今回(2024年6月)の札響定期は、超定番の名曲2つのコンサートでした。協奏曲のソリストは、札響と何度も共演を重ねているヴァイオリニストの金川真弓さん!前売りチケットは早い段階で両日とも完売。なお当初指揮を予定していたシャルル・デュトワさんが体調不良により出演を見合わせ(上にリンクを貼った札響の公式サイトに、シャルル・デュトワさんからのメッセージが掲載されています)、指揮者を札響名誉音楽監督の尾高忠明さんに変更しての開催でした。
札響公式youtubeの企画「札響プレイヤーズトーク」。今回(2024年6月)は、フルート奏者の福島さゆりさんとオーボエ副首席奏者の浅原由香さんによる「木管女子」トークです!お話しぶりからお2人の心優しさが伝わってきて、ジーンときました。「新世界より」の2ndフルートのソロと、イングリッシュホルンのソロ、心して聴きますとも!
札幌交響楽団 第662回定期演奏会(土曜夕公演)
2024年06月29日(土)17:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール
【指揮】
尾高 忠明<札響名誉音楽監督>
【ヴァイオリン】
金川 真弓
【曲目】
(ロビーコンサート)シューベルト:八重奏曲 より 第6楽章
(出演:ヴァイオリン/飯村真理、岡部亜希子、ヴィオラ/鈴木勇人、チェロ/武田芽衣、コントラバス/大澤敬、クラリネット/原田侑來、ファゴット/坂口聡、ホルン/花澤良平)
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲
(ソリストアンコール)パガニーニ:24の奇想曲 第1番
私達の札響名誉音楽監督・尾高忠明さん&札響の実力とポテンシャルの高さは、私達聴き手の想像をはるかに超越するものでした。胸のすく快演を通じて、超定番の名曲たちから私達がまだ知らなかった魅力が引き出され、鮮烈で輝かしい音楽となって目の前に現れてくれた喜び!クラシック音楽はいつだって新しい!聴けて本当によかったです。きっとほぼ満席の会場にいた約2000人のお客さん達も同じ思いだと、会場の熱狂と終演後の様子から私はそう感じました。「あのデュトワ氏が来ない」という、お客さん達の落胆が少なからずある状態からのスタート。しかも演目は、ぶっちゃけ「耳タコ」と聴き手が思っているかもしれない超定番曲。代演を引き受けてくださった指揮の尾高さんも、もちろんオケメンバーも、プレッシャーが半端なかったことと存じます。にもかかわらず、演奏そのものの力で聴き手の曇った気持ちを一掃し、さらには聴き手を熱狂させるとは!ここまでやってくださるなんて、感激です!指揮の尾高さんと札響に、ただただ敬服いたします。
チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は、何と言っても金川真弓さんの独奏に魅了されました。「お若いのに」なんて前置きは不要の、風格と貫禄!3年前にシベリウスの協奏曲で初めて出会った時より、さらに力強く安定感が増したと私は感じました。どのシーンでも一切迷いのない音はインパクト大で、驚くほどの美音をキリッと響かせ、超高速パッセージはすいすい泳いでいくようでとっても楽しそう。加えて、勢いあるところでも繊細なところでも、作曲家が細かく書いた1つ1つの音を潰さずに丹念にすくい上げ、聴き手に伝わる表現にて聴かせてくださった、解像度が高い演奏だったと私は思います。実演でも聴く機会が多いチャイコフスキーのヴァイオリンコンチェルトが、こんなにも音が盛り盛りな曲(※言い方)だったなんて!と、私は今更ながら知りました。こんなに素晴らしいソロと協演した札響だってすごかったです!14型の大所帯による演奏は、交響曲のような厚み。独奏を引き継いでのオケのターンでは、この上なく壮大な響きを聴かせてくださいました。独奏とオケの全員合奏が重なるときも、遠慮無く全力で行ったのが清々しい!きっと、ソリストの金川さんのお力を信頼していらしたのと、作曲家を信じていた(実際チャイコフスキーは、オケの休符のタイミングで独奏が躍り出るのを想定して書いたのかなと想像します。素人考えですが)のですよね。一方、繊細な独奏を活かすシーンでは、木管群が優しく温かく寄り添い、弦が細やかに鼓動と色合いを作り、独奏とオケが呼応するのには愛が感じられる、まるで室内楽のような親密さ。なんて密で幸せな協演!個人的に以前から好きだったこの曲をさらに大好きになった、今回の出会いに感謝です。今回と同じく、尾高さん指揮&ソリスト金川さんだった2023年3月の札響定期(私は都合が合わず見送ってしまいました)も、聴いてみたかったです!
