自由にしかし楽しく!クラシック音楽

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札幌交響楽団 hitaruシリーズ定期演奏会 第10回(2022/08) レポート

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今回(2022/08)のhitaru定期のソリストは、今年4月から札響のコンサートマスターに就任した会田莉凡さん!また会田さんと誕生日が同じ(7/5)という首席指揮者のマティアス・バーメルトさんがhitaru初登壇の予定でしたが、バーメルトさんが検査でコロナ陽性となったため来日が叶わず、急遽指揮者は下野竜也さんへ交代。演目は当初の予定通りで開催されました。

また、演奏会当日は「りぼん & Ribbon」コラボ企画の一環として、ポッカサッポロ北海道・Ribbonブランドのキャラクターのりぼんちゃんがロビーに登場。来場者へのリボンナポリン(470mlペットボトル)のプレゼントもありました。

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札幌交響楽団 hitaruシリーズ定期演奏会 第10回(2022/08)

2022年08月04日(木)19:00~ 札幌文化芸術劇場 hitaru

【指揮】
下野 竜也

【ヴァイオリン】
会田 莉凡 ※2022年4月~札響コンサートマスター

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島高宏)

【曲目】
廣瀬 量平:北へ (1981札響創立20周年記念委嘱作品)
ドヴォルジャーク:ヴァイオリン協奏曲
ソリストアンコール)バッハ:無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番よりラルゴ

ブラームス交響曲第1番


真夏の札幌都心で超アツイ夜、とっても楽しかったです!会田莉凡さん、改めまして我が町のオケへようこそ!協奏曲では、オケと楽しそうに絡み合う、自由にのびのびとした印象の独奏に聴き惚れました。難曲を当たり前のように弾ける技術力の高さと、美メロをたっぷり「聴かせる」芸術的な力量はもちろんのこと、個人的にぐっと来たのは例えば高音に振り切った際に「ゆらぎ」が見られたこと。狙ったものかどうかは私にはわからないのですが、ただそつなくかっちりした演奏よりも血が通った感じがして好印象でした。他にも様々なものを「持っている」かたとお見受けしますが、多くの人に愛されるのも才能の一つですよね。演奏からは、コンミス就任4カ月で既にオケとの信頼関係が出来上がっていると感じられましたし、拍手喝采の会場にいたお客さん達も大歓迎している様子がうかがえました。本当に、ご縁があって会田さんが札響の新コンミスに就任くださたことに感謝です。会田さんは今、多方面で引っぱりだこ。お若く勢いがあるかたですが、どうかお身体を大切になさって、これからの札響を末永くよろしくお願いします。また、先輩のコンマス田島高宏さんにも改めてお礼申し上げます。札幌の地に足を付け、一人態勢の時も長い期間にわたり札響を率いてきた田島さんが、今回もしっかりオケを牽引してくださいました。いつもありがとうございます!頼りにしています!もちろんソリストだけ、コンマスだけでは管弦楽は成り立ちません。気持ちを一つにして演奏を作り上げる、オケのお一人お一人すべての奏者の皆様が功労者です。

そして突然のオファーを快諾くださり、我が町のオケの底力を十二分に引き出してくださった、マエストロ下野に大感謝です!中でも廣瀬量平「北へ」は演奏機会が少なく、短かい期間で取り組むのは大変だったと存じます。にもかかわらず、これぞまさに「札響の音」と感じられる演奏!またドヴォルジャークのヴァイオリン協奏曲は、下野さんの十八番というのも頷ける素晴らしい演奏で、私達は大船に乗った気持ちで聴けました。そしてブラ1の大熱演が最高!本当にありがとうございます。来月の三大交響曲もすごく楽しみです!

