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札幌交響楽団 hitaruシリーズ定期演奏会 第15回(2023/11) レポート

www.sso.or.jp


札響首席指揮者のマティアス・バーメルトさんがついにhitaruシリーズに初登場です!注目は、ドイツ・ピアノの正統派を代表するゲルハルト・オピッツさんをお迎えしてのブラームスピアノ協奏曲第2番」。また交響曲にはバーメルトさんと縁あるモーツァルトが、そしてhitaruシリーズ恒例・日本人作曲家の作品には旭川出身の間宮芳生さんの作品が取り上げられました。当日の会場は、平日夜の公演にもかかわらず9割近くの席が埋まる盛況ぶりでした。

なお、この日の公演に先立ち、ポッカサッポロ「リボンナポリン」のコラボ連載企画「バーメルト&リボンりぼん」が各SNSにて開催されました。事前にキャンペーン参加した上で申し出た先着50名には記念品、当日来場者にはリボンナポリンの500mlペットボトルのお土産を頂きました。楽しい企画をありがとうございます!


札幌交響楽団 hitaruシリーズ定期演奏会 第15回
2023年11月21日(火)19:00~ 札幌文化芸術劇場 hitaru

【指揮】
マティアス・バーメルト(首席指揮者)

【ピアノ】
ゲルハルト・オピッツ

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:会田 莉凡)

【曲目】
間宮 芳生:オーケストラのためのタブロー2005
モーツァルト交響曲第40番
ブラームスピアノ協奏曲第2番


あこがれのブラームスピアノ協奏曲第2番」に、最高の形で出会えました!オピッツさんによる「ブラームスのピアノ」と、バーメルトさんが率いる札響の演奏で聴けるなんて、良いに決まっている!と、期待ゲージMAXで臨んだ私。そして実際の演奏は当たり前のように期待をはるかに超えるものでした。「ピアノ付き交響曲」が、ピアノもオケも大変充実している上に互いに打ち消すことはなく、かつ繊細なところや室内楽的なところはじっくりと。ピアノもオケもシーン毎の切り替えが鮮やかで、メインとサブの交代はスムーズ。バーメルトさん流の強弱へのこだわりがとても良い形で実を結んでいると感じました。何より演奏の熱量たるや!自信に満ちた響きから、歌曲の優しさから、舞曲のリズムから、ブラームスの情熱と愛そして親しみやすさがひしひしと伝わってきました。そもそもが演奏機会の少ない曲で、限られた準備期間にもかかわらず、このクオリティの高さでの演奏!オケのお一人お一人に敬意を表し、心からお礼申し上げます。

これは極めて個人的な事ですが、実は今回、ブラームスのピアコン第2番を聴くのが私はちょっと怖かったのです。3年前の第1番での苦い経験(思い入れが強すぎてうまく聴けず……聴き手としてあまりに未熟でした)があり、今回も自分の思いだけが空回りしてしまったらどうしよう、もし大好きな曲がつらい思い出になってしまったら!?と。しかしそれは杞憂でした。今の私が聴き手として成熟したとは思っていません。ただ、今の私なりに全身全霊で受け止め、感激に打ち震えたこと。それは私の中で忘れ得ぬ記念となりました。オピッツさん、3年前に続き今回も堂々たる「ブラームスのピアノ」を聴かせてくださり、ありがとうございます。そしてバーメルトさんと札響の皆様、完成度も熱量も高い演奏をありがとうございます。我が町のオケ、最高です!3年の年月で私が変化した事があるとすれば、何度も聴いてきた札響に今や全幅の信頼を寄せていることかもしれません。信じてついていけるものがある私はとても幸せです。この出会いに感謝いたします。

