自由にしかし楽しく!クラシック音楽

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第19回 北海道信用金庫 札響クラシック&ポップスConcert(2022/11)レポート

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北海道信用金庫が毎年開催している、札響クラシック&ポップスConcert。原則として文化の日に開催され、親しみやすい演目が取り上げられます。第19回となる今年(2022年)のポップスは、ジョン・ウィリアムズの映画音楽がテーマ。また指揮は北海道信用金庫の主催公演ではおなじみの尾高忠明さんが3年ぶりの登壇です。なお、チケットは早い段階で全席完売したそうです。

 

第19回 北海道信用金庫 札響クラシック&ポップスConcert
2022年11月03日(木)13:30~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
尾高 忠明(名誉音楽監督

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:会田 莉凡)

【曲目】(司会:宇都宮 庸子)
<オープニング>
村井邦彦:虹と雪のバラード

<第1部>クラシック
ドヴォルジャーク交響曲第9番新世界より

<第2部>ポップス~ジョン・ウィリアムズの世界~
「レイダース/失われたアーク」より レイダース・マーチ
シンドラーのリスト」より メイン・タイトル(ヴァイオリン独奏:会田 莉凡)
E.T.」より フライングテーマ
セブン・イヤーズ・イン・チベット」より テーマ(チェロ独奏:石川 祐支)
スターウォーズ」より メインタイトル

(アンコール)J.シュトラウスⅠ:ラデツキー行進曲


耳なじみのある音楽を迫力の札響サウンドで思いっきり楽しませて頂きました!当日の満員の会場の熱気からも、また販売開始して早々にチケットが完売したことからも、このような企画を札幌市民は待ち望んでいると私は強く感じました。コロナ禍において感染症対策を万全にした上で、全席2500円というリーズナブルな価格で、こんなに充実した演奏会を提供くださった北海道信用金庫さんにお礼申し上げます。また、一部の座席は盲学校の生徒さん達をご招待したとのこと。「ひまわり財団」を通じての社会貢献活動にも頭が下がります。

個人的に楽しみにしていたジョン・ウィリアムズの映画音楽は、壮大で明るくパワフルな音楽と、じっくりしっとり聴かせるソロ演奏が素敵な音楽、その両方をたっぷり楽しめてうれしかったです。ソロ演奏はさすが私達のコンミスと首席!札響メンバーはお一人お一人が素晴らしい演奏家でいらっしゃると改めて実感しました。スターソリストをお招きするのも良いけれど、もっと札響メンバーによるソロ演奏を聴きたいと、私は率直に思います。また尾高さんはご自分のことを「映画のセールスマンみたい」と仰るほど、曲の合間のトークでの映画にまつわるお話のあれこれは多岐にわたり、尾高さんの映画への愛が伝わってきました。ちなみに2018年の第16回公演の際、尾高さんは「指揮者になっていなければ映画監督になりたかった」と仰っていたと私は記憶しています。尾高さんの作品への理解と何より愛がある演奏のおかげで、ほんの短い演奏時間でも私達はその映画の世界にどっぷり浸ることができました。今回取り上げられたジョン・ウィリアムズの映画音楽は、クラシック音楽ではなかなか出会えないリズム感が新鮮!その一方、高音の美メロだけでなくがっちり低音の支えが効いている曲作りはクラシック音楽とも共通すると私は感じました。「100年後にはクラシック音楽の定番曲になっている」との尾高さんの言葉、本当にその通りだと思います。クラシック音楽とポピュラー音楽に本来垣根はないはず。来年度以降も、ぜひ尾高さんセレクトによるポピュラー音楽を、愛あふれる演奏で聴かせてくださいませ!

そして、超定番の「虹と雪のバラード」と「新世界より」、アンコールの「ラデツキー行進曲」も楽しかったです。いつものレパートリーを誠実に演奏するのはとても大切なことですよね。それに定番曲は聴く度に新たな発見があるのが楽しいです。例えば「新世界より」では、フルートが1stだけでなく2ndもソロ演奏をするとか、金管オンリーと思っていたところは木管も入っていたとか(※こんなレベルで申し訳ないです)。ちなみに今回私は2RAで聴いていましたが、オケを横から見ることで普段は見逃してしまいそうな魅力にも気付くことができました。特に、弦の皆様の演奏姿の美しさにはホレボレ!2階のステージ横の席は、一般的にはチケット代がお安いエリアでもありますから、一部の見切れを承知の上で選ぶのはアリ!と思いました。


オープニングはおなじみ村井邦彦「虹と雪のバラード」。1972年2月開催の札幌オリンピックのテーマソングで、北海道信用金庫が主催する札響コンサートでもテーマ曲として取り上げてきた演目だそう。冒頭のティンパニから気持ちを掴まれ、おなじみのメロディに聴き入りました。ほんの一部ですが、チェロが2パートに別れて演奏していたところを発見。サビの盛り上がるところの金管群とドラムセットがカッコイイ!今回の演奏もとっても素敵でした!

