした。弦楽四重奏の打楽器が加わる、珍しい編成!はじめ2ndヴァイオリンによるトレモロから入り、他の弦が競い合うように掠れた音(表現が的確ではないかも?)を発するのが強烈な印象!初めて体感する音楽にぞわっとしました。勢いあるリズミカルな流れにグイグイ引っ張られ、パーカッションが参戦するとさらにキレッキレな音楽に。一辺倒ではなく、様々な形のリズムや音が次々と登場し、私は目と耳が釘付けになりました。「お行儀の良い」イメージとはかけ離れた、ジャズのようでもロックのようでもある音楽は、血が騒ぐ感じですごく面白かったです!パーカッションが沈黙した中間部は、いきなり(と私は感じました)穏やかで美しい音楽に(1stヴァイオリン・飯村さんの解説によると、恋人に捧げた歌曲の抜粋とのこと)。弦楽四重奏によるゆったりとした流れは夕暮れ時を思わせ、ヴィオラ独奏は子守歌のようにも感じました。再び冒頭と同じ2ndヴァイオリンによるトレモロから始まる流れに。全員が思いっきり強奏して突き進む勢いと迫力、切れ味!一見カオスのようでありながら、全員がしっかり足並み揃えて進む演奏。キリリと締まった空気が超カッコイイ!すごいものを聴かせて頂きました!ありがとうございます!

前半はリヒャルト・シュトラウスです。1曲目は、R.シュトラウス「13管楽器のためのセレナード」。13の管楽器(フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、コントラファゴット1、ホルン4)にコントラバス1が加わった、13+1の編成でした。ホルンは後列に並び、舞台向かって左からフルート→クラリネットファゴットコントラファゴットオーボエの順で扇型に。コントラファゴットの後方にコントラバスが配置されました。指揮の尾高さんはこの曲のみ指揮台はナシで指揮。はじめの大らかで温かみのある管楽器の響きがなんとも素敵で、じんわり心に染み入りました。高音域のメロディを低音でぐっと支えるコントラファゴットコントラバスの存在感!明るさにやや陰りが差す変化から、感情が高ぶるように盛り上がっていく波が何度も!もちろんそれらも素敵でしたが、個人的にはその直後の少数精鋭で穏やかに演奏するところがツボでした。なんて純度の高い美しさ!また、個人的に特に印象深かったのは、オーボエソロとそれを他パートが温かく包み込んだところ、ホルンがゆったりと歌ったところ、終盤でのフルートソロです。10分程度の曲でしたが、木管たちが奏でる幸せな響きは心地よく、ずっと聴いていたいほどでした!

ソリストのラドヴァン・ヴラトコヴィチさんをお迎えして、2曲目は、R.シュトラウス「ホルン協奏曲第2番」。オケは12型(12-10-8-6-5)でしょうか?各木管は基本の2管で、金管はトランペット2、ホルン2。そしてティンパニの編成でした。第1楽章 温かくまろやかでどこまでも広がるホルンの音!ラドヴァン・ヴラトコヴィチさんのホルン独奏にたちまち心掴まれました。寄り添うオケの弦の澄んだ美しさ!この響きをkitaraで体感できる幸せを、私はしみじみ噛みしめました。オケのターンでの幸せな木管群の響きに心温まり、ホルン独奏とオケとの掛け合いはゆったり歌っていたりスキップするようだったりの変化が楽しい!そしてホルン独奏と会話するようなチェロ独奏が素敵すぎました!ほんの一瞬の登場でも、ソリストと自然と絡み合い空気を一変させる、その音と存在感!断然頼れる!ホルン独奏とオケが気持ちを共有して、ホルン独奏が勇ましく奏でたのをオケのトランペットが、ホルン独奏が少し哀しげだったのをオケのクラリネットがリフレインしたのが素敵でした。オケが穏やかになっていき、そのまま続けて第2楽章へ。 中低弦に導かれてオーボエファゴットがゆったり歌う、この入り方がすっと懐に入ってくる良さでした。オーボエが超素敵!独奏ホルンのとても温かな音色と穏やかなオケにゆったり浸れました。なおプログラムノート(R.シュトラウス研究の第一人者・広瀬大介先生による解説でした)によると、「家庭交響曲」からの引用と思われる部分があるとのことです。それに気づける素養は私にはないのですが、リラックスした雰囲気を感じ取ることはできました。第3楽章 パワフルで明るい独奏ホルンの良さ!どこまでも広がる世界を作る独奏とオケが呼応しながら、軽快に流れる音楽が楽しい。独奏ホルンが伸びやかに歌うところの温かさも素敵で、重なるオケが細かく音を連ねながら駆け足な感じで軽快さを演出していたのが印象的でした。来ました、ソリストとオケのホルンとの絡み!上と下が重なり合うことでその良さが倍増するのもホルンの醍醐味!また、オケの木管群と呼応しながら、木管のように音を転がした独奏ホルンの安定感ともちろんその響きが素敵でした。オケの弦と一緒に、タタッタタッ♪と弾むような演奏も楽しい!独奏ホルンが完全ソロで堂々たる響きを聴かせてくださってから、壮大で華やかなオケと一緒に駆け抜けた締めくくりが清々しい!ヴラトコヴィチさん自身のお声のようにも感じられた、ホルンの豊潤で温かな響き。そして独奏と気持ちを共有する札響との、優しく幸せな共演。無限に広がる幸せを体感できた私たちは幸せです!

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ソリストのラドヴァン・ヴラトコヴィチさんと一緒に、なんとホルンセクションの6名が舞台へ!ソリストアンコールは、ホルンアンサンブルによる演奏で、ロッシーニ「狩のランデブー」(ホルン四重奏版)。演奏前にヴラトコヴィチさんから口頭にて曲目の案内と説明がありました。英語でしたが、内容の日本語訳がアンコールボードの横に掲示され、正確に内容を知ることができました(ありがとうございます!)。ロッシーニR.シュトラウスもお父さんがホルン奏者で、「ホルンの音色を聴きながら育った」とのことです。ヴラトコヴィチさんによるホルンの第一声のインパクト!それに続くホルン六重奏の厚みと華やかさ!どこまでも広がる大地と空を思わせる響きに胸がすく思いでした。お互いに掛け合ったり重なったりするチームワークの良さと、何より音の温かさ優しさが素敵!壮大な世界でも、時折囁くようになることもあり、表情豊かな演奏でした。とても貴重で素晴らしい演奏を聴かせて頂きました!ホルンセクションとの共演という粋な計らいと、何よりホルン愛あふれる素敵な演奏をありがとうございます!


後半はリヒャルト・ワーグナーです。1曲目は、ワーグナーパルジファル前奏曲。なんと今回が札響初演とのことです。オケは16型(16-14-12-10-8)の大所帯!管楽器はフルート3、オーボエ3、イングリッシュホルン1、クラリネット3、ファゴット3、コントラファゴット1、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、チューバ1。そしてティンパニの編成でした。弦(ヴァイオリンの半プルトとチェロ?以降も同パート内で分業するシーンがあったのが印象的でした)による、落ち着いた音色でのゆったりとした物語の幕開けがすごく素敵でした!トロンボーンの温かさ、大らかなトランペットは祝福してくれているよう!身も心も委ねられる、大きな愛を感じました。大きな広がりからの、フルートの美しさ!しかし最初からの流れを再び繰り返した際は、幸せに陰りが見えたように変化し、壮大な世界がとても繊細に創りあげられている!と感じました。弦が沈黙し、金管の堂々たる響きとティンパニの力強さ!その雄大な音楽に、私は思わず身震い。弦の清らかさ、木管の優しさに、心が洗われました。哀しげで深みあるイングリッシュホルンの存在感!その哀しみ(弦の半プルトトレモロがドラマチック!)から、光が見える(木管の天国的な響き!)締めくくりへ。そのスケールの大きさを体感出来たことと、同時に純粋でひたむきな精神に触れることができた、約15分の壮大な物語世界への旅でした。

2曲目は、ワーグナージークフリート牧歌」。オケは弦の人数が少し減り(14型でしょうか?それでも室内オケを想定して書かれた作品にしては大きな編成だと私は思いました)、管楽器はフルート1、オーボエ1、クラリネット2、ファゴット1、ホルン3、トランペット1。はじめのゆったりとした弦楽アンサンブルの美しさ優しさ!ささやくように歌う高音メインから、次第に低弦が存在感を増してきたのが印象的でした。管楽器が加わると、管と弦が甘く語り合っているように呼応し合うのがジーンと来ました。これは愛し合う夫婦の語らいなのかも?個人的にはホルンの温かみが印象深かったです。次第に盛り上がっていくところは、響きの厚みと壮大に広がる世界を堪能できました。大所帯の強みですね!オーボエクラリネットがスローなダンスをするように歌うのが素敵!ヴァイオリンのトレモロや弦が音階を上下するのがドラマチック。弦楽合奏に乗って幸せに歌うオーボエ、弦が沈黙しての大らかで温かなホルンソロがすごく素敵でした!盛り上がりのところでようやくトランペットが登場。華やかで輝かしい!フルートは幸せいっぱいな感じ!再び弦楽アンサンブルになってからは、チェロが低音でメロディをゆったり歌ったのがぐっと来ました。管楽器が優しく音をのばしてフェードアウトするラストまで、室内楽的な親密で温かい音楽がとっても素敵でした!

3曲目は、ワーグナータンホイザー」序曲。オケは再び16型へ。木管は基本の2管にピッコロ1が加わり、金管はホルン4、トランペット3、トロンボーン3、チューバ1。そしてティンパニとトライアングル、タンブリン、シンバルの編成でした。冒頭、ホルンと木管群による「巡礼の合唱のテーマ」(「札響プレイヤーズトーク」で話題となっていました)がなんて素敵なこと!敬虔さと人の血が通った温かみが感じられ、この世界のすべてを包み込んでくれそうな大きな存在!続いたチェロパートから始まる弦楽合奏の優美さと貫禄!私は早くも胸いっぱいに。弦がタッタタッタタッタ♪と弾みながら上昇し、金管群が雄大に歌うのは鳥肌モノでした!大編成オケのこの迫力と厚み!ティンパニ連打が超カッコイイ!自分がイメージするワーグナー「らしい」音楽がこの時まさに目の前に現れ、私は静かに感激していました。低弦が大らかに歌い、ヴィオラがタッタタッタタッタ♪を奏で、クラリネット二重奏につながる流れがまた素敵すぎて!壮大な世界がどこまでも広がっていくように感じられました。次のシーンでは木管群が跳ねるように歌い、クラリネットもコロコロ歌うのが楽しく、直前のシーンとのギャップが印象深かったです。ヴィオラから入った、明るい弦が中心の盛り上がりは、祝祭を思わせる華やかさ!冒頭と同じテーマが帰ってきて、ここでもホルンの良さにハッとさせられました。ABAの3部形式でも、2回目のAのスケールは桁違いで、金管群の力強さも重なる弦の厚みも、とてつもない大迫力!16型の大編成オケが全力かつきっちりと創りあげる、壮大なサウンドを全身で浴びることができました!すごい!

カーテンコール。今月末で退団されるホルン首席奏者の山田圭祐さんへ花束贈呈がありました(プレゼンターはホルン奏者の折笠さん。花束を背中に隠して山田さんへ近づき、パッと差し出して、会場が和みました)。10年にわたり、札響を支えてくださりありがとうございます!札幌は少し寂しくなりますが、新天地でのますますのご活躍をお祈りいたします。時々は札響にも戻ってきてくださいませ。


前回の札響定期のレポートです。尾高忠明さんが急遽代役として指揮くださいました。「札幌交響楽団 第662回定期演奏会」(土曜夕公演は2024/06/29)。チャイコフスキーvn協奏曲は、安定感ある金川真弓さんのソロと交響曲的なオケとの密で幸せな協演。「新世界より」は、当たり前を超越する「新たな世界」を切り拓いた超快演!札響名誉音楽監督尾高忠明さん&札響の実力とポテンシャルの高さは、私達聴き手の想像をはるかに超越するものでした。

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この日の1週間前に聴いた公演です。R.シュトラウスの交響的幻想曲「イタリアから」第4楽章「ナポリ人の生活」が取り上げられました。「札幌交響楽団 森の響フレンド名曲コンサート~鉄路は続くよ、どこまでも:続・オーケストラで出発進行!」(2024/09/07)。バーンスタインのミュージカル曲や市川紗椰さんの朗読付きブリテン等の珍しい曲の演奏が聴け、誰もが知る歌のベイビーブーによる歌唱で心温まり、大マエストロである秋山和慶さんがニコニコ笑顔で愛する鉄道の事を語る!「特急札響号」による鉄道の旅、今回もとっても楽しかったです!

