自由にしかし楽しく!クラシック音楽

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Kitaraあ・ら・かると きがるにオーケストラ ココロおどるアメリカン・ミュージック(2022/05) レポート

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実に3年ぶりの開催となった、ゴールデンウィーク恒例のKitaraあ・ら・かると。今回の「きがるにオーケストラ」は、札幌ご出身の若手指揮者・太田弦さんと札響によるアメリカ音楽です。またソリストには第18回ショパン国際ピアノコンクール(2021年開催)のセミ・ファイナリストである角野隼斗さんをお迎えするということで、企画発表当時から話題になっていました。なおチケットは全席完売。また高校生以下500円(!)というサービス価格設定のためか、会場には親子連れが大勢いらっしゃいました。ちなみに私も今回は高2の息子と一緒でした。

Kitaraあ・ら・かると きがるにオーケストラ ココロおどるアメリカン・ミュージック
2022年5月3日(火)15:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮・お話】
太田 弦

【ピアノ】
角野 隼斗

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島高宏)

【曲目】
スーザ:星条旗よ永遠なれ
アンダーソン:シンコペイテッド・クロック
アンダーソン:フィドル・ファドル
ガーシュウィンラプソディ・イン・ブルー
ソリストアンコール)ガーシュウィン:スワニー

バーンスタイン:「ウェスト・サイド・ストーリー」より シンフォニック・ダンス
バーバー:弦楽のためのアダージョ 作品11
J.ウィリアムズ:「スター・ウォーズ」より メイン・タイトル
(アンコール)J.ウィリアムズ:映画「スター・ウォーズ組曲より インペリアル・マーチ


音楽って楽しい♪改めてそう思えた、とっても楽しい演奏会でした!私はいつもの札響定期はかなり背伸びして聴いていますが(こちらのピリッとした空気も良いモノです)、今回のようにリラックスして文字通り「きがるに」聴くコンサートも楽しい♪会場は終始和やかな雰囲気だったので、普段クラシック音楽になじみがない人達も思いっきり楽しんでいらしたのでは?親しみやすい演目が揃っていたのに加え、今をときめくピアニスト・角野隼斗さんに、勢いがある若手指揮者・太田弦さんが、トークや演出でも盛り上げてくださいました。しかし何より演奏自体が素晴らしいからこその盛り上がりだったと私は思います。私は角野隼斗さんの生演奏に触れるのは初めてでしたが、鍵盤ハーモニカ(!)を使う離れ業以外にも、素人目には即興的でとっても自由に楽しく演奏されているように感じました。これは聴いていて楽しい!もちろん土台がしっかりしているからこそ「外せる」のだと思われますが、そんな水面下の努力や苦労を微塵も感じさせない、生き生きとした演奏には誰もが惹きつけられるはず。また指揮の太田弦さんは、思いっきり勢いのあるところも、しっとりと美しいところも、メリハリがはっきりした演奏で、オケから多彩な表情を引き出してくださいました。札響とは何度もご一緒くださっている太田さん、オケとの信頼関係がしっかり出来上がっていますね!そして若きマエストロの思いを形にする札響だってすごいです。言うまでも無く「きがるに」というのは聴く側の視点で、演奏自体は真剣そのもの。アメリカ音楽と一言で言っても、個性が異なる演目をいくつも取り上げるのはそれぞれ別のアプローチで向き合うことになり、準備は大変だったと存じます。個人的には、札響は独墺系の重厚な管弦楽のイメージが強く、それとはカラーがまるで違う曲の演奏をクールにキメてくれたのにはドキドキしちゃいました。華やかなソロパートをカッコ良く演奏してくださったかたはもちろん、澄んだ音色で土台となる弦に美しく彩る木管、パワフルな生命力の金管、キレッキレのリズムを刻む打楽器。オケのお一人お一人が最高のパフォーマンスをなさっていた印象です。札響の皆様、普段とは客層が異なる今回も、本気モードかつ素敵な演奏をありがとうございます!我が町のオケ最高です!


