自由にしかし楽しく!クラシック音楽

クラシック音楽の演奏会や関連本などの感想を書くブログです。「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ(http://nyaon-c.hatenablog.com/)」の姉妹ブログです。

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なの花薬局 Presents 子どもといっしょに聴きたいコンサート Vol.3 (2023/12) レポート

www.msnw-wishall.jp
ウィステリアホールが主催し、なの花薬局が協力する「子どもといっしょに聴きたいコンサート」。Vol.3となる今回の演目は、ドビュッシー「おもちゃ箱」です。事前応募・抽選による無料招待の演奏会に、私はありがたいことに当選し、小5の娘と一緒にうかがいました。なお私達が聴いたのは、同じ内容で4回開催された公演のうちの第3公演です。


なの花薬局 Presents 子どもといっしょに聴きたいコンサート Vol.3 (第3公演)
2023年12月17日(日)13:00~ ウィステリアホール

【出演】
谷石 奈緒子(ナレーション)
新堀 聡子(ピアノ)

【曲目】
ドビュッシー:おもちゃ箱

 アンドレ・エレ(台本・絵)
 青柳いづみこ(日本語訳 Gakken刊)


休憩なしの約30分の公演。子への愛あふれる作品を、心を込めた演出と演奏で楽しめ、親子で心温まる体験ができました!おもちゃ箱の中の人形が動き出すという素朴なお話に、素敵な絵、そしてきめ細やかに物語の世界を表現する音楽。そのすべてが語りかける子ども達への愛と思いやりに満ちていました。また全部を語り尽くさず想像の余地が残されていた(と私は感じました)ため、子と一緒に大人も楽しめたのもうれしかったです。私が見た限りの印象では、小さい子から大きい子まで会場の子ども達はとても熱心に聞き入って、それぞれの子なりに楽しんでいた様子。それは「音楽が楽しい・ピアノが素敵」でも「お話が面白い・ナレーションの声が好き」でも「絵がカワイイ・色がキレイ」でも、あるいは「お母さん・お父さんが楽しそう」でも、何だって良いはず。正解は無く、自由な楽しみ方ができるのが、絵本(今回は素晴らしい音楽も!)の良いところです。刺激の多いコンテンツに慣れている現代っ子たちではありますが、それらはあくまで「刺激」。絵本の読み聞かせのような、自分に向けて語りかけてもらえる時間は、子ども達にとってやはりかけがえのないものだと私は思います。親子のためにこんな素敵な企画を開催しご招待くださった、主催者のかたへ改めてお礼申し上げます。

ドビュッシー「おもちゃ箱」は、ドビュッシーが愛娘クロード・エマ(愛称:シュシュ、当時8歳)のために作曲したもの。台本と絵本を仕上げたのはドビュッシーと親交があった画家のアンドレ・エレ。ドビュッシーはナレーションが入る場所等、細かな所まで指示を書き込んでいるそうです。今回は、音楽と絵は原作のまま、お話は青柳いづみこさんによる日本語訳を用いて上演されました。信頼の新堀聡子さんのピアノは繊細にもダイナミックにもなって物語世界を作り上げてくださり、谷石奈緒子さんのナレーションは落ち着いた優しい語り口で聴き手の心にすっと入ってきました。演奏中のスクリーンには、絵本の絵と、ピアノの手元、ナレーターの表情が映し出され、照明による演出もありました。こういった小さな舞台の演出は、ウィステリアホールさんがお得意とするところですね。また来場者へのお土産として、今回の絵本をモチーフとした記念品(ランチ巾着と卓上カレンダー)も用意されました。重ねてありがとうございます!

以下、個人的に印象深かったところを中心にレポートします。ストーリー等の詳細は省きますので、物語自体の内容を知りたい方はお手数ですがご自身でお調べくださいませ。出演者のお2人が舞台へ。お2人とも白いブラウスのシンプルな装いでした。すぐに演奏開始です。物語のはじめに、主な登場人物の紹介がありました。「お人形ちゃん」「ブルチネッラ(道化師)」「兵隊さん」そして「花」を1人ずつ順に紹介。私がハッとしたのはその紹介のスタイルでした。ナレーションで例えば「お人形ちゃん」と言うと、ピアノでその登場人物のテーマ(ライトモチーフ?)が演奏され、スクリーンには登場人物の絵と、その下になんとライトモチーフが書かれた小さな楽譜が!中途半端に小さい子向けに忖度しない、この心意気!もちろん気にとめない子は多かったと思いますが、ピアノを少しやっているうちの娘の場合、耳に入る音楽と同時に楽譜とピアノの手元の映像が来たのはとても良かったようです。それぞれのキャラクター「らしい」テーマが続いた後、最後の「花」が少しミステリアスな感じで私は意表を突かれました。はかなさや寂しさも感じさせるピアノが、そのまま続けてお話の導入になったのも印象的。スクリーンには、おもちゃ箱と目を閉じている人形たち。やや暗い音楽と照明の暗さも相まって、世の中が寝静まった夜のお話であることがうかがえました。おもちゃ達が動き出すと音楽は賑やかになり、ライトモチーフも密かに織り込まれていた感じ。明かりが付いたり音楽が流れたりの描写も楽しい。「ゾウの踊り」は、迫力あるピアノと可愛らしい絵のコントラストが良かったです。「アルルカンの踊り」の異国風なピアノが素敵!兵隊さんの行進曲風な音楽に、私は同じドビュッシーの「ゴリウォークのケークウォーク」を連想。シーン毎に色とりどりのピアノ小品が次々と登場して、それらを生演奏で聴けるのはなんとも贅沢でした。ブルチネッラに駆け寄るお人形ちゃんが花を落とし、兵隊さんがそれを拾うあたりから、ピアノのテンポも速くなり、観客の方もドキドキ。ブルチネッラがお人形ちゃんに「情熱的なキス」(!)をするというのは、日本のお話にはなかなか出てこない表現で新鮮でした。緊迫感ある音楽に、スクリーンにはブルチネッラ軍と兵隊さん軍の戦いの絵。しかし「(大砲の)弾はグリンピース」(!)というナレーションに、会場にはクスッと笑い声が起きました。月明かりの下で、「ニュルンベルクの木の間に」怪我をした兵隊さんが花を持ったまま横たわっているシーンでは、ピアノは哀しげで、フレーズ末尾の音の余韻が月明かりを思わせる、とても美しい響き。有名なドビュッシー「月の光」とはカラーが異なる、これもまた美しい月の光ですね!お人形ちゃんが兵隊さんを介抱。空き家を見つけ、2頭の羊と2羽のガチョウを買って……と、いつの間にか新生活の準備をしている流れ。羊飼いやガチョウ売りが登場する度に「らしい」音楽になったのが素敵でした。「羊飼いの草笛が、彼らの木で出来た魂を、メランコリックな気持ちにさせた」……この一文がなんて詩的で美しいこと!2人は結婚することになり、音楽は前向きな感じに。「結婚行進曲!」のナレーションに続いて、有名なメンデルスゾーンの「結婚行進曲」のメロディが登場し、一層華やか!お話は20年後に。音楽は壮大で明るくなり、私はなんとなくワーグナーを連想しました。夫婦はたくさんの子宝に恵まれ、お人形ちゃんはすっかり太って、白いヒゲを生やした兵隊さんは既にしおれた「花」をずっと持っている。大切なものを大事に持ち続けるって、素敵なことですね!踊れなくなったお人形ちゃんは「代わりに歌う」、子ども達は「ポルカを踊る」、とシーン毎に楽しい音楽!そして「すべてが消える」と、ピアノのトレモロの後、ナレーションでお話が最初のシーンに戻ったことが知らされました。ピアノは最初に聴いた物語の幕開けと同じ(と私は思いました。違っていましたら申し訳ありません)、ミステリアスな感じに。スクリーンには最初に登場したおもちゃ箱が映し出され、その箱には"FIN"の文字。物語は幕を下ろし、会場に温かな拍手が起きました。