前半2曲も素晴らしい演奏で、興味深く聴きました。旭川出身の間宮芳生さんの作品は、hitaru定期でなければまず出会えなさそうな曲。このような演目を地道に取り上げていくことが、聴き手にとってもオケにとっても、さらにはクラシック音楽のこれからにとっても大切なのだと思います。また定番曲であるモーツァルト交響曲第40番」は、以前に札響による演奏(私が前回聴いたのは2021/12。今回より弦の人数が少なく、クラリネットはナシでした)で聴いた時とは違った印象で、新鮮な気持ちで楽しめました。今回は弦の人数が多い(ブラームスに合わせ中低弦を強化した大編成)にもかかわらず、繊細な響きで数少ない木管群を活かし、かつ力強いところではガツンと来るスタイル!ちなみに、8月に聴いた名曲シリーズ・ドイツ3大Bでは、演目ごとに弦の人数を変えて変化を付けていたと思います。良し悪しの話ではなく、シンプルに奏者の人数だけでは決まらない、オーケストラの奥深さと面白さを改めて実感できました。ありがとうございます!


前半1曲目は、間宮芳生「オーケストラのためのタブロー2005」。今回が札響初演とのことです。弦は人数が多く、14型でしょうか?ヴァイオリンの人数は正確に把握できませんでしたが、ヴィオラ10・チェロ8・コントラバス7という、中低弦が厚い編成でした。管は基本の2管編成で、フルートはピッコロ、クラリネットはEsクラリネットの持ち替えあり。低音金管群はナシ。多彩な打楽器は正団員さん3名で次々と持ち替えての演奏でした。演奏は、インパクトある拍子木から。続いたオケも独特なリズムがあり、速いテンポで様々な音が飛び交うのに、私は祭り囃子をイメージしました。チーンという鈴の音や、パーンというムチ、カーンという鐘(「のど自慢」の鐘1つの音と同じ?)、ジャーンというドラ等、多彩な打楽器がアクセントに。喧噪の後の、フルート独奏の存在感!和笛のような雰囲気で、重なる大太鼓も相まって大迫力でした。コンマスソロはミステリアスな感じ。コントラバスの重低音は地の底から来るエネルギーのよう。そして、後半に登場したオーボエ独奏がすごい!他が沈黙する中、暗闇を1人で歩みを進めているような孤高の響きで、時折入る間合いにゾッとする演奏に引き込まれました。後から拍子木が重なり、ほどなくオケが合流。終盤の流れは不穏な雰囲気で、ラストの寂しげなフルートが印象的でした。今の私には難解な演目でしたが、このような作品を見事に演奏する札響のお力を再確認しました。

2曲目は、モーツァルト交響曲第40番」。札響の過去の演奏歴は70回(ほか楽章抜粋演奏9回)という定番曲で、今回はクラリネットを含む改定稿が取り上げられました。ちなみにブラームスはこの曲の自筆譜を持っていたそうです。オケの編成は、弦の人数そのまま、管はフルート1で他は2ずつ、金管打楽器ナシ。この管が少なく弦が多いのはバランス的にどうかな?と、演奏前は率直にそう思った私。しかし演奏が始まると、まったく違和感なく聴けて、最初の心配はどこかへ消えてしまいました。さすがバーメルトさん&札響ですね!第1楽章 中低弦からそっと始まった出だしの美しさ!この序奏があったおかげで、ヴァイオリンによる哀しげなメロディがすっと入ってきました。静かな弦楽合奏に、管も加わり一度盛り上がってから、再び静かな弦楽合奏に。そこに重なる木管群の長くのばす音が心に染み入りました。弦の強弱の波がとても良くて、ぐおんぐおん来る感じや強奏は大人数ならではの迫力!同じメロディでも次々と表情が変わり(転調?)、その変化を楽しめました。楽章終盤での、ヴァイオリンの揺らぐ音(トリル?)が続くところがカッコ良かったです。第2楽章 こちらも中低弦からの静かな序奏が良かったです。楽章全体を通して振り子時計のようなゆったりした規則的なテンポだったのが印象的でした。一定のテンポを保ちつつ、各パートで順番にリレーしたり、木管と弦が呼応したりと、職人技による静かで美しい音楽をゆったり楽しめました。第3楽章 前の楽章から一転して、舞曲のリズムがカッコイイ!やや切ないメロディの弦による力強い演奏にドキドキし、長調のところでの木管群の可憐な響きに癒やされました。第4楽章 強弱のメリハリくっきりで、短調のキャッチーなメロディの前のめりな演奏がぐっと来ました。強奏での低弦の力!ヴァイオリン&ヴィオラのみのところから木管群の歌が続いたところが美しかったです。厚みある弦の力強い響きと、木管メインの繊細なところの美しさの両方が楽しめた演奏。なじみ深い曲を新鮮な気持ちで聴けました。