札響の皆様、続いて指揮の太田さんが拍手で迎えられ、すぐに演奏開始です。1曲目はスーザ「星条旗よ永遠なれ」金管打楽器がド派手に来る冒頭から一気に気分があがります。この勢い、すごくイイ!高音が華やかなトランペットに、低音でぐっと来るトロンボーンとチューバが、お互いに高め合ってカッコイイ!ホルンや弦がメロディを担当した時の華やかな木管(特にピッコロ)も印象に残っています。マーチのリズムが生き生きとしていて、全力で来るところと少し穏やかになるところのメリハリがはっきりした、気持ちが良い演奏でした!また演奏後には、指揮の太田さんがマイクを持ってごあいさつ。この後も、演奏の合間は太田さんがトークで盛り上げてくださいました。

次はアンダーソンの曲を2つ続けての演奏。アンダーソンは言語学者だったそうで、音の一つ一つに意味があるといった趣旨のお話がありました。「シンコペイテッド・クロック」は、イオンの店内で流れているあの曲!打楽器のカッコンカッコンという音の刻みに乗って、優雅なメロディの弦が心地よいです。ジャズテイストの木管も素敵。全員参加の華やかな盛り上がりの中で、かわいらしいチリチリーンという目覚ましアラームの音。それにはトライアングルではなく小ぶりな鈴が使われていました。少しテンポが速くなるフィドル・ファドル」は、忙しそうでも楽しそうな弦がとっても素敵!中盤のピッチカートのかわいらしさと、少しだけ低弦がメロディを弾いたのがツボ。ラストは金管打楽器が華やか盛り上げてくれました。

ソリストの角野隼斗さんをお迎えして、今回の目玉!ガーシュウィンラプソディ・イン・ブルーガーシュウィンは流行作曲家で、ラプソディ・イン・ブルーオーケストレーションは別の人が行ったこと。しかし翌年に書いたピアノ協奏曲はクラシック音楽を勉強した上でガーシュウィン一人ですべて書き上げた、というエピソード紹介がありました。なお指揮の太田さんとピアノの角野さんはこの日が初共演(以前他のオケで企画があったものの取りやめとなったそう)。また、角野さんと札響は約1ヶ月ぶりの共演です。ひときわ大きな拍手で迎えられた角野さんは、手に鍵盤ハーモニカを持って登場。ええっ二刀流!?期待せずにはいられません!演奏はオケから入り、冒頭のクラリネットがもうとにかく素敵すぎ!私は先日、クラリネット首席の三瓶さんの室内楽を聴いたばかり。その時のフランスのエスプリとはガラリと印象が違う、アメリカ音楽のジャズテイストのクラリネットが聴けてとてもうれしかったです。併走するオケのナイスアシストぶりと、クラリネットからメロディを引き継いだトランペットも素敵でした。満を持して独奏ピアノが登場。はじめの方のピアノは、大人の落ち着きが感じられるムーディーな印象でした。しかし、低音から高音へ駆け上るところで徐々にテンションをあげていき、そのままオケの大盛り上がりに自然と繋げたのが素晴らしいです。オケのターンでも、自由な感じで楽しそうにオケの伴奏に入るピアノが印象的でした。そしてカデンツァへ。出ました鍵盤ハーモニカ!ピアノの右手パートを鍵盤ハーモニカで、左手パートをピアノで演奏するスタイル。音の響きは左手が勝ることなく、鍵盤ハーモニカによるメロディもキレイに聴けました。なお後半は両手ともピアノになりました。カデンツァの後の、景色が広がるような澄んだ弦とホルンの響きが良かったです。コンマスソロも素敵でした。そのオケのメロディを引き継いだピアノの、高速かつ情熱的な演奏がすごくて、お客さん達は皆惹きつけられていた様子。フィナーレの、オケと一緒に盛り上がるパワフルなピアノが存在感抜群でした。ピアノもオケもノリノリで、とても幸せな共演!聴いていてとても楽しかったです!