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

札幌交響楽団 森の響フレンド名曲コンサート~鉄路は続くよ、どこまでも:続・オーケストラで出発進行!(2024/09) レポート

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鉄道をテーマにした名曲シリーズの第2弾!前回(2021年9月)に引き続き、指揮は秋山和慶さん、お話と構成は岩野裕一さんの、鉄道を愛してやまないお2人が登場くださいました。また男性アカペラ5人組・ベイビーブー(メンバーのお一人が鉄道好きとのこと)と、朗読にはNHK-FM「かけるクラシック」でおなじみの市川紗椰さん(鉄道好きだそうです!)という、豪華なゲストをお迎え。当日のホワイエには特別に秋山さんと岩野さんの秘蔵コレクション(鉄道模型と車体情報が書かれた看板?ごめんなさい詳しくはわかりません)が展示されていました。また終演後のロビーでは、ベイビーブーのCD購入者向けのサイン会が行われました。


札幌交響楽団 森の響フレンド名曲コンサート~鉄路は続くよ、どこまでも:続・オーケストラで出発進行!
2024年09月07日(土)14:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
秋山 和慶

【出演】
お話と朗読 / 市川 紗椰
歌 / ベイビーブー
お話と構成 / 岩野 裕一

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島 高宏)

【曲目】
J.シュトラウスII:ポルカ「特急」
バーンスタイン:地下鉄乗車と空想のコニー・アイランド(オン・ザ・タウンより)

(ベイビーブーコーナー 編曲:瀬川忍)
デンツァ:フニクリ・フニクラ
多梅稚:「鉄道唱歌」北海道編より
アメリカ民謡:線路は続くよどこまでも
古関裕而(詞:丘灯至夫):高原列車は行く
都志見隆(詞:松井五郎):列車にのろうよ

E.シュトラウスⅠ:ポルカ「テープは切られた」
ドヴォルジャーク弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」第4楽章(弦楽合奏版)
ブリテン(詞:W.H.オーデン):夜行郵便列車
R.シュトラウス:交響的幻想曲「イタリアから」第4楽章「ナポリ人の生活」

(アンコール)
タケカワユキヒデ銀河鉄道999


「特急札響号」による鉄道の旅、今回も楽しかったです!バーンスタインのミュージカル曲や市川紗椰さんの朗読付きブリテン等の、こんな企画でなければ出会えないような珍しい曲の演奏が聴けて、誰もが知る歌のベイビーブーによる歌唱で心温まり、大マエストロがニコニコ笑顔で愛する鉄道の事を語り(好きなものに夢中になる人は、見ていて幸せな気持ちになります♪)と、どんな人をも包み込んでくれる懐の深い演奏会。聴き手は大船(もとい大編成の列車ですね・笑)に乗った気持ちで楽しむことができました。様々な曲が登場しましたが、明るくてもけだるくても速くてもゆったりでも、いずれもベースにはガタンゴトンという列車のリズムがある?と私は感じました。心臓の鼓動と心地よくシンクロして、自然とウキウキになったり心安らいだり。安心して乗れる心地良さ、もしかしてこれも鉄道の音楽の魅力なのかも!私は鉄道の事には詳しくないのですが、鉄道の曲はもっと聴いてみたいなと思います。鉄道マニアとしてのキャリア77年(!)の大マエストロには到底及びませんが、音楽を通じて私もほんのつま先だけ鉄道沼に触れた感じです!

前回は新作初演(酒井格さんによる作曲、上野耕平さんがサクソフォン。鉄道愛あふれる素晴らしい作品と演奏でした!)を含む、てんこ盛りなプログラムでした。もちろん充実した内容でとても楽しめたのですが、もったいないことに1つ1つの印象が薄れてしまったかも(あくまで個人的な感じ方です)。今回は思い切ってゲストの歌唱とトークに一部をお任せしたおかげで、全体にメリハリがつき、特に後半のがっつりクラシック音楽の完成度が上がったと私は思います。今回大活躍してくださったゲストのベイビーブーの歌唱は親しみやすく、トークもとても楽しくて、耳慣れた曲の心温まる歌を聴き手はリラックスして楽しめました。ただ残念だったのは、手拍子やジェスチャー参加の呼びかけにお客さん達の反応が少なく、いまいち盛り上がれなかったこと。これはベイビーブーの責任ではありません!クラシック音楽を聴く客層が、ポップなノリに慣れていない事と、普段と違うことをするのにためらいがあったからだと私は考えます。たとえばプレトークの段階で、ベイビーブーの皆様に出て頂き、演出内容を知らせた上でお客さん達と一緒に「事前練習」をしておけばお客さん達もすんなり参加できたかも?色々と偉そうに申し訳ありません。

そして私にとってはお久しぶりの、指揮者・秋山和慶さんとの再会がとてもうれしかったです!企画の性格上、今回は様々な曲のアラカルト。性格が異なるたくさんの作品を限られた準備期間で仕上げるのは大変だったことと存じます。しかし、歌に合わせるのも朗読とシンクロするのも大編成オケによる大作も、どんなシーンでもオケを的確かつダイナミックに導いてくださる。やっぱりすごいお方です!当たり前ですがそれに応える札響だってすごい!なお今回、指揮の秋山さん(ブレザーにネクタイの装い)が広島電鉄の制服着用するシーンはナシ。指揮者自身が目立つのは、もしかすると秋山さんのポリシーに反するからかもしれません(※秋山さんの回想録を読み、私はそのような印象を受けました)。しかしトークでは鉄道愛が隠しきれない感じで、とても微笑ましかったです。もちろんそのキレッキレの指揮と導かれたオケのビシッと締まった演奏が本当に素晴らしい!「指揮者は見られるものではない」と秋山さんはお考えとはいえ、私はつい凝視してしまいます(ごめんなさい!でもその指揮ぶりをつぶさに見たい!)。秋山さんの指揮の動きで演奏がガラッと変化する、まるで魔法使い!と、最初に出会った時から私はずっとそう感じています。秋山マジックを、私はもっともっと体感したい!これからも時々は札響を振りに来てくださいませ!


開演15分前からのプレトーク。今回は、お話と構成(プログラムノートの執筆も)を担当くださった岩野裕一さんによるトークでした。ごあいさつに続いて、「今回の主役は、秋山和慶さん」。秋山さんが今年指揮者生活60周年となることや過去に札響の首席指揮者だったことを紹介くださいました。鉄道をテーマにした名曲シリーズの第2弾は、前回とはすべて異なる演目を揃え、オーケストラ曲は少しひねったものを入れたとのこと。曲の候補は「第3弾をやるとしても色々ある」そうです。クラシック音楽に鉄道の曲が多いのは、19世紀後半のロマン派の時代がちょうど鉄道が発達した時期と重なるから、と仰っていました。また、鉄道がなければ、明治時代の北海道の開拓は進まなかっただろう、とも。ちょうど野幌で「みんなのてつどう」展、この日は苗穂駅で特別展が行われていたそうで、「演奏会本番がなければ行きたかった」と指揮の秋山さんも残念がっていたそうです。「普段とはひと味もふた味も違うけど、(演目は)楽しい曲ばかり」「ベイビーブーが歌うのはよく知られた曲ばかり」「もっともっと好きになって頂ければうれしい」と今回の内容を熱烈アピール。「どうぞ最後までごゆっくりお楽しみください」と締めくくり、トーク終了となりました。

オケの皆様、続いて指揮の秋山和慶さんが舞台へ。オケは14型(14-12-10-8-7)でしょうか?管楽器は基本の2管に、曲に応じてアルトサックスや多彩な打楽器、ピアノやハープも加わりました。1曲目は、J.シュトラウスIIのポルカ「特急」。速いテンポの華やかな音楽にウキウキ。短いながら(1駅分くらい?)も山あり谷ありで、軽快に駆け抜ける音楽が楽しかったです。明るく幸先の良いスタートでした。

ここで岩野さんが登場。「特急札響号、定刻に発車しました」と仰ってから、トークに入りました。指揮の秋山さんに、いつ頃からなぜ鉄道にハマっていたのかインタビューしたところ、戦後すぐ、小学校に通う頃からだそうです。秋山さんがよく電車を眺めていたら「坊主、乗るか?」と運転手さんの膝に乗せてもらい二人羽織で運転した(今の時代ではNGだろうという事も仰っていました)のが原体験だったとのこと。一方、岩野さん(北海道のお生まれだそう)も駅近くで生まれ育ち、幼い頃から親しんできたのだそうです。

「札幌にちなんだ曲として」PMF創始者バーンスタインが書いた、ミュージカルの曲が取り上げられました。2曲目はバーンスタイン「地下鉄乗車と空想のコニー・アイランド(オン・ザ・タウンより)」。最初ほの暗いクラリネットにぐっと引き込まれ、そのメロディがアルトサックス、続いてフルートに引き継がれていくのが素敵!地下鉄なので景色は変わらないけれど、暗闇の中で列車が進んでいるように感じました。高音弦は空想の世界でしょうか?美しい!ベースの重低音は、地に足を付けているイメージ。金管が華やかな盛り上がりや全体のリズムやピアノに、私はガーシュインラプソディ・イン・ブルー」を連想しました。これがアメリカ「らしさ」なのかも?

ここからはベイビーブーのコーナーです。曲間の楽しいトークもベイビーブーの皆様が担当しました(「私は車庫に入ります」と岩野さん)。オケの前奏と同時に、ベイビーブーの5名が颯爽と登場。はじめはデンツァ「フニクリ・フニクラ」。「あかーい火を噴くあの山へー♪」と、第一声からスコーンと通るお声が素敵!ソロだったり合唱だったりと組み合わせを変えながら、よく知られる曲を明るく楽しく歌ってくださいました。

「私達、『ベイビーブーでーす』(5名のハモりで)」と自己紹介。2002年に結成され、歌声喫茶で様々な歌を歌ってこられたそうです。大ベテランの男性アカペラグループにどんな団体がいるのかを、「筑波山男声合唱団ー♪」「パジャマでお・じゃ・ま♪」等、有名なフレーズを実際に歌いながら紹介くださいました。「そして私達の一番のヒット曲はこれです」と、「ダバダー♪」(ネスカフェゴールドブレンドのCMソング)を熱唱。有名曲オンパレードの大サービス、楽しい♪

多梅稚「鉄道唱歌」北海道編より。「鉄道唱歌」は全曲通し演奏だと2時間半を超える(!)超大作だそうです。今回はその中から北海道の一部を抜粋での演奏でした。函館、長万部、小樽、室蘭、等が登場。そして「札幌」では、「札幌交響楽団ありー♪」と替え歌して、オケの方に手を向けるジェスチャーもありました。列車が走るリズムに、7・5調の歌詞がピタッとハマって、心地よく永遠に聴いていられそう!

ここでメンバーお一人お一人の紹介がありました。メンバーのお一人が鉄道好きで、5枚綴りの「青春18きっぷ」を買ってメンバーを誘っても誰もついてきてくれず(ええっ!?苦笑)、結局ご自分だけで使ってしまうというエピソード紹介も。今回は前日リハーサルが終わってから、札幌の市電の旅を楽しまれたようです。また、ベイビーブーと札響は6年ぶりの共演と教えてくださいました。

アメリカ民謡「線路は続くよどこまでも」。おなじみのこの曲も、華やかなオケとハモりが美しいベイビーブーの歌唱で聴くと贅沢!「ご一緒に!」と客席に呼びかけられ、手拍子や歌で私も参加したかったのですが……周りがそんな雰囲気ではなく、演奏を聴くだけにとどまりました。本当に申し訳ないです。

ベイビーブーがレギュラー出演されている番組の宣伝、そして終演後のサイン会の案内をしてから演奏へ。古関裕而(詞:丘灯至夫)「高原列車は行く」。こちらはオケはお休みで、アカペラによる演奏でした。ドゥ・ドゥ♪のコーラスに伸びやかメロディ歌唱、ラン・ラ・ラ・ラーン♪にウキウキ。また歌詞にちなんで「皆様もハンカチを振ってください」との呼びかけがあり、お客さん達の一部がハンカチを振って歌に参加(私も参加しました)。オケ団員さんの中ではティンパニ入川さんがお一人で大きくハンカチを振ってくださっていたのが印象に残っています。入川さん、とっても良い人(感涙)。

都志見隆(詞:松井五郎)「列車にのろうよ」。ベイビーブーの結成20周年記念で作られた曲とのことです。ファンクラブの皆様と列車に乗ってお祝いされたそうですよ♪メンバーは白手袋を着用し、振り付けもありました。なお、演奏前に振り付けのレクチャーがあったのですが、その振り付けをするお客さんは少数だったのは申し訳なかったです。「さあ列車に乗ろうよ♪」と、聴き手を優しく誘ってくれるお歌。手を回す動きや指さし確認など、車掌さんや駅員さんになりきったメンバーの振り付けも楽しく、心温まりました。


後半1曲目は、E.シュトラウスⅠのポルカ「テープは切られた」。勢いある出だしのインパクト!ピーというホイッスルのような響きはピッコロでしょうか?違っていたらごめんなさい。アップテンポでぐんぐん進む楽しい曲、個人的には運動会のかけっこをイメージしました。

岩野さんと秋山さんによるトーク。秋山さんはホワイエに展示している秘蔵コレクションについて熱く語られ(!)、とても微笑ましかったです。少年時代と変わらぬ、鉄道へのピュアな愛♪また、今回J.シュトラウスIIとE.シュトラウスポルカを取り上げたのは、「当時は(鉄道に関する曲を作るように)依頼が多かった」と岩野さんが解説。「しかしこの方は鉄道オタクの最たるもの」と、次に取り上げるドヴォルジャークの名前が出て、演奏に移りました。

ドヴォルジャーク弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」第4楽章(弦楽合奏版)。編成は弦のみで、8-7-6-5-4。弦楽アンサンブルが大好きな私は、弦楽四重奏曲アメリカ」を札響メンバーによる弦楽アンサンブルで聴けるのがとても楽しみでした。カントリー調で軽快に歌う1stヴァイオリンが素敵!テンポ良く、スピード感と抑揚がある流れ、タンタンタンタン♪やダダダダダ……♪といったベースとなるリズムは、まさに鉄道が走っているようでした。途中停車駅(?)では、ゆったりになるのも楽しい。また、1stヴァイオリンのメロディをヴィオラが引き継いだり、ヴィオラメインで歌うところがあったりと、ヴィオラ大活躍だったのも印象深かったです。弦楽アンサンブルの厚みある響きから、あふれる鉄道愛!超素敵!

