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札幌交響楽団 森の響フレンド名曲コンサート~すべての道はローマに通ず:ローマ三部作(2024/11) レポート

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札響の名曲シリーズ。今回(2024/11)は、正指揮者・川瀬賢太郎さん指揮による「ローマ三部作」です。札幌市民の期待は大きく、当日の会場は道外からの遠征組はほぼいないと思われる状況(この週末は札幌市内で複数のイベントが重なり、飛行機と宿泊施設の空きがなかった様子)にもかかわらず、9割近くの席が埋まる盛況ぶりでした。


札幌交響楽団 森の響フレンド名曲コンサート~すべての道はローマに通ず:ローマ三部作
2024年11月09日(土)14:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
川瀬 賢太郎<正指揮者>

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:会田 莉凡)

【曲目】
レスピーギ交響詩「ローマの噴水」
レスピーギ交響詩「ローマの松」
レスピーギ交響詩「ローマの祭り」

(アンコール)
マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲


キタラにて、カワケンさんと札響による「豪華絢爛な音絵巻」を全身全霊で体感できた、特別で贅沢な体験でした!多彩で立体的な響きを浴びながら、オーケストラ公演って「体験」なのだと、私は今回改めて実感。地元・札幌に札響がいて、キタラがあってよかったとつくづく思います。内省的な室内楽にじっくり沈むのも良いけど、オーケストラの響きを浴びる「体験」はまた格別!今回も新たな扉を開いてくださり、ありがとうございます。これからもお世話になります!

私にとっては「お初」だった「ローマ三部作」は、初めて乗る乗り物で初めて訪れる土地を旅しているような、ワクワクしながら夢中になれる面白さがありました。しかし聴く側にとっては感覚的に楽しめる音楽でも、演奏する方は様々な事を綿密に積み重ねて音楽を創り上げたと想像します。例えるなら、何層も筆を重ねて全体像を描いていく絵画のように。ただ、残る上に上書き修正可能な絵画と違い、生演奏はその場限りのもの!そんな一発勝負の一筆描きにて、大胆かつ繊細に情景をくっきり描き出した演奏は、見事という他ありません!おそらく「多彩さ」はバラエティに富んだ楽器による音色や頼れる各ソロが、「立体感」はオケの強弱や表情の変化に加えてバンダ(舞台の外の別働隊)やパイプオルガンを活用した効果があってのことと思います。とはいえ作曲家が意図して書いた事項を、効果的に活かせるのはやはり演奏のお力があればこそ。こんなに様々な要素が同時にありながらも、カオスにならず1つの大きな音楽になり、どんなシーンも解像度高く鮮やかに浮かび上がらせた演奏は、まさに「魔法」のよう!「ローマ三部作」の初体験が今回の演奏で良かった!私は地元オケに全幅の信頼を寄せ、会う度に新たな扉を開いてくださる事を期待して、これから出会える演奏の数々も楽しみにしています!


開演15分前からのプレトーク。今回は、指揮の川瀬賢太郎さんによるトークでした。はじめに「(声が)聞こえますか?」とマイク音量を会場に確認されてから、ごあいさつに続いて、本題へ。ローマ三部作はいずれも名曲、しかし3つ並べて聴く機会はそこまで多くは無いとのこと。川瀬さんがローマ三部作を同時に演奏するのは、今回が3回目なのだそうです。「初めて」は10年ほど前に神奈川フィルにて。その時はスポーツで言うところの「ゾーンに入った」状態で、演奏も客席も集中して1つの空間を創りあげた感覚だったとか!「前よりもっと良いものにしたい」という思いから、次に取り組むまでに10年かかり、「2回目」は名古屋フィルにて演奏。そして今回札響で「3回目」の演奏する運びとなったそう。札幌で演奏出来ることを「すごくうれしい」と仰っていました。また、レスピーギの素晴らしさについては「『聴く』を通り越して、その場にいるような臨場感」と語られ、「魔法」とも形容。3曲ともパイプオルガンが入る事や、バンダ(舞台の外の別働隊)が用いられ「空間を意識している」というお話しもありました。「ローマの松」での「鳥の声」は、楽譜にはレコードでも可とあるものの、「今回は鳥笛を使う」とのこと。全体の演奏時間は比較的短い、しかし「ハイカロリー」な演奏とも仰っていました。終わりに「お願い」として、能登地方での震災・豪雨への義援金の募金(終演後にロビーにて、募金箱を手にした団員さん達が立ち、募金を募っておられました)への協力を呼びかけ。「皆さん、ローマへの旅を楽しんでください」と、トークを締めくくられました。