それにしても、ドヴォルジャークのヴァイオリン協奏曲はとっても素敵な曲なのに、チェロ協奏曲より影が薄い印象です。理由はわかりませんが、ヴァイオリン協奏曲を献呈されたヴァイオリニストのヨアヒムは一度も演奏しなかったそう。もったいない……。しかし今回のように、素晴らしい演奏で披露される機会が増えれば、この作品への世の中の見方が変わってくるかも!また、後半ブラームス交響曲第1番は、クールなイメージの札響がリミッター外して全力投球してくださり、すごくうれしかったです。細かいところも、例えばブラ1で多用されている弦ピッチカートや、奥行きを感じさせるホルン等がとても良い仕事をしていると感じました。今回は、決してメインをかき消すことはないけれど、メインを引き立ててくれるサブの部分がよく聞こえた気がして、hitaruってこんなに良い響きだっけ?と思ったり。あと個人的には特にがっちり骨太な低弦にやられました!ブラ1の場合、美メロはヴァイオリンと木管の役目(こちらももちろん素敵でした)で、低弦はあくまで下支え。しかしこんな重低音の振動を全身で感じられるのは、室内楽にはないオケの醍醐味!ブラームスの低弦、大好き!ちなみに私はブラ1を生演奏で聴くのは、今回が3年ぶり2回目。なお、プログラムによるとブラ1の札響演奏歴は過去89回。創立61周年にして今回が90回目……意外に少ないと個人的には思います。もっと聴きたいので、今後ぜひ積極的に取り上げてください!


1曲目は廣瀬量平「北へ」。1981年・札響創立20周年記念委託作品で、札響での演奏は今回が3回目となるそうです。木管は各3管編成で、多彩な打楽器、ハープ、ピアノ、チェレスタが入る大編成でした。大きな音の響きが波のように来るのには北の大地の壮大さや厳しさ、また神秘的なハープと弦の重なりには未知の自然への畏敬の念が感じられました。音のうねりやクールな響きに、私は札響が得意とする武満徹作品を連想。聴きやすいメロディはなく、私には正直掴みづらい音楽でしたが、札響の底力を再認識しました。

いよいよ私達のコンミス、会田莉凡さんをソリストにお迎えして、2曲目はドヴォルジャーク「ヴァイオリン協奏曲」。第1楽章と第2楽章は続けての演奏でした。第1楽章、重厚なオケの序奏に続いて登場した、哀愁あるメロディの独奏ヴァイオリンが圧倒的な存在感!独奏ヴァイオリンがオケのメロディを引き継いで切なく歌い、感極まったようにキュイーと高音を発した後はまたオケのターン……と、独奏ヴァイオリンとオケが交互にメインとなる流れが絶妙で、聴いていて気持ちが良かったです。独奏ヴァイオリンがゆったりと美しく歌ったところでの、木管の温かな響きとの重なりが素敵!終盤、独奏ヴァイオリンが、高音で頂点に達したときは儚げな感じだったのが、続くホルンとの重なりでは低音で貫禄ある感じになり、その振り幅の大きさがとても印象的でした。続く第2楽章は、美メロをゆったりと美しく響かせた独奏ヴァイオリンにうっとり。木管の優しい響きや牧歌的なホルンとの重なりも素敵!中盤、少しシリアスになるところでの、オケのホルンとトランペットのパンチある響きも印象に残っています。そして第3楽章へ。初めの方にアクセントが来るスラブ舞曲のようなリズムで、軽快で華やかに歌う独奏ヴァイオリンがとっても素敵!独奏とは小さな音でシンクロしていたオケの弦が、主役に躍り出た時はうんと華やかに盛り上げてくれたのもうれしかったです。生き生きと自由な感じの独奏ヴァイオリンと温かく包むオケは、まるで一緒にダンスしているかのよう。ティンパニのリズミカルな強打に気分があがる!中低弦と重なり、独奏ヴァイオリンが哀愁を帯びたメロディを歌うところがすごく素敵でした。独奏ヴァイオリンが次第に盛り上がっていくところでの、オケの弦がメロディをリレーしながら一緒に盛り上がりを作ったのが個人的にツボ。超スピードでぐいぐい来ながら美しいメロディを奏でる独奏ヴァイオリンにホレボレ。オケと一緒に力一杯駆け抜けたラストが清々しい!幸せな協演を目の当たりにした、私達聴き手もとっても幸せです!