カーテンコールにて、ナレーターの谷石さんからごあいさつとお話しがありました。ドビュッシー「おもちゃ箱」についての解説、会場には小さな子も来てくれた事へのお礼、谷石さん自身も1歳のお子さんの子育て中というお話も。最後に「こんなコンサートがあるといいな」といった事をぜひ教えてください、とアンケートのお願いがあり、会はお開きになりました。親子の楽しい時間と、かわいい記念品のお土産まで、ありがとうございました!素晴らしい企画が今後も良い形で続きますように。


札響 読み聴かせコンサート『おばけのマールとたのしいオーケストラ』」(2022/08/11)。描き下ろし(書き下ろし)たっぷりの絵本の世界に、大人が聴いても十二分に楽しめる選曲と演奏。森崎博之さんの朗読と進行も素敵で、親子で思いっきり楽しめました!

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ウィステリアホール5周年記念事業 ジングシュピールファウスト」(2023/05/28)。ミニマムなキャストと仕掛けによる、歌とお芝居で作るオリジナル舞台。魅力的な登場人物と音楽に心揺さぶられ、壮大な世界にどっぷり浸れた得がたい体験でした。再演&映像作品化をぜひ!

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ピアノの新堀聡子さんが出演されています。「札幌・リトアニア文化交流コンサート」(2023/08/28)。リトアニアの大スター・ミシュクナイテさんの圧倒的なお声と表現。信頼のメンバーによるピアノと弦。「歌の国」リトアニアの精神に触れ、その音楽にどっぷり浸れた幸せな時間でした。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

リッカ弦楽四重奏団 結成記念コンサート (2023/12) レポート

札響メンバーで結成された、リッカ弦楽四重奏団。その結成記念コンサートがふきのとうホールにて開催されました。チーム名は、雪の別名「六花(りっか)」に由来し、「ひとつとして同じものはない雪の結晶のように、きらめきのある音楽をしたい」という意味があるそうです(プログラムノートより)。錚々たるメンバーによるカルテットの旗揚げ公演ということで、札幌市民の期待は大きく、当日の会場は9割ほどの席が埋まる盛況ぶりでした。

リッカ弦楽四重奏団 結成記念コンサート
2023年12月13日(水)19:00~ ふきのとうホール

【演奏】
会田 莉凡(1stヴァイオリン) ※札幌交響楽団コンサートマスター
桐原 宗生(2ndヴァイオリン) ※札幌交響楽団首席ヴァイオリン奏者
鈴木 勇人(ヴィオラ) ※札幌交響楽団ヴィオラ奏者
石川 祐支(チェロ) ※札幌交響楽団首席チェロ奏者

【曲目】
ハイドン弦楽四重奏曲 第77番 「皇帝」 ハ長調 Hob.III:77
ショスタコーヴィチ弦楽四重奏曲 第1番 ハ長調 op.49
ブラームス弦楽四重奏曲 第2番 イ短調 op.51-2

(アンコール)チャイコフスキー弦楽四重奏曲 第1番 より 第2楽章 「アンダンテ・カンタービレ


ハートに火がついた音楽家たちの本気を目の当たりにした、最高にアツイ夜!札幌にスケール桁違いのカルテットが「爆誕」した瞬間に居合わせて幸せです!今回のメンバーそれぞれの演奏には、ピアノとのデュオ等でそれなりになじんできた私。このメンバーが組むなら良いに決まっている!と、聴く前から大船に乗った気持ちでいました。そしていざ実演に触れると、事前予想をはるかに超えてきた事に驚愕!なんというか「率なくこなす」方向ではなく、もっと行けるまだ行けると更なる高みを目指す、とんでもなく熱量高い演奏でした。実力・経験ともに十二分に兼ね備えた音楽家たちが、お互いの信頼関係をベースに本気で挑むと、ものすごいことになるのですね!そもそも、オケでもオケ以外でも超ご多忙な4名が、新たなカルテットを結成し、自主公演をする事自体だって相当大変だったはずです。ここまでやれるほど、メンバーの「ハートに火を付けた」のは一体!?私は、やはり会田莉凡さんの存在が大きいと思います。会田さんは、2022年4月に札響のコンサートマスターに就任して以来、オケを牽引してくださっています。今回のカルテットでも1stヴァイオリンが抜群の切れ味で先陣を切り、それに他のメンバーが食らいつくように熱い演奏で続くスタイルだったと私は感じました。それだけ人を惹きつけるものがあり、さらに自身の演奏でチームをぐいぐい引っ張っていく会田さん。めちゃくちゃカッコイイ!会田さん、改めまして札響に来てくださりありがとうございます!これからもずっと、札幌の希望の星でいてください。頼りにしています!

今回の重量級の3つの演目、それぞれの個性もめいいっぱい楽しめました。ハイドンは、華やかさ楽しさだけでなく、常に1stヴァイオリンがリードし、4人の役割分担で奥行きを作り、また特に第4楽章では重厚さもあって、私は小さなオーケストラを見ているような気持ちになりました。ショスタコーヴィチ1番は、一見ノーマルなのに隠しきれない狂気をはらんでいるよう。そしてブラームス2番の、柔和な顔をした激情に震撼!今回の本気の演奏が、作品のコアな部分を容赦なく露わにしてくださったおかげで、聴き手は表面的なイメージに惑わされず音楽の本質に触れることができました。弦楽四重奏は奥が深い!今回のリッカ弦楽四重奏団との出会いが決定打となり、ビギナーだった私が弦楽四重奏の沼にハマりつつあります。我が最愛のブラームスはあいにく3曲しか残していないものの、弦楽四重奏は名曲の宝庫ですから!これからどんなサプライズな演奏と出会えるのか、とても楽しみです。リッカ弦楽四重奏団との出会いが、私のハートにも火を付けてくださいました!


