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森の響フレンド 札響名曲コンサート~ポンマーの贈り物 ドイツ3大B(2023/08) レポート

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元札響首席指揮者(在任期間2015~2017年)のマックス・ポンマーさんが、4年ぶりに札響に来てくださいました。今回(2023/08)の名曲シリーズは、バッハ・ベートーヴェンブラームスの「ドイツ3大B」。当初予定の2022年2月はコロナ禍のため来日が叶わず(この時は指揮・尾高忠明さんにて開催)、今回は演目を一新しての再企画です。札幌は例年に無い猛暑が続いていたこの日、札響のポンマーさん時代を知るファンやドイツ音楽を愛する人たち等が大勢集まり、会場は満席に近い盛況ぶりでした。


森の響フレンド 札響名曲コンサート~ポンマーの贈り物 ドイツ3大B
2023年08月26日(土)14:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
マックス・ポンマー

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:会田 莉凡)

【曲目】
J.S.バッハブランデンブルク協奏曲第3番
ベートーヴェン交響曲第8番
ブラームス交響曲第4番


すべてが美味しい「親子丼、天丼、カツ丼」を一度に堪能でき、大満足です!重たくなりがちなラインナップでも、速めのテンポでぐいぐい進み、リズムがとても生き生きとして、私はその波に乗るのが快感でした。ちなみに速かったのは弦がメインのときで、管が主役のシーンは比較的じっくり。また休符がビシッと揃い、ガツンとくるところと弱音のメリハリもしっかりある、とても引き締まった演奏だったと個人的には思います。さらに今回私が注目したのは、後の方の演目になるに従って弦の人数が増えていったこと。小編成のブランデンブルク協奏曲は、奏者お一人お一人の個性ある音色を味わえ、精鋭メンバーによる最高のアンサンブルを楽しめました。また10型のベト8は、ベートーヴェンらしい力強さはありながらも、品の良いモーツァルトのような(と私は率直にそう感じました)響きがとても新鮮で、ベートーヴェンの新たな魅力に気付かされました。なお私がベト8を「ド迫力で重厚」と思い混んでいたのは、2020年に聴いた秋山和慶さん指揮による演奏(2020/10/06 「オーケストラでつなぐ 希望のシンフォニー」札幌交響楽団公演)の影響と思われます。その時の弦の人数は把握していませんが、大編成の演目(武満徹「乱」組曲)の後に続けて演奏されたので、かなりの大所帯だったはず。同じオケによる同じ曲の演奏でも、編成(奏者の人数)と指揮者によってガラリと変化するのはとても面白いです!そしてブラ4の重厚さがすごい!メリハリあるキレッキレの演奏で、どのシーンにおいても大人数の弦が作る音の厚みがものすごい力を発揮していたと感じました。後半ブラ4の厚みを際立たせたくて、あえて前半ベト8は弦の人数を減らしたのかも?と私は勝手な想像をしたほどです。ブラームス自身も、これなら大尊敬するバッハとベートーヴェンを差し置いて自分がトリを務めても、堂々と胸を張れるに違いありません。それにしても札響の弦、上手すぎでは!?主役のときはもちろん、ベースを作ったりリズムを刻んだりといった土台を作る細やかな仕事ぶりが素晴らしく、私はその底力を再確認しました。言うまでもなく数の力が発揮できるのは、お一人お一人に素晴らしいお力があるからこそですよね!

ドイツ・ライプツィヒ生まれのポンマーさんによる「ドイツ3大B」は、無理なくそれぞれの魅力を引き出してくださり、私達も良い意味で身構えず自然体で聴けた演奏でした。ネイティブの余裕とここまで積み重ねてきたキャリアの賜と拝察します。御年87歳(!)のマエストロは、ゆっくりでも介添えや杖なしにご自分で歩いて登壇。座面の高い椅子に腰掛けての指揮でしたが、力が入るところは思わず椅子から腰を浮かせていたほどの大熱演でした。指揮の動きもキレッキレで、何より堂々たる音楽が素晴らしい!私は比較的新しいファンのため、札響のポンマーさん時代を知らないのですが、その演奏と会場の雰囲気から、ポンマーさんはオケメンバーと篤い信頼関係で結ばれていること、何よりお客さん達にとても愛されていることが窺えました。ポンマーさん、これからも末永くお元気で、今後何度でも札響に指揮しに来て頂けたらうれしいです。


