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クラシック音楽の演奏会や関連本などの感想を書くブログです。「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ(http://nyaon-c.hatenablog.com/)」の姉妹ブログです。

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新進演奏家育成プロジェクト~オーケストラ・シリーズ 第68回札幌(2023/01) レポート

www.sso.or.jp
文化庁による新進演奏家育成プロジェクト。今回の演奏会では、オーディション(2022年10月3日に実施)にて選ばれた若手演奏家5名(うち2名は札響メンバー)が札幌交響楽団と協演しました。ちなみに私が新進演奏家育成プロジェクトのオーケストラ・シリーズを聴くのは、2021年の第58回札幌に続いて2回目です。昨年(2022年の第66回札幌)は都合が付かず見送ってしまったので、今回久しぶりに聴けるのを楽しみにしていました。

出演者のかたならびに関係者の皆様におことわりです。弊ブログは素人が趣味で思いつきを書いているだけのものです。今回のレポートも勘違いや大事なところの見逃し等が多々あると思われます。おそれいりますが、私の勝手な感想についてはどうぞ真に受けずに聞き流して頂けましたら幸いです。


新進演奏家育成プロジェクト~オーケストラ・シリーズ 第68回札幌
2023年01月29日(木)15:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
現田 茂夫

【共演】
赤間 さゆら(ヴァイオリン) ※札響ヴァイオリン奏者
金井 知那実(ソプラノ)
外川 莉緒(サクソフォン
福島 さゆり(フルート) ※札響フルート奏者
安藤 有佳(ピアノ)

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島 高宏)

【曲目】
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲ホ短調
マスネ:歌劇「ル・シッド」より“泣け、我が瞳よ”
グラズノフ:アルト・サクソフォンと弦楽オーケストラのための協奏曲
イベール:フルート協奏曲
サン=サーンスピアノ協奏曲第2番


豪華な協演を一度に5つも聴けて幸せです!5名の若手演奏家の皆様は、kitaraで札響と協演するという大変なプレッシャーに打ち勝ち、素晴らしい演奏を聴かせてくださいました。今の北海道には今後が楽しみなお若い演奏家がこんなに大勢いらっしゃることを私は強く実感し、とても感激しました!しかし私がそれをはっきりと認識したのは終演後のこと。5名の皆様の演奏はいずれも札響と対等に渡り合う、大変レベルの高いもので、その時は「お若くてこれからの人たちだから」なんて先入観はいつの間にか消えてしまっていたほど、純粋に夢中になっていました。ひいき目や掛け値なしで、演奏そのものを楽しめたのが本当にうれしかったです。今回ご出演された若手演奏家の皆様よりもずっと年上の私ですが、できるだけ健康を保って、伸び代ある皆様のこれからの演奏をぜひ聴かせて頂きたいと思いました。そして、信頼する私達の札響の演奏は今回も素晴らしく、安心して聴くことができました。手加減はしない真摯な演奏をしつつ、ソリストとオケの呼応だったり攻守交代だったりの流れはスムーズ。指揮の現田さんとオケは、素人目にはそう感じさせないところで、ソリストの呼吸や勢いに合わせてテンポや強弱を細かく変化させ、さりげなくソリストを盛り立てていたのかなと拝察します。ありがとうございます!来年以降の新進演奏家育成プロジェクトのオーケストラ・シリーズも楽しみにしていますので、どうぞよろしくお願いします!

前半、はじめはヴァイオリンの赤間さゆらさんによるメンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲 ホ短調。オケは2管編成にティンパニという基本的な編成でした。また、(作曲家の指示通り)全楽章を続けての演奏でした。第1楽章、ティンパニが印象的なオケに導かれて独奏ヴァイオリンが登場。高音の哀愁あるメロディがすっと心に染み入り、私は最初から演奏に気持ちを預けることができました。流麗な流れの中、重音で音階を上るところがカッコイイ!木管群を引き継いでメロディを奏でた独奏ヴァイオリンがとても美しかったです。ゆったりに見えて実はとても音が多いところも、丁寧かつ滑らかに演奏されていたと感じました。そしてカデンツァがすごい!振り切った高音やぐっと深みのある低音はもちろん、研ぎ澄まされた音すべてにインパクトがあって、赤間さんオリジナルの音をじっくり味わうことができました。楽章締めくくりに向かって加速していく流れは、ソリストもオケも一歩も譲らないものすごい気迫!オケの木管群がそのまま音をのばし、第2楽章へ繋がる流れがお見事でした。ゆったりと歌う独奏ヴァイオリンの幸せな感じにうっとり。続くオケのターンで明るさに影が差してからの、独奏ヴァイオリンが素晴らしかったです。哀しげなメロディと伴奏をお一人で歌うようにかつよどみなく演奏。なんて素敵なんでしょう!五感に訴えかけてくる艶やかな音に酔いしれました。ゆったりした流れに一呼吸置いた後、独奏ヴァイオリンが弦楽合奏に乗って寂しげに歌ったところも印象に残っています。金管ティンパニの華々しい幕開けからの第3楽章は、軽やかに駆け抜ける独奏ヴァイオリンが楽しそうで(演奏自体は難しいと思われますが)、聴いている私も幸せな気持ちに。オケと交互に演奏するところは息ぴったりで、リズム感が心地よかったです。クライマックスでは、壮大なオケをバックに、だんだんと音が増えどんどん加速していく独奏ヴァイオリンの凄技に見惚れました。ラストの音階の駆け上りが超カッコイイ!誰もが知る名曲を、ご自身の音で見事に弾ききって、聴き手を魅了した素晴らしい演奏でした!先陣を切った赤間さんのクオリティの高い演奏を聴いて、私はこの後に続く4名の演奏への期待がさらに高まりました。

