自由にしかし楽しく!クラシック音楽

クラシック音楽の演奏会や関連本などの感想を書くブログです。「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ(http://nyaon-c.hatenablog.com/)」の姉妹ブログです。

コメント・ご連絡はすべてツイッターにお願いします。ツイッターID:@faf40085924 ※アカウント変更しました。
※無断転載を禁じます。

あかまかるてっと 札幌公演(2023/07) レポート

「あかまかるてっと」は、メンバー全員が東京芸術大学2年在学時(2014年)に結成された弦楽四重奏団。「ドイツ・フランス・北海道・東京 それぞれの地で活躍する4人がこの夏5年ぶりに再集結」し、東京と札幌で演奏会が行われました。なお札幌公演は東京とは少し内容が異なるそうです。札幌公演は平日日中の開催にもかかわらず、40席ほどの会場はほぼ満席でした。


あかまかるてっと 札幌公演
2023年07月24日(月)14:00~ 奥井理ギャラリー

【演奏】
赤間 さゆら(ヴァイオリン) ※札幌交響楽団ヴァイオリン奏者
村山 由佳(ヴァイオリン) ※ニーダーザクセン州ハノーファー歌劇場管弦楽団奏者
松岡 百合音(ヴィオラ) ※パリ国立高等音楽院第二課程在学中
三谷 野絵(チェロ) ※フリー

【曲目】~ランチタイムコンサート~
ハイドン弦楽四重奏曲第63番 変ロ長調「日の出」 作品76-4, Hob.III:78 より 第1楽章
ファニー・メンデルスゾーン弦楽四重奏曲 変ホ長調 より 第1楽章、第4楽章
ウェーベルン弦楽四重奏の為の緩徐楽章

フェリックス・メンデルスゾーン弦楽四重奏曲第1番 変ホ長調

(アンコール)ハイドン弦楽四重奏曲第63番 変ロ長調「日の出」 作品76-4, Hob.III:78 より 第3楽章


休憩込み1時間半、私はまるで異空間に旅したように、弦楽四重奏が生み出す音楽の世界に夢中になれました。肩肘張らない「ランチタイムコンサート」とはいえ、世界で活躍するメンバーによる演奏はさすがのクオリティの高さ。4名の演奏家はそれぞれが個性ある良い音をお持ちなのに加え、息の合ったアンサンブルが素晴らしい!王道のハイドン、めずらしいファニーが素敵だったのはもちろんのこと、個人的には全4楽章をフルで演奏したメンデルスゾーンの充実ぶり、ウェーベルンの美しさと深みが特に印象深かったです。また今回は独墺プログラムだったこともあるかもしれませんが、室内楽交響曲のような音の厚みや世界の広がりを感じるシーンがあったのが新鮮な驚きでした。優美なのに重厚!こんな充実の内容をチケット代1000円で聴けたのはありがたいやら申し訳ないやら。今まで弦楽四重奏をほとんど聴いてこなかった私ですが、今回の「あかまかるてっと」との出会いのおかげで、弦楽四重奏をもっと聴きたい!と思うようになりました。ありがとうございます!

今回初めてうかがった奥井理ギャラリー、とても素敵なところでした。若くして亡くなった奥井理さんの絵画がいくつも飾られた小さなギャラリーは、大きなガラス窓があって、風景と溶け合いどこまでも広がっていくように感じられました。空間全体がまるで絵画のよう!この美しい空間で生演奏に触れられる喜びは格別でした。また小さな会場ならではの奏者との距離の近さも良く、音をダイレクトに感じられたのに加え、演奏の息づかいや細かな動作(弦を押さえる指の動きや、4名が同時に駒をすっと動かす等)も目の当たりにできる、とても贅沢な時間を過ごすことができました。これからも必ずうかがいます!


