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リッカ弦楽四重奏団 結成記念コンサート (2023/12) レポート

札響メンバーで結成された、リッカ弦楽四重奏団。その結成記念コンサートがふきのとうホールにて開催されました。チーム名は、雪の別名「六花(りっか)」に由来し、「ひとつとして同じものはない雪の結晶のように、きらめきのある音楽をしたい」という意味があるそうです(プログラムノートより)。錚々たるメンバーによるカルテットの旗揚げ公演ということで、札幌市民の期待は大きく、当日の会場は9割ほどの席が埋まる盛況ぶりでした。

リッカ弦楽四重奏団 結成記念コンサート
2023年12月13日(水)19:00~ ふきのとうホール

【演奏】
会田 莉凡(1stヴァイオリン) ※札幌交響楽団コンサートマスター
桐原 宗生(2ndヴァイオリン) ※札幌交響楽団首席ヴァイオリン奏者
鈴木 勇人(ヴィオラ) ※札幌交響楽団ヴィオラ奏者
石川 祐支(チェロ) ※札幌交響楽団首席チェロ奏者

【曲目】
ハイドン弦楽四重奏曲 第77番 「皇帝」 ハ長調 Hob.III:77
ショスタコーヴィチ弦楽四重奏曲 第1番 ハ長調 op.49
ブラームス弦楽四重奏曲 第2番 イ短調 op.51-2

(アンコール)チャイコフスキー弦楽四重奏曲 第1番 より 第2楽章 「アンダンテ・カンタービレ


ハートに火がついた音楽家たちの本気を目の当たりにした、最高にアツイ夜!札幌にスケール桁違いのカルテットが「爆誕」した瞬間に居合わせて幸せです!今回のメンバーそれぞれの演奏には、ピアノとのデュオ等でそれなりになじんできた私。このメンバーが組むなら良いに決まっている!と、聴く前から大船に乗った気持ちでいました。そしていざ実演に触れると、事前予想をはるかに超えてきた事に驚愕!なんというか「率なくこなす」方向ではなく、もっと行けるまだ行けると更なる高みを目指す、とんでもなく熱量高い演奏でした。実力・経験ともに十二分に兼ね備えた音楽家たちが、お互いの信頼関係をベースに本気で挑むと、ものすごいことになるのですね!そもそも、オケでもオケ以外でも超ご多忙な4名が、新たなカルテットを結成し、自主公演をする事自体だって相当大変だったはずです。ここまでやれるほど、メンバーの「ハートに火を付けた」のは一体!?私は、やはり会田莉凡さんの存在が大きいと思います。会田さんは、2022年4月に札響のコンサートマスターに就任して以来、オケを牽引してくださっています。今回のカルテットでも1stヴァイオリンが抜群の切れ味で先陣を切り、それに他のメンバーが食らいつくように熱い演奏で続くスタイルだったと私は感じました。それだけ人を惹きつけるものがあり、さらに自身の演奏でチームをぐいぐい引っ張っていく会田さん。めちゃくちゃカッコイイ!会田さん、改めまして札響に来てくださりありがとうございます!これからもずっと、札幌の希望の星でいてください。頼りにしています!

今回の重量級の3つの演目、それぞれの個性もめいいっぱい楽しめました。ハイドンは、華やかさ楽しさだけでなく、常に1stヴァイオリンがリードし、4人の役割分担で奥行きを作り、また特に第4楽章では重厚さもあって、私は小さなオーケストラを見ているような気持ちになりました。ショスタコーヴィチ1番は、一見ノーマルなのに隠しきれない狂気をはらんでいるよう。そしてブラームス2番の、柔和な顔をした激情に震撼!今回の本気の演奏が、作品のコアな部分を容赦なく露わにしてくださったおかげで、聴き手は表面的なイメージに惑わされず音楽の本質に触れることができました。弦楽四重奏は奥が深い!今回のリッカ弦楽四重奏団との出会いが決定打となり、ビギナーだった私が弦楽四重奏の沼にハマりつつあります。我が最愛のブラームスはあいにく3曲しか残していないものの、弦楽四重奏は名曲の宝庫ですから!これからどんなサプライズな演奏と出会えるのか、とても楽しみです。リッカ弦楽四重奏団との出会いが、私のハートにも火を付けてくださいました!


