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札幌交響楽団 第648回定期演奏会(土曜夜公演)(2022/10)レポート

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今回(2022年10月)の札響定期は、首席指揮者のバーメルトさんが今年5月以来となる久しぶりの登場です。また、今をときめく若手チェリストの佐藤晴真をソリストにお迎えするのは2021年2月のhitaru定期から1年9ヶ月ぶり。そしてメインの「戦時のミサ」では、第九以外で札響合唱団が出演するのは3年ぶりとのことで、大変注目されていました。

今回のオンラインプレトークは、札響の首席チェロ奏者 石川祐支さんと首席ティンパニ・打楽器奏者 入川奨さんがご出演。今回ソロの見せ場がたっぷりあるお二人が、ソロパートだけじゃない今回のプログラムの魅力をたっぷり語ってくださっています♪

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札幌交響楽団 第648回定期演奏会(土曜夜公演)
2022年10月22日(土)17:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
マティアス・バーメルト

【出演】
佐藤 晴真(チェロ)

安井 陽子(ソプラノ)
山下 牧子(メゾソプラノ
櫻田 亮(テノール
甲斐 栄次郎(バリトン

札響合唱団(合唱)
(合唱指揮:長内勲、大嶋恵人、中原聡章)

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:会田 莉凡)

【曲目】
メンデルスゾーン:序曲「静かな海と楽しい航海」
C. P. E. バッハ:チェロ協奏曲 イ長調
ソリストアンコール)J.S.バッハ無伴奏チェロ組曲第1番 より サラバンド

ハイドン:ミサ曲ハ長調「戦時のミサ」


自分にとってはなじみが薄いミサ曲に、やや構えていた私。しかし今回の「戦時のミサ」は、合唱と4名の独唱がストレートに心に響き、その美しさに浸ることができました。人の声って良いですね!たとえ言葉の意味がわからなくても、その思いは共有できたと感じます。結局のところ人が歌うのは音楽の原点なのかも。そして演奏はもちろんのこと、ラストの音が消え入った後の静寂がとても良かったです。国際情勢や感染症拡大、それ以前にただまっとうに生きていくだけでも、心がざわつくことばかりの昨今。心の平穏を求める祈りのような時間があったのは、大変ありがたいことでした。一般受けする演目ではないためか、会場に空席が目立ったのがもったいない。しかし、トレンドとも奇抜さとも無縁の、長く生き続ける作品を折に触れて取り上げていくことが、クラシック音楽ではとても大切なのだと私は思います。多くの財団からの支援があったのもありがたいです。今の時代に大変重要な演目を取り上げ、素晴らしい演奏で私達に聴かせてくださった、バーメルトさんと札響の皆様、そして札響合唱団の皆様にお礼申し上げます。特に合唱は、コロナ禍もあり、人が集まっての練習は大変だったことと存じます。思いを一つにした合唱はとても心に響きました。ありがとうございます!

またC.P.E バッハのチェロ協奏曲では、まずソリスト・佐藤晴真さんの以前よりさらに深みを増した音に触れられたのがうれしかったです。独奏チェロは存在感ありながらもオケに溶け込んでいたと私は感じました。加えて、オケの室内楽のような緻密なアンサンブルによる古風な響きがとても新鮮!私が古風だと感じたのは、チェンバロの影響だけでなく、弦の音色自体がバロック期の音楽を思わせる硬質な音(うまく言えず申し訳ありません)だったからだと思います。おそらくスチール弦を張ったモダン楽器でも、こんな音で表現できるんですね!札響の弦メンバーのお力を改めて認識しました。こんなチェロ協奏曲に出会えてうれしい!個人的に、チェロはヴァイオリンと比べて協奏曲の数が少ないのをもどかしく感じていました。しかし私が知らないだけで、隠れた名曲はまだまだあるのかも!?これからもあまり知られていない作品を積極的に取り上げ、私達に聴かせてくださいませ。

そして1曲目のメンデルスゾーンの序曲では、バーメルトさん流の強弱の変化がしっかり感じられたのがうれしく、前回の定期での「海」とはまた違った「海」に出会えました。シーズンテーマに添って毎回異なる曲が聴けるのは良いですね!今回の「水」にまつわる曲も楽しかったです。


