自由にしかし楽しく!クラシック音楽

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まなみーるDEクラシック 2023(2023/12) レポート

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岩見沢市にて毎年開催されている札響の演奏会。今年は「序曲、名曲、そして大曲」として、指揮に藤岡幸夫さんをお迎えし、オペラ序曲の数々とシベリウス交響曲第2番」が聴ける会でした。シベリウスを得意とする藤岡幸夫さん&札響による演奏でシベ2が聴ける!オペラ序曲も楽しみ!と、私は岩見沢までプチ遠征。なお北海道新聞の報道によると、当日の客入りは500名ほどだったようです。

まなみーるDEクラシック 2023
2023年12月03日(日)15:00~ まなみーる岩見沢市民会館大ホール

【指揮】
藤岡 幸夫

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:会田 莉凡)

【曲目】
スッペ:喜歌劇「軽騎兵」序曲
モーツァルト:歌劇「後宮からの逃走」序曲
ウェーバー:歌劇「魔弾の射手」序曲
ロッシーニ:歌劇「ウィリアム・テル」序曲

シベリウス交響曲第2番 ニ長調 op.43

(アンコール)エルガー:夕べの歌


シベリウスに造詣と愛が深い指揮者の藤岡幸夫さんが、「日本で一番シベリウスを得意とする」札響を指揮したシベ2。胸がすく快演に心打たれた、素晴らしい出会いでした!岩見沢までプチ遠征して本当によかった。オケの士気をあげた上でぐいぐい引っ張ってくださった藤岡さんと、プレッシャーに負けず全力で演奏くださったオケの皆様、ありがとうございます!熱い思いが最高の形で実を結んだのは、やはり実力があってのことと思います。すべて良かった上で、個人的には第4楽章の熱さを特筆したいです。演奏前に「ロシアへの勝利」というお話がありましたが、それだけでなく「自分との戦いに勝利した」と私は感じました。負の感情をすべて飲み込んだ上で愛に昇華した強さ!すごい!いえ、どんなに言葉を尽くしても足りない、あふれる思いや熱がヒシヒシと伝わってくる演奏は、理屈抜きで心揺さぶられました。藤岡幸夫さんと札響によるシベ2、最高です!また、前半のオペラ序曲の数々も楽しかったです。親しみやすいトークを交えながら、全部がクライマックスのオペラ序曲を華やかな演奏で聴かせてくださいました。たまたまかもしれませんが、今回取り上げられた演目は、9月に聴いた名曲シリーズ・オペラ名序曲集(2023/09/16)との被りはナシ。札響のレパートリーの幅広さを改めて実感しました。もちろん聴き手としては、色々な演目と演奏に出会えるのはうれしいです。

まなみーる岩見沢市民会館、とても良いホールでした!新しい建物でキレイなだけでなく、音響も良かったと私は思います。余韻までしっかり響き、金管打楽器が遠慮無く大きな音を出せるのは、演奏する上でもストレスが少ないのでは?このような地方のホールを活かして、定期的にプロオケの公演が行われるのは素敵なことですね!今回は札幌から日帰り圏内でしたが、いつも北海道はでっかいどうを隅々まで回ってくださる札響の皆様には感謝の気持ちでいっぱいです。「地元北海道が誇るオケ」として、これからもどうぞよろしくお願いします!


オケの皆様、続いて指揮の藤岡幸夫さんが舞台へ。弦の人数は最初から最後まで固定で、10-10-8-6-5でしょうか?木管は基本の2管編成、金管打楽器は演目によって編成が異なりました。すぐに演奏開始です。1曲目は、スッペの喜歌劇「軽騎兵」序曲。開口一番のトランペットが超カッコいい!ジャーン!と盛り上げるオケが大迫力!ホルンは勇ましく、クラリネットのほの暗さにハッとさせられ、目まぐるしく展開する演奏に気持ちを持っていかれました。金管打楽器の大活躍に、超高音で彩るヴァイオリンの華やかさ、ずっと重厚に支える低弦の存在感!弦のシリアスさ、行進曲風のリズムが楽しい!シーンが移りゆく流れの中で、孤高のクラリネット独奏が異彩を放ち、世界が一変。弦によるハンガリー舞曲風のところは渋くて、金管打楽器がメインのこの曲の中でとても新鮮でした!再び行進曲風になり、思いっきり賑やかなフィナーレ。最初にガツンとテンション上げてくれる演奏でした!

