自由にしかし楽しく!クラシック音楽

クラシック音楽の演奏会や関連本などの感想を書くブログです。「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ(http://nyaon-c.hatenablog.com/)」の姉妹ブログです。

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札響えべつコンサート2022(2022/05) レポート

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毎年恒例の札響えべつコンサート。ここ数年はコロナ禍のため中止や延期が続いていましたが、今回(2022年度)は当初の予定通りかつ人数制限なしで無事開催されました。そして今回の指揮は、なんと半年ぶりの来日が実現した札響首席指揮者のマティアス・バーメルトさん!札幌より一足先に、お隣の江別に登場です。お久しぶりのバーメルトさんに早く会いたい!ということで、私は札幌からプチ遠征することに。ちなみに今回、私にとっては3年ぶりの札響えべつコンサートでした。

当日の会場は9割以上の席が埋まっている盛況ぶり。またプログラムと一緒に、えべつ楽友協会による会報誌「がくゆう倶楽部」が配布されました。丁寧なコンサートレビューには、地元で開催される演奏会と音楽への愛情が感じられます。なお公式サイト(この記事の一番上にリンクがあります)にて電子版が公開されていますので、皆様ぜひご一読を!


札響えべつコンサート2022
2022年5月22日(日) 14:00~ 江別市民会館

【指揮】
マティアス・バーメルト

管弦楽
札幌交響楽団(ゲストコンサートマスター:須山暢大)

【曲目】
モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」序曲
モーツァルト:セレナード第13番「アイネ・クライネ・ナハトムジーク
シベリウス交響曲第2番

(アンコール)シベリウス:悲しきワルツ


慣れ親しんできた札響による定番曲の演奏で、こんなに胸打たれるとは、うれしい誤算でした。プチ遠征して本当によかったです!バーメルトさん流の強弱がはっきりして各楽器の個性が際立つ演奏は、今回のえべつでも健在。さらに今回は、清廉で美しいだけでなく、情熱的で心の奥底にあるドロドロした感情や湧き上がる力強さも感じられました。特に後半のシベ2が素晴らしかったです!バーメルトさんの新たな一面を発見!また、ダイレクトに音が来る会場にて、シャープな高音もうねる低音も金管打楽器の力強さも、聴き手の私達はそのままの形で楽しめました。バーメルトさんと団員の皆様は、限られた準備期間で、この日の会場での最適解を見つけ形にしてくださったのだと思います。ありがとうございます!どんな場所でもベストな演奏ができるのは本当に素晴らしいです。特に地方公演の場合は、その時の演奏がオーケストラ初体験だったり年に一度きりだったりするお客さんは多いと思われます。そのような会場ではなおさら一期一会の出会いは大切。そして今回のえべつでは、熱量高い演奏に客席が熱くなっているのが感じられたので、地元の皆様にもきっと喜んで頂けたのでは?

なお今回は、ゲストコンサートマスターに大阪フィルの須山暢大さん、ゲスト首席フルート奏者にN響の甲斐雅之さんはじめ(ツイッターで教えて頂きました。ありがとうございます!)、多くの客演奏者のかたが入ってくださいました。また首席が降り番のパートでは主に副首席がトップを務められました。いつもとは少し違うチームによる演奏を聴くのは、主催公演以外の演奏会での密かな楽しみだったりします。そして今回のチームも、各パートやソロ演奏での見事な仕事ぶりはもちろんのこと、バーメルトさん指揮の下での一体感と情熱が感じられる素晴らしいチームでした!


