自由にしかし楽しく!クラシック音楽

クラシック音楽の演奏会や関連本などの感想を書くブログです。「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ(http://nyaon-c.hatenablog.com/)」の姉妹ブログです。

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なの花薬局 Presents 子どもといっしょに聴きたいコンサート Vol.3 (2023/12) レポート

www.msnw-wishall.jp
ウィステリアホールが主催し、なの花薬局が協力する「子どもといっしょに聴きたいコンサート」。Vol.3となる今回の演目は、ドビュッシー「おもちゃ箱」です。事前応募・抽選による無料招待の演奏会に、私はありがたいことに当選し、小5の娘と一緒にうかがいました。なお私達が聴いたのは、同じ内容で4回開催された公演のうちの第3公演です。


なの花薬局 Presents 子どもといっしょに聴きたいコンサート Vol.3 (第3公演)
2023年12月17日(日)13:00~ ウィステリアホール

【出演】
谷石 奈緒子(ナレーション)
新堀 聡子(ピアノ)

【曲目】
ドビュッシー:おもちゃ箱

 アンドレ・エレ(台本・絵)
 青柳いづみこ(日本語訳 Gakken刊)


休憩なしの約30分の公演。子への愛あふれる作品を、心を込めた演出と演奏で楽しめ、親子で心温まる体験ができました!おもちゃ箱の中の人形が動き出すという素朴なお話に、素敵な絵、そしてきめ細やかに物語の世界を表現する音楽。そのすべてが語りかける子ども達への愛と思いやりに満ちていました。また全部を語り尽くさず想像の余地が残されていた(と私は感じました)ため、子と一緒に大人も楽しめたのもうれしかったです。私が見た限りの印象では、小さい子から大きい子まで会場の子ども達はとても熱心に聞き入って、それぞれの子なりに楽しんでいた様子。それは「音楽が楽しい・ピアノが素敵」でも「お話が面白い・ナレーションの声が好き」でも「絵がカワイイ・色がキレイ」でも、あるいは「お母さん・お父さんが楽しそう」でも、何だって良いはず。正解は無く、自由な楽しみ方ができるのが、絵本(今回は素晴らしい音楽も!)の良いところです。刺激の多いコンテンツに慣れている現代っ子たちではありますが、それらはあくまで「刺激」。絵本の読み聞かせのような、自分に向けて語りかけてもらえる時間は、子ども達にとってやはりかけがえのないものだと私は思います。親子のためにこんな素敵な企画を開催しご招待くださった、主催者のかたへ改めてお礼申し上げます。

ドビュッシー「おもちゃ箱」は、ドビュッシーが愛娘クロード・エマ(愛称:シュシュ、当時8歳)のために作曲したもの。台本と絵本を仕上げたのはドビュッシーと親交があった画家のアンドレ・エレ。ドビュッシーはナレーションが入る場所等、細かな所まで指示を書き込んでいるそうです。今回は、音楽と絵は原作のまま、お話は青柳いづみこさんによる日本語訳を用いて上演されました。信頼の新堀聡子さんのピアノは繊細にもダイナミックにもなって物語世界を作り上げてくださり、谷石奈緒子さんのナレーションは落ち着いた優しい語り口で聴き手の心にすっと入ってきました。演奏中のスクリーンには、絵本の絵と、ピアノの手元、ナレーターの表情が映し出され、照明による演出もありました。こういった小さな舞台の演出は、ウィステリアホールさんがお得意とするところですね。また来場者へのお土産として、今回の絵本をモチーフとした記念品(ランチ巾着と卓上カレンダー)も用意されました。重ねてありがとうございます!

