自由にしかし楽しく!クラシック音楽

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Trio MiinA トリオ・ミーナ第5回公演 小児がんチャリティーコンサート(2023/09) レポート

doshin-playguide.jp
ピアノ三重奏のトリオ・ミーナ(Pf.西本夏生さん Vn.鎌田泉さん Vc.石川祐支さん)による、小児がんチャリティーコンサートがkitara小ホールで開催されました。2019年の第1回から毎年開催(第2回は無観客配信)されている公演も今回で5回目。なお演奏会の収益は「(公財)がんの子どもを守る会」および小児がん研究のために寄付されるとのことです。

また同じ日の夕方には、活動にゆかりあるお子さんや親御さん達を招待しての「キッズ・コンサート」(非公開)も開催されました。私は一昨年のクラウドファンディング支援者向けに案内されたweb限定公開をライブ配信で拝聴。子ども達からのリクエスト曲の演奏を楽しませて頂きました。いつもありがとうございます!そして演奏会当日の小ホールロビーには子ども達の絵がいくつも飾られていました。


Trio MiinA トリオ・ミーナ第5回公演 小児がんチャリティーコンサート
2023年09月22日(金)19:00~ 札幌コンサートホールKitara 小ホール

【演奏】
西本 夏生(ピアノ)
鎌田 泉(ヴァイオリン)
石川 祐支(チェロ)
鈴木 勇人(ヴィオラ) ※賛助出演

【曲目】
久原 琉生:ピアノ三重奏曲「四季 - 中島公園の情景より」(委嘱作品・初演)
ショスタコーヴィッチ:ピアノ三重奏曲 第2番 ホ短調 作品67
シューマン:ピアノ四重奏曲 変ホ長調 作品47

(アンコール)
パート・オブ・ユア・ワールド(リトル・マーメイド)


トリオ・ミーナのコンサートは今回もうれしい驚きの連続で、最初から最後までとても楽しかったです!トリオ・ミーナがいる札幌にいて良かった!と、私は大袈裟ではなくそう思います。久原琉生さんの新作初演は、なじみ深い中島公園の四季を音楽で描いた彩り豊かな音楽。トリオ・ミーナの素敵な演奏を通じて、お若い才能と出会えたのはとてもうれしかったです。また、ショスタコーヴィッチの凄まじさには打ちのめされました!目の前で繰り広げられる丁々発止のやり取りや熱狂的な盛り上がり。その張り詰めた空気と気迫を肌で感じられるのは、まさにライブの醍醐味!トリオ・ミーナの大熱演のおかげで、個人的に今まで「食わず嫌い」だった作曲家に私はとても興味が沸きました。最高の出会いに感謝です!そして、お初のピアノカルテットによるシューマンの充実ぶりが素晴らしかったです!チェロの見せ場があった第3楽章の良さは言うまでもなく、どのパートにも光るところがあり、加えて密な掛け合いがとても生き生き。活動5年目となるトリオ・ミーナに、ゲスト奏者が入ったことで更なる化学反応を見せてくださいました。クラシックの演奏会でこんなにもドキドキワクワクできるなんて、本当にうれしいこと。今回の熱も覚めやらぬ中、気が早いですが、来年や再来年は一体どんな企画が待っていてどんな演奏を聴かせてくださるのか、私は今からとても楽しみです。新作でもなじみの薄い作曲家でも、トリオ・ミーナについていけば大丈夫!

一般向けのクラシック演奏会のみならず、トリオ・ミーナは子ども達からのリクエスト曲による「キッズ・コンサート」も同時開催しています。クラシックのレパートリーとはまったく異なる演目の数々は、アレンジも演奏もすごく大変なはず。頭が下がります。しかしライブ配信を拝見する限り、演奏しているメンバーもとても楽しんでいらっしゃるとお見受けしました。あの石川祐支さんのチェロで「おしりたんてい」の「ぷぅー」を聴けた皆様、超ラッキーですよ(笑)。今回はピアノカルテットの編成でも1曲、ピアノトリオに打楽器(鈴)が入る曲も1曲と、賛助出演の鈴木勇人さんも大活躍!もちろん本気の演奏はクオリティ高く、クラシックがピンとこないお子さん達にもきっと喜ばれたことと存じます。収益の寄附に加え、活動に縁のある子ども達とそのご家族に生演奏をプレゼントするのは本当に素敵なことですね!大切な活動が末永く続いていきますよう、私も微力ながら応援を続けていきたいと思います。


