2024-2025シーズンの札響定期は、正指揮者・川瀬賢太郎さんによる「2つの交響曲」で開幕です!今年(2024年)生誕150年のアメリカの作曲家・アイヴズが20代の若さで書いた交響曲第2番と、チャイコフスキーの交響曲第4番。私はカワケンさんのチャイ4をとても楽しみに、作曲家の名前から初耳だったアイヴズにも期待して、この日を迎えました。
札響公式youtubeの新企画「札響プレイヤーズトーク」。初回となる今回(2024年4月)は、ヴィオラ奏者の櫨本朱音さんと原香奈恵さんが出演され、ヴィオラ愛あふれるトークを展開しています。すごく面白かったです!若いって素晴らしい!
札幌交響楽団 第660回定期演奏会(土曜夕公演)
2024年04月20日(土)17:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール
【指揮】
川瀬 賢太郎<正指揮者>
【曲目】
(ロビーコンサート)J.ハイドン:3本のチェロのためのディヴェルティメント ニ長調
(出演:石川祐支、横山 桂、荒木 均)
アイヴズ:交響曲第2番 ~生誕150年記念~
チャイコフスキー:交響曲第4番
信頼の川瀬賢太郎さん×札響による「お初」と「定番」の2種類の交響曲を、それぞれの楽しみ方で思いっきり楽しめました!前半のアイヴス2番については、結局予習なしで丸腰のまま当日を迎えた私。いざ実演に触れると、重厚だったりド派手だったり親しみやすい民謡が登場したりと、様々な要素が次々と来てとても面白かったです!次に何が来るかわからないまま演奏を聴くのは、例えがあれですが、闇鍋をドキドキしながら頂いているような。それも「おっかなびっくり」ではなく、「ワクワク」!「カワケンさんと札響についていけば大丈夫、何でもどんと来い!」という姿勢で聴けたのは自分でもうれしかったです。何と言っても川瀬さん×札響は、個人的に正直「無理!」と思っていたベルリオーズ「幻想交響曲」にドハマリさせてくれたので(2022/04/14、こちらも新年度初回の定期でした)、私はとても信頼しています。今回も新たな扉を開いてくださりありがとうございます!また、後半チャイ4では天井知らずなド迫力に圧倒され、胸がすく快演に気分があがりました!加えて、陰と陽のコントラストや奥行き、シリアスな面の良さも知れたのがうれしかったです。定番曲とはいえ、チャイ4を実演で聴いたのは今回が2回目だった私。今後再び聴ける機会(何度もあるはず!)には、また別の気付きがあるかも!そう思うとワクワクします!
そして、Kitaraで聴く大迫力の札響サウンド、めっちゃ最高!金管打楽器は、遠慮無く大音量で鳴らして半端なく男前かつとても美しい響き!男性的な力強さと好対比の、木管群のまるい音色は艶っぽくなんとも魅力的!大人数で来る弦は、澄んだ音色の美がさらに強化され、大きなうねりを作る底力が半端ない!この大所帯だからこそ出せる分厚い音が、Kitaraにキレイに響く。それを全身全霊で体感できるのは幸せです。どちらかと言うと小編成・小ホールを好む私ですが、Kitaraで聴く大迫力の札響サウンドは別腹!この響きを体感するために、Kitaraでの札響の演奏会に今後もずっと通い続けたいです。定番料理でも闇鍋でも、何でもどんと来い!これからもお世話になります!
