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PMF REUNION CONCERT VOL.5(2023/08) レポート

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ふきのとうホールにて、「パシフィック・ミュージック・フェスティバル(PMF)」修了生を中心としたグループによる演奏会が開催されました。弦楽六重奏(ヴァイオリン2・ヴィオラ2・チェロ2)を2曲と、オーボエ四重奏曲(オーボエ・ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ)を1曲という盛りだくさんなプログラム。当日の会場は満席近い盛況ぶりでした。

PMF REUNION CONCERT VOL.5
2023年08月21日(月)19:00~ ふきのとうホール

【演奏】
川村 拓也(ヴァイオリン 前半2nd/後半1st)
島方 瞭(ヴァイオリン 前半1st/後半2nd)
今井 佑佳(ヴィオラ1)
太田 ゆみえ(ヴィオラ2)
佐々木 賢二(チェロ2)
水野 優也(チェロ1)
浅原 由香(オーボエ

【曲目】
チャイコフスキー弦楽六重奏ニ短調 Op.70「フィレンツェの思い出」
モーツァルトオーボエ四重奏曲 ヘ長調 K.370

ブラームス弦楽六重奏曲第1番 変ロ長調 Op.18


作曲家が伸び伸びと書いた曲たちが、こんなにも生きた音楽として目の前に現れた事に大感激です!それぞれ個性ある良い音と表現力をお持ちの7名の若手演奏家が、誰一人遠慮することなく全力を発揮している(と私には思えました)のに呼吸が合っていて、リズムやテンポや強弱が驚くほどシンクロ。かつ細部の作り込みもしっかり!全員が心を一つにして高みを目指す気概が伝わってきて、そこで生み出された音楽は意思を持った一つの生命体のように感じられました。「合わせる」を超えた、期待以上のすごいアンサンブル!今回のメンバーは、PMF修了生だったり反田恭平さん率いるJapan National Orchestraのメンバーだったり(両方のかたも)と勢いがあり、またコンクール受賞や歴任したポストも輝かしい経歴をお持ちのかたばかり。ただ聴き手にとっては「目の前の演奏が心に響くかどうか」がすべてです。その上で、私の色眼鏡が瞬時に消えて純粋に夢中にさせてくれた、ものすごい演奏だったとはっきり言えます。「はじめまして」の皆様はもちろんのこと、札響でおなじみのオーボエ浅原さんと、以前ピアノとのデュオを拝聴したことがあるチェロ水野さん(2017/10と2018/02、私がまだクラシック音楽を聴き始めて間もない頃です)も、過去の記憶を塗り替えてくれる素晴らしい演奏を聴かせてくださり、とてもうれしかったです。普段別々に活動している皆様が、限られた時間でここに至ったのは大変な道のりだったと拝察します。しかしそんな事はものともせず、最高のパフォーマンスをしてくださったことに大拍手です!今回の7名が集まるのが一度きりなのはもったいない。同じメンバーによる演奏会を今後もぜひ!さらにパワーアップした皆様に再会できる日を心待ちにしています。


