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札幌交響楽団 hitaruシリーズ定期演奏会 第12回(2023/03) レポート

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↑指揮者の鈴木雅明さんからのメッセージ動画が札響公式YouTubeチャンネルで公開されています。

本年度(2022年度)最後のhitaru定期では、日本人作曲家の作品(矢代秋雄)とロマン派を代表する作品(チャイ6)の2つの交響曲が取り上げられました。指揮はバッハ演奏の第一人者である鈴木雅明さん。ちなみに鈴木雅明さんは矢代秋雄さんに作曲を師事されたとのことです。


札幌交響楽団 hitaruシリーズ定期演奏会 第12回
2023年03月09日(木)19:00~ 札幌文化芸術劇場 hitaru

【指揮】
鈴木 雅明

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:会田 莉凡)

【曲目】
矢代秋雄交響曲(1958)
チャイコフスキー交響曲第6番「悲愴」


事前予想を良い意味で裏切ってくれた、私にとって記念すべき出会いとなりました。この2つの交響曲を今回の札響の演奏で聴けてよかったです!まったく知らない曲も知っているつもりの曲も、やはり実演に触れるまでその真価はわからないと改めて実感。正直なところ今の私には難しそうと思っていた矢代秋雄は、いざ実演に触れると日本人のDNAに響くような独特のリズムが面白くて、自分なりに楽しむことができました。また録音ではそれなりになじんできた(ちなみに生演奏では今回がお初でした)後半チャイ6についても、ベースには心臓の鼓動のような温かなリズムがあると感じられて、今まで気付かなかった魅力を発見。一見まったく似ていない今回の2つの交響曲は、命を感じるリズムがあり人間味あふれるのが共通していると私は感じました。あと細かなところでは、第1楽章の音型が第4楽章にて異なるカラーで再現することや、盛り上がりの頂点でキマる打楽器の存在、クライマックスで一旦沈黙がある(終わりと勘違いしそうな?)ところも似ているかも。指揮者の鈴木雅明さんの、この2曲を組み合わせた心意気と、もちろんリズムを活かした生き生きとした演奏に感激!そして今回は2曲ともフライング拍手等はなく、演奏後にしばしの沈黙があり、残響の余韻をじっくり味わえたのがとても良かったです。

今回は対向配置。ヴァイオリンがステレオで聞こえたり、低弦の振動がいつもとは反対側から伝わってきたりと、慣れているのとは違う感じが新鮮でした。また今回の私の席は舞台に近かったためか、奏者お一人お一人の音が比較的クリアに聞こえたのがよかったです。ホール全体の響きについては今の私にはよくわからないのですが、目の前で演奏が繰り広げられるからこそ、奏者お一人お一人の呼吸や間合いや音の振動がダイレクトに感じられて、立体的な響きを五感で楽しめる良さもありました。やはりライブはイイですね!ただ視界の面では、舞台の後方は見えず、かつ前に座った人の頭で遮られがちだったのがちょっと残念でした。座席選びは難しいです。


前半は矢代秋雄交響曲(1958)。今回が札響初演とのことです。対向配置で、舞台向かって時計回りに1stヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、2ndヴァイオリンの並び。コントラバスはチェロの後方に配置されていました。弦の人数は多く(正確な数は把握できず)、低音管楽器が入り、多彩な打楽器にハープ2台、チェレスタとピアノは兼任で1名という大所帯!第1楽章、寄せては返す波のようなヴァイオリンの神秘的な音色にぞわぞわ。時折入る様々な打楽器の音、中でも何度も登場した鐘(チューブラーベル?)と盛り上がりの頂点でのシンバルが印象的でした。しかしこの段階では、私は正直まだ乗れずにいました。そして噂の第2楽章へ。ティンパニを要に「テンヤ、テンヤ、テンテンヤ、テンヤ」の特徴的なリズム!低弦ピッチカートにパンチある金管ビブラフォン等の音階のある打楽器など、各楽器で丁々発止のやりとりをするのが面白かったです。気迫ある演奏で立体的な響きを全身で感じられ、自分なりに楽しめました。大音量でのシメの一撃がインパクト大!続いて第3楽章は、はじめ弦が沈黙し、低音のイングリッシュホルンとアルトフルートがゆったり会話するようなやりとり。私の席からは奏者のお顔が確認できなかったのですが、静寂の中に浮かび上がる2つの低音木管の音色には演奏家の体温が伝わってくるような人間味が感じられ、心にしみ入りました。ハープのグリッサンドに続いて他のパートが参戦してからは、特に打楽器の刻む独特のリズム(「タンタン、タタ」のような?)がとても日本的に思えて、不思議と懐かしさを覚えました。またこの楽章ではヴィオラのソロとヴィオラパートのみのトレモロがあり、ほの暗い演出がとても良かったです。第4楽章、プログラムノートに「雅楽能楽を想起させる」とあった2つのピッコロの音がインパクト大で、盛り上がりの頂点でバシッとキマる打楽器の存在感!弦や管によるメロディの演奏で独特のリズム(「タタン、タタタタン」のような?)を刻んでいたのが印象的でした。クライマックスでは、大音量での盛り上がりの後にしばし沈黙があり、ここで終わり?と思いきや続きがあって驚き(笑)。もう一度盛大に盛り上がって、華やかに締めくくり。独特なリズムを全身で感じ取れて、それが「生きている」実感となる喜び!予想よりもはるかに楽しく聴くことができました。