そして、あの「新世界より」は、聴き手の思い込みを覆し、遙かなる高みへ連れて行ってくれた、とんでもない快演でした!個人的には、決して奇をてらう事はない、ド直球の演奏だったと思います。しかしイージーモードでさらっと流すシーンは皆無。細部にわたり神経が行き届いた明快な演奏によって、輪郭をくっきりと浮かび上がらせる事で、曲本来の魅力を十二分に引き出していたと私は感じました。名曲が名曲たりえるのは名演奏があればこそですね!おそらくリハーサルでは、「身体が覚えている」事をいったんリセットして、新作初演に取り組むように真正面から作品に向き合い、1つ1つ丁寧に積み重ねて今回の演奏を創りあげたのではないかと拝察します。さらには演奏本番において、オケのお一人お一人の熱量がすごかったです。気迫あふれる演奏から、絶対に良い音楽にするという意気込みがひしひしと伝わってきました。その上で、力強い音も繊細な音も、また生き生きとしたテンポやリズムも、細部にわたりしっかりとコントロール。思いが込められた1つ1つの音にものすごい説得力がありました。まさに「神は細部に宿る」!もちろん札響はいつだって全力投球に違いありませんが、今回は特に顕著だったと私は思います。長年地元で親しまれてきた指揮者とオケが、「当たり前」を超越する「新たな世界」を切り拓いた超快演。この場に居合わせた私達は幸せです。本当にありがとうございます!
開演前のロビーコンサート。今回の演目はシューベルト「八重奏曲」より 第6楽章でした。出演者はなんと8名!ロビコンではかなり大きな編成だと思います。はじめ低弦のザワザワした音が浮かび上がってきて、その得体の知れなさに私は思わず身震い。他のパートが強奏でババーンと登場したのが大迫力!低音が効いた不穏な感じから、次第に明るく変化していったと感じました。続いた弦楽四重奏の明るくスキップするような音楽が楽しい!管も加わり、弦と管が一緒になって喜びを歌ったのが幸せな感じ。沈黙の後、ヴィオラのザワザワした音から入ったところからは、1stヴァイオリンとクラリネットが会話するように歌ったのが印象深かったです。1stヴァイオリンが細やかに音を繰り出すところに、私はヴィヴァルディの「春」を連想しました。8名全員で足並みを揃えて少しずつ盛り上がっていき、ついに喜びの頂点に達したのが素敵!弦と管が溶け合い、柔らかく美しく歌う良さを堪能しました。低弦のザワザワした音から不穏な空気再び。他のパートが作るクレッシェンドどデクレッシェンドの波に乗って、かすれる音色で浮かび上がったり沈んだりする1stヴァイオリンの存在感!最後はウキウキした音楽になり、明るく堂々とした締めくくり。開演前のひとときに、小さな交響曲のような充実した演奏を楽しむことができました。出演者の皆様、本番の演目の準備だって大変な中、ロビーコンサートにおいても素晴らしいアンサンブルを聴かせてくださりありがとうございます!
