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PMFホストシティ・オーケストラ演奏会(2023/07) レポート

www.sso.or.jp


www.pmf.or.jp
今年(2023年)のPMFホストシティ・オーケストラは、札幌交響楽団 正指揮者の川瀬賢太郎さんによる指揮、ソリストにデニス・ブリアコフさん(ロサンジェルス・フィルハーモニックの首席フルート奏者。PMFには今回5回目の参加)をお迎えしての演奏会。豪華なソリストによる協奏曲に加えて、メインは今年(2023年)放送されたドラマ「リバーサルオーケストラ」で一躍脚光を浴びたチャイ5。さらにPMFアカデミー生も入る大編成でPMF創設者・バーンスタインの作品を演奏するという粋な企画もあり、私は開演前から期待に胸膨らませていました。


PMFホストシティ・オーケストラ演奏会
2023年07月23日(日)18:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
川瀬 賢太郎

【フルート】
デニス・ブリアコフ

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:会田 莉凡)

【曲目】
バーンスタイン:スラヴァ!(政治的序曲)
ケヴィン・プッツ:フルート協奏曲
ソリストアンコール)J.S.バッハ無伴奏ヴァイオリンソナタ 第1番 第1楽章 アダージョ(フルート編曲版)

チャイコフスキー交響曲 第5番 ホ短調 作品64


うちのオケ、超男前!慣れ親しんできた札響に、私はまたしても惚れ直しました。何度も共演を重ね、信頼関係が出来ている正指揮者・川瀬さんと札響だからこその快演ですね!とはいえマエストロ川瀬と札響は、この10日あまりは無茶なスケジュールが組まれ、ありえないほど忙しかったはずです。いずれもすべて異なるプログラム・異なる会場で、地方公演(東川公演)と特別演奏会(HTBイチオシ!クラシック)、そしてこのPMFホストシティオケと、一週間に3公演も!しかしこの日のオケはお疲れをまったく見せずに、思いっきりリミッター振り切った素晴らしい演奏を聴かせてくださいました。いつだって全力投球!消化試合にしてたまるか(!?)の気概が感じられた大熱演に、大感激です!きっとあと2つの公演も全力だったに違いありません。さすが地元北海道が誇る、私達の札響です!これからもついていきます!

今回は1曲のみでしたが、PMFアカデミー生たちとの協演を目の当たりにできたのがうれしかったです。近年はコロナ禍もあり、合同演奏の実現は簡単では無かったと拝察します。しかしアカデミー生にも札響メンバーにとっても、お互いが良い刺激を与え合う素晴らしい試み!ぜひ今後も良い形で続きますように。またユニークな協奏曲では、存在感抜群な独奏と愛あるオケとの幸せな協演を目いっぱい楽しめました。そしてメインのチャイ5がすごい!ゆっくりじっくりの冒頭から高速で駆け抜けたラストまでテンポを大事にし、また各パートの仕事ぶりが際立つ細部をしっかり、そして思いっきりいくところは全力で!限られた準備期間でここまでやれる、正指揮者・川瀬さんと札響にホレボレしました。地元の私達でさえ心揺さぶられた演奏、おそらくPMFアカデミー生たちも大いに感銘を受けたのでは?なお札響には現在12名のPMF修了生が所属しているとのこと。今年のPMFアカデミー生の中にも、将来の札響メンバーがいるかも!


PMFアカデミー生も入った大編成で、1曲目はバーンスタイン「スラヴァ!(政治的序曲)」。「スラヴァ!」は、PMF創設者・バーンスタインの親友・ロストロポーヴィッチの愛称でもあり、ロシア語の「万歳!」「栄光あれ」でもあるそうです。はじめから金管打楽器大活躍の賑やかさで、パーン!とムチの音がキマり、行進曲のようなノリの良いリズムにミュート付き金管楽器のユーモラスな響きも楽しい!なんと中盤には、オケのベースに乗って録音テープの音声がスピーカーから流れました!発言内容は私にはよくわからなかったのですが(ごめんなさい!)、録音の中にはおそらくバーンスタインの声も入っていますね?また、賑やかな全員合奏の流れの中で、一瞬だけ弦楽八重奏(1st&2ndヴァイオリン・ヴィオラ・チェロのそれぞれ2トップによる演奏)となったところが意外性あり、かつ超素敵!瞬時に聴き手の心を掴む弦トップ奏者の皆様、さすがです♪賑やかでノリノリの音楽は、突然にオケメンバー全員で元気よく「スラヴァ!」のかけ声があがり、チャンチャン♪で締めくくり。お祭りにぴったりな気分アゲアゲな演奏、最初からテンションあがりました!

