自由にしかし楽しく!クラシック音楽

クラシック音楽の演奏会や関連本などの感想を書くブログです。「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ(http://nyaon-c.hatenablog.com/)」の姉妹ブログです。

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Trio MiinA トリオ・ミーナ第3回公演 小児がんチャリティコンサート(2021/11) レポート

ameblo.jp
↑「ピアニスト西本夏生オフィシャルブログ」にて、今回の演奏会のレポート記事が公開されています。臨場感あふれ、出演者ならではのお気持ちが伝わる楽しい文章です。写真もたっぷり♪

ピアノ三重奏のトリオ・ミーナ(Pf.西本夏生さん Vn.鎌田泉さん Vc.石川祐支さん)の第3回公演がkitara小ホールで開催されました。昨年の第2回は無観客配信で、クラウドファンディングを経て今年は観客入りの公演が実現。開催おめでとうございます!とても楽しみにしていました。なお演奏会の収益は「(公財)がんの子どもを守る会」および小児がん研究のために寄付されるそうです。

また前日夕方には活動にゆかりあるお子さんや親御さん達を招待しての「キッズ・コンサート」(非公開)も開催されました。私はクラウドファンディング支援者向けに案内されたweb限定公開をライブ配信で聴き、トレンド曲の演奏の数々を楽しませて頂きました。ありがとうございます!そして演奏会当日の小ホールロビーには子供達の絵がいくつも飾られていました。


Trio MiinA トリオ・ミーナ 第3回公演 小児がんチャリティコンサート
2021年11月23日(火・祝)18:30~ 札幌コンサートホールKitara小ホール

【演奏】
西本夏生(ピアノ)
鎌田泉(ヴァイオリン)
石川祐支(チェロ)※札響首席チェロ奏者

【曲目】
E.グラナドスピアノ三重奏曲op.50
P.ヒメノ:ピアノ三重奏曲ハ短調<委嘱作品・初演>

F.メンデルスゾーンピアノ三重奏曲第1番ニ短調op.49

(アンコール)葉加瀬太郎情熱大陸 ※ピアノトリオ編曲版


トリオ・ミーナの皆様と第1回公演から2年ぶりに再会でき、同じ会場にいてその素敵な演奏を聴けて幸せです!新作から王道まで個性豊かな3つのピアノ三重奏曲の演奏、最高でした!クオリティの高さと楽しさ親しみやすさが同居する、心温まる演奏会。メンバーの皆様のお人柄の良さがうかがえました。大切な活動を続けてくださっていることに改めて感謝です。そして感染症拡大リスクが落ち着いている今、同じ日にいくつもの別公演が開催されていたにもかかわらず、このトリオ・ミーナの公演を選んで足を運んだかたが大勢いらしたことに私は感激しました。チャリティと声高に主張しなくても、人々が純粋に音楽を楽しむことで支援に繋がるのは素敵ですよね。

プログラムの冒頭には主催のまつもと小児科・大島淳二郎様のごあいさつ文がありました。さらにクラウドファンディング支援者にはA4用紙2枚にわたる活動報告書も。ご多忙の中、活動の始動から今日に至るまでご尽力くださりありがとうございます。大島様はクラウドファンディング支援者とのメールやりとり、当日受付といった事務的なこともされていました。頭が下がります。そして委託作品の作曲者であるパスカル・ヒメノさんのメッセージ文(日本語訳は西本さん)もありました。活動趣旨をご理解くださった上で、素晴らしい作品を提供くださり感謝です。なお曲目解説は出演者の皆様による執筆(グラナドスは石川さん、ヒメノは西本さん、メンデルスゾーンは鎌田さん)。曲の合間のトーク担当は西本さんでした。


