自由にしかし楽しく!クラシック音楽

クラシック音楽の演奏会や関連本などの感想を書くブログです。「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ(http://nyaon-c.hatenablog.com/)」の姉妹ブログです。

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札響名曲シリーズ 森の響フレンド名曲コンサート~アキラさんの名曲コンサート(2023/02) レポート

www.sso.or.jp
札響と何度も協演を重ねてきた作曲家の宮川彬良さんが、名曲シリーズに初登場です!今回は子ども向けの会ではなく、大人の皆さんも楽しめるスペシャルな企画。会場には大人はもちろんのこと、保護者と一緒の小学生くらいのお子さんも大勢いました。なお、前売り券は完売したとのことです。


札響名曲シリーズ 森の響フレンド名曲コンサート~アキラさんの名曲コンサート
2023年02月18日(日)14:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
宮川 彬良

【構成・プレトーク
新井 鷗子

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:会田 莉凡)

【曲目】 編曲:宮川彬良(シンフォニック・ダンスは除く)

宮川彬良:風のオリヴァストロ

ブルグミュラー:貴婦人の乗馬(25の練習曲op.100より第25番)
ブルグミュラーアラベスク(25の練習曲op.100より第2番)
ショパン:別れの曲(12の練習曲op.10より第3番)
ハノン:バリエーション・ハノン第1番

マンシーニ:ひまわり
ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ

モーツァルト:アイネ・クライネ“タンゴ”ムジー
ベートーヴェンエリーゼのために
ジョプリン:ジ・エンターティナー

バーンスタイン:ミュージカル「ウエストサイド・ストーリー」より
 アメリ
 マリア
 シンフォニック・ダンス(プロローグ~“サムウェア”~スケルツォ~マンボ~チャチャ~出会いの場面~“クール”フーガ~乱闘~フィナーレ)

ベートーヴェン×プラード:シンフォニック・マンボNo.5

(アンコール)宮川彬良マツケンサンバ


「超」を無限につけたいほど、超楽しかったです!お堅いイメージがあるクラシック音楽をこんなにも楽しくできちゃう、やはりアキラさんは最高のエンターテイナーですね!ほぼ満席だった会場のお客さん達は皆、心の底からか楽しんでいた様子。こんな型破りで楽しい演奏会は、柔軟な子ども達だけでなく頭が固くなっている大人にこそ必要なのかも?と私は思いました。大丈夫、クラシック音楽の名曲たちは、何百年の時を経て現在に受け継がれてきた強者揃い。思いっきり遊んだってそのアイデンティティはビクともしませんから!むしろユニークな解釈と表現によって、クラシック音楽には無限の可能性があると実感するのは、オリジナルを楽しむ上でもプラスになるのでは?もちろんピリッと張り詰めた空気の中、王道シンフォニーの真剣勝負を聴くのは素晴らしいことで、私も大好きです。しかし時々は、今回のような遊び心あふれる演奏会も聴きたいなと思います。同じ物事を別の視点からも見ることによって、新たな気づきがきっとある。これも「多様性」ですよね。

演奏の合間には「アキラ流アナリーゼ」がたっぷり盛り込まれたトークがありました。音楽構成作家の新井鷗子さん(BSテレ東で放送中の番組「エンター ザ ミュージック」でおなじみ)が仰っていた「アキラさんのアナリーゼを知った上で聴くとより楽しめる」のは、本当にその通りですね。特に私のような音楽の知識がない人にとっては、知る前と後では大違いな解説が盛りだくさん!お話は多岐にわたり、笑いが絶えないトークはとても楽しかったです。ここにすべてを書き切れないのが惜しいほど。音楽に対して深い理解となにより愛があるアキラさん。だからこそ、その作品と演奏は楽しさとエネルギーがあふれ、私達聴き手を夢中にさせてくれる!幸せな出会いに改めて感謝です。

そしてアキラさんから「信頼する札響」と紹介された、札響の演奏がやはりすごいです!オケの皆様は、普段のレパートリーとは異なる演目の数々を、クオリティも熱量も高く、何より思いっきり楽しそうに演奏してくださいました。よく言われるように、「型破り」は「型」があって初めてできるわけで、モーツァルトベートーヴェンの原曲をがっつりやれるオケだからこそパロディが成立するのだと私は思います。そんな札響は、この2月だけでも、先にはシンフォニーオーケストラ(札幌交響楽団 第650回定期演奏会および東京公演)と、室内オーケストラ(札幌交響楽団 in ふきのとうホール Vol.4)での演奏をしており、いずれも大変素晴らしいものでした。そして今回のアキラさん名曲と、すぐ後にはオペラ(モーツァルト「フィガロの結婚」~hitaruオペラプロジェクト)も控えているという多種多様な変幻自在ぶり。振れ幅大きいこんなマルチなオケって、そうそう無いのでは!?札響の皆様もまた最高のエンターテイナーですね!


