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札幌交響楽団 in ふきのとうホール Vol.4(2023/02) レポート

https://www.rokkatei.co.jp/wp-content/uploads/2022/12/230214.pdf

↑今回の演奏会チラシです。 ※pdfファイルです。

昨年度にコロナ禍で中止となった企画が今年ついに実現しました。「首席指揮者 マティアス・バーメルト登場!」、演目はハイドン交響曲、朝・昼・晩!バーメルトさん・札響・ふきのとうホールという、個人的な推し要素が三拍子揃った演奏会。私は企画発表当初からこの日を迎えるのをとても楽しみにしていました。


札幌交響楽団 in ふきのとうホール Vol.4
2023年02月14日(火)19:00~ ふきのとうホール

【指揮】
マティアス・バーメルト

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島 高宏)

【曲目】 ※演奏順
J.ハイドン交響曲第8番「晩」 Hob.I:8
J.ハイドン交響曲第7番「昼」 Hob.I:7
J.ハイドン交響曲第6番「朝」 Hob.I:6


なんて親密で心温まる演奏会!バーメルトさん指揮による札響の演奏は、つい先日のシューベルト「ザ・グレイト」の堂々たる演奏が記憶に新しく、東京公演でも耳の肥えた首都圏の聴衆たちに大絶賛されていました。また昨年秋にはハイドンの「戦時のミサ」を取り上げ、崇高・壮大な世界を私達に見せてくださいました。そんないわば「オフィシャル」な演奏に対して、今回は「プライベート」寄りとも言える小編成オケでの演奏。フタを開けてみるまでは未知数でしたが、バーメルトさん×札響による演奏は室内オーケストラでも大変素晴らしかったです!今回は各パートが際立つ室内楽的な良さに加えて、やはりオーケストラ流のアンサンブルの良さもあり、小編成ならではの魅力満載。しかも最高の音響を誇るふきのとうホールで聴けるという贅沢!もしかすると音の出し方もホールに合わせて工夫されていたのでしょうか?個人的な感覚では、包み込まれるような温かな響きが感じられ、とても心地良かったです。どんな演目やシーンでも私達にベストな演奏を聴かせてくださる、札響の底知れぬお力を私は改めて実感しました。また舞台との距離が物理的にも心理的にも近く、奏者の皆様の息づかいや体温までも伝わってくるようで、演奏自体をより身近に感じられたのがうれしい!言うまでもなく演奏は真剣そのものでしたが、いつものkitaraやhitaruとは違った距離感は新鮮で、私はバーメルトさんと札響への親しみが今までよりもさらに増しました。

若き日のハイドンがお仕えしていたエステルハージ家で、お抱えのオケが演奏するのを想定して作られたという今回の交響曲三部作。私は「BGM的なライトなものかな?」と勝手な先入観を持っていました。実際の演奏に触れると、独奏たっぷりで各パートの見せ場も多く、物語のような展開もあり、片時も目(耳)を離せない!まったく飽きずに最初から最後まで楽しめました。しかもずっと聴いていたい心地良さ!ベートーヴェン以降の重厚な交響曲とはカラーが異なる、今回の演目のような親しみやすい交響曲もとても良いなと感じました。また独奏についても、よくあるコンサートマスターやチェロ首席によるものだけでなく(もちろんたっぷり堪能できて幸せです!)、縁の下の力持ちパートのファゴットコントラバスにも独奏があったのが素敵なサプライズでした。若き日のハイドンのサービス精神がうかがえると同時に、札響メンバーそれぞれの個性ある演奏を楽しめたのがうれしい!こんなにも魅力満載で楽しめる「札幌交響楽団 in ふきのとうホール」、私は何度でも聴きたいです!本音を言えば、年に一度と言わず、例えば名曲シリーズのように年間4公演くらいのペースでの開催をお願いしたいほど。今後も継続可能なペースで、ぜひ長く続けて頂きたく、お願いいたします。


団員の皆様と指揮のバーメルトさんが舞台へ。皆様の衣装はkitaraでの定期公演と同じく燕尾服でした。編成は、弦(4-4-3-2-2)と、オーボエ2、フルート1(「昼」のみ2)、ファゴット1、ホルン2、そしてチェンバロ通奏低音)。演奏順は作品番号が大きい方からでした。はじめは交響曲第8番「晩」。第1楽章は、最初から弦も管も大活躍で、明るく活発な音楽に気分があがりました。メロディを各パートで受け渡すのが、まるで楽しくおしゃべりしているようで、私はふと晩餐会会場を連想。ゆったりとした第2楽章は、ささやくような弦の音色が温かく、チェンバロが作るリズムが心地よい響き。コンマスソロと独奏チェロが優しく語らうのがすごく素敵で、ずっと聴いていたいほどでした。感極まったようなコンマスソロのかすれる高音が美しい!また時折コンマスソロに2ndヴァイオリンソロが、独奏チェロにファゴットが重なって奥行きある響きになっていたのも印象的でした。第3楽章では、3拍子のリズムで各パートが優雅にダンスしているような流れに、独奏コントラバスが登場!コントラバスにとっては高音域で、たっぷりと歌ってくださり感激です!音が多く忙しい演奏でもメロディアスで、ホールにとてもキレイに響いていました。第4楽章、速いテンポでのザワザワした弦楽合奏は力強く、風が吹き抜けるようなフルートがアクセントになっていました。また高音域での音の刻みをコンマスソロから2ndヴァイオリンソロ、そしてチェロソロと引き継いだり、あちこちで再登場したりとせわしなく、オケ全体も段々と激しさを増していく流れは、「夜」なのに眠気が吹き飛ぶ(笑)。「夜はこれから」という盛り上がりに、私はこの後に続く演奏もとても楽しみになりました。