ここで岩野さん、秋山さん、ゲストの市川紗椰さん(青いワンピース姿)によるトークが入りました。鉄道マニアな皆様、全員が「乗り鉄」「呑み鉄(!鉄道のことを熱く語り合いながらお酒を飲むらしいです……)」でありながらも、市川さんは「音鉄」で秋山さんは「模型鉄」と、それぞれにこだわりをお持ちのようでした。市川さんがMCをされているNHK-FM「かけるクラシック」(もうお一方のMCは、前回の鉄道名曲シリーズにご出演されたサクソフォン奏者・上野耕平さん)で、鉄道特集をした際のゲストが秋山さんだったそうです。今回の朗読に市川さんをお招きしたのは、秋山さんが希望されたとのこと。それは市川さんが鉄道に詳しくなければわからない事(具体的な説明があったのですが、かなりマニアックな内容で、ごめんなさい私ついて行けませんでした・笑)をよくご存じで、市川さんなら鉄道の会にふさわしいと秋山さんが確信されたからだそうです。それでも先ほど演奏したドヴォルジャークには「降参(!)」。また、直接的に電車の音を表現した曲は意外に少なく、それを実際に行っている意味でもドヴォルジャークは偉大だそうです。次に演奏するブリテン「夜行郵便列車」について、「詩の朗読付き、記録映画のために書かれた曲」と岩野さんから紹介。ブリテンはイギリスを代表する作曲家で、この作品が取り上げられるのはめずらしいとのことです。また当時の夜行郵便列車の内部では仕分け作業が行われていたそう。リハーサルで耳にしたベイビーブーのメンバーが「まるでラップ!」と仰ったそうで、鉄道のリズムに韻を踏んだ歌詞が乗る、と解説がありました。

ブリテン(詞:W.H.オーデン)の「夜行郵便列車」。編成は弦(4-2-5-4-3)、フルート1、オーボエ1、ファゴット1、トランペット1、ハープ1、そして多彩な打楽器でした。英語の歌詞は市川さんが朗読。また英語歌詞と対訳が書かれた用紙がプログラムと一緒に事前配布されました。こちらの演奏、とても面白かったです!オケの演奏は、ウィンド・マシンによる風の音(私は初めて聴きました!)、トランペットのパパパー♪(汽笛?)、小太鼓大太鼓のドンドンするリズム等、列車が走り風景が流れているようで、時折入る美しいハープが場面転換をしているようでした。そこに重なる英語歌詞の朗読がすごかったです。オケに乗りながらも、歌うのではなく語るように早口で(歌詞がたっぷりありました!)、はっきりとした発音で韻を踏みながら英語の歌詞がよどみなく流れてくる。すごい!こんな音楽、初めて!映画の映像と一緒に聴いてみたくなりました。

朗読を終えたばかりの市川さんは「あまりの美しさ……オケを特等席で鑑賞できてうれしい」といった趣旨のことを仰っていました。「ブリテンが若い頃の作品、すごい才能ですよね」と岩野さん。そして最後の演目についての解説になりました。このR.シュトラウスの作品を取り上げたのは、メロディに「フニクリ・フニクラ」が使われているから、とのこと。R.シュトラウスは旅行中に耳にしたメロディを民謡だと思って採用。ところが実際は6年前に作曲されたばかりの「フニクリ・フニクラ」で、作曲家から猛抗議を受け裁判沙汰になり、結局演奏する度に使用料を支払うことで着地したそうです。そんなトンデモエピソード紹介に、会場が少しざわつきました。(余談ですが、もし「フニクリ・フニクラ」が現代日本で「鬼のパンツ」に替え歌されていると知ったら、作曲家のデンツァさんは大泣きするかも……!?)。「秋山さんはこの曲を得意としています」「札響の皆さんも全力で演奏します」と、岩野さんが思いっきり期待値(オケにとってはプレッシャー!?)をあげて、いよいよ演奏です。

オケは再び最初と同じ大編成になり、チューニングが入って、演奏へ。プログラム最後の演目は、R.シュトラウスの交響的幻想曲「イタリアから」第4楽章「ナポリ人の生活」。シンバルがジャーン!と鳴る出だしから大迫力!リズミカルでウキウキな音楽は、タンバリンが存在感抜群♪早速「フニクリ・フニクラ」のメロディが登場。以降もドストレートに何度もたっぷり使われていて、これは一発でわかるなと思いました。使用料払う事になったわけですし、ガンガン活用していきましょう♪全員合奏の盛り上がりが頂点に達する時の、コンマスによる消えゆく超高音が素敵!幸せな木管たちの歌、合間に入るハープが美しい!風光明媚な場所を観光列車で走っている気分になりました。金管や打楽器の華々しさ、ホルンの温かさ壮大さ!ホルンがすごく良い仕事しているなと個人的には感じました。休符がビシッと揃うのが気持ちイイ!思いっきり明るく躍動感ある音楽の、キレッキレな演奏。大編成の迫力!壮大な世界が爽快!指揮・秋山さん&札響の演奏で、次は全楽章を聴きたいです!

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指揮の秋山さんが舞台へ戻って来てくださり、そのままアンコールの演奏へ。オケによる華やかな前奏、ああこの曲は!タケカワユキヒデ銀河鉄道999。イントロと同時にベイビーブーの皆様が登場し、歌が始まりました。また朗読の市川紗椰さんと構成の岩野裕一さんも舞台へ。ベイビーブーの力強い歌唱にパワフルなオケ。客席も手拍子で参加し、会場全体が気分アゲアゲの盛り上がりとなりました。一部分ではオケが音量を絞って、歌に聴き手の気持ちを集中させたメリハリある演出がニクイ!気分爽快な大団円でした!

カーテンコールでは、出演者の皆様が何度も舞台へ戻ってきてくださいました。岩野さんから「特急札響号が駅へ到着しました。またのお越しをお待ちしております」との締めのごあいさつで、会はお開きに。鉄道名曲シリーズ、今回もたのしかったです!第3弾もお待ちしています!


本シーズン(2024年度)の名曲シリーズ、前回は王道の「ドイツ三大B」でした。「札幌交響楽団 森の響フレンド名曲コンサート~わたしの3大B:広上淳一篇」(2024/06/8)。マエストロ広上こだわりの選曲に、協奏曲のソリスト小山実稚恵さん!バッハの普遍性、ベートーヴェンの天才性。そしてブラームスのピアノ協奏曲第1番は、若きパッションあふれかつ緻密な演奏そのものに、作曲家自身の熱い思いに、胸打たれ感激に震えました!

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2021年の鉄道名曲シリーズ第1弾のレポートです。「札響名曲シリーズ 森の響フレンド名曲コンサート~オーケストラで出発進行!」(2021/09/25)。酒井格「シーサス・クロッシングサクソフォンとオーケストラのための」の新作初演を含む、鉄道にまつわる曲の数々で鉄分をたっぷり補給♪演奏の合間の鉄道愛あふれるトークも楽しかったです。

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指揮者・秋山和慶さんの回想録を読んだ感想文も弊ブログにUPしています。「『ところで、きょう指揮したのは? 秋山和慶回想録』 秋山和慶(著) 冨沢佐一 (著) 読みました」。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

石田組 結成10周年ツアー 名古屋公演(2024/08) レポート

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2024年の石田組 結成10周年ツアー。私は11月の札幌公演を待ちきれなくて、酷暑の名古屋まで遠征しました!届いたばかりの公式「石田組」Tシャツを早速着用♪なお名古屋公演はかなり早い段階でチケット完売したという、注目の公演でした。また、同じ出演者・同じプログラム(アンコールの内容は異なる)にて、この日の前日には福井公演が行われました。


石田組 結成10周年ツアー 名古屋公演
2024年08月04日(日)13:30~ 愛知県芸術劇場コンサートホール

【出演】
石田組メンバー(編成は弦3-3-3-3-1、ヴィヴァルディとピアソラには加えてチェンバロ1)
 1stヴァイオリン : 石田泰尚 / 塩田脩 / 山岸努
 2ndヴァイオリン : 丹羽洋輔 / 山本翔平 / 鈴木浩司
 ヴィオラ : 中村洋乃理 / 生野正樹 / 多井千洋
 チェロ : 西谷牧人 / 石川祐支 / 弘田徹
 コントラバス : 米長幸一
 チェンバロ:松岡あさひ

【曲目】
ヴィヴァルディ:協奏曲「四季」
ピアソラ(デシャトニコフ編曲):ブエノスアイレスの四季
J.ウィリアムズ(松岡あさひ編曲):シンドラーのリスト
布袋寅泰(松岡あさひ編曲):BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY
ローリング・ストーンズ(松岡あさひ編曲):悲しみのアンジー
レインボー(松岡あさひ編曲):キル・ザ・キング

(アンコール)
井上陽水(松岡あさひ編曲):少年時代
クライスラー(大橋晃一編曲):美しきロスマリン(独奏:近藤瑠伊)
メンケン(松岡あさひ編曲):時は永遠に
クイーン(松岡あさひ編曲):ボーン・トゥ・ラブ・ユー
オアシス(松岡あさひ編曲):ホワットエヴァ


今回も最っっ高に楽しかったです!石田組と出会えて本っっ当に良かった!出会って日が浅い私ですが、いまや石田組が存在しない人生は考えられないほどドハマリしています。人生色々あるけれど、石田組がいれば頑張って生きていける!今年で結成10周年という石田組。ずっとずっと追いかけたいので、この先10年後も20年後も未来永劫続いてほしいです!こんなにも熱狂できる「推し」と出会えた私は幸せ者です!

叶うことなら日本各地の公演すべてを聴きに行きたいところ。しかしそれは私には無理なので、「地元開催以外では1つだけ」と厳選した遠征先が今回の名古屋でした。結果、大正解!私は今回の余韻で11月の札幌公演まで生きていけそうです!超充実の2時間半超え(!)の公演は、最初から最後まで楽しくて楽しくて、笑って泣いて、石田組のすべてに全身全霊でどっぷり浸れた最高の時間でした。こんなにすごい体験は二度と出来ないんじゃないかと、その時はそう思えたほど(もちろん石田組のことですから、次に出会う時にはもっともっとパワーアップしているはず!)。2つの「四季」は、なんというクオリティの高さ!知っていたつもりの古典作品が、こんなにもスリリングかつ鮮烈な印象で聴けたのは、うれしすぎる誤算でした。唯一無二の石田組長のソロと、それに全力で食らいついていく組員たちによるアンサンブルは、驚異的なまでに呼吸と鼓動が一致した上で、お一人お一人が全力で行くのが激アツ!石田組長を要に星座を形作るスター達が、互いに協力し合い高め合いながらブリリアントに輝きを増す……こんなアンサンブル、他にはないと私は思います。そして当然ながらクラシック以外のロックや映画音楽も素敵すぎ&めちゃくちゃ楽しい!王道クラシック音楽をがっつり弾ける音楽家の皆様が、本気で「型破り」をするとすごいことになるんです!スゴイしか言えない!しかもアンコールは5曲(!)もあり、サプライズ演出てんこ盛りで、どこまでもサービス精神旺盛。これはまさに愛ですよね!見かけやイメージにとらわれて(?)、「食わず嫌い」でいる人達はもったいない。ぜひ一度体感してみてください!きっと石田組のとりこになりますから!喜ばしいことに、公演によってはチケットが即日完売となる石田組。今後ますますチケットが取りにくくなっていきそうですが、これからも私は1つでも多くの公演を体感したいです。私にとって石田組は生きる希望です!