ここで指揮の藤岡さんがマイクを持ってごあいさつとトーク。以降も曲の合間にはトークがありました。「札幌交響楽団!」とはじめにオケを紹介くださってから、「指揮の藤岡幸夫です」と自己紹介。藤岡さんは、1997年に改修前の岩見沢市民会館にてシベリウス交響曲第1番を指揮されたのだそうです。「すばらしいホールで、またシベリウスを振れるのが楽しみ」と仰っていました。前半は序曲集ですと紹介くださってから、「なるべく話を短くして(進めたい)」と、お話が得意な藤岡さんが茶目っ気たっぷりに仰って、会場に笑いが起きました。

モーツァルトの歌劇「後宮からの逃走」序曲。演奏前の解説によると、トルコの軍隊が大人気だった頃(様々な作曲家が「トルコ行進曲」を生み出した時代)の作品だそうです。トルコ風味を出すために、打楽器陣には「安っぽく!」とオーダーしたのだとか。「札響の楽器は上等だから、安っぽくならないのよ!」とも(笑)。演奏は、軽快な出だしから、ぱっと華やかに盛り上がり。打楽器陣がシャンシャンと景気付けてくれたのが楽しい!トライアングルのインパクト!弦による力強い音階駆け上りに、聴いている私達の気分も上がりました。強弱の波と勢いの良さに引っ張られた序盤から、シリアスに変化した中盤へ。やや深刻な弦に重なった、高貴な感じの美しいオーボエがとっても素敵でした!はじめと同じメロディ再び。しかしここでは「逃走」らしく、前よりも緊迫感が増したと感じました。華やかに締めくくり。短いながらも劇の場面が目に浮かぶような演奏、楽しかったです!耳なじみの良い音楽に、打楽器陣がとても良いアクセントになっていました。「安っぽい」とは感じなかったですが(笑)。

ウェーバーの歌劇「魔弾の射手」序曲。今回取り上げる序曲については「ハープを使わないものなら自由に決めてOK」と言われたそうで、藤岡さんが真っ先に決めたのがこの「魔弾の射手」なのだそうです。ベートーヴェンの第九とほぼ同時期の作品で、ワーグナーの先駆け、と仰っていました。「緑の匂いがする」(!)と興味をそそる事をちらっと仰ってから、「全部楽しんで!」と、演奏へ。ごく小さな音から始まり、少しずつ浮かび上がってくるのに、私は森の奥深さをイメージ。世界を広げてくれたホルンが素敵!ゆったり歌うホルンに心洗われました。チェロが哀しげに歌い、他の弦がトレモロで支えるところにゾクゾク。次第に緊迫感が増し、金管打楽器が力強い盛り上がりを作るところの勇ましさ壮大さ!おそらく一番の山場であるここが超カッコ良かったです!クラリネットがシーンを変えて、弦と木管群がダンスしているような楽しいところへ。一旦盛り上がりの後、オーボエとフルートがシーンを変えて……と、場面転換で木管が登場し、鮮烈な印象を残してくれました。終盤にほんの少し葬送行進曲のようなところが登場したの興味深かったです。ラストは華やかに盛り上げて締めくくり。パワフルで壮大、ドラマチック!大熱演に圧倒されました!