音楽構成作家・新井鷗子さんによるプレトーク。「構成作家」の仕事内容紹介では、人気番組の「笑点」や「リバーサルオーケストラ」を例に挙げておられました。音楽の構成作家として、選曲は有名な曲7割とマイナーな曲3割を意識。交響曲などは長いため、テレビ番組内で紹介する場合は5分程度のダイジェスト版を用意することも。音楽の番組でも、例えば「イタリア」をテーマにするなら、サッカーやイタリア料理など音楽以外の要素を盛り込むこともあるそうです。またテレビ番組であれば山場を最初に持ってきて、コンサートなら最後にするとか。それはテレビなら視聴者はすぐにチャンネルを変える一方、コンサートのお客さん達はチケット購入して足を運んできているため、最後まで聴いてくれるからだそう。アキラさんとは長くお仕事してこられたそうですが、「アレンジによって音楽ですべて表現」されているため、音楽構成作家の仕事はあまりないと謙遜されていました。

オケの皆様とアキラさんが舞台へ。アキラさんのトレードマークのベストは緑色!ステージの正面真ん中には、フタを完全に取り外した状態の大きなグランドピアノが設置されていて、前半はアキラさんの弾き振りでした。1曲目は、宮川彬良「風のオリヴァストロ」。ピアノと重なる弦・木管の美しく少し哀しいメロディに聴き入り、盛り上がりのクレッシェンドでのティンパニとドラムセットがすごく素敵!クライマックスでの金管打楽器の温かさ!この温かさを「懐かしい」と感じた私は、アキラさん&札響との再会をしみじみと実感できてうれしくなりました。

「練習曲をアートにした作曲家たち」と題し、ピアノの練習曲で有名な4曲をピアノとオーケストラの演奏にて。まずはブルグミュラー「貴婦人の乗馬」。冒頭のオーボエファゴットがなんと気品高いこと!オケの演奏は馬が生き生きと駆けていくよう。来ましたトランペットによる馬のいななき(2回も!)に、ムチがパーンとキマる音!超カッコイイ!同じくブルグミュラーの「アラベスクは、重厚パワフルで嵐のような勢いある演奏がすごい!テンポ良く感情込めての本気の演奏のおかげで、これはもしかしてとんでもない名曲かも!?と思えてきました。また、「メロディをきれいに感じ取る心の練習」(byアキラさん)という、ショパン「別れの曲」は、澄んだ弦に管の温かさ、これこそオケの本領発揮とも言える美しさに聴き入りました。そしてハノンのバリエーション「ハノン第1番」が、トークも演奏自体もすごく面白かったです!アキラさんがピアノを実際に弾きながら、「マイナー音階の指使い、一番開かない指があてがわれているんですよ!」と顔芸付きで熱弁。後ろのオケの皆様は苦笑されていました(身に覚えがおありなのかも?)。またアキラさん自身が練習曲に取り組んでいた当時には「スタッカート、付点付き、ジャス……」と色々と試されていらしたようです。いざオケの実演は、同じメロディを弦ピッチカートやトレモロや様々な奏法で変化をつけて表現していたのが面白くて面白くて!「世界で愛されている単純な繰り返し」(byアキラさん)は、アキラさん&札響の手にかかるとこんな立派な曲になっちゃうなんて(褒めてます)!