組員の皆様が舞台へ。上下黒の装い、皆様カッコ良すぎ!チューニングの後、満を持して石田組長の登場し、満員の会場は拍手の嵐でお迎えしました。待ってました!組長も上下黒の装いでしたが、上着はゆったりしたチャイナ服っぽいデザインのもので、とってもお似合いでした。前半は、ヴィヴァルディの協奏曲「四季」。「」第1楽章 全員合奏のクオリティの高さに驚愕!皆様なんて上品で美しい音をお持ちなのかと!またこの少人数のアンサンブルは、驚くほど奥行き厚みがあり、大地が鳴るような堂々たる響きが素晴らしい!このチームの音楽に私は一瞬で恋に落ちました。小川のせせらぎのようなヴァイオリンは、石田組長とヴァイオリンパートとの流麗な掛け合いが良すぎる!トレモロからの盛り上がりがダイナミックで爽快!鳥のさえずりのように高らかに歌う石田組長のヴァイオリンは、華やかでこの上なく美麗!石田組長とチェロトップ(石川祐支さん)の穏やかな掛け合いに心和みました。以降もチェロトップの見せ場は多く、私は大喜びでした。第2楽章 ヴァイオリンパートの哀しげなベースに乗って歌う、石田組長のソロは静かな祈りにも似た崇高さ。そのソロのビブラートに呼応して、ヴィオラトップ(中村洋乃理さん)が低めの太い音でタッター♪と奏でるのが荘厳な感じで存在感抜群でした。このぐっと来るヴィオラの響きが忘れられません!第3楽章 ゆったりした幸せなダンスが素敵!全員合奏の広がりと、ヴァイオリンとチェロの二重奏の親密さと、両方の良さが楽しめました。「」第1楽章 ジリジリと歩みを進めるようだったり、ガンガン駆け抜けるようだったり、また全員合奏とヴァイオリン&チェロ&チェンバロの三重奏の切り替わりや強弱の変化もあって、1つの連なりの中で色合いが次々と変化。厳しい暑さを思わせる音楽が、気持ちが途切れずに迫り来てドキドキしました。掠れた音色による石田組長のソロに、重厚チェロが絡み、チェンバロが重なるのが超カッコ良かったです。第2楽章 研ぎ澄まされた石田組長のソロと、全員合奏の重厚なガッガガガ ガッガガガ♪の気迫。そのコントラストが鮮やか!第3楽章 力強さと勢いあるスリリングな合奏にゾクゾク。合奏が、ごく小さな音から勢いと力強さを増しながらぐーっと盛り上がっていき石田組長のソロに繋げる流れは鳥肌モノでした!今回のメンバーの実力、半端ないです!掠れた音色で厳しかったり時に柔らかな表情を垣間見せたりする、石田組長のソロの貫禄!ああ胸焦がされる!がっつり絡むチェロトップとの夢みたいな協演に感激です!「」第1楽章 華やかでリズム感ある音楽に、聴いている方も気持ちがウキウキ。石田組長のソロは超高速かつ美麗で、チェロと一緒にダンスしているようにも感じました。第2楽章 石田組長のソロはお休み(!)。ゆったりと囁くような合奏は、高ぶった気持ちを穏やかに鎮めてくれました。第3楽章 ステップを踏むようなリズムが楽しく、合奏の厚みも石田組長のソロの繊細な美しさも素敵!パンパン♪と力強く鳴るピッチカートがリズミカルでカッコイイ!「」第1楽章 低弦のぐっと重い低音による始まりにゾクッとしました。タッタッタッタ……と音を刻む弦、冷たい響きのチェンバロ。この緊迫感!パッと登場した石田組長のソロが鮮烈!そして全員合奏の切れ味と勢いと気迫と底知れぬエネルギーたるや!めちゃくちゃクールで熱くて、私は震撼したと同時にこのチームのすごさを改めて認識しました。またこの楽章だったと思うのですが、ディーブ・パープル「紫の炎」に似たフレーズが少し登場して、「お?」となりました。偶然?それともオマージュ?第2楽章 温かなピッチカートのリズムに乗って、ゆったり歌う石田組長のソロがなんて優しく美しいこと!前楽章での厳しさの後に、こんな表情も見せてくださるなんて!石田組長のヴァイオリンは一体いくつの顔をお持ちなのでしょう……。第3楽章 石田組長のソロの色合いの変化に、重なる合奏も色々な組み合わせになり、細やかな変化で移ろいゆく流れが美しい。低弦とチェンバロがお休みして、独奏にヴァイオリン&ヴィオラが重なるところは神々しく感じました。一気に駆け抜ける終盤の、勢いと掛け合いの良さ!最後の最後までキレッキレの独奏&全員が思いっきり行く上で互いに高め合う合奏、最高でした!演奏が終わると、石田組長はチェロトップの石川祐支さん、チェンバロの松岡あさひさんに順に起立を促して讃えられました。

後半。組長は上着を黒地に白の模様(SNS情報によると柄はパーマン?)が入ったものに衣装替えしていました。最初は、ピアソラ(デシャトニコフ編曲)「ブエノスアイレスの四季」。夏→秋→冬→春、の順での演奏だったようです。この曲のみチェロのトップ奏者は西谷牧人さんでした。また、終盤までチェンバロはお休みでした。「」ほの暗い序奏の色気がすごい!ヴィヴァルディの時とはガラリと変化した音色に驚愕し、独特のリズム(チェロの弘田徹さんは楽器をリズミカルに叩いてパーカッションの役割も!)にゾクゾク。そして登場した石田組長のソロにガツンとやられました!なんという妖艶さ!「だみ声」でギューン♪と曲線を描いたり、ギュン♪と高音を発したりする度に、聴いている方はゾクッとさせられました。ソロ小休止の時の、低音が効いた合奏がビリビリ来る!ソロに重なる重低音の低弦が超男前!ヴァイオリン&ヴィオラがキュインキュインと弦を鳴らすのがカッコイイ!コントラバスのピッチカートは、打楽器のようにバシバシ鳴らしたり、ギターのようにメロディを奏でたりと、「クラシック音楽」を枠を超えた存在感!あれ?ヴィヴァルディ「冬」に似たメロディが登場!?南半球から地球の裏側の季節を思ったのでしょうか(完全に私の妄想です)。「」石田組長が、駒の内側の弦を擦ってギギギ……とギロのように鳴らしたのがものすごいインパクトでした。来ました、チェロ独奏!他の奏者は沈黙した上での完全なソロ演奏は、西谷さんお一人で創りあげる世界。堂々たる鳴りの貫禄、ラテンの音楽を艶っぽく歌う色気!カッコイイなあ、もう!少しずつ他パートが重なって全体合奏に変化する流れが自然で、気持ちが途切れないのがよかったです。そして来ました、石田組長の独奏!ああすごい……!例えばバッハの無伴奏ではお目にかかれないような奏法と個性的な音が盛り盛りで、切れ味抜群な独奏は、まさに唯一無二。聴いている方は目と耳が釘付けになりました。全員合奏では、各パートもギュン♪と高音を発したり駒の内側の弦を擦ってギギギ……と鳴らしたりと、個性的な演奏てんこ盛りで求心力がすごかったです。「」有名なメロディを中低弦が艶っぽくじっくり奏でたのが胸に来ました。再びこのメロディが登場した時は、中低弦をベースに石田組長のソロが歌い、切なく美しい響きに私は思わず涙。このメロディが常に軸にありながら、合奏でスピード感だったり鼓動だったりと変化を演出し、その思い切りの良さがすごく気持ちよかったです。全員合奏のピッチカートで幸せに歌ってから、幸せなチェロ独奏に繋がる流れがなんて素敵なこと!全力で泣かせに来るスタイルでした。「冬」が終わると、チェンバロの松岡あさひさんが舞台へ登場。「」はじめの緊迫感ある弦楽四重奏にゾクゾク。全員合奏ではコントラバスの重低音ベースがぐっと来ました。中盤少し穏やかになったところでは、石田組長が深みあるふくよかな音色で春の喜びを噛みしめるように歌ったのが超素敵!しかし穏やかな時は長くは続かず、春の嵐のように勢いと緊迫感ある音楽に。石田組長のソロと合奏との掛け合いがカッコイイ!そして最後は、ヴィヴァルディ「春」のメロディのさわりをチェンバロが回想のように奏でました。環が閉じられた、すごく印象的なラスト!前半ヴィヴァルディから続いた壮大な流れは、もはや宇宙ですね!14名で創りあげた宇宙を、目の当たりにできた私達は超幸せです!演奏が終わると、石田組長はチェロパート全員の起立を促し、チーム全体を讃えられました。

お待ちかね、組員紹介&トークのお時間です♪組員の皆様に続いて登場した石田組長は、はじめにP席に向かって深々とお辞儀(お約束?)。正面に向き直した石田組長は、ご挨拶(名古屋公演は早い段階でチケット完売した事のお礼も)に続いて今回のメンバーを順番に紹介してくださいました。所属(オーケストラなど)・プロフィール・担当楽器・名前の基本情報に加えて、その人ならではの話題も簡単に付け加えての紹介。組員のお身内には、相変わらず「俺(石田組長)のファン」がいっぱい♪また組員のご兄弟や親御さんに音楽家演奏家だったり指導者だったり)が多いのと、あと今回は「愛知県立芸術大学を、それなりの成績で卒業した」組員さんが多数いらしたのが印象的でした。「それなりの成績」って(笑)。しかし組長の愛ある発言ですし、今現在は皆様こんなにもご活躍なのですから無問題です!愛知県立芸術大学といえば、チェロの西谷さんが今年度(2024年度)から准教授となられたことの紹介もありました。そこでの西谷さんの教え子が10名ほどこの日の会場にいらしていたようで、組長曰く「そのうち、もしかして、数人、俺のファン」(!)……ついに憶測で語る組長(笑)。それにしても「もしかして、数人」だなんて、奥ゆかしい♪この日の会場にいた約2000人のお客さん達はみんな「俺(石田組長)のファン」のはずですよ!一通りメンバー紹介が終わると、組員のお一人がマイクを持ち、なんと石田組長の紹介を始めました。「神奈川フィルハーモニー管弦楽団コンサートマスター京都市交響楽団、特別客演コンサートマスター。とにかくコンサートマスター。日本の、いや世界が誇るヴァイオリニスト……」めっちゃ褒め殺し!石田組長はすたこらさっさと舞台から姿を消してしまいました。あらら、照れちゃいました(笑)?でも褒め殺ししてくださった組員さん、グッジョブです!「今夜、東京で別の演奏会のリハーサルが控えていて、早く帰りたい○○」なんて紹介されちゃったんですもの、これくらいお返ししなくっちゃ!続いて「愛知のカリスマ」(今回は「北海道の星」の呼び名は登場せず)、チェロの石川さんへマイクが渡されました。名古屋のお生まれで18歳まで名古屋で育ち、進学のため東京へ。10年ほど東京にいた後に、札幌交響楽団の首席チェロ奏者となり「20年」(!)。会場から「おー!」と感嘆の声が!生まれ故郷の名古屋で、石田組の一員として演奏出来ることの喜びを語られました。次にマイクはチェロの西谷さんの元へ。石川さんとは高校時代からのお付き合いだそうです。名古屋公演はチラシを印刷する前にチケットが完売したそうで、「紙代が浮いた」(!)なんてお話しも。「石田組は初めての人?」との問いかけには、多くのお客さんが挙手しました(私が1階席から見た限り、全体の半数近く?)。石田組のファン、増殖中です♪また、ある学校の英語の入試問題に石田組の記事が使われた(!)と紹介くださり、「赤本を見てみてください」とも仰っていました。そして、11月10日に石田組は念願の日本武道館での公演を行います!と宣伝。「名古屋からたったの2時間半!」……「たったの」の正しい使い方(笑)。「札幌から網走まで、車でたったの5時間」を聞いた道民としては、2時間半って近いなと率直に感じます。いつの間にか舞台に石田組長が戻ってきていて、最後は組長のトークになりました。この日の公演前夜に石田組メンバーでバーを訪れたそうですが、そこのマスターがたまたま石田組長の事をご存じで、大いに楽しい時間を過ごせたようです。またマスターの奥様がこの日の会場にいらしていたようで、彼女もやっぱり「俺のファン」(!)。「俺のファン」が大増殖していますね!そのうち日本中、いや世界中の人達が「俺(石田組長)のファン」になりそう!こんな感じで、終始和やかな雰囲気のトークは終了となりました。

J.ウィリアムズ(松岡あさひ編曲)「シンドラーのリスト。哀しく美しい序奏。それだけでも胸に来たのに、ほどなく登場した石田組長のヴァイオリンの切なさ美しさは格別で、すごく刺さりました!哀しみをたたえた美音の訴求力!また、各パートのソロにメロディが引き継がれたり、ラストをチェロがぐっとシメてくれたりと、組員それぞれの見せ場も印象深かったです。クラシック音楽から瞬時に別世界へとスイッチした、掴みの1曲目に早速心奪われました。

布袋寅泰(松岡あさひ編曲)「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY」。映画「キル・ビル」のテーマ曲、そして石田組・結成10周年記念のCD「2024・春」の1曲目に収録されている曲ですね!ダッダッダダッダ♪のリズムで迫り来る序奏にドキドキ。そして組長の美音ソロ、キター!空気を切り裂く、唯一無二の音の凄み!東洋的な音のゆらぎも、エレキギターをかき鳴らすようにバリバリ弾くのも、めちゃくちゃロックでカッコイイ!石田組の引き出しは無限大ですね……!