1曲目はシーズンテーマ「水」にちなんだ曲、メンデルスゾーンの序曲「静かな海と楽しい航海」。プログラムによると札響演奏歴は過去に5回で、前回の演奏は2009年10月だそうです。静かな出だしでは、海の深さのような重低音の低弦がとても印象的でした。高音弦と木管が美しい、穏やかな音楽は凪を思わせる響き。ヴィオラが美メロを奏でたところも印象に残っています。穏やかなところから少しずつ盛り上がり、パワフルな強奏に気分があがりました。盛り上がっては少し穏やかになる流れは、さすがバーメルトさん流の強弱の変化!また弦のうねりに、前回の定期での「大洋女神」のうねりとは違う海が感じられました。チェロパートが主役のところがあったのがウレシイ。そしてクラリネットが大活躍でした。来ましたティンパニのソロ!オンラインプレトークでお話があったため、私は楽しみにしていました。パワフルで存在感抜群!またティンパニが強く鼓動を刻むリズムで、オケの弦も跳ねるような演奏をしたのも楽しかったです。クライマックスでは、ティンパニに乗った金管が華やか!そしてオケ全体で盛り上がった後、ラストは波が引いていくように、冒頭の静かな凪を思わせる響きで締めくくったのも素敵でした。深く大きな海の上を、希望を抱いて航海する楽しさが感じられ、聴いていて気分爽快になりました。

ソリストの佐藤晴真さんをお迎えして、2曲目はC.P.E.バッハ「チェロ協奏曲 イ長調。札響初演です。編成は、独奏チェロと弦そしてチェンバロ。弦の5パートの人数は8-6-4-3-1と、少数精鋭でした。第1楽章、華やかな冒頭から素敵!高音の澄んだ明るさに、対する低音の安定感。独奏チェロははじめのうちはオケのチェロパートと同じ低音を演奏し、ずっとベースを作っているチェンバロとの重なりが古風に感じられて新鮮でした。満を持して独奏チェロのソロ演奏が登場。最初の深い音がぐっと来て引き込まれました。ああ佐藤さんのこの音!以前hitaruで聴いたハイドンの協奏曲より、さらに深みが増したように感じました。チェンバロとシンクロして歌う独奏チェロは、大声で主張するというよりは、大人の落ち着きで幸せを語っているよう。オケの弦が独奏の合間でさらに明るく盛り上げてくれて、独奏とオケとの室内楽のような密な絡みが素晴らしく、多幸感に聴き入りました。第2楽章は、重く哀しげな音楽に。ゆったりした流れの中で、じっくり歩みを進めるオケに続いて登場した独奏チェロ。はじめの高音の儚さも、少し低音になってからの切なさもとても素敵で、心に染み入りました。独奏を控えめに下支えするオケの低弦とチェンバロが、ぐっと深みを作ってくれたのも印象に残っています。再び快活になる第3楽章は、オケの高音弦が明るいのにどこか哀しい感じなのが印象的。独奏チェロもまた、甘く優しく歌っても内に秘めたものがあるようで心に響きました。また速いテンポかつ明るい流れの中で、少しゆったりするところの優しい響きがかえって印象に残り、良いアクセントになっていたと感じました。独奏とオケがダンスしているように、軽やかに駆け抜けた音楽。独奏チェロとオケの弦、いずれもその古風な響きの良さをしみじみ味わえました。

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ソリストアンコール、22日はJ.S.バッハ無伴奏チェロ組曲第1番」より サラバンド。2021年2月のhitaru定期でも演奏された曲です。ゆったりとした舞曲のリズムに、重音の深い厳かな響きがとても印象的。hitaruとkitaraの響きの違い以上に、佐藤さんの音自体がグレードアップしたと、おこがましくも私は率直に感じました。やはり大バッハ無伴奏チェロ組曲は原点ですね!今の佐藤さんの演奏で拝聴することができ、うれしかったです。演奏機会が少ない協奏曲に加え、ソリストアンコールまで、素晴らしい演奏をありがとうございます!これからますますのご活躍を期待しています!これから先も佐藤さんのその時の音に、私は出会いたいです。お忙しいことと存じますが、時々は札幌にいらして演奏を聴かせてください!


