自由にしかし楽しく!クラシック音楽

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札響七飯公演(2022/12) レポート

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2022年の聴き納めは札響。開催地は札幌から遠く離れた七飯町です!北海道はでっかいどうの隅々まで出向く我が町のオケを追いかけて、一泊二日の遠征に行ってまいりました(今回も気持ちよく送り出してくれた家族に感謝です)。なお七飯町での札響の公演は2017年以来5年ぶりとのこと。また翌日には同じプログラムにて江差町でも公演が開催されました。

札響七飯公演
2022年12月26日(月)18:00~ 七飯町文化センター パイオニアホール

【指揮】
広上 淳一(札響友情指揮者)

【チェロ】
石川 祐支(札響首席奏者)

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島 高宏)

【曲目】
モーツァルトアイネ・クライネ・ナハトムジーク
ハイドン:チェロ協奏曲第1番

ベートーヴェン交響曲第7番

(アンコール)J.S.バッハG線上のアリア


真冬の北海道で超アツイ演奏!最高の一年の締めくくりになりました!私にとってはおなじみの札響による定番曲たちの演奏で、こんなにも楽しめたのは本当にうれしかったです。地方の会場にて普段コンサートを聴く機会が少ないお客さん達を前に、本気の大熱演を披露する――それを当たり前にやる札響はすごいと、私はしみじみ思いました。地元札幌、いえ地元北海道が誇れるオケ!なんて素敵なんでしょう!また、お客さん達がとても真剣に聴き入っていたのも印象に残っています。待望の地元開催で、この出会いを大切に思っているかたが大勢いらっしゃるのですね。私は会場の空気を肌で感じながら、自分はここ最近ここまで一生懸命になれていたっけ……と、供給過多かもしれない札幌で贅沢している我が身を省みたほど。そして今回の会場は、音響・視界ともに良好なとても良いホールだったのもよかったです。札響はどのような環境でも見事な演奏を聴かせてくださいますが、強弱のメリハリや繊細な音がキレイに響くホールなら、札響サウンドはより一層輝けるはず。地方のこんな施設をもっと活用して、助成も活かし、地方の皆様にリーズナブルにコンサートを楽しんで頂ける機会が少しでも増えるといいなと、私は勝手ながらそう思いました。

生命力あふれる大熱演のベト7、透明で美しい弦の本領発揮のアイネ・クライネ・ナハトムジーク。いずれも私は札響による演奏で何度も聴いてきた演目でしたが、今回の丁寧でメリハリがはっきりした演奏を聴き、改めてその良さを実感できました。そしてハイドンのチェロ協奏曲第1番です!おそらくチェロにとってはオーソドックスなレパートリーで、バロック期の薫りもするレトロなイメージ(あくまで個人的な印象です)のこの曲が、もう超素敵で超カッコイイ!独奏チェロは時にロックのようでも映画音楽のようでもあり、目の前で生み出される魅力あふれる音楽にホレボレしました。特にカデンツァでの自由で生き生きとした演奏の素晴らしさは忘れられません。また、もちろん演奏は真剣そのものでしたが、舞台に登場した時のソリスト・石川さんはリラックスした印象で(まずコンマスの田島さんと握手した後、指揮の広上さんと握手したかったのに広上さんが向こうを向いていてすれ違い、笑いが起きたりも)、演奏を楽しもうという心意気が感じられました。その独奏と呼吸を合わせて密に絡むオケがまた良すぎて、とても幸せな協演だったとも感じました。ずっと一緒に演奏してきたオケメンバー同士ならではの信頼感ある協演、胸アツです!今後、札幌での再協演(どんな演目でも歓迎です♪)をぜひお待ちしています。