出演者の皆様が舞台へ。会田莉凡さんは上が黒で下が白のノースリーブドレス、男性奏者の皆様は黒シャツの装い。すぐに演奏開始です。はじめは、ハイドン弦楽四重奏曲 第77番 『皇帝』」。第1楽章 明るくウキウキした感じで、鳥がさえずるようだったりスキップするようだったりと、歌うヴァイオリンが華やか。軽快なリズムと美しい流れが同居する音楽が素敵でした。チェロから始まるところでは少し陰りを見せ、楽章締めくくりに向かう流れでは一層賑やかになる等、生き生きとした表情の変化も楽しい。第2楽章 ドイツ国歌に採用されている事で有名なこの楽章。はじめの4名でゆったり美しく奏でるメロディの良さ!うっとり聴き入りました。その後、2ndヴァイオリンがメロディを美しく歌い1stヴァイオリンが軽快に彩る二重奏だったり、チェロがメロディを優雅に歌い他の弦がハモる形になったり、ヴィオラが主役になったりと、組み合わせが変わる度に味わいが変化するのを楽しく聴きました。チェロが音を長くのばすベースの上で、他の3つの弦が清らかに歌うところが最高に素敵!第3楽章 快活な舞曲で、1stヴァイオリンが低めの音ではじめの1歩を踏み込んで、他の弦が合いの手を入れる間合いの良さ!タッタッタッタ♪と軽快に跳ねるところや、少しシリアスなところでも、まず1stヴァイオリンがパッと登場し他の弦がついて行くスタイルで、このチームならではの呼吸と掛け合いの良さを実感できました。第4楽章 はじめのユニゾンによる強奏からアツイ!ささくようなところと交互に来る力強さはインパクト大でした。高速演奏での丁々発止のやり取りがすごい!また、2ndヴァイオリンが音を刻んだり、チェロがぐーっと低い音をのばしてベースを作ったりと、がっちりした土台もあって、この奥行きや重厚さがたったの4名で生み出されているのにも驚き!フィナーレでの自信に満ちた明るさは気分爽快!何度も力強く弓を振り下ろす様子は見た目にも圧巻でした。カルテットの本気の演奏に、最初から気分があがりました!

2曲目は、ショスタコーヴィチ弦楽四重奏曲 第1番」。第1楽章 はじめの方は穏やかな美しい歌で、ショスタコーヴィチはこんな風にも書けるんだなと、のんびり構えて聴いていた私。しかし2ndヴァイオリンとヴィオラがやや不穏な音を繰り出すあたりから雲行きが怪しくなってきました。ヴィオラとチェロのベースに乗って1stヴァイオリンが歌うところは、美しいのにどこか不気味。私はぞわっとしました。また2つのヴァイオリンがベースを作ってヴィオラが歌うところもあり、三重奏の組み合わせが変化していくのは興味深かったです。一見穏やかで幸せな音楽なのに、一皮剥けば狂気があるような、不思議な感じがした演奏に心がざわめきました。第2楽章 はじめはヴィオラ独奏から。子守歌のようなメロディを、ぽつぽつと暗く歌うヴィオラ。思わず引き込まれましたが、底知れなさを恐ろしくも感じました。チェロのピッチカートが重なるとさらに妖しく、2つのヴァイオリンによる二重奏は神秘的。また組み合わせを変えながら二重奏が何度か登場し、それぞれの響きを楽しめました。4人での強奏では、超高音の1stヴァイオリンと重低音のチェロのギャップに心かき乱されたり、逆にチェロが超高音で歌ったり、一瞬スキップするような明るさがあったりと、一筋縄ではいかない感じ。ただ、最初の子守歌のようなメロディがずっとベースにあったためか、私はなんとか迷子にならずに聴けたと思います。ポン!と弱いピッチカートでの締めくくりが思いの外インパクトがあって、思わずビクッとなりました(私だけ?)。第3楽章 ヴィオラトレモロに乗って、2ndヴァイオリンから順に参戦していき、スピードと気迫ある盛り上がりに!この張り詰めた空気がすごい!かと思うと温かく楽しそうに歌い出したり、いきなり止まったり、各楽器で掛け合いがあったり。一糸乱れぬ展開での間合いがすごく面白かったです。第4楽章 チェロに誘われて1stヴァイオリンが超高音で軽快に歌い出し、すぐに気迫ある掛け合いに。ガッガッ♪と全員が力強く弦を鳴らし続け、ものすごく速く各楽器が呼応し合い、一瞬の隙も見せない展開がすごいことすごいこと。超パワフル&超高速で駆け抜けたラストの気迫たるや!ショスタコーヴィチとリッカ弦楽四重奏団、恐るべし……想像をはるかに超えた演奏に打ちのめされました!

後半は、ブラームス弦楽四重奏曲 第2番」。第1楽章 重厚なベースに悲劇的なヴァイオリン。はじめからブラームスらしさ全開の演奏に引き込まれました。1stヴァイオリン独奏の後は、柔和な感じに。チェロのピッチカートのリズムに乗って、歌うヴァイオリンやヴィオラが甘く優しく、歌曲のような心地良さでした。ユニゾンで奏でる堂々とした響きの良さ!穏やかな中で時折パンチのある強奏が顔を見せていたのが、次第に気迫あふれる激しさが優位に。ダダダーン♪と全員が全力で弦を鳴らすのがものすごい迫力!1stヴァイオリンの悲痛な叫び!4名の張り詰めた空気と底知れぬエネルギーがすごい。楽章締めくくりに向かうクライマックスの凄みは、甘ちゃんな私など真正面からはとても受け止められないほど!第2楽章 中低弦のベース(渋い!)に乗って、低めの深みある音色でゆったり歌う1stヴァイオリンがなんて素敵なこと!ゆったりと美しい音楽は、タッタッタ♪と控えめで愛らしいステップに幸せな気持ちが垣間見えるよう。しかし突如、ガガガ……と激しく鳴る他の弦に乗って、1stヴァイオリンが切れ味鋭く思いを叫び、度肝を抜かれました!再び穏やかになっても、私はいつ嵐が来るかと思うと緊張してしまい、目の前の音楽とは裏腹に気持ちはリラックスできないままでした(私だけかも?ごめんなさい!)。第3楽章 チェロに誘われて他の弦が続くシーンが何度かあり、その掴みのチェロと続く演奏の表情の変化を興味深く聴きました。神秘的で研ぎ澄まされたところでのヴィオラの存在感、駆け足のところでの舞曲のリズム、強奏を各奏者でリレーしていくところのアツさ、低音からぐーっと盛り上がるところでの下から沸き上がるエネルギー!息つく間もないほどのめり込みました。静かな締めくくりは、まるで深淵に落ちてしまったかのよう。第4楽章 最初の1stヴァイオリンが強烈なインパクトでガツンとやられました!ガッガッ♪と力強く鳴らす他の弦によるリズムにドキドキ、キレッキレの弦の振り下ろしにゾクゾク。穏やかなところと熱量高いところが交互に来て、タッタッ♪と囁くように全員で息を合わせた後に、ぱっと切り替わるのが鮮やかでめちゃくちゃカッコイイ!合間に入る滑らかなチェロにほっとしつつ、熱量高いところのすごさには圧倒されっぱなしでした。1stヴァイオリンのメロディを2ndヴァイオリンとヴィオラが力いっぱいリフレインしたり、ユニゾンで強奏したりと、どのシーンも情熱を超えた激情!力強く駆け抜けたラストまで、これ以上無いほどの大熱演!ブラームスがこんな顔を持っていたなんて……。私は感激とショックとで、しばし呆然としてしまったほど、個人的には大事件な出会いでした。

