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伊達メセナ協会創立30周年記念事業として、北海道伊達市にて札幌交響楽団のコンサートが開催されました。協奏曲のソリストは、私達の札響コンミス・会田莉凡さん!正指揮者・川瀬賢太郎さんの指揮で、あの「運命」も聴ける!これは絶対に聴きたい!と、私はJRの特急を使って日帰りプチ遠征です。当日の会場は8割ほどの席が埋まる盛況ぶりでした。
伊達メセナ協会創立30周年記念事業 札幌交響楽団コンサート
2024年07月13日(土)15:00~ だて歴史の杜カルチャーセンター
【指揮】
川瀬 賢太郎<正指揮者>
【独奏】
会田 莉凡(ヴァイオリン) ※札響コンサートマスター
【曲目】
モーツァルト:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲
ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲 第1番
ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」
(アンコール)ハイドン:交響曲第94番「驚愕」 より 第2楽章
会う度に素敵なサプライズが待っていて、今までよりもっと好きになる札響サウンドは、この日も私を夢中にさせてくれました!札幌からプチ遠征して本当によかった!4月のhitaru定期にて衝撃を受けたブルッフ(この時のソリストは大巨匠のボリス・ベルキンさん)を会田莉凡さんが弾いてくださる事も、王道なのに案外聴く機会が少ないベートーヴェン「運命」を聴けるのも、とても楽しみにしていた私。当然期待ゲージMAXで臨むわけですが、こちらの想像を当たり前のように超えた上でさらに驚かせてくださるのですから、指揮の川瀬賢太郎さんと札響には絶対に敵いません!日頃から数多くの演奏会を聴く機会に恵まれている私が、地元のかた達のための地方公演にまで押しかけて行くのは、「欲張り」だなと自分でも思います。それでも追いかけずにはいられない!会田莉凡さんの音と表現の幅広さ、カワケンさん流「苦悩から歓喜へ」の明快さ――なんて言葉で単純化など到底できない、この日限りのスペシャルな出会いは、絶対に体感しなくちゃわからないから!また私が言うのは大変おこがましいのですが、地元のかた達が熱心に聴き入っていて、終演後は晴れやかな表情をされていたのがとっても素敵でした。通い慣れている人もそうでない人も、誰にとってもコンサートは一期一会。それをかけがえのない体験にしてくださっているのは、やはりオケの皆様です。どんな場所にも札響サウンドをまっすぐに届けてくださり、ありがとうございます。札響はこの日の前日にも、ほぼ同一のプログラムで函館にて公演を行ったと聞いています。いつも北海道はでっかいどうの隅々まで巡ってくださっている事に頭が下がります。札幌のみならず、「地元北海道が誇るオケ」として、これからもどうぞよろしくお願いいたします。
会場となった「だて歴史の杜カルチャーセンター」、とても良いホールでした!大音量を遠慮無く鳴らせて、弱音もキレイに響く、音響の良さ。ソリストもオケものびのびと演奏できたのでは?施設自体もキレイで空調の効きは良好で、私は気持ち良く過ごすことができました。また終演後は、お隣にあった道の駅でお土産を買うこともできました。初めての土地を訪れるのも遠征の楽しみの1つ。私はこれからも可能な限り地方公演を追いかけたいと思います。
オケの皆様と指揮の川瀬さんが舞台へ。弦は12型でしょうか?ヴァイオリンの正確な人数は分かりませんでしたが、ヴィオラ8、チェロ6、コントラバス5で、最初から最後まで固定でした。また、管はそれぞれ2管(金管はホルンおよびトランペット)、そしてティンパニの編成。1曲目は、モーツァルトの歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲。はじめから大音量の重厚なオケにガツンとやられました!またフレーズ最後に残った低弦の重厚な響きがぐっと来て、同時にホールの音響の良さがわかりました。厳かな弦に美しい木管群の良さ。ここぞというときに登場する、ティンパニの連打がドラマチック!明るい感じになってからは、金管群が華やか!弦の明るさとテンポの良さに、私は「アイネクライネ・ナハトムジーク」をつい連想したりも。ヴァイオリンのささやくような演奏の響きがキレイで、ここでもホールの音響の良さがわかりました。全部がクライマックスの華やかなオペラ序曲に気分がアガる!はじめの1曲目で、オケの厚みも各パートの良さも、加えてホールの音響の良さも味わうことができました。
