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PMFホストシティ・オーケストラ演奏会(2022/07) レポート

www.pmf.or.jp

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今年(2022年)のPMFホストシティ・オーケストラ演奏会は、指揮にPMF客演指揮者のケン=デイヴィッド・マズアさん、PMF教授陣からゲストコンサートマスターにライナー・キュッヒルさん、ソリストにはダニエル・マツカワさんをお迎えしての独墺プログラム。ちなみに私がPMFの演奏会を聴くのは実に3年ぶりです。また今年のPMFで私が聴けるのは結果としてこのホストシティ・オーケストラのみとなりそうです。


PMFホストシティ・オーケストラ演奏会
2022年07月22日(金)19:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
ケン=デイヴィッド・マズア

ファゴット
ダニエル・マツカワ

管弦楽
札幌交響楽団(ゲストコンサートマスター:ライナー・キュッヒル

【曲目】
ブラームスハイドンの主題による変奏曲 作品56a(聖アントニーのコラールによる変奏曲)
モーツァルトファゴット協奏曲 変ロ長調  K. 191

シューマン交響曲 第4番 ニ短調 作品120(1841年初稿版)


PMFでしか聴けない札響」による王道の独墺プログラムは、札幌の初夏のように爽快で気持ちよく、かつ安定感ある演奏で安心して聴けました。奇をてらうことはなくても勢いとパワーがあって、世界中から集まった若いアカデミー生たち(会場にちらほらお見かけしました)には良い刺激となったのでは?またPMFからお越しのお三方も札響メンバーも終始にこやかに、とても楽しそうに演奏していらしたのが印象的でした。PMFのお三方は当然PMFでの指導や演奏が立て込んでおり、札響だってこの時期は地方公演が目白押し。そんな中、短い準備期間で今回限りのチームを作り上げ、クオリティの高い演奏を聴かせてくださったことに感謝です。

ブラームスの変奏曲では、ブラームスらしい控えめな美メロとしっかりした低音の重厚さが感じられました。各変奏が順に登場する流れが交響曲のようにも感じられたのが面白く、各変奏はそれぞれ独立しているとはいえ順番と構成も考えて作られているのかも?と勝手に推測。私は宗教的な要素や変奏曲の本質的なところがわかっていないので、表層的な聴き方ではあるのですが、自分なりに楽しめたのがうれしかったです。またモーツァルトファゴット協奏曲は、都会的な独奏ファゴットがとっても素敵で、独奏の繊細さを潰さないように柔らかな響きで包み込んだオケとはとても幸せな共演と感じました。そしてメインのシューマン交響曲第4番」は、勢いがあって力強いカッコ良さがあり、シリアスすぎず(シューマンの鬱展開は今の私にはちょっと重たい)、素直にいいと思えました。妻クララへの誕生日プレゼントだったそうですが、彼女が好んだチェロの見せ場を用意したのはサービス?とも思ったり(勝手な想像です)。また、明るいところとシリアスなところが交互に来ても、一つの流れの中で不思議と違和感なく受け止められた気がします。ここ最近、約半年の間に札響の演奏でシューマン交響曲を3つ聴いた私ですが、今回の4番は2番や3番とは違う形でのシューマンの二面性が新鮮でした。なお第4番については現在演奏されるのは主に改訂版で、今回のように初稿版が取り上げられるのはめずらしいとか。私は先に初稿版を聴いてしまいましたが(笑)、今後改訂版の演奏を聴く機会があったら、2つの版の違いも意識してみようと思います。ちなみにこのシューマン交響曲第4番については、ロベルト・シューマン他界後、彼の作品を整理した妻クララと友人ブラームスがどの版を採用するか揉めた(クララは改訂版、ブラームスは初稿版を支持)という逸話があるので、一体どの辺りが両者の判断ポイントだったのかを推測してみると面白いかも。


1曲目はブラームスハイドンの主題による変奏曲(聖アントニーのコラールによる変奏曲)」。はじめの主題は、低弦のピッチカートの下支えに、柔らかな響きの木管が素敵。ファゴットコントラファゴットに導かれた第1変奏と、ほの暗く情熱的な第2変奏は、冴えた高音弦がカッコイイ!また対する低弦の存在感がブラームスらしくて個人的にはうれしいポイントでした。穏やかな第3変奏は牧歌的なホルンと低弦とのやりとりが印象的。第4変奏では、オーボエとホルンの哀しげな響きと美しい弦の重なりが素敵でした。駆け足でかわいらしい感じの第5変奏を経て、ホルンとファゴットから入った第6変奏へ。全員参加で盛り上がったこの壮大な第6変奏が個人的には最も印象深かったです。再び穏やかになった第7変奏は、美しいフルートと澄んだ弦に視界が開けるようでした。プログラムノートに「陰鬱な雰囲気」と書かれていた第8変奏は、揺らぐように歌った木管がミステリアスで、暗さの中にもキラリと光るものを私は感じました。そして終曲へ。はじめの低弦が素敵!各木管が変奏をリレーして、クライマックスではトライアングルも加わり思い切り華やかに。スピード感ある輝かしい締めくくりまで、とても楽しかったです!