ローリング・ストーンズ(松岡あさひ編曲)「悲しみのアンジー。チェロのダブル首席による序奏、ああやっぱり素敵!メロディを歌う高音弦は壮大で、歌詞は男女カップルのお話しという極めてプライベートな内容なのに、どこまでも広がる青空のようにも私は感じました。それを重低音で支える低弦の渋さ!石田組長のヴァイオリンの切ない歌に、嘆きのような効果音を一瞬重ねたヴィオラの味わい深さ!ラスト、石田組長のヴァイオリンに呼応する形で石川さんのチェロが切なく歌い、西谷さんのチェロが重低音でハモる、三者の密な重なりが素敵すぎて!2023年10月の札幌公演ではチェロの席順が逆だったので、今回別の形で聴けてうれしかったです。

レインボー(松岡あさひ編曲)「キル・ザ・キング。最初から全力で来る合奏のド迫力!高速で弾くヴァイオリン&ヴィオラも重厚ベーズを作る低弦も、やだもうカッコ良すぎる!石田組長のヴァイオリンの、シャウトするような歌い方!メロディを2ndヴァイオリンが歌うシーンがあったのが印象的でした。各ソロ演奏では、皆様食らいつくような熱量と勢いと気迫がすごい!呼吸を合わせるタイミングで、組長が「ハッ」とかけ声を発したのが良すぎる!その後さらに鬼気迫る演奏にヒートアップ。一体どこまで行ってしまうのかコワイくらいでした。エレキギターのバリバリ音をヴィオラやチェロが!ああ最高にロック!この熱さは、絶対に夏の暑さのせいなんかじゃない!

カーテンコール。舞台に戻ってきてくださった組員の皆様は、お揃いの「石田組」Tシャツを着用(一般販売されているものとは文字の色が違うかも?このバージョンのTシャツも欲しい!)。少し遅れて組長が颯爽と登場し、その装いに会場がどよめきました。ええっ、小学生男子の運動会コスプレ!?紅白帽(赤を表面にして被っていました)、白の半袖の体操着(ゼッケンには手書きで「3年 石田組」の文字)、紺色の短パン(黒スラックスの上に重ねばき、さすがに生足は恥ずかしかった?)。なんなのこの破壊力は!この日、会場に来るまでに完成度の高いコスプレイヤーを何人も見かけましたが(大規模なコスプレイベントが開催されていた様子)、私が見た限りでは間違いなく石田組長が優勝です!ぶっちぎり。断トツ。動揺するお客さん達(きっと組員さん達も?)に構うことなく、すぐに演奏開始です。「♪夏がくーれば思い出すー」の穏やかなイントロに続いて、組長が極上の美音を奏でました。この有名なメロディは!アンコール1曲目は、井上陽水(松岡あさひ編曲)「少年時代」。美しくしっとりと歌う組長のヴァイオリンに、懐かしい気持ちが込み上げてきて思わず涙……と本来なるはずが、演奏する人の見かけが強烈すぎて泣けない(困惑)。しかもその見かけで組員さん達に目力ビームをガンガン飛ばすものだから、大変!組員さん達、顔真っ赤にして笑いを堪えているじゃないですか。一体これは何の修行なんですか(組長ってばドS……いえ何でもないです、ごめんなさいごめんなさい)!こんな時でも、一瞬登場したチェロのソロ演奏は驚くほど美しいのです。しかし私は笑いを堪えるのに精一杯で、酔いしれる余裕なんてない!一生の不覚!ああっ、いけない。組長、組員さん達をそんなに見つめないで。チェロのダブル首席が持ちこたえられなくなっていますよ……もう私も無理でした。演奏中なのに笑っちゃってごめんなさい!でも限界!会場のあちこちからも戸惑いが混ざった笑い声が。あらら、名古屋お嬢様たちがお困りですわよ(いいぞもっとやれ)。しかしこんな状況をものともせずに(!)、クールに演奏し切った組長と組員の皆様は、プロ中のプロですね!超ド級の反則技コスプレに超美しい演奏。最初からどえりゃあサプライズなアンコールの幕開け(石田組はアンコールが実質第3部ですから!)に、会場は大ウケ&大盛り上がりでした。石田組にしかできないパフォーマンス、最高だがや!

拍手鳴り止まない会場に再び登場したのは、弦5部の各トップ奏者と、ええっ組長いつの間に可愛らしい小学生男子に変身したんですか!?いくらなんでも完成度高すぎるコスプレ(違)。組長の代わりに登場したのは、リアル小学生男子のヴァイオリニストでした!弦楽五重奏が伴奏し、ゲストの近藤瑠伊くん(「石田組」Tシャツを着用)が独奏する、アンコール2曲目クライスラー(大橋晃一編曲)「美しきロスマリン」。独奏は、艶っぽさと愛らしさのある音色で、一本調子ではなく強弱やテンポを変化させながらエレガントに歌うのが素敵でした。まるで小さな淑女がドレスの裾をふわっと翻しながらダンスしているよう!弦楽五重奏は独奏にぴたっと寄り添い、テンポや強弱の変化、気持ちまでも独奏とシンクロしていました。ラストのピッチカートが可憐!演奏が終わると、近藤瑠伊くんは胸に手を当てて深々とお辞儀。素晴らしい!「習い事の発表会」なんてレベルじゃない、演奏そのものも所作も立派なヴァイオリニストです!リサイタルだって協奏曲ソリストだってできますよ!超満員の大ホール、ベテラン勢による伴奏、そんな中で見事な独奏を聴かせてくれた近藤瑠伊くん。あなたが優勝!

今度は石田組長と組員さん全員と、なんと近藤瑠伊くんも1stヴァイオリンの一員として舞台へ。組長は下を「石田組」と大きく書かれた袴のようなパンツ、上は白地に「石田組長」と縦書きされたTシャツの装いでした。演奏に入る前に、組長が「未来のスーパーソリスト」近藤瑠伊くんを紹介。錚々たる石田組メンバーに加わってもサマになる、この堂々たる姿!近藤瑠伊くんは既にスーパーソリストかも!また、客席には瑠伊くんの弟さん(彼もヴァイオリンの名手だそうです)がいらしている事も紹介されました。アンコール3曲目は、メンケン(松岡あさひ編曲)「時は永遠に」。ディズニー映画「美女と野獣」の音楽ですね!演奏が始まると、客席から自然と拍手が起きました。プリンセスのためのお歌、名古屋お嬢様たちにすごく喜ばれている!組長のヴァイオリン、その思慮深さを感じる深く優しい音色に私はハッとさせられ、瞬時に心掴まれました。山場での、優しく繊細に美しく歌うのはまさに愛!私は胸がいっぱいになりました。なんて「愛」が尊い!組長のヴァイオリンは、こんなラブソングもハマりますね!なお、演奏後にどう動けば良いか戸惑っていた瑠伊くんを1stヴァイオリンの塩田脩さんがさりげなくフォロー。優しい♪

4たび(!)石田組の皆様が舞台へ戻ってきてくださいました。組長はちょっとだけお色直しして、上を赤地に「石田組長」と縦書きされたTシャツにお着替え。組員の皆様は一肌脱いで、裸足です(白い肌がまぶしい♪)。加えて1stヴァイオリンの塩田さんと瑠伊くんの2名は、黒いサングラスをかけていました。奏者の皆様がキュインキュインと弦を鳴らす、この喧噪!うわあキター!大好き!アンコール4曲目クイーン(松岡あさひ編曲)「ボーン・トゥ・ラブ・ユー」。石田組長が"I Was Born To Love You "~♪とまっすぐに歌うのがストレートに胸に刺さり、私はこの時点で早くも涙。ダダダダダ ダダダーン♪のベースに血が騒ぐ!そして、全員合奏による"An amazing feelin' "~♪がうんと爽やかでピュアで、泣けて泣けて……。私はあなたを愛するために生まれてきた、この出会いこそアメージング!私は笑って泣いて、情緒が大忙しでした。ああやっぱり石田組はすごいです。すっごい!

なんとまたもや舞台へ戻ってきてくださった石田組の皆様(近藤瑠伊くんはお休みです)。石田組長、またまたTシャツのお色直しをしていて、黒地に「多分明日 筋肉痛です」の文字……!そうですよね。前日の福井公演から連チャンで名古屋公演。しかも盛り盛りプログラムにてんこ盛りアンコールまで、もう満身創痍ですよね。それなのに、組長「もう1曲弾きます」。きゃあああ!出血大サービス、本っ当にありがとうございます(感涙)!ヴィオラから入る、スキップのような前奏。ああこの曲は!アンコール5曲目は、おなじみオアシス(松岡あさひ編曲)「ホワットエヴァー」。心温まる、カントリー調のフレンドリーな音楽に、私はくつろげるマイホームタウンに戻ってきたような気持ちに。石田組こそ私の心のふるさと!メロディを歌う石田組長のヴァイオリンと、組員さん達の合奏が呼応し合うのには愛があふれていました。おおっ、ピアニッシシシシ……モ!石田組のアンサンブルは極限まで音量絞っても美しい!そしてホールの音響がとってもイイ!今回の手拍子の音頭取りは、2ndヴァイオリン・鈴木浩司さんでした。手拍子のシメの合図では手をきゅっと結んでグーを作り、手拍子が鳴り止まなかったのでもう一度きゅっとグー。ほっこりしました。なんてあったかい世界!最後はみんなでにっこにこになれた、最高のラストでした!

会場はほぼ総立ちのスタンディングオベーション!カーテンコールでは、チェンバロ&編曲の松岡あさひさんとゲストの近藤瑠伊くんを含む出演者全員が舞台後方にずらりと並びました。壮観!石田組の皆様、全員優勝です!最後は出演者の皆様が客席に大きく手を振ってくださり、熱狂の中で会はお開きとなりました。ああ私は石田組のことを好きで好きでたまらない!10年後20年後、100年後や1000年後だって、未来永劫愛し続けたい!既に心のふるさとになっている石田組に、私は必ずまた帰ってきます!11月の日本武道館をはじめ、全国各地でのコンサートも大盛況となりますように。そして11月の札幌公演、首を長くしてお待ちしています!

「石田組 2023-24 アルバム発売記念ツアー 札幌公演」(2023/10/01)。カリスマ・ヴァイオリニストの石田泰尚さんが率いる弦楽アンサンブルが北海道初上陸。王道クラシックの正統派な良さに、「型破り」の想像を超えた面白さ!地元kitaraでの石田組初体験は、アメージングな出会いでした!

