自由にしかし楽しく!クラシック音楽

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札幌交響楽団 第643回定期演奏会(土曜夜公演)(2022/03)レポート

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「愛と死」をテーマに掲げた、札響『2021-2022シーズン』の最終公演。入国の水際対策の緩和はあったものの、国際情勢に不安材料がある中で、指揮のピエタリ・インキネンさんはぶじ来日を果たしました。大変な状況の中、お越しくださりありがとうございます!またソリストに札幌ご出身のフルーティスト・工藤重典さんをお迎えして、出演者・演目ともに当初の予定通りの開催となりました。

そして今回の『札響オンラインロビーコンサート』は弦楽アンサンブル&ティンパニ!弦への要求がえぐいシベリウスさんの作品をオンラインロビコンでも聴けちゃいます♪本番の準備もあってお忙しいにもかかわらず、精鋭メンバー揃いで素晴らしいアンサンブルを聴かせてくださり、本当にありがとうございます!
無料動画の視聴は以下のリンク先からどうぞ。

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札幌交響楽団 第643回定期演奏会(土曜夜公演)
2022年3月12日(土)17:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
ピエタリ・インキネン

【フルート】
工藤重典

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島高宏)

【曲目】
ステーンハンマル:序曲「エクセルシオール!」
ニールセン:フルート協奏曲
ソリストアンコール)ドビュッシー無伴奏フルートのための「シランクス(パンの笛)」

シベリウス交響曲第5番


春の訪れを待つ今の時期に、北欧プログラムの清々しい演奏。とっても素敵で気持ちが晴れやかになりました。今回、私はインキネンさんの来日がわかった時点でチケットを求めましたが、本当に聴けてよかったと思います。札響に北欧が似合うことは認識していましたし、指揮のインキネンさんの印象も良く、今回の企画自体は私も以前から興味がありました。ただ、普段自分では聴かない作曲家ばかりで、室内楽の演奏会が立て込んでいた個人的な事情もあって、当初は見送るつもりでいたのです。そんな私ですが、今回は事前準備もナシでフラットに聴き、その上で感激できたのがとても良い体験となりました。むしろ強い思い入れがないからこそ素直に聴けたのかも。今回の定期を聴けたおかげで、自分好みドンピシャの演目にもかかわらず自己都合で泣く泣く見送った、先月(2022年2月)のhitaru定期と名曲シリーズへの未練がようやく消えました。札響とKitara、いつでも帰ってこれる場所があることに感謝です。

今回の協奏曲はフルート。工藤重典さんのフルートはパワフルかつ多彩な響きで、透明感や儚げな美しさだけではない魅力がありました。また、オケの管楽器との掛け合いが多く、各パートの奏者のかた達もソリストに引けを取らない存在感!後半の交響曲でも、今回のシベ5は管楽器がメロディを受け持つことが多くて、そこでの管楽器の活躍も大変素晴らしかったです。そして個人的には、メロディの下地となる部分で頑張ってくださった弦に魅了されました。透明感とか清涼感とか、一言で片付けてしまうのはもったいない。この札響の弦の音色は、比較対象はないけど最高だと私は思います。お一人お一人が素晴らしい演奏家で、そんな皆様が気持ちを一つにしてこの幾重にも重なる音の層を作るって、とても贅沢なことだと改めて実感しました。

ちょっとだけ打ち明け話。実は私、以前インキネンさん指揮による「プラハ交響楽団ニューイヤー名曲コンサート 札幌公演」(2019/01/10)をhitaruで聴いています。その頃の私はまだコンサート通いを始めたばかりで、正直良し悪しなんかわからなかったです。しかしその時思ったのが、真珠の鑑定士の卵が来る日も来る日も最高級品に触れて審美眼を養うように、上質の演奏を聴き続けていればいつか私もその良さをわかるようになるかも、ということ。私は札幌にいながらかつ自分に合いそうな企画を選びながらではありましたが、それからいくつものコンサートに足を運んで自分なりに聴いてきました。もちろん私はまだまだひよっ子で、今でもきちんとわかっている気はしません。それでも今回、インキネンさんの背中とおなじみの札響メンバーの姿を拝見しながら、胸のすくような澄んだ響きの演奏を聴いて、私は心から素敵と感じて感激できました。それが何よりうれしかったです。札響の皆様、オケでも室内楽でもいつも珠玉の演奏を聴かせてくださり、ありがとうございます。これからも信じてついて行きます!私は思いつきを書いてはネット公開したりたまには部分的なところで大はしゃぎしたりするかもしれませんが、愛を叫びたくてたまらないこの気持ちを、どうかこれからも大目に見て頂けましたらうれしいです。そして我が町のオケからこんなに素晴らしい響きを導き出しくださったインキネンさん、今後もぜひ札幌にいらしてくださいね。


1曲目はステーンハンマルの序曲「エクセルシオール!」。今回が札響初演。低音の重厚な下支えがあった上で高音弦が駆け上る冒頭から、私好みで早速引き込まれました。低音はドイツ風でも、高音の透明感は北欧らしい印象。木管が歌うところは草木の芽吹きのようにも感じました。チェロと管楽器が会話する少し不穏なところでは、他の弦がザワザワと小刻みな音を奏でていたのも印象に残っています。コンマス独奏も素敵でした。クライマックス直前のジェットコースターのような流れにはゾクゾクしました。金管が盛り上げたラストは、引っ張らずにピタっと終わったのが印象的。初演とは思えない素晴らしい演奏でした!札響に似合う曲だと思いますので、今後も時々は演目に取り上げてください!