開演前に、札響事務局長の多賀登さんよりごあいさつ。シャルル・デュトワさんが体調不良により出演取りやめになったことのお詫びがありました。マエストロは現在帰国されて病状が快方に向かっているそうで、私達もひとまず安堵している、とのこと。今回は指揮者を尾高忠明さんに交代し、予定通りの演目で行います、と仰いました。最後に来場したお客さん達へ「本日はお越しくださりありがとうございます」とお礼を述べられ、ごあいさつ終了となりました。
ソリストの金川真弓さん(衣装は黒ベースでグリーンの模様が入ったノースリーブドレス)をお迎えして、前半は、チャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」。オケの編成は、弦が14-12-10-8-7、なんと独奏が弦の協奏曲で14型の大所帯!各木管は基本の2管で、金管はトランペット2、ホルン4。そしてティンパニ。第1楽章 1stヴァイオリンからそっと入ったオケ序奏の透明感が素敵!次第に盛り上がっていく流れでの、ティンパニの鼓動にドキドキ。独奏ヴァイオリン、キター!この風格たるや!オケが沈黙する中で、Kitaraにキレイに響く金川さんのシャープな美音に、私は早速心掴まれ、大船に乗った気持ちになりました。オケのピッチカートの優しさ温かさ!それに乗って、ゆったり歌う独奏ヴァイオリンが柔らかく美しい!独奏は1つの連なりの中で表情が次々と変化。高速演奏の滑らかさも、少し落ち着いたダンスのようなところでの細やかな音の連なりとリズム感も、天の声のような高音もぐっと来る低音も、とても自然体。流麗な音楽に身を任せるのが心地良かったです。独奏が高音で幸せに歌うところでの、クラリネット&フルートによる音階駆け上りは天にも昇るような美しさ!独奏が繊細に音を連ねながら少しずつ盛り上がっていく流れにゾクゾク。一気に上昇して壮大なオケに繋がる流れは鳥肌モノ!札響の堂々たる演奏がkitaraに響き渡り、その壮大さ輝かしさは涙が出るほど素敵でした。華やかな金管が祝福してくれているよう!独奏の繰り返す重音がキレッキレ!カデンツァでは、ぐっと来る低音の深みに、ハープのような美しいピッチカートに、音階を上下するしなやかさに、超高音の切れ味に、呼吸と間合いの良さに、また超絶技巧の面だけでなく歌心にも、聴いている方は呼吸を忘れる勢いでのめり込みました。カデンツァの終盤から独奏に重なった、オケの木管群と弦ピッチカートの温かさ!そして、オケと独奏が一緒に駆け抜けるクライマックスがすごかったです。壮大でパワフルな全員合奏と独奏がシンクロしながら、何度かあったオケの休符のタイミングで独奏がぱっと躍り出るのが鮮やか!なんて幸せな一体感!明るく堂々たる楽章締めくくりに、私は心の中で拍手喝采でした。第2楽章 はじめの木管群のもの悲しい響きがジーンとくる良さ。ほどなく登場した独奏ヴァイオリンの寂しい響きが胸に来ました。トリルが切ない!寂しい心に寄り添うようなホルンとクラリネット、独奏のメロディをリフレインしたフルートが印象深かったです。時に明るさを垣間見せる等、繊細に色合いを変化させながら歌う独奏はなんて豊かな響き!また独奏と気持ちを1つにして重なるオケの弦が素敵でした。独奏の心情に合わせて、沈鬱なときはそっと合いの手を入れたり、感情が高ぶるときは穏やかなクレッシェンドで盛り上がりを演出したり。14型の大所帯にもかかわらず、独奏をかき消さずにもり立てる演奏、さすがです!木管群のみになるところでは、開口一番のオーボエの崇高な美しさにハッとさせられました。瞬時に空気を変えたオーボエ、素敵すぎます!