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札幌交響楽団 第637回定期演奏会(土曜夜公演)(2021/5)レポート

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当初の予定通り、かつ入場人数制限もなくぶじ開催された演奏会。前回2021年4月の定期がとても良かったため、ストラヴィンスキーつながりの演目が並ぶ今回5月も私は行くことに決めました。

また、今回の『札響オンラインロビーコンサート』金管五重奏金管は大ホールでのパワフルな響きはもちろん、室内楽でのあたたかな音もとても素敵です!どなたでも下のリンク先から視聴できますよ。

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札幌交響楽団 第637回定期演奏会(土曜夜公演)

2021年5月8日(土)17:00~ 札幌文化芸術劇場 hitaru

【指揮】
広上淳一

【独奏】
神尾真由子(ヴァイオリン)

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島高宏)

【曲目】


ソリスト神尾真由子さん。もう、すっごい!今回初めてその実演に触れた私は、神尾真由子さんが奏でる音に打ちのめされました。ヴァイオリンってこんな音がするんですね……。テレビではその凄さがよくわからなかったので、やはり100回の再生より1回のライブが良いと今回改めてそう思いました。特に弦楽器は奏者によって音がまるで違うと私は感じますが、今回聴いた神尾さんのヴァイオリンはなんというか表層的な音ではなく「深み」がある音。神尾さんは以前テレビ番組の中で小中学生に演奏レクチャーをされていて、10歳位の子にきちんと筋道立てた話をしながら理論的に指導していらしたのが印象的でした。演奏方法は無限にある中で、なぜこの部分をそのやり方で演奏するのか、ちゃんと理由があるのですね。なんとなく感覚で弾くのではなく、音符ひとつひとつに理由がある最適解でその瞬間のベストを尽くすスタイル。しかし演奏を聴く限りでは都度頭で考えながらやっているようには見えない、まるで呼吸をするように無理のない、しかも大胆かつ繊細な演奏をする……これってまさに神業なのでは?神尾さん、札響と協演してくださりありがとうございます。そしてこれから何度でも来札をお願いします!神尾さんは公演中止となった2020年5月の札響定期ではシベリウスを演奏なさる予定でした。今私は神尾さんのシベリウスを聴きたくてたまらなくなっています!あの「女性が泣き崩れるイメージ」の部分を、今の神尾さんならどんな表現で聴かせてくださるのでしょう?またチャイコフスキー国際コンクールで優勝した際のチャイコフスキーも、ぜひ今の神尾さんの実演で拝聴したいです。そして2021年11月に予定されているkitaraでのピアノとのデュオリサイタル、ぜひとも聴かせてください!

そして広上淳一さん×札響のおかげで、またもや新たな扉が開かれました!まだ無名だった武満徹の「弦楽のためのレクイエム」を評価した、ストラヴィンスキーの音楽への愛情。また自身が愛する音楽を貫いたグラズノフ――今回のプログラムに掲載されていた広上さんの文章を拝読してから実演を聴くと、私は初聴きの曲でも愛着がわいてきました。そして後半「シェエラザード」がとっても良かったです!まっさらな私でも、まるでシェエラザードの語りで物語の世界に没頭するように、演奏を聴いているときは別世界にいました。「シェエラザード」は、前回2017年10月のエリシュカさん指揮による演奏の記憶がまだ新しく(ごめんなさい私自身は直接は存じません)、オケの皆様もお客さん達にも特別な思い入れがあるかたが多かったのでは?今回は、オケの心を込めた素晴らしい演奏と、それを聴き拍手喝采した客席、この一体感がとても素敵でした。これって愛ですよね!やっぱり私、札響も札響を愛する皆様も大好きです!


1曲目は武満徹「弦楽のためのレクイエム」。私には掴みづらかったテンポに、歌う感じではないメロディ。私が過去に聴いた武満作品と比較すると、同じく弦のみの「死と再生」(2019年8月)の不気味さや、管楽器と打楽器も入った「『乱』組曲」(2020年10月)の力強さとはまた違う、深い哀しみと先が見えない暗闇を感じました。演奏では見事なアンサンブルに加え、ヴィオラのソロが何度か登場し、終盤にはヴァイオリンのソロもありました。札響の弦の美しいだけじゃない表現力を再確認。ただ個人的には「レクイエム」というのが正直ピンとこなかったので、9月にドイツ・レクイエムを聴いた後にどう感じるか、振り返ろうと思います。


2曲目はグラズノフ「ヴァイオリン協奏曲」ソリスト神尾真由子さんは黒と白のマーメードラインのドレス姿。曲は3楽章構成でしたが区切り無く演奏されました。独奏ヴァイオリンの最初の音に心掴まれ、私はソリストに全集中する体勢に。華やかな高音も素敵でしたが、少し低めの音での様々な感情を内に秘めたような演奏が強く印象に残っています。とにかく形容しがたい「深さ」を感じました。カデンツァに入ると今度はパワフルかつ繊細な高音に引き込まれ、ギターをかきならすようなピチカートにはっとさせられたり。長い独奏の終わり頃から少しずつオケが参戦。まずオケが演奏したところを独奏ヴァイオリンが繰り返すところでは、メロディは同じでも印象はがらりと変わる、その変化を楽しみました。オケはもちろん素敵です。しかし独奏ヴァイオリンの存在感にはもう圧倒されました。ヴァイオリン協奏曲の最終楽章はどの曲も独特なリズムで個性を発揮していますが、今回のグラズノフの民謡風なリズムも楽しかったです。クライマックスでは独奏ヴァイオリンは超高速になり、その技術の高さは大前提として、演奏を聴いていると私にはダンスでだんだん速くくるくる回る女性(独奏ヴァイオリン)とそれをアシストする男性(オケ)のイメージが浮かびました。オケとソリストは見事にシンクロしています!演奏時間約20分の比較的短い曲。独奏ヴァイオリンの小休止はほとんどなく、ずっと神尾さんの意思あるヴァイオリンに引き込まれ良い意味でドキドキしっぱなしでした。

