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歌い、踊り、想うコントラバス!(2023/11) レポート

https://www.rokkatei.co.jp/wp-content/uploads/2023/09/231108.pdf

↑今回の演奏会チラシです(pdfファイルです)。

真駒内六花亭ホールにて、コントラバスの水野斗希さんとピアノの鵜飼真帆さんの演奏会が開催されました。水野さんは2003年生まれで、先日の第21回東京音楽コンクール(2023)弦楽部門にて第1位となった注目の若手音楽家。また東京都交響楽団の客演首席奏者を務めていらっしゃるそうです。鵜飼さんは2002年生まれで、既に数々の受賞歴があるピアニスト。お2人とも東京芸術大学に在学中です。なお前売りチケットは120席完売したとのことです。


歌い、踊り、想うコントラバス
2023年11月08日(水)19:00~ 真駒内六花亭ホール

【演奏】
水野 斗希(コントラバス
鵜飼 真帆(ピアノ)

【曲目】
R.シューマンアダージョアレグロ イ長調 op.70
E.タバコフ:モティヴィ(コントラバスソロ)
G.ボッテジーニ:序奏とボレロ
F.ツェルニー夜想曲と間奏曲
K.シマノフスキ:変奏曲変ロ短調 op.3(ピアノソロ)
R.グリエール:4つの小品

(アンコール)R.シューマントロイメライ


なんという衝撃的な出会い!「お若いから」「コントラバスだから」という前置きは不要。その歌心とリズム感、そして水野斗希さんがお持ちの音の素晴らしさは、無条件に聴き手を惹きつけるものでした。超絶技巧で顕著に示された技術力の高さはもちろんのこと、個人的に驚愕したのは、コントラバスの素朴な音色を補って余りある表現力です。弓を小刻みに動かして豊かな響きを作ったり、おそらくはヴァイオリンよりも強い力で弦を擦ってインパクトある音を出したりといった事はもとより、恋心や情熱といった「想い」を音に映し出せるのがすごい!例えば大人の恋を思わせる艶っぽい音色は、20歳前後の若者が生み出した音だなんて、にわかには信じられないほど!しかしそう思ったのは冷静になった終演後のことです。その時の私は、目の前の音楽にただひたすら夢中になり、全身全霊で酔いしれていました。素晴らしい若手音楽家との出会いに感激!同時に、コントラバスの独奏楽器としての無限の可能性を感じ、私はとてもワクワクしています!また共演のピアニスト・鵜飼真帆さんのピアノも素晴らしかったです。独奏で見せて下さった、物語を展開するような表現力にリズム感の良さ!それは伴奏にも活かされていて、ピアノは音量を下げてコントラバスに寄り添いながら、一緒にリズムと感情を作り上げてくださいました。現在音大に在籍中というお若いお2人の、これからのご活躍に期待大です!

それにしても、六花亭さんの若手音楽家を見いだすお力にはただただ敬服します。今回のコントラバスの水野斗希さんは、演奏会の企画自体は今年の東京音楽コンクールよりも前でした(もちろん過去にも数多くの受賞がおありですが)。ちなみに私は、ふきのとうホールのランチタイムコンサートにて、全国的に名前が知られる前の水野優也さんや佐藤晴真さん(いずれもチェリスト)にも出会っています。これからも、私達がまだ知らない若手音楽家たちを見いだし、さらなる飛躍のステップとなる演奏会を継続して開催くださいませ。

今回初めてうかがった真駒内六花亭ホール、とても素敵なところでした!普段はお菓子を販売するお店で、演奏会の時はコンサートホールに早変わりするグッドデザインな仕様。もちろん六花亭本店ふきのとうホールの最高な音響にはかないませんが、真駒内六花亭ホールの音響は思っていたよりも良いと私は感じました。天井が高く、イスがゆったりサイズなのも開放感があって良かったです。真駒内公園と隣接する自然環境に恵まれた場所で、演奏以外の時は縦長のガラス窓(演奏中は厚い木の壁で塞がれました)から見える景色とホールが溶け込むのも素敵!また今回うれしかったのは、休憩時間に茶菓のサービスがあったこと。この時だけのオリジナルのプレートを美味しく頂きました。これでチケット代2000円(または六花亭ポイント200P)なんて、ありがたいやら申し訳ないやらです。これからも演奏と茶菓を楽しみに、折に触れてうかがいます!