独奏が沈黙し、オケが眠りにつくように静まってから、そのまま続けて第3楽章へ。 はじめド派手な全員合奏がガツンと来て(超びっくりしました!)、続いた独奏がインパクト大!エネルギーを内に秘めているような、ぐっと深みある低音が良くて、ピッチカートが輝かしい!舞曲(トレパーク?)のリズムと前の方に来るアクセントが楽しく、駆け抜ける独奏と小気味よく合いの手を入れるオケに、聴き手のテンションもぐんぐんアップしました。独奏が一気に上昇して、受け止めたオケのチェロのダーダーダーダー♪が超カッコイイ!大好き!そこに乗った独奏の艶っぽい歌の貫禄たるや!併走したファゴットの温かさ!独奏とオケが一緒にどんどん加速して、行き着いた先でシーンを切り替えたオーボエがエキゾチックで魅惑的!クラリネットやファゴットと呼応してダンスしているようでした。この呼応が独奏とオケの低弦になったのが素敵!独奏の色香にクラクラしました。パワフルなオケと呼応しての超高速独奏が鮮やか!独奏のメロディを引き継いだホルンは視界が開けるようで、幸せなフルートと重なる独奏の研ぎ澄まされた超高音の美!一瞬たりとも目と耳が離せない展開に引き込まれ、その波に乗るのが快感でした。ラストはオケも独奏も最高潮の華やかさで駆け抜け、明るく力強い締めくくり。ものすごい名演に出会えて感激です!どんなシーンでも安定感あり、繊細かつ突き抜けた演奏で聴き手を魅了してやまない金川真弓さんによる唯一無二のソロ。そして交響曲のような厚みあるオケが、ソロと気持ちも鼓動も共有して室内楽のようにソロと密に絡み合う、最高の協演でした!指揮の尾高さんと篤い信頼関係があるソリスト・金川真弓さんと、尾高さんが長きにわたり導いて下さっている札響。その両者が尾高さんを要に思いを一つにした瞬間に居合わせて幸せです!
ソリストアンコール。金川さんから口頭で曲目紹介がありました。土曜夕公演は、パガニーニ「24の奇想曲」 より 第1番。美音の粒が次々と湧き出てくる、鮮やかな超絶技巧に驚愕!音階の上下を高速で繰り返しながら波を作って奏でられる音楽は、のっぺりしたところは皆無で、1つ1つの粒立ちした美音がすごいインパクトでした。会場はどよめき拍手の嵐!なお、翌日の日曜昼公演では、同じパガニーニ「24の奇想曲」 より 第24番(ラフマニノフやブラームス等、多くの作曲家が変奏曲の主題に採用している有名な曲)が演奏されたそうです。そちらも聴きたかったです!金川真弓さん、超大作のチャイコフスキーでの大熱演に続き、パガニーニでの鮮やかで「悪魔的」な演奏まで、ありがとうございます!今後もぜひ札響との共演を!いつでもお待ちしています!
後半は、ドヴォルジャークの交響曲第9番「新世界より」。オケの編成は、弦が前半と同じ14型。各木管は基本の2管(持ち替えあり)で、金管はトランペット2、ホルン4、トロンボーン2、バストロンボーン1、チューバ。そして打楽器はトライアングルとシンバル、ティンパニでした。第1楽章 冒頭のそっと入った中低弦の肌さわりの良さ、木管群の透明感。まるで夜明けみたいで素敵……と、うっとりした次の瞬間、指揮の尾高さんがドン!と足を踏み込んで、ド迫力な展開へ。なんという気迫!弦と管が呼応する谷間のティンパニ強打にしびれる!開始早々、これはどえらい演奏になりそう!と私はワクワクしました。ティンパニ連打からの、ヴァイオリンのトレモロの一糸乱れぬ弓の動きが超クール!全員合奏での金管群の勇ましさ!中でもバストロンボーンの地の底から来るような力強い重低音が印象深かったです。パワフルで勢いあるところの突き抜け方のみならず、例えば弦が緩やかに音量を下げていって木管のターンに繋げる等、細部にわたり音量や勢いをきっちりコントロールした明快な演奏と私は感じました。