ソプラノの金井知那実さんによるマスネ「歌劇『ル・シッド』より“泣け、我が瞳よ”」。オケは1曲目より金管群が増え、ハープも加わる大編成に。クラリネット・ソロが大活躍で、ソプラノが沈黙している時はクラリネットが高らかに歌い、またソプラノが歌う際にはオーボエが影となり寄り添っていました。楽器が増えた以上に壮大な響きになっていたと個人的には思います。しかしこの豪華なオケ以上にソプラノが素晴らしかったです!ほの暗いクラリネットとオケの前奏に続いてソプラノ登場。(演出として)独白のような登場だったにもかかわらず存在感抜群で、会場の空気が一変したと感じました。短い演奏時間の中で、オケとシンクロして陰鬱なところから感情が大きく盛り上がるところまで、表現の幅は広く、細やかな感情の変化が感じられました。全体的に哀しげな雰囲気の中、チェロから始まり高音弦が続く流れのところで、ソプラノの歌声が一瞬光が差したように明るくなったのが特に印象に残っています。クライマックスでは、大音量オケのさらに上を行く、ソプラノの意思あるお声がすごい!メソメソしていない、ヒロインの強さが感じられる演奏に惚れ惚れ!そして演奏後のお辞儀も良かったです。カーテシーというのでしょうか?背筋は伸ばしたまま膝を曲げ、手でスカートの裾を軽く持ち上げるスタイル。日本ではなかなか見かけない、西洋文化圏での所作をスマートに行っていらしたのが素敵でした。説得力あるお声とこの堂々たる所作、オペラの舞台でとても映えることでしょう!

サクソフォンの外川莉緒さんによるグラズノフ「アルト・サクソフォンと弦楽オーケストラのための協奏曲」。単一楽章の曲で、オケは弦のみの編成。美しい弦の序奏に続いて登場した独奏サクソフォンの、パワフルかつ温かな音色に引き込まれました。独奏ヴィオラと会話するようなところがロマンティック!音域と音色の相性がぴったり合っていると感じました。また、独奏サクソフォンがリズムカルに速いテンポで歌うところの弦ピッチカートや、独奏が次第に盛り上がる流れに弦もシンクロしていたのがとても印象的でした。まるで独奏サクソフォンがオケを導いているよう!中盤の、ゆったり歌う独奏サクソフォンが歌心あふれていてとっても素敵でした。優しい響きで寄り添う弦がまた良くて、独奏サクソフォンと今度は独奏チェロとの重なりがあったのが個人的にうれしかったです。カデンツァでは、音を刻みながら(タンギング?)次第にテンポが速くなる演奏に、明から暗へグラデーションで世界が変わったように感じられました。終盤に向かう流れでは、オケと呼応したり重なったりしながら次第に明るくなっていき、独奏サクソフォンは様々な奏法を披露しながら目まぐるしく変化。素人目からは息継ぎのタイミングがわからないほど、ずっとパワフルに歌い続ける独奏サクソフォンに圧倒されました。管楽器と打楽器がいない代わりに、独奏サクソフォンが温かな音色で歌ったり音の抑揚でリズムを作ったりと、一人で何役も演じながらオケを牽引。それを傍目からは難しさを感じさせず、軽やかに演奏されていました。クラシック音楽の基本編成にはいないサクソフォンが、自然にオケと溶け合いながらリードする!素晴らしいです!