出演者のお2人が舞台へ。コントラバスの水野斗希さんは黒シャツ、ピアノの鵜飼真帆さんはワインレッドのノースリーブドレスの装いでした。今回のコントラバスは通常の大編成オケで使われる、大きなサイズのものだったと思います。弦は4弦。水野さんは立奏でした。1曲目は、R.シューマンアダージョアレグロ イ長調 op.70」。優しいピアノの響きに乗って、ゆったり歌うコントラバスの美しさ!高音域の艶っぽい音は、コントラバスの無骨なイメージからは想像つかないもので、私は最初から水野さんの音に心掴まれました。寄せては返す強弱の波に、ピアノと優しくこだまし合うのが素敵!心地よい波長に浸りました。めいいっぱいの弱音(ピアニッシシシ……モ!)がすごい!水野さんのお力と、ホールの響きの良さに感服です!後半は快活な音楽に。力強いピアノに乗って、情熱的に歌うコントラバスの堂々たる響き!しかしパワーだけではなく、少し落ち着いたところでの歌い方になんとも色気があって良かったです。また、ピアノのターンでコントラバスがぐーっと低音をのばしていたのが印象的でした。想いが途切れること無くずっと続いているよう!クライマックスで音を盛り盛り弾くところの輝かしさ!華やかなピアノも相まって「シューマンらしさ」が感じられる清々しい演奏に、聴いている私達も気分爽快になりました。

ここで水野さんがマイクを持ってごあいさつとトーク。はじめに来場のお客さん達への御礼を述べられた後、コントラバスとピアノの演奏会は「めずらしいと思います」と仰っていました。1曲目のシューマン作品について、元々はホルンのための作品で、コントラバス用の編曲では半音上げた調に変更されている(変イ長調イ長調)と解説。コントラバスに適した調性になっているようです(もっと踏み込んだ内容でお話しされましたが、私がきちんと理解出来ているかどうか不安なため、ここでは概要のみで失礼します)。またこの後に演奏する2曲目については、はじめゆっくり→速く→とてもゆっくり→高速、とざっくり紹介して、演奏に移りました。

コントラバス独奏で、E.タバコフ「モティヴィ」。こちらの演奏には度肝を抜かれました!冒頭、掴みの重音から早速ぐっと引き込まれ、弦をおさえる左手を滑らせてキュン♪と鳴らすのがカッコイイ!高速演奏になってからは力強く弓をひきガンガン行くスタイルで、時折左手で全部の弦をガッとかき鳴らしたり重低音が登場したりと、目にも留まらぬ動きに驚愕しました。そこから生まれる音楽はモダンなダンスミュージックのようで、勢いとリズム感、そして個性的な音色が超クール!ゆっくりのターンになってからは、最初のメロディが超高音で演奏され、あたかも低い声の男性が裏声で歌っているかのような奇妙な響き(もちろん狙ってそのように演奏していらっしゃるはず)と、その上でゆらぐ音に、ぞわっとしました。再び速いターンになると、最初の時よりもメロディの存在感が増した、歌心ある演奏になったのにまたしても驚愕!勢いとリズム感の良さ、加えて情熱的に思いの丈を歌うのが超絶カッコイイ!コントラバスってこんなに魅力的な楽器だったんですね!聴き手にとって、衝撃的かつ素晴らしい出会いとなりました。ありがとうございます!

G.ボッテジーニ「序奏とボレロ。力強いピアノの前奏に続いて登場したコントラバスは、目が覚めるほどのインパクト!甘く語りかけるような艶っぽさ、コントラバスはこんな歌い方もできるんですね!しかしぐっと低い重低音はコントラバスならでは!思いを吐露するようだったり、高らかに歌ったりと、情熱的なコントラバスに惹きつけられました。そして中盤以降の、タッタタッタター♪と軽やかにステップを踏むようなリズム感と影のある音色の色気たるや!ピアノの間奏がドラマチック!高音域でもタッタタッタター♪が登場して、掠れた音にまたもや心かき乱されました。協奏曲のカデンツァのようなコントラバス独奏は、胸がすくような堂々たる響き!明るい締めくくりでは、これほどまでのコントラバスの超高音は個人的に初体験で、その想像を超えた音ともちろん演奏自体の気迫が強く印象に残っています。モダンで色気ある大人の雰囲気の音楽に魅せられました!


後半。はじめはF.ツェルニー夜想曲と間奏曲」。ピアノの前奏は星が瞬くような美しさ!ほどなく登場したコントラバスは、甘く柔らかな響きがとっても素敵で、まさにセレナーデ(夜に恋人の為に窓の下で演奏する曲)!何度か登場したゆらぐ音は、ソワソワした気持ちの表れと感じられ、思わず笑みがこぼれました。ピアノがコントラバスとリズミカルに呼応しながら、明るさやテンポを少しずつ変化させていたのも印象深かったです。中盤は舞曲風(フラメンコのよう?)になり、情熱的な音楽に魅了されました。華やかなピアノに乗って、コントラバスの前のめりな勢いと妖艶な音色が超素敵!また、くるっとスカートの裾を翻すような、タンタタタン♪とリズミカルに演奏するのがとても良くて、水野さんの表現力のすごさを改めて実感しました。ピアノの間奏を経て再びセレナーデに。はじめの時よりも少し落ち着いた(と私は感じました)コントラバスの歌い方がまた素敵で、ゆらぐ音にも大人の余裕が感じられました。めでたく恋は成就したのかも!?と妄想したりも。高音でフェードアウトするラストがとても美しかったです。まるで映画音楽のようで、ラブストーリーを見ている気持ちにもなれた、とてもドラマチックな演奏でした!

