自由にしかし楽しく!クラシック音楽

クラシック音楽の演奏会や関連本などの感想を書くブログです。「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ(http://nyaon-c.hatenablog.com/)」の姉妹ブログです。

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ワールド・チャリティーコンサート ヴァイオリンの名手 大谷康子と札響3人の首席奏者たち&ピアノ佐藤卓史(2021/09) レポート

テレビでおなじみのヴァイオリニスト大谷康子さんとシューベルト弾きとして知られるピアニスト佐藤卓史さんが、我が町のオケ・札響の首席奏者の皆様と協演!平日昼間でも絶対に聴きたい!と、私は早い段階でチケットゲットし、とても楽しみにしていました。ワールド航空サービスがツアー参加者のために企画したチャリティーコンサートで、収益の一部は日本赤十字社へ寄付されるとのことです。


ワールド・チャリティーコンサート ヴァイオリンの名手 大谷康子と札響3人の首席奏者たち&ピアノ佐藤卓
2021年9月2日(木)13:30~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【出演】
大谷康子(ヴァイオリン)
佐藤卓史(ピアノ)
桐原宗生(ヴァイオリン)
廣狩亮(ヴィオラ
石川祐支(チェロ)
吉村怜子(オルガン)

【曲目】
パイプオルガンの演奏

第1部 ストラディヴァリウス『ウィルヘルミ』の調べ~感謝~

第2部 旅で人生を楽しもう

(アンコール)


親しみやすい曲の数々を、最高の演奏で、しかも最高のホールにて楽しめて超幸せです!我が町にkitaraと札響があってよかったと改めて思います。そして生演奏では初めてお目にかかった大谷康子さんは、とっても素敵なかたでした。演奏が一流なのはもちろんですが、曲の合間のお話も演出も楽しく、チャーミングなお人柄でお客さん達の気持ちを惹きつけて会場は終始和やかで楽しい雰囲気。大谷さんは、プロの司会ナシ、カンペなしで、いつも客席の方を見てご自分の言葉でにこやかにお話されました。素晴らしいです!また大谷さんは、共演を重ねてきたピアノの佐藤卓史さんだけでなく、おそらく初対面に近い札響3人の首席奏者の皆様ともまるで昔からの仲間のように自然なアンサンブルをつくりあげていらっしゃいました。大谷さんは、レギュラー出演されているBSテレ東『おんがく交差点』では毎回様々なジャンルのかたと共演なさっていますが、どんなかたとも自然にコラボできるってすごいことですよね。大スターの大谷さんが、札響メンバーおひとりおひとりを「スター」とご紹介くださったのが札幌市民としてとてもうれしかったです。そして大谷さんは毎回衣装が素敵な番組と同じように、今回の演奏会でも前半は白×ネイビーのドレス、後半は真っ赤なドレスと、華やかな装いで私達を目でも楽しませてくださいました。ちなみに今回共演した男性陣は全員黒いスーツに黒シャツを首元までボタンを閉じ、ノータイでした。

私はkitara大ホールで室内楽を聴くのは“お初”だったのですが、イイですね!オルガンの大音量も弦の繊細な音もキレイに響いて、kitara大ホールは大編成のオケだけじゃないんだとわかってうれしくなりました。今月はkitara小ホールでの室内楽(今回ご参加のヴィオラ・廣狩さんとチェロ・石川さんが出演予定)も聴ける予定なので、響きの違いを知るのも今から楽しみです。

客席は、P席全部とLA・RAブロックのうちP席寄りの半分は未使用。また私が見た限りの印象では、客席の1階にツアー参加の皆様、2階以上に招待客と一般客が入っていたようでした。1階はツアー参加単位(おそらくご夫婦やお友達グループ等)で着席してそれぞれの間は1,2席空けていましたが、2階席以上は座席間隔は空けずにぎっしり配置され、平日昼間にもかかわらず9割近い席が埋まっていました。


