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札幌交響楽団演奏会 Kitaraでクラシック!(2022/06)レポート

www.sso.or.jp
札幌市と札響の主催による特別演奏会「札幌交響楽団演奏会 Kitaraでクラシック!」が開催されました。私はコンサート当日に行くと決め、当日券で3階席へ。聴きやすい演目が並び、チケットはサービス価格設定(一般1000円、65歳以上500円)のためか、平日昼間にもかかわらず会場はほぼ満席でした。また企画の趣旨から、お客さんはやはりシニア層が多いようでした。


札幌交響楽団演奏会 Kitaraでクラシック!
2022年6月2日(木)13:30~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮とお話】
中田 延亮

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島高宏)

【曲目】
ロッシーニ:「ウィリアム・テル」序曲より『スイス軍の行進』
モーツァルト:「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」より第1楽章
チャイコフスキー:「白鳥の湖」より“情景”“チャルダッシュ
スッペ:「美しきガラテア」序曲
エルガー:愛の挨拶
ドヴォルジャーク:スラブ舞曲op.46-8
J.シュトラウスⅡ:ワルツ「美しく青きドナウ

(アンコール)外山 雄三:管楽器のためのラプソディ(スペシャルバージョン)


やっぱり札響 in kitaraは鉄板!超楽しかったです!思い立ったらすぐに聴きに行けるご近所に札響とkitaraがあるなんて、札幌は最高!と、今回改めてそう思えました。思い切って参加して本当によかったです。また会場の空気から、おそらく演奏会ビギナーと思われるかたたちも心から楽しんでいる様子が感じられました。言うまでもなく聴く側にとっては気楽な会でも、演奏は真摯で丁寧。指揮の中田延亮さんによる演奏は、メリハリがはっきりして聴き所がわかりやすく親切な印象を受けました。高音が主役の華やかな曲でも低音の存在感があったのが個人的にはうれしいポイントでしたが、これは中田さんがコントラバス奏者でもいらっしゃるためかも。プログラムに掲載されたプロフィールによると、中田さんは医学部在学中に音楽の道に転向した大変ユニークな経歴をお持ちで、欧州を本拠に活躍されておられるそう。この日に私が感じた限りでは、中田さんは大変親しみやすいお人柄で、曲の合間のトークでは客席は和やかでとても良い空気が出来ていました。

また演目が気が利いていました。クラシック音楽に詳しくない人にも耳なじみのある曲を揃え、作曲家の出身地はバリエーション豊か。差し色として、ややマイナーな「美しきガラテア」序曲が入っていたのも良かったです。先にストーリー解説をした上でシーンの移り変わりがはっきりとわかる演奏をすることで、初聴きの人達(私もそうでした)にもすんなり受け入れられたと思います。こんな出会いは素直にうれしい!さらに驚いたのはアンコールです。プログラムの最後が定番の「美しく青きドナウ」だったので、これは「ラデツキー行進曲」で手拍子するお決まりパターンだと私は思い込んでいました。まさか「管楽器のためのラプソディ」が来るなんて!編曲版ではありましたが、最後の最後にオケ渾身の演奏で思いっきり盛り上げてくださり、日本人の血が騒ぐ音楽に会場の熱気も最高潮に。粋なサプライズをありがとうございます!あとは、プログラムには特に書かれていなかった「楽器紹介」がすごく面白かったです!この日の編成にあった楽器すべてを順番に短い演奏で紹介していくスタイル。各楽器の音色を知るだけでなく、演奏家それぞれの個性が際立つ演奏をすべてのパートで聴けるなんて、とても贅沢な体験でした。お客さん達はきっとご自分の「推し」が見つかったのでは?