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ソリストアンコールは、「魔王」キター!エルンスト「シューベルトの『魔王』による大奇想曲」、神尾さんの演奏を以前テレビで見たことあります私!今まさに目の前で実演が繰り広げられている!と私は前のめりに。原曲ではピアノが弾く伴奏部分が一層おどろおどろしい感じになり、歌の子供の叫びにあたるところは高音で悲痛さがさらに際だつ……実演は想像を遙かに超える衝撃でした。左手ピチカートを目撃!ただここだけでなく最初から最後まで演奏は難しいと思います。ヴァイオリン1つでこんなに多彩な表現ができるのに驚き、息もつかせぬ展開にいつの間にか飲み込まれてしまいました。すっごい!神尾さん、アンコールまで神がかった演奏をありがとうございました!


後半はリムスキー=コルサコフ交響組曲シェエラザード。第1曲。冒頭、パワフル金管キター!王の横暴さを表現していても、それだけじゃなく人の温もりを感じる不思議。この掴みの金管で、月末に聴けるはずの「フィンランディア」がますます楽しみになりました。美しいヴァイオリン独奏キター!ハープの伴奏がまた素敵で、シェエラザードは魅力的な女性なんだろうなと。そんなすぐに処刑するのは惜しいですって!シェエラザードのテーマはこの後何度も形を変えて登場して、文字通りこの曲全体の語り部なんですね。独奏ホルンと各木管が会話するようなところで、独奏チェロが寄り添ってくれて、この後も独奏チェロが度々存在感のある登場をしたのが個人的にとてもうれしかったです。リムスキー=コルサコフさん大好き。第2曲。どこか哀しげなファゴットのソロと、引き継いだオーボエが印象的。はじめは不安そうな雰囲気だったこのメロディが、各パートに引き継がれてついには全員参加の堂々とした演奏になったのがすごく良くて、スケールの大きさとカッコ良さに聴き入りました。男前!管弦楽の醍醐味!全員参加の合間に登場する独奏チェロがまたまた素敵すぎです。第3曲。はじめの美しい弦のアンサンブルに、ああ私やっぱりこの音色が好き!となり、贅沢言わないからせめて月に1度か2度はこの札響の音に触れたいと改めて思いました。草木が萌え出るようなクラリネットや鳥のさえずりのようなフルートも美しく登場。曲の雰囲気が変わってからは、控えめに小さな音で鳴る打楽器たち、とりわけタンバリンがツボ。そして弦のピッチカートでかわいらしく締めくくったのが新鮮でした。第4曲、今度は勇ましく開始。シェエラザードのテーマが登場し、いくつも音を重ねて鳴る独奏ヴァイオリンを聴いて、シェエラザードが変わったとわかりました。千の夜が過ぎたんですね?今まで出てきたメロディが次々と形を変えて再登場し、大盛り上がりが楽しい!タンバリンだけでなく、スネアドラムほか5人体制の打楽器も大音量で絶好調!金管が表現するあの横暴そうだった王も変化していました。シェエラザードのテーマが初登場と同じような美しさで奏でられ締めくくり。素晴らしいです!

広上さんは、はじめにコンマス、続いてチェロ首席、ハープ、以降ホルン首席からはじまりオケ後方にいる皆様を順番に讃えられました。カーテンコールで戻ってくる度に次々と奏者のかたに起立を促していき、縁の下の力持ちのコントラバスヴィオラ、第2ヴァイオリンに至るまでパート毎に起立。その度に盛大な拍手がおくられました。結局オケ全員?いえ個人的には大賛成です!目立つソロパートだけじゃなく、オケのおひとりおひとりみんな功労者!最後はやはりコンマス田島さんにもう一度大きな拍手。広上さん、札響の皆様、今回も最高の演奏をありがとうございました!


今回(2021年5月定期)の2週間前に聴いた、前回2021年4月定期のレポートは以下のリンクからどうぞ。信頼の秋山和慶さん×札響のおかげで、今まで意識してこなかった作曲家の作品ばかりでも楽しく聴けました。私は定期会員ではないのですが(※パトロネージュです)、気がつくと札響三昧の日々です(笑)。 

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私は今年だけで札響によるヴァイオリン協奏曲を今回含め4回も聴いています。ブラームスシベリウスベートーヴェン、すべて素晴らしかったです!その中で今回はシベリウスを聴いた「音楽日和 札幌公演 in hitaru~JAF会員のための音楽会」(2021/3)のレビュー記事を紹介します。ソリスト金川真弓さん。ちなみにソリストアンコールは「魔王」でした。 

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。