出演者の皆様が舞台に登場。鎌田さんはえんじ色のキャミソールドレス、西本さんは上が黒で下が白のドレス、石川さんは黒シャツに白×黒のネクタイ姿でした。すぐに演奏開始です。最初の曲はグラナドスピアノ三重奏曲。私が昨年の無観客配信で一目惚れしたこの曲、今回全楽章を生演奏で聴けたのが本当にうれしかったです。日本での演奏機会は少ないと思われますが、隠れた名曲ですよね。もっと評価されてよいと思います。第1楽章は、水面のようなピアノと船の汽笛のような低音のチェロから始まり、海風のようなヴァイオリンが入っていざ航海へ(と私は勝手にイメージ)。ぱあっと視界が開けるようなのびやかな音楽に早速引き込まれました。明るいだけでなく陰が感じられるのがとっても素敵。続いてポンと印象的なピッチカートから入る第2楽章は、独特のリズム感にドキドキ。そして昨年の配信でも聴いた第3楽章へ。ゆったりしたピアノに歌う弦の優しさ美しさ!今回はライブで聴けて、美しいだけでなく、弦の複数の音が重なるときに一瞬悲しみも垣間見えた気がしました。第4楽章はゾクゾクするカッコ良さ!グラナドスだから?スペイン系だから?理由はわかりませんが、普段自分が耳慣れた音楽とはカラーが違う音楽は新鮮でした。最後は速いテンポになって明るく締めくくり。ずっと夢中になれた演奏でした!

2曲目はいよいよパスカル・ヒメノ「ピアノ三重奏曲ハ短調」の世界初演です。作曲家曰く、この曲は楽しそうな見た目とは裏腹に音楽的にも技術的にも「最高の難易度」だそう。様々な仕掛けがある第3楽章以外は、スペインでも同時(現地時間12時頃、日本時間は19時頃)に演奏されたとのことです。クラシック音楽の色々な要素を取り入れた第1楽章は、とにかくカッコイイ!重厚さはあるものの耳慣れたドイツ系とはちょっと違う独特のリズム感。そのユニークなリズムに合わせて弦が音を小刻みに刻んだりピッチカートしたり。何度か入ったピアノ独奏が西本さんにぴったりな雰囲気で、この独奏を挟んで曲のカラーが変化していました。ヴァイオリンがキュイーンと高音を弾きながら少しずつ消え入ったラストも印象に残っています。続いてヒメノのピアノ独奏曲“NATSUKI”(西本夏生さんのお名前。西本さんに献呈されたそうです)をもとに書かれた第2楽章。あのハバネラのリズムに東洋的なメロディがハマっているのがとても新鮮!弦2つの重なりで、「ヴァイオリンの高音がメロディ・チェロの低音が下支え」はよくあるパターンですが、この曲はそれだけでなく「チェロの高音がメロディ・ヴァイオリンの低音が下支え」があったのが個人的にツボでした。私、チェロの高音もヴァイオリンの低音も大好きなんです!この2つを組み合わせてくださるなんて、ヒメノさんありがとうございます!そしてウワサの第3楽章へ。斬新で超面白かったです!私、一生忘れません(笑)。レポートはネタバレしていますので、今後演奏機会があった際にまっさらな状態で聴きたいかたは読み飛ばしてください。この楽章では3つの楽器にキャラ設定がされ、ヴァイオリン(気取り屋)が「きらきら星」のメロディを大真面目に提示、しかし引き継ぐチェロ(いじわる)やピアノ(おっちょこちょい)は「思ってたんと違う」演奏でこたえる。これがバリエーション豊かに繰り返され展開する形式でした。ヴァイオリンの「きらきら星」を、初めの数回は「微妙に違う」形でチェロやピアノが再現。鎌田さんは首をかしげたり目力で他の2人に訴えたりしながら、諦めずに何度でも「きらきら星」を演奏します。しかし引き継ぐ方はそのうちタンゴ風やクリスマスソング風など、どんどん大胆な変奏(笑)に。私は「次はどう来るかな?」とワクワクしながら聴いていました。個人的に衝撃だったのが、石川さんがチェロをガーガーとひっどい音(えええええー!!)で弾いたシーン。うわああん石川さんがおかしくなっちゃった(←)。演出とわかっていても、あの石川さんの素敵すぎるチェロがこんな変な音を発するなんて!これは事故!と、私はもうパニックです。石川さんの肩をトントンして正気に戻してくださった西本さんありがとうございます(笑)。その西本さんも演奏中にピアノのイスから落ちてパタッと床に倒れる(!)迫真の演技。西本さんの肩をトントンして正気に戻してくださった譜めくり係のかたありがとうございます(笑)。せっかくまともな(?)演奏が再開しても一筋縄ではいきません。石川さんと西本さんの2人で勝手に演奏が盛り上がり、お2人が肘タッチして喜んでいるのを、鎌田さんが「もう!」とプンスコする場面も。こんなカオスが全部楽譜に書いてあるのも驚きですが、それをコント的なお芝居コミで演奏しちゃうお三方だってタダモノではないです!最後はしっかり揃ってジャズ風の演奏で楽しく締めくくり。すごいものを聴かせて(見せて)頂きました。ありがとうございます!


