自由にしかし楽しく!クラシック音楽

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札幌交響楽団 第653回定期演奏会(土曜夕公演)(2023/05) レポート

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ブラームス生誕190年の今年(2023年)、首席指揮者のバーメルトさんと札響によるブラームスドイツ・レクイエムの演奏がついに実現しました!はじめに予定されていた2020年から実に3年の時を経て、いよいよ迎えた本番当日。聴衆の期待は大きく、土曜夕公演は9割近い席が埋まっていました。

今回のオンラインプレトークはヴァイオリン副首席奏者の飯村真理さんとバストロンボーン奏者の澤山雄介さんがご出演。楽曲の事のみならず、舞台上ではお互いが遠いお二人のやりとりも楽しいです♪

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札幌交響楽団 第653回定期演奏会(土曜夕公演)
2023年05月27日(土)17:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
マティアス・バーメルト

【出演】
安井 陽子(ソプラノ)
甲斐 栄次郎(バリトン

札響合唱団(合唱)
札幌放送合唱団(合唱)
(合唱指揮:長内勲、大嶋恵人、中原聡章)

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:会田 莉凡)

【曲目】
(ロビーコンサート)モーツァルト:フルート四重奏曲第1番
(出演:フルート/福島さゆり、ヴァイオリン/会田莉凡、ヴィオラ/青木晃一、チェロ/武田芽衣

メンデルスゾーン:「真夏の夜の夢」序曲、夜想曲
ブラームスドイツ・レクイエム


やっと出会えたバーメルトさんと札響によるドイツ・レクイエムはしみじみ良くて、今の私の心を癒やしてくれました。やっぱり私はブラームスが好きで、札響の響きが好きなことを再確認。またソリストお二人と合唱団による「人の声」には体温を感じ、たとえ言葉の意味や宗教的なことがわからなくてもストレートに心に響いてきました。それをまっすぐにハートで感じたことで、無心に音楽に浸ることができたのがうれしかったです。ちなみに今回、私は特に第5曲のソプラノ独唱に救われました。好きなバリトンがメインの第3曲が思った以上にこたえてしまい上手く受け止められず、第5曲のソプラノに癒やされたのは自分でも想定外で驚き!ソリストお二人の演奏に心揺さぶられ感激したのと同時に、ブラームスが最後の最後にこの第5曲を付け加えたのは大正解と心から思いました。今回はこんな感じ方でしたが、次に聴くときはまた別のことに気づけるかも!と思うとワクワクします。私は今回の演奏に触れたことで、ブラームス作品の中では自分から一番遠いものと感じていたドイツ・レクイエムが、今では自分のハートに一番近い存在とさえ思えるようになりました。コロナ禍のため、初対面まで思いの外時間がかかってしまいましたが、素晴らしい出会いとなったことに感謝いたします。長丁場を頑張ってくださった合唱団のお一人お一人も、もちろんバーメルトさんと札響の皆様も、長きにわたり温めてきた思いを演奏に昇華してくださりありがとうございます!そして「長きにわたり温めてきた思い」は聴き手の方にもあったと私は思います。とっつきにくいイメージがある宗教曲にもかかわらず、多くのお客さんが集まり、約75分という演奏時間を客席は集中して聴き入っていました。ラスト、バーメルトさんが指揮棒を下ろすまで沈黙が続き、そのシーンと張り詰めた空気も素晴らしかったです!昨年度のハイドン「戦時のミサ」(こちらも指揮はバーメルトさん)でも、演奏の音が消えた後に長い静寂があったことを思い出しました。その時も今回も事前に約束していた訳ではなく、会場にいたお客さん達は皆、自主的にそうしたのです。演奏から真摯な「祈り」の思いが客席に伝わってきたのに加え、バーメルトさん×札響と私達聴き手は篤い信頼で結ばれていることを実感し、私は胸が熱くなりました。地元オケと地元ファンはとても良い関係になっていて、私もそこの末席にいられることが素直にうれしいです。


本年度より開演前のロビーコンサートが復活しました。今回の演目はモーツァルト「フルート四重奏曲第1番」。3楽章構成の曲を抜粋ではなくフルで聴かせてくださいました。4名のメンバーによる演奏です。メロディを歌うフルートは多幸感いっぱい!どこで息継ぎするの?と素人目には思えるほど、フルートがずっと朗らかに歌っていて、鳥がさえずるようだったり、ふと陰りを見せたり、ゆったり穏やかにささやいていたりと、多彩な表情を見せてくださいました。音を震わせながら長くのばしたり、細かく刻んだりと様々な奏法(奏法の名前がわからず申し訳ありません!)を、息づかいまで伝わる距離で体感できるのがうれしい!弦も、はじめはタタタタ……とベースを刻んでいたのが、第2楽章ではずっとピッチカート(面白い!)、第3楽章ではフルートに負けずに歌うシーンもあり、短いながらも充実した素敵な演奏でした。やはりリアルに目の前で演奏が聴けるのは良いですね♪


前半はシーズンテーマ「夜」にちなんだ、メンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」から。序曲 フルートの透明な響きが印象的な冒頭に続き、ザワザワした澄んだ弦がそろりと登場。私は「札響の響き!」と感じ、懐かしくうれしくなりました。時々他のオケを聴くことがあっても、私はやはりここに戻ってきたい!華やかな音楽に、聴いている私達の気持ちも晴れやかに。ダンダンダンダン……とティンパニの勇ましいリズムに乗って、軽快に歌う弦が2回区切りを入れる際、(私の感覚では)思いっきり溜めてこぶしを効かせた感じだったのが面白かったです。このリズミカルな弦は、木管群をピッチカートで支える時も金管群と呼応する時もノリノリでした!夜想曲 温かなホルンの歌がとっても素敵!重なったファゴットと低弦もとても優しくて、心穏やかになれました。木管群が穏やかに歌い、ヴァイオリンが壮大な世界を広げてくれて、なんて素敵な夜の時間!後半の重厚なドイレクの前に、華やかで心安らげる音楽が聴けてよかったです。