はじめは吉村怜子さんによるオルガンの演奏。私は改修後のkitaraのオルガンを聴くのはこれが初めてでした。懐かしい荘厳な音色!以前の私は、オルガンの大音量は耳に触って少し苦手でした。しかし改修工事の効果かあるいは私自身が変化したのか、今回は直に伝わってくる振動と大音量に包まれる感覚が心地よいと感じました。以前の刺さるよう音が、少し柔らかくなったかも(?私の素人感覚なのであてになりませんが)。kitara大ホールの紹介として、はじめにオルガンの演奏を組み込んだのはグッジョブでしたね!吉村怜子さん、トップバッターで素晴らしい演奏をありがとうございました!

第1部は、大谷康子さんの愛器「ストラディヴァリウス『ウィルヘルミ』」の調べをたっぷり楽しむ会です。ハイドンのみピアノトリオ(ピアノ×ヴァイオリン×チェロ)で、他はヴァイオリンとピアノによる演奏でした。大谷さんと佐藤さんが舞台に登場し、早速演奏開始です。『おんがく交差点』のBGMにもなっているエルガー「愛の挨拶」の甘く美しい響きに、あっという間にお客さん達は引き込まれ、掴みはバッチリOK。J.S.バッハG線上のアリアでは、編曲者のウィルヘルミが使用していた楽器を今まさに大谷さんが手にしている!と、その演奏にお客さん達の目と耳が釘付けに。私も、想像していたよりも低いヴァイオリンの深い音色を味わいつつ、これを弦1本(G線)で弾いている!?と2階席から大谷さんの手元に注目しました。元々はピアノ独奏曲というグリーグ「感謝」は、少し切なく優しい音色が胸にしみます。大谷さんは、昨年のSTAY HOME期間中に様々な思いを込めてこの「感謝」の演奏動画をネットに公開したところ、大きな反響があり、なんと上皇后美智子さまからお電話でお褒めの言葉を賜ったのだそうです。続くクライスラー「愛の喜び」は、うれしい気持ちがあふれる華やかな演奏に気分がアガります。マスネ「タイスの瞑想曲」は、低い音から高い音まで『ウィルヘルミ』の奏でる多彩な音にうっとりハイドン「ジプシー・トリオ」より第3楽章は、チェロ・石川さんが入場しトリオで演奏。私は以前、石川さんが参加するトリオ・ミーナの演奏会で全楽章の演奏を聴いたことがあります(2019/12/18)。今回は一番の聴かせどころである第3楽章を大ホールで聴ける!と心の中で大喜び。軽快なテンポのピアノとシンクロしながらのヴァイオリンとチェロによる掛け合いが見事で、もう超カッコイイ!やはりジプシー風の音楽ってイイ!そして第1部のラストを飾るのは、ジプシー音楽の定番であるサラサーテツィゴイネルワイゼン。私、一度生演奏で聴いてみたかったんです!先日のジプシー音楽をテーマにした札響名曲シリーズ(2021/08/21)では惜しくも取り上げられなかったので、今回の演奏になおさら期待が高まりました。大谷さんはこの曲を演奏会で4000回以上(!)演奏されているそうで、演奏する度に新たな発見があるのだとか。左手ピッチカート等、見た目で分かる超絶技巧は素人目にも圧倒されましたが、なんといってもヴァイオリンの音色が超素敵!貴婦人のような上品さだけでなく、こんなミステリアスで影を感じさせる音も奏でられるなんて!もちろんこのヴァイオリンと自然にとけあい一緒に音楽をつくりあげるピアノもまた素晴らしいです。