ええっ、繰り返し!?繰り返しがあるパターンは、私は初めて聴いたかもしれません。その繰り返しに入るポイントでの間合いが絶妙でした。また、今回はフレーズの前の方に来るアクセントがハッキリ感じられたのがうれしかったです。音楽の鼓動が自分の胸の鼓動と連動して、ものすごく乗れました。2ndフルートのソロ、キター!少し哀しくて温かい響き、とっても素敵でした!大迫力の楽章締めくくりでは、ホルンのターンのときは比較的ゆったりと進み、他の金管群のターンになると一気呵成に駆け抜けたのが超スリリング!気持ちイイ!第2楽章 チューバも加わった管楽器たちによる冒頭、広大な大地を思わせる響きがぐっと来ました。イングリッシュホルンによる「家路」、キター!温かくて優しくて、故郷が懐かしくなる素敵な歌でした。そっと寄り添うクラリネットとファゴットの包容力!引き継いだフルートの美しさ!コントラバスのピッチカートに重なる、もの悲しい木管群の歌が心に染み入りました。弦のざわめきは大地を吹きすさぶ風のよう。軽やかに駆けだしたオーボエが素敵!頼りにしています!壮大な全員合奏が清々しい!来ました、弦10名(各パートの首席・副首席)による穏やかなアンサンブルと続く弦楽三重奏。チェロ独奏による「家路」が泣ける……何度でも聴きたい!冒頭のメロディが帰ってきて、フェードアウトするラストでの澄んだ弦の音色に心洗われました。最後の最後にさりげなく重低音でシメてくれたコントラバス、愛してます。第3楽章 最初からオケがド迫力!チリチリーン♪と派手に鳴るトライアングルの発車ベルが存在感抜群!ザッザッザッ♪と機関車を走らせる弦も、ダダダン♪と強打で鼓舞するティンパニもキレッキレ!パワフルな金管群が超ド級のカッコ良さ!何度か登場した途中下車での町のダンス(?)、これがとても面白かったです。はじめの木管群のダンスでは、支える弦が1,2の1にアクセントが来る演奏でリズムを刻んでいました。続くチェロパート(別のシーンでは異なるメロディによるヴァイオリンや木管群)のダンスは1,2,3のリズムで滑らかな演奏をしていたと思います。この変則的なリズムは、もしかしてチェコのダンス「フリアント」?詳しくないので断言はできないのですが、この時の私はそう感じ、とても興味深く聴きました。ダンスでは、合いの手を入れるトライアングルの可愛らしさ、ヴァイオリンや木管群のトリルの幸せな感じも印象に残っています。勇ましい盛り上がりから、駅に到着して停車した(?)、ザザザザザ……の弦のトレモロがカッコ良すぎ!ジャン!と全員の強奏でビシッとシメて、そのまま続けて第4楽章へ。 重厚に始まり加速して盛り上がっていく弦楽合奏にゾクゾク!華やかトランペット、壮大なホルン、オールスターキャストの見せ場てんこ盛りがうれしい!ヴァイオリンのメロディに併走する低弦が好きすぎます。きっとブラームスでもこう書くんじゃないかと思う低弦がビリビリ来る!駆け抜けるヴァイオリン、パンチの効いた管楽器群のダッダッダッ♪にテンションMAXまであがる!木管群が疾走するところで、ジャン!ジャン!と強奏で合いの手を入れるヴァイオリンが激アツ!指揮の尾高さんとコンミス会田さんが目線でバチバチ火花飛ばしてる!盛り上がりから緩やかに静まったところで、控え目にシャーン♪と鳴るシンバルをしかと見届けました。クラリネットの歌に、広がりを作るチェロの良さ。ヴィオラによる中継ぎのリズムが楽しい!車窓の風景が次々と移り変わるように、壮大で力強い盛り上がりも、木管群と弦による繊細な流れも、まったく途切れず一つの連なりとして来るのが気持ちよく、その波に乗るのが快感でした。