カーテンコールの後、会田莉凡さんからごあいさつとトークがありました。平日夜の開催にもかかわらず、たくさんの人に来場頂いた事への御礼(最終的に180名超の客入りだったようです)、予想以上のお客さんが集まったことで当日券の「券が足りなくなる」ハプニングがあったというお話も。またフライヤー作成やプログラム作成といった事務的な事は、ヴィオラの鈴木勇人さんがご尽力くださったとのことです(大拍手!)。限られた時間での練習や合わせが大変だったことや、「初回の公演でこんなに大変なプログラムをやるのは私達だけ」(!)。そして会田莉凡さんと石川祐支さんがソリストを務める、札響苫小牧公演2024(2024/03/23 開催予定)の宣伝(この日来場した人限定の先行販売案内まで!)もありました。

「ほっこりした気持ちでお帰り頂きたくて」と、アンコールは、チャイコフスキー弦楽四重奏曲 第1番」 より 第2楽章 「アンダンテ・カンタービレ。穏やかで美しい歌に心癒やされました。1stヴァイオリンのメロディを各楽器が優しく繰り返すのが素敵!これはまさに愛!2ndヴァイオリンに導かれた、素朴で哀しげな歌もハッとする美しさで、フレーズ最後に音がゆらぐところがぐっと来ました。最初のメロディが戻って来ると、先ほどよりももっと優しく愛に満ちた感じに。美しい1stヴァイオリンと、支える他の弦の温かなピッチカートに、うっとり聴き入りました。次第にゆっくりになり、フェードアウトするラストの余韻まで、優しさと愛があふれた演奏。ああなんて素敵なのでしょう!超充実の本プログラムから、ほっこりアンコールまで、私達聴き手を夢中にさせてくだりありがとうございました!リッカ弦楽四重奏団、第2回以降の公演もぜひお待ちしています。そして苫小牧でのブラームスの二重協奏曲、とても楽しみにしています!


R弦楽四重奏団 Vol.1 」(2023/11/18)。ハイドンショスタコーヴィチブラームス演奏家との距離が近いギャラリーにて、信頼のメンバーによる充実の演奏を肌で感じられる贅沢!お堅いイメージだった弦楽四重奏を身近に感じ、自然体で楽しめた幸せな時間でした。

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ブラームス室内楽シリーズ イ調で結ぶ作品集」(2023/06/26)。会田莉凡さんのヴァイオリンを堪能できたソナタ、「音楽する」三重奏曲、ピアノ四重奏曲の「化学反応」の素晴らしさ!ブラームスの隠れた名曲たちの充実した演奏に浸れた、とても幸せな時間でした!

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クリスマスコンサート ~チャペルに響くフルート・チェロ・ピアノの調べ~(2023/12) レポート

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北星学園大学が主催し、同窓会と後援会が後援するチャペルコンサート。今回はチェロの石川祐支さんとピアノの大平由美子さんのデュオに、フルートの類家千裕さんが加わったトリオによる「クリスマスコンサート」です。事前申込制・入場無料の一般の人達にも開かれたイベントで、私は申し込みした上で大谷地までプチ遠征して聴きにうかがいました。なお事前受付は早期に定員に達し、当日は満席での開催だったようです。


クリスマスコンサート ~チャペルに響くフルート・チェロ・ピアノの調べ~
2023年12月09日(日)14:00~ 北星学園大学チャペル

【演奏】
類家 千裕(フルート)
石川 祐支(チェロ) ※札幌交響楽団首席チェロ奏者
大平 由美子(ピアノ)

【曲目】
P.ゴーベール:ロマンティックな小品 (フルート&ピアノ&チェロ)
F.ダンツィ:フルートとチェロの為のデュエット 第3番 (フルート&チェロ)
F.クーラウ:協奏的三重奏曲 (フルート&ピアノ&チェロ)

J.S.バッハ:「管弦楽組曲 第2番」より ポロネーズバディネリ (フルート&ピアノ)
J.S.バッハ:「無伴奏チェロ組曲 第1番」より プレリュード/ジーグ (チェロ)
L.v.ベートーヴェン:「月光」より 第1楽章 (ピアノ)
A.ピアソラ:「ブエノス・アイレスの四季」より“冬” (フルート&ピアノ)
G.カッチーニ(V.F.ヴィヴァロフ):アヴェ・マリア (フルート&ピアノ)
J.シベリウス:樅の木 (ピアノ)
S.ラフマニノフ:ヴォカリーズ (チェロ&ピアノ)
C.サン=サーンス:白鳥 (チェロ&ピアノ)

(アンコール)
E.モリコーネニューシネマパラダイス・メドレー (フルート&ピアノ&チェロ)


信頼の石川祐支さん&大平由美子さんデュオと、新進フルーティストの類家千裕さんによる演奏をたっぷり聴けて、幸せな時間を過ごすことができました!めずらしい編成による難曲の演奏も、おなじみのレパートリーも、どれも楽しい♪また今回は、大好きなデュオの演奏の良さに加え、若手フルーティストの類家さんと出会えたのが個人的にとてもうれしかったです。ベテランの共演者お2人と堂々と渡り合い、フレッシュで美しくも力強くもあるフルートが素晴らしい!これからの類家さんのご活躍に大注目したいと思います。もちろん石川さんと大平さんのデュオの演奏は何度でも聴きたいので、年1回のリサイタルのみならず、このような企画にどんどんご出演くださるとうれしいです。どこまでも追いかけていきます!