オケの人数はぐっと減って、低音金管群は降り番。打楽器は数は減ったものの鐘やトライアングルやマラカス等と多彩で、あとはピアノも残っていたのがユニークでした。管は、フルート(ピッコロ持ち替え)1、他の管は2管ずつの編成に。ソリストのデニス・ブリアコフさんをお迎えして、2曲目はケヴィン・プッツ「フルート協奏曲」。作曲したプッツさんは1972年生まれの(!)、現代アメリカを代表する作曲家とのことです。第1楽章 はじめ弦から。モーツァルトのような美しく心地よい響き!木管群が加わると心地良さがさらに増して、王道の協奏曲のように感じられました。ほどなく登場した独奏フルートは、小鳥が幸せにさえずるような美しさ!ピアノに乗って、ふと陰りを見せてつぶやくようなところは室内楽的で、ぐっと引き込まれました。オケが完全に沈黙してのカデンツァは、美しくかつ力強い!終盤で合流した控えめなオケの中では、ホルンがブオブオ(擬音がうまくないですが)鳴っていたのが印象的でした。第2楽章 はじめの弦によるミステリアスなところが素敵!オケはグラデーションで明るく楽しい感じに変化していったのも良かったです。ほどなく登場した独奏フルートも、はじめはミステリアスに、次第に明るくなっていったのがとっても素敵でした!独奏とオケの会話は、ゆったり幸せな感じから、ダイナミックで現代的な響きに。大音量の中でカーンカーンと鐘が鳴ったのが印象的でした。オケが完全に沈黙したカデンツァでの、速く力強い演奏がすごい!幽玄な雰囲気に変化したところも引き込まれました。終盤での、音を震わせる独奏に重なった、弦の繊細な超高音とピアノの音の刻みが印象的。特にピアノは第1楽章終盤でのホルンを思わせる響きでした。第3楽章 リズミカルでノリノリな音楽が楽しい!中盤少し穏やかになったところでもリズム感がとても良くて、気分があがりました。マラカスを皮切りにクライマックスに向かう流れでは、さらにスピードアップしてイケイケドンドンな音楽に。どんどん加速していく独奏もオケも超ノリノリ!そして驚いたのが、終盤でのオケの皆様による手拍子。楽器を演奏する打楽器と一部の木管を除くオケメンバーがリズミカルに手を叩いて(皆様すごくお上手!)、超楽しい盛り上がりに!これは誰もが笑顔になっちゃう♪祝福をいっぱいに受けた独奏フルートは最高に幸せな感じで駆け抜けて締めくくり。すごく楽しかったです!初聴きの現代曲でこんなにも楽しめて、独奏の素晴らしさに加え支えるオケの愛も感じられた幸せな協演。私は超幸せな気持ちになれました!

ソリストアンコールは、J.S.バッハ無伴奏ヴァイオリンソナタ 第1番 第1楽章 アダージョ」(フルート編曲版)。フルートは声量たっぷり!音を震わせるところはいかにもバロック風で、また長くのばす音が美しい!ほの暗さを感じる音色で、過剰な装飾はなくまっすぐに歌うのが素敵でした。ユニークな現代曲での存在感抜群な独奏に加え、王道の無伴奏のアンコールまで、素晴らしい演奏をありがとうございました!


