自由にしかし楽しく!クラシック音楽

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音楽日和 札幌公演 in hitaru~JAF会員のための音楽会 (2021/3)レポート

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シベリウスの演目2つが聴きたくて申し込んだ演奏会です。カレリア組曲は「音楽宅急便2020の動画」、ヴァイオリン協奏曲は昨年購入した「ジネット・ヌヴーのCD」がきっかけで好きになりました。いずれも出会ったばかりにもかかわらず私はすっかり魅了されてしまい、録音を繰り返し聴いては「いつか生演奏で聴きたい」と願ってきました。その「いつか」がうんと早くに実現してうれしいです。

なお今回の演奏会は、2020年2月に予定され中止となった企画から、指揮者および1曲目の演目を変更した形での開催だったようです。

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指揮・飯森範親さんは「音楽宅急便2020」では全国各地のオケを指揮されていらっしゃいました。その動画で好きになったカレリア組曲、まさか同じ飯森範親さん×札響 in hitaruで生演奏を聴けるなんて!またソリスト金川真弓さんは1年越しで札響との協演が実現したのですね。当初の想いをそのままに演目はシベリウスにしてくださり、ありがとうございます!


音楽日和 札幌公演 in hitaru~JAF会員のための音楽会
2021年3月16日(火)19:00~ 札幌文化芸術劇場 hitaru

【指揮】
飯森範親

【独奏】
金川真弓(ヴァイオリン)

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島高宏)

【曲目】


お目当ての曲だけでなく、最初から最後までとても楽しかったです!ロードサービスのみで年会費の元は取れている私ではありますが(それは自分でもどうなのと思ってはいます)、初めてロードサービス以外で「JAF会員でよかった」と心から思えました。個人的にちょうど今は家のことでバタバタしているとはいえ、いやだからこそ慌ただしい現実世界から離れて音楽の世界に浸れるほんの数時間はとても大事。私には音楽があってよかった!また、ソリスト金川真弓さんの演奏の凄みには圧倒されました。素晴らしいヴァイオリニストとの出会いに感謝します。過去の名演を録音で聴くのも良いけれど、今まさにその生演奏に触れることができる現役の演奏家のかたにもっと目を向けようと、私は心からそう思いました。過去の名演奏家と比べてどうこう考えるのはナンセンスで、おひとりおひとりの個性と熱量に直接触れる瞬間は唯一無二のもの。やはり私はライブが好きですし、これからも生演奏を聴ける機会を大切にしていきたいです。そして今後も、私がまだ知らずにいる素晴らしい演奏家との出会いがあることをとても楽しみにしています。

なお事前に席は割り振られ、私は期せずしてまたもやソリストかぶりつき席に。自分で選ぶときは中低弦の近くのR側にするのですが、今回は第1ヴァイオリンに近いL側になりました。会場収容率は50%以下の、前数列を空けた上で座席は1席飛ばし。人が少ないおかげでhitaruの音の響きは大変素晴らしく、とても贅沢な時間を過ごせました。興行的には厳しい条件にもかかわらず、リーズナブルなチケット料金で聴かせてくださりありがとうございます!なにより、このご時世に演奏会開催くださり感謝です。

前半はシベリウス。1曲目は「カレリア」組曲です。冒頭、ごく小さな音から始まるティンパニと弦にぞわぞわ。ホルンの響きで視界が開けた感じがしました。特定の情景を描いたわけではないのでしょうが、私には雪解け時期のまだ風が冷たい大地が思い浮かびます。トランペットがカッコイイ!続くもの悲しい「バラード」が個人的に大好きで、ひたすら聴くのに没頭しゾクゾクしていました。「行進曲風に」は一転して明るい雰囲気。しかし大喜びしているのではなく幸せを噛みしめているように感じられるのが好きです。どの楽器も見せ場があるので、私は自席から見える範囲でそれを追いかけました。動画で繰り返し聴いたけれど、生演奏はやはり良いですね。空気を肌で感じられ、同じ会場で同じ時間を共有する喜びは格別です。今後動画を視聴するときは、きっとこの日の生演奏を思い出すことになると思います。

2曲目はお待ちかね「ヴァイオリン協奏曲」。ソリスト金川真弓さんの衣装はベージュのノースリーブドレスでした。冒頭は哀しげな独奏ヴァイオリンから。もうここで私は心掴まれ、ずっとソリストに全集中する体勢に。そしてこの曲のキモとも言える、独奏ヴァイオリンが高音で奏でるところ。私は勝手に「女性が泣き崩れるイメージ」で捉えているのですが、例えば悲鳴を上げて感情を露わにするとか、あるいは演歌のような情念込めた感じ(それらも素敵だとは思いますが)ではなく、なんというか純粋な泣き方だと私は感じ、はっとさせられました。ストレートに胸に刺さり、思わず涙が。そして同じ旋律がもう一度出てきたときは、支えてくれるオケも一緒に聴くことができて、ああ一人じゃなかったのねとまた涙。長い独奏と、楽章終わりの方の超高速の演奏もお見事でした。木管から始まる第2楽章、絶対にシベリウスブラームスを意識してるなといつも思います。しかしブラームスとは違い早々に独奏ヴァイオリンが登場。ソリストはあまり休む時間がなくて大変かも?この楽章の独奏ヴァイオリンはゆったりした大人っぽい雰囲気で、たっぷり素敵な演奏を聴かせてくださいました。オケのターンでは金川さんはスマイルを見せ、余裕すら感じさせられました。第3楽章は、独特のリズムがたまらなく好きです。はじめから独奏ヴァイオリンが駆け抜けていきます。素人目から見ても、細かな技巧を難なくクリアしつつ細かくテンポを変えながらかつ歌うヴァイオリンってすごすぎます。独奏が少しでも乱れたらおそらくリズムが台無しになってしまうと思われますが、そんな心配はご無用で、重厚なオケと見事にシンクロしていました。オケが重低音で演奏したメロディを、引き継いだ独奏ヴァイオリンが高音で演奏するところ、超素敵でした!オケに負けない存在感!もう第1楽章とは違って「泣いてない」、強い意志でぐいぐい突き進む独奏ヴァイオリンの力強さ。全体的に哀しげな曲が、最後は希望が垣間見える締めくくりをするんですね。聴いていてとても気持ちが良かったです。素晴らしい!