出演者の皆様が拍手で迎えられ、すぐに演奏開始です。1曲目は、ハイドン弦楽四重奏曲第63番 変ロ長調『日の出』」作品76-4, Hob.III:78 より抜粋で第1楽章。プログラムノートは松岡さん。こちらの「日の出」は「第78番」とも言われるようですが、今回のプログラムでは偽作や編曲作品を除いてカウントした「第63番」とされていました。また「エルデーディ四重奏曲第4番」とも呼ばれるようです。温かな和音に乗って、穏やかに美しく上昇する1stヴァイオリンが素敵!まさに「日の出」の呼び名の由来となった優美な1stヴァイオリンに引き込まれました。活発に駆け出してからは、楽しく生き生きとした音楽になり、聴いている私達の気持ちも高揚。1stヴァイオリンはさらに華やかになり、鳥が高らかに歌っているよう!またチェロがぐっと低い音でベースを作っていたのと、主役になったときはメロディを高音域で美しく歌っていたのも素敵でした。明るく生命力ある音楽は、夏本番を迎えた今の時期にぴったり!生き生きとした演奏に最初から引き込まれました。

ここで赤間さんからごあいさつとトーク。世界各地で活躍するメンバーが久しぶりに集結し、それでも久しぶりとは思えなかった(ほど瞬時に学生時代の気持ちに戻って意気投合された?)そうですよ。また、赤間さんのお名前がカルテットの名前に採用されているのは「成り行き」で、「メンバーのパワーバランスではありません」と、きっぱり仰っていました。

ファニー・メンデルスゾーン弦楽四重奏曲 変ホ長調」より抜粋。プログラムノートは赤間さん。第1楽章 出だしから柔らかく美しい響き!ヴィオラ→2ndヴァイオリン→1stヴァイオリンの順で滑らかにメロディを繋いでいったり、1stヴァイオリンのメロディを各パートが順番にこだましたりと、お互いのやりとりがとても自然だったのが印象的でした。第4楽章 超高速な冒頭からインパクト大!どのパートも息つく間もないほど活発で、とても華やかな音楽に気分があがりました。ヴィオラがメロディを長く歌うところがあったのが印象に残っています。終盤、歓喜MAXな感じで歌う1stヴァイオリンには圧倒されました。ジャーン!と潔い締めくくりも新鮮!私にとって初聴きだったファニーの作品は、美しく華やかで、密なアンサンブルが素敵な曲でした。いつか全楽章を通しての演奏をぜひ聴かせてください!

ウェーベルン弦楽四重奏の為の緩徐楽章」。プログラムノートは村山さん。甘く美しいメロディとぐっと重厚な低音のベースに最初から心掴まれました!さらに、1stヴァイオリンとチェロがピッチカート等で支えに回ってからの、ヴィオラと2ndヴァイオリンが順に切なく歌うのがなんて素敵なこと!クレッシェンドで盛り上がっていく流れ、順に力強くトレモロと、「緩徐楽章」とは思えないほど情熱的なところに胸焦がされました。最初と似たメロディが登場してからは、最初の甘さに芯の強さも加わったと感じられ、この変化がとても印象深かったです。ひたすら美しく儚くフェードアウトしていくラストの優しさ!なんて素敵な曲なんでしょう!美しいだけではなく、人の心の痛みも知っているかのような深み!現代音楽のイメージが強いウェーベルンの別の顔を知り、私は良い意味で驚かされ、初聴きのこの作品をとても好きになりました。もちろん素晴らしい演奏のおかげです。


