自由にしかし楽しく!クラシック音楽

クラシック音楽の演奏会や関連本などの感想を書くブログです。「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ(http://nyaon-c.hatenablog.com/)」の姉妹ブログです。

コメント・ご連絡はすべてツイッターにお願いします。ツイッターID:@faf40085924 ※アカウント変更しました。
※無断転載を禁じます。

森の響フレンド 札響名曲コンサート~発掘!発見!オペラ名序曲集(2023/09) レポート

www.sso.or.jp
バーメルトさんの名曲シリーズ。一昨年のワルツに続き、今回はオペラ序曲です。「発掘!発見!」とあるように、超有名曲だけでなくレアな作品も取り上げられました。なお、この演奏会はラジオ番組収録が行われました。放送予定は2023年10月22日(日)14:00~15:50 NHK-FM(北海道内)です。


森の響フレンド 札響名曲コンサート~発掘!発見!オペラ名序曲集
2023年09月16日(土)14:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
マティアス・バーメルト(首席指揮者)

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島 高宏)

【曲目】
ロッシーニ:「どろぼうかささぎ」序曲
レズニチェク:「ドンナ・ディアナ」序曲
モーツァルト:「劇場支配人」序曲
フロトウ:「マルタ」序曲
ウェーバー:「オベロン」序曲

エロール:「ザンパ」序曲
ボワエルデュー:「バグダッドの太守」序曲
ニコライ:「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲
グリンカ:「ルスランとリュドミラ」序曲

(アンコール)
モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」K.492 序曲


スケール無限大、クライマックスしかないオペラ序曲の数々をアンコール含め全10曲。超楽しかったです!私はオペラに疎く、ほぼ初聴きの演目ばかり。しかし予備知識なしのまっさらな気持ちで聴いても、思いっきり楽しめました。そもそもオペラ序曲は、これから始まる舞台に期待を高めてもらうために書かれたもの。どの作品もあの手この手で盛り上げてくるのが面白かったです!ただ聴いている方は楽しくても、演奏するのはすごく大変だったのでは?どのパートもとにかく忙しく、否応なしに演奏する方もテンションあげていかないと出せないような音をどんどん繰り出していく演奏。しかもバーメルトさんの無茶ぶり(!)もあったようですし、1曲だけでもヘトヘトになりそうなところを10曲も!本当にありがとうございます。大熱演に大拍手です!なお今回の演奏会は、ラジオ放送用に録音されているとのこと。「ワルツ」と同様、オペラ名序曲集のCD化をぜひお願いします♪

そして、今回も楽しい企画と素晴らしい演奏で私達を楽しませてくださった、バーメルトさんに大拍手!私が札響を聴き始めた時は、既にバーメルトさんが首席指揮者でした。私はバーメルトさんが指揮する演奏会のすべてを聴いたわけではありませんが、グレートやドイレクの分厚いオーケストラサウンドからふきのとうホールの室内オケ、ワルツ集に今回のオペラ名序曲集と、出会った演奏の数々はいずれも記憶に残る素敵な思い出になっています。定期演奏会に年間テーマを設定したり、赤ちゃん歓迎のコンサート(2022年08月11日 札響 読み聴かせコンサート「おばけのマールとたのしいオーケストラ」)を企画したりと、様々な提案をしてくださったのもバーメルトさん。当たり前に享受している私達ですが、振り返ると私達はバーメルトさんからたくさんの素敵な贈り物を頂いているとしみじみ思います。名曲シリーズのプログラムに同封されている、札響STAFFによる気まぐれ通信「かぷりっちょ」を拝読すると、バーメルトさんは札響のスタッフにもとても愛されていることがうかがえます。今は来年度の企画が内々に準備されている時期でしょうか?次はどんな企画で私達を驚かせてくださるのか、今からとても楽しみです!


開演前のプレトーク。バーメルトさんは最初に「こんにちは」と日本語でごあいさつ。その後は英語でお話しされて、日本語通訳(一昨年の名曲シリーズ・ワルツの時と同じかた)が入りました。18世紀より前、序曲と交響曲の区別は明確ではなかったそう。その後、序曲はオペラにとって重要な位置づけに。序曲が成功するためには、美しい音楽性が必要。加えてオペラそのものは物語や舞台に出来うるものでなければならない(序曲は人気でもオペラ本体が埋もれてしまう理由は、この辺りにあるようでした)。また、序曲は上演ギリギリに書かれることがしばしば(全体像を把握してからになるため?)で、ロッシーニが「どろぼうかささぎ」の序曲を書いた時の逸話を紹介くださいました。ロッシーニは、初演日の前日にオペラを上演する劇場の屋根裏に幽閉(!)され、4人のスタッフに囲まれ、譜面は書いた傍から下に落とされた(受け取った先ではオケのスコアに書き起こされる)そう。「もし私が協力しなかったら、私も下に落とされていたと思います」と語ったとか。過酷!続いて「どろぼうかささぎ」のストーリーをざっくり紹介(他愛も無いお話、と私は感じました)。他のオペラについても「これ(「どろぼうかささぎ」)より説得力があるものではない」(ええっ!?笑)。そしてオペラ本体が埋もれてしまった例もお話しくださいました。ウェーバーの「オベロン」は登場人物が多すぎて不評だったとか、ニコライの「ウィンザーの陽気な女房たち」は同じ題材(シェイクスピアの喜劇)で書かれたヴェルディファルスタッフ」の方がウケたとか、グリンカの「ルスランとリュドミラ」は台本の原作者であるプーシキンが戦争で負った傷がもとで亡くなってしまい、台本が止まってしまったとか。オペラの外でこのような逸話がたくさんあるなんて、まさに「事実は小説よりも奇なり」ですね!「そうです。序曲は美しい音楽であるべきですから!」「今回はその序曲のみお届けします。どうぞお楽しみ下さい」でトークは締めくくられました。