開演前のロビーコンサート。今回の演目はJ.ハイドン「3本のチェロのためのディヴェルティメント ニ長調」で、4楽章構成の曲をぎゅっと10分程度に圧縮したものでした。演奏は、チェロの石川祐支さん、横山桂さん、荒木均さん。はじめはゆったりと。穏やかに呼応し合うところの品の良さ!メロディの優雅さに、支える2つのチェロの温かな鼓動が心地良い!続いて快活に。明るくスピード感あり、聴いている方はウキウキした気持ちに。しかし演奏する手元はとても忙しそう。時折ふと陰りを見せることもあり、短いながらも変化に富んだ音楽が素敵でした。メヌエットでは、1対2になって呼応し合うのが、まるで男女2人がお互いの気持ちをさりげなく確かめ合っているようで素敵。中間部で少しシリアスになったのが印象的でした。そして最後は、明るく生き生きとした音楽が楽しい!演奏は3人が追いかけっこしたりメロディとベースに分業したりと、短い中でも目まぐるしく担当交代。それでも聴き手としては一気に駆け抜けているように感じられ、切れ目をまったく意識させないのはさすがです。こんなにハイクオリティな演奏を至近距離で聴けちゃうなんて、感激です!開演前のガヤガヤしたロビーにて、しばし俗世界のことを忘れて、3つのチェロの響きにうっとり聴き入った約10分間のショートトリップ。なんとも贅沢でした!心癒やされ満たされた私は、ここで帰っても悔いは無いと、聴き終えたばかりの時はそう思ったほど(※だめです)。
前半は、アイヴズ「交響曲第2番」。演奏機会が少ない作品で、プログラムによると、札響演奏歴は過去に1回(2000年1月21日、指揮:井上道義)。オケの編成は14型(コントラバスは7)の大所帯でした!木管は基本の2管編成に加えてピッコロとコントラファゴット。金管はホルン4、トランペット2、トロンボーン3、チューバ。打楽器はティンパニ、大太鼓、小太鼓、トライアングルと、登場する楽器はオーソドックスなもの(と私は思いました)。5楽章構成のようですが、楽章間を繋げて演奏(アタッカ)したところ(1&2、4&5楽章それぞれの間?)があって、私は全体で3部構成のように感じました。以下レポートに書いた楽章の区切りは、間違いがあるかもしれません。お許しください。第1楽章 低弦から入り、ヴィオラ、ヴァイオリンが順に重なって作る弦の良さ!このスケールによる重厚な、やや深刻で美しい響きにぐっと引き込まれました。kitaraで聴く弦楽アンサンブル最高!ホルンを皮切りに、時折木管が重なってのニュアンスの変化が素敵。第2楽章 木管群が軽やかに歌い出し、金管群も顔を出して賑やかに。ただ、プログラムの解説にあったブラームス「大学祝典序曲」の感じは私には掴めなかったです(ごめんなさい!)。行進曲風のメロディが繰り返され、ノリノリなのが楽しい!木管群が温かに歌うところで、ヴィオラがベースを作っていたのが印象に残っています。また、この楽章だったと思うのですが、2ndヴァイオリントップから入り、それぞれの弦の2トップを中心とした室内楽的なところが一瞬あったような?私が気付いた瞬間に終わってしまい、味わう余裕はなかったのですが……。勘違いでしたらごめんなさい。勇ましい盛り上がりでの、パンチの効いたスネアドラムと大太鼓がカッコイイ!終盤はさらにパワフルになり、低音金管群のド迫力にガツンとやられました!第3楽章 ホルンから入った、木管群と弦が中心のゆったりとした優美な音楽が超素敵!少し切ない感じもあり、演奏が進むにつれ弦が力強く変化。幸せに歌う木管群と、包容力あるチェロソロがなんて美しいこと!温かでどこか懐かしくて心癒やされました。第4楽章 はじめ、孤高のホルンに続いて悲劇的な弦と木管。厳かで重厚な響きで、むしろここがブラームスっぽいと個人的には思いました。そして衝撃的だったのは、オケ全体のクレッシェンドでのティンパニ連打!ごく小さな音からダダダダ……と連打しながら次第に大音量になり浮かび上がってくるのがすごいことすごいこと!思わず私は「ワー!」と仰け反りました(※演奏中なので、叫んだのは心の中でだけです)。書いた作曲家以上に、これを実現できるプレイヤーがすごすぎます!第5楽章 明るくリズミカルな音楽が楽しい!アメリカの懐かしい民謡のメロディ(私でもわかる程の有名なメロディ)が登場し、それを各パートでリレーしていくのを楽しく追いかけました。行進曲風のところでは打楽器陣が生き生き!ここでも幸せな木管と包容力あるチェロソロが!ありがとうございます!ヴィオラパートがさりげなく寄り添ってくれたのがニクイ!クライマックスは、金管打楽器が勇ましく、全員参加でガンガン盛り上げるスタイルに。指揮の川瀬さんは指揮台の上を何度もジャンプ(靴底の赤が鮮やか!)。最後はすごい音を大音量で(!?)、あれ?ここで終わり?という感じでした。何でもアリな交響曲、超楽しかったです!演奏後、指揮の川瀬さんは、順にチェロ首席、チェロ副首席、ヴィオラ首席、2ndヴァイオリン首席、ホルントップに起立を促し、讃えました。