カーテンコールの後、角野さんがマイクを持ってお話されました。「ラプソディ・イン・ブルー」は何度も弾いている曲で、「いかに過去の自分を裏切っていくか」と考えているのだそう。角野さんの演奏にかけるその姿勢と演奏そのものに、聴き手の私達も良い意味で裏切られましたよ!ソリストアンコールガーシュウィン「スワニー」。ジャズのようで都会的なダンスミュージックを、情熱的かつ自由な感じで弾くピアノが素敵でした。角野さん、オケと共演した大熱演の後に、ソリストアンコールの素敵な独奏まで、ありがとうございました!


後半の1曲目はバーンスタインウェスト・サイド・ストーリー」より シンフォニック・ダンス。オケの演奏が始まると、合間に奏者の皆様が指パッチンで合いの手。この後も何度か出てきましたが、この指パッチンが超うまい!一流演奏家は指パッチンもこのクオリティの高さでできちゃうんですね。華やかな金管群に、ドラムセットが超カッコイイ!低弦のテンポが速いピッチカートがまたジャズっぽくて素敵!ピーッとホイッスルの音!?大盛り上がりの後に静寂が訪れて、なんとヴィオラが主役の弦楽四重奏に。その影のある音色でのメロディに、チェロが低音で寄り添い、1stと2ndのヴァイオリンが続く。なんて素敵なの……と私はしみじみ聴き入りました。メロディを引き継いだホルン&寄り添うオーボエも素敵で、感極まった感じの高音弦の盛り上がりがすごく良かったです!そしてテンポ良いボンゴを皮切りに、ド派手なマンボへ。かけ声やパフォーマンスはナシでしたが、金管打楽器が大活躍する演奏はキレッキレでした。木管のターンで少しほっとして、続くコンマスと1stヴァイオリンの一部の計4名によるアンサンブル!超素敵!全員参加の盛り上がりを経て、フィナーレへ。静寂の中での美しいフルート独奏に続き、透明感ある弦。ラストは静かに締めくくり。変化が多い曲を、テンポ良くメリハリはっきりした演奏で聴かせてくださいました。楽しかったです!演奏後のトークで、「マンボ!のかけ声がなくて、楽しみにしていたかた申し訳ありません」と太田さん。まさに楽しみにしていた一人である私は思わずドキっとしました。そ、そんな恐縮です。確かに期待してましたけど、今はコロナもありますし、何より演奏そのものが良かったんですから、いいんですよ……。ただ、太田さん(先生の先生がバーンスタイン)のお話によると、バーンスタイン自身の指揮による演奏でも、かけ声なしバージョンはあって、厳密ではないとのことでした。

指揮の太田さんはスターウォーズ好きを公言しているためか、アメリカ音楽を依頼されることが多いそうです。「どうしてもテンション高いモリモリMAXな曲が多くなる」とのことで、少し毛色が違うものをと考え選曲したのが、この曲。弦のみで演奏されるバーバー「弦楽のためのアダージョ。厳かな出だしから胸に来る、圧倒的なクオリティの高さ!基本は高音弦、時には低弦がメロディを演奏し、そのどちらも味わい深い音色で切なさや哀しみを歌うのが素敵すぎました。また原曲(弦楽四重奏)にはいないコントラバスがぐっと重低音で支えてくれたのがすごく良かったです。一度ピタッと止まってからの再開の流れも見事。静かに消え入るラストもとっても素敵でした。ああ私、やっぱり札響の弦が大好きです!ちなみにうちの高2の息子、この日の演奏で最も印象に残ったのがこちらの「弦楽のためのアダージョ」だそうです。