映画音楽から、マンシーニ「ひまわり」。美しく切ないピアノのメロディを、オケが壮大な世界に広げるドラマチックな演奏!個人的には、やはり弦にぐっと来て、ここでも金管の温かさを感じました。よく知る曲なのに、こんなにも心揺さぶられるなんて!演奏後のトークでは、マンシーニの作曲方法について「半音間違えちゃった作戦(!)」と紹介がありました。先ほどの「ひまわり」や他の作品を例に、実際にピアノで実演しながら(半音を本来あるべき場所にずらしてみたり!)の解説。ちなみにモーツァルトもよるやるのだそうです。私は今まで考えたこともなかったですが、そんなお話を聞くと、本来ある姿から少しズレているから心に引っかかるのかな?と、作曲家の仕掛けが少しわかった気がしました。

「ピアノの中からオーケストラが聞こえてくる」(byアキラさん)という、ラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ。作曲家自身によるピアノ独奏版も管弦楽版もありますが、今回はピアノと管弦楽を組み合わせたアキラさんバージョンの演奏です。語るようなピアノ独奏から入り、後から弦がシンクロして次第にオケがメインとなっていきました。はじめにピアノ独奏で聴いたシンプルなメロディは、澄んだ弦や柔らかな木管が繰り返す度に違う表情に感じられたのと、低弦ピッチカートの深みやハープのキラキラした高音が陰影を作ってくれて、とても立体感ある響きに。私は、ピアノはもちろん素敵だけど、オーケストラって本当に面白い!と素直に感じました。

前半の締めくくりは「クラシック史上最強のエンターテイナーたち」として3曲。「芸術と芸能は通じている」のがアキラさんの持論だそうです。モーツァルト「アイネ・クライネ“タンゴ”ムジーク」は、耳慣れたナハトムジークがいつの間にかタンゴのリズムでの演奏に。しかしリズムにメロディがうまく融合していて、元からこんな曲だったかも?と、私はちょっぴり混乱しました(笑)。本来は弦楽合奏の曲が、管楽器や打楽器も加わってにぎやかだったのが楽しかったです。ただ、演奏機会がとても多い原曲が身体に染みついている弦の皆様にとっては、少しやりにくかったのでは?ベートーヴェンエリーゼのためには、冒頭のピアノに重なった2ndヴァイオリンの超高音がすごい!コロラトゥーラ・ソプラノのような特別で美しい音!支える役目でありながらも存在感抜群で、強く印象に残っています。本来はピアノ独奏曲を、例えばホルンが歌うことで壮大な世界が広がったり、カスタネットのリズムが入ることで舞曲のようにも感じられたりと、可能性は無限大と感じられる演奏でした。ジョプリン「ジ・エンターティナー」は、跳ねるような可愛らしい感じから次第に盛り上がり豪華になっていく流れが楽しかったです。おなじみの曲たちも、アキラさんの神アレンジと札響による演奏は新鮮で、今まで以上に楽しく聴くことができました。


後半、舞台の正面真ん中には指揮台が設置され、ピアノは左端に移動。ピアノとチェンバロは宮川知子さんが担当されました。アキラさんはベストを赤色にお色直し♪はじめはバーンスタイン「ウエストサイドストーリー」より、アメリカ」。大都会を思わせる、スピード感ある演奏。多彩な打楽器の中でも、ボンゴのリズムの良さと、クラクションやホイッスルのインパクトがとても効果的に感じました。演奏後にアキラさんから「アメリカ国歌のメロディが盛り込まれている」と解説があり、私はビックリ!そんなサブリミナル効果を狙っていたとは!続いて「マリア」コントラバスのピッチカートに乗って、ヴァイオリンが奏でる美しくなんとも切ないメロディがとっても素敵!演奏後の解説によると、トニー(ド)とマリア(ファ#)の2つの音は混ざらない、両家の対立を音楽の中で表現しているのだそう。ちなみにドとファ#の組み合わせは緊急警報にも使われている(!)とか。アキラさんは、なんちゃって関西弁で、ウエストサイドストーリー版ロミオとジュリエットの一人芝居をしつつ解説。ドとファ#は自然倍音によって溶け合い、ぶつかった後に、えも言われぬ和解の響きになる、と仰っていました。私、まったく知らなかった事ばかり!次に聴くときは、ドとファ#を意識してみます。またトークでは、アキラさんが文字通り「すり切れるまで聴いた」という、「ウエストサイドストーリー」の愛聴盤レコードを見せてくださいました。思い入れが強い作品とのことで、「このあたりのお話は、ロビーで売っている僕の本に詳しくあります」と、ご自身のエッセイ本(「『アキラさん』は音楽を楽しむ天才」NHK出版)をちゃっかりPR。会場がなごみました。