後半はハイドンのミサ曲ハ長調「戦時のミサ」。こちらも札響初演です。プログラムには歌詞とその日本語訳が掲載されていました。4名のソリストの皆様はマスクなしでステージ前方に。合唱団の皆様はP席に1席飛ばしで入り、口元は大きな布(コーラスマスク?)で覆うスタイルでした。またオルガンはパイプオルガンではなく、コンパクトなものがオケ内に配置されていました。「キリエ」では、はじめの弦と木管の澄んだ響きに引き込まれ、合唱の登場で一気に気持ちが高揚。人の声は理屈抜きでハートに直接響きます!ソプラノ独唱の美しさ!ソリストの四重唱は神々しい!続けて合唱が盛り上がりを作ったところでは、あわせて強奏になったオケの高音も一緒に歌っているようでした。また、高音の下支えをする低音の良さが、全編にわたり個人的にツボでした。「グローリア」は合唱とオケ(トランペットの響きが素敵!)による華やかなところを経て、首席による独奏チェロの登場!穏やかなオケをバックに歌うチェロの心地良い響きは、ずっと聴いていたいほどでした。そしてほどなく登場したバリトン独唱は、穏やかなのにものすごく心に響く存在感!主を称える賛歌に説得力が感じられました。バリトン独唱や合唱のちょうど谷間に合わせて、美しいメロディの盛り上がりを歌う独奏チェロはさすがです。華やかな合唱再び。アーメンの繰り返しが印象的でした。「クレド」でも、はじめは華やかな合唱とオケ。中盤は厳かになり、バリトンから始まった各独唱と合唱が順番に語るような演奏。私は歌唱している部分をリアルタイムでは正しく把握できませんでしたが、ここは受難の場面かなとは想像しました。合唱と4名の独唱が交互にアーメンを繰り返す華やかなところでは、精神の高みが感じられました。「サンクトゥス」は、初めの穏やかなメゾソプラノ独唱に、重なるオケも繊細な響き。ここでは高音を活かすためか、低弦はチェロとコントラバスのそれぞれトップのみが演奏していたと思います。また穏やかな合唱に重なる木管の優しい響きが素敵でした。テノール独唱による賛歌が力強く華やか!「ベネディクトゥス」での、ソプラノが主役の四重唱がとても良くて、その神々しさに心が洗われるようでした。短調から長調へ、ほんの少しの変化で希望の光が見えてきた流れも素敵!「アニュス・デイ」は、穏やかな合唱とオケが、ティンパニに導かれてクレッシェンドしていくのが素晴らしかったです。強弱に一切の妥協をしないバーメルトさん流!ティンパニはごく小さな音から大音量まで存在感抜群で、まさに「太鼓ミサ」の要!そしてクライマックスの盛り上がりの合唱は圧巻でした。ラストに音が静かに消え入ってからも、しばらく会場は沈黙。祈りのような静寂の後に大きな拍手が起きました。オケと客席の気持ちが一つとなった感覚、この場にいられた私は幸せです!札響も札響合唱団も初演の大曲を、最後まで集中力を持って澄んだ響きで聴かせてくださり、ありがとうございます!来年度の「ドイツレクイエム」もどうぞよろしくお願いします!


【速報】2023-2024シーズン『札幌交響楽団主催演奏会』ラインナップが発表されました。定期演奏会のテーマは「夜」。合唱が入る「ドイツレクイエム」をはじめ、注目の公演が盛りだくさん♪今からとても楽しみです!

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前回の札響定期はこちら。「札幌交響楽団 第647回定期演奏会」(土曜夜公演は2022/09/10)。フィンランド出身の指揮者オッコ・カムさんによるオールシベリウスプログラム。ソリスト三浦さんの独奏とオケの一体感。オケの音の波やうねり、グルーヴ感ある演奏に、札響とシベリウスの魅力を再確認しました。

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