後半はピアノ三重奏曲の代表格、メンデルスゾーンピアノ三重奏曲第1番」です。ついにトリオミーナの生演奏で「メントリ」を全楽章聴ける!と私は始まる前からドキドキ。そして第1楽章の冒頭チェロに一瞬で落ちました……昨年の無観客配信で予習済みだったのに、身構えていたのに、この体たらく。私は無駄な抵抗をやめて、身も心もすべて演奏に預けることにしました。それにしても前半のあの衝撃の後でこのチェロは反則です!ちなみにチェロを引き継いだヴァイオリンの切ない高音も素敵で、私はすぐに我に返りましたよ念のため。弦に絡むピアノも三者一体となって進む情熱的な演奏に、私は没頭し心揺さぶられました。続く「無言歌」のような美しさの第2楽章では、まずロマン派のピアノ小品のようなピアノ独奏にうっとりして、歌う弦に再びやられました。前の楽章の厳しさとはガラリと変わり、音色がまるくなってとても優しい。もう反則!楽しくスキップするような第3楽章(演奏は大忙しで大変だと思われます)を経て、大本番の第4楽章へ。ハンガリー舞曲を思わせるような音楽が速いテンポで繰り返されるのがインパクト大!そんな中で時折ゆったりと弦が歌うところが入るのが印象的でした。だんだん速くなりクライマックスは全員が全力疾走のすごい熱量!素晴らしい演奏を聴かせて頂きました。ありがとうございます!

カーテンコールの際、小さい子から大きい子まで3名の子供たちが1つずつ花束を持って舞台へ登場。出演者の皆様に花束贈呈が行われました。アンコールは、おなじみ葉加瀬太郎情熱大陸」のピアノ三重奏バージョン!西本さんのお話によると、今回の公演のためにピアノトリオ版に編曲され、そのアレンジャーのかたも会場にいらしていたとのこと。前日夕方にあった「キッズコンサート」でも演奏された曲です。私は前日のライブ配信を聴きながら、カッコイイ♪アンコールはこの曲でお願いします♪と密かに思っていたので、心の中で「キター!」と叫びました。目の前で聴けた演奏はもう超カッコ良かったです!序奏から生き生きとリズム感のあるピアノにドキドキ。チェロのギターをかき鳴らすようなピッチカートに目が釘付け。そして主にメロディを弾くクールなヴァイオリンが素敵!ヴァイオリンとピアノの基本の組み合わせに、下から支えるチェロが入るとさらにカッコ良さが増します!アレンジャーのかたにも大感謝です。よく知る曲をスペシャルな演奏で聴けて、最高です!

終演後、私はロビーで募金箱に心ばかりの寄付。出口付近にいらした鎌田さんにごあいさつしてから会場を後にしました。今シーズン遅めの初雪がちらついたこの日、外はとても寒かったですが、気持ちはとっても温かかったです。素敵な演奏会をありがとうございました!次回開催も楽しみにしています!


弊ブログの記事「Trio MiinA 第2回公演(無観客収録・無料配信)およびクラウドファンディングについて(2020年)」に、昨年の活動の紹介と配信内容の簡単なレビューがあります。とても大切で息の長いプロジェクト、私はこれからも応援しています!

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チェロの石川さんが出演された2021/09/02「ワールド・チャリティーコンサート ヴァイオリンの名手 大谷康子と札響3人の首席奏者たち&ピアノ佐藤卓」のレビュー記事へのリンクも貼っておきます。ピアノトリオの曲が2つも!我が町にkitaraと札響があってよかったと改めて思えた、幸せな演奏会でした。

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なお石川さんは、2022/3/17(2021/9から延期)に「<Kitaraアクロス福岡連携事業> 安永徹&市野あゆみ~札響・九響の室内楽」にご出演予定。私はとても楽しみにしています!


最後までおつきあい頂きありがとうございました。