オケの編成は、14型でしょうか?私はヴァイオリンの正確な数を把握できませんでしたが(ごめんなさい!)、他の弦はヴィオラ10、チェロ8、コントラバス7でした。木管は2管を基本に、演目によってはフルート(ピッコロ持ち替え)3となったり(フルートのゲスト首席はN響の神田寛明さんでした!)、コントラファゴットが加わったり。金管はホルン4、トランペット2、トロンボーン3を基本に、演目によってチューバが入りました。打楽器はティンパニの他、スネアドラム、バスドラム、トライアングル、シンバルといった比較的メジャーなもので、今回ハープはナシでした。

1曲目はロッシーニの「どろぼうかささぎ」序曲。指揮のバーメルトさんが登場したと思ったら即スネアドラムが始まったので、心の準備が出来ていなかった私はちょっとビックリ(笑)。はじめは行進曲風で、リズムが楽しく高音が華やか!スネアドラムとトライアングルがキレッキレ!シーンが変わってから、ごく小さな音から次第にクレッシェンドで浮かび上がってきたのには、強弱にこだわるバーメルトさんらしさを感じました。パワフルに盛り上げたトロンボーンがカッコイイ!ワルツ風になってからは、木管群と弦がリズム良く踊っている感じで可愛らしかったです。囁くような弦がやや不穏な感じのところから、木管群が順番に歌いながらどんどん明るくなって、大盛り上がりのラストは気分爽快!幽閉状態(!)にあって、こんなに明るい序曲を書き上げたロッシーニさんエライ!最初からテンションMAXで演奏した札響の皆様も素晴らしい!舞台の幕開けにぴったりの華やかな序曲に、聴いている私達の気分もあがりました。

レズニチェクの「ドンナ・ディアナ」序曲。低音が効いた冒頭がインパクト大で、少し深刻な印象。しかしすぐに明るくなり、跳ねるようなリズムが楽しい!トランペットが華やか!フルート、オーボエのソロが素敵!個人的には、全体を通して低音の厚みあるベースがズンズン来て、カッコ良さにゾクゾクしました。

モーツァルトの「劇場支配人」序曲。ザ・モーツァルトな定番曲ですね!澄んだ弦がひときわ輝く、まっすぐで華やかな音楽が素敵!ほんの少しの変化で短調になるところや、存在感抜群のファゴットも印象深く、私は先月の名曲シリーズで聴いたベト8をつい連想しました。ちなみにこの曲を、以前私がバーメルトさんの指揮で聴いたのは、2019年10月26日の名曲シリーズでした。その日はセット券購入者向けのバーメルトさんとのおしゃべりの会があって、とても楽しかった思い出……それがもう4年も前の事だなんて、月日が経つのが早すぎです!

フロトウの「マルタ」序曲。重厚で壮大な出だしの迫力!もの悲しい木管群が印象的。シーンが変わってからは、何と言ってもホルンソロ!優しく伸びやかに歌うホルンが幸せいっぱいな感じで素敵でした。これがアイルランド民謡「夏の名残のバラ」(日本では「庭の千草」)なのでしょうか?(間違っていたらごめんなさい)。弦による深刻なところを経て、打楽器のリズムに乗り、跳ねるようなクラリネットが楽しい。重厚に始まった曲は、明るく元気いっぱいに締めくくり。ハッピーエンドですね!

ウェーバーの「オベロン」序曲。こちらが今回の私的ハイライトでした!冒頭、ここでもホルンソロが活躍。壮大な世界が広がる響き!高音域でゆったり歌うチェロにうっとりした後、全員合奏の勢いある演奏へ。低音が効いた重厚な響きがカッコイイ!ヴァイオリンがリズミカルに美しく歌うところは、優雅なダンスのよう。深刻になってからは、やはり分厚い音ととりわけ低音のカッコ良さに痺れました!木管群と弦が呼応し合うのにゾクゾク。終盤の華やかかつ重厚な全員合奏がすごくて、まるで交響曲のクライマックスを聴いているかのようでした。なんて壮大!超素敵!この素晴らしい序曲があるのに、オペラ自体が不評だなんて……。しかし、せめて序曲だけでも演奏機会が増えて欲しいと率直に思いました。


