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「オーケストラでつなぐ 希望のシンフォニー」札幌交響楽団公演(2020/10)レポート

ベートーヴェン250プロジェクト」の一環として、NHKが主催する「オーケストラでつなぐ 希望のシンフォニー」。事前に観覧希望のWeb募集があり、私はありがたいことに札幌交響楽団公演に当選したのです。日本各地のオーケストラがベートーヴェン交響曲と劇音楽「エグモント」を演奏していく企画で、我が町のオケ・札響は交響曲第8番でした。こちらは11月22日(日)のEテレクラシック音楽館」で放送予定とのこと。ぜひご視聴ください。

www.nhk.or.jp

 

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ベートーヴェン250プロジェクト

 

「オーケストラでつなぐ 希望のシンフォニー」札幌交響楽団公演
2020年10月6日(火)19:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
秋山和慶

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島高宏)

【曲目】

(アンコール)


もう、もう、とんでもない演奏を聴きました……。我が町のオケ、すごすぎます。ご近所にいて、すぐに会える地元オケ。それが瞬時に今まで経験したことがない異世界へ連れて行ってくれるなんて、夢みたいな本当の出来事を、私はこの日確かに体験しました。私は聴き始めて日が浅い上に音楽の知識もない素人で、きちんと消化できたかどうかはわかりません。しかしこの日の演奏はもはや「事件」だと、その場にいたひとりとして言わせてください!私のこんなありきたりな表現では絶対に伝わらないのがもどかしい。皆様、テレビ放送は必見です!会場の熱量が画面を通して少しでも皆様に伝わりますように。そして札響には私がまだまだ知らない顔があるのだと思います。今回アンコールが「序曲」でしたから、これはきっとさらに飛躍するための第一歩。私、これからの札響の演奏もとても楽しみです!今後できるだけ食わず嫌いはせず、事情が許す限りは何度でも聴きにうかがいます!

指揮の秋山和慶さん、素晴らしい演奏を導いてくださり本当にありがとうございます!やむなく中止となった5月の新定期は、私が大好きなブラ1がメイン、協奏曲はソリスト藤田真央さんによるラフマニノフのピアコン2番で、個人的にとても楽しみにしていたんです。今回の演奏を拝聴して、私はやはり5月の新定期の演目を秋山さんの指揮で聴きたくてたまらなくなりました!秋山さん、いつかきっと札響でブラ1を演奏してください。んん、ベト8のあの生命力をブラ2でも聴きたいです。あとはやはり一番ブラームスらしいブラ3も。でも「乱」組曲のあのうごめく感情をブラ4のクライマックスでもぜひ聴きたい!選べない。いっそブラームス4曲全部お願いします!

私の座席は1階席で、定期ならSS席に相当する場所でした。ここ数年分のクジ運を一度に使い果たした感があります(笑)。ソーシャルディスタンシングとはいえ、P席全部と前数列を空けた上で、基本3席飛ばし(!)になっていてそれすらも空きが目立つ状態でした。本来2000人超の大ホールがこんなにガラガラなんて!おかげですごく良い音が堪能できましたが、もっと多くの人と生演奏を共有できたらいいのにとも正直思いました。しかし、ひっそりとWebのみの公募で、応募自体が少なかったのかもしれません。それに他の会場では無観客で演奏したところもあるようなので、そもそも招待客は極力絞る方針だったのかもしれませんし。とにかく、私はその場にいて目の前で演奏が聴けて、超ラッキーでした。

プログラムによると、今回の演目は「初」がテーマなのだそう。指揮・秋山さんと札響が初共演した際に演奏した「古典交響曲」に、札響が秋山さんとの初の東京・名古屋・大阪ツアーで披露した「乱」組曲、そしてベト8は札響×秋山さん指揮では初めて取り組む曲とのこと。開演前にNHK札幌放送局のかたのお話と、「ベートーヴェン250プロジェクト」アンバサダー・稲垣吾郎さんによる注意事項アナウンス(録音)がありました。


