自由にしかし楽しく!クラシック音楽

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札幌交響楽団 第636回定期演奏会(土曜夜公演)(2021/4)レポート

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2021-2022シーズン最初の定期演奏会は、当初の予定から演目はそのままにソリストおよび指揮者の変更がありました。詳細は上の演奏会詳細ページを参照ください。なお、札響首席指揮者のマティアス・バーメルトさんのビデオメッセージが公開されています。会えない時間はつらいですが、バーメルトさんのお元気な様子を拝見できてほっとしました。9月にはきっと来札が叶いますように。


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また、2021年度は『札響オンラインロビーコンサート』が開催されるそうです!ありがとうございます!初回は2つのフルートとチェロによるトリオ。うれしくて私は本番前に繰り返し聴きました。どなたでも下のリンク先から視聴できますよ。

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札幌交響楽団 第636回定期演奏会(土曜夜公演)

2021年4月24日(土)17:00~ 札幌文化芸術劇場 hitaru

【指揮】
秋山和慶

【独奏】
小菅優(ピアノ)

管弦楽
札幌交響楽団(ゲスト・コンサートマスター:会田莉凡)

【曲目】


3つの演目それぞれの個性と、何より独特のリズムが新鮮で、今まで意識してこなかった作曲家の作品ばかりでも楽しく聴けました。秋山和慶さん×札響を私は信頼しています。今回も期待以上!またもや新たな扉が開かれました!また小菅優さんのダイナミックなピアノには圧倒され、初めて聴く曲でも夢中になれました。依然続く出入国制限のため、恐ろしいことに私達は出演者変更に慣れつつあります。しかし突然の代役を依頼されるソリストと指揮者のかたは大変ですよね。限られた準備期間にもかかわらず、そうとは感じさせない素晴らしい演奏をありがとうございます!

バーメルトさんが掲げた2021年度のテーマは「愛と死」。プログラムには、それぞれの演目を選んだバーメルトさんの思いが綴られていました。今回に関しては前半2曲が「愛」で、「死」は次回以降のようです。いつもながらプログラム冊子は読み応えありますね。私は今までの分もすべて、演奏会後も大切に保管しています。またネット情報によると、今回登場したストラヴィンスキーは次回5月の第637回定期演奏会で取り上げられるリムスキー=コルサコフグラズノフ、そして武満徹との関連があるようですし、まさに「1年を通してひとつのプログラム」なんですね。私、次回の定期も聴きにうかがいます!

なお今回はゲスト・コンサートマスターとして会田莉凡さんがオケを牽引してくださいました。田島さんはそのお隣で演奏。ありがとうございました。会田さん、今後コンマスでもソリストでも時折札響にいらしてくださいね。そして今の田島さんお一人体勢のままだとご負担が大きいと思われますので、できれば早いうちに常任のコンマスが増えますように。


1曲目はフォーレ組曲ペレアスとメリザンド。多くの作曲家が同じ物語を題材にした作品を手がけているようですが、今回はフォーレの作品です。過去の札響演奏歴は13回で、ほか「シシリエンヌ」のみなら22回。冒頭の弦の美しさに、ああ今回も来て良かったと思い、物語をよく知らない私でも演奏そのものを楽しめました。そして超有名な「シシリエンヌ」がやはりハイライトですよね。美しいハープ、そしてメインのフルートがとっても素敵!心に染み入る音楽。メロディを鼻歌レベルで知ってはいても、生演奏を聴くと「こんなに良い曲だったんだ」とまるで別物に聞こえます。他にも木管が印象的シーンはあってそれぞれ素敵だったのですが、シシリエンヌのフルートのインパクトは絶大でした。3月の定期のラヴェルに引き続きフルート大活躍!また意外にもチェロが良い仕事していて(フランス人作曲家の管弦楽作品にそんなイメージなかったので)、今後フォーレ室内楽だけでなく管弦楽にも目を向けようと思いました。