後半。はじめは、エロールの「ザンパ」序曲。高音が華やかでパワフルな出だしからガツンと盛り上げてくださいました!冒頭部分だけは私もどこかで聴いたことがあるかも?低音金管のド迫力!穏やかに歌う木管群は、幸先が良い船出のよう。その下で、弦がごく小さな音で小刻みな演奏(トレモロ?)をしていたのが、海のさざ波のように感じられました。明るい盛り上がりはウキウキ楽しい航海で、低音金管がシーンを変え、海が荒れたのでしょうか?弦が力強く深刻になり、荒波のようでカッコイイ!嵐の後(?)の、クラリネットソロが素敵!金管打楽器が華やかに盛り上げて、明るく締めくくり。海の広がりを感じられ、とても面白かったです!

ボワエルデューの「バグダッドの太守」序曲。美しく穏やかな出だしがかえって新鮮でした。高音弦と低弦が呼応しあうのは、幸せな会話のよう。空気を変えた美しいオーボエソロにハッとさせられました。テンポが速くなってからは、弦の上の自在に泳ぐフルートとピッコロ(いつの間にか持ち替え!)がとても華やかで存在感抜群!ひたすら幸せな音楽でした。

ニコライの「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲。冒頭、ヴァイオリンの超高音のトレモロに乗って、ゆったり歌うチェロが素敵!緩やかな全員合奏となる流れに、私は日の出をイメージしました。タタタタタ♪と木管群が駆けだしてからは物語が急展開(?)。弦が少し深刻な表情を見せたり、全員合奏で華やかに盛り上げたり。賑やかな中でも緩急や強弱が細かく変化して、シーンが目まぐるしく変化しているようでした。中盤で低音が効いた不穏なところが唐突に(と私は感じました)登場したのが印象深かったです。ド派手な盛り上がりで締めくくり。もちろん華やかな音楽を今の私なりに楽しく聴くことができましたが、この演目に関しては特に、お話を知っていたらもう少し楽しめたようにも正直思いました。

プログラム最後の演目は、グリンカの「ルスランとリュドミラ」序曲。言わずと知れた超有名曲!私は以前にも札響の演奏で聴いたことがあります(2022年11月06日、指揮は松本宗利音さん)。有無を言わさずテンションMAXまで連れて行かれる、弦の超高速演奏がすごい!全力で来る、思いっきり華やかで明るい音楽!チェロのメロディ、キター!しかし驚いたのは、2回目のチェロのメロディでした。弱音の限界に挑戦した、超ピアニッシシシシ……モ!強弱にこだわるバーメルトさん、ここまでやるんですね!それにしても、とんでもない無茶ぶりですね(笑)。その無茶ぶりに応えて、極限の弱音でも美しくメロディを奏でるチェロの皆様、さすがです!その後は再び全員合奏の大盛り上がりになったので、なおさら極限弱音が印象深かったです。演奏後、バーメルトさんはチェロパートの皆様に起立を促し、会場から大きな拍手が送られました。

カーテンコールで何度も舞台へ戻ってきてくださったバーメルトさん。アンコールにお応えくださいました。おなじみ、モーツァルトの歌劇「フィガロの結婚」序曲ファゴットと弦による出だしから、私はすぐにピンときました。こちらもザ・モーツァルトな定番曲ですね!私は札響の演奏で数回聴いたことがあり、バーメルトさんの指揮でも以前一度聴いています(2022年5月22日 江別にて)。伸びやかで明るい音楽に、安心して身を任せられる幸せ!今回私はメロディ以外の部分を少し意識して追いかけてみました。冒頭のメロディが再登場した時の、フルートとオーボエの幸せな高音が素敵!ヴァイオリンの音階駆け上りをぴたっと追いかけた低弦。低弦のターンにて、休みなく高音を繰り出すヴァイオリン。どのパートも大忙しで、もしかすると本プログラムの9曲もずっとこんな感じだったのでは?と、私はアンコールの段階でようやく気づきました(遅すぎ。ごめんなさい!)。バーメルトさん、札響の皆様、最初から最後までテンションもりもりMAXの大熱演で楽しませてくださり、ありがとうございました!

 

この日の前日に、同じくkitara大ホールで聴いた公演です。「諏訪内 晶子&エフゲニ・ボジャノフ デュオ・リサイタル」(2023/09/15)。初めて出会う音と空気で、ブラームスの愛と情熱に触れる喜び!影が薄くなりがちな第2番は溌剌と、技巧的な面が注目されがちな第3番は歌心たっぷりに!ブラームス大好きな私にとって、忘れられない特別な出会いとなりました。

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

前回バーメルトさんが登場した名曲シリーズはこちら。CD化もされています!「札響名曲シリーズ 森の響フレンド名曲コンサート~バーメルトとワルツを」(2021/11/27)。演目はすべてワルツ!バーメルトさん流の強弱のメリハリがあって各楽器の個性が際立つ澄んだ響きで、バラエティ豊かなワルツを楽しめました。

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

最後までおつきあい頂きありがとうございました。