ソリストの工藤重典さんをお迎えして、2曲目はニールセン「フルート協奏曲」。オケの編成は、1曲目から弦も管も人数が減り(オケのフルートはナシで、他の木管は2つずつ)、金管は唯一バストロンボーンが入りました。第1楽章、オケの序奏がパワフルでカッコイイ!程なく登場した独奏フルートが美しいのに力強く、存在感抜群でした。各管楽器との掛け合いはどれも素晴らしかったですが、インパクト大だったのは低音のバストロンボーンとの絡み。低音と高音のコントラストがテンポ良く掛け合って、計算されているはずなのにとても自由な感じがしました。オケのターンでは、指揮のインキネンさんが全身でリズムに乗ってノリノリでした。ティンパニが併走したカデンツァでは、ティンパニの鼓動にシンクロして音を刻む演奏があったのが印象に残っています。第2楽章では、独奏フルートとの掛け合いで、ホルンと一緒に独奏ヴィオラが登場したのが新鮮でした。オケをバックに、独奏フルートの音を刻みながらの高速演奏が圧巻!クライマックス直前のバストロンボーンと今度はティンパニも加わった三つ巴でも、こんなパワフル低音にのまれることなく、独奏フルートは最後まで存在感ある演奏を聴かせてくださいました。

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ソリストアンコールはドビュッシー無伴奏フルートのための「シランクス(パンの笛)」。神秘的な響きで、ちょっと妖しい雰囲気も感じられる曲。説得力のある独奏とは対照的に、ラストは静かに消え入ったのがインパクト大でした。工藤さん、協奏曲からソリストアンコールに至るまで素晴らしい演奏をありがとうございました!


後半はシベリウス交響曲第5番。第1楽章、冒頭ホルンがとっても素敵!木管楽器が順番に入ってきて、ティンパニに導かれながら景色が広がっていくようでした。華やかなトランペットにパワフルなトロンボーンが堂々とした響き!管楽器の活躍がとても良かったです。また個人的に注目したのは弦です。ここでの弦は主役の管楽器の下地になる役割が多く、不穏なところではやや深刻に、かわいらしいところではごく小さな音で控えめに弾く等、管楽器の活躍が映えるカラーを作り出していました。また、メロディではなくてもクレッシェンドで盛り上がりを作ったり、ザワザワとした音の刻みで雰囲気を作ったりと、丁寧な音の層は音楽全体の奥行きを感じさせてくれました。主役として華やかにメロディを奏でるのとはまた違う難しさがあるのでは?相変わらず弦への要求がエグいシベリウスさん。しかし札響の弦はどんなシーンでも音がキレイで、強弱やメリハリがはっきりした演奏。素晴らしいです!そして楽章締めくくりは全員参加で思いっきり盛り上がったと思ったら、ぱっと音が止まり、その潔さがとても印象的でした。第2楽章、木管の素朴な響きに、弦は基本ピッチカートで時々は音を刻む演奏。同じ繰り返しのように見えて、少しずつ変化していくのが面白かったので、ずっと聴いていられると個人的には思いました。続けて第3楽章へ。ティンパニの一撃と金管の堂々とした響きから気分があがります!それでも弦はすぐには上昇せず、エネルギーを溜めるように音を小刻みにする演奏を継続。ついに上り詰め、ホルンと続く他の管楽器の伸びやかな歌がとても心に沁み入りました。こんな幸せを噛みしめるような盛り上がり方、イイですね!また弦が歌うところでは、シベ2とはまた違った大人の落ち着きが感じられたのもツボでした。ラストは全員参加で盛り上がった後、タンッ!タンッ!タンッ!……と強奏を何度も繰り返し、別れを惜しむかのよう。ついに清々しく締めくくり。気持ちの良い演奏でした!ありがとうございました!


前回の札響定期(2022/01/29)。指揮は当初予定されていたマティアス・バーメルトさんの来日が叶わず、11月より来日中のユベール・スダーンさんへ交代。私にとってはこの会も、今までの自分の固定観念が変わる出会いでした。

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今回の札響定期の前、私は札響メンバーが出演する室内楽のコンサートを2つ聴きました。オケの皆様は室内楽もスゴイんです!また、今回の札響定期の直後にも、札響メンバーが出演する2つの演奏会がkitara小ホールで予定されています。いずれもとても楽しみです!

2022/02/27 ウィステリアホール プレミアムクラシック 14th「弦楽四重奏とピアノ五重奏」(Vn.岡部亜希子さん・Vn.桐原宗生さん・Vc.武田芽衣さん)
※桐原さんと岡部さんは、2022/03/14開催の「2人が最後に愛したクラリネット五重奏曲~モーツァルトブラームス~」にもご出演。

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2022/03/05 骨髄バンクチャリティー 石川祐支&大平由美子 春待ちコンサート(Vc.石川祐支さん)
※石川さんは、2022/03/17開催予定の「安永 徹&市野 あゆみ~札響・九響の室内楽」にもご出演予定。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。