後半は、チャイコフスキー「交響曲第4番」。プログラムによると、札響での前回の演奏は2021年8月31日(指揮:太田弦)のようです(ちなみに私も聴いています)。オケは前半と同じ14型。木管は基本の2管編成に加えてピッコロ。金管はホルン5、トランペット3、トロンボーン3、チューバ。打楽器はティンパニ、大太鼓、シンバル、トライアングルでした。第1楽章 冒頭のホルンとファゴットのパンチ力!続いた金管群のド迫力!この時、私は金管群の音の切れ味と洗練された響きに目が覚める思いでした。札響の金管、美しすぎる(何を今更、ですね……大変失礼しました)。全員一斉にジャン!と強奏するのがキレッキレで気持ちイイ!大迫力からの、クラリネットとファゴットの二重奏のもの悲しさにハッとさせられました。このコントラスト、すごい!また、悲劇的な弦が素敵すぎました。今まで私は、チャイ4の賑やかな面にばかり気を取られていたようで、今回はシリアスな面の良さも知れたのがうれしかったです。まるでダンスをしながらくるっと裾を翻すかのような、木管群が繰り返すタララララ~♪が艶っぽい!このプライベートな感じから、盛り上がっていく流れでの弦がすごい!大人数だからこその音の厚みで、押し寄せてくるうねりに聴いている方のボルテージもぐーっと上がりました。金管打楽器が大活躍の、大都会を思わせる華やかさが気分爽快!楽章終盤で弦がずっと音を震わせながら(トリル?)悲劇的なメロディを歌っていたのが超カッコ良かったです!第2楽章 弦のピッチカートに乗って歌うオーボエの崇高な美しさ!メロディを引き継いだチェロの優美さに、私はふと「白鳥の湖」のオデットと王子を連想しました。孤高のファゴットの存在感!木管群が繰り返すタララララ~♪は、深淵のさらに奥深くから聞こえてくるよう。木管と弦が作る、哀しげで美しい音楽に聴き入りました。第3楽章 はじめ弦の皆様は弓を手放し(床に置いたり膝に乗せたり)、ピッチカートの構えに。来ましたピッチカート祭り!速いテンポで小粋に奏でられる音楽が楽しい!一辺倒ではなく、細かく強弱を変化させたり掛け合いがあったりと、リズミカルで小粋な音楽はずっと聴いていたい面白さでした。オーボエの第一声(鮮烈!)を皮切りに、木管群によるダンスのような音楽になり、こちらも楽しい!ピッコロが可憐!ここでもまた私はチャイコフスキーのバレエ音楽を連想しました。ピッチカート祭り再び。木管との掛け合いが素敵!ただ聴いている方は楽しくても、弾く方は痛手を負う大変な演奏と拝察します。いつもありがとうございます!第4楽章 ジャーン!の出だしが強烈なインパクト!シンバルと大太鼓が存在感抜群!弦の高速演奏の気迫!おなじみの民謡のメロディ(私は「小さな白樺」のタイトルで記憶しています)を各パートでリレーするのに、前半のアイヴスを思い出しました。天井知らずなド迫力の盛り上がりが清々しい!民謡の牧歌的な雰囲気から、大都会の摩天楼まで縦横無尽。この勢いが快感でした。金管打楽器がパワフルな思いっきり華やかなところで、合間に入る休符がバシッと揃うのが気持ちイイ!超スピードで駆け抜けるラストは突き抜けたカッコ良さ!めちゃくちゃ気分があがりました!
客席からは大きなブラボーのかけ声が。演奏後、指揮の川瀬さんは、オーボエ、ファゴット、クラリネット、ピッコロ、フルート、とまずは木管の皆様。続けてホルン、トランペット、トロンボーン&チューバの金管の皆様。ティンパニ、打楽器陣の順に起立を促し讃えました。そして弦5部の各トップと握手。カーテンコールで何度も戻ってきてくださった指揮の川瀬さん。最後に小さく手を振るバイバイの仕草をして、客席に温かな笑いが起き、会はお開きとなりました。今年で札響正指揮者は3年目という川瀬さん、既にオケとも札幌市民とも相思相愛の関係ですね!これからも末永く、どうぞよろしくお願いいたします。
昨年度(2023年度)、川瀬賢太郎さん指揮×札響でチャイ5を聴いた公演はこちら。終楽章にシンバルが入るバージョンでした。「PMFホストシティ・オーケストラ演奏会」(2023/07/23)。アカデミー生との合同演奏に、存在感抜群な独奏と愛あるオケとの幸せな協演の協奏曲。そしてメインのチャイ5の素晴らしさ!正指揮者カワケンさんによる大熱演に心揺さぶられました。
先月(2024年3月)、札響友情指揮者・広上淳一さん(川瀬さんの師匠!)指揮による札響の地方公演でチャイ5を聴きました。「札幌交響楽団 苫小牧公演2024」(2024/03/23)。オケは我らが札響、ソリストはコンマス&首席の最強デュオによる、密で壮大で愛と情熱あふれるブラームスの二重協奏曲!想像をはるかに超える最高の出会いでした。また後半チャイ5は素直に聴けて胸打たれ、気分爽快になれました。
先月(2024年3月)には、小編成・小ホールならではの良さが味わえた公演も。「札幌交響楽団 in ふきのとうホール Vol.5」(2024/03/30)。最初の企画から4年以上の年月を経て実現した演奏会は、小さな空間からどこまでも広がる小宇宙。悲劇から魂の浄化へ。アンコールも含めたプログラム全体で1つの物語のような流れは、聴く人すべてにとって救いとなりました。
最後までおつきあい頂きありがとうございました。