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札幌交響楽団 hitaruシリーズ定期演奏会 第17回~童話と絵と音楽と(2024/04) レポート

www.sso.or.jp
2024-2025シーズン・札響hitaru定期の初回は、札響友情指揮者・広上淳一さんによる「童話と絵と音楽と」。hitaru定期恒例の「日本人作曲家の作品」には、広上さんの恩師である尾高惇忠さんの「音の旅」が取り上げられました。また協奏曲のソリストには広上さんと親交があるボリス・ベルキンさんをお招きし、後半はラヴェル編曲版の「展覧会の絵」。マエストロ広上ならではの色彩豊かなプログラムに、平日夜のhitaruには多くのお客さん達が集まっていました。


札幌交響楽団 hitaruシリーズ定期演奏会 第17回~童話と絵と音楽と
2024年04月25日(木)19:00~ 札幌文化芸術劇場 hitaru

【指揮】
広上 淳一(札響友情指揮者)

【独奏】
ボリス・ベルキン(ヴァイオリン)

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島 高宏)

【曲目】
尾高 惇忠:音の旅-オーケストラのための
 [1. 小さなコラール / 2. 森の動物たち / 3. おもいで / 4. 優雅なワルツ / 5. シチリアのお姫さま / 6. エレジー / 7. 前奏曲 / 8. 雪国の教会 / 9. なめとこ山の熊 / 10. 注文の多い料理店 / 11. 種山ヶ原 / 12. どんぐりと山猫 / 13. 古い旋法によるフガート / 14. バレリーナ / 15. フィナーレ~青い鳥の住む国へ~]

ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番

ムソルグスキーラヴェル編):組曲展覧会の絵
 [プロムナード / 1. 小人(グノームまたはノーム) / プロムナード / 2. 古城 / プロムナード / 3. テュイルリーの庭、遊んだ後の子どもたちの喧嘩 / 4. ビドロ(ブィドウォ) / プロムナード / 5. 卵の殻をつけたひなの踊り(卵の殻をつけたひよこのバレエ) / 6. ザミュエル・ゴールデンベルグとシュムイレ / 7. リモージュの市場 / 8. カタコンブ / 死者たちとともに、死せる言葉で / 9. バーバ・ヤガーの小屋 / 10. キーウ(キエフ)の大門]


すごい協奏曲を聴いてしまいました……!大巨匠のボリス・ベルキンさんが奏でる音楽は、なんて鮮烈!かつ幾重にも重なる層の厚み!いえ、こんなありきたりな言葉では到底語れないほど、目が覚めるインパクトがありました。またそれに応える札響がすごかったです!ベルキンさんの独奏に良い刺激を受けて、もっと行けるまだ行けると、天井知らずなお力を発揮していたと私は感じました。一生かけても聴ききれないほど数多のソリストがいる中で、友情指揮者・広上淳一さんのご縁でボリス・ベルキンさんに出会えたこと。さらに地元・札響との唯一無二の競演を目の当たりに出来たこと。なんて巡り合わせ!この場に居合わせた私達は幸せです!このご縁に感謝します。

また尾高惇忠「音の旅-オーケストラのための」も、マエストロ広上のご縁で出会えたもの。なかなか聴く機会のない作品を、地元オケの演奏で楽しめたのはとてもラッキーでした。ピアノ連弾もきっと素敵だと想像しますが、多彩な楽器によるカラフルな響きはオーケストラならでは!また部分的にテーマになっていた宮沢賢治の童話や詩は、深追いすると恐ろしい(と私は思っています)のですが、その怖い部分も奥行きのある表現で聴かせてくださいました。そして私は通しでは初めて聴いた「展覧会の絵」も、オーケストラだからこその響きをたっぷり堪能。華やかなところや賑やかなところの良さはもちろんのこと、個人的には「悲しみ」が根底にあると感じられ、その表現に惹かれました。もっとも私は5日前に聴いたチャイ4でもシリアスな面に心動かされたので、もしかすると今の自分がそんな状態なのかもしれないのですが。しかし作品の深い部分での魅力を感じられ、個人的に今まであまり聴いてこなかった作品を今後も聴いていきたいと思えたのは大収穫でした。こんなにも充実の公演、平日夜のたった1回だけの開催なのが惜しい!hitaru定期はとても贅沢な企画だと、私は改めてそう思います。