後半はブラームスドイツ・レクイエム。独唱のお2人は指揮台の前の椅子に着席され、出番の時はその場に立って演奏されました。合唱団はP席に原則1席飛ばしで入り、第5曲のみ着席して他ではすべて立って歌唱。なおマスク着用なしでした。オルガンはパイプオルガンではなくポジティブオルガンが低弦の後ろに、ハープ2台は2ndヴァイオリンの後ろに配置。第1曲 中低弦によるオケの厳かな序奏から引き込まれ、「幸いなるかな」とそろりと入った合唱は神秘的で美しくて鳥肌ものでした。木管の柔らかな響きと重なる合唱が素敵!男声による「喜びをもって刈り入れるであろう」が、意思を感じて胸に来ました。オケは、祈りのような合唱と重なるときは自然と音量を下げていたのが印象的で、ヴァイオリンがお休みの中で2台ハープの美しさが際立っていたと私は思います。派手さは無いけど、祈りに寄り添うようでとても優しい。第2曲 ティンパニの鼓動が印象的なオケの重量感、合唱の「人はみな草のごとく」の力強さ!「だから耐えるのです」からは祈りの美しさ!一緒に祈っているような木管とハープ&弦ピッチカートの温かさも素敵でした。「だが、主の言葉はとこしえに残るのです」からは、金管も入り力強く前進。合唱の響きに魂の声が聞こえたように感じ、私は圧倒されたと同時に光が見えた気がしました。第3曲 バリトン独唱の底知れぬエネルギーがものすごい衝撃!死がテーマだからかもしれませんが、特に「命 Leben 」の揺らぐ発声はズシンと来て、私一人ではとても受け止められない……。合唱もオケもバリトンと同じように揺らぐところがあって、個人的には正直しんどくなってしまいました。もちろん演奏が素晴らしかったからこそ刺さったのだと思います。「正しい者たちの魂は」からの合唱とオケは壮大で圧倒されましたが、この時の私にはちょっときつかったかも。第4曲 合唱と木管&弦によるオケは、穏やかな天を思わせる響きで心穏やかになれました。個人的には、弦が緻密にリズムを作り上げているように感じ、その仕事ぶりも密かに感心。そして、第5曲 に私は救われました!ソプラノ独唱がなんて美しく優しい!しかし芯の通った強さが感じられ、中でも「悲しみ Traurigkeit 」のところで力強く発声を震わせたのが強く心に響きました。まるで第3曲での揺らぎを受け止めているかのよう。悲しむ人を大きな愛で包み込み慰める、深い愛を感じるソプラノ独唱に感激です!短いチェロ独奏にも心癒やされました。もう何もコワくない!第6曲 バリトン独唱の「ある瞬間 augenblick 」の力強い発声に合わせて、オケがタン・タンと韻を踏んだのがピタッとキマって、「最後の審判のラッパ letzten Posaune 」には金管群がシンクロしたのにゾクッとしました。さあここから!合唱とオケによる「死者の復活」はこの日一番の力強さ!なんて気迫!また細かく息を継ぐようなところに情熱がほとばしるブラームス「らしさ」も感じました。女声合唱による「主よ」から始まる流れが輝かしい!クライマックスでは、合唱が金管群&ティンパニと重なるところは勇ましく、弦合奏と重なるところは崇高に、力いっぱい希望の光に向かって前進するのが清々しかったです。第7曲 第1曲を思わせる中低弦が効いたオケは、ここではヴァイオリンも一緒に。柔らかな木管群と重なる合唱は崇高な祈りのよう。女声合唱がメインの澄んだお声の響きに、魂が洗われました。ラストはオケによる木管群の穏やかな響きにハープ&弦ピッチカートで静かに締めくくり。指揮のバーメルトさんはしばらく腕を下ろさず、会場もその余韻に浸りました。長い静寂の後、バーメルトさんが腕を下ろしてからようやく会場に大きな拍手!ああ素晴らしい!最初の計画発表から3年の時を経てやっと出会えた、バーメルトさんと札響によるドイツ・レクイエム。会場にいたお客さん達も皆、万感の思いでこのラストを迎えたに違いありません。演奏そのものの良さに加えて、この日この瞬間を待っていた会場全体の気持ちが一つになれたことに感激!この場にいられたことに感謝します。ありがとうございました!

 

今回ドイレクを聴くにあたって、予習のつもりで読んだ本のレビューは以下にあります。「『《ドイツ・レクイエム》への道: ブラームスと神の声・人の声』西原稔(著) 読みました」。何事においてもそうですが、すぐに答えが見つかるはずもなく……。しかしそれを受け止め、この先も自分なりに向き合っていきたいとの思いを新たにしました。

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ブラームスと言えばこちらも。札幌交響楽団 首席チェロ奏者・石川祐支さんがソリストとして出演された「セントラル愛知交響楽団 第196回定期演奏会~春・声~」(2023/05/13)。ディーリアスの美しさに誘われた、愛あふれる春のブラームス。魅力的な独奏とオケによる二重協奏曲に打ちのめされる快感!ブラ1の「苦悩から歓喜へ」の素晴らしさ!しらかわホール定期のラストイヤー初回公演に居合わせて幸せでした。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。