ロッシーニの歌劇「ウィリアム・テル」序曲ロッシーニはイタリアの作曲家で、この作品を書いた後に作曲をやめて美食の道へ進んだというエピソード紹介がありました。この作品は4つの部分からできていて、最後の「スイス軍の行進」が特に有名とか、最初にチェロが活躍する等の解説も。ちなみに「ウィリアム・テル」序曲は、藤岡さんがデビューしたての頃、札響で初めて指揮した演目だそうです。オケがチューニングをしてから、演奏へ。チェロトップ(今回は副首席でした)によるソロ演奏がカッコイイ!アンサンブルで支える他のチェロも素敵!そして驚いたのはここからでした。通常はトップ奏者がすべて弾くソロのメロディを、なんとチェロセクションの各奏者で交代しながら演奏するスタイル。なんて粋な計らい!また各奏者が持つそれぞれの音を味わえて、聴き手としてもとてもうれしかったです。こんな楽しみ方ができるなんて、最高にうれしい!チェロセクション全員推せる!タッタッタ♪の木管群と弦のトレモロから、次第に盛り上がっていくのにゾクゾクし、「嵐」のシーンのトロンボーンのド迫力!「牧歌」では、コールアングレとフルートの温かな会話に癒やされました。フレーズ最後で転がすような音の可憐さ、トライアングルがそっと寄り添うのも素敵!パーンパパパーン♪とトランペットな鳴り、「スイス軍の行進」へ。リズミカルで勇ましい音楽にドキドキワクワクしました。少し穏やかになったところから、弦が音階を駆け上ってぱっと華やかに盛り上げたところが個人的ツボ。金管打楽器も遠慮無しに全力で鳴っているのが気持ちイイ!演奏はド派手に締めくくり。演奏機会の多い「ウィリアム・テル」序曲ですが、今回は安定の演奏に加えサプライズ演出もあって、とても楽しかったです!何度でも聴きたい!


後半は、シベリウス交響曲第2番」。はじめに指揮の藤岡さんがお一人で舞台へ出て、作曲家と演目について解説してくださいました。シベリウスフィンランドの作曲家で、地味なイメージがあるかもしれないけど、牢屋に入ったりお金を使いすぎて破産したりといった「破天荒」な人だったと紹介。交響曲第2番を書いた頃は、娘を亡くし傷ついていて、パトロンに勧められイタリア旅行へ行ったのだそう。心の闇の部分や愛国心、支配者ロシアへの怒り等がうかがえると仰っていました。楽章毎の詳細な解説もあり、中でも個人的には第4楽章がとても印象に残っています。藤岡さんによると、フィンランド国民が第4楽章を聴いて「ロシアの圧政に打ち勝った」と熱狂するも、シベリウス自身は否定したのだそう。しかし、ロシアを意識して(捕まえられないよう?)否定しただけであって、内心はシベリウスも「ロシアに勝利した」と思っていたのではないか?と、藤岡さんはお考えのようでした。「札響は日本で一番シベリウスを得意とするオーケストラですから」(!)と聴き手の期待をゲージMAXまで引き上げてから(そしてオケにはプレッシャーをかけながら・笑)、「これから演奏するのを楽しみにしています」と仰って、トーク終了となりました。

