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タナカメディカルグループ主催 札幌交響楽団 無料招待コンサート2022(2022/09) レポート

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3年ぶりに開催された、タナカメディカルグループ主催・札幌交響楽団の無料招待コンサート。今回のメインプログラムは、地元札幌でご活躍のピアニスト・石田敏明さんをお迎えしてのリストの協奏曲です。ぜひ聴きたい!と私は事前に応募。ありがたいことに「当選」し、聴くことができました。お招き感謝いたします。なお平日日中の開催にもかかわらず、2000人超のKitara大ホールは満席でした。


タナカメディカルグループ主催 札幌交響楽団 無料招待コンサート2022
2022年09月21日(水)13:30~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
横山 奏

【ピアノ】
石田 敏明

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島高宏)

【曲目】
リスト:ピアノ協奏曲第1番

デュカス:「ラ・ペリ」のファンファーレ
モーツァルトアイネ・クライネ・ナハトムジーク
チャイコフスキー:バレエ「くるみ割り人形」より“花のワルツ”
エルガー:行進曲「威風堂々」第1番

(アンコール)オッフェンバック:天国と地獄


今回楽しみにしていたリストの協奏曲、ソリストの石田敏明さんのピアノに耳と目が釘付けになりました。聴けてよかったです!すごく音が多い音楽をほぼ休みなしでずっと流れるように奏でるのは、素人目からも相当難しそう。しかし難曲をよどみなく演奏し、力強さや迫力に加えてロマン派らしい感情も表現されていたように私は感じました。重厚なオケに埋もれることないインパクト大のピアノにもかかわらず、優雅で美しい響き!指揮の横山奏さんが仰った通り、地元にこんな素晴らしいピアニストがいてくださるなんて、本当に素晴らしいこと。また、ピアノと重なるオケの演奏も素敵でした。特に後半でのスピード感あるピアノにリズミカルに呼応するオケがカッコイイ!このところ非公開公演や地方公演等も立て込んでいて、超ご多忙にもかかわらず、限られた準備期間でソリストと指揮者とすり合わせハイクオリティの演奏に仕上げるオケの皆様。敬服します。

また後半の有名曲の数々もさすがのクオリティの高さでした。今回のような特別演奏会では、ゲストが入ったりトップがいつもの首席以外のパートもあったりして、特別なチームが出来ます。個人的にはそれも楽しみの一つです。そして今回のチームも安定感ある仕事ぶりで、安心して聴くことができました。また今回は、協奏曲以外の演目ではいずれもややゆっくりめなテンポでじっくり聴かせる演奏だったように思います(あくまで私の肌感覚です)。演奏は丁寧な一方で、指揮の横山さんのトークが短めでサクサク進んたため、時間が押すことはなく、年配の方が中心かつビギナーも大勢いたと思われるお客さん達の集中力は最後まで続いた様子。これは地味に大事なことですよね。おかげで私達は最後まで気持ちよく演奏を聴くことができました。ありがとうございます。