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「石田組 2023-24 アルバム発売記念ツアー 網走公演」(2023/10/14)。公演数日前に決めた遠征。やはり組の面白さはリアルに体感しなくちゃわからない!本気のパフォーマンスにネタ付きアンコール4つ、お見送りまでサービス満載!僅か2週間前に出会った石田組に、2度目の体験にしてすっかりとりこになりました。

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札幌交響楽団 hitaruシリーズ定期演奏会 第18回~モルダウ・・・「わが祖国」全曲(2024/08) レポート

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今回の札響hitaru定期は、「下野竜也 首席客演指揮者就任記念」公演。生誕200年記念のスメタナの連作交響詩「わが祖国」と、生誕110年記念の早坂文雄「二つの讃歌への前奏曲」が取り上げられました。札幌市民の期待は大きく、平日夜の公演にもかかわらず会場の1階席は9割以上の席が埋まる盛況ぶりでした。

札響公式youtubeの企画「札響プレイヤーズトーク」。今回(2024年8月)は、指揮の下野竜也さんと同郷、トロンボーン首席奏者の山下友輔さん、ヴァイオリン首席奏者の桐原宗生さん、トランペット奏者の佐藤誠さんによる「鹿児島県人会」トークです!世代は異なっていても、地元の話題で大盛り上がりできるって素敵&楽しい!「茶碗蒸しの歌」は必聴です♪

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札幌交響楽団 hitaruシリーズ定期演奏会 第18回~モルダウ・・・「わが祖国」全曲

2024年08月01日(木)19:00~ 札幌文化芸術劇場 hitaru

【指揮】
下野 竜也<首席客演指揮者:2024年4月就任>

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:会田 莉凡)

【曲目】
早坂 文雄:二つの讃歌への前奏曲
スメタナ:連作交響詩「わが祖国」


愛する地元オケが生み出す「大河」の流れに身を任せ、地元のお客さんたちと同じ時間を共有できた喜び!指揮の下野さんと札響による、誠実で愛情あふれる演奏は、作品に込められた作曲家自身の思いや息づかいまでもが伝わってくるようでした。また演奏を通じて、作品そのものからも迷いのないひたむきさが感じられたのがうれしかったです。聴き手は身も心も丸ごと委ねられ、大船に乗った気持ちで壮大な世界に浸ることができました。若き日の早坂文雄が書いた「二つの讃歌への前奏曲」は、オーケストレーションの不慣れな部分をまるで感じさせないほど、作曲家の思いがあふれる響きが素晴らしい!後年の「左方の舞と右方の舞」(私は2021/1/28のhitaru定期にて聴きました)を彷彿とさせる、和の「雅」な響きがとても魅力的でした。演奏機会が極めて少ない作品を、作曲家自身の思いと誠実に向き合った演奏で聴けたことに感謝です。そして大作であるスメタナ「わが祖国」は、長編大河ドラマを一気見したような充実のひととき!作曲家がたくさん書いた音符たちが、生き生きと跳ねて踊り、大きな流れとなって壮大な世界を形成していくのを目の当たりにしました。また繊細にもダイナミックにもなる大河の流れは、現実に目を背けることなく故郷の姿を映し出した上で、故郷とそこに住む人達を愛ある温かな眼差しで見守っていると感じられました。私は比較的新しい札響ファンのため、札響での伝説の名演奏を知りません。加えて、スメタナについても、チェコの歴史や文化についても疎いです。それでも「地元を愛する気持ち」の尊さを肌で感じられたのは何よりの喜びでした。作曲家自身の思いと祖国愛が伝わってきたのは、ひとえに誠実で愛情あふれる演奏のおかげです。ありがとうございます!

hitaru定期名物のホワイトボードは、早坂文雄スメタナを大河を挟む形で書いた(描いた)超力作!またプログラムと一緒に配布された(kitaraでの札響名曲シリーズでも事前配布されました)、札響STAFFによる気まぐれ通信「かぷりっちょ」は、首席客演指揮者に就任する下野竜也さんの事とスメタナ「わが祖国」について手書き文字でびっしりと記述。いずれも大変読み応えありました!これも「愛」ですよね!

今回私は1階席の後方(2階席が被さる場所)にて聴きました。事前に深く考えずに取った席が最前列(!)で、4月のhitaru定期ではそのまま着席しましたが、今回はスタッフのかたにお願いして、後方の空席に席替えしてもらいました(大変お手数おかけしました。ご配慮に深謝いたします)。頭上にすぐ天井があると心理的な圧迫感があって落ち着きませんが、音響は良かったですし、たまたま私の前列が空席だったためか視界も良好で、舞台を俯瞰できてよかったです。「ベスト」ではなくとも「ベター」な席。今後また別の席にて聴いてみたいと思います。


開演15分前からの「プレトーク」。今回は、指揮の下野竜也さんお一人によるトークでした。以下、抜粋でレポートします。首席客演指揮者就任のごあいさつ(「鹿児島県人会4人目」と仰っていました)に始まり、札響で今まで指揮してきた公演についてさらっと振り返り。また、hitaruシリーズ恒例の日本人作曲家として今回取り上げる早坂文雄については、時間を使って詳しいお話しがありました。「札幌が生んだ二大巨頭(もう一人は伊福部昭)」は、伊福部さんの方が先に世に出たのだそう。早坂さんは伊福部さん宛ての手紙で、悔しいという思いと、そう思ってしまう自分がみっともないという事を書かれているとのことです。「人柄を感じさせる手紙」「早坂さんは人間らしい」と、下野さんは仰っていました。ちなみにこの頃の早坂さんは切手も買えないほどの貧しさだったとか。今回取り上げる「二つの讃歌への前奏曲」は若い頃に書かれもので、その演奏(指揮は山田耕筰!)をラジオで聴いた早坂さんは「思っていたのと違う」と言った、とのエピソード紹介がありました。またユニークなタイトルは、「早坂さんが夢みたもの(讃歌)へ、畏敬の念を込め『前奏曲』としたのでは?」と下野さんは「妄想」。なお自筆譜の写し(貸し出しもコピーも不可)が東京音大にあり、そこで教鞭を執る下野さんは、4時間ほど図書館に籠もって(!)、自筆譜を研究されたとのことです。作曲家への敬意として「弾きにくい指示も今日は行います!」。一例として、「カーエールーのーうーたーがー♪」と歌いながら「弓を下方向に振り下ろし続ける」ジェスチャーを繰り返し。弾きにくくても、この方が「浪曲の雰囲気が出る」と仰っていました。しかしハープは1台の指示のところを今回は2台にするとのこと。それは1台では弾けないから(作曲当時の早坂さんがハープをよく知らなかった可能性もあるとのこと)というのと、後半スメタナ「わが祖国」にハープを2台を使うため用意もあるから、だそうです。「どうぞ早坂さんの響きを味わって」と仰っていました。後半「わが祖国」については、「札響も全曲演奏は少ない」。また、よくある6曲のちょうど真ん中に休憩を挟むスタイルではなく、全6曲を続けて演奏。長丁場となるからでしょうか?「皆さんにお願いです。前半(早坂文雄)の後の休憩時間は、どうぞ『行ってきて(※どことは言いません、とも)』ください。お水もたくさん飲んで」。しかし6曲続けて演奏することで、「歴史小説のような大きなアーチを感じて頂けると思います」。「耳が聞こえなくなったスメタナは、たくさんの音符を書きました」。そして、「今日から(札響の)家族になったので遠慮無く」と前置きした上で、「今後とも札響をどうぞよろしくお願いします」と締めくくり。トーク終了となりました。


前半は、早坂文雄「二つの讃歌への前奏曲。札響では過去に1回(1968年8月10日、指揮:西田直道)、「札幌市創建100年記念式典」の演奏会にて取り上げられ、この時は伊福部昭の「交響譚詩」があわせて演奏されたそうです(プログラムノートより)。弦は14型でしょうか?コントラバスは1つ追加の7(hitaruの場合はたいていコントラバスが1つ増員されていると思います)。他の楽器編成は、フルート2、オーボエ1、イングリッシュホルン1、クラリネット2、バスクラリネット1、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、トロンボーン2、ティンパニ。そして2台のハープは、舞台向かって左側に並んで配置されました。1曲目 個人的には「雅」な印象でした。ヴァイオリンのトレモロによる出だしの美しさ!和風で雅な感じの音色に驚きました。西洋楽器でこんな音色が生み出せるんですね!またフルートのややくぐもった音色は、和楽器の横笛を思わせる響きでした。ハープは、メロディのみならず、余韻を残さない1音1音の響きがまるで和琴のよう!すごくきれい!そこにパッと登場したイングリッシュホルンのぐっと落ち着きある音色が存在感抜群でした。またプレトークにて指揮の下野さんが仰っていた、「弓を下方向に振り下ろし続ける」シーンは、チェロの半プルトヴィオラが行っていたと思います。「浪曲の雰囲気」はよくわかりませんでしたが(ごめんなさい!)、レガートで演奏するよりも独特のリズム感ができて、「和」の雰囲気が感じられたかも。作曲家の思いを汲んだ演奏、しかと見届けました!2曲目 個人的には、どちらかというと「武」の印象を持ちました。ここではハープは沈黙。金管が華やかで勇ましく、力強く刻まれるリズムは士気を上げる感じ。ただ、チャンチャンバラバラの激しい戦いではなく、神仏に奉納する舞のように私は感じました。ティンパニと低弦がぐっと来るカッコ良さ!大好き!ソロ演奏では、ぐっと重厚感あるバスクラリネット、ほの暗いクラリネット、空気を変えたコンマスソロが印象深かったです。個人的にはまったく初めて聴いた曲。本質的な理解には遠く及ばなかったかもしれませんが、日本的な雰囲気と各楽器の珠玉の音色を自分なりに楽しむことができました。演奏後、指揮の下野さんはスコアを大きく上に掲げて、作曲家への敬意を表しました。

後半は、スメタナの連作交響詩「わが祖国」。札響での全曲演奏は過去に4回で、前回は伝説のラドミル・エリシュカさん指揮(2009年10月31日)。ちなみに「ヴルタヴァ(モルダウ)」のみ抜粋演奏は過去に253回(!)のようです。弦は前半と同じ14型。木管は基本の2管に加えピッコロ1。金管はホルン4、トランペット2、トロンボーン3、チューバ1。打楽器はティンパニ、シンバル、トライアングル、大太鼓。そしてハープ2台は舞台の両翼に1台ずつ配置されました。第1曲「ヴィシェフラド(高い城)」 はじめのハープ二重奏がなんて美しいこと!ポロンポロンとつま弾かれる音は竪琴のよう。グリッサンドによる華やかで美しい響きは目が覚める鮮やかさ。木管群がゆったり歌うのが素敵!私は大河ドラマの幕開けをイメージしました。澄んだ弦のスケールの大きさ、トランペットのファンファーレの温かさ!母なる「わが祖国」への畏敬の念と愛が伝わってくる、壮麗な音楽に心洗われました。緊迫感あるところから、全員合奏の盛り上がりに。高音のメロディがなんとも華やかで、大太鼓がドンドン鳴るのに気持ちが高揚。この華やかさが暗転するところの、沈み行く弦のトレモロにゾクっとしました。クラリネットの歌が哀しい。穏やかで壮大な締めくくりに向かう直前に登場した、ハープの美しさはまた格別で、「わが祖国」は大変美しい国なのだろうなと想像しました。そのまま続けて第2曲「ヴルタヴァ(モルダウ)」 冒頭のフルート二重奏が素敵すぎて鳥肌モノでした!哀しくも美しいメロディが、それこそ立て板に水のごとく、よどみなく流れる音楽。大きくなったり小さくなったりと変化しながら、水の流れは留まることなく続いていて、息継ぎのタイミングがわからなかったほど。ちなみにゲスト首席は札響の元フルート首席奏者の高橋聖純さんでした。クラリネットが合流すると流れはダイナミックになり、弦ピッチカートは水が跳ねているよう。大変有名なメロディをヴァイオリンが奏でると、美しく哀しい響きが胸に来ました。同時に「川の流れ」を低弦が表現していると気づき、流れが途切れずに続いている事に感激!金管打楽器の壮大さに、大河の雄大さを思いました。「村の婚礼」のダンスは、ステップを踏むリズムが楽しい!次第に音が小さくなっていったのは、婚礼が行われている場所から離れ、川の流れが別の場所へ移ったからでしょうか?フルート&クラリネットによる澄んだ川の流れにハープの輝かしさ、ヴァイオリンの天国的な美しさ!とても美しい場所へ来たようでした。低音金管群が効いた力強い盛り上がりは、大きな濁流のよう。低音メインの中でも、存在感抜群だったピッコロが印象深かったです。速い流れでリズミカルに明るく盛り上がるクライマックスは胸が熱くなりました。母なる大河は、祖国の様々な土地とそこに住む人達を見守っている!第2曲が終わると、ハープ奏者のお2人が退出されました。第3曲「シャールカ」 ジャン!と開口一番からインパクト大!戦闘を思わせる勇ましいメロディに胸が高鳴り、細かく休符が入るキレッキレのリズムに血が騒ぎました。そして他パートが沈黙する中、寂しげに歌うクラリネットと優美に歌うチェロの対話にハッとさせられました。一旦和解したのでしょうか?その後しばらくは幸せな感じになり、聴く方も少しほっとできました。しかしそこから再び戦闘に入る、少しずつ盛り上がっていく流れがすごかったです。滑らかに上昇するのではなく、地の底からマグマがぐわっと噴き出てきたような(例えが上手くなくてごめんなさい!)、ものすごいエネルギーと気迫!金管打楽器が派手に鳴り、弦が音を小刻みに震わせながら悲劇的なメロディを奏でたのには圧倒されました。この凄まじさ、すごい!第4曲「ボヘミアの森と草原から」 壮大な音楽!ティンパニ金管の響きの力強さ!弦は哀しく美しくしかし力強く、さすがの奥行きと厚みでした。中低弦のベースに乗って各木管が順に歌うところの温かさ、ヴァイオリンが歌うところの澄んだ響き、ホルンの牧歌的な歌など、森と草原の様々な表情を音楽が映し出しているよう。弦とその他のパートが交互に演奏して対話しているようだったのが面白かったです。後半の舞曲は「スラブ舞曲」に似ていると率直に感じ、独特のリズム感や少し哀しいメロディを楽しめました。木管群のターンでは、中でもフルートとホルンの幸せな響きが印象深かったです。第5曲「ターボル」 ホルンと低弦による重く暗い響きに気持ちがざわつき、ティンパニ強打から全員による強奏がガツンと来ました。その迫力に震える!全体を通じてベースにタタターター♪のリズムがあり、ほの暗かったり重厚だったり華々しかったりと色合いが変化していたと感じました。重厚なところの弦の厚みがカッコ良くてビリビリくる!華々しいところの金管、中でも力強いトロンボーンインパクト!また強奏の谷間での、ほのかな光を感じるクラリネット独奏が素敵でした。戦闘シーンを思わせるテンポの速い流れでは、低音が効いた勇ましく重厚な響きの中で、光を放つピッコロが存在感抜群!ティンパニが鼓舞する、トランペットのタタターン♪の繰り返しが印象的でした。低弦がぐっと低い音でゴリゴリ弾き進めるところが超カッコイイ!第6曲「ブラニーク」 打楽器が派手に鳴り、戦闘シーンの続きのような音楽は、重厚な弦が力強く刻むリズムが印象深かったです。そしてパッと現れたオーボエにハッとさせられました。地上の争いから遠いところにある崇高な美しさ!他の木管群と重なったり対話したりする流れはとっても温かく優しい世界。戦闘シーン再びの後に登場したホルンの穏やかな歌が心に染み入りました。そこからは音楽全体が前向きに変化。終盤の第1曲の回想(「かぷりっちょ」にあった、指揮の下野さんが「いつも感激する」と仰っていたところ)は、華やかで堂々とした演奏が清々しく、ここまでの長い道のりを思うと込み上げてくるものがありました。大団円に感無量です!