休憩後の後半は、フェリックス・メンデルスゾーン弦楽四重奏曲第1番」。プログラムノートは三谷さん。第1楽章 出だしから柔らかく美しくふくよかな響きに引き込まれました。寄せては返す波のように強弱が変化し、1stヴァイオリンの流れを引き継いで各パートがリフレインするのがとっても素敵!1stヴァイオリンに他のパートがごく自然に合いの手を入れ、音楽の波長が心地よかったです。また1stヴァイオリンが小休止のときに2ndヴァイオリンがメロディを歌ったところは、少し低めの音程でゆったりと。1stの華やかさと好対照でした。第2楽章 はじめスタッカートとピッチカートのリズムにドキドキ。4人が足並みを揃え歩みを進める緻密さと、神秘的な音楽そのものに惹かれました。中盤では明るく駆け足に。2つのヴァイオリンのターンとヴィオラ・チェロのターンが交互に来たのが楽しく、またこの高速演奏でも足並みが乱れず全員が同じスピードで駆け抜けたのがすごい!第3楽章 は前の楽章から一転して、滑らかに音が連なるゆったりとした音楽が美しい。メインの1stヴァイオリンが超高音で歌うのが華やか!他のパートがうねうねした音でベースを作っていたのが印象的でした。第4楽章 大迫力の出だしから圧倒され、パワフルに次々と音を繰り出し駆け抜ける充実の演奏に気持ちを持っていかれました!交響曲みたい!情熱的に燃え上がってジャーン!で終わった?と思わせてから続きがあったのに軽く驚き(たぶん私だけだと思いますごめんなさい!)、ここから更なる盛り上がりに。息つく間もなほどスリリングに駆けていく展開にゾクゾクし、2ndヴァイオリンとヴィオラが一つの連なりのように交互に演奏するのがすごい!1stヴァイオリンのソロ演奏はぐいぐい来る感じで超カッコイイ!終盤、1stヴァイオリン小休止で2ndヴァイオリンがゆったりと歌ったところは、少し影が感じられ素敵でした。穏やかになっていき、ピアニッシモで柔らかく音をのばして締めくくり。わずか4名の演奏でこんなにも充実した演奏!お互いが信頼し合い、思いっきり行くことで大きな流れになる演奏はとても面白く、ずっと夢中になれました!

カーテンコールを経て、赤間さんからごあいさつ。そして「お客さんの反応次第でアンコールの演奏を考えようと思います」と、ちょっとイケズな発言に対して、会場から温かな拍手が起きました。アンコール(お応えくださりありがとうございます!)は、ハイドン弦楽四重奏曲第63番 変ロ長調『日の出』 作品76-4, Hob.III:78」より 第3楽章メヌエットのリズムで、ステップのように跳ねる音が楽しく、高音と低音が手を取り合い幸せに踊っているよう!中盤の、幸せにほんの少し影が差す低音が効いたところも素敵!素朴でかわいらしい音楽に心癒やされました。弦楽四重奏の素敵な演奏をたっぷり楽しめた、幸せな午後のひととき。とても楽しかったです!「あかまかるてっと」の皆様、遠路はるばるお越し下さって、素敵な演奏を聴かせてくださりありがとうございました!


この日の前日に聴いた、札幌交響楽団の演奏会です。「PMFホストシティ・オーケストラ演奏会」(2023/07/23)。アカデミー生との合同演奏に、存在感抜群な独奏と愛あるオケとの幸せな協演の協奏曲。そしてメインのチャイ5の素晴らしさ!正指揮者カワケンさんによる大熱演に心揺さぶられました。

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

独墺の作曲家達の弦楽四重奏曲が多数登場する「ハッピーバースデー変奏曲」が取り上げられた演奏会。なお赤間さゆらさんもご出演されています。「第26回北洋銀行presentsクラシックコンサート 札響メンバーによる弦楽アンサンブル」(2023/07/09)。美唄へプチ遠征。定番曲だけでなく、様々なジャンルや作曲家風に変奏する攻めた演目も。札幌でもなかなか出会えない、超充実のすごい弦楽アンサンブルでした!「桐原組」の再結成&再演を札幌でもぜひ♪

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

赤間さゆらさんがソリストとして札響と協演した「新進演奏家育成プロジェクト~オーケストラ・シリーズ 第68回札幌」(2023/01/29)。5名の若手演奏家の演奏はいずれも札響と対等に渡り合うハイレベルなもので、純粋に夢中になれました。さりげなくソリストを盛り立てたオケも素敵でした。

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

最後までおつきあい頂きありがとうございました。