1曲目はプロコフィエフ「古典交響曲。私は2019年のPMFガラコンサートで一度聴いたことがある曲です。今回、出だしから「音がキレイ!」と夢中になり、人が少ないkitara大ホールに響く、弦の透き通った音や木管のあたたかでまるい音やトランペットの華やかさを味わいました。個人の思想や強いイメージを主張しない音楽は、大きな感情の波に引きずられずに済むのが良いですね。ごまかしがきかない分、演奏はむしろ難しいのかもしれませんが。約15分のコンパクトサイズでもちゃんと4楽章構成。それぞれの楽章も古典派のやり方を倣ってはいても、緩急の付け方やリズムやメロディそのものは変化に富んでいて、他のどこにもないプロコフィエフ独自の「古典」交響曲。妖艶なヴァイオリン協奏曲とはまた違い、誰もが受け入れやすい曲だと思います。各パートの個性が光りながらも全体が見事に調和する演奏はとても素敵でした。メインのベト8だけでなく、こちらの古典交響曲もぜひテレビで放送してほしいです。

トロンボーンやハープ、多彩な打楽器が入り、2曲目は武満徹「乱」組曲。もう、すんごい演奏を聴きました……。札響とは縁のある曲だというのは知っていて、映画も一度は観ておきたいなと思いつつも、結局この日は丸腰で臨んだ私。しかし、もし予習してきたとしても同様に強いショックを受けた気がします。今まで聴いたことがない音楽に、私は席でひとり小さく震えていました。甘ちゃんでごめんなさい。日本の戦国時代が舞台になっている映画なのに、音楽には大陸のようなスケールの大きさがありました。そして曲の雰囲気は、こんなこと言っても適切かどうかわからないのですが、死の恐怖と隣り合わせのようなぞっとする感じもあり、そこに目を見開いてなお生きる美しい人がいるようでもあり。同じ武満徹の映画音楽で以前定期演奏会で聴いた「死と再生」でも不気味な雰囲気に鳥肌が立ちましたが、今回はそれ以上。思えば「死と再生」は弦のみの編成で、曲自体の不気味さはありつつも音色はとても美しかったように記憶しています。今回の「乱」では、容赦なかったですよね奏者の皆様。いつもはあんなに心地よい音楽を奏でるかたたちが、その気になればこんな音楽だって演奏できると、失礼ながら大変驚きました。和楽器の横笛(ピッコロかも?)の高く長くのばす音に、小さな鐘のチーンという音が、私はもうコワくてコワくて。そして弦!いつも聴いている心地よさとは別物の、声にならない悲鳴のようなうごめく感情のような、とにかく初めて聴く音。ドンチャカしない金管や打楽器もそれを際立たせていたように感じました。演奏に魂を持って行かれた私は、今自分がどこにいるのかどれくらい時間が経ったのかがあやふやに。お客さんは皆そうだったのか、曲が終わってもしばらくは会場がシーンとなって拍手を忘れていたほどです。この「乱」組曲は絶対に放送するべきと私は思います。全国いや全世界の人達に聴いてほしいと思える演奏でした。日本には武満徹という作曲家がいて、札幌交響楽団というオケが存在すると、多くの人に知って頂きたいです!