オケにホルンが追加され、ホルンは4つに。ソリストの会田莉凡さん(衣装は、オーガンジー素材で上半身にスパンコールをあしらった純白のドレス!)をお迎えして、2曲目はブルッフ「ヴァイオリン協奏曲 第1番」。すべての楽章を続けての演奏でした。第1楽章 ごく小さな音のティンパニに誘われ、哀しく歌う木管群による序奏にゾクッとしました。ヴァイオリン独奏の最初の1音の深み!エネルギーを内に秘め、じっくりと音階を上っていく独奏は、最初からインパクト絶大でした。消えゆく高音に吸い込まれる!壮大なオケがぐわっと飲み込み、低弦ピッチカートの鼓動が渋い&ゾクゾク!そこに乗った独奏は、重音を繰り返しながら滑らかにもキレッキレにもなって、気迫に満ちているのに時に儚げにもなって、万華鏡のように様々な表情を見せてくれるのが素晴らしく、聴き手は一時たりとも耳と目が離せなくなりました。独奏がゆったり歌うところでは、特に低音域の思慮深さを感じる音色が印象深かったです。独奏がどんどん加速しながら音階を上下したり駆け上ったりする演奏がすごい!ブレがまったく感じられない軸の強固さ!引き継いだオケの、ガツンとものすごい盛り上がりが超絶気持ちイイ!この壮大さ重厚さ、まるで交響曲のようで痺れました。オケの弦が美しく穏やかにフェードアウトしていき、次の楽章へつなげる流れがすごく素敵!第2楽章 オケの弦の穏やかな広がりに重なった、低めの音域でじっくり歌う独奏がなんて温かで美しい……ひとり物思いにふけっているようにも感じられた、ここの独奏に私は胸がいっぱいになりました。高音域でたっぷり歌う独奏は芯のある美しさ!幸せな響きの木管群や、世界を広げるホルン、さりげなくアクセントをつけたコントラバスのピッチカート等、独奏と気持ちを共有するオケの仕事ぶりは愛が感じられ、とっても素敵でした。また個人的にとても胸打たれたのは、ごく小さな音のティンパニに誘われ登場した、オケのヴァイオリンが幸せなメロディを歌ったところです。うんと優しくて美しくて、思わず涙。これこそ札響の音色……私はこれが好きなんだと改めて実感しました。続いた独奏ヴァイオリンは、楽章のはじめの時よりも少し顔をあげて前向きになったような、繊細な変化が感じられました。寄り添うチェロの温かさ!独奏のトレモロに重なって、オケが力強く変化したのが胸熱!再び登場した独奏は、はっきり前向きになっていて、超高音で美しく歌うのはとても力がみなぎっているように感じました。第3楽章 ヴィオラのトレモロによる序奏に引き込まれ、次第に盛り上がっていくオケにゾクゾク。独奏がぱっと登場。華やかな音色に舞曲のリズム、目が覚めるインパクトでした!この速さで、高音も低音も細かな音がすべてくっきり浮かび上がる、切れ味抜群の演奏がすごい!引き継いだオケの大盛り上がりが清々しい!高音域で高速かつ流麗に進む独奏はリズミカルで、おそらく演奏はとても大変にもかかわらず、ソリストの会田さんと指揮の川瀬さんはアイコンタクトしてスマイルし合っていたのにオドロキ!演奏を心から楽しんでいらっしゃるのが伝わってきました。オケの壮大なメロディを引き継いだ独奏が、低めの音程のふくよかな音色でゆったり歌うのは貫禄たっぷりで、しみじみ聴き入りました。華やかな独奏と壮大なオケが、舞曲のメロディを交互にやり取りしながら明るくぐいぐい進むのが快感!そして、独奏が一気にアクセル踏み込んで、オケと一緒に華やかな締めくくりへ向かった流れが最高に気持ちよかったです!ああなんて幸せな協演!私達の札響コンミス・会田莉凡さんカッコ良すぎ!そしてオケの包容力が素晴らしい!この場にいられた私達は幸せです!