この日一番の盛り上がり(どのパートも音が盛り盛りの大熱演がすごい!)を経て、ラストに向かう流れがすごく良かったです。ティンパニの静かな鼓動と寂しげなホルンソロがぐっと空気を引き締めて、高音弦が音階駆け上り、じっくりたっぷりの全員合奏は新大陸だって顔負けのスケールの大きさ!ジャン!ジャン!を繰り返す力強く華々しい演奏は、一点の曇りもない晴々しさで、音をのばして消え入る余韻までもが素晴らしい、まさに大団円!音が完全に消えてから、ほぼ満席の会場から割れんばかりの拍手が起きました。うわあなんてこと!コンサート通い歴はたかだか6年ほどの私でも、「新世界より」は今まで数え切れないほど聴いてきました。尾高さん指揮に限ってもこれで3回目だわ……なんて、少々後ろ向きな気持ちだった開演前の私に往復ビンタしてやりたい!「普通にうまく弾けて当然」(!ごめんなさいごめんなさい!)とお気楽に構えていた開演前の私を恥じ入るほどの、想像をはるかに超える明快かつパッションあふれる快演!もう平伏するしかありません。尾高さんと札響、すごすぎます……ああ追いかけても追いかけても、まだまだ私達が知らない世界を見せてくださるんですね。今回は「身体が覚えている」曲だからこその難しさもあったことと存じます。にもかかわらず、こんなにもクールに熱くキメてくださるなんて、カッコ良すぎてクラクラする!
カーテンコールで何度も舞台に戻って来て下さった指揮の尾高さん。第2楽章でイングリッシュホルンソロの大役を見事に果たした、オーボエ副首席奏者の浅原由香さんをはじめ、管楽器の皆様に順に起立を促し、讃えられました。何度目かのカーテンコールにて、ついに尾高さんが退場する際に両手を小さく振るバイバイの仕草をして、会場が和み、会はお開きとなりました。「当たり前」を超越する「新たな世界」を切り拓いた超快演を本当にありがとうございます!尾高さん指揮による9月の札響定期、今から楽しみです!
今月(2024年6月)の初めには、札響による演奏で王道の名曲3つを楽しめました。「札幌交響楽団 森の響フレンド名曲コンサート~わたしの3大B:広上淳一篇」(2024/06/08)。マエストロ広上こだわりの選曲に、協奏曲のソリストは小山実稚恵さん!バッハの普遍性、ベートーヴェンの天才性。そしてブラームスのピアノ協奏曲第1番は、若きパッションあふれかつ緻密な演奏そのものに、作曲家自身の熱い思いに、胸打たれ感激に震えました!
ドヴォルジャークの代表的な室内楽作品である、ピアノ五重奏曲第2番を聴けた演奏会です。「ふきのとうホール レジデント・アーティスト 小菅 優コンサートシリーズ Vol.5 エルサレム弦楽四重奏団&小菅 優 室内楽の夕べ」(2024/06/16)。内なる思いを丁寧に体現した真摯な演奏を通じて、若き日のブラームスに出会えたピアノソロ。生きたアンサンブルのおかげでお初でも思いっきり楽しめたベン=ハイム。ドヴォルザークP五重奏はこれぞまさに室内楽!ふきのとうホールでの小菅優さんとの再会は、今回も素敵なサプライズの連続でした!
今回(2024年6月)と前回(2024年5月)の札響定期のロビコンにて1stヴァイオリンを担当された飯村真理さんは、こちらのカルテットでも1stヴァイオリンを担当されています。「 R弦楽四重奏団 Vol.2 」(2024/06/17)。上質の演奏を、気取らない空間で感じるままに味わえる幸せ!モーツァルト、ショスタコーヴィチ、ブラームス。3つの弦楽四重奏曲「第3番」、それぞれの個性を自然体で楽しむことができました。
最後までおつきあい頂きありがとうございました。