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札幌交響楽団 in ふきのとうホール Vol.5(2024/03) レポート

www.sso.or.jp

 

https://www.rokkatei.co.jp/wp-content/uploads/2024/01/240330.pdf

↑今回の演奏会チラシです。 ※pdfファイルです。


コロナ禍で何度も延期と中止を繰り返した企画が、今回ようやく実現しました。佐藤俊太郎さん指揮による、モーツァルト交響曲第40番とシェーンベルク浄夜」。私は早い段階でチケット入手し、当日を楽しみにしていました。また地元ファンの期待は大きく、当日は満員での開催だったようです。


札幌交響楽団 in ふきのとうホール Vol.5
2024年03月30(土)16:00~ ふきのとうホール

【指揮】
佐藤 俊太郎

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:会田 莉凡)

【曲目】
モーツァルト交響曲第40番 ト短調 K.550(第1稿)
シェーンベルク浄夜 op.4(弦楽合奏版)

(アンコール)
モーツァルト(佐藤 俊太郎 編):アヴェ・ヴェルム・コルプス


小さな空間からどこまでも広がる小宇宙。響きの良いホールにて、奏者お一人お一人の音が聴き取れる中、室内楽的な密なやりとりとオーケストラの壮大さを同時に味わえるなんて、とても贅沢!モーツァルト交響曲第40番については、大ホール・大編成とはまた違った、(作曲家が想定していた編成による)本来の姿の良さを知ることができました。ゴリゴリ力業で進むのではない、あくまで軽やかでしなやかなステップがなんとも良かったです。少数精鋭メンバーが思いを1つにして音楽を奏でるのは素敵!やはりふきのとうホールで聴く札響は最高です!

個人的には、何と言っても後半のシェーンベルクがすごく面白かったです!難解な印象の「シェーンベルク」というのと、元となった詩の内容に最初は共感できなかった事で、聴く前は自分が受け止められるかどうか少し不安だった私。いざ実演に触れると、ドハマリしてしまったのは嬉しすぎる誤算でした!まず、この小さな会場で、各パート内での分業が多い細やかな作りの音楽をじっくり味わえたのが良かったです。さらにそこから、表面的な語り口からはわからない隠された本心や単純には割り切れない感情の機微があると感じられ、演奏を通じて人間の奥深さを意識するように。夫婦間のやりとりというプライベートな状況が題材でも、どこまでも奥行きと広がりがある!今回の演奏に出会えてよかった!そしてアンコールがとても気が利いていました。悲劇から魂の浄化へ。アンコールも含めたプログラム全体で1つの物語のような流れは、聴く人すべてにとって救いとなったはず。最初の企画から4年以上の年月を経て、今回演奏会を実現くださったこと。なにより素晴らしい演奏を聴かせてくださったことに感謝です。


開演前に指揮の佐藤俊太郎さんによるプレトークがありました。まず、今回の企画は当初2020年3月の公演予定だったものが2回延期され、4年後の今回実現したことに触れ、「他では聞いたことがない、粘り強い企画力」と、多方面への感謝の気持ちを表明。舞台には22個のイス。少ない?否「これでいい」と、「ドン・ジョバンニの初演はこの編成だった」事を紹介くださり、今回は当時のスタイルで演奏すると仰いました。今回の演目について、モーツァルト交響曲第40番は「ト短調で始まりト短調で終わる悲劇」。シェーンベルク浄夜」は「始めは悲劇」で、元となった詩の内容(夫とは違う人の子を宿した妻の告白から、夫がその子を夫婦2人の子として育てて行こうと決めるまでのお話)を紹介くださいました。なお、当初の企画とは前半と後半を入れ替えて、今回シェーンベルクの方を後に持ってきたそうです。「今日の流れはまるでこの4年を表しているよう」「(「浄夜」で月の光が魂を浄化してくれるように)コンサートの後にきれいな月が出るといいな」と仰って、「それでは開演です」でトークは締めくくられました。待ちに待った企画、いよいよです!


