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札幌交響楽団 第663回定期演奏会(日曜昼公演)(2024/09) レポート

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今回(2024年9月)の札響定期は、札響名誉音楽監督尾高忠明さん指揮による「2人のリヒャルト」の会でした。協奏曲のソリストは、札響とは2度目の共演となるラドヴァン・ヴラトコヴィチさん。R.シュトラウスのホルン協奏曲を、2年前(2022年5月)の「第1番」に続き、今回は「第2番」!前回の札響定期(2024年6月、急遽代役として指揮してくださいました)での大熱演が記憶に新しい尾高忠明さんと、2年ぶりのラドヴァン・ヴラトコヴィチさんとの再会を楽しみに、私は当日を迎えました。

札響公式youtubeの企画「札響プレイヤーズトーク」。今回(2024年9月)は、トランペット首席奏者の福田善亮さんとホルン首席奏者の山田圭祐さんによるトークです!2024年9月末で退団される山田さんは、しばらくはエキストラで札響に来てくださるとのこと。そして今回の定期は「いずれもホルン冥利に尽きる(!)」演目揃いなのだそうです。心して拝聴いたします!

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札幌交響楽団 第663回定期演奏会(日曜昼公演)

2024年09月15日(日)13:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
尾高 忠明<札響名誉音楽監督

【ホルン】
ラドヴァン・ヴラトコヴィチ

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島 高宏)

【曲目】
(ロビーコンサート)パーヴェル・ハース:弦楽四重奏曲第2番「猿山より」第4楽章 ワイルドナイト
(出演:ヴァイオリン:飯村真理、桐原宗生、ヴィオラ:櫨本朱音、チェロ:小野木遼、パーカッション:入川奨)

R.シュトラウス:13管楽器のためのセレナード
R.シュトラウス:ホルン協奏曲第2番

ソリストアンコール)ロッシーニ:狩のランデブー(ホルン四重奏版)

ワーグナー:「パルジファル前奏曲
ワーグナージークフリート牧歌
ワーグナー:「タンホイザー」序曲


尾高忠明さん指揮による札響の響き、ラドヴァン・ヴラトコヴィチさんの唯一無二の音を全身で浴びることができた、幸せな時間でした!前半リヒャルト・シュトラウスでは、作曲家の出世作となった「13管楽器のためのセレナード」で木管楽器たちの響きに心地よく浸れ、協奏曲ではソリストのヴラトコヴィチさんのホルンをたっぷり堪能できました。ヴラトコヴィチさんのホルンは、ヴラトコヴィチさん自身のお声そのもの!と私には思えます。豊潤で温かな響きは、それこそご自分の声のように無理なく発していると感じられ、優しく歌うようでも語りかけてくるようでもあって、すっと気持ちに入ってくる良さ!共演するオケはソリストと気持ちを1つにして、ごく自然に穏やかになったり盛り上げたりしていました。加えてオケの各ソロ(ホルンやオーボエ、チェロ等)の安定感!今回も幸せな共演を目の当たりにできて幸せです!また後半のリヒャルト・ワーグナーでは「交響的選曲」の良さと、大編成によるサウンドの厚みと壮大さを十二分に楽しむことができました。ただダイナミックなだけでなく、「愛」の存在が感じられる繊細さや細やかさもあったのが個人的にはうれしかったです。私は正直「2人のリヒャルト」に強い思い入れはなく(ごめんなさい!)、作品の背景も歌劇の内容自体もまったく知らないまま聴いた今回の演奏会。しかし感じるままに聴いても心揺さぶられたのは、やはり演奏のお力があればこそです。地元のオケが札響でよかったと改めて思います。いつもありがとうございます!

そして個人的には、今回の「ロビーコンサート」の素晴らしさも特筆したいです。もちろん毎回素敵な企画と演奏で楽しませて頂いていますが、今回は選曲の良さに加え、SNS上で1stヴァイオリン・飯村さんが解説してくださったことで、聴き手はさらに入り込むことができました。こんなにも非凡な才能を持つパーヴェル・ハースが、アウシュビッツで命を奪われたとは……。同時代のリヒャルト・シュトラウスは長生きして天寿を全うしたことや、リヒャルト・ワーグナーはそれこそナチスに持ち上げられたことを思うと、私はやり切れない気持ちになりました。私にとっては作曲家の名前からして初耳だった、パーヴェル・ハース。こんな機会がなければ、一生知らないままだったかもしれません。大変良い機会を作ってくださったことと、何より素晴らしい演奏に感謝です。