今回の「クラシック」は、超定番のドヴォルジャーク交響曲第9番新世界よりです。第1楽章、中低弦による静かな出だしに、重なる木管群。安定の演奏に聴き入りました。大迫力のティンパニに続いた、弦のトレモロにホレボレ。シャープな音もさることながら、その一糸乱れぬ弓の動きが超カッコイイ!比較的舞台に近い座席で横からオケを拝見すると、こんな発見もあるのがうれしかったです。クレッシェンドで盛り上がっていくところの力強さ!そして今回、フルートがやや低めの音で物悲しく優しく歌うところがとても心に染み入りました。第2楽章、低音木管金管群による出だしは、チューバもいるオーソドックスなスタイル。ぐっと重厚感のある響きでした。「家路」のメロディを歌うイングリッシュホルンは宮城さんがご担当。耳なじみのある温かな響きに癒やされました。併走するクラリネットの低音も素敵!弦楽合奏の澄んだ響きに、やはり弓の動きが美しく、耳と目でそれを堪能。また木管群が哀しく歌うところでは、弦の下支えの職人技を今更ながら実感しました。そして、弦楽八重奏、続いて弦楽三重奏へ。まるで惹かれ合う恋人同士の語らいのような、温かで優しい響き!kitara大ホールでのフルオケ演奏の中、この一瞬だけ弦楽三重奏に浸れる贅沢!何度でも聴きたい!雰囲気がガラリと変わる第3楽章は、新大陸を列車が走る勇ましさにゾクゾク。それだけでなく、各パートで細かくメロディを受け渡すところの職人技を目でも確認できたのがうれしかったです。途中下車(?)での明るい舞曲では、楽しくステップを踏むような木管群やヴァイオリンと、それを下支えする中低弦の重なりが素敵!再び盛り上がってくる波がまた良かったです。全員参加の力強い1音によるシメから、そのまま続けて第4楽章へ。冒頭の、弦楽合奏による低音が超カッコイイ!金管群の勇ましいところは、実は木管群も頑張ってくださっていたとは……今まで気付かずごめんなさい!また高音弦と呼応する低弦がやはり個人的にツボ。一打のみのシンバルを見届け、木管群が順番に歌うところで、合いの手を入れるチェロが印象的でした。これが別のところでは弦楽合奏が歌うところで木管群が合いの手を入れたのが面白かったです。聴きやすいメロディに変化が多い流れで、一瞬たりとも退屈しない音楽。何より毎回真剣な演奏で聴かせてくださる札響の皆様のおかげで、今回も楽しく聴くことができました。


後半は「ポップス」。今回は「ジョン・ウィリアムズの世界」です。最初は「レイダース/失われたアーク」より レイダース・マーチ。♪ダッ・ダダダダ・ダッダ♪のリズムに乗って、パワフルな金管がカッコイイ!迫力ある演奏によるおなじみのメロディに、客席のテンションも一気にアップした印象。中盤、少し落ち着いたところでのホルンと低弦の重なり、そこに続いたヴァイオリンとチェロが語らうようなところが個人的にツボでした。チェロはいつもクールですが、対するヴァイオリンの甘やかで美しい音色がすごく良くて!このヴァイオリンはチェロに恋してますよきっと!こんな素敵なシーンがあった意外性も楽しかったです。

シンドラーのリスト」より メイン・タイトル。ヴァイオリン独奏はコンミスの会田莉凡さんです。会田さんは、着席していたイスの前に立って演奏されました。オケの序奏に続いて登場した、独奏ヴァイオリンのぐっと深く哀しい音色!瞬時に世界を変えた音に、私ははっとさせられました。私の場合、弦は最初の音に心掴まれてしまったら、もう完敗です。いっそう切なさを際立たせたハープ、ありがとうございます!深い哀しみは、高音になると魂の叫びのようにも感じられ、包み込むオケが哀しいのにどこか温かく、心に染み入りました。木管群と呼応したところでは、中でもイングリッシュホルンの低く物悲しい響きが印象に残っています。ラストは、独奏ヴァイオリンがはかない高音でフェードアウト。短い演奏時間でこれほどまでに感情を揺さぶるヴァイオリン!超素敵でした!