2曲目はバルトーク「ピアノ協奏曲第3番」です。過去の札響演奏歴は2回で、前回1992年9月(ソリストは若林顕さん)の指揮も秋山和慶さん。私は小菅優さんの生演奏を聴くのは今回が初めてでした。以前ふきのとうホールでのリサイタルのチケットを取れず、今後もレジデントアーティストとして定期的にいらっしゃるから大丈夫とその時はあっさりそう思っていたんです。結果としてこの日までチャンスは訪れず……。この日ソリスト小菅優さんの衣装は濃いボルドーのドレスでした。私は初めて聴く曲でしたが、素敵ですね!バルトークは亡くなる直前の体調が思わしくない時期にこの生命力を感じさせる曲を書いたなんて、本当にすごいです。第1楽章、個人的には新緑の中を駆け抜けるような爽快さを感じました。ピアノが主役のところはもちろん素敵でしたが、オケのターンで伴奏にまわるピアノがツボ。すごい存在感!続く第2楽章の前半は晩秋の美しさかも?ピアノとオケが穏やかに語りあうのがイイですね。あと後半で個人的にとても印象に残っているのが、ピアノと見事に合った大太鼓の会心の一撃!一度きりなのにぴたっと合うのが気持ちよかったです。第3楽章、最初からピアノがカッコイイ!独特のリズムにドキドキして、オケはティンパニが印象的。そして高速かつ華やかなピアノ!小菅さんの貫禄ある演奏に引き込まれました。

 

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ソリストアンコールはバルトーク「10のやさしいピアノ小品第5曲<セーケイ人たちとの夕べ>」。私はこちらも初めて聴く曲で、時折聞こえてくる祭り囃子のような音に日本的なものを連想しました。なぜかハンガリー風のリズムは私達になじみやすいと感じます。今回の演奏を聴いて、私は今までノーマークだったバルトークに興味がわいてきました。小菅さん、素晴らしい演奏をありがとうございました!今度はふきのとうホールでのリサイタルや室内楽を拝聴したいです。


後半はストラヴィンスキー交響曲第1番」。プログラムには「ストラヴィンスキー没後50年記念」とあり、また交響曲第1番は今回が札響初演だそうです。作曲家若き日の意欲作は、生きる喜びが感じられるようで、私は自分なりに楽しく聴けました。冒頭、中低弦から静かに始まるもすぐに全員参加となり、壮大な世界が広がりました。慣れ親しんできた交響曲のスタイルと似ていたため、最初身構えていた私はすぐに安心して聴ける体勢に。「たーらららーらーらーらーらー」の主題が明るく繰り返される度に気分もアガりました。楽章の終わりではこの主題をこれでもかと引っ張ったので、ストラヴィンスキーさんはここのメロディを気に入っていたんだろうなと。第2楽章もひき続き明るく、今度は楽章の締めくくりで余韻を残さずぴたっと音が止まったのが印象的でした。徐々にフェードアウトするスタイルに私が慣れていたせいかも。第3楽章は一転して物悲しい雰囲気で、こちらも素敵。木管がメロディをリレーし、美しい弦が寄り添ってくれました。そして独奏フルートと独奏チェロが会話するようなところがあって、今回のオンラインロビコンがフルートとチェロになった理由はこれかも?と勝手に推測。第4楽章は最初から遠慮なく明るく大盛り上がり。お祭りのようでも行進曲のようでもあるユニークなリズムが楽しかったです。ストラヴィンスキーは「春の祭典」で大胆な舞踏のリズムを発表する前に、「作品1」で既に個性を発揮していたのですね。私、演奏機会が少ない曲を、最高の演奏で聴けてよかったです。ストラヴィンスキーを演奏会で取り上げるとなると、やはり有名なバレエ音楽のほうが喜ばれるのかもしれません。しかしストラヴィンスキー交響曲第1番、良い曲なのでもっと知られてもよいはず。いずれにせよ今回は札響初演でしたから、オケのメンバーには初めて演奏したかたが多かったのでは?限られた準備期間でこのハイクオリティな演奏、素晴らしいです。ありがとうございます!そして指揮の秋山和慶さん、やっぱりすごいお方です!御年80歳にしてあの見事なキレッキレの指揮。音が鳴っているときはもちろん良いのですが、私が密かに驚いたのは意味ある間合いや一瞬沈黙するところがビシッと気持ちよくキマること。指揮の動きで演奏がきっちり変化するのを目の当たりにして、私には指揮棒が魔法のステッキに見えてしまいました。素人丸出しでごめんなさい。言うまでもなく魔法なんかじゃなくて、オケと心通じ合い的確な指示が出せる秋山さんと、指揮について行ける奏者の皆様のお力があるからこそです。秋山さん、今回も札響を導いてくださりありがとうございました!