1曲目は、弦楽アンサンブルによるモーツァルトアイネ・クライネ・ナハトムジーク。繰り返しは省かずに演奏していたと思います。また弦5部の人数は8-7-6-5-4で、以降の演目でも固定でした。第1楽章、思いっきり華やかな冒頭からぱっと会場の空気が変わり、掴みはバッチリOK!軽快で強弱のメリハリが効いた演奏はホールに柔らかく響いて、心地良さに癒やされました。第2楽章は、はじめはとてもゆったりした流れで、1stヴァイオリンを支える2ndヴァイオリンがよく聞こえたのが印象に残っています。また中盤の短調になるところは、1stヴァイオリンと低弦の密な対話に、支える2ndヴァイオリンとヴィオラのざわめきもすごく良かったです!第3楽章、はじめの一歩一歩ステップを踏むようなところでは、指揮の広上さんの動きに目が釘付けになりました。なんだかマリオネットみたいなカクカクした動きで、いつもよりさらに輪をかけて可愛らしかったです。続く滑らかな流れでは、広上さんはオケと一緒にワルツを踊っているように身体を揺らしていらっしゃいました。もちろんオケは指揮に応えて変化のある演奏を聴かせてくださいました。第4楽章、まるでスキャットのようなリズミカルで軽妙な掛け合いが楽しい!時々パンチの効いた低音が入るところも絶妙なタイミングで気持ちよかったです。演奏機会がとても多い「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」。やはり良い曲だとしみじみ思ったのと同時に、札響の弦の良さを再認識。名刺代わりの1曲目で、会場の空気も良い感じに温まったようでした。

2曲目はハイドン「チェロ協奏曲第1番」。首席チェロ奏者の石川祐支さんが今回はソリストとして登場です。オケは1曲目と同じ弦に、オーボエとホルンが2つずつ加わりました。第1楽章、まずはオケのターン。先程のモーツァルトに引けを取らない華やかな演奏に聴き入りました。そして独奏チェロ登場。バーンと低音を重ねた掴みの音からインパクト大で気持ちを全部持って行かれました!ああ来てよかった!何度かあった独奏チェロの登場シーンは、いずれも表情が違っていて、次はどんなふうに来るのかと期待するのも楽しかったです。高音域で高速なのに、明るく優雅に歌う独奏チェロが超素敵!オケはピアニッシモでリズムを作るような演奏にて包み込んだり、ごく自然にメインとサブが入れ替わったりと、独奏チェロとの密なやりとりがとても素敵でした。また、独奏チェロがうねる低音を響かせるところはまるでロックのベースのようで超カッコイイ!かと思うと高音で切なく歌うところに心奪われたりと、一時も目と耳が離せない!そして終盤のカデンツァがすごかったです。今まで出てきたメロディを取り入れながらも即興的で自由な感じで、とても新鮮!もしかするとハイドンのオリジナルのカデンツァにアレンジを加えていたかも?(違っていたら申し訳ありません)。第2楽章、はじめのオケのターンではゆったりした弦楽合奏の優しい響きに癒やされました。そこに滑らかに重なるように独奏チェロが登場。ゆったり美しく歌う独奏チェロは、ただ穏やかなだけでなく喜びも悲しみも内に秘めているような奥行きが感じられました。オケが独奏チェロを見守るようにごく控えめな合いの手を入れていたのが良かったです。終盤のカデンツァでは、水を打ったような静寂の中で独奏チェロがかすれる高音で歌ったのにぐっと来ました!再び快活になる第3楽章は、オケも快速なら独奏チェロも超高速で、独奏チェロは超絶技巧もりもりなのにヴァイオリンを弾くような軽やかさ!時折チェロらしい低音がアクセントで入ったり、映画音楽のように切なく歌うところがあったりと、見どころ聴きどころしかない演奏にただただ引き込まれました。オケが明るく駆け抜けたラストまで、とても清々しい演奏!私は気分爽快になりました!ソリストとオケの厚い信頼関係があってこその、思いきりが良く生き生きとした独奏と密なアンサンブル。これほどまでの幸せな協演をその場で聴けた私達は幸せです!