開演前のプレトークは、エッセイスト・ドイツ語通訳の菅野美智子さん。ポンマーさんの通訳を担当されているかただそうです。ただ、私は会場に着くのが遅くなったため、プレトークの拝聴が叶いませんでした。大変申し訳ありません。

1曲目は、J.S.バッハブランデンブルク協奏曲第3番」。編成は少数精鋭の弦(ヴァイオリン3、ヴィオラ3、チェロ3、コントラバス1)とチェンバロで、ヴァイオリンとヴィオラは立っての演奏でした。少人数の弦とチェンバロの編成が大好きな私は、演奏が始まる前からワクワク。第1楽章 低弦とチェンバロによるベースの上を、高音弦がぐんぐん進む快活な演奏でした。コンマスから順番にヴァイオリンが何度もメロディをリレー。時にはヴィオラやチェロにもバトンが回ってきて、各奏者の個性が楽しめ、また視覚的にも楽しかったです。よどみなく流れる明るく生き生きとした音楽に、聴いている側の気分もあがりました。第2楽章 「楽譜上は2つの和音しか書かれていない」という短い楽章は、なんとチェンバロ独奏!少し寂しい感じの音楽で、ギターをかき鳴らすような連続した音の響きがとても印象的でした。「2つの和音」だけでなく、即興的に音を加えて演奏されていたと思われます。素晴らしいです!第3楽章 第1楽章よりさらに快活で駆け足の演奏に。華やかな高音弦が素敵で、低弦がテンポ良く合いの手を入れたり追いかけっこしたりするのが楽しい!ここでもメロディのリレーが何度も登場し、ヴィオラがメインとなってメロディを弾いたところもありました。息つく間もないほど駆け抜けた演奏は、いきなり(と私は感じました)締めくくり。弦が音をのばしたラストでは、コンマスのヴァイオリンが一番長く余韻を残していたように感じました。小編成ならではの密な掛け合いの良さが楽しめて、ひたすら弦を擦る奏法のみ(ピッチカート等はナシ)で音楽をきっちり構築する職人技にホレボレ!クラシック音楽(特に独墺系)の基本とも言えるバッハの演奏で、札響のお力を再確認できました。

2曲目は、ベートーヴェン交響曲第8番」。弦は10-8-6-4-3で、管はすべて2管(金管はホルンとトランペット)、ティンパニの編成でした。第1楽章 思いっきり爽やかで駆け抜ける冒頭が素敵!華やかに盛り上げた後の休符がピシッと揃って、弱音での演奏がとてもキレイだったのが印象深かったです。ファゴットはじめ木管群の心躍る響きが楽しく、ごく小さな音から盛り上がりの波を作る弦がすごい!うれしさ爆発のようなタッ タタタタ タッ♪の弦がキレッキレ!少し深刻になるところの弦も、この人数にもかかわらず迫力ありました。楽章締めくくりの木管群の音色がかわいらしい!第2楽章 小刻みなリズムにウキウキ。スキップするようなファゴットが楽しく、弦が時折低音をダダダダダ♪と鳴らすのがベートーヴェンらしくてイイ!第3楽章 うねうねしたベースが楽しく、タッタータタタ♪のメロディは爽やか!またもやファゴット大活躍でした。トランペットとティンパニが男前!ホルンとクラリネットの牧歌的な会話がとっても素敵で、心温まりました。それを支える低弦は、コントラバスのピッチカートは3名全員でしたが、なんとチェロは首席が代表しての独奏(!)。ここはチェロパート全員がやると思っていたので、私は少しビックリ。でも期せずして超素敵な独奏チェロが聴けちゃいました(笑)。第4楽章 はじめの囁くような弦が、ガツンとくる低音(超男前!)を皮切りに、思いっきり華やかに盛り上がるのがすごく良かったです!ダダダダダ♪の音の刻みがカッコイイ!穏やかに歌う木管群は温かで、癒やされました。弦が最初のメロディを転調(?少し深刻な響きになりました)して弾いたところのシャープさが超カッコイイ!全員合奏で何度も強奏を繰り返し、元気いっぱいの締めくくり。とにかく明るい音楽は気分爽快!朗らかでフレッシュ、しかし要所要所にベートーヴェンらしい力強さもある、ベト8の新たな魅力に気付かされた演奏でした。