カーテンコールでは、ハープ奏者のお2人も舞台へ。指揮の下野さんは各パートに順に起立を促して(管はトップ奏者→パート全員、弦はパート毎に、最終的にオケ全員!)讃えられました。私にとって記念すべき名演奏との出会いに感謝!大河ドラマ雄大に描き出したシモーノさんと札響の皆様に大拍手です!本年度から新しく「家族」になってくださった、指揮の下野竜也さん。札響に来てくださりありがとうございます!そしてこれからも末長くよろしくお願いします!

前回のhitaru定期です。「札幌交響楽団 hitaruシリーズ定期演奏会 第17回~童話と絵と音楽と」(2024/04/25)。ブルッフの協奏曲は、大巨匠のボリス・ベルキンさんの鮮烈かつ層の厚い独奏と、応えた札響との幸せな競演!尾高惇忠「音の旅」は絵本をめくるように楽しめ、「展覧会の絵」はオーケストラだからこその響きをたっぷり堪能。マエストロ広上のご縁から出会えた音楽に浸れた贅沢な夜でした!

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「伊達メセナ協会創立30周年記念事業 札幌交響楽団コンサート」(2024/07/13)。札幌からプチ遠征。私達のコンミス・会田莉凡さんのカッコ良すぎるソロとオケの包容力。カワケンさん流「苦悩から歓喜へ」の、突き抜けてパワフルかつ明快な演奏は気分爽快!会う度に素敵なサプライズが待っていて、今までよりもっと好きになる札響サウンドは、この日も私を夢中にさせてくれました!

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第22回 Sound Space クラシックコンサート ヴァイオリン&ピアノの奏(2024/07) レポート

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今回の Sound Space クラシックコンサート は、私達の札響コンミス・会田莉凡さんがゲスト出演された、ヴァイオリン&ピアノの演奏会。これは聴き逃せない!と、私は前日の札響伊達公演(会田莉凡さんがソリストとしてご出演!)に引き続き、こちらの演奏会にもうかがいました。札幌市民の期待は大きく、当日の会場はほぼ満席の盛況ぶりでした。


第22回 Sound Space クラシックコンサート ヴァイオリン&ピアノの奏
2024年07月14日(日)18:30~ ザ・ルーテルホール

【企画・プロデュース】
佐藤 洋美

【出演】
会田 莉凡(ヴァイオリン) ※札幌交響楽団コンサートマスター京都市交響楽団特別客演コンサートマスター
水口 真由(ピアノ)

【曲目】
ドビュッシー:美しき夕暮れ
ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ ト短調
ラヴェル:ツィガーヌ

ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」ヘ長調 op.24
サラサーテツィゴイネルワイゼン

(アンコール)
エルガー:夕べの歌

ピアノはスタインウェイでした。


会田莉凡さん、なんてすごいかた……!その引き出しの多さに、音の説得力に、底知れぬお力に驚かされ、とても心打たれた夜でした。技術力や表現力が素晴らしいのはもちろんのこと、なにより会田さんの音そのものに「力」があると私は感じました。物理的に大きな音という意味ではなく、言うなれば「生命力」のある音。気力・体力の次元を超えた、魂が持つ「魂力」とも言えるかもしれません。2つの「夕暮れ」、2つのロマの音楽、2つのソナタという、盛りだくさんなプログラムは、最初から最後まで充実した演奏で素晴らしいものでした。私がとりわけ感銘を受けたのはベートーヴェンです。スプリング・ソナタの魅力は、美メロと優雅さだと私は思っていました。しかし今回の演奏はそこにとどまらず、発する音や表現すべてに生命力が満ちあふれている!私は素直に驚き、同時にベートーヴェン「らしさ」が感じられて、とてもうれしくなりました。もちろん努力の積み重ねがあってこその演奏と存じますが、こんなにも生きる力がわいてくる演奏は、やはり会田さんご自身の「生命力」が強く影響しているのでは?それにしても、会田さんの気力・体力の充実ぶりは半端ないです。この日の会田さんは、札響・京響でのコンミスとしての過密スケジュールに加え、2日連続でソリストとして協奏曲を弾いた直後。しかしまったくお疲れを見せずにモリモリ演奏して、演奏そのもので聴き手の心を動かし、さらにトークでも盛り上げてと、すごすぎます!座って聴いているだけの私でも2連チャンしただけでヘロヘロなのに……もう平服するしかありません!会田さん、札幌に来てくださって、本当にありがとうございます。あちこちに引っ張りだこで超ご多忙とは存じますが、札幌にて室内楽の演奏も可能な限り聴かせてくださいませ。もちろん札響のことも引き続きよろしくお願いいたします!

ピアノの水口真由さんは、今回も共演者と息の合った素晴らしい伴奏にてしっかり土台を作ってくださいました。日本各地を飛び回っている会田さんとは、事前に合わせる機会は限られていたと拝察します。しかし安定のピアノ伴奏はさすがの仕事ぶりで、安心して聴くことができました。Sound Space クラシックコンサートをはじめ、様々な演奏会にて多くの音楽家の皆様と共演を重ねている水口さんもまた、札幌の音楽界にとって大切な音楽家ですね!これからも札幌の音楽シーンをもり立ててくださいますよう、どうぞよろしくお願いいたします。そして、会田さんとの再共演もぜひ!


出演者のお2人が会場へ。ヴァイオリンの会田さんは全身スパンコールで覆われたブルーシルバー色のマーメイドラインのドレス姿。大胆な肌見せデザインで大人っぽい!ピアノの水口さんはシフォン素材のスカートがふわっとした、クリーム色のベアトップドレス姿。レモン色の大きな水玉模様やウエストの大きなリボンが可愛らしい!拍手で迎えられ、すぐに演奏開始です。1曲目は、ドビュッシー「美しき夕暮れ」。序奏のピアノはゆったりとして温かく、美しい夕暮れのオレンジ色が見えるようでした。柔らかく始まったヴァイオリンがまた美しく、細やかに強弱を変化させながら、音がゆらぐのが素敵!空が次第に薄暗くなっていくような、繊細な美しさでした。ピアノが沈黙し、ヴァイオリンが独り言のように歌うシーンとその余韻の奥行き!ヴァイオリン&ピアノによる、ゆったりと美しい歌に心癒やされました。

ここで、水口さんからごあいさつと出演者紹介。続いてお2人によるトークがあり、以降も曲の合間に演目解説を含めたトークがありました。楽しいお話しは多岐にわたり、会場は終始和やかな雰囲気。なお、トーク内容すべてはとても書き記せないため、惜しいですが本記事に記載する内容はダイジェスト版といたします事をご了承くださいませ。会田さんは「(水口さんから)いきなり(トークするよう)振られたんですけど」と仰りつつ、来場したお客さん達へのお礼と自己紹介、同年代の(「で、いいよね?」と水口さんに確認を取っていました・笑)水口さんとは初共演です、といったお話しをされて、簡単な曲目解説をしてくださいました。1曲目に取り上げた「美しき夕暮れ」は、前半がフランスものプログラムということで、チラシには掲載していない演目を追加したとのこと。その特徴を「パステル」と表現されていました。そして次に演奏するソナタは、フランス流の「ウィット」。ドビュッシーが晩年に書いた作品で、「2小節毎に変化」するのだそうです。ちなみにドビュッシーソナタは、会田さんが17歳の時に挑戦した日本音楽コンクール3次予選の課題曲で、その当時はまさかそこまで進めるとは思っておらず一夜漬けで暗譜して臨んだ、というエピソード紹介がありました。その時は残念な結果に終わったそうですが、おそらく会場にいた人達は皆、会田さんがその数年後に日本音楽コンクール第1位の栄冠に輝いた事は承知していたと思います。

ドビュッシー「ヴァイオリン・ソナタ ト短調。第1楽章 初めの方は歌曲を美麗に歌っているようでした。舞曲のようになってリズミカルに駆け抜けたり、思いっきり情熱的に高音域で強奏したりと、短いスパンで次々と表情が変化。「パステル」ではない、一瞬一瞬が描き出す個性はくっきりハッキリしていて、「千の表情」それぞれの面白さを楽しめました。超高音に吸い込まれそう!ピアノと一緒に頂点に達した後の沈黙にゾクっとさせられ、細かく音を繰り出しながらぐいぐい進んで行くところに、私は(文化圏が異なるにもかかわらず)フラメンコを連想。引っ張りすぎずにスパっと終わったラストが印象的でした。第2楽章 生真面目路線をあえて外してくる、(少なくとも私には)予測不可能なテンポやアクセントに翻弄されました(大歓迎です!)。ピアノに重ねていくピッチカートの凄み!大きな音ではないけれど、ここぞというツボでピッチカートが来るのがカッコ良かったです。ヴァイオリンが神秘的に歌うところの美しさ!加えてここでは、ピアノの左手がメロディで右手が和音だったようで(勘違いでしたらごめんなさい)、ピアノがユニークだなとも感じました。ヴァイオリンは滑らかだったりキレッキレだったりと様々な表情を見せ、ラストはここでも引っ張りすぎずにあっさりと締めくくり。第3楽章 はじめの星が瞬くようなピアノの美しい響きに惹きつけられました。ヴァイオリンはゆったり美しく歌ったかと思うと、加速して一気に駆け抜け(美音で速くて驚愕!)、その後のヴァイオリンとピアノの絡みが面白かったです。お互いに呼吸と鼓動をシンクロさせ、テンポを細かく変化させながら流れを止めずに、一緒に前の方にアクセントが来る演奏だったり、強弱の波を何度も繰り返したり、またヴァイオリンが繰り出すフレーズの終わりにピアノがキララン♪と入ったり。こんなに2人で息ぴったりの勢いある演奏で来られると、何でもアリな音楽にものすごい説得力を感じました。クライマックスでは、ピアノはダイナミックになり、ヴァイオリンの超高音のトリルが華やか!強奏の明るい重音でスパッと締めくくったラストが清々しい!15分ほどの短いソナタで、会田さんのヴァイオリンの「千の表情」と、ぴたっと併走する水口さんのピアノの良さが楽しめました。