トリオ・ミーナの皆様が舞台へ。ピアノの西本夏生さんは鮮やかな緑色のゆったりしたノースリーブのドレス、ヴァイオリンの鎌田泉さんは黒地に白い花柄のノースリーブのワンピース、チェロの石川祐支さんは黒シャツ姿でした。すぐに演奏開始です。1曲目は、久原琉生「ピアノ三重奏曲『四季 - 中島公園の情景より』」(委嘱作品・初演)。作曲家の久原琉生さんは札幌ご出身。プログラムに掲載されたプロフィールによると、お若いかたでいらっしゃいますが、手がけた編曲は100作品を超える(!)ほどの実績がおありです。またチェロを石川さんに師事。久原さんは以前からトリオ・ミーナのキッズコンサート向け演目(子ども達からのリクエスト曲)の編曲をお引き受けくださっていたそうです。今回は満を持して、トリオ・ミーナによる委嘱&初演で新作が披露されることに!なおプログラムノートの曲目解説は、作曲者の久原さんご自身による執筆でした。「春」は、ヴァイオリンのうねうねした音が草木の芽吹きのよう。大はしゃぎはしないけど、色彩豊かな春の訪れをじんわりと喜んでいるような温かな音楽が心に染み入りました。大きな自然そのもののような、チェロの存在の大きさ温かさがとても良かったです。「夏」では、はじめチェロ、続いてヴァイオリンによる、ギギ……(擬音がうまくなくてごめんなさい!)という掠れた音のインパクト!夏の強い日差しのようでもあり、虫や鳥のざわめきのようでもありました。この少し不穏なところと滑らかに歌うところが交互に登場。ピアノが歌い、弦がかわいらしいピッチカートで彩ったのは、「旺然たる太陽の光」のイメージでしょうか?「秋」は、ヴィヴァルディ「四季」の「秋」と似た印象(と個人的には感じました)の、実りの季節の喜びに胸躍る音楽を流麗に聴かせてくださいました。「冬」は、はじめのキラキラと美しいピアノがとっても素敵!おそらく雪が舞うイメージですね。ヴァイオリンは凍てつく空気のよう。チェロの重低音からは美しいだけではない厳しさと大自然の大きさが感じられました。突如激しい演奏になり(猛吹雪!?)、その後再びキラキラと美しいピアノが登場。続く演奏にハッとさせられました。猛吹雪のシーンを思わせるメロディなのに、ここでは喜びや温かな心が感じられる音楽に変化。確かに北海道の冬は厳しいけれど、中島公園にあるkitaraでは第九やクリスマス公演、ニューイヤーコンサートなどがあり、音楽に親しみ感動あふれる季節でもあるのですよね。私は胸が熱くなりました。中島公園の四季の彩りを、久原琉生さんの新作&トリオ・ミーナによる初演で味わうことができ、感激です!kitaraによく通い、中島公園の春夏秋冬を肌で感じてきた私にとって、大変うれしい出会いとなりました。客席は拍手喝采!そして、客席にいらした作曲者の久原さんが舞台へ招かれ、盛大な拍手が送られました。