今回初めてうかがった北星学園大学チャペル。とても素敵な会場でした!小さなパイプオルガンがあり、高い天井。規模的にも今回のような小編成の演奏会にぴったりで、音の響きは良かったと思います。今回はクリスマスらしく、ポインセチアの鉢植えがいくつも飾られていたのも素敵でした。一般にも開かれた参加費無料の演奏会を継続して開催くださっている北星学園大学さんには頭が下がります。誰もが気軽に生演奏に触れられるのはとてもありがたいことです。チャペルコンサート、今後も良い形で続きますように。私は次回以降もぜひうかがいたいです。


開演に先立ち、司会のかたからあいさつと簡単な案内(出演者の紹介等)の後、学校代表のかた(役職とお名前を私が聞き取れず申し訳ありません)からごあいさつと「チャペルコンサート」についてのお話がありました。「チャペルコンサート」は年3回開催されているそうです。本年度に開催された過去2回について触れた後、「今回は札幌にゆかりあるプレーヤーによる、クリスマスコンサートです」と紹介。またこれからの抱負もお話しくださいました。出演者の皆様が拍手で迎えられ(大平さんは白地に花模様・緑のエリのドレス、類家さんは黄緑色のふわっとしたドレス、石川さんは黒シャツの装い)、いよいよ開演です。

前半は「クラシック・コンサート」として、めずらしい編成の演目が並びました。1曲目は、フルート&ピアノ&チェロによる、P.ゴーベール「ロマンティックな小品」。はじめのピアノの和音は親しみやすい感じ。ほどなく登場したチェロは、ロマンチックかつ雄大に歌うのが素敵で、早速心掴まれました。この大きな存在のチェロが、フルートの登場でさっと音量を下げたのが印象に残っています。美しいピアノに乗って、重なったり交互になったりして歌うフルートとチェロ。優雅な響きと美しい音色が心地良かったです。盛り上がりの後、フルートが舞曲のようなメロディを奏でたのにハッとさせられました。チェロが加わるとフルートとチェロがダンスしているように感じられ、掛け合いとリズム感が素敵!高音を長くのばしてフェードアウトするラストまで、春を思わせる温かで柔らかな響きが素敵な演奏でした。

ここで出演者の皆様のごあいさつとトークが入りました。大平さんから、出演メンバー紹介と、今回の「めずらしい編成」、そして「盛りだくさん」なプログラムについてのお話があった後、類家さんによる1曲目の解説に。一般になじみが薄い作曲家・ゴーベールは、フルーティストなら全員が知っている人で、ピアノなら「ハノン」にあたる教則本を書いた人なのだそうです。フルートのための作品も数多く書いていて、温かな和声が特徴、と仰っていました。

フルート&チェロによる、F.ダンツィ「フルートとチェロの為のデュエット 第3番」。演奏前に石川さんから解説がありました。日本ではあまり知られていない作曲家のダンツィについては、「ぼくも知りませんでした」(!)と石川さん。フルート&チェロの編成はとてもめずらしく、今回の演目は、石川さんがお知り合いのフルーティストのかたに相談して教えて頂いた曲なのだそうです。また石川さんがダンツィについて調べたところ、モーツァルトと同時代の人で、紹介文には「宮廷楽団員の首席チェロ奏者」(!)と、「作曲家」「指揮者」より先にチェロが書かれてあった事に驚かれた様子。だから今回の曲も「チェロがとても難しい」(!)と、納得(?)されたようでした。こちらの演奏、聴き手としてはとても面白かったです!素朴なメロディはフルートが担当し、チェロはずっと支える役目。しかし、そのチェロの変化が曲の表情を変えていると感じられ、私はチェロに目と耳が釘付けになりました。はじめは古風な舞曲風(メヌエットのような?)で、ゆったりした(ン)タッタ♪のリズムを刻むチェロと、優しい響きのフルートが一緒にダンスしているよう。チェロは基本高音域で、時折低音が入るのが印象的でした。続いて、フルートは同じメロディを少し速く、チェロはタタタ タタタ♪と少し駆け足になり、ウキウキした感じに。弦を押さえる左手の指が大忙しで動いているのは、見ている分には楽しかったです。フルートが華やかになると、チェロはズンチャ ズンチャ♪と明るく歩みを進める感じに。フルートと重なってメロディを奏でたり、輝かしい重音があったりと、チェロの変化の度に曲の色合いが変わるのが楽しい!チェロの堂々とした鳴りの貫禄!鳥のさえずりのような華やかなフルートと、明るく寄りそうチェロが一緒に駆け抜け締めくくり。短いながらも聴き応え見応えある演奏に引き込まれました!

フルート&ピアノ&チェロによる、F.クーラウ「協奏的三重奏曲」。大平さんはクーラウをピアノ曲「子供のためのソナチネ」の可愛らしいイメージで捉えていたそう。しかしこの三重奏曲はとても難しくて大変だったと仰っていました。また石川さんは、この曲は元々フルート2本とピアノで演奏するものと解説した上で、2番フルートの置き換えであるチェロは「そりゃあ難しいですよね」。類家さんも演奏の難しさに触れ、「3人の協奏を楽しんで頂ければ」と仰っていました。第1楽章 はじめはピアノによる序奏から。優しいメロディに跳ねるような音が可憐でした。ほどなくフルートとチェロが一緒に登場。チェロとフルートが明るく会話するように演奏したところは、お互いが鏡映しのようで、チェロもフルートもうねうねした音が面白かったです。ピアノに導かれて、明るいところから一旦激しくなるも、再び穏やかに。チェロとフルートの会話が少し切ない感じに変化し、その後も対話の度に少しずつ表情が移り変わっていたように思います。ダイナミックに音階を駆け上ったり下りたりするピアノが存在感ありました。第2楽章 こちらもピアノの序奏から。ピアノが奏でたメロディをフルートとチェロが繰り返すスタイルで、ゆったりした流れの中、様々な舞曲のようなメロディが登場。いずれも身体になじむリズムが素敵でした。第3楽章 快活でステップを踏むようなリズムが楽しく、フルートが朗らかに歌うのが素敵!チェロが管楽器のタンギングのようにタタタタ……♪と音を刻んだのがすごい!ピアノはずっと忙しく、紙芝居のように次々と場面が移り変わるのをリードしていました。チェロがフルートの歌をピッチカートで支えた後、ぱっと主役に躍り出てメロディを切なく奏でたのがすごく素敵!もしこれが2番フルートだったらシンプルに1番の繰り返しになるところを、音色がまったく異なるからこその面白さ!この賑やかな流れの終盤、チェロが余韻を残した後、フルート独奏が登場。ピュアで美しい音色を聴かせてくださった後、3人一緒に明るく堂々と締めくったのが素敵でした!目の前で展開する3人の「協奏」、すごかったです!とても楽しく聴くことができました。

休憩の終わり頃、後半に入る前に、司会のかたによるアナウンス。アンケートのお願いと、募金のお願い、来年度の「チャペルコンサート」の予定のお知らせ、といった内容でした。