後半、はじめはフルートの福島さゆりさんによるイベール「フルート協奏曲」。オケはトランペットが1つで他の管楽器は2つずつにティンパニ、そして弦でした。第1楽章、速いテンポで歌う独奏フルートが超カッコイイ!生き生きとした演奏に引き込まれました。またリズミカルに呼応するオケ、中でも独奏フルートと一緒に歌った木管群のナイスアシストぶりが印象に残っています。独奏フルートが力いっぱい吹ききって頂点に達した時の気迫がすごい!またその頂点でティンパニの強打がバッチリ決まったのが気持ち良かったです。ゆったりとした第2楽章では、独奏フルートの優しく美しい響きをたっぷり堪能できました。この日の福島さんの音は、いつものオケの一員としての音色よりさらに存在感ある美しさ!包み込むオケの澄んだ音色が、独奏フルートの美しさをより一層際立たせてくださいました。独奏フルートと、独奏チェロ、独奏ヴィオラ、独奏ヴァイオリンそれぞれとの語らいがとっても素敵!お互いが思い合うような響き、これは愛ですね!そしてジャズ風なリズムの第3楽章が個人的にとても楽しかったです。ジャン・ジャン・ジャン♪のリズムを刻むオケは、夜の都会(あくまで私個人のイメージです)のような華やかさ。そのオケに乗って、音を刻みながら速いテンポで歌う独奏フルートは、小粋なパリジェンヌを思わせるおしゃれな感じでとても魅力的!オケとシンクロして滑らかにメロディを奏でるところは、私の印象ではすごくノリノリで自然体でした。カデンツァでは、暗闇から次第に浮かび上がってきたような立体感ある響きが素敵!またカデンツァの終盤からオケがシンクロして一緒に盛り上げてくれた流れがすごく良かったです。明るく駆け抜けたラストが清々しい!多彩な響きの独奏フルートは、ホームのオケへ全幅の信頼を寄せた上で思いっきり伸び伸び演奏されていた印象で、聴いていてとても楽しかったです!

ラストはピアノの安藤有佳さんによるサン=サーンスピアノ協奏曲第2番。オケは2管編成にティンパニとシンバルが入りました。第1楽章、冒頭はピアノ独奏から。最初の重低音の和音からインパクト大!鐘の音を思わせる重厚で力強い響きが忘れられません。ほどなく登場したオケも大迫力!このオケと一緒に、深刻なところの力強さはもちろんのこと、穏やかなところでの主に木管群と重なるきらびやかな高音にも底力が感じられました。またカデンツァでは冒頭の重低音が再び登場し、そのインパクトにまたしてもやられれました。第2楽章、ティンパニに導かれリズミカルに始まったピアノが鮮烈な印象!前の楽章の深刻さとは違う、オケと一緒にスキップしているような楽しい響きが素敵でした。ピアノは貫禄がありながらも軽快で、まるで即興演奏のような自由さも感じられました。そして第3楽章、はじめの高速でうねるようなピアノにに圧倒されました!呼応するオケも、特に弦の音のうねりが素敵!オケの合間を駆け抜けていくキレッキレのピアノは一時の休みも無く、音が多い(トリル?)響きにゾクゾクしました。クライマックス直前には、再び冒頭の重低音を思わせるインパクト大の強奏が!この作品の要ではないかと思われる重低音がとにかくすごかったです。オケと一緒に全力で駆け抜けた締めくくりまで、熱量高い演奏に私はやられっぱなしでした。ドイツ系の重厚な交響曲にも匹敵する、力強く厚みのある音楽。トリにふさわしい圧巻の演奏でした!

カーテンコールの最後には、今回ご出演された5名の若手演奏家が全員舞台へ戻って来て、会場は拍手喝采に。ソリスト達が退場した後に会はお開きとなりました。今後飛躍していく皆様の、この日の演奏に出会えてうれしかったです。ハイレベルで素晴らしい演奏をありがとうございました!皆様のこれからのご活躍に期待大&今後の演奏会でお目にかかれるのを楽しみにしています!


札響メンバーは室内楽のコンサートでもご活躍です!今回は弊ブログの演奏会レビューから、ヴァイオリンの赤間さゆらさんがご出演されていたものをご紹介します。 ※もちろん以下の2つ以外にも数多くの演奏会に出演なさっています。

アンサンブルコンサート 愛と悲しみを謳ったロマン派時代の音楽家たち」(2022/12/16)。札響からは赤間さゆらさん(Vn)、鈴木勇人さん(Vla)、武田芽衣さん(Vc)がご出演。シューマンシューベルトの歌曲は、一つ一つが短いながらも完結した物語!ブラームスのピアノ四重奏曲第3番は、情熱的で血の通った演奏に、最初から最後まで夢中になれました。

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新進演奏家育成プロジェクト リサイタル・シリーズSAPPORO23 トリオ イリゼ・リサイタル」(2022/01/21)。札響の赤間さゆらさん(Vn)と小野木遼さん(Vc)、そして地元札幌でご活躍の水口真由さん(Pf)のピアノ三重奏団による演奏会。ロマン派のような感情が垣間見えたモーツァルトに、人知れず苦悩を抱えたメンデルスゾーン、そして朗らかで情熱的なブラームス。重厚な独墺プログラムの演奏は圧倒的な熱量で素晴らしかったです!

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。