そして、たとえワンコインでも、生演奏を聴くためにチケットを購入してホールに足を運んだかたが大勢いらしたことに、私は感激しました。もちろん札響定期は「おねだん以上」の素晴らしいものではありますが、やはり価格面や場違い感(ガチ勢の中には入れない)のために敬遠してしまう人は多いのかも。私もつい最近までそうだったので気持ちはよくわかります。そんなかたたちが気兼ねなく最高のホールでクオリティの高い演奏を聴けるなんて、最高に素敵!人生100年時代ですから、例えば生オケ初体験の時点で70歳の人でも、元気でいられれば後30年は楽しめます。それに楽しみがあればずっと元気でいたいとも思うのでは?せっかく札響とkitaraがある街ですから、ガチ勢向けだけではもったいない。今回のような企画を札幌市はこれからもどんどんやってください!お願いします!


団員の皆様、続いて指揮の中田さんが入場し、コンマスと肘タッチ。すぐに演奏開始です。最初の曲はロッシーニの「ウィリアム・テル」序曲より『スイス軍の行進』。トランペットのファンファーレから始まり、馬が駆けるようなリズミカルで勢いのある演奏にゾクゾク。華やかさに一気に気分があがります。最初から大盛り上がりで掴みはOK!この演奏については文句なしで素敵でした。しかし個人的にはできれば「ウィリアム・テル」序曲はフルで聴きたかった……冒頭の独奏チェロからのチェロアンサンブルが超素敵なのに!と心の中でちょっとだけ悔しい思いをしていました。内緒ですが。

指揮の中田さんがマイクを持ってごあいさつ。大勢のお客さんにお集まり頂いたことに感激しています、幕の内弁当のように様々な曲が楽しめる欲張りな企画です、といったお話がありました。またプログラムに曲の解説はなく、トークの中で楽しく紹介されました。なお中田さんはトークの時はマスク着用されていました。

舞台から管楽器と打楽器の皆様が退場。次の曲は弦楽アンサンブルです。演奏に移る前に、4種類の弦楽器の「楽器紹介」がありました。田島コンマスによるヴァイオリン(♪虹と雪のバラード♪)から始まり、ヴィオラ(♪花は咲く♪、ヴァイオリンとの大きさ比較もありました)、チェロコントラバスと、だんだん音が低くなる順に、それぞれ首席奏者による本気の独奏。一瞬で会場の空気を変えてしまうソロ演奏は、皆様さすがの貫禄です!それぞれの弦楽器の音色を覚えてから、「クラシック音楽と言えばこの曲」、モーツァルトアイネ・クライネ・ナハトムジーク」より第1楽章の演奏へ。キャッチーな冒頭のメロディから気分があがります。弦のみでこんなに華やかで明るい音楽。何度聴いてもイイ!団員の皆様は数え切れないほど演奏されているはずですが、今回も素敵な演奏を聴かせてくださいました。なお今回は繰り返しはナシでした。

弦奏者の皆様が退場し、舞台には指揮の中田さんのみが残りました。弦以外の「楽器紹介」は、それぞれの楽器奏者のかたが順番に舞台に出てきて、木管金管、打楽器、ハープの順に進行。中田さんによる解説は、小難しいことは一切なく、その楽器を初めて見聞きする人にもわかりやすい印象でした。フルートは木製と金属製の2つを続けて吹きましたが、私の耳ではほぼ同じ音に聞こえました……。「フルートの妹分」のピッコロ(♪エーデルワイス♪)は最後にあえて一番高い音を発するサービス。オーボエはまずリードだけで音を発してから、楽器による演奏へ(♪「イーゴリ公」よりダッタン人の踊り♪のオーボエソロ)。オーボエとの形の比較をしたクラリネットは、おそらく先日の名曲シリーズ(2022/05/14)で取り上げられた♪プロコフィエフピーターと狼」♪の猫のテーマを演奏されたと思います(間違っていましたら申し訳ありません)。他の方はたいてい有名なフレーズを採用されているのに、なかなかマニアックな選曲!ファゴットは演歌?(曲名がわからずごめんなさい!)で、演奏後に中田さんが「お母ちゃーん!と懐かしい気持ちになりますね」とおっしゃって会場が和みました。ホルンはソロではなく四重奏で、♪威風堂々♪のホルンが担当する主題を演奏。もちろんソロ演奏でも素敵なはずですが、メロディと下支えが重なる四重奏は奥行きと壮大さがあって更に素敵!トランペットはソロ演奏(♪大空と大地の中で♪)で低めの音程による演奏。トロンボーン2つとチューバによる三重奏(♪この木なんの木♪)では、歌で言うところの1番をトロンボーン、2番をチューバが歌いました。打楽器は4名による演奏で、ティンパニ以外は楽器を次々と持ち替えての大迫力!そして最後に「弦楽器の一種」とハープが紹介されました。個性豊かな演奏をたっぷり聴けてとっても楽しかったです!