後半は「名曲アルバム」と題し、おなじみの名曲たちをソロやデュオによる演奏で聴かせてくださいました。大平さんと類家さんが舞台へ。大平さんが「時間がおしているとのことなので、(トークなしで)どんどん演奏します」と仰ってから、早速演奏に入りました。はじめは、フルート&ピアノで、J.S.バッハ管弦楽組曲 第2番」より。「ポロネーズ」は、ほの暗い感じで、タータタッタ♪と音を刻み、タ~タタタ♪とコロコロ歌うのがミステリアスで素敵!中盤の駆け足になったところは、ピアノとシンクロして空を泳いでいるよう!「バディネリ」は、タッタタ タッタタ♪とフルートが軽快にステップするようで、美しくも力強い音とリズムが良かったです。高速でぐいぐい進む気迫がすごい!耳なじみのあるメロディを、類家さんの華やかで力強いフルートで楽しく聴くことができました。

バッハの舞曲が続きました。チェロ独奏で、J.S.バッハ無伴奏チェロ組曲 第1番」より。「プレリュード」の輝かしさ!4つの音の連なりが数珠つなぎになって、目の前で次々と湧き出てくる、自然と身体のバイオリズムに添う感じのとても心地よい響きでした。弓をうねうねする動きに伴って次第に音が浮かび上がってくるのは一層輝かしい!「ジーグ」では、ダイナミックな弓の動きと跳ねるようなリズムが楽しい!フレーズ末尾での低音の余韻が印象深く、軽快さと重厚さが同居する良さを味わえました。小さな教会にて、石川さんのチェロでバッハの無伴奏を聴ける贅沢!音楽に心地良く浸りながらも、尊さ崇高さを感じられたスペシャルな体験でした。願わくば、バッハの無伴奏チェロ組曲の6曲×6組すべてを石川さんの演奏で聴きたい!

ピアノ独奏で、L.v.ベートーヴェン「月光」より 第1楽章。タタタ タタタ♪のリズムがずっとベースにあり、時折入る重低音の余韻が印象的。シンプルなメロディが、強弱の波で変化し続け、陰影ある立体的な響きに引き込まれました。まるで月に雲がかかったり晴れたりしているようで素敵!いつか全楽章の演奏をぜひ聴かせてください!

フルート&ピアノで続けて2曲。A.ピアソラ「ブエノス・アイレスの四季」より“冬”。はじめはフルート独奏から。美しく孤高の存在感!ほどなくピアノが重なり、一呼吸置いてから、タンゴのリズムを低音で力強く奏で始めたピアノが超カッコイイ!この貫禄、しびれる!その上を情熱的に歌うフルートがまたカッコ良く、パワフルな高音は思いがあふれているようでした。前のめりで情熱的なところから、少し穏やかに変化したところの希望が見える明るさも素敵!クライマックスでのフルートの強奏にはとても驚かされました。こんなに力強いフルート、私は初めて聴いたかも!情熱的でリズムが超絶カッコイイ音楽、聴き応え抜群でした!

G.カッチーニ(V.F.ヴィヴァロフ)のアヴェ・マリア。ピアノの和音に乗って、はじめは囁くように歌ったフルート。その美しく儚げな響きに引き込まれました。フルートはピアノと一緒に次第に音が大きくなっていき、終盤のクライマックスにはなんとフルート独奏(!)が登場。こちらは類家さんのオリジナルでしょうか?切なく情熱的に歌うフルートが素晴らしかったです。ラストに向かう流れでのフルートの超強奏は、思いの丈を全部ぶつけたような気迫!個人的にはヴィオラやチェロによる演奏(ちなみに石川さんの演奏でも私は聴いたことがあります)でなじんでいたこの曲を、類家さんの美しくも力強いフルートで聴けて新鮮&その良さに聴き惚れました。

ピアノ独奏で、J.シベリウス「樅の木」。クリスマスの時期にぴったりな選曲ですね!冬のモノトーンの景色を思わせる、素朴で芯のあるメロディの良さ!メロディを追いかける伴奏は、時に美しく時に厳しい、様々な色合いを感じました。中盤の盛り上がりでは、タラララン タラララン♪とダイナミックにうねるベースのインパクト!強く心に響きました。私、やっぱり由美子さんのピアノ大好きです!

チェロ&ピアノで続けて2曲。S.ラフマニノフ「ヴォカリーズ」。哀しげなピアノの和音に、切なく歌うチェロの良さ!盛り上がりでの高音には今回も胸打たれ、言葉は無くとも思いがあふれている歌にぐっと来ました。C.サン=サーンス「白鳥」。ゆったり優雅に歌うチェロの美しさと貫禄!ピアノは、キラキラした水面のような音や盛り上がりのしっかり土台となる低音等、チェロにぴたっと寄り添い波長も思いもシンクロ。長く一緒に活動してこられたデュオ、さすがの安定感です!優雅で美しい音楽に、会場には感嘆の溜息が。身近でこの演奏が聴けるのはとてもありがたいことと改めて思います。デュオの十八番である2曲、今回も素敵でした。何度でも聴きたい!

カーテンコールで出演者の皆様が戻ってきてくださり、大平さんがごあいさつ。チャペルコンサートには、大平さんと石川さんは過去数回出演されていて、今回お若い才能の類家さんを皆さんにご紹介できてうれしい、と仰っていました。開催するにあたりご尽力くださった皆様への感謝、「サーカスみたいな」クーラウの三重奏曲をはじめ、常に演奏をサポートしてくださった譜めくり担当のかたへの感謝の言葉も述べられ、会場からも温かな拍手が送られました。

アンコールは、フルート&ピアノ&チェロによるE.モリコーネニューシネマパラダイス・メドレー」。演奏前に石川さんから解説がありました。今回の曲、本来は「フルート&ピアノ&ヴァイオリン」の編成で、今回はヴァイオリンパートをチェロに置き換えての演奏(!)なのだそうです。また以前、ギター&ピアノ&チェロでも演奏した事(2023/10/12のトリオコンサートでしょうか?このページの下の方にレビュー記事のリンクがあります)にも触れられました。「メインテーマ」は、包容力あるピアノの序奏に続いた、歌うチェロの温かさ優しさ!メロディを引き継いだフルートは柔らかで美しく、支えるチェロと重なった陰影がとっても素敵!懐かしい感じに心温まりました。「トトとアルフレード」は、はじめチェロ、続いてフルートがゆっくり音階を上がっていくのにじんわり気持ちが高揚し、切なさに胸焦がされました。「成長」はトリオでの演奏(ちなみに10月に聴いたギター&ピアノ&チェロの演奏会ではピアノ独奏でした)。チェロとフルートがメインを交代しながら、大切な存在を愛しむように優しく歌うのが素敵で、心に染み入りました。またこの愛に満ちた雰囲気に、私は先日(2023/11/21)の札響hitaru定期で聴いたブラームス ピアノ協奏曲第2番 第3楽章(チェロ独奏は石川さん)をふと思い出したりも。そして来ました「愛のテーマ」。涙がこぼれ落ちる様にも似た、キラキラ儚い響きのピアノ序奏に続いて、切なく歌うチェロが最高に素敵!またもや胸に来ました。メロディを引き継いだフルートがまた美しく、ハモるチェロはさらに心に訴えかけてくるように高音域で切なく歌うのが素敵すぎて……こんなにも全力で聴き手を泣かせに来るスタイル。やっぱり敵いません!ラストは「メインテーマ」再び。ピアノのタラララン♪の締めくくりまで、優しさあふれる演奏に心癒やされました。