2曲目は、ショスタコーヴィッチ「ピアノ三重奏曲 第2番」。曲目解説は鎌田さんでした。第1楽章 はじめのチェロ独奏は超高音(!)で、その妖しさにゾクッとしました。ヴァイオリン、続いてピアノが加わってからも暗闇を彷徨っているよう。タッタッタッタ……と弦の音の刻みから時が動き出し、次第に速く力強くなって、想像を超えた激しさになったのには度肝を抜かれました!不気味な感じだったり、舞曲のようだったり、ピッチカート合戦が始まったり。ピアノも弦もガンガン鳴らすところでは、未知の音が容赦なく飛んできて、怖くさえありました。第2楽章 力強いピアノに乗って、ヴァイオリンとチェロが喧々囂々やり合っているようで、ものすごい気迫!緊迫感ある中で、弦が細かくクレッシェンドを繰り返して波を作り、その妖艶で曲線的な響きがとても印象深かったです。ヴァイオリンとチェロが一緒に、全力のピッチカートをリズミカルに繰り返すのがすごい!第3楽章 はじめの重厚なピアノの和音がものすごいインパクト!ヴァイオリンから始まった、弦2つによる「嘆き」は、美しくもどこかへ連れて行かれそうな、底が見えない恐ろしさ。これは適切ではないかもしれませんが、個人的には日本の昔からの子守歌にある「本当は怖い」部分を垣間見たような気持ちになりました。そのまま続けて第4楽章へ。タッタッタッタ……のピアノとリズミカルで妖しいヴァイオリンのピッチカートにドキドキ。ダンスになってから、大音量のピアノに合わせて2つの弦が激しくピッチカートするのには、それこそ「骸骨の踊り」のような狂気を感じました。その後も、ヴァイオリンとチェロが熱狂的に歌ったり、重低音のピアノに対し弦を細かく叩くような演奏(弓の毛の部分を使っていたので、コル・レーニョ奏法ではない?)で合いの手を入れたり、最高潮の盛り上がりのピアノに対しガッガッガッガッと激しく弦を擦ったり、弦のターンではこれ以上ないほど強奏で歌ったり。とにかく凄まじい演奏に私は圧倒されっぱなしでした!それでも第3楽章の子守歌のようなところの再現、第4楽章のタッタッタッタ……そしてダンス再び、は何とか認識。終盤の弦の超高音に、私は第1楽章の最初を思い起こし、またもやゾクッとしました。あんなに激しかったのに、ラストは消え入るピアノと一緒に弦がごく小さなピッチカートをして締めくくり。ああすごいものを体験しました……!一瞬たりとも目と耳が離せない、極限まで張り詰めた空気に気迫あふれる演奏。トリオ・ミーナの皆様すごすぎます!私は息つく間もないほどのめり込み夢中になりました!

後半は、ヴィオラの鈴木勇人さん(衣装は黒シャツでした)をゲストにお迎えし、ピアノカルテットの編成によるシューマン「ピアノ四重奏曲 変ホ長調。曲目解説は前半が西本さん、後半が石川さんでした。第1楽章 そっと始まった序奏の温かさ!ぱっと華やかになって、チェロが堂々と歌ったり、ヴァイオリンがたくさんの音を繰り出しながら浮かび上がってきたりと、明るく快活な音楽にシューマンらしさを感じました。また弦がユニゾンで低音を響かせるのは、解説にもあったベートーヴェンを思わせる良さ!緊迫感ある音の刻みや、脈打つように何度も来る盛り上がりの波。とても生き生きとした演奏は、気の合う仲間うちでの活発な語らいのようにも感じました。ラストは余韻を残さず、ピアノの低音の一打で潔く締めくくったのも印象的。第2楽章 冒頭、チェロとピアノのユニゾンによる速く緊迫感ある演奏にドキドキ。あと2つの弦が参戦し、4人で足並みを揃えた上で高速に駆け抜けるのが超カッコイイ!1つめのトリオでは、3つの弦のうち2つが歌い1つがピッチカートという形式で、組み合わせを変えながら密に絡む演奏。2つめのトリオは、ピアノと弦が呼応しあう形。足早に駆けていく楽章の中で、2つのトリオが差し色になっていたようでした。第3楽章 演奏に入る前に、チェロが通常とは異なる調弦(C線を全音低いB♭音に。スコルダトゥーラというそうです)。こちらの楽章が最高に素敵でした!冒頭チェロのテーマは、解説にも「この曲の一番の聴きどころ」とありましたが、いざ実演に触れると……ああ素敵すぎて!愛に満ちあふれた美しさ……いえこの素晴らしさを書き記すにはどんな言葉でも足りない、適切な表現が思い浮かびません。ごめんなさい!しかし私はこんなチェロを今まで聴いたことがなく、あまりの衝撃にその時は心身の震えが止まらず、ちょっと大変でした。生演奏はその場で消えてしまうのが惜しいです!願わくばこの感じをずっと覚えていたい……。ヴァイオリンがメロディを引き継ぎ(こちらも素敵でした!)、そこに重なるチェロの風格たるや!ヴィオラが主役となって歌ったところは優美かつ少し寂しげで、胸に来ました。大樹のようなピアノに乗って、3つの弦が甘く切なく歌うのが美しい!終盤では、チェロがぐっと落ち着いた艶っぽい音色で歌い、またもや心揺さぶられました。チェロが調弦を通常に戻してから、第4楽章へ。 タッタッター♪とユニゾンでの輝かしい出だしがインパクト大で、最初からとても華やか。高速で駆け抜けるヴィオラ→ピアノ→ヴァイオリンがすごい!音階を上下するピアノと、ゆったり歌うチェロがシューマンらしい感じで素敵!4人で足並み揃えて音を刻む演奏が大迫力!よどみなく流れる音楽は明るく自信に満ちていて、その勢いに身を任せるのは快感でした。うんと華やかに堂々たる締めくくり。なんて充実の演奏!室内楽の良さをめいいっぱい楽しめた、幸せな時間でした!