出演者の皆様が舞台へ。会田莉凡さんは上が黒で下が白のノースリーブドレス、男性奏者の皆様は黒シャツの装い。すぐに演奏開始です。はじめは、ハイドン弦楽四重奏曲 第77番 『皇帝』」。第1楽章 明るくウキウキした感じで、鳥がさえずるようだったりスキップするようだったりと、歌うヴァイオリンが華やか。軽快なリズムと美しい流れが同居する音楽が素敵でした。チェロから始まるところでは少し陰りを見せ、楽章締めくくりに向かう流れでは一層賑やかになる等、生き生きとした表情の変化も楽しい。第2楽章 ドイツ国歌に採用されている事で有名なこの楽章。はじめの4名でゆったり美しく奏でるメロディの良さ!うっとり聴き入りました。その後、2ndヴァイオリンがメロディを美しく歌い1stヴァイオリンが軽快に彩る二重奏だったり、チェロがメロディを優雅に歌い他の弦がハモる形になったり、ヴィオラが主役になったりと、組み合わせが変わる度に味わいが変化するのを楽しく聴きました。チェロが音を長くのばすベースの上で、他の3つの弦が清らかに歌うところが最高に素敵!第3楽章 快活な舞曲で、1stヴァイオリンが低めの音ではじめの1歩を踏み込んで、他の弦が合いの手を入れる間合いの良さ!タッタッタッタ♪と軽快に跳ねるところや、少しシリアスなところでも、まず1stヴァイオリンがパッと登場し他の弦がついて行くスタイルで、このチームならではの呼吸と掛け合いの良さを実感できました。第4楽章 はじめのユニゾンによる強奏からアツイ!ささくようなところと交互に来る力強さはインパクト大でした。高速演奏での丁々発止のやり取りがすごい!また、2ndヴァイオリンが音を刻んだり、チェロがぐーっと低い音をのばしてベースを作ったりと、がっちりした土台もあって、この奥行きや重厚さがたったの4名で生み出されているのにも驚き!フィナーレでの自信に満ちた明るさは気分爽快!何度も力強く弓を振り下ろす様子は見た目にも圧巻でした。カルテットの本気の演奏に、最初から気分があがりました!

2曲目は、ショスタコーヴィチ弦楽四重奏曲 第1番」。第1楽章 はじめの方は穏やかな美しい歌で、ショスタコーヴィチはこんな風にも書けるんだなと、のんびり構えて聴いていた私。しかし2ndヴァイオリンとヴィオラがやや不穏な音を繰り出すあたりから雲行きが怪しくなってきました。ヴィオラとチェロのベースに乗って1stヴァイオリンが歌うところは、美しいのにどこか不気味。私はぞわっとしました。また2つのヴァイオリンがベースを作ってヴィオラが歌うところもあり、三重奏の組み合わせが変化していくのは興味深かったです。一見穏やかで幸せな音楽なのに、一皮剥けば狂気があるような、不思議な感じがした演奏に心がざわめきました。第2楽章 はじめはヴィオラ独奏から。子守歌のようなメロディを、ぽつぽつと暗く歌うヴィオラ。思わず引き込まれましたが、底知れなさを恐ろしくも感じました。チェロのピッチカートが重なるとさらに妖しく、2つのヴァイオリンによる二重奏は神秘的。また組み合わせを変えながら二重奏が何度か登場し、それぞれの響きを楽しめました。4人での強奏では、超高音の1stヴァイオリンと重低音のチェロのギャップに心かき乱されたり、逆にチェロが超高音で歌ったり、一瞬スキップするような明るさがあったりと、一筋縄ではいかない感じ。ただ、最初の子守歌のようなメロディがずっとベースにあったためか、私はなんとか迷子にならずに聴けたと思います。ポン!と弱いピッチカートでの締めくくりが思いの外インパクトがあって、思わずビクッとなりました(私だけ?)。第3楽章 ヴィオラトレモロに乗って、2ndヴァイオリンから順に参戦していき、スピードと気迫ある盛り上がりに!この張り詰めた空気がすごい!かと思うと温かく楽しそうに歌い出したり、いきなり止まったり、各楽器で掛け合いがあったり。一糸乱れぬ展開での間合いがすごく面白かったです。第4楽章 チェロに誘われて1stヴァイオリンが超高音で軽快に歌い出し、すぐに気迫ある掛け合いに。ガッガッ♪と全員が力強く弦を鳴らし続け、ものすごく速く各楽器が呼応し合い、一瞬の隙も見せない展開がすごいことすごいこと。超パワフル&超高速で駆け抜けたラストの気迫たるや!ショスタコーヴィチとリッカ弦楽四重奏団、恐るべし……想像をはるかに超えた演奏に打ちのめされました!