大平さんから締めくくりのごあいさつ(「次にお呼び頂けた時は、アンコールを2曲やります」と仰ってくださり、会場に大きな拍手が起きました!)と、お弟子さんである本堂竣哉さんのリサイタル(2023/12/21)のお知らせがありました。出演者の皆様とお客さん達の集合写真を撮影した後、会はお開きに。最後に石川さんが12/13の「リッカ弦楽四重奏」の旗揚げ公演をお客さん達に宣伝。私は募金箱に心ばかりの募金をして、帰路につきました。素敵な演奏に浸れて、私は少し早めのクリスマスプレゼントを頂いた気持ちに。幸せな時間をありがとうございました!チャペルコンサート、これからも楽しみにしています。


石川祐支さんと大平由美子さんのデュオにギターの宮下祥子さんが加わったトリオによる演奏会。こちらもアンコールは「ニューシネマパラダイス・メドレー」でした。「第1568回札幌市民劇場 石川祐支・宮下祥子・大平由美子トリオコンサート」(2023/10/12)。「新しいトリオによる多彩な音楽」の演奏会。直江さん編曲・カルメン組曲や南米&スペインの作品での独特のリズムやメロディに魅せられ、「初めて」の感激がいっぱいの幸せに満ちた時間でした!

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こちらも学校が主催する定期イベントです。この日は、札響首席ファゴット奏者の坂口聡さん、新日本フィル首席フルート奏者で元札響副首席フルート奏者の野津雄太さん、ピアノの坂口睦さんによる演奏会でした。「第39回潮陵記念館コンサート 札響、新日本フィルの首席奏者、ピアノによる ~初秋に響く木管の美音、ソロとトリオによる室内楽の夕べ~」(2023/09/02)。小樽にプチ遠征。坂口さんのファゴットと野津さんのフルート、それぞれの魅力あふれる「音」とアンサンブルの良さ!ベートーヴェンのトリオは、対等なピアノと木管2つの三つ巴で超充実の演奏でした。トークも楽しかったです。

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地域の人達のための気取らない演奏会はこちらも。「青木晃一&石田敏明 ビオラ&ピアノ デュオコンサート」(2023/11/26)。野幌までプチ遠征。メインのブラームスに加え、小品をアンコール含め10曲と盛りだくさん!魅力あふれる演奏で、耳慣れたブラームスソナタが一層愛しくなりました。トークも楽しかったです。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

まなみーるDEクラシック 2023(2023/12) レポート

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岩見沢市にて毎年開催されている札響の演奏会。今年は「序曲、名曲、そして大曲」として、指揮に藤岡幸夫さんをお迎えし、オペラ序曲の数々とシベリウス交響曲第2番」が聴ける会でした。シベリウスを得意とする藤岡幸夫さん&札響による演奏でシベ2が聴ける!オペラ序曲も楽しみ!と、私は岩見沢までプチ遠征。なお北海道新聞の報道によると、当日の客入りは500名ほどだったようです。

まなみーるDEクラシック 2023
2023年12月03日(日)15:00~ まなみーる岩見沢市民会館大ホール

【指揮】
藤岡 幸夫

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:会田 莉凡)

【曲目】
スッペ:喜歌劇「軽騎兵」序曲
モーツァルト:歌劇「後宮からの逃走」序曲
ウェーバー:歌劇「魔弾の射手」序曲
ロッシーニ:歌劇「ウィリアム・テル」序曲

シベリウス交響曲第2番 ニ長調 op.43

(アンコール)エルガー:夕べの歌


シベリウスに造詣と愛が深い指揮者の藤岡幸夫さんが、「日本で一番シベリウスを得意とする」札響を指揮したシベ2。胸がすく快演に心打たれた、素晴らしい出会いでした!岩見沢までプチ遠征して本当によかった。オケの士気をあげた上でぐいぐい引っ張ってくださった藤岡さんと、プレッシャーに負けず全力で演奏くださったオケの皆様、ありがとうございます!熱い思いが最高の形で実を結んだのは、やはり実力があってのことと思います。すべて良かった上で、個人的には第4楽章の熱さを特筆したいです。演奏前に「ロシアへの勝利」というお話がありましたが、それだけでなく「自分との戦いに勝利した」と私は感じました。負の感情をすべて飲み込んだ上で愛に昇華した強さ!すごい!いえ、どんなに言葉を尽くしても足りない、あふれる思いや熱がヒシヒシと伝わってくる演奏は、理屈抜きで心揺さぶられました。藤岡幸夫さんと札響によるシベ2、最高です!また、前半のオペラ序曲の数々も楽しかったです。親しみやすいトークを交えながら、全部がクライマックスのオペラ序曲を華やかな演奏で聴かせてくださいました。たまたまかもしれませんが、今回取り上げられた演目は、9月に聴いた名曲シリーズ・オペラ名序曲集(2023/09/16)との被りはナシ。札響のレパートリーの幅広さを改めて実感しました。もちろん聴き手としては、色々な演目と演奏に出会えるのはうれしいです。

まなみーる岩見沢市民会館、とても良いホールでした!新しい建物でキレイなだけでなく、音響も良かったと私は思います。余韻までしっかり響き、金管打楽器が遠慮無く大きな音を出せるのは、演奏する上でもストレスが少ないのでは?このような地方のホールを活かして、定期的にプロオケの公演が行われるのは素敵なことですね!今回は札幌から日帰り圏内でしたが、いつも北海道はでっかいどうを隅々まで回ってくださる札響の皆様には感謝の気持ちでいっぱいです。「地元北海道が誇るオケ」として、これからもどうぞよろしくお願いします!


オケの皆様、続いて指揮の藤岡幸夫さんが舞台へ。弦の人数は最初から最後まで固定で、10-10-8-6-5でしょうか?木管は基本の2管編成、金管打楽器は演目によって編成が異なりました。すぐに演奏開始です。1曲目は、スッペの喜歌劇「軽騎兵」序曲。開口一番のトランペットが超カッコいい!ジャーン!と盛り上げるオケが大迫力!ホルンは勇ましく、クラリネットのほの暗さにハッとさせられ、目まぐるしく展開する演奏に気持ちを持っていかれました。金管打楽器の大活躍に、超高音で彩るヴァイオリンの華やかさ、ずっと重厚に支える低弦の存在感!弦のシリアスさ、行進曲風のリズムが楽しい!シーンが移りゆく流れの中で、孤高のクラリネット独奏が異彩を放ち、世界が一変。弦によるハンガリー舞曲風のところは渋くて、金管打楽器がメインのこの曲の中でとても新鮮でした!再び行進曲風になり、思いっきり賑やかなフィナーレ。最初にガツンとテンション上げてくれる演奏でした!