団員の皆様、続いて指揮のバーメルトさんが入場し、バーメルトさんはコンマスと握手。すぐに演奏開始です。1曲目はモーツァルトの「フィガロの結婚」序曲。弦とファゴットによる出だしから、木管とホルンに続いて弦による華やかな盛り上がり!初めから気分があがります。木管のターンで弦がごく小さな音からクレッシェンドして主役に躍り出る等、緩急や強弱のメリハリある演奏に、これぞバーメルトさん!と私はうれしくなりました。流麗な音楽に、リズム良くパン!とアクセントが入るのが気持ちいい。低弦が主役になる力強いところや多幸感あふれるフルートが素敵なところ等、短い曲でも内容は盛りだくさんで楽しく聴けました。フィナーレで快活にリズムを刻むティンパニとトランペットも印象的でした。

2曲目はモーツァルトアイネ・クライネ・ナハトムジーク。弦のみでの演奏です。超有名曲にもかかわらず、全楽章フルで生演奏を聴く機会は意外に少なく、私も今回が初めてでした。第1楽章、キャッチーで華やかな出だしから掴みはOK!メロディの高音弦も下支えの低弦も素敵!堂々としたところと囁くようなところの強弱の変化はさすがです。また生き生きとした音楽の流れの中での役割交代がごく自然で、例えば1stヴァイオリンから2ndヴァイオリンにメロディが移ったときに、1stがさらっと音を刻む演奏にシフトした流れが見事でした。あとは、一通り終わったと思った後、最初に戻って繰り返されたことに少しだけ驚きました(間違っていたらごめんなさい)。私は繰り返しナシの演奏になじんでいたのですが、繰り返しアリが本来の姿なのかも?第2楽章、はじめのゆったりしたところのテンポが心地よく、美しい音色に聴き入りました。そして中盤、テンポが速くなり雰囲気がガラリと変わった(短調に?)ところの演奏が大変素晴らしく、強く印象に残っています。ひたすら明るい曲の中にふと影を落とすこの部分で、全体がぐっと輝きを増したように感じました。第3楽章は、ステップを踏んだり優雅に踊ったりするような、美しい音色での素朴な舞曲が素敵でした。再び速いテンポになる第4楽章では、細かな音の刻みがウキウキしているイメージに感じられました。ただ音楽自体は滑らかに繋がって美しく流れている印象。ずっと高音が主役なのに、低音が効いたところが一度だけ出てくるのが個人的にツボでした。明るく美しい音楽は快活に締めくくり。とっても素敵な演奏でした!やっぱり私は札響の弦が好き!


後半はシベリウス交響曲第2番」。第1楽章、冒頭のごく小さな音から始まり次第に浮かび上がる弦が、清涼で壮大で素敵すぎて、最初から鳥肌が立ちました。名演奏になる予感!弦ピッチカートに乗ってスキップするような木管とホルンが心に染み入り、私は早くも涙が。1stと2ndのヴァイオリンの透明感ある美しい響き!ここに中低弦が重なると深みが増して更に素敵!バーメルトさん流の強弱がはっきりした演奏から、美しいだけでない感情のうねりが感じられました。続く第2楽章がまた素晴らしかったです。はじめティンパニに導かれ、コントラバスとチェロが交互にピッチカート。もうこれだけで大満足な私(←まだ早い)。ここに重なるファゴットの深みある音色での歌が胸に来て、後から加わった他の木管の哀しげな音色も印象的でした。弦と木管による感情の高まりに続いた、金管がすごく良かったです!音がダイレクトに来るこのホールで、このパワフルさ重厚さ!強弱の波を作りながらの絶妙なバランスでのまさにここでしか聴けない響きが最高でした。来ました、蜂の大軍のような、うなる弦!重なるコントラバス(2回目の時は低音金管)の重低音が超カッコイイ!トランペットソロと続くフルートの哀しげな響きがとっても素敵。中低弦が効いたところに弦の高速演奏にと、クールなのに熱量高い、聴き所しかない演奏にはずっと夢中になれました。第3楽章、はじめの不穏な雰囲気での速い音楽の流れにゾクゾク。強弱や速さが細かく変化する演奏が素晴らしかったです。勢いがピタッと止まったシメも見事でした。対照的にゆったりとなったところでは、オーボエがメインとなる木管群の歌が美しい!一瞬重なる独奏チェロも素敵でした。オケ全員参加の演奏はエネルギーを溜めながら少しずつ上昇していき、そのままフィナーレの第4楽章へ。清々しさ高揚感、ああやっぱりイイですね!こう来るとわかっていても(実はよくわかっていないのかも?)、私は自然と涙が。華やかな金管がカッコイイ!ティンパニと低音のうねり、高音のメロディが明るいのにどこか哀しげで心に染み入りました。中低弦に下支えされ、木管が順番に哀しく歌ったところが素敵。中でもクラリネットの低い音での演奏がとても印象に残っています。弦の美しいメロディに、重なるコントラバス木管、パワフルな金管。この感情のうねり熱量の高さ!そしてフィナーレでは、弦の音の刻みに乗ってコントラバスがメロディを弾き、力強いティンパニ金管インパクト大!全員参加による清々しいラストが最高に気持ちよかったです。この日この会場だけの特別なシベ2、聴けて本当に良かった!