ソリストアンコールは、金川さん自ら「シューベルト、魔王」とおっしゃって演奏開始。編曲はエルンストでしょうか?有名な歌曲をヴァイオリン一つでの演奏です。目の前で繰り広げられる超絶技巧に圧倒されました。私はテレビでは別の演奏家による演奏を何度か聴いたことがありますが、やはり演奏家と同じ空間にいてその生演奏を聴くと迫力が違います。シベリウスの大熱演の後にお疲れを見せず、アンコールまで全力投球の演奏をありがとうございます!


休憩後の後半はオペラの序曲シリーズです。これから始まる物語への期待がふくらむ、いいとこ取りで印象的な要素が盛りだくさんの序曲が3つもあり、オペラ未経験の私でも音楽そのものを楽しむことが出来ました。はじめはモーツアルト魔笛」序曲。私でも部分的には聴いたことがある曲です。物語そのものはよく知らないのですが、序曲だけ聴くとモーツアルトらしい美しく心地よい音楽だなと素直に聴き入っていました。ヴァイオリンが弾くメロディに、夜の女王のアリアの超高音で歌う部分や、パパゲーノ?の「パ・パ・パ・パー」と似ているところが入っているのかも?と勝手に推測。こんなレベルで申し訳ないです。

続いてヴェルディシチリア島の夕べの祈り」序曲。短い曲の中で雰囲気が目まぐるしく変化し、不穏な空気だったり穏やかでありながらどこか哀しげだったり戦闘モードだったりと印象的なシーンが次々と。全員で強奏するパワフルなところは圧倒されつつも、ここはもう少し後ろの方の席で聴きたかったななんてわがままなことを思ったりもしました。そしてこの曲のハイライトはチェロです。チェロが全員で主役のところがあって、高めの少し甘い歌声がもう素敵すぎ!かぶりつき席で良かった!プログラムの解説を読むと、オペラ自体は結構血なまぐさいお話だったので驚きました。あのチェロパートは一体どんなシーンを想定されているのかが少し気になります。少しだけ。

プログラム最後の曲は、ワーグナーニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲ワーグナーを自分ではほぼ聴かない私でも知っている有名曲です。重厚・壮大な音楽を素晴らしい演奏と音響で楽しませて頂きました。パワフルな曲を堂々とした演奏で聴いていると、気分があがります!これを聴いただけでワーグナーを知った気になってはいけないのですが、ワーグナーは現代の特撮やRPG等とも通じる「男の子の夢」なのかも?と個人的には思います。

カーテンコールの後、控えていらした打楽器奏者の皆様が舞台へ。アンコールはエルガー「威風堂々」。曲名紹介がなくてもすぐにわかる超有名曲!私事ですが、息子の卒業式での卒業生入場BGMが「威風堂々」で、私はこの派手な曲を聴いて泣いた激レア経験をしたばかりでした(苦笑)。しかし改めて生演奏を聴くと、当然ながらこの大盛り上がりする曲に湿っぽい要素は皆無です。この日の演奏は、前へ進むすべての人達への熱烈応援として聴けました。ただ、もしこれが最初の演奏だったら、個人的には無理だったかもしれません。しかしこの時は前半から素晴らしい演奏をたっぷり楽しんできて、極めつけワーグナーを聴いた直後で気分が高揚して十分にあたたまっていましたから、思いっきり乗れました。演奏自体もリミッターを振り切ってガンガンくるスタイル、聴いているこちらも超楽しかったです!最後の最後まで気合いの入った最高の演奏をありがとうございました!


「音楽宅急便2020の動画」を含む、「2020年 札幌交響楽団 動画配信および非売品CDについてのまとめ」記事は以下のリンクからどうぞ。ロッシーニシベリウスも、私はノーマークからの不意打ちで好きになった曲です。そんな演奏を聴かせてくださる我が町のオケ・札幌交響楽団の皆様、愛しています! 

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ジネット・ヌヴーの録音は、CDであれば新品が1000円程度で手に入ります(元のLPレコードはプレミア価格がついているそうですが)。私はオンラインショップのポイント消化のために購入。そんな軽い気持ちで手にしたCDに、ここまで夢中になれるとは嬉しい誤算でした。シベリウスはもちろん、ブラームスの演奏も超ステキです!そしてシベリウスについては、図書館で借りたカミラ・ウィックスの演奏も気に入ったので、こちらは見つけ次第購入予定です。

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そしてブラームスのヴァイオリン協奏曲も、私は今年2月に素晴らしい生演奏を体験したばかりです。ソリストは札響ヴァイオリン奏者の鶴野紘之さん。この時の演奏はこの先ずっと忘れることはないと思います。「新進演奏家育成プロジェクト~オーケストラ・シリーズ 第58回札幌」レビュー記事は以下のリンクからどうぞ。 

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。