休憩後はベートーヴェン交響曲第7番」。第1楽章、冒頭のパン!と力強い一音と続くオーボエに早速心掴まれ、個人的には意外にお久しぶりだったベト7にワクワク。高音弦と低弦が交互に音階を駆け上るところで少しずつ気分も上昇しました。ヴァイオリンとフルートがこだまするところが丁寧で、続くフルートが歌うところの多幸感が素敵!全員参加の明るく歌うところでは文句なしにテンションあがりました。また今回はピアニッシモからクレッシェンドでフォルテッシモになる流れに強弱の波がしっかりと感じられ、キレイな響きだったのがとても印象的でした。ホームのkitaraではない地方の会場でも札響サウンドはすごい!続いて、この曲で唯一の短調である第2楽章へ。ちなみに私は第2楽章が好きです。木管群の第一声の後、中低弦から入り、2nd続いて1stヴァイオリンが参戦した厳かな葬送行進曲に聴き入りました。全員参加になってからの大迫力!そして今回、はっとさせられたのは後半の管楽器群が穏やかに歌ったところです。第九の第3楽章の天国的な響きにも通じるような、温かな音色がとっても素敵!私は、広上さん指揮による今年の「札響の第九」を聞き逃してしまったのを少し後悔しました。また、例えば1stヴァイオリンとヴィオラが会話するようだったり、チェロが3対2の2つのパートに別れるところがあったりといった、弦の緻密な仕事ぶりが目を引きました。第3楽章、リズミカルでノリノリな演奏が楽しい!ティンパニがキレッキレ!木管群が穏やかに歌ったところから大合奏への流れが爽快でした。トランペットがカッコイイ!華やかに楽章締めくくった後、今回はここで小休止を挟み、第4楽章へ。華々しい出だしから大熱演!2拍子のリズムがノリノリで、弦リレーからの全員参加の全力強奏がアツイ!少しクールダウンするところでエネルギーを溜めて、盛り上がりの波を作る流れはずっと繋がっていて、その生き生きとしたリズムに聴いている私達の血も騒ぎました。フィナーレはさらに輪をかけて強奏になって、その大熱演には圧倒されっぱなし。ジャカジャン!ジャカジャン!の締めくくりまで、ものすごい生命力あふれる演奏でした。ああこの日の演奏が聴けてよかった!どんな場所でもベストを尽くす札響って、本当にスゴイです。そして年の瀬にベートーヴェン、イイですね!この生命力この大熱演は、普段クラシック音楽になじみがないかた達にも喜ばれたに違いありません。

カーテンコールの後、指揮の広上さんがマイクなしでごあいさつ。「来年も皆様にとって幸多き一年となりますように。本日はありがとうございました」と仰って、そのままアンコールへ。J.S.バッハG線上のアリア、弦楽アンサンブルによる演奏でした。先ほどまでの熱さから一転、しっとり美しい響きが心に染み入ります。澄んだ高音弦に、ぐっと深い通奏低音の低弦との重なりがとっても素敵!コントラバスがピッチカートと弦を擦る2パートに別れたところがあったのを発見!おなじみの曲を札響による丁寧な演奏で聴けてうれしかったです。広上さん、札響の皆様、アンコールに至るまで心を込めた素晴らしい演奏をありがとうございました!オケの皆様にとっても来年は幸多き一年となりますように。これからもずっと追いかけます!


本拠地・札幌kitaraでの定期演奏会。札響の弦セクションの底力を再確認したのがこちら。「札幌交響楽団 第646回定期演奏会」(土曜夜公演は2022/06/25)。シトコヴェツキーさん編曲の弦楽合奏ゴルトベルク変奏曲は、緻密かつ心に染み入る演奏でバッハの偉大さを再認識。「白鳥の湖」では、美メロだけじゃないチャイコフスキーの骨太な魅力も堪能できました。

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ハイドン&チェロといえばこちら。「札幌交響楽団 第648回定期演奏会」(土曜夜公演は2022/10/22)。首席指揮者のバーメルトさんが今年5月以来、久しぶりに登場!シーズンテーマ「水」のメンデルスゾーンソリスト佐藤晴真さんとオケの緻密なアンサンブルによる古風な響きのC.P.E バッハ。そしてハイドン「戦時のミサ」では人の声がストレートに心に響き、今の時代に大切な思いを共有できました。

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今年(2022年)は、初めて泊まりがけの遠征をした年でもありました。「仙台フィルハーモニー管弦楽団 第355回定期演奏会」(金曜夜公演は2022/05/06)。指揮・飯守泰次郎さんのフィナーレ第1弾!ソリスト菊池洋子さんのピアノは若き日のブラームスそのもので、私はようやくピアコン1番の良さに気づけました。マエストロとの信頼関係が窺えるブラ4の重厚感と歌心も素敵でした。

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弊ブログの読者の皆様、今年もありがとうございました。お読みくださっていること、励みになります。来年も引き続きよろしくお願いいたします。

最後までおつきあい頂きありがとうございました。