開演前のロビーコンサート。今回の演目はパーヴェル・ハースの弦楽四重奏曲第2番「猿山より」第4楽章 ワイルドナイト でした。弦楽四重奏の打楽器が加わる、珍しい編成!はじめ2ndヴァイオリンによるトレモロから入り、他の弦が競い合うように掠れた音(表現が的確ではないかも?)を発するのが強烈な印象!初めて体感する音楽にぞわっとしました。勢いあるリズミカルな流れにグイグイ引っ張られ、パーカッションが参戦するとさらにキレッキレな音楽に。一辺倒ではなく、様々な形のリズムや音が次々と登場し、私は目と耳が釘付けになりました。「お行儀の良い」イメージとはかけ離れた、ジャズのようでもロックのようでもある音楽は、血が騒ぐ感じですごく面白かったです!パーカッションが沈黙した中間部は、いきなり(と私は感じました)穏やかで美しい音楽に(1stヴァイオリン・飯村さんの解説によると、恋人に捧げた歌曲の抜粋とのこと)。弦楽四重奏によるゆったりとした流れは夕暮れ時を思わせ、ヴィオラ独奏は子守歌のようにも感じました。再び冒頭と同じ2ndヴァイオリンによるトレモロから始まる流れに。全員が思いっきり強奏して突き進む勢いと迫力、切れ味!一見カオスのようでありながら、全員がしっかり足並み揃えて進む演奏。キリリと締まった空気が超カッコイイ!すごいものを聴かせて頂きました!ありがとうございます!

前半はリヒャルト・シュトラウスです。1曲目は、R.シュトラウス「13管楽器のためのセレナード」。13の管楽器(フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、コントラファゴット1、ホルン4)にコントラバス1が加わった、13+1の編成でした。ホルンは後列に並び、舞台向かって左からフルート→クラリネットファゴットコントラファゴットオーボエの順で扇型に。コントラファゴットの後方にコントラバスが配置されました。指揮の尾高さんはこの曲のみ指揮台はナシで指揮。はじめの大らかで温かみのある管楽器の響きがなんとも素敵で、じんわり心に染み入りました。高音域のメロディを低音でぐっと支えるコントラファゴットコントラバスの存在感!明るさにやや陰りが差す変化から、感情が高ぶるように盛り上がっていく波が何度も!もちろんそれらも素敵でしたが、個人的にはその直後の少数精鋭で穏やかに演奏するところがツボでした。なんて純度の高い美しさ!また、個人的に特に印象深かったのは、オーボエソロとそれを他パートが温かく包み込んだところ、ホルンがゆったりと歌ったところ、終盤でのフルートソロです。10分程度の曲でしたが、木管たちが奏でる幸せな響きは心地よく、ずっと聴いていたいほどでした!

ソリストのラドヴァン・ヴラトコヴィチさんをお迎えして、2曲目は、R.シュトラウス「ホルン協奏曲第2番」。オケは12型(12-10-8-6-5)でしょうか?各木管は基本の2管で、金管はトランペット2、ホルン2。そしてティンパニの編成でした。第1楽章 温かくまろやかでどこまでも広がるホルンの音!ラドヴァン・ヴラトコヴィチさんのホルン独奏にたちまち心掴まれました。寄り添うオケの弦の澄んだ美しさ!この響きをkitaraで体感できる幸せを、私はしみじみ噛みしめました。オケのターンでの幸せな木管群の響きに心温まり、ホルン独奏とオケとの掛け合いはゆったり歌っていたりスキップするようだったりの変化が楽しい!そしてホルン独奏と会話するようなチェロ独奏が素敵すぎました!ほんの一瞬の登場でも、ソリストと自然と絡み合い空気を一変させる、その音と存在感!断然頼れる!ホルン独奏とオケが気持ちを共有して、ホルン独奏が勇ましく奏でたのをオケのトランペットが、ホルン独奏が少し哀しげだったのをオケのクラリネットがリフレインしたのが素敵でした。オケが穏やかになっていき、そのまま続けて第2楽章へ。 中低弦に導かれてオーボエファゴットがゆったり歌う、この入り方がすっと懐に入ってくる良さでした。オーボエが超素敵!独奏ホルンのとても温かな音色と穏やかなオケにゆったり浸れました。なおプログラムノート(R.シュトラウス研究の第一人者・広瀬大介先生による解説でした)によると、「家庭交響曲」からの引用と思われる部分があるとのことです。それに気づける素養は私にはないのですが、リラックスした雰囲気を感じ取ることはできました。第3楽章 パワフルで明るい独奏ホルンの良さ!どこまでも広がる世界を作る独奏とオケが呼応しながら、軽快に流れる音楽が楽しい。独奏ホルンが伸びやかに歌うところの温かさも素敵で、重なるオケが細かく音を連ねながら駆け足な感じで軽快さを演出していたのが印象的でした。来ました、ソリストとオケのホルンとの絡み!上と下が重なり合うことでその良さが倍増するのもホルンの醍醐味!また、オケの木管群と呼応しながら、木管のように音を転がした独奏ホルンの安定感ともちろんその響きが素敵でした。オケの弦と一緒に、タタッタタッ♪と弾むような演奏も楽しい!独奏ホルンが完全ソロで堂々たる響きを聴かせてくださってから、壮大で華やかなオケと一緒に駆け抜けた締めくくりが清々しい!ヴラトコヴィチさん自身のお声のようにも感じられた、ホルンの豊潤で温かな響き。そして独奏と気持ちを共有する札響との、優しく幸せな共演。無限に広がる幸せを体感できた私たちは幸せです!