後半は、ソリストゲルハルト・オピッツさんをお迎えして、ブラームスピアノ協奏曲第2番。なお、札響の過去の演奏歴は15回で、前回の演奏は2015年1月とのこと。オケの編成は、弦の人数そのままで、各木管2(フルートはピッコロ持ち替えあり)、ホルン4、トランペット2、ティンパニ。第1楽章 序奏のホルンとピアノの会話は、親密な温かさが素敵でじんわり心に染み入りました。音階をゆっくり上るピアノは、もうそれだけでブラームスの響き!と私は最初から気持ちが高揚。オケが優しく重なって、ピアノ独奏キター!低音が分厚く高音が輝かしいピアノに早くも胸いっぱいに。華やかでちょっと切ないピアノ独奏に聴き入りました。力強い和音の一打を受けての、オケの堂々たる響きの良さ!中低弦のピッチカートに乗って、メロディを歌うヴァイオリンの澄んだ音色がすごく素敵でした。そこから再びパワフルに盛り上げて、ピアノの力強い和音に繋がる流れが鮮やか!ここでのピアノに、私はなんとなくベートーヴェンの「皇帝」をイメージしました。オケとピアノが交互に出てきたり、ピアノに弦がピッチカートでリズミカルに合いの手を入れたりと、ピアノとオケが見事に一体化しての演奏は聴いていて気持ちが良かったです。オケがパワフルな盛り上がりから、さっと潮が引くように音量を下げていった仕事ぶりがすごい!ホルンの哀しげな響きの美しさ!最初に首席が明るく歌ったメロディを、ここでは副首席(楽器の種類も異なる?)が担当。呼応するピアノも切ない響きになり、この室内楽的なやり取りにもブラームス「らしさ」を感じました。ピアノのキラキラにうっとりし、緊迫感が増していく流れにドキドキ。来ましたオケの重厚なダーダーダー♪2回目にはティンパニの力強いドラムロールもあって最高にカッコイイ!この布陣による超イケイケの演奏で聴けたのが夢みたい。遠くにきこえる、冒頭と同じ温かなホルンの良さ!再現では、ピアノもオケもはじめの時よりも明るい響きになったのが素敵で、楽章締めくくりのパワフルなオケとピアノの連打(トリル?)の輝かしさに胸がすく思いでした。第2楽章 はじめの厚みあるピアノから中低弦&ファゴットの重厚な低音が重なるところで鳥肌が立ちました。ああこの激情!しびれる!力強く歩みを進めていたピアノが、最後の1音を意識的にピアニッシモでそっと奏でたのがとても印象に残っています。そこに続いたヴァイオリンの澄んだ響きがなんて美しいこと!メロディを引き継いだピアノは、内向的でもまっすぐな情熱が感じられ、私はブラームス若き日のピアノ・ソナタを連想しました。そっとリフレインする弦の優しさ!重厚で力強いオケが、弦とホルンによる明るく雄大な感じに変化したところで視界は開けたように感じました。自信に満ちたユニゾンの輝かしさ!遠くにきこえるホルンに続いたピアノ独奏は、最晩年のピアノ小品を思わせる切なさ美しさで、胸に来ました。もう一度オケがガツンと盛り上げ、木管群がふと寂しげにメロディを歌ったのが印象的でした。情熱的でやや悲劇的に楽章は締めくくり。第3楽章 はじめはチェロから。オケに乗って、高音域で歌曲「まどろみはますます浅く」 op.105-2 のメロディを優しくたっぷり歌う独奏チェロが素敵すぎました!夢のようです……。呼応するオーボエの温かさ!続いたピアノも優しく美しく、高音がキラキラしたところから少し低音が不穏な感じになったり、切なさ不安さが垣間見えたり等、繊細な表情の変化が素敵でした。オケと呼応して音階の駆け上り下りや連打(トリル?)が効いているところはまさに「ブラームスのピアノ」。これはオピッツさんだからこその貫禄ですよね!ピアノの穏やかな伴奏に乗って、クラリネットが歌曲「死へのあこがれ」 op.86-6 のメロディを歌ったのにハッとさせられました。なんて温かで優しい!クラリネットを引き継いだ弦は、子守歌のようでも鎮魂歌のようでもあり、その純粋な優しさ美しさが心に染み入りました。そして独奏チェロ再び。高音で感極まったところでの、ふとまどろんだような儚い響きの美しさが忘れられません。独奏チェロもオケもピアノも優しく静かにフェードアウトする楽章締めくくりに涙涙でした。そのまま続けて第4楽章へ。 冒頭から、ピアノのスキップするようなリズムとキラキラした音色、重なる爽やかな弦にウキウキしました。オケが同じリズムでタッタ タッタ♪と演奏するのが楽しい。オケが盛り上けてからの、きらびやかな高音&重厚な低音のピアノのインパクト!木管群と弦が対話するところの切なさに胸焦がされました。ウキウキするところで、ほんの一瞬だけ登場したピッコロがとても印象に残っています。ハンガリー舞曲のようなリズムが次々と登場する楽しさと、合間に来る胸焦がす部分とで、情緒が大忙し!しかし、オピッツさんとオケの一体感のおかげで流れが生き生きとしていて、すごく引き込まれる演奏でした。オケが華やかに盛り上げてから強奏による渋いダーダ♪で締めたのにガツンとやられて、続く情熱的なピアノにしびれました!この布陣による超絶カッコイイ演奏で聴けたのが超うれしい。音階駆け上りや高音を力強く鳴らすピアノの生命力を感じる強さ!終盤はスキップのリズムが小刻みに早くなって、ピアノもオケも同じ鼓動で前へ前へと進んで行くのが気分爽快でした。ラストは力強くジャン!ジャン!ジャーン!と、明るく前向きな締めくくり。夢じゃなくて本当に、あこがれの曲と最高の形で出会えました!この曲のはじめての生演奏がオピッツさん&バーメルトさん&札響でよかった!