おまけ。こんな失敗をする人は滅多にいないと思うので、参考程度に。私は今回もhitaru定期の席選びを間違えてしまいました(涙)。「客席後方だと前の人に視界が遮られがちだから、できるだけ前=列の数字が若い方で」くらいで、あまり考えずに取った席が、なんと最前列(所謂かぶりつき席)!そんなつもりじゃなかったのに……。良かった事といえば、弦のf字孔から漏れ出る空気の音までわかる至近距離で、ソリストの音を直接聴けてその技を凝視できたこと。マエストロ広上のノリノリなダンスがバッチリ見えたこと。それくらいです。舞台が目の前だとオケの音はダイレクトすぎてつらい……せっかくならもう少し後方席にてホールに響くまろやかな音を味わいたいなと思いました。またhitaruの舞台は高さがあるので(kitaraよりもずっと高いと私は感じました)、見上げなければならず首が痛い(!)。視界の面でも、オケメンバーは弦の最前列しか見えず、舞台の後ろの方はほぼ見えないという。ああ既にチケット取ってある8月hitaru定期も最前列K席(かぶりつき席)だわ(しくしく)。皆様お気を付けて、hitaru定期の「1階7列」は最前列ですよ!


本年度(2024年度)より、hitaru定期では開演15分前から「プレトーク」が行われることになりました。今回は、作曲家の八木幸三さんが指揮の広上淳一さんにインタビューするスタイルで進行。あごひげを蓄えた広上さんは赤いポロシャツ姿(もちろん本番では正装でしたよ)で、八木さんが「サンタクロースみたいですね」と仰って、会場が和みました。はじめに、広上さんの恩師である尾高惇忠さんについて。広上さんは「今ここに立っているのは、(尾高惇忠)先生のおかげ」と仰っていました。3年前に尾高惇忠さんが亡くなった直後の札響定期(金曜夜公演は2021/3/5、ちなみに私も聴いています)ではチェロ協奏曲が取り上げられたことに触れ、「素晴らしいチェロでした」と八木さん。今回の「音の旅」は元々はピアノ連弾曲で、それをCDで聴いた広上さんが「オーケストレーションしたら素敵」と尾高惇忠さんに進言。その後、尾高さんは内緒で管弦楽版への編曲を進めていらしたのだそうです。全曲演奏(15曲)は、「アンサンブル金沢に次いで2度目、フルオーケストラでは初(!)」。童話や宮沢賢治の詩を元に書かれた曲で、かわいい曲や聴きやすい曲が並ぶ、とのこと。八木さんは「日本の原風景を思い出す」と評していました。続いて、協奏曲のソリストとしてお招きしたボリス・ベルキンさんについて。大巨匠であるベルキンさんは「若く見えるけど今76歳(!)」。ベルキンさんは札幌がとてもお好きだそうで、今回はお得意のブルッフを演奏します、と紹介。ベルキンさんとは、広上さんがヨーロッパで生活を始めた頃からのお付き合いで、「大恩人」なのだそうです。「(今回)少しは恩返しできるかな」と広上さん。そして「展覧会の絵」について。「アル中(!)」のイメージがある、ロシアの作曲家・ムソルグスキーは「すごい才能」。ピアノ連弾曲を「ラヴェルが上手に編曲」したとのこと。管弦楽版への編曲は色々な作曲家が行っていて、今回取り上げるラヴェル版については「色彩豊か」であり、「(今日も)そんな演奏になる」。札響は「素晴らしいオケ」と、広上さんは太鼓判をおしてくださいました。八木さんの「どうぞお楽しみください」のシメ言葉に、会場は大きな拍手。和やかな雰囲気でトーク終了となりました。