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ソリストアンコールバッハ「無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番」よりラルゴ。ゆったりと美しい音楽で、切ないメロディに時折さりげなく入る重音が印象的でした。少ない音でこんなにも豊かな響き!札響は本当に素敵なコンミスをお迎えできたんだなと改めて実感しました。会田莉凡さん、我が町のオケに来て下さりありがとうございます。末永くよろしくお願いします!


後半はブラームス交響曲第1番」。第1楽章、ティンパニインパクト大の厳かな出だし!個人的には少しテンポが速い気がして戸惑いましたが、繰り返しに入るところでの区切りの1音がすとんと腑に落ちて、それからは流れに乗れました。全員が全力で来るパワフルな演奏に圧倒されながら、悲劇的な高音とぐっと重厚な低音の重なりにゾクゾク。やはりブラームスはイイ!深刻なところでの初めのティンパニと同じ鼓動を刻むコントラバスや、木管のターンでの弦ピッチカート等、主役じゃないパートもよく聞こえて、その良い仕事ぶりがわかったのもうれしかったです。厳格な中でふと光が見える、ホルンと各木管がこだまするように穏やかな響きがあったのが印象的。これは第4楽章の伏線なのかも?と、私はこの日初めてそう思いました。厳かな楽章が、締めくくりでは曇天から青空が広がるような感じの爽やかさになるのも好きです。この締めくくりにも第4楽章への道筋?第2楽章は、クールな弦による出だしから素敵!この楽章では寄せては返すような音の波がすごく良くて、hitaruの響きともちろん札響のお力を再認識。オーボエソロ(コンマスソロのメロディを先取り)に始まり、各木管のソロでは様々な個性を楽しめました。そしてコンマスソロ!穏やかなオケをバックに、ブラームスの美メロをたっぷり美しく聴かせてくださいました。私達のコンマス田島高宏さん、超素敵です!ありがとうございます!第3楽章、ホルンとファゴットと低弦ピッチカートに支えられてのクラリネット、続いてフルートのソロがとっても素敵。管と弦が会話するように交互に演奏する流れで、呼吸が絶妙に合うのが良かったです。木管の切ないメロディと出番が少ないトランペットのパワフルな響きも印象的でした。第4楽章、重厚な音楽再び!はじめのクレッシェンドで全体像が浮かび上がるところがすごく良くて、この後への期待が高まりました。ティンパニの連打までは超スピード!そして苦悩から歓喜へ。景色を一変させたホルン(クララさんへのプレゼント)の響き、美しいフルートに続き、この楽章で初登場のトロンボーンの天国的な響き……じっくり聴かせてくださったこの流れが良すぎました。ここからのメロディを歌う高音弦の音色が超素敵で、メロディを木管に引き継いだ後の、全員参加の大盛り上がりがすごい!大音量大迫力に圧倒されました。高音弦と鏡映しだったり呼応したりする低弦が超カッコイイ!少し穏やかなところを経て、ヴィオラから始まる盛り上がりの波に私達のテンションも上昇。クライマックスでの、ティンパニの鼓動に乗ったオケ全員参加の自信に満ちあふれた響きに、金管群の神々しさ!私は胸いっぱいになりました。ラストは全力で駆け抜け、堂々たる締めくくり。ああ、やっぱりブラ1はイイですね!熱量高いこの日の演奏が聴けて幸せです!ありがとうございました!


前回のhitaru定期はこちら。「札幌交響楽団 hitaruシリーズ定期演奏会 第9回」(2022/04/14)。守備範囲外の幻想交響曲にドハマリ!ラヴェルのピアコンはピアノが緩急つけて高音低音を自在に行き来し、オケと息のあった掛け合い。豪華な演目を気合いの入った演奏で聴けた、幸先の良い新体制・新年度のスタートでした。

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会田莉凡さんのソロ演奏が光った「札幌交響楽団 第644回定期演奏会」(土曜夜公演は2022/04/23)。「英雄の生涯」は、驚きの一体感の大編成による壮大な物語の世界。新コンミス会田さんのソロと各パートの掛け合いは素晴らしく、ラストが圧巻!またベートーヴェンのピアコン第3番に胸打たれ、意欲的な武満作品に札響の底力を再確認しました。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。