カーテンコールの後、アンコールの演奏へ。ああこの曲は……シベリウス「悲しきワルツ」!名曲シリーズ「バーメルトとワルツを」(2021/11/27)で私が一目惚れした曲です。再びバーメルトさんと札響による演奏で聴けるなんて!と、私は心の中で大喜び。先ほどのシベ2は明るさの中に哀しみがあるのに対し、「悲しきワルツ」は哀しみの中にかすかな明るさが垣間見えるように私は感じました。美しく澄んだ音色で、まるで独白のように歌う弦がとにかく素敵!またこれはホールの響きのためかもしれませんが、kitaraでの演奏よりは今回少し音が大きめだったかも?弦が一瞬ウィンナ・ワルツのように明るくなったところに、華やかなフルート&クラリネットが登場!一緒に踊る(?)弦が、今度は音量を上げて切なく妖しげな響きになったのが強く印象に残っています。宴が終わったのか、最後はヴァイオリン数台の演奏で消え入るような締めくくり。なぜかぞわっとなった、静かなのに鮮烈な印象のラスト。短い曲なのにすごくドラマチックな演奏で、とても引き込まれました。シベリウス最高!バーメルトさん、札響の皆様。普段とは違う環境において、ここでしか聴けない最高の演奏をありがとうございました!札幌での定期演奏会も楽しみにしています!


前回のバーメルトさん来日&札響との演奏はこちら。「札響名曲シリーズ 森の響フレンド名曲コンサート~バーメルトとワルツを」(2021/11/27)。今回アンコールで取り上げられたシベリウス「悲しきワルツ」をはじめ、演目はすべてワルツ!バーメルトさん流の強弱のメリハリがあって各楽器の個性が際立つ澄んだ響きで、バラエティ豊かなワルツを楽しめました。

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なお、名曲シリーズ「バーメルトとワルツを」のライブ録音はCD化されています。「The Waltz 夢幻∞ワルツ」、とっても素敵ですので超おすすめです♪以下のリンク先で試聴できます。

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この日の約1週間前に聴いた「札響名曲シリーズ 森の響フレンド名曲コンサート~ようこそマエストロ川瀬!」(2022/05/14)。楽しく物語の世界に浸れた音楽劇2つに、ラドヴァン・ヴラトコヴィチさんのホルンに魅了された協奏曲。そして各楽器の職人技が光るボレロではオケの魅力を堪能しました。ちなみにボレロにてスネアドラムを見事な職人技で演奏されたのは、今回のえべつでティンパニを担当された札響副首席打楽器奏者の大家和樹さんです。

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ブラームスを愛してやまない私が、初めて泊まりがけの遠征をした「仙台フィルハーモニー管弦楽団 第355回定期演奏会(金曜夜公演)」(2022/05/06)。指揮・飯守泰次郎さんのフィナーレ第1弾!ソリスト菊池洋子さんのピアノは若き日のブラームスそのもので、私はようやくピアコン1番の良さに気づけました。マエストロとの信頼関係が窺えるブラ4の重厚感と歌心も素敵でした。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。