カーテンコールにて、子ども達から出演者の皆様へ花束贈呈がありました。ピアノの西本さんがマイクを持ち、ご挨拶とトーク。トリオ・ミーナの活動が5年目となる事(第1回公演の時から比べて、体力面での不安が出てきたという率直なお話も)や、がん闘病中および治療を終えた子ども達とその家族へ向けたキッズコンサートについてのお話がありました。キッズコンサートのリクエストには、想像以上に様々なジャンルの曲が寄せられるそうで、それらを演奏するのは大変とのこと(そうですよね!)。いつもたくさんの曲のアレンジをお願いしている久原琉生さんに「満を持して」新作を委託・初演することができた喜びを語られました。そして今回はもう一つの新たな試みとして、ピアノカルテットの編成での演奏をしたことと、賛助出演の鈴木勇人さんの紹介もありました。

アンコールは、キッズコンサートの演目の中から「パート・オブ・ユア・ワールド(リトル・マーメイド)」。ヴィオラの鈴木さんは客席へ移動され、ピアノトリオによる演奏でした。切なく美しく歌うヴァイオリンはまさにヒロイン!ピアノはキラキラと光のようで、低音から高音まで行き来しながら優しく支えるチェロは大きな海のようでした。ラスト直前に一瞬沈黙があった後、ヴァイオリン、続いてチェロが歌い、しっとりと締めくくり。耳なじみのある、希望と優しさに満ちた音楽に癒やされました。関係者のみの夕方のキッズコンサートから、一般向けの夜のクラシックコンサートまで、今回も超充実の演奏をありがとうございました!終演後、私はロビーで募金箱に心ばかりの寄付をして、会場を後にしました。コンサートを心から楽しむことで、大切な活動をほんの少しでも支援できるのは大変ありがたいこと。来年も再来年もずっと、素敵な企画と演奏を楽しみにしています!


一昨年度の公演のレポートです(昨年度の公演は、私は諸事情で聴けませんでした。申し訳ありません)。「Trio MiinA トリオ・ミーナ第3回公演 小児がんチャリティコンサート」(2021/11/23)。クオリティの高さと楽しさ親しみやすさが同居する、心温まる演奏会。隠れた名曲グラナドスに王道メントリの素晴らしさ。そして世界初演パスカル・ヒメノは斬新で超面白かったです!

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最近聴いたKitara小ホールでの演奏会。ヴィオラの鈴木勇人さんがご出演されています。「札幌・リトアニア文化交流コンサート」(2023/08/28)。リトアニアの大スター・ミシュクナイテさんの圧倒的なお声と表現。信頼のメンバーによるピアノと弦。「歌の国」リトアニアの精神に触れ、その音楽にどっぷり浸れた幸せな時間でした。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。