以下、個人的に印象深かったところを中心にレポートします。ストーリー等の詳細は省きますので、物語自体の内容を知りたい方はお手数ですがご自身でお調べくださいませ。出演者のお2人が舞台へ。お2人とも白いブラウスのシンプルな装いでした。すぐに演奏開始です。物語のはじめに、主な登場人物の紹介がありました。「お人形ちゃん」「ブルチネッラ(道化師)」「兵隊さん」そして「花」を1人ずつ順に紹介。私がハッとしたのはその紹介のスタイルでした。ナレーションで例えば「お人形ちゃん」と言うと、ピアノでその登場人物のテーマ(ライトモチーフ?)が演奏され、スクリーンには登場人物の絵と、その下になんとライトモチーフが書かれた小さな楽譜が!中途半端に小さい子向けに忖度しない、この心意気!もちろん気にとめない子は多かったと思いますが、ピアノを少しやっているうちの娘の場合、耳に入る音楽と同時に楽譜とピアノの手元の映像が来たのはとても良かったようです。それぞれのキャラクター「らしい」テーマが続いた後、最後の「花」が少しミステリアスな感じで私は意表を突かれました。はかなさや寂しさも感じさせるピアノが、そのまま続けてお話の導入になったのも印象的。スクリーンには、おもちゃ箱と目を閉じている人形たち。やや暗い音楽と照明の暗さも相まって、世の中が寝静まった夜のお話であることがうかがえました。おもちゃ達が動き出すと音楽は賑やかになり、ライトモチーフも密かに織り込まれていた感じ。明かりが付いたり音楽が流れたりの描写も楽しい。「ゾウの踊り」は、迫力あるピアノと可愛らしい絵のコントラストが良かったです。「アルルカンの踊り」の異国風なピアノが素敵!兵隊さんの行進曲風な音楽に、私は同じドビュッシーの「ゴリウォークのケークウォーク」を連想。シーン毎に色とりどりのピアノ小品が次々と登場して、それらを生演奏で聴けるのはなんとも贅沢でした。ブルチネッラに駆け寄るお人形ちゃんが花を落とし、兵隊さんがそれを拾うあたりから、ピアノのテンポも速くなり、観客の方もドキドキ。ブルチネッラがお人形ちゃんに「情熱的なキス」(!)をするというのは、日本のお話にはなかなか出てこない表現で新鮮でした。緊迫感ある音楽に、スクリーンにはブルチネッラ軍と兵隊さん軍の戦いの絵。しかし「(大砲の)弾はグリンピース」(!)というナレーションに、会場にはクスッと笑い声が起きました。月明かりの下で、「ニュルンベルクの木の間に」怪我をした兵隊さんが花を持ったまま横たわっているシーンでは、ピアノは哀しげで、フレーズ末尾の音の余韻が月明かりを思わせる、とても美しい響き。有名なドビュッシー「月の光」とはカラーが異なる、これもまた美しい月の光ですね!お人形ちゃんが兵隊さんを介抱。空き家を見つけ、2頭の羊と2羽のガチョウを買って……と、いつの間にか新生活の準備をしている流れ。羊飼いやガチョウ売りが登場する度に「らしい」音楽になったのが素敵でした。「羊飼いの草笛が、彼らの木で出来た魂を、メランコリックな気持ちにさせた」……この一文がなんて詩的で美しいこと!2人は結婚することになり、音楽は前向きな感じに。「結婚行進曲!」のナレーションに続いて、有名なメンデルスゾーンの「結婚行進曲」のメロディが登場し、一層華やか!お話は20年後に。音楽は壮大で明るくなり、私はなんとなくワーグナーを連想しました。夫婦はたくさんの子宝に恵まれ、お人形ちゃんはすっかり太って、白いヒゲを生やした兵隊さんは既にしおれた「花」をずっと持っている。大切なものを大事に持ち続けるって、素敵なことですね!踊れなくなったお人形ちゃんは「代わりに歌う」、子ども達は「ポルカを踊る」、とシーン毎に楽しい音楽!そして「すべてが消える」と、ピアノのトレモロの後、ナレーションでお話が最初のシーンに戻ったことが知らされました。ピアノは最初に聴いた物語の幕開けと同じ(と私は思いました。違っていましたら申し訳ありません)、ミステリアスな感じに。スクリーンには最初に登場したおもちゃ箱が映し出され、その箱には"FIN"の文字。物語は幕を下ろし、会場に温かな拍手が起きました。

カーテンコールにて、ナレーターの谷石さんからごあいさつとお話しがありました。ドビュッシー「おもちゃ箱」についての解説、会場には小さな子も来てくれた事へのお礼、谷石さん自身も1歳のお子さんの子育て中というお話も。最後に「こんなコンサートがあるといいな」といった事をぜひ教えてください、とアンケートのお願いがあり、会はお開きになりました。親子の楽しい時間と、かわいい記念品のお土産まで、ありがとうございました!素晴らしい企画が今後も良い形で続きますように。


札響 読み聴かせコンサート『おばけのマールとたのしいオーケストラ』」(2022/08/11)。描き下ろし(書き下ろし)たっぷりの絵本の世界に、大人が聴いても十二分に楽しめる選曲と演奏。森崎博之さんの朗読と進行も素敵で、親子で思いっきり楽しめました!

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ウィステリアホール5周年記念事業 ジングシュピールファウスト」(2023/05/28)。ミニマムなキャストと仕掛けによる、歌とお芝居で作るオリジナル舞台。魅力的な登場人物と音楽に心揺さぶられ、壮大な世界にどっぷり浸れた得がたい体験でした。再演&映像作品化をぜひ!

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ピアノの新堀聡子さんが出演されています。「札幌・リトアニア文化交流コンサート」(2023/08/28)。リトアニアの大スター・ミシュクナイテさんの圧倒的なお声と表現。信頼のメンバーによるピアノと弦。「歌の国」リトアニアの精神に触れ、その音楽にどっぷり浸れた幸せな時間でした。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。