後半はチャイコフスキー交響曲第6番「悲愴」。札響では過去80回の演奏歴がある定番曲。今回のオケは対向配置かつ金管群が左右に分かれて配置されていたようです(私の座席からははっきり確認できず)。第1楽章、コントラバスファゴットによる厳かな出だしがぐっと来て、早速引き込まれました。弦による音階の駆け上りが素敵!哀しいけど美しく、世界が広がり希望の光が見えた気がしました。そしてクラリネットソロのほの暗く優しい響き!チャイ5の冒頭のクラリネットソロをふと思い出したりしながら、しみじみ聴き入りました。音が消え入ってから、バン!とオケ全体による大音量が来て、私は心底ビックリ!よく知るはずのこの曲でも、その時は気持ちがすっかりクラリネットに持って行かれていたので……。しかしスピード感ある流れに華やかな金管と、気持ちがぐいぐい引っ張られていくのが快感でした。第2楽章、冒頭チェロが哀しげに歌うのがすごく素敵!個人的に好きなこのメロディを札響メンバーの演奏でついに聴けて、とてもうれしかったです。メロディを受け渡した各パートの演奏も素敵で、弦がかわいらしいピッチカートでリズムを作っていたのが印象的。メロディが変化してからの流麗な流れでは、ずっとティンパニが細かくリズムを刻んでいたのが、まるで心臓の鼓動のような温かさを感じました。弦と木管群の会話するようなやりとりが温かく、やはりこの楽章は愛!としみじみ。第3楽章、タッタッタッタッのリズムが楽しく、華やかな盛り上がりが素敵!管楽器群はもちろんのこと、弦はピッチカートだけじゃなく弦を擦る演奏でも跳ねるように音を発し、聴いていてウキウキしました。高音弦から低弦へのスピード感あるリレーに、全員合奏でのジェットコースターのような音階駆け上りと下りがカッコイイ!絶妙なタイミングでのシンバルの一撃!パンチある金管!この楽章はリズムに乗れて超楽しかったです!そのまま続けて第4楽章へ。悲愴な弦の音色がとっても素敵!音階駆け上りは、第1楽章とは違って今度は命の終わりを予感させるようでした。ファゴットの沈んでいくような低音、ホルンの音の刻みが心にしみ入り、盛り上がっていく流れで頂点に達した時のティンパニの一撃!休符の後、再び美しい弦から始まる流れでは、小さな音でリズムを刻むタムタムとそこに重なる金管群がとても素敵でした。教会音楽のような、哀しいのに温かな響き!そしてラストの、コントラバスとチェロのみで次第に音が小さくなり消え行く流れが最高!録音ではピンとこなかったここが、まさに目の前で火が消えていくような感じで体感できたのは、想像以上の良さでした。ライブで、しかも札響の低弦で聴けた喜びはひとしお!今回の演奏では、チャイコフスキー自身が「この交響曲の本質は人生」と言った、その本質を初めて体感し実感できてうれしかったです。ありがとうございます!


命の鼓動を感じるリズムに気分が高揚し、自信に満ちた力強い堂々たる響きに圧倒されたシューベルト「ザ・グレイト」がメインプログラムだった演奏会はこちら。「札幌交響楽団 第650回定期演奏会」(日曜昼公演は2023/02/14)。異次元の世界に触れた武満作品、天国的な響きを楽しめたモーツァルトの協奏曲、そしてメインのザ・グレイト。プログラム内容も演奏も超グレートでした!

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