自由にしかし楽しく!クラシック音楽

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札幌交響楽団 第642回定期演奏会(土曜夜公演)(2022/01)レポート

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2022年1月の札響定期演奏会は、当初予定されていたマティアス・バーメルトさんの来日が叶わず、11月より来日中のユベール・スダーンさんへ指揮者の交代がありました。また同じ出演者と同じプログラムで2/8に東京公演が予定されています。

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なお、1/29札響642回定期は、2/27にNHK-FMでラジオ放送される予定とのこと。要チェックです!

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そして今回の『札響オンラインロビーコンサート』は打楽器アンサンブル!伊福部昭の演奏では日本人の血が騒ぐリズムを見事に刻んでくださった打楽器チーム。そんな4名の皆様による、息の合ったキレッキレの演奏です。特殊奏法やアレンジも楽しい♪無料動画の視聴は以下のリンク先からどうぞ。

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札幌交響楽団 第642回定期演奏会(土曜夜公演)
2022年1月29日(土)17:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
ユベール・スダーン

【ヴァイオリン】
山根一仁

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島高宏)

【曲目】
ベルリオーズ:「ロメオとジュリエット」より「愛の場面」
伊福部 昭:ヴァイオリンと管弦楽のための協奏風狂詩曲

シューマン交響曲第2番


札響での演奏回数が少ない(ベルリオーズは2回目、伊福部は初演!そしてシューマン第2番は8回目)演目が並んだ今回。しかし当然ながらクオリティの高い演奏で、なじみが薄い演目でも楽しく聴けました。東京公演にも同じ布陣で臨む気鋭のプログラム。言うまでも無くバーメルトさんご自身が指揮されたかったでしょうし、私達もバーメルトさんとの再会を心待ちにしていました。私はさびしい気持ちを少し引きずったまま迎えた当日でしたが、スダーンさん指揮による演奏は大変素晴らしく、聴けて良かったと今は思います。スダーンさん、演目そのままに代役をお引き受けくださり、特に札響初演の伊福部でもカオスにならずソリストと大編成オケをしっかりと導いてくださり、ありがとうございます!そしてソリスト山根一仁さんも素晴らしい演奏を披露くださいました。ヴァイオリンと管弦楽のための作品は星の数ほどあれど、メイドインジャパンの曲は演奏機会が少なく、さらに今回の伊福部は独特のリズム感もあって、メジャーな曲の演奏とはかなり勝手が違ったと思われます。それでも独奏ヴァイオリンは、まるで今その瞬間身体の内から湧き出たように自然かつ血の通った演奏!またソリスト小休止のときでも、山根さんはオケに合わせて弓を振ったり身体を動かしたりと終始ノリノリで、最初から最後までオケと一緒に生き生きとした音楽を聴かせてくださいました。ありがとうございます!もちろんオケの皆様にも感謝です。

個人的には、今まであまり聴いてこなかったシューマンを自分なりに聴けたのがよかったです。中でも今回は第3楽章に魅了されました。この交響曲第2番を作曲した頃のシューマンは精神の病に苦しんでいたはずなのに、短調でもこんなに穏やかで美しい音楽を生み出したんですね。なんということでしょう!そして第3楽章のおかげで、第4楽章の堂々たる響きが一層輝かしく感じられました。私はシューマンの鬱展開に苦手意識があって、好きな室内楽でも知的で明るい部分ばかりを好んで聴いてきました。しかし今回この第3楽章に出会えたことで、今後は室内楽や歌曲の聴き方も変わりそうです。今回の演奏を聴いて、私にとってシューマンは、「ものすごく好き」とは言えないけれど気になって仕方が無い存在になりました。これからはできるだけえり好みせずに色々聴いていこうと思います。


1曲目はベルリオーズ「ロメオとジュリエット」より「愛の場面」です。あの幻想交響曲の作曲家ですが、この曲に関しては編成が小さく(木管は基本2管ずつで、金管なし、打楽器はティンパニ含めナシ)、「ちょっと意外」と感じたのが演奏前の第一印象。演奏は、温かなホルンに優しい木管、美しい高音弦ももちろん素敵でしたが、何と言ってもチェロとヴィオラ!チェロにとっては高音となる音域にて、中低弦全員がユニゾンで愛の歌を奏でるところがもう素敵すぎました。それも一瞬ではなく何度も!ベルリオーズさん大好きです。そしてなにより奏者の皆様ありがとうございます!室内楽でお一人お一人の演奏を拝聴してもすごいかたたちばかりなのに、そんな皆様が全員揃って同じ美しいメロディを奏でるって最強です!地元ですぐに会いに行ける場所にこんな奏者の皆様がいらして、超素敵な演奏が聴けちゃう幸せを、私は全人類に自慢したいくらい。最初の曲からはしゃぎすぎましたが、私はまたもや「ノーマークからの不意打ち」演奏に出会えてうれしかったです。