第2部は、「旅」をテーマにした室内楽の会です。ワルツにポルカギャロップと、まるでウィーンフィルニューイヤーコンサートのような演目がずらり。フルオケが必要?いえいえ、大谷康子さんと札響3人の首席奏者たちによる弦楽四重奏、最強でしたから……!このムダのない黄金比率で、奥行きも華やかさも出せてかつ音楽に命が宿るんですね。メロディもハーモニーも主役も下支えも各パートが際立つ分、オケとはまた違った良さを感じました。これにピアノが加わるピアノ五重奏になったらもう無敵!第2部の1曲目は、ワルツ王・J.シュトラウス2世のワルツ「人生を楽しめ」弦楽四重奏で。ウィーン楽友協会のこけら落としで初披露されたという華やかなワルツを聴くと、すっかりウイーンを旅している気分に。続いて「北国のヨハン・シュトラウス」と呼ばれるロンビの「シャンパン・ギャロップ弦楽四重奏に加えシャンパンのコルクが飛ぶ効果音を出す打楽器が入り、その打楽器担当がなんとピアノの佐藤さん!スピード感のある弦楽四重奏の演奏の合間に絶妙なタイミングでポン!と音が入るのが面白くて、私はつい佐藤さんばかりを追いかけてしまいました。ピアノとはまるで勝手が違うはずなのに、とってもお上手です。シャンパンとくれば、サッポロならビールでしょ!ということで、次はチェコの作曲家ヴェイヴォダの「ビヤ樽ポルカ弦楽四重奏で。こちらの明るい曲、私はなんとなくですがBGMで聞き覚えがあるような気がしました。その時はアコーディオンだったかも?

そして私的今回のハイライトは、ツィーラーオペレッタ「観光案内人」より「恋に落ちて」。おそらく原曲ではオケと声楽の組み合わせになるのでしょうが、ここではピアノトリオによる演奏でした。これがもう本当に素敵で素敵で……。ロマンティックなピアノを背景に、チェロとヴァイオリンのゆったりとした演奏ががまるでお互いを思う2人の会話のよう。こんな演奏が聴けるなんて、私、生きててよかった……!会場の空気が一変したのは、こちらを聴いてたちまち恋に落ちた女性(男性も?)が多数いたから思われます。だって、チェロ石川さんが静かに退場されたとき会場は拍手を忘れていたほどなんですよ。その余韻が残っている中、続く曲はヴァイオリンとピアノによる演奏でヘス「ラベンダーの咲く庭で」。ひとりになった女性が誰もいないラベンダー畑に佇み、哀しみを抱えながらも前を向くような(妄想炸裂)、ヴァイオリンが美しくて、溜息が出ます。

気持ちを切り替えて(?)、後半は明るい曲が並びました。行進するように舞台へ登場した皆様のうち、大谷さんと佐藤さんともうお一方(選曲担当のかただそう)が駅員さんの帽子を被っていました。ロンビ「コペンハーゲン蒸気機関車ギャロップは、弦楽四重奏に加え、汽笛や発車合図の鐘を思わせる打楽器が入る演奏。出発進行!のかけ声で演奏開始、導入部分がヴィオラから穏やかに始まったのが印象的でした。しだいに演奏が速くなり、機関車がスピードをあげているなとわかります。時折カンカンという鐘の音や汽笛の音が入るのも楽しい。なおこの曲は、鉄道をテーマにした次回の札響名曲シリーズ(2021/09/26)でも取り上げられる予定と、大谷さんからアナウンスがありました。私、室内楽の編成でいち早く聴けちゃいましたよ!きっとお親しいのでしょう、大谷さんは指揮の秋山和慶さんのことを「鉄ちゃん(鉄道マニアのこと)」とお呼びになっていましたね。J.シュトラウス2世のポルカ「明るく行こう」弦楽四重奏による演奏で明るく盛り上がり、ピアノが加わったピアノ五重奏でプログラム最後の曲であるJ.シュトラウス2世のワルツ「美しく青きドナウの演奏に。発表当初ウィーンで不評だった曲が、パリ万博でウケて、逆輸入のような形でウィーンでも定番曲となったとのお話がありました。日本でもおそらく知らない人はほとんどいない「美しく青きドナウ」、そんないきさつがあったのですね。出演者5名が初めて本来の形で揃った演奏でもあり、呼吸が合った素晴らしい演奏でよく知る曲を楽しませて頂きました。