続いて、交響曲第7番「昼」。第1楽章は、ランチ後にちょっと眠くなった?ようなゆったりした冒頭から、ぱっと切り替わり快活な流れに。コンマスソロはじめ、速いテンポでの各ソロの掛け合いは楽しく、生き生きした音楽に気分も明るくなりました。第2楽章では一転して(短調に?)、オーボエと弦の哀しげな響きから始まり、ほどなく登場したコンマスソロが素敵!まるで若い女性が涙を堪えているように歌っていたのがとても印象的でした。オーボエがフルートに交代してからは明るくなり、独奏チェロが登場してからの流れが超素敵!王子様が現れて姫は安心したのか(妄想)、独奏ヴァイオリンは甘やかで美しく歌い、独奏チェロも優しく応えるやりとり。とっても幸せな感じ!他のパートが沈黙し二重奏になってからの2人の会話は、途中で少し早口になって(ちょっと揉めてる?)、独奏ヴァイオリンのターンで独奏チェロが低音の重音を2回鳴らしたところが個人的にツボでした(細かすぎて伝わっている気がしない)。ずっと姫に寄り添い優しく歌っていた王子様が!?という意外性が刺さったのかも。あらら、姫に手を焼いたんですね(妄想炸裂)。台詞はないのにまるでおとぎ話の世界!ハイドンさん、やりますね!第3楽章では、「晩」と同様にコントラバスのソロがありました。前の楽章でのチェロのように、しかしチェロよりずっと低い音で、軽やかに歌う独奏コントラバスが素敵すぎ!王子様のライバル出現!?第4楽章は、明るく快活な音楽で、特にフルートの輝かしい響きが印象に残っています。コンマスと2ndヴァイオリン首席が一緒にメロディを奏で、テンポ良く駆け抜けるのが素敵!クライマックスでのホルンが爽快!ドラマチックでとっても楽しい演奏でした!

後半は、交響曲第6番「朝」。第1楽章、1stヴァイオリンから静かに始まり(バーメルトさん流の「弱」のこだわりが冴えてます♪)、2ndヴァイオリン、他パートが加わっていくにつれて次第に盛り上がっていく流れは、まるで夜明けのよう!小鳥がさえずるような木管群が楽しい!弦のトレモロから少し哀しげ(短調に?)になり、木管群が音をのばして歌うところでの弦ピッチカートが可憐でした。伸びやかなホルンの響きが清々しい!第2楽章は、弦のみでの演奏。ゆったりした出だし部分がなんとも素敵で、心に染み入りました。上手く言えないのですが、大地の熱が伝わってくるような、大きく包み込んでくれる感じ。札響の弦、私やっぱり好きです!そして続くコンマスソロの儚げで美しいメロディ!後から独奏チェロが入り、独奏ヴァイオリンと重なったり交互になったり。独奏ヴァイオリンを支える独奏チェロの優しい響き!今回はコンマスソロと独奏チェロの絡みがてんこ盛りで本当にうれしかったです。第3楽章では、フルートソロはじめ管楽器群の温かな音色に癒やされました。中盤にはなんと独奏ファゴットが登場。少し哀しげにメロディを歌うファゴットがカッコイイ!そこに重なるのがこれまたなんと独奏コントラバスと独奏ヴィオラ!めずらしい三重奏による魅惑的な響きがとっても素敵でした。第4楽章は、華やかで明るい盛り上がりに。弦と各管楽器が次々とメロディをリレーしていくのが楽しく、中でもフルートが大活躍でした。またフルートと同じように速いテンポで歌うホルンがすごい!ホルンにとってはおそらく難易度が高いこんな技も軽やかに演奏なさるとは!華やかかつ超絶技巧マシマシのコンマスソロは、まるで協奏曲のソリストのような充実ぶり!私達のコンマス最高です!全員参加の明るい締めくくりまで、ひたすら爽快な演奏に、聴いている私も気持ちが晴れやかになりました。小編成オケの良さをたっぷり堪能できた今回、超楽しかったです!ありがとうございます!

アンコールはナシ。カーテンコールの後、札響定期と同じようにコンマス田島さんが会場にお辞儀をされて、会はお開きに。お客さん達はロビーで六花亭のお菓子(バレンタインデーにちなんだものでした)をお土産に頂いてから帰路につきました。心温まるハッピーなバレンタインデーの夜をありがとうございました!今後も「札幌交響楽団 in ふきのとうホール」の定期的な開催を、ぜひお願いします!


首席指揮者のマティアス・バーメルトさんは、今回の来日で定期公演(2回)・東京公演・ふきのとうホールと、札響の演奏会を数多く指揮してくださいました。以下のリンクにある記事は、私が聴いた「札幌交響楽団 第650回定期演奏会」(日曜昼公演は2023/02/05)のレポートです。異次元の世界に触れた武満作品、天国的な響きを楽しめたモーツァルトの協奏曲、そして生命力あるリズム感と自信に満ちた堂々たる響きのザ・グレイト。プログラム内容も演奏も超グレートでした!

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バーメルトさん指揮によるハイドンのミサ曲ハ長調「戦時のミサ」を聴けたのはこちら。「札幌交響楽団 第650回定期演奏会」(土曜夜公演は2022/10/22)。シーズンテーマ「水」のメンデルスゾーンソリスト佐藤晴真さんとオケの緻密なアンサンブルによる古風な響きのC.P.E バッハ。そして「戦時のミサ」では人の声がストレートに心に響き、今の時代に大切な思いを共有できました。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。