前半は、モーツァルト交響曲第40番 ト短調 K.550」(第1稿)。第1稿はクラリネットなしで、管はホルン2、オーボエ2、ファゴット2、フルート1。弦は4-4-4-2-1の編成でした。第1楽章 弦楽合奏でそっと入った冒頭の美しさ!早速心掴まれました。木管群が呼応し合ったり弦が胸騒ぎのようにザワザワしたりと、それらすべてが奏者お一人お一人の音がわかる形で聴けるのがうれしい!しかし親密さのみならず、クレッシェンドで盛り上がってからのダイナミックさや、奥行き広がりを感じさせるホルンの存在感で、この少人数でも壮大な交響曲の響きを味わうことができました。また基本深刻な中で、ふと光が差すような明るいところの輝かしさが個人的には特に印象深かったです。第2楽章 ゆったりと振り子時計のようなテンポでの穏やかな音楽が心地よかったです。繰り返し登場した明るくスキップするような音が親しみやすく、足並み揃えて力強く音をのばすところでハッとさせられたりも。第3楽章 前の楽章から一転、力強い舞曲が色気があって超素敵!トリオでの木管群の柔らかさ美しさ!また、力強い低音が一瞬沈黙して、1つしかないフルートが寂しげにメロディを歌うところがとても印象的でした。第4楽章 さらに速くなり、強弱やリズムを変化させながら、前のめりに展開する音楽にゾクゾク。シャープな弦のカッコ良さ!時折低弦がリードするところがあったのが印象に残っています。またこの悲劇的な流れの中で、木管群が朗らかに歌うところにほっとさせられ心温まりました。力強い締めくくりまで、迷いなく駆け抜けた演奏が清々しい!音楽自体は悲劇でも、明快でクリアな演奏!私は胸がすく思いでした。素材そのものの良さを堪能できたのは、曲を生み出した作曲家と、札響の少数精鋭メンバーによる演奏のおかげです。ありがとうございます!

後半は、シェーンベルク浄夜 op.4」(弦楽合奏版)。単一楽章の曲のようです。弦のメンバーは前半と同じで、ヴィオラの席替え(前列にいた青木さんと後列にいた鈴木さんが前後交代)がありました。冒頭、ごく小さな音から入ったチェロ&ヴィオラ(いずれも第2奏者)の重低音にゾクッとしました。続くチェロ&ヴィオラ(いずれも第1奏者)のメロディが重々しい。掴みから思いっきり暗い感じに、私は思わず「怖い」と身構えました。全員合奏になってからも各パート内で分業があり、複雑に絡み合う響きは暗澹たる思いを表しているよう。強弱の波がおどろおどろしく、ガガガ……と不穏なざわつき(トレモロ?)のインパクト!悲鳴のようなヴァイオリンの後の、バン!と全員一緒のピッチカートの一打にビクッとしました。そこからは厳しい一辺倒ではなく、心境の変化やゆらぎも感じられるように。ヴィオラのソロとコンマスソロは少し落ち着いた夫婦の会話でしょうか?再び厳しい感情の波が来てからの、ヴィオラ(2プルト目)の連続ピッチカートは激しい鼓動のよう。強い感情の波があっても、ヴィオラソロやチェロソロに少し優しさが垣間見えるようになったと個人的には感じました。そして沈黙の力!ここで月の光が差したのでしょうか?沈黙の後に続いた中低弦の包容力!澄んだ空気のような合奏の上で、コンマスソロとチェロソロが語らうのが美しくて素敵すぎて!ただ「お花畑」なおめでたさではなく、大きな感情のうねりが合奏に現れているように感じました。終盤で2ndヴァイオリンとヴィオラが弓を上下させながら音の波を作っていたのが印象的で、精神性の高まりを感じました。合奏のうねうねした音の上で、コンマスソロが超高音でフェードアウトしたラストがきれい!なんてドラマチックな音楽!言葉で単純化などとてもできない、音楽が語る人間の奥深さ!私は引き込まれのめり込みました。すごいものを聴かせて頂きました。ありがとうございます!

アンコールは、モーツァルト(佐藤 俊太郎 編)「アヴェ・ヴェルム・コルプス」。ゆったり穏やかで、澄み切った音楽が何とも美しく、心洗われました。終盤でのコンマスによるビブラートは今この時を慈しむよう!モーツァルトの悲劇から始まり、魂を浄化したシェーンベルクを経て、最後の最後にこの曲を持ってくる演出がニクイです!終演後、外は夕暮れ時であいにく月は見えませんでしたが、冷たく澄んだ空気が心地よかったです。素晴らしい演奏に触れ、私の心も洗われました。ありがとうございます!札響ふきのとうホール公演、末永く続きますように。


この日の1週間前の聴いた札響の公演です。「札幌交響楽団 苫小牧公演2024」(2024/03/23)。オケは我らが札響、ソリストコンマス&首席の最強デュオによる、密で壮大で愛と情熱あふれるブラームスの二重協奏曲!想像をはるかに超える最高の出会いでした。また後半チャイ5は素直に聴けて胸打たれ、気分爽快になれました。

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昨年度の札響ふきのとうホール公演です。「札幌交響楽団 in ふきのとうホール Vol.4」(2023/02/14)。バーメルトさんと札響によるハイドン交響曲の朝昼晩。独奏たっぷりで各パートの見せ場も多く、物語のような展開もある、小編成ならではの魅力満載!親密で心温まる演奏会でした。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。