カーテンコール。ソリストの会田さんは何度も舞台へ戻ってきてくださり、その度に会場は拍手の嵐となりました。指揮の川瀬さんがなかなか出てきて下さらず、ついに最後は会田さんが川瀬さんの手を引いて、半ば無理矢理(!?)舞台へ引っ張り出す力業(楽しい!)。ソリストの会田さんはもちろんのこと、指揮の川瀬さんも札響の皆様も、このすっごい音楽を創りあげてくださったすべての皆様に大拍手です!最高の協演に出会えた事に感謝!しかし「最高」を塗り替えていく、これから先どんな演奏に出会えるのかも、とても楽しみにしています!
余談ですが……後半が始まる直前、間もなく開演を知らせるブザー音がけたたましくて、私は心臓止まるかと思いました(大汗)。もう少し音量を下げるか、あるいは穏やかなチャイムに変更して頂けると、来場者を徒に驚かせずに済むかと存じます。ご参考までに。
後半。オケの編成は前半モーツァルトでの基本の2管に、トロンボーン2、バストロンボーン1、コントラファゴット1、ピッコロ1が加わりました。おなじみベートーヴェンの交響曲第5番「運命」。第1楽章 (ン)ジャジャジャーン!ジャジャジャーン!と、あまりにも有名なメロディの重厚な出だしに身震い。はじめにガツンと来て聴き手の気持ちを掴んだオケ、さすがです。頼りにしています!深刻な音楽は重量感あって、それでもサクサク快速で進み(と個人的には感じました)、勢いが快感でした。弱音から次第に盛り上がって強奏になる波が何度もあり、その度にゾクゾク。深刻なシーンでの弦のシャープさと厚みはさすがの貫禄!華やかな盛り上がりでのティンパニ、ホルンがカッコイイ!そして私がハッとさせられたのは、オケのジャーン!の後に浮かび上がってきたオーボエソロです。暗闇の中で蝋燭の火がぽっと点ったかのようで、ほのかだけどとても存在感がありました。瞬時に空気を変えた、鮮やかな差し色!これを境に、深刻な音楽にやや明るい光がさしてきたと私は感じました。前半では勇ましいホルンが担当したメロディをファゴットが引き受け、フルートが存在感を増し、同じメロディの繰り返しでも色合いが変化したのが素敵!第2楽章 こちらは比較的ゆったりしたテンポと感じました。中低弦による始まりの良さ!新時代の幕開けを思わせる、大らかさ美しさにぐっと来ました。木管群のみでの演奏は優しく柔らかく、とても幸せな感じ!全員合奏の盛り上がりに後に、重低音でシメてくれたコントラバスが好きすぎます。もう超絶好き、愛してる!トランペットは華やかで、温かな余韻が素敵!またメロディをはじめに低弦、続いてヴァイオリンが演奏したところは、親しい男女の穏やかな会話のようにも感じられ、その優しさ温かさが心に染み入りました。各木管ソロの澄んだ美しさは、この世の春!弦のみ、木管のみのシーンが何度か登場して、それぞれの美しさと音色の良さをじっくり味わえたのがうれしかったです。第3楽章 低弦による重厚な出だしにゾクッとしました。ホルンの壮大さがすごい!深刻な弦、ズンズン来るリズム!強弱のメリハリくっきりなのが気持ちよかったです。低弦から始まり、明るく盛り上がっていく弦リレーがキレッキレで超カッコイイ!一切迷いの無いベートーヴェンらしさが感じられて、清々しい気持ちになりました。ピッチカートのリズムの良さ!弱音から少しずつエネルギーを溜めながら次第に盛り上がって、きた来たキター!そのまま続けて第4楽章へ。 大音量で突き抜けた、とんでもない盛り上がり!このド迫力!なんてこと!事前予想をはるかに超えた、ありえないほどの感情大爆発は、宇宙誕生のビッグバンにだって負けないスケールとエネルギー!