前半1曲目は、尾高惇忠「音の旅-オーケストラのための」。今回が札響初演。オケの編成は14型でしょうか?木管は基本の2管編成に、持ち替えでピッコロ及びコントラファゴット金管はホルン4、トランペット2、トロンボーン3、チューバ。ティンパニに加えて多彩な打楽器と、ハープ、チェレスタ、ピアノ。はじめは弦メインでゆったりと。美しいヴァイオリンとぐっと支える低弦の組み合わせは安定感あり、安心して聴けました。続いて、ズチャズチャ♪の軽快なリズムが楽しい、賑やかな音楽に。後からプログラムで小タイトルを確かめると、なるほど「森の動物たち」がワイワイ登場したのですね!色とりどりの音の風景を楽しめる15つの小品が続く作品で、聴き手は絵本をめくるようにワクワクしながらその世界へショートトリップ。私はその時はとても楽しく聴いていました。しかし、聴きながら小品を指折り数えるも早い段階で順番があやふやになり、さらにはすぐ後に聴いた協奏曲の衝撃で1曲目の記憶がほとんど飛んでしまいました(協奏曲に気持ちを持って行かれて、休憩時間に1曲目の感想メモを書く余裕もなく……ごめんなさい!)。つきましては以下レポートは、曖昧な記憶を頼りに、ふわっとした書き方になります。間違いや勘違い、前後関係がおかしい等はお許しください。弦中心の、優美で広がりを感じる音楽が続いてから、柔らかな木管と高貴な感じのハープが登場。「シチリアのお姫さま」でしょうか?ハッとする美しさでした!そこからはしばらく管中心の哀しげな音楽に。舞曲のような小品のラストでソロを演奏したトロンボーンが素敵!低弦がずっとピッチカートでリズムを刻み高音弦の音がゆらぐところは、何やら得体の知れなさを感じゾクッとしました。ヴィオラパートが歌った、日本の「本当は怖い」子守歌のようなところも印象的でした。またカンカンカン♪と鳴る打楽器がインパクトあるところに私は「祭り囃子」を連想。華やかな金管群から入ったところもまた「陽」のイメージでした。その一方、「陰」にあたる、ぐっと内向きな感じのフルートソロが異彩を放っていました。深い森を思わせる低弦に乗って、どこかへ引き込まれていくようなフルートの底知れぬ怖ろしさ。もしかすると「注文の多い料理店」だったのでしょうか?ここのフルートは強く印象に残っています。終盤は明るい音楽に。希望に満ちた、勇ましく華やかな盛り上がりは気分爽快!次々と情景が変化していく約30分の「音の旅」、楽しかったです!演奏後、指揮の広上さんはフルートトップ(と思います。私の席からはよく見えず……)に起立を促し、讃えました。

ソリストにボリス・ベルキンさんをお迎えして、2曲目はブルッフ「ヴァイオリン協奏曲第1番」。オケの編成は10型(?正確にはわかりません)と、前の曲よりコンパクトに。木管は基本の2管編成で、金管はホルン4、トランペット2。そしてティンパニ。すべての楽章を続けての演奏でした。第1楽章 ティンパニ木管群によるオケの仄暗い序奏にゾクッとしました。続いて登場した独奏ヴァイオリンは、最初の低い音から音階駆け上る演奏が鮮烈!重々しいわけでも力んでいるわけでもなく、むしろ一見軽やか。それでも聴き手が瞬時に心奪われてしまう音は、うまく言えないのですが「寡黙な人が様々な感情を内包した上でやっと発した言葉の重み」があるように個人的には感じました。オケの弦のピッチカートとトリルのリズムは心臓の鼓動のようでゾクゾク。そのオケに乗って独奏ヴァイオリンが滑らかに奏でる音楽は、「悲劇的」と一言では括れない層の厚みが感じられ、引き込まれずにはいられない!幾度となく繰り返される重音は都度表情が変化していて素敵!また独奏ヴァイオリンが駆け抜けて、オケのターンへ移る流れがすごかったです。まったく隙なし!そしてこの独奏の勢いに応えるような、鬼気迫るオケの凄み!特に弦の気迫は半端なく、その時の私は怖くさえ感じました。温かな木管と一緒に歌う独奏ヴァイオリンの美しさ!幸せな感じでもどこか哀しくて、胸に来ました。支える低弦と遠くに聞こえるホルンが素敵!はじめの深刻さ再び。しかし今度は独奏もオケも厳しさの中に少し希望の光が見えるように変化したと感じました。第2楽章 穏やかなオケに乗って、ゆったり歌う独奏ヴァイオリンの柔らかさ優しさ!低音の温かさに癒やされ、ごく小さな音で囁くようなところの繊細さも超高音の多幸感も涙が出るほど美しく、聴き入りました。ソリスト小休止の時のオケ、特にヴァイオリンがまた美しくて!ソリストは掛け値なしに素晴らしいです。そしてソリストと対等に渡り合う私達の札響だってすごい!第3楽章 舞曲のメロディを軽やかに歌う独奏ヴァイオリンが鮮烈!華やかで少し哀しいメロディが心に染み入りました。メロディを引き継いだオケの盛り上がりが壮観!コンパクトな編成とは信じられないほど、どこまでも広がる世界が素晴らしい!独奏が高速で流麗に歌うところが鮮やかで、私は耳と目が釘付けになりました。独奏による舞曲のメロディは、登場する度に最初の1音がより深く力のこもった音に変化(と私は感じました)。また切れ目無い独奏は、時折少しゆっくりになったり囁くようになったりと細やかに変化していました。そこにオケがぴたっと寄り添い、音の大きさも速度も都度変化させていたのはさすがです。深刻に始まった音楽は力強く明るく締めくくり。最初から最後まで心奪われていた私は、演奏が終わってからも魂が抜けたようにしばし呆然としてしまったほどでした。ソリストが持つ唯一無二の音、そしてソリストから良い影響を受けたオケからあふれる渾身の響き。ここでしか聴けない唯一無二の幸せな競演に出会えて幸せです!ありがとうございます!