なお今シーズンから定期演奏会の開催日時は土曜17時と日曜13時に変更になり、私は今回土曜17時を選びました。個人的にはよかったと思います。私が見た限りでは、昨年度までの金曜19時は割と空席が目立つ印象でした。一方、今回の土曜17時は9割以上の席が埋まっていましたし、終演後(時計を見ると19時前!今までなら開始時刻!)に慌てて席を立つ人は少なく、分散退場がスムーズだった印象です。個人的にも帰宅後は家事諸々があるので、夜の時間に余裕があるのは助かります。もしかすると初回の今回は開始時刻を勘違いして遅刻した人がいたかも?でもこれは慣れるしかないと思います。ちなみに主催公演のうち新・定期は平日19時、名曲シリーズは土曜14時開演と、これらは変更ナシなので、従来のスケジュールの方が都合が良いかたにも配慮されています。

ちなみに私は今回1階の後方寄りのSS席を選びました。オケ全体が見渡せて、大きな音が響くときも素直に聴けるのはよかったです。ただ奏者の手元の細かな動きまでは見えなかったため、これならS席でも2階の前方のほうがもっとよいかも?とも。あとはA席になりますが、2階R1やL1の舞台に近い席にもいつか座ってみたいです。hiraruは上の階の後方は急勾配がコワく、また端のほうの席だと舞台が見えないところがあるようなので、それら以外なら色々と試せたらいいなと思っています。


ピアノの小菅優さんがクラリネットの吉田誠さんと組んだCD「ブラームスクラリネットソナタ(全曲)、シューマン:幻想小曲集ほか」、私はヘビロテしています。他のCDを含む感想記事を弊ブログにアップしていますので、よろしければ以下のリンクからどうぞ。今後ふきのとうホールで予定されている演奏会の数々、きっと開催実現しますように。 

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私が秋山和慶さんと出会ったのは、2020年10月のNHK主催「オーケストラでつなぐ 希望のシンフォニー」。初めて聴いた演奏会で私は秋山さんの大ファンになりました。以降、2020年10月の名曲シリーズ、2020年12月の第九、そして今回2021年4月の定期と、3度も代役として札響を指揮してくださり、私はすべて聴いています。そして今後秋山さんが札響を指揮するのが決まっているのは2021年9月の名曲シリーズ。筋金入りの鉄道マニアという秋山さんが、「鉄道」がテーマの演奏会でどんな演奏を聴かせてくださるのか、今から楽しみです! 

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そしてマティアス・バーメルトさんとの出会いは2019年1月の定期演奏会で、これが私の記念すべき定期演奏会デビューでした。私にとって札幌交響楽団=バーメルトさんなのです。私は2019年度にはセット券「バーメルトの四季」を購入し、特典の交流会ではサインを頂いて厚かましくも2ショット写真まであります。いつでも会える感覚でいたのに、まさか2020年1月の定期を最後に今日まで会えない日が続いているなんて……。様々なハードルがあることは承知していますが、2021年9月の札響60周年記念となる演奏会では、きっとバーメルトさん指揮の「ドイツレクイエム」が聴けることを願っています。 

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クラウドファンディングのリターン「札響1961-2020特別CD」には、秋山さん、バーメルトさんの演奏録音も収録されています。札響の年輪となっている演奏録音の数々、私は何度も繰り返し聴いています!弊ブログに「札響1961-2020特別CD」を含む「2020年 札幌交響楽団 動画配信および非売品CDについてのまとめ」の記事もありますので、よろしければお読みください。以下のリンクからどうぞ。 

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。