プログラム最後の曲はJ.ウィリアムズ「スター・ウォーズ」より メイン・タイトル。今回の演目で最も古い作曲家はスーザ、そして新しいのは90歳の今も現役であるJ.ウィリアムズ。J.ウィリアムズの映画音楽も何百年か後には「クラシック」音楽になっているのを期待したい、といった趣旨のお話がありました。ド派手で壮大な冒頭からモリモリMAX!一気に気分があがりました。トランペットの高音にトロンボーンやチューバの低音、堂々たるホルンの響きにティンパニ金管打楽器が最高にカッコイイ!ハープやフルートが華やか!明るく透明感ある弦が素敵すぎ!中低弦が主役のところがあったのが個人的にはうれしかったです。短い曲の中でもパワフルだったり美しかったりと、変化が多い演奏にはずっと夢中になれました。まるでオペラの序曲のようで、スター・ウォーズの音楽も未来には必ず「クラシック」音楽となると私は確信しました。

拍手鳴り止まぬ中、何度目かのカーテンコールで、指揮の太田さんはなんとダースベイダーのコスプレで登場!黒いマントを羽織ってフルフェイスのメットを被り、ご丁寧に手には赤い棒ッコまで持っていました。会場はどよめき大盛り上がり!太田さんはごあいさつの後、メットを外し、棒ッコも置いて、アンコールの演奏へ。インパクト大の冒頭!ダースベイダーのテーマ、キター!……余談ですが、私は予想ドンピシャだったため思わずきゃあと小声が出てしまって、隣にいた息子に膝を叩かれ注意されました……。アンコールJ.ウィリアムズ「スター・ウォーズ」より インペリアル・マーチ。ドラムセットと弦がキレッキレの特徴的なリズムを刻むイントロから、超パワフルな金管によるテーマ!中盤のごく小さな音での演奏もkitara大ホールにキレイに響きました。私はネタ的な使われ方で認識していた曲でしたが、札響の本気モードの演奏にはゾクゾクし、その良さを堪能しました。例えばジャジャジャジャーンとかチャラリーン鼻から牛乳とか、超有名なクラシック音楽はネタになる法則があるようなので、スター・ウォーズは既にクラシック音楽なのかも!

カーテンコールでは指揮の太田さんは何度も戻って来て下さいました。最後にはピアノの角野さんも一緒に舞台へ。まだ舞台衣装のまま待機してくださっていたのですね。2000人超のKitara大ホールは割れんばかりの大拍手!今まさに旬のお若いお二人に良い意味でぐいぐい引っ張って頂いた、ココロおどるアメリカン・ミュージックはとっても楽しかったです!ゴールデンウィークの素敵な思い出になりました。ありがとうございました!


札響ではピアニストをソリストにお迎えしての公演が続いています。この日の10日前に聴いた「札幌交響楽団 第644回定期演奏会(土曜夜公演)」(2022/04/23)での、ソリスト小山実稚恵さんによるベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番も心に刻まれる素晴らしい演奏でした。また後半メインのR.シュトラウス英雄の生涯」は、多くのエキストラを含む超・大編成による、スケール桁違いの音楽で綴る物語の世界!奏者の皆様も楽しそうで、聴いている私達も夢中になれました。

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ラプソディ・イン・ブルー」の冒頭、ジャジークラリネットインパクト大だった札響首席クラリネット奏者・三瓶佳紀さん。この日の4日前に開催された「ウィステリアホール プレミアムクラシック 15th クラリネットファゴット&ピアノ」(2022/04/29)では、フランス系のエスプリが洒落ているふくよかな音色での演奏を聴かせてくださいました。

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「シンフォニック・ダンス」での、ヴィオラが主役の弦楽四重奏で存在感抜群の演奏を聴かせてくださった、札響副首席ヴィオラ奏者・青木晃一さん。私はこの日の1ヶ月前に「札幌室内管弦楽団 第20回演奏会」(2022/04/03)にて、青木さんソリストによるバルトークヴィオラ協奏曲」を聴いています。高音の華やかさから低音の深さまで、多彩な表情で私達を魅了してくださいました。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。