後半は、ムソルグスキーラヴェル編)の組曲展覧会の絵。オケの編成は、弦は1曲目と同じくらい(14型でしょうか?)。木管金管は増員かつ楽器の種類が増え、多彩な打楽器とハープ2、チェレスタが加わった大編成でした。はじめのトランペットソロが輝かしい!続くオケが壮大!展覧会に訪れた一人の人物が、扉を開きどこまでも広がる空間(展覧会の会場!)に足を踏み入れた。そんな情景を思い浮かべました。この「プロムナード」は以降も場面転換で数回登場し、ホルンが先陣を切ったり低音が効いていたりとシーン毎に色合いが変化。その度に新鮮な気持ちで聴けました。「グノーム」の最初の重低音がド迫力!ジャンジャン♪の切れ味!パパパパパ……と、けたたましい音が入ったり、弦の音が揺らいだりと、一筋縄ではいかない感じはまるで異世界に迷い込んだよう。また、ここでの弦の音の揺らぎに、私は前半「音の旅」での得体の知れない感じを思い出しました。「古城」での、寂しげなオケの中でソロを演奏したアルト・サクソフォーンが素敵!通常のオケにはないサックスが、声高な主張はしないにもかかわらず孤高な感じで存在感抜群でした。「テュイルリーの庭」は軽快な音楽が楽しく、マエストロも控え目に肩を揺らしてノリノリ♪「ビドロ」では、重々しい低音をベースに、ソロを演奏したチューバのもの悲しさが印象深く、盛り上がってからの底知れぬエネルギーに圧倒されました。その中でも私が特に衝撃を受けたのはスネアドラムです。雨霰のようでも号泣のようでもあり、悲しみや負の感情の深さを表しているよう!ここをピアノ連弾ではどのように表現しているのかにも私は興味が沸きました。続いた「プロムナード」は今までとは雰囲気が異なり、フルートの哀しげな響きがとても印象に残っています。「卵の殻をつけたひなの踊り」は、可愛らしい感じで跳ねるリズムが楽しい。マエストロもノリノリ♪ホイッスルのように、時折木管によるピー♪が入るのが面白かったです。「ザミュエル・ゴールデンベルグとシュムイレ」での、重厚な弦とパパパパパ……と鳴るトランペットの「水と油」のような対比がすごい!ワイワイ生き生きとした「リモージュの市場」から、重厚な低音金管群がガツンと来た「カタコンブ」に、雰囲気がガラリと変化したのには驚かされました。「死者たちとともに、死せる言葉で」は、低音の管と弦による重い鎮魂歌の良さはもちろん、個人的に刺さったのはヴァイオリンとヴィオラがごく小さな音でざわめいていたこと。細雪のようでも静かに涙するようでもあって心に染み入りました。ここもやはりピアノ連弾ではどうなっているのかが気になります!弦の序奏から入った「バーバ・ヤガーの小屋」は賑やか!ベースが先ほど聴いたばかりの「ひなの踊り」に似ているかも?と率直に感じました。弦がぐーっと盛り上げて、そのまま「キーウ(キエフ)の大門」へ。壮大で力強い管弦楽が清々しい!それでも時折寂しげな木管の歌が登場したのが印象的でした。再びじっくりと盛り上がっていく流れでの鐘の存在感!フィナーレはまさに管弦楽の真骨頂で、この響きを体感できるのは最高に気持ち良かったです!私達の札響、やっぱりすごい!今回もありがとうございます&これからも末永くお世話になります!


この日の5日前に聴いた公演です。「札幌交響楽団 第660回定期演奏会」(土曜夕公演は2024/04/20)。シーズン開幕は、正指揮者・川瀬賢太郎さんによる「2つの交響曲」。「お初」のアイヴス2番は何でもアリな面白さ!定番チャイ4は胸がすく快演に気分があがり、加えて新たな気付きも。それぞれの楽しみ方で思いっきり楽しめました!

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先月(2024年3月)には、広上淳一さん指揮による札響の地方公演を聴きました。「札幌交響楽団 苫小牧公演2024」(2024/03/23)。オケは我らが札響、ソリストコンマス&首席の最強デュオによる、密で壮大で愛と情熱あふれるブラームスの二重協奏曲!想像をはるかに超える最高の出会いでした。また後半チャイ5は素直に聴けて胸打たれ、気分爽快になれました。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。