E.T.」より フライングテーマ。最初からテンションMAXの清々しいオーケストラサウンドに、広大な世界が広がったようでした。華やかな高音だけでなく、ぐっとアンカーとなる低音もしっかり効いているのが好き。ハープや鉄琴など、客演による演奏も存在感抜群!澄んだ響きの弦、楽しくかわいらしい木管、パワフル金管と、札響の良さが全部入り!全体的に大音量大迫力での演奏の中、クライマックス直前での清涼剤のようなピッコロ独奏が印象的でした。

セブン・イヤーズ・イン・チベット」より テーマ。チェロ独奏は首席奏者の石川祐支さんです。トークの時間で第1ヴァイオリンの前に演奏台が設置され、石川さんはそちらに移動。またチェロパートは副首席から順番に繰り上がりで座席を移動なさっていました。壮大なオケの前奏に続いて、独奏チェロの登場。なんというか、哀しみをたたえた艶やかな音が素敵すぎて……もう絶対に敵いません。歌う独奏チェロに引き込まれ、特に高音に振れたときの切なさに胸打たれました。中盤、オケが東洋的な響きになって(中国の音階のような?また個性的な打楽器も存在感ありました)、そこに続いた独奏チェロもまた東洋的な音色に変化(!)。演出として揺らぐ音がすごく良かったです。ラストは、独奏チェロがぐっと低い音で闇に沈んでいくような演奏をされたのが忘れられません。私はまだまだチェロの魅力を知らなすぎる……今回もまた未知の音に出会えました!

プログラム最後の曲は、スターウォーズ」より メインタイトル。最初からテンションもりもりMAXの華々しいオーケストラサウンドに、スケール無限大の世界が広がりました。少し穏やかになってからの、美しいハープと重なるピッコロ独奏が素敵!♪ダン・ダン・ダダダダ♪のティンパニ強奏と同じリズムで音を刻む弦が楽しい!ホルンのパワフルでスケールの大きな響き!中低弦が主役となって歌うところがあったのがウレシイ。フィナーレは、パワフルな金管群にティンパニとドラムセットが超カッコイイ!大盛り上がりの締めくくりに、満員の客席の気持ちも最高潮に達しました。

カーテンコールの後、アンコールへ。定番のJ.シュトラウス1世「ラデツキー行進曲。指揮の尾高さんは時々客席の方を向いて、手拍子しながらお客さん達の音頭取り。今回の客席は比較的慣れているかたが多かったのか、手拍子はうまくてテンポが合っていたと私は思います。舞台にいる奏者のかたも、出番がないピアノや管楽器・打楽器の一部のかたが一緒に手拍子に加わってくださいました。中間部は手拍子はお休み(ここを間違える人はいませんでした)、じっくり演奏を聴くことができました。後半はまた手拍子で盛り上がり、華やかに締めくくり。とっても楽しかったです!定番曲の安心感と、多彩なジョン・ウィリアムズの世界。100年後もきっと聴かれている曲の数々を、尾高さん指揮による札響の演奏で聴けてうれしかったです。素晴らしい企画と演奏をありがとうございました!

終演後、司会のかたからご挨拶と、「ひまわり財団」への支援呼びかけ、来年度も11月3日にコンサート開催予定などのお話がありました。そして分散退場へ。最近は分散退場を取りやめている公演も多いですが、今回は満席だったこともありますし、混雑緩和のためにも良かったのでは?ちなみにチケット購入時には、時間を区切った入場整理券もセットで渡されました。万全の感染症対策をした上での演奏会の開催、改めて感謝です。来年度以降も素敵な企画をお待ちしています。


企業主催公演といえばこちらも。「タナカメディカルグループ主催 札幌交響楽団 無料招待コンサート2022」(2022/09/21)。指揮・横山奏さん ピアノ・石田敏明さん。リストの協奏曲では重厚なオケに負けない力強く優雅で美しい響きのピアノに魅了され、後半の有名曲の数々も高クオリティ。気分爽快になりました!

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kitara大ホールにて堂々たるソロ演奏で2000人超を魅了した、札響首席チェロ奏者・石川祐支さんが、20人弱の聴衆を前に弾いてくださった演奏会はこちら。「第14回楽興の時 石川祐支 秋に聴くチェロの調べ」(2022/10/15)。小さな会場にて、少人数で聴くサロンコンサートはとても贅沢!秋に聴きたいチェロの小品の数々を、作品への愛が感じられる素敵な演奏で聴かせてくださいました。トークも楽しかったです。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。