オケの皆様、続いて指揮の川瀬賢太郎さんが舞台へ。オケは14型(14-?-10-8-7)でしょうか?管楽器は、ホルン5の他は曲に応じてそれぞれ2管~4管(バンダを除く)で変動し、ピッコロや低音の木管も。ティンパニは固定で、バラエティ豊かな打楽器、ピアノ、チェレスタ、ハープ2台、パイプオルガンが加わった、多彩な編成でした。1曲目は、レスピーギ「ローマの噴水」。「1. 夜明けのジュリアの谷の噴水」、囁くように始まったヴァイオリンの繊細さ!オーボエクラリネットのソロをはじめ、木管群の彩りが素敵すぎ!神秘的だったり、透明感だったり、牧歌的だったり、移ろいゆく多彩な響きを楽しめました。少しだけ登場したチェロソロの差し色が素敵!クラリネットの完全ソロで消えゆくラストの引力!そこからいきなりホルンのファンファーレが来て(瞬時に空気を変えたホルンのインパクト!)、「2. 朝のトリトンの噴水」へ。日の光や水しぶきを思わせる、トライアングルやハープやピアノ等のキラキラ音がきれい!木管群の跳ねる音が楽しい!トランペットが華やか!そんな中に登場した、低弦の重厚さ存在感にやられました。まさにトリトンですね!「3. 昼のトレヴィの噴水」、ファゴットのぐっと来る低音から始まり、華やかに前進する音楽は、個人的には特に低音の金管群の力強さとティンパニの勇ましさが印象深かったです。盛り上がりの頂点でのシンバルが華々しい!「4. 黄昏のメディチ荘の噴水」、「黄昏」を思わせるイングリッシュホルンの歌にぐっと引き込まれました。遠くに聞こえる鐘の音、フルートの寂しげな響き、包み込んでくれるホルンの温かさ、艶っぽく美しいコンマスソロ……移ろいゆく多彩な響きがなんて素敵なこと!ついに日が沈んだような、消えゆくラストも素敵でした。演奏後、指揮の川瀬さんは木管群全員とコンマス、チェロトップに順に起立を促し、讃えられました。

2曲目は、レスピーギ「ローマの松」。「1. ボルゲーゼ荘の松」、クリスマスソングみたい!と個人的には感じた、キラキラでウキウキな音楽でした。シャンシャンという鈴の音に、手回しでギコギコ鳴る打楽器(名前がわからず!)、ハープやピアノがきらびやか!弦のピッチカートのリズムも楽しく、ホルンや木管は楽しく歌い、金管が華やか!ホルンや木管が歌ったメロディを、チェロパートが高音域でさらっと歌ったのが印象に残っています。「2. カタコンブ付近の松」、一転して重く暗い感じに。冒頭、低弦が重低音で奏でるメロディにゾクッとしました。ひときわ低く暗い音は、バスクラリネットコントラファゴットでしょうか?規則正しく鳴るタムタムが印象深かったです。そしてハイライトは、トランペットソロです。舞台袖の扉が開放され、その奥から少し哀しく温かみのあるトランペットの歌が!厳かなオケは歴史の重さを表しているようで、その上で歌うトランペットは今を生きる人の祈りのよう!壮大な盛り上がりでは、高音も低音もものすごいエネルギーに満ちていて、中でもトロンボーンの力強さが印象的でした。フェードアウトするラストでのファゴットの重低音!「3. ジャニコロの松」、ピアノのキラキラした和音から入り、ほのかにさす光のようにクラリネットが歌った、曲の始まりが鮮烈!クラリネットソロは月明かりのイメージでしょうか?歌うチェロパートの優美さ!ゆったりとしたハープに、歌うオーボエソロとチェロソロが最高でした!純粋な美に魂が浄化される!幻想的な弦楽合奏に、フルートやピアノは月の精霊がそこにいるようにも感じられました。そして驚かされたのは、会場のあちこちから聞こえてきた鳥笛!本当にそこかしこでナイチンゲールがさえずっているようで、すごく素敵でした。会場が真っ暗で、どこに何名配置されていたのかは私にはわからなかったのですが……。「4. アッピア街道の松」、何かがズンズン近づいてきているような、低音の音の刻みにゾクッとなりました。異国風で妖艶な響きのイングリッシュホルンインパクト!ずっと鳴っていたティンパニが少しずつ強くなっていき、ホルンやバンダの金管群が勇ましく登場する度に、聴いている方のテンションも少しずつアップしていきました。軍隊の全体が浮かび上がった(?)、クライマックスのド派手な盛り上がりがすごい!ダンダン♪とティンパニが大音量で鳴り、タムタムが鳴り響き、金管打楽器が華々しく、弦が輝かしい!最高潮の盛り上がりが気持ち良かったです。演奏後、指揮の川瀬さんはバンダの金管メンバー、イングリッシュホルンバスクラリネット、ピアノの各奏者に順に起立を促し、讃えられました。