ソリストのダニエル・マツカワさんをお迎えして、2曲目はモーツァルトファゴット協奏曲」。作曲家18歳の時の作品だそうです。オケの編成はコンパクトになり、弦は少数精鋭、管はオーボエ2とホルン2、金管打楽器ナシでした。第1楽章、小編成でも華やかなオケによる序奏は、ザ・モーツァルトな品の良い響き!ほどなく登場した独奏ファゴットは温かな音色でコロコロ歌い、個人的にはクラリネットのようにも感じました。高めの音域で細かく音を刻みながらの独奏は、低い音をのばすファゴットの通常イメージとは少し違った洗練した響き。カデンツァは速いテンポで流暢に聴かせてくださいました。第2楽章は、優しくゆったりしたオケの響きに、独奏ファゴットも穏やかな感じに。高い音を長くのばして歌うのはサクソフォーンのようにも感じましたが、時折ファゴットお得意の重低音がアクセント的に入るのがツボでした。またオーボエと会話するようなところが印象に残っています。この楽章でのカデンツァは高い音を長くのばして歌う形で、前の楽章との違いが楽しめました。第3楽章は、オケのメヌエットに乗って、独奏ファゴットが音を駆け上ったりのばしたりと軽やかに歌うのが自由な感じで素敵。おそらく演奏は難しいのだと思われますが、息の長い演奏は流麗で、響きの心地良さを楽しめました。主役として歌うファゴット、とっても素敵でした!

後半はシューマン交響曲第4番」の1841年初稿版。全楽章を区切らずに続けての演奏でした。第1楽章、華やかな第一声はベト7に似ている?と一瞬思ったものの、すぐにシリアスな感じに。高音が主役の華やかなところと低音が効いた重厚なところが切れ目無く交互に登場する形で、中低弦がカッコイイ!時折クレッシェンドで力強い波が来るのが刺激的でした。また、シーンが変わるところのパンチが効いたバストロンボーンの存在感が印象に残っています。第2楽章、柔らかな木管群が印象的なところから弦も加わったオケのゆったりと哀しげな響きに続いて、コンマスソロの登場!美しく歌うコンマスソロで世界がぱっと明るくなったようで、支えるオケも温かな響きに変化したのが印象的でした。独奏フルートが駆け上った後に、独奏オーボエと独奏チェロが同じメロディを哀しく歌ったのがとっても素敵!第3楽章、タンッタンッタンッ!と歯切れ良いリズムで力強い音楽にゾクゾク。ティンパニとホルンがカッコイイ!また高音弦に対する低弦が自分好みで、ぐっと引き込まれました。穏やかなところの木管の柔らかな響きも素敵でした。第4楽章、厳かなトロンボーンが印象的な序奏から、ジェットコースターのような勢いある流れで一気に生命力あふれる華やかな感じに。同じタンッタンッタンッ!でも前の楽章とは違って明るく軽やか。勢いある流れの中で、穏やかな木管と弦が滑らかにメインとサブを交代したり、重低音の金管の後に弦がティンパニと一緒にクレッシェンドで浮かび上がってきたり、高速で低弦から高音弦へメロディをリレーしたりと、澄んだ弦の音色が素敵でした。パワフルで高速のフィナーレから、堂々たる締めくくり。音楽の勢いに乗って没頭できた、あっという間の30分弱でした!王道プログラムを爽快で勢いのある素敵な演奏にて聴かせてくださり、ありがとうございました!



この日の3日前(2022/07/19)に聴いた「辻 彩奈&阪田 知樹 デュオリサイタル」。愛あふれ歌心あるブラームスのヴァイオリン・ソナタ第2番は想像以上の素晴らしさ!クララやシューベルトストラヴィンスキー等のバラエティ豊かな演目を、信頼し合った上で重なり合う幸せな共演で聴かせてくださいました。

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変奏曲といえばこちら。前回の札響定期(土曜夜公演は2022/06/25)は、指揮とヴァイオリンにドミトリー・シトコヴェツキーさんをお迎えし、シトコヴェツキーさん編曲の弦楽合奏ゴルトベルク変奏曲がメインプログラム。緻密かつ心に染み入る演奏でバッハの偉大さを再認識しました。また「白鳥の湖」では、美メロだけじゃないチャイコフスキーの骨太な魅力も堪能できました。

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シューマン交響曲モーツァルトの協奏曲といえばこちら。前々回の札響定期(日曜昼公演は2022/05/29)のメインプログラムはシューマン交響曲第3番「ライン」。ライン川を思わせる壮大な響きのシューマン。華やかな「水上の音楽」に、アンヌ・ケフェレックさんの可憐で繊細なピアノによるモーツァルト。首席指揮者マティアス・バーメルトさんによる、シーズンテーマ「水」がよどみなく流れるような演奏に、清々しい気持ちになれました。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。