次に登場するチャイコフスキーがロシアの作曲家ということで、現在の戦禍について少し触れられました。「チャイコフスキー自身は、ウクライナにルーツがあることを誇りに思っていた」とのこと。また演奏前に「チューニング」の説明をして、オケが実際にチューニングを行い、演奏に移りました。チャイコフスキーの「白鳥の湖より、まずこれを知らない人はおそらくいない“情景”。弦のトレモロ、ハープに続いて、あのオーボエソロ!壮大なクライマックスでの金管群の迫力!一度聴いたら忘れないメロディの良さに加え、楽器の活かし方がとても上手い!チャイコフスキーはメロディメーカーであり、かつ管弦楽の魔術師でもあると私はいつも思います。続いて“チャルダッシュ”。前半の哀愁漂う音楽がとっても素敵!高音弦の切なさ美しさを、呼応する低弦がぐっと締めてくれました。後半はテンポが速くなり、金管打楽器も加わった華やかな盛り上がりに。親しみやすいハンガリー風のメロディとリズムを、チャイコフスキー流に料理するとこうなるんですね!「白鳥の湖組曲が演奏される次回の札響定期も楽しみです♪ちなみにプログラムには「こんどは『白鳥の湖組曲の全曲をお聴きになりませんか?」と、次回(2022/06)の札響定期演奏会の宣伝がしっかり書かれていました。抜かりナシ♪

スッペの「美しきガラテア」序曲。演奏前にオペレッタの簡単なあらすじ紹介がありました。「これぞ理想の女性」と石の彫刻であるガラテアに恋した男が、神に頼んで彼女を人間にしてもらうも、人間になったガラテアは食べ物や宝石を要求するリアルな女だったので、あらあら……といったお話。明るく華やかな演奏の中で、石像が人間になるシーンでしょうか?ホルンとフルートの掛け合いが印象的なゆったりした木管群に続いて、低弦ピッチカートに支えられた透明感ある高音弦の美しさ!ごく小さな音から次第に浮かび上がる高音弦がとっても素敵で強く印象に残っています。こんなに麗しい女性が、次のファゴットを皮切りにリアルな存在に様変わり。すったもんだの末、ラストは華やかに締めくくり。短い演奏時間でも、ぎゅっと濃縮された物語の世界に浸れて楽しかったです。

ここからは作曲家の出身国もあわせて紹介されました。イギリスの作曲家・エルガーの「愛の挨拶」。愛妻家のエルガーが愛する妻を思って書いた有名な曲です。私はピアノと他の楽器(弦や木管など)のデュオによる演奏になじんでいて、管弦楽版での演奏を聴くのはこの日が初めて。低弦が効いたぐっと大人っぽいイントロから早速引き込まれました。甘いメロディをやさしく歌う高音弦が素敵!メロディは木管やホルンにも引き継がれていき、それぞれの音色による甘い歌を楽しみました。

チェコの作曲家・ドヴォルジャークの「スラブ舞曲op.46-8」。大ヒットして作曲家の生活が潤ったという「スラブ舞曲集」の中の1曲。「フリアント」という、3拍子でも「1,2」のリズムが強調される舞曲のリズムで書かれているとの解説がありました。私、知りませんでした!勉強になります!勢いがあって、緩急強弱のメリハリがはっきりした演奏がカッコイイ!「1,2」のリズムを意識して聴くと、確かに初めの方にアクセントが来ているようでした。派手なところでの金管打楽器による盛り上がりはもちろんのこと、少しゆったりするところで木管が歌うのが素敵でした。