後半は、ブラームス交響曲第4番」。弦が大増員されました!14型でしょうか?ヴァイオリンは人数が多く正確な数を把握できませんでしたが(ごめんなさい!)、他の弦はヴィオラ10、チェロ8、コントラバス7でした。木管は基本的な2管にコントラファゴットが加わり、フルートの第2奏者がピッコロ持ち替え。あとはホルン4、トランペット2、トロンボーン3、トライアングル、ティンパニでした。第1楽章 冒頭、そっと入ったヴァイオリンによる美しく切ない響きが素敵!少しテンポが速いかも?と、私は最初そう感じましたがすぐに慣れました。ヴァイオリンの裏拍をとったり管と呼応したりする低音が下からズンズン来て、チェロパートやホルンが素敵にメロディを歌う、はじめからザ・ブラームスな音楽にゾクゾク。私やっぱりブラームスの低弦が好きすぎます!木管群はハッとするほどもの悲しく感じられ、甘さの無い厳しさが印象深かったです。そして重厚かつ大迫力の楽章締めくくりがすごい!悲劇的な弦とティンパニの力強さに打ちのめされました!第2楽章 序奏の厳かなホルン、続いたほの暗いクラリネットの存在感!メロディを順番に引き継いだホルンや木管群の温かな響きに、ヴァイオリンの澄んだ響きが素敵で、じんわり心に染み入りました。クラリネットの影となったファゴットと、弦ピッチカートが刻むリズムが心地よかったです。チェロがメロディを歌い、他の弦とファゴットが重なるところがすごく素敵でした!タータータータター♪の子守歌のようなリズムから、タッタッタタッタ♪の前のめりなリズムに切り替わったところがパワフルかつキレッキレで超カッコイイ!楽章の終盤ではクラリネットもホルンも少し明るく優しい響きになっていて、高い音をのばして消え入るラストは希望が見えるようでした。第3楽章 この交響曲には場違いとも思えるこの楽章ですが、私は結構好きです(笑)。勢いある弦にパワフルなティンパニ、華やかトランペット、トライアングル炸裂!はじめからガンガン来る、高速でノリノリな超明るい演奏は気分爽快!少しクールダウンし木管メインとなるところでは、ピッコロの可憐な音色と、ベースを作る弦がごく小さな音で細やかな演奏をしていたのが印象的でした。うんと盛り上げて楽章を締めくくってからは、再び厳格な終楽章へ。第4楽章 ここで初登場のトロンボーンが瞬時に厳しい空気を作ってくれました!ティンパニの鼓動と迫り来る重低音にゾクゾク。木管のターンを経て、厚みある悲劇的な弦は鳥肌モノでした!フルートソロは美しくほの暗さもありとっても素敵!それを支えるオケの細かな音の刻みもとても良かったです。続く金管の温かさ!そしてクライマックスでの低音の咆哮がすごい!弦もさらにパワーアップして、最後の最後までシャープで力強い演奏でした。大トリにふさわしい、がっちり骨太かつ重厚で大迫力のブラ4!ポンマーさんと札響、本当にすごい!この演奏に出会えて幸せです。ありがとうございました!

カーテンコールでは、ポンマーさんは何度も舞台へ戻って来てくださいました。最後には弦のトップ奏者の皆様と順番に握手をし、譜面台にあった指揮者用のスコアを大きく掲げ、アンコールはナシで会はお開きに。会場はとても温かな雰囲気で、ポンマーさんが札幌のお客さん達に愛されていると私はしみじみ。今回が「はじめまして」だった私も、すっかりポンマーさんのファンになりました!ポンマーさん、これからもぜひ札響を指揮しにいらしてくださいませ。

 

札幌交響楽団 hitaruシリーズ定期演奏会 第14回」(2023/08/03)。阪田知樹さんソリストグリーグ ピアノ協奏曲をはじめ、鈴木優人さんのチェンバロ弾き振りに武満作品、「火の鳥組曲と豪華4本立て!真夏の夜の超アツイ快演に、生きている実感がわき気分爽快になれました。

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森の響フレンド 札響名曲コンサート~ウィーンのヴァイオリンで聴くブラームスとJ.シュトラウス」(2023/06/17)。歌心と純粋な情熱が感じられたブラームスのヴァイオリン協奏曲、ウィーンの「方言」をマスターした道産子オケによるウィンナ・ワルツ。北海道の初夏にぴったりな華やかで明るい音楽に気持ちが晴れやかになりました。

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