会田さんによるトーク。客席から拍手が起きる際に、後ろに下がる水口さんについて「真由ちゃんは謙虚ですよね」。単旋律のヴァイオリンに対し、ピアノはたくさんの音を弾いているため「大変」と、水口さんの事をとても褒めていらっしゃいました。「でも伴奏だと暗譜しなくて済むからラク、って言ってました(!)」……一度持ち上げておいてから落とすスタイル(笑)。しかしこんなぶっちゃけトークができるのは、お2人がすっかり打ち解けていらっしゃる証拠ですよね。また会田さんは、前々日に函館、前日に伊達で開催された札響の演奏会にてソリストとして出演されたことをお話しくださいました。しかも車をご自分で運転しての長距離移動だったそうです。先月には札響で道東に行った事もお話しくださり、東京生まれ・東京育ちの会田さんは道内の色々なところを訪れるのを楽しんでいらっしゃる様子。「札響は今日はまた別の演奏会のリハーサルです」と、札響のハードスケジュールぶりにも触れられました。次の演目の解説では、ラヴェルがロマ(「今は“ジプシー”って言っちゃダメなんだよね?」と水口さんに確認されていました)の音楽を題材に書いた作品、とまず紹介。前半はヴァイオリン独奏にてロマの人達の嘆きを表現し、後半は伴奏(オーケストラのたくさんの音を、今回はピアノ1台で!)が入るとのこと。管弦楽版は様々な楽器が効果的に使われており、面白いのだそうです。「今回の演奏も面白いと思って頂ければ」といった事を仰っていました。

ラヴェル「ツィガーヌ」。ヴァイオリンの最初の1音からものすごい気迫!様々な思いを内に秘めているような、低音の強さに圧倒されました。フレーズの強奏が終わる毎に現れる沈黙の力!超高音のささやきに思わず身震い。ヴァイオリンが歌ったメロディの寂寥感に、私はついコダーイ無伴奏チェロソナタを思い起こしました。弓を勢いよく下に引きながらのピッチカートのインパクト!ピアノが加わってからは、ヴァイオリンとピアノが手を取り合いダンスしているようなリズム感が素敵!ヴァイオリンの、民族楽器を思わせる掠れた音や、ピアノに合わせてリズミカルにピッチカートを繰り出すのがとても魅力的でした。高速演奏や左手ピッチカート等の超絶技巧がすごい!そしてダイナミックなピアノに乗って、情熱的に舞曲を歌うヴァイオリンの妖艶さがたまらなく良かったです!ラストはピアノもヴァイオリンもどんどん加速して、目にも留まらぬ早業に圧倒されました。めちゃくちゃカッコ良かったです!演奏が終わると、水口さんから「15分間の休憩に入ります」とアナウンスがありました。

後半。会田さんが最初に「よく休めましたか?」と会場に問いかけ、会場が和みました。今回のメインとなるソナタについては、お2人で色々と候補を出して話し合い(LINEで!)、「水口さんがまだ名曲スプリング・ソナタを演奏した事が無い」ことから、ぜひやってみましょうと決めたそうです。その時は2月の寒い時期で、爽やかな春の季節にぴったり!と思っていたものの、「今は暑くなってしまって(!)」。しかし、「演奏を聴いて、爽やかな気持ちになって頂ければ」と仰っていました。

ベートーヴェン「ヴァイオリン・ソナタ第5番『春』ヘ長調 op.24」。第1楽章 春の小川のせせらぎを思われるピアノに乗って、幸せに歌うヴァイオリンが美しい!しかしただ美しいだけではなく、1音1音から湧き上がってくる生命力が感じられたのが素晴らしく、私は静かに感激していました。最初からベートーヴェンらしい音楽にぐっと引き込まれ、同時に会田さんが持つ音の「力」を強く認識。付点のリズムがウキウキした感じで楽しい!ピアノのメロディの下でヴァイオリンがうねうねした音を連ねる等、思いが途切れない流れに身を任せるのは心地よかったです。それでも要所要所で生命力の強さが表れた音と表現にハッとさせられました。例えば、クレッシェンドしながら明るくタンタンタンタン♪と音階を上っていくピアノに乗って、ヴァイオリンが上昇していく波の力強さ、頂点に達した時の覇気に満ちた音!また、ヴァイオリンがタッタッタッタッタン♪と輝かしく上昇するパターンが、少し日が陰ったのかやや暗く変化し、テンポ良い流れの中でさらっとニュアンスの違いが表現されていたのが印象深かったです。ピアノもかわいらしい高音の「せせらぎ」だけでなく、低音で同じメロディを奏でたところがあり、これもベートーヴェンらしさだなと感じました。そんな濁流(?)まで一気に飲み込んで、インパクトある強奏で締めくくったヴァイオリンの明快さ!なんて生命力!第2楽章 優しい響きのピアノと温かな音色のヴァイオリンによる、ゆったり穏やかな音楽が心地よかったです。一辺倒ではなく、時折トリルや跳ねるような音の並びが登場したり、強弱の変化だったりを、細やかに表現。そんな変化は、まるで気持ちの高まりが抑えきれないよう。個人的にはそれもベートーヴェンらしさと思いました。メインとサブを滑らかに交代したり、会話するようだったりの、やりとりの親密さも素敵でした。第3楽章 短い楽章でしたが、遊び心が感じられるダンスが楽しく、とても印象に残っています。ステップのリズムにウキウキ、華やかな音階駆け上りに気分が上がる!ヴァイオリンとピアノの掛け合いが小粋な感じで、テンポ良く進む音楽に、聴いている方は楽しく乗れました。第4楽章 次々と表情が変化する演奏が楽しい!ピアノの流麗なメロディを引き継いだヴァイオリンが明るく華やかに歌い、トリルや付点のリズムで彩ったり、また別のシーンでは3連符が軽やかに繰り出されたり。そんなヴァイオリンの後に続くピアノが、ヴァイオリンの真似っこをするようにトリルや付点のリズムや3連符を繰り出すのが面白かったです。遊び心が楽しい!細かな掛け合いのリズム感が良く、また主役とサブの交代もスムーズで、初共演のお2人が既にデュオとして気持ちを共有しているのがわかりました。最初のメロディを、ヴァイオリンが跳ねるように楽しく演奏したところはまるで舞曲のよう!明るく力強いラストが気分爽快!演奏後、会田さんは「ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタはまだ全曲は弾いたことないけど、今後札幌でも弾いていきたい」と仰って、会場に大きな拍手が起きました。本当に、今回のスプリング・ソナタが素敵すぎたので、ベートーヴェンの他のヴァイオリン・ソナタもぜひ聴かせて頂きたいと、私は強く思います。この際、ブラームスは後回しでもいいので(!)。続けて、会田さんは「ピアニストにとってはたくさんのソナタ作品があり、ヴァイオリニストにとってはコンチェルトもあり弦楽四重奏曲もあり……」と、音楽家にとって目標となる作品がたくさんある事を述べられた上で、「ベートーヴェン先生(『先生』という言い方が『指揮者の広上さんみたい』とセルフツッコミをされていました)は、一生かけてやっていきたい」と決意表明。会場は拍手喝采!札幌市民としても、1曲でも多くの演奏を拝聴したいです!

プログラム最後の演目は、前半ラヴェルと同じくロマの音楽を題材とした、サラサーテツィゴイネルワイゼン。前半ラヴェルと同様、左手ピッチカート等の超絶技巧も多いそうで、「速く弾けるだけでもダメ、歌えるだけでもダメ」。「本日はありがとうございました」と一旦シメのごあいさつをされてから、難曲の演奏へ。ピアノの悲劇的な序奏に続いて登場したヴァイオリンは、最初の深い低音からインパクト大!瞬時に世界を変えるこの音の凄み!音階駆け上りが鮮烈!テンポが少しゆっくりになってからは、ヴァイオリンの歌をたっぷり堪能できました。また演奏の手元をよくよく観察すると、弦を押さえる4本の指が大忙しで動いていたり、弦を押さえながら滑らせて滑らかに音階を移動していたり。様々な技巧を難なく行っていらしたのにホレボレしました(ちなみに私は、全席自由席の会場で前半は後方に座っていたのですが、休憩時間の間に前の方の空いた席へ移動。厚かましくてごめんなさい!でも移動してよかったです)。哀愁あるメロディをじっくり歌うところも、超絶技巧を駆使するところも、聴き所見所しかない演奏にどっぷり浸れました。ピアノのリズミカルな強奏から入った、テンポが速くなってからがまたすごい!細かな音を次々と繰り出しながら高速で歌い、歌いながらキュン♪と超高音をアクセントで入れたり、低音にてぐいぐい歌い進めながらタンタン♪と左手ピッチカートを素早く入れてきたり、目の前で繰り広げられる凄技がすごいことすごいこと。しかしそんな技巧的な面のみならず、ピアノと呼吸を合わせての勢いがとリズムの良さ、歌心もある演奏で、親しみやすいメロディを生き生きとした形で私達に聴かせてくださいました。ラストは思いっきり情熱的に駆け抜け、スパッと切れ味よく締めくくり。最初から最後まですごいものを聴かせて&見せて頂きました!会場は拍手の嵐!

カーテンコールに続き、水口さんからごあいさつ。今回、会田さんへのオファーを「まさか受けて頂けるなんて」と率直に仰っていました。日本各地に飛び回って超ご多忙な会田さんの事を「一体何人いるのかと」(!)。そうですよね。札響と京響のお仕事に加え、各地での室内楽や今回のようなリサイタルまであって、身体がいくつあっても足りなさそう!水口さんは「今回のオファーを受けたために体調崩さないでください」と、会田さんを気遣っていらっしゃいました。しかし「あと1ヶ月くらい」と付け加え、会場はちょっとウケていました。そんなそんな、ずっと元気でいてください!続けて、次回の Sound Space クラシックコンサート(9/29、チェロは札響チェロ奏者の小野木遼さん、ピアノは初出演の成毛涼香さん)と、ヴァイオリンとピアノのデュオコンサート(9/22、ヴァイオリンは城達哉さん、ピアノは水口真由さん)、2つの演奏会の宣伝。なお、ピアノの成毛さんとヴァイオリンの城さんは会場にいらしており、その場で起立を促されお客さん達へ紹介されました。お2人は今回受付にてチケットのもぎりを担当下さっていたかた達でした!また会田さんによると「城さんは私(会田さん)の1つ上の先輩」だそう。学生時代からよく知る間柄のようで、「城さんの美音を楽しんで頂けると思います」と仰っていました。そして会田さんご自身のお話しになり、「今後、札幌でもリサイタルをやっていきたい」「札響もよろしくお願いします」。会場に大きな拍手が起きました。

アンコールエルガー「夕べの歌」ドビュッシー「美しき夕暮れ」で始まり、エルガー「夕べの歌」で終わる、粋な計らい!2024年2月の札響定期(※指揮の尾高忠明さんが急病のため、指揮者を藤岡幸夫さんに交代しての開催)にて、管弦楽版が演奏されました。そのリハーサルの時に会田さんは「尾高先生」から「ヴァイオリンとピアノ版は演奏したことある?」と訊ねられ、まだ弾いたことがないのを「ダメだよー」と言われて、今回取り組むことにしたそうです。「ほっこりした気持ちでお帰り頂きたくて」とも仰っていました。ピアノの優しい響きに乗って、ぐっと深い低音で入ったヴァイオリンの味わい深さ!落ち着いた音色でゆったり歌うヴァイオリンの美を堪能できました。中間部はピアノの鼓動が速くなり、ヴァイオリンも切ない表情に。感極まったところでの力強いヴァイオリンに、私は意志の強さを感じました。再びゆったりになってからは、特に沈みゆく低音の深みが印象深かったです。高音で滑らかに歌いながらフェードアウトするラストが素敵!私は高ぶった気持ちが穏やかになり、心癒やされました。

終演後、会田さんと水口さんが舞台衣装のままロビーに出ていらして、お客さん達との歓談に応じていらっしゃいました。前日には協奏曲のソリストとして、この日はピアノとのデュオにて、会田さんの素晴らしい演奏に浸れ、その生命力に驚かされた私は感無量でした。本当にありがとうございます。超ご多忙とは存じますが、体調しっかり整えて、これからも素晴らしい演奏を聴かせてくださいませ。札響のことも引き続きよろしくお願いいたします!

この日の前日に聴いた演奏会です。会田莉凡さんがソリストとしてご出演!また、交響曲はこちらもベートーヴェンの第5番(!)、「運命」でした。「伊達メセナ協会創立30周年記念事業 札幌交響楽団コンサート」(2024/07/13)。札幌からプチ遠征。私達のコンミス・会田莉凡さんのカッコ良すぎるソロとオケの包容力。カワケンさん流「苦悩から歓喜へ」の、突き抜けてパワフルかつ明快な演奏は気分爽快!会う度に素敵なサプライズが待っていて、今までよりもっと好きになる札響サウンドは、この日も私を夢中にさせてくれました!

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会田莉凡さんが1stヴァイオリン奏者としてご出演された、弦楽四重奏の演奏会。「リッカ弦楽四重奏団 結成記念コンサート」(2023/12/13)。札幌にスケール桁違いのカルテットが爆誕!熱量高く核心を突く演奏による、ハイドンショスタコーヴィチブラームス。ハートに火がついた音楽家たちの本気を目の当たりにした、最高にアツイ夜でした!

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。