アンコールは定番のJ.シュトラウス1世「ラデツキー行進曲。ピアノ五重奏による演奏は、オケに負けない華やかさです!大谷さんはご自身も演奏しながら客席に手拍子の合図。聴き手としては手拍子で演奏に参加できるのは楽しいです。しかし、奏者の皆様は慣れておられるのかもしれませんが、このテンポが安定しない微妙な手拍子に合わせて演奏するって大変ですよね。手拍子が一旦おさまる中間部は、これぞウィンナ・ワルツの神髄!と感じられる心地よいリズムで演奏を聴けました。ラストは客席が手拍子で全員参加し、大盛り上がりで締めくくり。楽しかったです!最初から最後までめいいっぱい楽しませてくださり、ありがとうございました!


カーテンコールの後に、出演者の皆様への花束贈呈がありました。ひまわりをメインにした夏らしい爽やかな花束が素敵。終演後の分散退場は、まずツアー参加者の乗車バスの番号順に呼ばれ、最後に「それ以外のお客様」と、今回ならではだったのも印象的でした。座席はエリア別にきっちり分けられていましたが(感染症拡大リスクを考慮したのかも?)、遠方よりいらした皆様と楽しい時間と空気を共有できて私はうれしかったです。ワクチン接種済みと思われる世代のかたたちが、添乗員付きでクラシック音楽鑑賞のようなクローズド&感染症拡大リスクが低いメニューで組まれたツアーに参加されたことを、私は素敵だと思います。私だって、このご時世に後ろめたい気持ちを抱えながらもコンサート三昧の日々を送っています。しかしイベントがオンライン開催ばかりになっている今、その場にいなければ味わえないものが確かにあると、私は心からそう思っているのです。演奏会も旅もきっと同じ。もちろん今はそれどころじゃない人が大勢いらっしゃるのも理解しています。それでも、上から目線のつもりも開き直るわけでもなくて、自分の楽しみがせめて経済を回すことで世の中への小さな支援になればいいな、とおこがましくも考えています。まだ先が見えない状況ではありますが、可能なかたは感染症対策をきちんとした上でコンサートも旅行も楽しんで、免疫力UP&経済を回していきましょう!今回ツアーでお越し下さった皆様、今の状況が落ち着いた暁にはどうぞまたkitaraにいらして、次は札響オールスタープレーヤーたちによるフルオーケストラの演奏会をぜひ聴いてくださいね。


この2日前(2021/08/31)に聴いた「ほくでんグループ創立70周年記念 第530回ほくでんファミリーコンサート」のレポートは以下のリンクからどうぞ。北海道電力さんが無料招待くださった演奏会で、kitara大ホールにて札幌交響楽団の演奏をたっぷり楽しませて頂きました。

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

YouTubeチャンネル『歌うヴァイオリン大谷康子の「やっこチャンネル」』では、大谷康子さんのヴァイオリン演奏とお話を楽しめますよ。ネット環境さえあればいつでもどこでも楽しめるのが動画配信の良いところ。今回の第1部で演奏された曲もたくさんUPされています。

www.youtube.com


アンコール定番曲の「ラデツキー行進曲」、なんと札幌交響楽団による演奏を無料公開動画で聴けちゃいます!無観客収録のため客席からの手拍子ナシですが、その分いつもは聴けない純粋なオケの響きで演奏を楽しめますよ。オンライン開催となった音楽宅急便「クロネコファミリーコンサート」2021の最後に収録されています。もちろん他の演奏もすべて素敵なので、動画は最初から最後までぜひ聴いてくださいね。その動画へのリンクと簡単な感想も書いた弊ブログの記事「2020年 札幌交響楽団 動画配信および非売品CDについてのまとめ」も、よろしければご一読ください。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。