後半は、ブラームス弦楽四重奏曲 第2番」。第1楽章 重厚なベースに悲劇的なヴァイオリン。はじめからブラームスらしさ全開の演奏に引き込まれました。1stヴァイオリン独奏の後は、柔和な感じに。チェロのピッチカートのリズムに乗って、歌うヴァイオリンやヴィオラが甘く優しく、歌曲のような心地良さでした。ユニゾンで奏でる堂々とした響きの良さ!穏やかな中で時折パンチのある強奏が顔を見せていたのが、次第に気迫あふれる激しさが優位に。ダダダーン♪と全員が全力で弦を鳴らすのがものすごい迫力!1stヴァイオリンの悲痛な叫び!4名の張り詰めた空気と底知れぬエネルギーがすごい。楽章締めくくりに向かうクライマックスの凄みは、甘ちゃんな私など真正面からはとても受け止められないほど!第2楽章 中低弦のベース(渋い!)に乗って、低めの深みある音色でゆったり歌う1stヴァイオリンがなんて素敵なこと!ゆったりと美しい音楽は、タッタッタ♪と控えめで愛らしいステップに幸せな気持ちが垣間見えるよう。しかし突如、ガガガ……と激しく鳴る他の弦に乗って、1stヴァイオリンが切れ味鋭く思いを叫び、度肝を抜かれました!再び穏やかになっても、私はいつ嵐が来るかと思うと緊張してしまい、目の前の音楽とは裏腹に気持ちはリラックスできないままでした(私だけかも?ごめんなさい!)。第3楽章 チェロに誘われて他の弦が続くシーンが何度かあり、その掴みのチェロと続く演奏の表情の変化を興味深く聴きました。神秘的で研ぎ澄まされたところでのヴィオラの存在感、駆け足のところでの舞曲のリズム、強奏を各奏者でリレーしていくところのアツさ、低音からぐーっと盛り上がるところでの下から沸き上がるエネルギー!息つく間もないほどのめり込みました。静かな締めくくりは、まるで深淵に落ちてしまったかのよう。第4楽章 最初の1stヴァイオリンが強烈なインパクトでガツンとやられました!ガッガッ♪と力強く鳴らす他の弦によるリズムにドキドキ、キレッキレの弦の振り下ろしにゾクゾク。穏やかなところと熱量高いところが交互に来て、タッタッ♪と囁くように全員で息を合わせた後に、ぱっと切り替わるのが鮮やかでめちゃくちゃカッコイイ!合間に入る滑らかなチェロにほっとしつつ、熱量高いところのすごさには圧倒されっぱなしでした。1stヴァイオリンのメロディを2ndヴァイオリンとヴィオラが力いっぱいリフレインしたり、ユニゾンで強奏したりと、どのシーンも情熱を超えた激情!力強く駆け抜けたラストまで、これ以上無いほどの大熱演!ブラームスがこんな顔を持っていたなんて……。私は感激とショックとで、しばし呆然としてしまったほど、個人的には大事件な出会いでした。

カーテンコールの後、会田莉凡さんからごあいさつとトークがありました。平日夜の開催にもかかわらず、たくさんの人に来場頂いた事への御礼(最終的に180名超の客入りだったようです)、予想以上のお客さんが集まったことで当日券の「券が足りなくなる」ハプニングがあったというお話も。またフライヤー作成やプログラム作成といった事務的な事は、ヴィオラの鈴木勇人さんがご尽力くださったとのことです(大拍手!)。限られた時間での練習や合わせが大変だったことや、「初回の公演でこんなに大変なプログラムをやるのは私達だけ」(!)。そして会田莉凡さんと石川祐支さんがソリストを務める、札響苫小牧公演2024(2024/03/23 開催予定)の宣伝(この日来場した人限定の先行販売案内まで!)もありました。

「ほっこりした気持ちでお帰り頂きたくて」と、アンコールは、チャイコフスキー弦楽四重奏曲 第1番」 より 第2楽章 「アンダンテ・カンタービレ。穏やかで美しい歌に心癒やされました。1stヴァイオリンのメロディを各楽器が優しく繰り返すのが素敵!これはまさに愛!2ndヴァイオリンに導かれた、素朴で哀しげな歌もハッとする美しさで、フレーズ最後に音がゆらぐところがぐっと来ました。最初のメロディが戻って来ると、先ほどよりももっと優しく愛に満ちた感じに。美しい1stヴァイオリンと、支える他の弦の温かなピッチカートに、うっとり聴き入りました。次第にゆっくりになり、フェードアウトするラストの余韻まで、優しさと愛があふれた演奏。ああなんて素敵なのでしょう!超充実の本プログラムから、ほっこりアンコールまで、私達聴き手を夢中にさせてくだりありがとうございました!リッカ弦楽四重奏団、第2回以降の公演もぜひお待ちしています。そして苫小牧でのブラームスの二重協奏曲、とても楽しみにしています!


R弦楽四重奏団 Vol.1 」(2023/11/18)。ハイドンショスタコーヴィチブラームス演奏家との距離が近いギャラリーにて、信頼のメンバーによる充実の演奏を肌で感じられる贅沢!お堅いイメージだった弦楽四重奏を身近に感じ、自然体で楽しめた幸せな時間でした。

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ブラームス室内楽シリーズ イ調で結ぶ作品集」(2023/06/26)。会田莉凡さんのヴァイオリンを堪能できたソナタ、「音楽する」三重奏曲、ピアノ四重奏曲の「化学反応」の素晴らしさ!ブラームスの隠れた名曲たちの充実した演奏に浸れた、とても幸せな時間でした!

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。