後半はチャイコフスキー交響曲 第5番」。第1楽章 中低弦のベースに乗った、クラリネットによる「運命の動機」は、ゆっくりじっくりと。極端なほど遅いテンポによって、厳かさが一層際立ったように感じました。他の木管群が歌い始め、ベースのタン・タン♪のリズムは一歩ずつ着実に歩みを進めているよう。金管群が加わってからの低音が効いた力強さは鳥肌モノでした!一方で、澄んだ弦の美しさにハッとさせられ、木管群と弦の対話や高音弦と低弦が呼応するところは細やか。そんなメリハリがはっきりした鮮やかな演奏にはずっとゾクゾクさせられっぱなしでした。楽章終わりあたりの、ぐっと低音のファゴットが印象に残っています。そのまま続けての第2楽章 中低弦による序奏は、広大な北の大地の広がりを思わせる響きでした。ほどなく登場した、温かな音色でゆったり歌うホルンソロがすごく素敵!ホルンと各木管が順に対話する牧歌的なところや、チェロパート続いてヴァイオリンが美しく歌うところに心癒やされ、第4楽章の先取りのようなパワフル金管に圧倒されました。そして穏やかなところからエネルギーを溜めて上昇し、盛り上がりの頂点に達してからの壮大さ美しさ!なんて素敵なのでしょう!私は胸がいっぱいになりました。穏やかになっていく締めくくりでは、中でもヴィオラパートの優しい音色と、ラストのクラリネットの温かな音色がとても素敵で印象に残っています。第3楽章 チャイコフスキー流の美メロが心地よく、ワルツのリズムが楽しい!中盤は超高速になって、全員がこの速さで細かく演奏しながらテンポ良くピッチカートを入れたり各パートが掛け合ったりするのには目を見張りました。もちろん生き生きとした音楽自体がとても楽しかったです!クラリネットファゴットによる「運命の動機」は、ベースを作った弦を含め、ここではなんだか楽しそう。第4楽章 はじめの「運命の動機」は厳かかつ堂々たる響き!私は重々しかった第1楽章をつい思い浮かべ、胸が熱くなりました。やや陰りを見せた金管に弦ピッチカート、続いた温かな音色の木管に弦のうねうねした音の波と、色合いの変化が素敵!ぐっと盛り上がる流れを導き、ホルン四重奏をドラムロールで支えたティンパニがカッコイイ!軽やかに歌う木管群とヴァイオリンの可憐なピッチカート、それを支えた低弦のベースがとても良くて、ドキドキしました。今回の低弦はいつもよりさらに輪をかけて男前!超パワフル金管ティンパニに、超高速の弦がすごい!想像を超えたエネルギーと気迫に、私は気持ちを全部持って行かれました。何度目かの盛り上がりの頂点で、ジャーン!とシンバルの一打がキマったのがインパクト大!チャイ5にシンバルが入っていたとは、私は恥ずかしながら今まで気付きませんでした……。華々しいトランペットと大迫力ティンパニ、超高速の弦で駆け抜けたラストが清々しい!ああなんて素晴らしいこと……!重々しさから天井知らずの盛り上がりに至る音楽、それを着実にかつ思いっきり行く演奏がすごすぎて、最高に気分があがりました。札響の皆様、愛しています!ありがとうございました!

終演後のロビーでのお見送りには、PMF修了生の団員さん達が並んで、お客さん達との歓談に応じていらっしゃいました。定期公演においてもロビーコンサートやお見送り等が再開され、コロナ禍以前のような感じに戻りつつありますね。地元オケをより身近に感じられるこのような企画、個人的には大歓迎です!ご無理のない範囲で続けて頂けたらうれしいです。これからも演奏を楽しみにしています!

 

第539回ほくでんファミリーコンサート」(2023/07/04)。エリアス・グランディさん指揮による超充実した演奏会はもはや定期公演!オーボエ大活躍のクープランの墓、超絶カッコイイ独奏のトランペット協奏曲、生命力あふれるベト2。隠れた名曲達の熱奏に夢中になれました!

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札幌交響楽団の卒業メンバーも地域の演奏会でご活躍です♪「北広島市芸術文化ホール 開館25周年記念事業『夏の夜のホワイエコンサート』 ~ MOZART & Jazzy Quintet」(2023/07/14)。味わい深い音で私達を魅了した渡部大三郎さんのクラリネットと、見事な仕事ぶりで音楽を作った弦。リラックスした雰囲気でハイクオリティの生演奏を楽しめる、贅沢な時間を過ごすことができました!

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。