ピアノソロによる演奏で、K.シマノフスキ「変奏曲変ロ短調 op.3」。最初のテーマは低音の重い響きがインパクトあり、夜道を一歩一歩進んでいるようにも感じました。少し駆け足になったり、タラランタララン♪と転がるようだったりと、変奏はいずれも個性豊か。個人的には、神秘的に感じられたところ(第3変奏?)、ブラームスをイメージしたところ(第5変奏?)、葬送行進曲のようなところ(第8変奏?)、幸せな舞曲のようなところ(第9変奏?)が特に印象深かったです。そして最後の変奏(第12変奏?)は、速いテンポで進むダイナミックな演奏に引き込まれました。がっちりとした低音と華やかな高音が、心を一つにして一緒に駆け抜けていくようなのが素敵!フィナーレはさらに力強くなり、ホールに響き渡るピアノが輝かしい!変奏曲でありながらも、短編小説のようなストーリー展開が感じられた演奏でした!

ここで出演者のお2人によるトークが入りました。まずは鵜飼さんから、先ほど演奏したシマノフスキの作品について。シマノフスキは色々な性格の音楽を書いている、ポーランドの作曲家だそうです。今回取り上げた作品は、最初のテーマは暗くも美しく、ポーランドの歌のようで、華やかなフィナーレに向かう、とご紹介くださいました。続いて水野さんから、まずは後半はじめに演奏したツェルニーの作品について。最後はミュートを付けて演奏したため、最初との音色の違いを楽しんで頂けたのでは?といった趣旨の事を仰っていました。そしてこの後に演奏するグリエールの作品について。「小品」と言っても演奏は結構大変な作品で、この中では2曲(私には具体的にどの曲か確定できなかったため、ここでは明記を避けます。申し訳ありません)の演奏機会が多い、と簡単に紹介し、演奏に移りました。

プログラム最後の演目は、R.グリエール「4つの小品」。なおこの時の演奏順は作品番号順ではなかったかもしれません。ここでは演奏順でレビューを書きますが、諸々勘違いがありましたら申し訳ありません。1曲目 ちょっと切ないラブソングのよう(と私は感じました)で、コントラバスとピアノが語らうように交互にメロディをやり取りするのが素敵でした。しっとりと今この時を慈しむ感じがとても印象深かったです。ゆっくりと音階を上ってフェードアウトするラストまで愛しい!2曲目 明るく跳ねるようなリズムが楽しく、素朴な舞曲のようにも感じました。スキップから滑らかなターンへの変化も素敵。ラストの超高速演奏がすごい!3曲目 ゆっくり穏やかに歌うコントラバスが心地よく、まるで歌曲のよう!滑らかな流れの中で、強弱の波や感極まる盛り上がりがごく自然に作られていました。思いに寄り添ってくれるようで、親しみやすかったです。優しくフェードアウトするラストも素敵!4曲目 エスニックな舞曲のリズムが超カッコイイ!速いテンポでよどみなく音を繰り出す超絶技巧に圧倒されました。1音1音が小刻みにゆらぎながら個性的なリズムを刻むのにゾクゾクし、指板の上で弦をおさえる左手を滑らせて鳴らす音はこれ以上無いほどの躍動感で、見た目にもインパクト大!クライマックスではさらに勢いを増し、音盛り盛りで超充実の演奏でした!

カーテンコールで出演者のお2人は何度も舞台へ戻って来てくださいました。水野さんからお客さん達へのごあいさつの後、水野さんから曲名が紹介され、アンコールの演奏に。アンコールは、R.シューマントロイメライシューマンで始まりシューマンで終わる、粋な計らいですね!優しいピアノの響きに乗って、高音域でゆったりたっぷりメロディを歌うコントラバスがなんて素敵なこと!丸みのある音色で感極まるところの良さ!滑らかで優しい響きにうっとりしました。ひょっとすると一番高い音が出る弦1本だけで演奏していらしたかも?私は舞台から遠い席にいたので、違っていましたら申し訳ありません。「歌い、踊り、想うコントラバス!」にどっぷり浸れた、素晴らしい時間をありがとうございます!近い将来、きっと再び札幌にいらしてくださいませ。次はぜひ六花亭本店ふきのとうホールの主催公演で、お待ちしています!


この日の3日前、札幌交響楽団コントラバス奏者・下川朗さんのリサイタルを聴きました。「第135回OKUI MIGAKUギャラリーコンサート 下川朗コントラバスリサイタル」(2023/11/05)。歌心の良さにキレッキレのリズム感、超絶技巧!アルペジョーネソナタコントラバスのための作品たちの演奏はうれしい驚きの連続で、下川さんによる「主役としてのコントラバス」に魅了された、あっという間の2時間でした!

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若手音楽家による演奏会で、大変印象深かったものを1つご紹介します。チェロの水野優也さんがご出演。会場はふきのとうホールです(貸しホールとして)。「PMF REUNION CONCERT VOL.5」(2023/08/21)。弦楽六重奏曲(チャイコフスキーブラームス)とモーツァルト オーボエ四重奏曲。作曲家が伸び伸びと書いた曲たちが、生きた音楽として目の前に現れた事に大感激!「合わせる」を超えた期待以上のすごいアンサンブルでした!

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。