後半は、レスピーギ「ローマの祭り」。この曲にはマンドリンが加わり、ハープとチェレスタはナシで、ピアノは4手(ピアニスト2名による連弾)になりました。「1. チルチェンセス」、出だしからオケによる悲鳴のような高音と、大地を震撼させる低音に震える!一方でバンダのトランペット(パイプオルガン横に配置)がお祭りを思わせる華々しさで、このコントラストがすごかったです。トロンボーン&チューバ、低弦による音の刻みの恐ろしさ!イケイケドンドンなリズム感に派手な音のインパクト!心情的にはあまり直視したくない、「残酷な見世物」を前にして人間がワクワクする非情さも浮き彫りにしているとも感じられ、個人的にはかなり衝撃を受けました。「2. 五十年祭」、「タタタタ♪」の繰り返しのリズム(教会音楽の象徴?)が印象的。少しずつ盛り上がっていき頂点に達した後の静寂がやけに美しく、続いたイングリッシュホルンソロとヴィオラソロによる哀愁あるメロディが心に染み入りました。順にメロディを歌った各木管による色合いの変化、全員合奏の壮大さ!全員合奏ではうんと華やかな高音とぐっと重量感ある低音のコントラストが印象深かったです。カーンカーン♪と鳴る鐘とともにフェードアウトしてからの、勇ましいホルン!目が覚めるようなオープニングで次のシーン「3. 十月祭」へ。ホルンはじめ金管が華やかなお祭りムードにウキウキ。ヴァイオリンが爽やかに歌ったメロディを引き継いだ、クラリネットソロの良さ!断然頼れる!また、歌うホルンソロの個性的な音色が忘れられません。強いて言えばトランペットに近いような、こんな音色は初めて聴いたかも!?今回も客演で来て下さった前首席の山田さん、さすがの安定感です!そしてマンドリンソロは、まるでお祭りに吟遊詩人がふらっと現れて歌ったような、異国風の響きと存在感が素晴らしかったです。その後に登場したコンマスソロとコンマス&チェロトップのデュオも異国の雰囲気を纏っていると感じられ、すごく素敵でした!「4. 公現祭(主顯祭)」、管楽器は祭り囃子みたいな響きで打楽器は血が騒ぐ鳴り方、最初からドンチャン騒ぎな盛り上がり!ホルンやトランペットとシンクロして、弦の音が跳ねるのが楽しい!超高速フルート、堂々たる&ちょっとコミカルなトロンボーンソロと、目まぐるしく移り変わり、お祭り騒ぎな感じに聴く方も気分が上がりました。全員合奏の華やかな盛り上がりは、豪華なパレードのよう!勢いを増しても足並みはビシッと揃っていて、キレッキレのド迫力な演奏が気分爽快でした。締めくくりもバシッと決まり、大団円!演奏後、指揮の川瀬さんは、フルートトップに始まり、木管金管、打楽器、マンドリン、そしてコンマス・チェロトップ・ヴィオラトップの各奏者に順に起立を促し、讃えられました。

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カーテンコール。指揮の川瀬さんが舞台へ戻って来てくださり、ハープ奏者1名も入場。そのままアンコールの演奏へ。ああこの曲は!マスカーニの歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲弦楽合奏オーボエ1、フルート1、ハープにパイプオルガンも入る編成での演奏でした。夜の澄んだ空気を思わせる弦楽合奏、ああ好き!温かく優しく歌うオーボエは、ほのかにさす月光のように感じらました。クライマックスの盛り上がりでは、弦楽合奏とハープの切なく美しい響きを、オルガンが温かく包み込んでくれたのが素敵すぎました!とても純粋な祈りのよう。フェードアウトするラストでは、フルートの幸せな響きと一緒に天に昇っていきそう!聴き手の高ぶった気持ちが、穏やかに癒やされ浄化されました。ハイカロリーな本プログラムの大熱演から、気の利いたアンコールまで、今回も快演をありがとうございました!


速報】2025-2026シーズン『札幌交響楽団主催演奏会』プログラム発表

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来シーズンの札響主催公演プログラムが発表されました。首席指揮者に就任するエリアス・グランディさんは6公演(東京公演を含む)に出演予定!他にも注目公演が目白押し!今からとても楽しみです♪


名曲シリーズ、前回は鉄道をテーマにした会でした。「札幌交響楽団 森の響フレンド名曲コンサート~鉄路は続くよ、どこまでも:続・オーケストラで出発進行!」(2024/09/07)。バーンスタインのミュージカル曲や市川紗椰さんの朗読付きブリテン等の珍しい曲の演奏が聴け、誰もが知る歌のベイビーブーによる歌唱で心温まり、大マエストロである秋山和慶さんがニコニコ笑顔で愛する鉄道の事を語る!「特急札響号」による鉄道の旅、今回もとっても楽しかったです!

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正指揮者・川瀬賢太郎さんが指揮した地方公演です。「伊達メセナ協会創立30周年記念事業 札幌交響楽団コンサート」(2024/07/13)。札幌からプチ遠征。私達のコンミス・会田莉凡さんのカッコ良すぎるソロとオケの包容力。カワケンさん流「苦悩から歓喜へ」の、突き抜けてパワフルかつ明快な演奏は気分爽快!会う度に素敵なサプライズが待っていて、今までよりもっと好きになる札響サウンドは、この日も私を夢中にさせてくれました!

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。