ソリストの山根一仁さんをお迎えして、2曲目は伊福部昭「ヴァイオリンと管弦楽のための協奏風狂詩曲」。なおプログラム冊子には、伊福部玲さんによる「父・伊福部昭とヴァイオリンと札響と」という文章が掲載されており、作曲家の近くにいたかたならではのお話で作品の背景を知ることができました。オケの編成は、前の曲より弦の人数が減り、金管に、低音木管バスクラリネットコントラファゴットティンパニと打楽器(札響の4名が担当しゲストはナシ)、そしてハープが加わりました。前半、オケの短い序奏の後、すぐに独奏ヴァイオリンのターンに。低い深みのある音からしだいに高音域へと、じっくりとソロ演奏を聴かせてくださいました。徐々にオケが参戦し、大盛り上がりになってからの躍動するような独奏ヴァイオリンもよかったです。途中、オケが「ゴジラ」そのまんまのメロディを演奏して驚きましたが、そうかこの曲はゴジラの「ゴ」にアクセントがくるリズムがベースになっているのかも?と私はこの時にそう感じました。ずっとテンション高いわけではなく、例えば低音木管が効いた不穏なところも印象に残っています。そこから再び独奏ヴァイオリンのターンになった時、今度は木管、独奏チェロ、ハープが順番に寄り添い、いっそう独奏ヴァイオリンの存在感を際立たせていました。ハープは和琴や琵琶を思わせる響きで、和楽器はいないのに日本的な色合いに。後半は少しリズムが変化し、はじめのティンパニだけでなく、オケの弦がピッチカートや小刻みな音で心臓の鼓動のようなリズムを刻んでいたのが印象に残っています。この速いテンポで独奏ヴァイオリンが弦を擦るのとピッチカートを交互に演奏したところがカッコイイ!フィナーレは再びゴジラのリズムで金管打楽器も全員参加のお祭りのような盛り上がりに。独奏ヴァイオリンのみの演奏が一瞬入って、最後はオケ全体で力強く締めくくり。初演とは思えないほど完成度が高い演奏、素晴らしいです!


後半はシューマン交響曲第2番」。一部配置換えがあり、ホルンがトロンボーンの手前に、ティンパニが第2ヴァイオリンの後ろあたりに移動。またティンパニは前半とは違う楽器(胴体が金ぴかのもの)になっていました。第1楽章、冒頭の弦に重なるトランペットのまるい音色が素敵。まさにこのトランペットが作曲当時シューマンの頭の中で鳴っていた?彼自身が聴こえていた音よりも穏やかな感じに昇華させたのかもしれませんが、これなら抵抗なくすっと入っていけると思いました。時折ふっと陰りを見せながらも基本は明るい音楽。しかし抑揚やメリハリがあって聴きやすかったです。楽章最後は、冒頭のトランペット含め管楽器オールスターズも弦もティンパニも全員参加の盛り上がり。また、締めくくりの音をのばすところで思いの外早くピタッと音を止めていたのが印象的でした。第2楽章は、弦が全員揃って素早く小刻みに音を刻む演奏(おそらく難易度高い)の職人技を披露くださり、タイミング良く重なる管楽器のリズム感を楽しみました。中盤の少し穏やかなところも素敵でした。第3楽章はこの曲で唯一の短調ですが、個人的にはこの楽章の演奏がとても良かったです。短調でも重苦しくなく、温かみがあって美しい響き!まず弦の美しさに惹かれ、これがオーケストラの醍醐味!と私は一人で感激していました。また前の楽章までは同時に演奏することが多かった管楽器が、ここでは単独の出番が増えて、魅惑的なオーボエや牧歌的なホルン等それぞれの良さを味わえたのもよかったです。ラストを美しく静かに締めくくったのも印象に残っています。この第3楽章からの、第4楽章!音を駆け上るザ・シューマンな序奏から華やか!聴いている私達のテンションもあがりました。弦の超高速演奏(シューマン先生も要求エグいですね)がインパクト大で、そこからの盛り上がりに気持ちも最高潮に。しかし緩急はあって、少しクールダウンした時の歌う木管金管も素敵でした。ラストは全員参加の堂々たる演奏で締めくくり。素晴らしい演奏をありがとうございました!


この日の約1週間前(2022/01/21)に聴いた「トリオイリゼ・リサイタル」。札響の赤間さゆらさん(Vn)と小野木遼さん(Vc)、そして地元札幌でご活躍の水口真由さん(Pf)の新進演奏家3名によるピアノ三重奏団。重厚な独墺プログラムの演奏は圧倒的な熱量で素晴らしかったです!

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第638回札響定期(2021/06/19)。ソリスト藤田真央さんによるシューマン「ピアノ協奏曲」は想像を遙かに超える素晴らしさで、インパクト大の冒頭部分だけでなく最初から最後まで夢中になれました。この日を境に、シューマンのピアコンは大好きな曲の一つになっています。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。