出演者の皆様が舞台へ。男性は黒シャツ、女性は黒のシンプルなドレス姿でした。舞台向かって左からVn.1→Vn.2→Va.1→Va.2→Vc.2→Vc.1の順で扇型に並んで着席(ヴァイオリンとチェロのそれぞれ第1奏者がちょうど対面する配置、後半も同じ)。すぐに演奏開始です。1曲目はチャイコフスキー弦楽六重奏曲「フィレンツェの思い出」。第1楽章 冒頭、Vn.1の気迫あふれる演奏がすごい!美しく悲劇的で胸に来る響きに、私は瞬時に気持ちを持っていかれました。他の弦によるベースは、ドキドキするリズムと厚みある音にゾクゾク。少し穏やかになったところで躍り出た、高音で優しく歌うVc.1がなんて素敵なこと!Vn.1とVc.1の対話は甘く優しく、まさに愛!それをVc.2がピッチカートや重低音で支え、時にVc.1と協力しながらVn.1とやりとり。これはチェロが2つあるからこその良さ!と私はホレボレしました。メロディを各弦でリレーしていく流れの鮮やかさ、盛り上がりのうねり、そしてリズム感!全員が全力で来る演奏はとても生き生きしていて、その勢いにのまれるのがたまらなく快感でした。リズミカルなピッチカートに乗ってのVa.1とVn.1の対話は大人の落ち着きが感じられる楽しさ!ものすごい勢いで駆け抜けた楽章締めくくりが素晴らしい!第2楽章 冒頭で6名が一緒にゆったり歌ったところの厚みある響きがとっても素敵で、弦が6つもあるからこその贅沢な響きを堪能できました。他の弦によるピッチカートに乗ってのVn.1とVc.1の対話は、前の楽章よりさらに甘く優しく、幸せな恋人同士の語らいのよう。メロディを歌ったVa.1が明るさに少し影をさし、再び6名が一緒にゆったり歌ったところは、厳かにも天国的にも感じられました。ピッチカートを挟みながら、全員で弦を小刻みに動かし(三連符?)細かく強弱の波を作ったところがとても面白く、職人技の凄みにゾクゾクしました。Vc.1がたっぷり歌いVn.1と対話したところは幸せいっぱいな感じ!Va.1が高音で優しくメロディを歌い、全員でフェードアウトしたラストがとても美しかったです。第3楽章 民謡風のリズムに乗って、Va.1が哀しげに歌うのが素敵で引き込まれました。Vn.1がメロディを引き継ぎ、次第に加速していき、全員で情熱的に盛り上げた流れが良かったです。2つのチェロがメロディを歌うところでの、他の弦が力いっぱい弦をかき鳴らすのが超カッコイイ!それぞれが全力の演奏をしている中で、時折リズミカルにピッチカートが入るのが印象的で、楽章締めくくりでの全員による力強いピッチカートがインパクト大!会心の一撃にガツンとやられました!第4楽章 強弱やテンポの波を作りながら一瞬たりとも気を抜くことがないアンサンブルの素晴らしさ!勢いある生き生きとした舞曲にぐいぐい引っ張られていくのは快感でした。6つの楽器が丁々発止する流れの中で、チェロやヴァイオリンが美しくメロディを歌うところに癒されたり、一瞬登場した2つのヴァイオリンによる二重奏にハッとさせられたり。全員で長く音をのばした後、超高速&最高潮の盛り上がりで駆け抜けたクライマックスは圧巻でした。なんという充実の弦楽六重奏!お一人お一人の勢いと情熱ある演奏の良さに、6名が同じ呼吸・同じ鼓動を共有して一つの音楽を生み出す素晴らしさ。ものすごい演奏を同じ空間で体感できうれしかったです!

2曲目は、モーツァルトオーボエ四重奏曲 K.370。弦は、Vn.川村さん、Va.太田さん、Vc.佐々木さんでした。舞台向かって左からVn.→Va.→Vc.→Ob.の順に着席。第1楽章 朗らかに歌うオーボエとリズミカルに呼応してベースを作る弦。軽快で明るい音楽が楽しく、軽やかに音階駆け上った後に優しく音をのばすところの柔らかな響きが愛らしい。メロディを引き継いだヴァイオリンも喜びに満ちている感じで素敵でした。駆け足が時折少しゆっくりになったり、また明るく歌っていたのがふと囁くようになったりと変化が多く伸び伸びとした音楽は、すべてのシーンが滑らかに繋がっていて、その波に身を任せるのが心地よかったです。短調になった第2楽章 では、はじめの哀愁ある弦楽三重奏からぐっと引き込まれました。続いたオーボエがじっくりと長く音をのばし、切なくメロディを歌うのがとっても素敵!弦が沈黙してのオーボエ独奏ではさらに長く音をのばし、さえずるような演奏(トリル?)も力強くはっきりと!すっごい!再び明るくなる第3楽章 は、幸せいっぱいな音楽に心癒やされました。スキップするように跳ねたり滑らかにターンするようだったりと、オーボエと弦が一緒に楽しくダンスしているよう。音を2回のばすところのリズム感と柔らかな響きがなんとも可憐でした。オーボエが息つく間もなく音を細かく繰り出す高速演奏がすごい!楽しく朗らかな音楽が、そっと穏やかに潔く締めくくったのも印象に残っています。大作2つの間でほっとできた、明るく心地よいモーツァルト。浅原さんの魅力的なオーボエをたっぷり聴けて、3つの弦のそれぞれの個性ある音色を楽しめました。