同じくバーンスタイン「ウエストサイドストーリー」より、「シンフォニック・ダンス」。この演目はオリジナル版で、20分超を続けての演奏でした。オケの皆様の指パッチンが印象的なプロローグからリズム感が心地よく、ここぞというときに入る金管打楽器が気持ちイイ。来ましたヴィオラが主役の弦楽四重奏!続くホルン&オーボエからの、壮大で美しい世界へ。これこそオーケストラの醍醐味!また「嵐の前の静けさ」のようなスケルツォでも小さく刻むリズムがとても印象的でした。待ってましたマンボ!今回は大声量での「マンボ!」のかけ声あり。野太い声でのシャウトが最高です!もっと言ってー!楽器演奏もかけ声も思いっきり行くところでビシッと揃うのが快感でした。弾むようなリズムの木管のターンからの、コンマスと1stヴァイオリンの一部の計4名によるアンサンブル。なんて美しい!もしかしてこのメロディは「マリア」!?と、私はこの日初めて気付きました……。全員参加の大盛り上がりはガツンと盛り上げてくださり、フィナーレへ。美しいフルート独奏に続き、透明感ある弦に歌う木管金管。もう超素敵!静かな締めくくりまで、まるで音楽による物語の世界!たとえ「ウエストサイドストーリー」のお話自体をよく知らなくても、すべて音楽が教えてくれる、そんな素敵な演奏でした。大熱演の後、「大変な音楽会になりましたね!」とアキラさん。ここで「多様性」についてのお話があり、「音楽から何かを学ぶのが皆さんの役目」と結ばれました。

プログラム最後の曲は、アキラさんのコンサートではすっかり定番になっているベートーヴェン×プラード「シンフォニック・マンボNo.5」。ジャジャジャジャーン!の深刻な出だしから入り、ほどなく、あれ?このリズムは?と、マンボになる流れ。オケから「アー・ウ!」のかけ声があがると、会場は爆笑。わかっていてもやっぱり笑っちゃいますよね!陽気なラテン音楽と重厚なシンフォニーを行ったり来たりするのは楽しかったです。そして、ギャップが際立つのはどちらのシーンでもオケが本気だから!とも改めて感じました。

カーテンコール時に、サプライズ企画がありました。この日はアキラさんのお誕生日。アキラさんが舞台へ戻ってくるタイミングでオケが「ハッピーバースデー」を演奏(超豪華♪)、お客さん達は事前に配られていた「Happy Birthday」の黄色いカードを掲げました。直前の曲では降り番だった奏者の皆様までカードを持って舞台に登場。お誕生日ハットを被ったアキラさんは、満員の会場が黄色で埋め尽くされているのに驚いた様子でした。「こんなこと言ったら雪を投げられるかも」と仰りながらも、札幌の人は雪かき等で大変な思いをしても、都会では希薄になっている人間関係があるとして、「皆さんの苦労はとても大切な宝物。皆さんもおめでとう!」。会場は拍手喝采でした。

アンコールは、やはりこの曲!宮川彬良マツケンサンバⅡ」。ジャーン!のインパクト大な掴みに、キレッキレのボンゴ!待ってました!イントロから早速テンションあがります。お客さん達は自然と手拍子をして、会場全体がノリノリに。マツケンが歌う部分はオケが歌い、誰もが知る名曲のド派手な演奏に、老若男女みんながテンションMAXに。超超楽しい!ラストに最高に晴れやかな気持ちになれました。寒さに凍てついた身も心もホッカホカ♪アキラさんと札響の皆様、最高に楽しいコンサートをありがとうございました!


アキラさん&札響の前回の協演はこちら。「札響夏休みスペシャル2021『アキラさん×札幌交響楽団」(2021/08/15)。オーケストラの森やクインテット名曲集など、マツケンサンバだけじゃない宮川彬良さんの多彩な作品&神アレンジの数々と、宮川安利さんのパフォーマンス。親子で超楽しめました!

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なお今回配布されたプログラムには、「予告」として「アキラさん×札響の夏休みスペシャル2023♪(仮タイトル)」(2023/08/11開催予定)とありました。今から楽しみです♪

本年度の夏休み子ども向け企画は、絵本とのコラボでした。「札響 読み聴かせコンサート『おばけのマールとたのしいオーケストラ』」(2022/08/11)。描き下ろし(書き下ろし)たっぷりの絵本の世界に、大人が聴いても十二分に楽しめる選曲と演奏。森崎博之さんの朗読と進行も素敵で、親子で思いっきり楽しめました!

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。