カーテンコールにて、オピッツさんは指揮のバーメルトさん、コンマス、アシスタントコンマス、そしてチェロ首席と順番に握手。会場は拍手喝采で、出演者の皆様に賛辞を贈りました。私はこの日の事をずっと忘れないと思います。最高の出会いをありがとうございました!


バーメルトさんとブラームスといえばこちらも。「札幌交響楽団 第653回定期演奏会」(土曜夕公演は2023/05/27)。最初の計画発表から3年の時を経てやっと出会えたドイツ・レクイエム。体温を感じる人の声はストレートに心に響き、遠いと感じていた作品が一番自分のハートに近いものと思えるように。会場全体の気持ちが一つになれたラストも素敵でした。

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森の響フレンド 札響名曲コンサート~ポンマーの贈り物 ドイツ3大B」(2023/08/26)。職人技のバッハ、新たな魅力を知ることができたベートーヴェン、重厚なブラームス。すべてが美味しい「親子丼、天丼、カツ丼」を一度に堪能でき大満足!元首席指揮者・ポンマーさんによる快演を気持ち良く聴くことが出来ました。

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チェロの石川祐支さんがソリストのお一人としてご出演。私は名古屋まで聴きにうかがいました。「セントラル愛知交響楽団 第196回定期演奏会~春・声~」(2023/05/13)。ディーリアスの美しさに誘われた、愛あふれる春のブラームス。魅力的な独奏とオケによる二重協奏曲に打ちのめされる快感!ブラ1の「苦悩から歓喜へ」の素晴らしさ!しらかわホール定期のラストイヤー初回公演に居合わせて幸せでした。

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