トークの終盤にはオケの皆様が舞台へ登場し、トーク終了後、いよいよ演奏開始です。編成は、各木管2、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、テューバティンパニ、弦。第1楽章 北国の風がそよぐような出だしの美しさ!否応なしに後に続く演奏への期待が高まりました。跳ねるような木管に続いた、ゆったりしたホルンの響きの良さ!第4楽章の先取りのようなところから、続いたヴァイオリンによる澄んだ音色の美しさ!弦による冷涼な空気と、管による温かさの共存が素敵でした。弦によるピッチカートから次第に盛り上がっていく流れにドキドキ。オーボエクラリネットが寂しげで影を感じる響きに。そして、ティンパニと一緒に浮かび上がってきた金管群が鳥肌モノでした!この大迫力、シベリウスの「闇」の底知れぬエネルギー!めちゃくちゃカッコイイ!各シーンが回想され、ひとしきり盛り上がった後、楽章締めくくりはとても穏やかにフェードアウトしていったのが印象的でした。第2楽章 ティンパニと低弦ピッチカートにドキドキし、ファゴットの暗く重い歌にゾクッとしました。木管群の歌のもの悲しさ。続いた弦が次第に加速していき、そこからの盛り上がりでは、またしても金管群がガツンと来ました!ティンパニと一緒にぐーっと盛り上がる金管群はメロディの高音も支える低音もすさまじいエネルギー!それを支える低弦が超男前!余韻がまた良くて、次第に音が小さくなっていくティンパニと低弦がとても印象に残っています。弦の高速演奏(すごい!)に乗っての、低音のインパクト!哀愁あるトランペット独奏がなんて素敵なこと!悲劇的な楽章締めくくりでは、弦が渾身のピッチカートを数回鳴らしたのが印象深かったです。言葉にできない思いが心の奥底にあるよう。第3楽章 冒頭から高速の弦の緊迫感がすごい!他の楽器が加わって激しさが増し、このヒリヒリした空気にゾクゾク。盛り上がった後、ティンパニの弱音が残ったのが印象的でした。来ましたオーボエ独奏!他の管による温かな響きに乗ってのオーボエはなんとも美しく、それにこたえるチェロ独奏は愛あふれる感じで超素敵!銃声のような金管(キレッキレ!ドキっとしました)を皮切りに緊迫感再び。第4楽章の先取りのようなところもあり、オーボエ&チェロの愛ある対話に再び出会えて、全員合奏でエネルギーをためつつじっくりと上昇していく流れがアツイ!盛り上がりの頂点から、そのまま続けて第4楽章へ。 弦が奏でるメロディは、強くかつ愛あふれる感じで、心に染み入りました。怒りややりきれなさを抱えながら、人は生きている事をこんなにも愛せるのかと思うと、涙がでます。華やかなトランペットは今この時を祝福してくれているよう!ベースで低音がぐおんぐおん鳴っていたのもカッコイイ!低音金管の勇ましさ!壮大な音楽に胸がすく思いでした。中低弦のうねうねした低音に乗って、木管群がほの暗く歌うのは胸がざわつく感じで、そこから再び盛り上がって力強い金管群につながる流れが良かったです。木管群メインのやや穏やかなところから、楽章はじめと同じような盛り上がり再び。盛り上がりの波が何度も来て、その度に胸が熱くなりました。クライマックスではさらに低音のうねりも高音の力強いメロディもパワーアップして、嵐の中にいるよう!弦のトレモロに彩られた金管のド迫力!低弦がピッチカートでメロディを奏でた後、高音弦の華やかなトレモロに乗って、低弦がぐおんぐおんうねりながら重低音でメロディを奏でたのが最高!ティンパニの大音量連打に、金管群の堂々たるメロディで、華々しく締めくくり。演奏の音が消えてから、しばらくの静寂の後、会場に割れんばかりの拍手が起きました。ああすごいものを聴きました……。私は今、生きている、そして生きていたいと思わせてくれた、心揺さぶる大熱演に大感激です!ありがとうございます!

カーテンコールで指揮の藤岡さんは何度も舞台へ戻ってきてくださいました。口頭でアンコールの曲名が伝えられ、演奏へ。アンコールは、エルガー「夕べの歌」。2年前のクリスマスコンサート(2021/12/21)でもアンコールで聴かせてくださったあの曲!待ってました!調べたところ、藤岡さんと関西フィルによるシベ2のCDにも収録されている、藤岡さん十八番の演目のようです。牧歌的なホルンのリズムと木管群の柔らかな響きをベースに、弦による落ち着いた低めの音程での艶っぽい歌がとっても素敵!少し切ないメロディになっても、管楽器の温かさが良い感じで深刻になりすぎない、とても優しい音楽に癒やされました。終盤では、ふとまどろんだように一瞬沈黙があり、澄んだ音色でしっとり優しく締めくくり。素敵な序曲の数々とシベ2の大熱演の後、心穏やかになれる素敵なアンコールまで、ありがとうございます!藤岡さんと札響の共演をこれからも楽しみにしています!


札幌交響楽団 hitaruシリーズ定期演奏会 第15回」(2023/11/21)。オピッツさんの「ブラームスのピアノ」と、バーメルトさん率いるオケの演奏によるブラームスピアノ協奏曲第2番は、あこがれの曲と最高の出会い!間宮芳生さんの作品、モーツァルトではオーケストラの奥深さと面白さを改めて実感しました。

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森の響フレンド 札響名曲コンサート~発掘!発見!オペラ名序曲集」(2023/09/16)。スケール無限大、クライマックスしかないオペラ序曲の数々をアンコール含め全10曲。重厚・壮大なオベロン序曲や極限弱音が印象深かったルスランとリュドミラ序曲など、まっさらな気持ちで思いっきり楽しめました!CD化を切望します!

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