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ソリストのラドヴァン・ヴラトコヴィチさんと一緒に、なんとホルンセクションの6名が舞台へ!ソリストアンコールは、ホルンアンサンブルによる演奏で、ロッシーニ「狩のランデブー」(ホルン四重奏版)。演奏前にヴラトコヴィチさんから口頭にて曲目の案内と説明がありました。英語でしたが、内容の日本語訳がアンコールボードの横に掲示され、正確に内容を知ることができました(ありがとうございます!)。ロッシーニR.シュトラウスもお父さんがホルン奏者で、「ホルンの音色を聴きながら育った」とのことです。ヴラトコヴィチさんによるホルンの第一声のインパクト!それに続くホルン六重奏の厚みと華やかさ!どこまでも広がる大地と空を思わせる響きに胸がすく思いでした。お互いに掛け合ったり重なったりするチームワークの良さと、何より音の温かさ優しさが素敵!壮大な世界でも、時折囁くようになることもあり、表情豊かな演奏でした。とても貴重で素晴らしい演奏を聴かせて頂きました!ホルンセクションとの共演という粋な計らいと、何よりホルン愛あふれる素敵な演奏をありがとうございます!


後半はリヒャルト・ワーグナーです。1曲目は、ワーグナーパルジファル前奏曲。なんと今回が札響初演とのことです。オケは16型(16-14-12-10-8)の大所帯!管楽器はフルート3、オーボエ3、イングリッシュホルン1、クラリネット3、ファゴット3、コントラファゴット1、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、チューバ1。そしてティンパニの編成でした。弦(ヴァイオリンの半プルトとチェロ?以降も同パート内で分業するシーンがあったのが印象的でした)による、落ち着いた音色でのゆったりとした物語の幕開けがすごく素敵でした!トロンボーンの温かさ、大らかなトランペットは祝福してくれているよう!身も心も委ねられる、大きな愛を感じました。大きな広がりからの、フルートの美しさ!しかし最初からの流れを再び繰り返した際は、幸せに陰りが見えたように変化し、壮大な世界がとても繊細に創りあげられている!と感じました。弦が沈黙し、金管の堂々たる響きとティンパニの力強さ!その雄大な音楽に、私は思わず身震い。弦の清らかさ、木管の優しさに、心が洗われました。哀しげで深みあるイングリッシュホルンの存在感!その哀しみ(弦の半プルトトレモロがドラマチック!)から、光が見える(木管の天国的な響き!)締めくくりへ。そのスケールの大きさを体感出来たことと、同時に純粋でひたむきな精神に触れることができた、約15分の壮大な物語世界への旅でした。