前半。オケの皆様、指揮の横山奏さん、ソリストの石田敏明さんが舞台へ。すぐに演奏開始です。リスト「ピアノ協奏曲第1番」。楽章の区切り無くすべて続けて演奏されました。第1楽章。重厚なオケの序奏に続いて登場した独奏ピアノは、はじめから全力で音が多く華やか!これがピアノの魔術師・リスト流!と、私は最初から気持ちを持っていかれました。独奏ピアノが少しゆったりとするところでは、重なるクラリネットの響きが素敵!1stヴァイオリンの2トップ、独奏チェロにも引きつけられました。加速したオケの金管群がカッコイイ!その後の独奏ピアノの分厚さがすごかったです。木管や弦が最初のメロディを繰り返す上を、キラキラと高音で駆け抜けるピアノ。リストはピアノを休ませないんですね……。それを流れるような演奏で体現できるピアノの石田さん、素晴らしいです。第2楽章は、冒頭の低弦にまず心掴まれ、ゆったりしたピアノのカデンツァに聴き惚れました。やはり音は多い印象でしたが、ロマンティックなメロディをじっくり聴かせる演奏がとっても素敵!弦のトレモロに乗るピアノがドラマチック!サブにまわったピアノの上を、フルートとクラリネットと独奏チェロが美しいメロディをリレーしていくところも印象的でした。第3楽章、来ました初登場トライアングル!リズミカルなピアノやオケの弦・木管の間隙を、絶妙なタイミングで入るトライアングルが存在感抜群でした。最初のメロディをピアノからオケの各パートでリレーしていき、金管群の重低音がインパクト大!ピアノもオケも遠慮なく全力で盛り上がり、第4楽章へ。リズミカルな独奏ピアノが、深刻だったり楽しげだったりと表情が変化していくのに惹きつけられました。オケの方はトライアングルだけでなく他のパートもピアノの波長に合わせてシンクロするのにゾクゾク。フィナーレの盛り上がりでは、オケ全員参加の盛り上がりの中で、さらに音が多くダイナミックな独奏ピアノが圧巻でした。すごい演奏を聴かせて頂きました!ありがとうございます!


後半はおなじみの演目が並びました。はじめは金管アンサンブルによる、デュカスの「ラ・ペリ」のファンファーレ金管奏者の皆様はステージの後方に扇型に整列。チューバ以外は立って演奏されました。華々しい出だしから大迫力!一気に気分があがりました。主に高音のトランペットとホルンがメロディを担い、低音のトロンボーンとチューバが下支え。大きな音でも耳に障る感じはなく、kitara大ホールにキレイに響く力強いかつまろやかな音色を楽しみました。

ここで指揮の横山さんがマイクを持ってトーク。お客さん達へのごあいさつ、タナカメディカルグループの紹介と札響への支援そして演奏会開催のお礼に続いて、前半についてのお話がありました。リストの協奏曲は演奏がとても難しく、地元に石田敏明さんのような素晴らしい演奏家がいるのは「ほんっっっっとうに素晴らしい!」。また、演奏の合間には、後半の各演目についての簡単な解説もありました。

弦楽アンサンブルによる、モーツァルトアイネ・クライネ・ナハトムジーク。「第1楽章が特に有名。でも全楽章を聴く機会はあまりないのでは?」との横山さんのお話に、会場はうんうんと頷いていました。ちなみに私自身に関して言えば、全楽章を聴いたのは過去一度だけで、抜粋なら何度もあります。ありがたいことにいずれも札響の演奏でした。オケの皆様にとっては数え切れないほど何度も演奏してこられた演目。演奏はさすがの安定感!もちろん最初から最後まで全部良かったです。その上で、今回は細かすぎて伝わらない私のイチオシポイントに絞ってレビューします。第1楽章、1stヴァイオリンが鳥のさえずりのように歌うところはとっても素敵で、続く華やかなところでの高音弦と鏡映しの低弦がツボ。第2楽章は、はじめのゆったりしたところでの、2ndヴァイオリンが1stと少しズレて演奏するところや、少し速くなるところでのヴァイオリンと低弦が交互に演奏する間を音を小刻みに演奏するヴィオラが素敵。第3楽章は、メヌエットのゆっくりステップを踏むようなところと、アレグレットの滑らかにくるくる踊っているようなところの変化が面白くて、またいずれも低弦の下支えがイイ!第4楽章、メロディを弾く1stヴァイオリンの下で密かに2ndヴァイオリンとヴィオラが忙しそう。繰り返しがまったく同じではなく少しずつ変化しているのと、部分的にパート毎で追いかけっこがあるのにも気付けました。聴き所しかない名曲!まだまだ大事なポイントはあるはずなので、次に全楽章聴く機会に(きっと何度でもあると思います)は別のところにも着目したいと思います。