いよいよメインプログラムのベートーベン「交響曲第8番」。もう、どえらい演奏を聴いてしまいました……。全人類、本放送を観てください。このあふれる生命力、ものすごい衝撃でしたから!私の素人コメントでは伝わらないのは承知の上で、その場で生演奏を聴けた数少ないひとりとして、恐縮ですが感じたことを少しだけ書いておきます。第1楽章、あのインパクト大の冒頭からものすごい力強さに圧倒されました。少しゆったりするところの木管のあたたかな音も良いですが、弦がパワフルに演奏するところがとにかくすごくて、奏者の皆様が弓を動かすとき肩にぐっと力が入る様子も目の当たりにしました。第2楽章は独特のリズムが心地よく、先日聴いたばかりのベト7とはまた違うリズムを楽しませて頂きました。ずっと同じ感じではなく速さも強弱も細かく変化するので、足並み揃えてクオリティ高い演奏をするのはきっと難しいのですよね。第3楽章はまるでお外でピクニックな印象。美しい弦も、ファゴットとトランペットのスケールの大きさや鳥のさえずりのような木管も、全部良かった上で。特にホルンとクラリネットが会話しているようなところが印象的で、それをチェロとコントラバスが控えめに伴奏しているのがニクイなと思いました。私の場合、伴奏の細かいところまではなかなか録音では気づけないので、細部まで音が聞けて視覚でも確かめられる生演奏はやはり良いです。第4楽章では強弱のメリハリがとても効いていました。ピアニッシモでも身体にしっかり届いて、強い波が押し寄せて来るたびにゾクゾクして、これを肌で感じられるなんて、その場にいた私は幸せ者です。最後は力強く締めくくり。すっごい!私のベト8の生演奏初体験がこの演奏会で本当に良かったです!様々な絶望や困難に遭遇したベートーヴェンが、こんなに生命力あふれる曲を書いたんですね!それを最高の演奏で聴かせてくださった指揮の秋山さんと札響の皆様に大感謝です。昨今の感染症にまつわるあれこれがなくても、生きている限り人生は山あり谷あり色々あります。でも生きてるって素晴らしいし、人間そんなにヤワじゃないんだなと、演奏を聴いてそう感じました。生きてる実感、これが良いと思えるうちは私もまだまだイケル、うん。ベートーヴェン自身が9つの交響曲の中で一番気に入っていたという8番ですから、もっと演奏機会があってもよいですよね。演奏機会がとても多い7番の3回に1回くらいは、8番を代わりにプログラムに入れてほしいと思いました。私はもちろん7番も大好きですよ念のため。

アンコールはおなじみのモーツァルトフィガロの結婚」序曲。こちらも華やかさだけでなく生命力が感じられる演奏で、ベト8の爆発的な生命力あふれる演奏の後でもまったく疲れを感じさせない、パワフルな演奏でした。休憩なしのプログラムで全力投球の演奏を続けて4曲も、素晴らしいです!指揮の秋山さんと札響の底力、ただただ敬服いたします。めちゃくちゃ気分がアガりました!ありがとうございました!


お客さんは少なかったですが、分散退場に。演奏が最高だった上に、人が少ないkitaraでの素晴らしい響き。この日私はとんでもなく贅沢な体験ができました!このところ演奏会が立て込んでいる札響の皆様の圧倒的パワーともちろん演奏のクオリティの高さに、心地よく打ちのめされてうれしかったです。帰宅すればまたいつもの平凡な日常が待っているけれど(もちろんそれは大変幸せなことではあるのですが)、ご近所にこんなにハイクオリティな演奏で非日常の世界へ連れて行ってくれる地元オケがいることと、それを当たり前に聴けることを、私は心底ありがたく思います。今の状況の中、企画段階からの準備や実現にむけての様々なハードルを越えて、この演奏会を開催してくださったすべての皆様に御礼申し上げます。ありがとうございました!各地のオケの演奏もすべて、必ずテレビで拝見します!

 

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10/6 「オーケストラでつなぐ希望のシンフォニー」札響公演 アンコールボード


ロビーではアンコールボードを久しぶりに見ましたよ。いつもの出口付近にいつものボードと、ホワイエ中央あたりに掲示板を使ったものの2カ所。珍しいので掲示板のアンコールボードの写真を記念に貼っておきます。


この2日前の10/4にベト7を聴いた演奏会のレポートもアップしています。よろしければ以下のリンクからどうぞ。指揮の阪さんは、「オーケストラでつなぐ 希望のシンフォニー」山形交響楽団での指揮もされていて、メインは5番「運命」。こちらの放送もとても楽しみです。 

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

Eテレクラシック音楽館」といえば、昨年2019年10月に札幌交響楽団の8月定期演奏会の様子が放送されました。そちらの感想も弊ブログにあります。首席指揮者バーメルトによるブラームス中心のプログラムで、1曲目が武満徹「死と再生」でした。この放送回は多くの人に観て頂きたいので、再放送を切に願います。 

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

最後までおつきあい頂きありがとうございました。