後半はブラームス弦楽六重奏曲第1番。第1楽章 Va.1と2つのチェロによる冒頭の優しさ美しさ!温かで少し哀愁ある響きがすっと心に入ってきました。Vn.1がメロディを引き継ぎ全員合奏になってからも、柔らかな響きがとても良く、前半のチャイコフスキーでのガツンとくる出だしとは対照的。どちらも素敵です!優雅な流れの中で、ごく自然にVn.1からVn.2にメロディが移っていたり、他の弦が控えめなピッチカートさりげなく支えていたり、細かな変化をグラデーションで見事に体現。美しく切なく歌うVc.1に胸焦がされ、感極まったようなVn.1に胸打たれ!タタタター タタタター ♪と少しずつ歩みを進めるようなリズムでの合間の休符の切なさ、激しい展開から次のターンへ行く間を繋いだ2つのヴィオラの鼓動など、あらゆるところにブラームスらしさが息づき、それが良い形で表現されていたのがとてもうれしかったです。可憐なピッチカートでメロディを歌った楽章締めくくりは、若き日のブラームスらしさ全開!そして映画のBGMにもなった有名な第2楽章 へ。2拍子のリズムで、Va.2と2つのチェロによるベースに乗って、切なく歌うVa.1の良さ!少しこぶしをきかせたような歌い方が印象的でした。メロディをVn.1、続いてVc.1が引き継ぎ、それぞれの個性も素敵!次々と変奏していく流れは次第に感情が高ぶっていくようでもあり、ヴィオラと呼応し悲痛な叫びをあげるヴァイオリンと低音で力強くうねるチェロが鮮烈な印象!その情熱と秘めたエネルギーに圧倒されました。この力強いチェロが沈黙し、Va.1がメロディを歌ったヴァイオリンとヴィオラによる四重奏は魂が浄化されるような美しさ!メロディを呼応しながら静かにフェードアウトしていく楽章締めくくりでの、研ぎ澄まされた空気も素晴らしかったです。第3楽章 舞曲のような生き生きとしたリズミカルな音楽が楽しく、細かく弓を動かしてタッタッタタッタ♪のリズムを作ったり、各弦でメロディをこだまするようにリレーしたりと、緻密な仕事ぶりが目を引きました。クライマックスでは加速し、超高速で駆け抜ける超充実の演奏が爽快!第4楽章 はじめのVc.1のロマンティックな歌がすごく素敵で、またもや心掴まれました。右半分(Vc.1、Vc.2、Va.2)の三重奏が、Vn.1がメロディを引き継ぐと左半分(Vn.1、Vn.2、Va.1)の三重奏になり、視覚面でもこの対比が面白かったです。穏やかで幸せな音楽が、ぱっと盛り上がったとき、2つのヴァイオリンの明るさが個人的には「顔で笑って心で泣く」ように感じられました。そこから他パートがメロディを繰り返したり対話したりする流れで、ヴァイオリンは次第に心穏やかになっていった(私個人の感じ方なので間違っていましたら申し訳ありません)のに感激!これこそブラームス流の愛!互いを思い合うような優しく穏やかな音楽に、じんわり心が温まりました。ラストはぱっと盛り上がけて明るく元気よく締めくくり。若き情熱あふれ、ロマンティックで愛あるブラームスの大熱演に大感激です!本当にありがとうございます!

カーテンコールでは、オーボエの浅原さんも舞台に戻ってきてくださいました。アンコールは行わず(本プログラムの全力投球に大満足です!)、会はお開きに。終演後、奏者の皆様はホワイエに出てお客さん達との歓談に応じていらっしゃいました。熱量もクオリティも高い、素晴らしい演奏をありがとうございました!同じメンバーによる演奏会を今後もお待ちしています♪次はブラームス弦楽六重奏曲第2番を、せひとも聴かせてください。


ふきのとうホール レジデント・アーティスト 小菅 優コンサートシリーズ Vol.4 ベネディクト・クレックナー&小菅 優 デュオ・リサイタル」(2023/06/29)。バッハに強い影響を受けた第1番、円熟期にのびのび楽しく書いた第2番。愛してやまないブラームスのチェロ・ソナタ2曲に再び恋に落ちた、最高に素敵な出会いでした!

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ブラームス室内楽シリーズ イ調で結ぶ作品集」(2023/06/26)。会田莉凡さんのヴァイオリンを堪能できたソナタ、「音楽する」三重奏曲、ピアノ四重奏曲の「化学反応」の素晴らしさ!ブラームスの隠れた名曲たちの充実した演奏に浸れた、とても幸せな時間でした!

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。