ここからはフルオケでの演奏です。指揮の横山さんから改めて札幌交響楽団の紹介があり、曲の解説に続いて、オケがチューニングをしてから演奏へ。チャイコフスキーのバレエ「くるみ割り人形」より“花のワルツ”木管群に続いてのハープのきらびやかなソロ。弦のズンチャッチャに乗ってのふくよかなホルンの響き。気分があがるクラリネット・ソロ。弦の美しいメロディを支えるコントラバスに、合いの手を入れる木管群。木管群が歌う下支えをする弦の選抜メンバー。中低弦が主役になるところ。クライマックスを華やかに盛り上げる金管打楽器。美しいメロディはもちろん、各パートの活かし方が上手いチャイコフスキー!私は各パートの活躍ぶりをしっかり見届けました。指揮の横山さんが仰った通り「とても癒やされる」音楽。もちろん素敵な演奏で聴かせてくださったおかげです。

前の曲から続けて演奏された、プログラム最後の曲はエルガーの行進曲「威風堂々」第1番。指揮の横山さんはトークの中で、中間部の「イギリス第2の国歌」と呼ばれる部分について、先日崩御したイギリスのエリザベス女王戴冠式にも演奏されたとご紹介。「女王陛下に敬意を払って」の演奏とのこと。なお今回の演奏は本来の編成と少し異なり、オルガンはナシ、ハープは1台のみでした。最初の行進曲のようなところでの、クールな弦、リズムを作る打楽器に、パンチのあるトランペットがカッコイイ!主題が移る直前の、パワフルな低音で音階をゆっくり上っていくところがとっても良かったです。そして「イギリス第2の国歌」の温かなホルンの響きが超素敵!クライマックスでもう一度「イギリス第2の国歌」が来たときは全員参加となり、その大盛り上がりも最高!明るく視界が開けたようで、清々しい気持ちになれました。リミッター振り切って派手に盛り上げていくスタイル。何度聴いてもイイですね!

カーテンコールの後、そのままアンコールの演奏へ。演奏が始まると、聞き覚えがあるメロディにお客さん達はピンときたようでした。これは運動会の定番曲、オッフェンバック「天国と地獄」よりカンカンですね。かけっこしているような軽快な弦と木管群に、超パワフルな金管打楽器。先ほどの威風堂々の勢いそのままに、ド派手な演奏!大盛り上がりのまま会はお開きに。秋晴れの午後のひととき、気分爽快になりました!今回も素敵な演奏をありがとうございました!そして演奏会を企画し、無料招待くださったタナカメディカルグループ様に重ねてお礼申し上げます。


今回ソリストとしてご出演のピアニスト・石田敏明さんと、今回はヴィオラのトップを務められた札響副首席ヴィオラ奏者・青木晃一さん。お二人はデュオとして活動されています。弊ブログの過去記事よりこちらをご紹介。「第43回もいわ山麓コンサート 青木晃一×石田敏明 ヴィオラ・ピアノデュオコンサート」(2021/10/30)。味わい深い音色に超絶技巧の数々。札響副首席・青木さんのヴィオラはヴァイオリンに引けを取らない表現力で、「名バイプレーヤーが主役」な演奏を存分に楽しめました! ※1年近く前の記事で申し訳ありません。お二人は他にも数多くの演奏会に出演されています。

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

無料招待コンサートといえばこちらも。 2022年7月26日(火)に開催された、音楽宅急便2022「クロネコ ファミリーコンサート」 北斗公演(指揮:飯森範親 演奏:札幌交響楽団。2022/09/09より、YouTubeヤマトグループ公式チャンネルにてアーカイブ動画が無料公開されています。今回取り上げられたデュカスの「ラ・ペリ」のファンファーレの演奏もありますよ。他地域で開催された別オケの演奏との聞き比べも楽しい♪ ※なお順次古い動画から削除されていくようですので、視聴はお早めに。

www.yamato-hd.co.jp


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最後までおつきあい頂きありがとうございました。