2曲目は、ワーグナージークフリート牧歌」。オケは弦の人数が少し減り(14型でしょうか?それでも室内オケを想定して書かれた作品にしては大きな編成だと私は思いました)、管楽器はフルート1、オーボエ1、クラリネット2、ファゴット1、ホルン3、トランペット1。はじめのゆったりとした弦楽アンサンブルの美しさ優しさ!ささやくように歌う高音メインから、次第に低弦が存在感を増してきたのが印象的でした。管楽器が加わると、管と弦が甘く語り合っているように呼応し合うのがジーンと来ました。これは愛し合う夫婦の語らいなのかも?個人的にはホルンの温かみが印象深かったです。次第に盛り上がっていくところは、響きの厚みと壮大に広がる世界を堪能できました。大所帯の強みですね!オーボエクラリネットがスローなダンスをするように歌うのが素敵!ヴァイオリンのトレモロや弦が音階を上下するのがドラマチック。弦楽合奏に乗って幸せに歌うオーボエ、弦が沈黙しての大らかで温かなホルンソロがすごく素敵でした!盛り上がりのところでようやくトランペットが登場。華やかで輝かしい!フルートは幸せいっぱいな感じ!再び弦楽アンサンブルになってからは、チェロが低音でメロディをゆったり歌ったのがぐっと来ました。管楽器が優しく音をのばしてフェードアウトするラストまで、室内楽的な親密で温かい音楽がとっても素敵でした!

3曲目は、ワーグナータンホイザー」序曲。オケは再び16型へ。木管は基本の2管にピッコロ1が加わり、金管はホルン4、トランペット3、トロンボーン3、チューバ1。そしてティンパニとトライアングル、タンブリン、シンバルの編成でした。冒頭、ホルンと木管群による「巡礼の合唱のテーマ」(「札響プレイヤーズトーク」で話題となっていました)がなんて素敵なこと!敬虔さと人の血が通った温かみが感じられ、この世界のすべてを包み込んでくれそうな大きな存在!続いたチェロパートから始まる弦楽合奏の優美さと貫禄!私は早くも胸いっぱいに。弦がタッタタッタタッタ♪と弾みながら上昇し、金管群が雄大に歌うのは鳥肌モノでした!大編成オケのこの迫力と厚み!ティンパニ連打が超カッコイイ!自分がイメージするワーグナー「らしい」音楽がこの時まさに目の前に現れ、私は静かに感激していました。低弦が大らかに歌い、ヴィオラがタッタタッタタッタ♪を奏で、クラリネット二重奏につながる流れがまた素敵すぎて!壮大な世界がどこまでも広がっていくように感じられました。次のシーンでは木管群が跳ねるように歌い、クラリネットもコロコロ歌うのが楽しく、直前のシーンとのギャップが印象深かったです。ヴィオラから入った、明るい弦が中心の盛り上がりは、祝祭を思わせる華やかさ!冒頭と同じテーマが帰ってきて、ここでもホルンの良さにハッとさせられました。ABAの3部形式でも、2回目のAのスケールは桁違いで、金管群の力強さも重なる弦の厚みも、とてつもない大迫力!16型の大編成オケが全力かつきっちりと創りあげる、壮大なサウンドを全身で浴びることができました!すごい!

カーテンコール。今月末で退団されるホルン首席奏者の山田圭祐さんへ花束贈呈がありました(プレゼンターはホルン奏者の折笠さん。花束を背中に隠して山田さんへ近づき、パッと差し出して、会場が和みました)。10年にわたり、札響を支えてくださりありがとうございます!札幌は少し寂しくなりますが、新天地でのますますのご活躍をお祈りいたします。時々は札響にも戻ってきてくださいませ。


前回の札響定期のレポートです。尾高忠明さんが急遽代役として指揮くださいました。「札幌交響楽団 第662回定期演奏会」(土曜夕公演は2024/06/29)。チャイコフスキーvn協奏曲は、安定感ある金川真弓さんのソロと交響曲的なオケとの密で幸せな協演。「新世界より」は、当たり前を超越する「新たな世界」を切り拓いた超快演!札響名誉音楽監督尾高忠明さん&札響の実力とポテンシャルの高さは、私達聴き手の想像をはるかに超越するものでした。

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この日の1週間前に聴いた公演です。R.シュトラウスの交響的幻想曲「イタリアから」第4楽章「ナポリ人の生活」が取り上げられました。「札幌交響楽団 森の響フレンド名曲コンサート~鉄路は続くよ、どこまでも:続・オーケストラで出発進行!」(2024/09/07)。バーンスタインのミュージカル曲や市川紗椰さんの朗読付きブリテン等の珍しい曲の演奏が聴け、誰もが知る歌のベイビーブーによる歌唱で心温まり、大マエストロである秋山和慶さんがニコニコ笑顔で愛する鉄道の事を語る!「特急札響号」による鉄道の旅、今回もとっても楽しかったです!

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。