聴き手は打ちのめされ、テンションは最高潮に達しました。苦悩から歓喜へ。初登場のトロンボーンの底力たるや!しかし強奏一辺倒ではなく、弱音はしっかり音量を下げ(キレイに響くホールでよかった!)、そこから再びぐーっと盛り上がっていく流れが何度も!超気持ちイイ!第3楽章の回想のようなシーンがあったのが印象に残っています。クライマックスに登場したピッコロは天国的で幸せな響き!骨太の低弦が幸せなメロディを奏でたのが素敵すぎ!金管群が華々しく盛り上げ、オケ全体の強奏でジャン!ジャン!ジャン!と何度も繰り返す、この執拗さがベートーヴェン「らしく」て好き。ジャーン!と堂々たる締めくくりまで、突き抜けてパワフルかつ明快な演奏はめちゃくちゃ気分爽快でした!カワケンさん指揮×札響による「運命」。定番曲の堂々たる演奏でこんなにも私達を驚かせてくださるなんて、最高です!演奏後、指揮の川瀬さんは、最初にオーボエトップ(今回は副首席奏者の浅原由香さん)、続いて各管楽器のメンバーに順に起立を促し、讃えられました。
カーテンコール。指揮の川瀬さんがウルウルお目目で客席を見つめて、クスッと笑いが起きました。ドキドキ、期待しちゃっていいのですよね……!そして曲目は特に告げられずに、アンコールの演奏へ。もしやこれは!私は演奏が始まるとすぐにピンと来ました。ハイドンの交響曲第94番「驚愕」 より 第2楽章。はじめは弦のみでささやくように演奏。規則正しく刻まれる小さな音に耳をそばだてて、いつ来るかな?いつかな?とドキドキしながら待っていた私。ついに「ジャン!」と大音量の全員合奏が!わーい、びっくり!超うれしい!しかし私がおぼろげに知っていたのはここまでで、以降は初めて(!)の音楽を楽しみました。低弦が効いた骨太なところあり、ヴァイオリンのみの上品なところもありと、表情豊かな音楽は聴き所しかない!フルートをはじめ木管群が美しかったり可愛らしかったり、金管群とティンパニは華やかに盛り上げてくれ、弦はピアニッシシシ……モまで音量を下げるところは限界まで下げてと、本プログラムの演奏にて良かったところが全部入っている演奏に良い意味で驚かされました。幸せなダンスのようなリズムとメロディが心地よく、流麗なところでは指揮の川瀬さんが軽やかにワルツを踊っているような身振り!身のこなしがとてもエレガントで、失礼ながらビックリでした。素敵なサプライズがいっぱいの素敵なアンコールの演奏、最後にほっこりできました。
何度も舞台へ戻ってきてくださった指揮の川瀬さんは、オケ全体を讃え、オケの弦の最前列メンバー(首席・副首席)と順に握手(後方にいたコントラバスパートとはエア握手)を交わしました。最後に川瀬さんが両手で小さくバイバイの仕草。会場が和み、会はお開きとなりました。札幌からプチ遠征してきて、本当によかったです。暑さを吹き飛ばす、熱いアツイ大熱演をありがとうございます!今までもそしてこれからも愛しています。地の果てまでも追いかけたい!
王道プログラムの演奏会はこちらも。「札幌交響楽団 第662回定期演奏会」(土曜夕公演は2024/06/29)。チャイコフスキーvn協奏曲は、安定感ある金川真弓さんのソロと交響曲的なオケとの密で幸せな協演。「新世界より」は、当たり前を超越する「新たな世界」を切り拓いた超快演!札響名誉音楽監督・尾高忠明さん&札響の実力とポテンシャルの高さは、私達聴き手の想像をはるかに超越するものでした。
最後までおつきあい頂きありがとうございました。