プログラム最後の曲は、ウィーンの作曲家・J.シュトラウスⅡのワルツ「美しく青きドナウ。「ウィーンフィルニューイヤーコンサートでは必ず取り上げられる」と紹介された超定番曲、もちろん札響での演奏機会もとても多いです。ズンチャッチャのワルツのリズムに合わせた、川の流れのように移り変わるメロディ。華やかな王道ワルツ、何度聴いてもイイですね!今回の演奏もとっても素敵でした!あと今回私は3階席だったので、舞台全体が見渡せて各楽器の活躍ぶりがよくわかったのがうれしかったです。独奏チェロと重なる伴奏が、初めの方と終盤では変化しているのも確認できました。

カーテンコールの後に指揮の中田さんがごあいさつ。「最後は日本の曲で」ということで、アンコール外山雄三「管楽器のためのラプソディ」スペシャルバージョン、と曲名が紹介されました。ええっ、ラデツキーマーチではない!?しかも想像の斜め上をいく選曲……と、私はびっくり。でもこんなサプライズは大歓迎です!はじめの、金管奏者の皆様が打楽器に持ち替え一斉にカンカンカン……と速いテンポで叩くところから血が騒ぎます。鐘がコーンと入ったところで会場に笑いが起きてしまいましたが(いきなりで驚かれたのかも?)、その後はフルオケのド迫力で日本人のDNAに刻まれたメロディの数々が繰り出される様に、お客さん達は皆引き込まれていました。先ほどの優雅なウィンナ・ワルツとはガラリと変わり、日本の民謡ベースのリズムでノリノリに演奏するオケの皆様さすがです!演奏は最初から最後まで素晴らしいものでしたが、今回は特にフルートソロに大注目。プログラムによると、今回の客演首席フルート奏者は東京フィル首席の斎藤和志さん。和楽器の横笛を思わせる、いぶし銀のような響きのフルートが実に見事でした。最後の最後に最高の盛り上がり!超楽しかったです!

今回は「休憩なし約70分」の予定が、時間がおしてしまい90分続けての演奏会になりました。このハードスケジュールでバラエティに富んだ演奏するのは大変だったことと存じます。指揮の中田さん(指揮もトークもあって一瞬たりとも休みなし!)、奏者の皆様、最後まで素晴らしい演奏を本当にありがとうございました。個人的には盛りだくさんで大満足でした!ただ、お客さんの中には終盤にお疲れを見せたり、途中退場されたり、分散退場を待ちきれずに席を離れたりしたかたがいらっしゃったのも確かです。長時間同じ姿勢で演奏を聴くのは、慣れている人ならともかく、演奏会ビギナーとりわけご年配のかたには厳しいかも。今後同様の企画をする際には、休憩を挟むスタイルの方がよいかもしれません。ぜひご検討くださいませ。


札幌市と札響の主催による特別演奏会。本年度は2022年6月現在のところあと2つが予定されています。「おんぷでステップ♪みんなのオーケストラ in 教文」(2022/07/29)、「hitaruでシネマ・ミュージック!」(2022/09/05)。いずれも演奏時間短めの有名曲が取り上げられ、チケット料金は格安です。気になる公演がありましたらぜひ♪同じ札響でも会場や指揮者の違いで響きは変化しますから、全公演行って聴き比べるのも楽しいと思います。

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音楽に関しては素人の私ですが、普段はうんと背伸びして札響定期もよく聴きに行きます。この日の4日前には「札幌交響楽団 第645回定期演奏会」(2022/05/29)を聴きました。首席指揮者マティアス・バーメルトさんが今シーズン初出演!華やかな「水上の音楽」に、アンヌ・ケフェレックさんの可憐で繊細なピアノによるモーツァルト。大きなライン川を思わせる壮大な響きのシューマン。シーズンテーマ「水」がよどみなく流れるような演奏に、清々しい気持ちになれました。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。