ここで指揮の藤岡さんがマイクを持ってごあいさつとトーク。以降も曲の合間にはトークがありました。「札幌交響楽団!」とはじめにオケを紹介くださってから、「指揮の藤岡幸夫です」と自己紹介。藤岡さんは、1997年に改修前の岩見沢市民会館にてシベリウス交響曲第1番を指揮されたのだそうです。「すばらしいホールで、またシベリウスを振れるのが楽しみ」と仰っていました。前半は序曲集ですと紹介くださってから、「なるべく話を短くして(進めたい)」と、お話が得意な藤岡さんが茶目っ気たっぷりに仰って、会場に笑いが起きました。

モーツァルトの歌劇「後宮からの逃走」序曲。演奏前の解説によると、トルコの軍隊が大人気だった頃(様々な作曲家が「トルコ行進曲」を生み出した時代)の作品だそうです。トルコ風味を出すために、打楽器陣には「安っぽく!」とオーダーしたのだとか。「札響の楽器は上等だから、安っぽくならないのよ!」とも(笑)。演奏は、軽快な出だしから、ぱっと華やかに盛り上がり。打楽器陣がシャンシャンと景気付けてくれたのが楽しい!トライアングルのインパクト!弦による力強い音階駆け上りに、聴いている私達の気分も上がりました。強弱の波と勢いの良さに引っ張られた序盤から、シリアスに変化した中盤へ。やや深刻な弦に重なった、高貴な感じの美しいオーボエがとっても素敵でした!はじめと同じメロディ再び。しかしここでは「逃走」らしく、前よりも緊迫感が増したと感じました。華やかに締めくくり。短いながらも劇の場面が目に浮かぶような演奏、楽しかったです!耳なじみの良い音楽に、打楽器陣がとても良いアクセントになっていました。「安っぽい」とは感じなかったですが(笑)。

ウェーバーの歌劇「魔弾の射手」序曲。今回取り上げる序曲については「ハープを使わないものなら自由に決めてOK」と言われたそうで、藤岡さんが真っ先に決めたのがこの「魔弾の射手」なのだそうです。ベートーヴェンの第九とほぼ同時期の作品で、ワーグナーの先駆け、と仰っていました。「緑の匂いがする」(!)と興味をそそる事をちらっと仰ってから、「全部楽しんで!」と、演奏へ。ごく小さな音から始まり、少しずつ浮かび上がってくるのに、私は森の奥深さをイメージ。世界を広げてくれたホルンが素敵!ゆったり歌うホルンに心洗われました。チェロが哀しげに歌い、他の弦がトレモロで支えるところにゾクゾク。次第に緊迫感が増し、金管打楽器が力強い盛り上がりを作るところの勇ましさ壮大さ!おそらく一番の山場であるここが超カッコ良かったです!クラリネットがシーンを変えて、弦と木管群がダンスしているような楽しいところへ。一旦盛り上がりの後、オーボエとフルートがシーンを変えて……と、場面転換で木管が登場し、鮮烈な印象を残してくれました。終盤にほんの少し葬送行進曲のようなところが登場したの興味深かったです。ラストは華やかに盛り上げて締めくくり。パワフルで壮大、ドラマチック!大熱演に圧倒されました!

ロッシーニの歌劇「ウィリアム・テル」序曲ロッシーニはイタリアの作曲家で、この作品を書いた後に作曲をやめて美食の道へ進んだというエピソード紹介がありました。この作品は4つの部分からできていて、最後の「スイス軍の行進」が特に有名とか、最初にチェロが活躍する等の解説も。ちなみに「ウィリアム・テル」序曲は、藤岡さんがデビューしたての頃、札響で初めて指揮した演目だそうです。オケがチューニングをしてから、演奏へ。チェロトップ(今回は副首席でした)によるソロ演奏がカッコイイ!アンサンブルで支える他のチェロも素敵!そして驚いたのはここからでした。通常はトップ奏者がすべて弾くソロのメロディを、なんとチェロセクションの各奏者で交代しながら演奏するスタイル。なんて粋な計らい!また各奏者が持つそれぞれの音を味わえて、聴き手としてもとてもうれしかったです。こんな楽しみ方ができるなんて、最高にうれしい!チェロセクション全員推せる!タッタッタ♪の木管群と弦のトレモロから、次第に盛り上がっていくのにゾクゾクし、「嵐」のシーンのトロンボーンのド迫力!「牧歌」では、コールアングレとフルートの温かな会話に癒やされました。フレーズ最後で転がすような音の可憐さ、トライアングルがそっと寄り添うのも素敵!パーンパパパーン♪とトランペットな鳴り、「スイス軍の行進」へ。リズミカルで勇ましい音楽にドキドキワクワクしました。少し穏やかになったところから、弦が音階を駆け上ってぱっと華やかに盛り上げたところが個人的ツボ。金管打楽器も遠慮無しに全力で鳴っているのが気持ちイイ!演奏はド派手に締めくくり。演奏機会の多い「ウィリアム・テル」序曲ですが、今回は安定の演奏に加えサプライズ演出もあって、とても楽しかったです!何度でも聴きたい!


後半は、シベリウス交響曲第2番」。はじめに指揮の藤岡さんがお一人で舞台へ出て、作曲家と演目について解説してくださいました。シベリウスフィンランドの作曲家で、地味なイメージがあるかもしれないけど、牢屋に入ったりお金を使いすぎて破産したりといった「破天荒」な人だったと紹介。交響曲第2番を書いた頃は、娘を亡くし傷ついていて、パトロンに勧められイタリア旅行へ行ったのだそう。心の闇の部分や愛国心、支配者ロシアへの怒り等がうかがえると仰っていました。楽章毎の詳細な解説もあり、中でも個人的には第4楽章がとても印象に残っています。藤岡さんによると、フィンランド国民が第4楽章を聴いて「ロシアの圧政に打ち勝った」と熱狂するも、シベリウス自身は否定したのだそう。しかし、ロシアを意識して(捕まえられないよう?)否定しただけであって、内心はシベリウスも「ロシアに勝利した」と思っていたのではないか?と、藤岡さんはお考えのようでした。「札響は日本で一番シベリウスを得意とするオーケストラですから」(!)と聴き手の期待をゲージMAXまで引き上げてから(そしてオケにはプレッシャーをかけながら・笑)、「これから演奏するのを楽しみにしています」と仰って、トーク終了となりました。

トークの終盤にはオケの皆様が舞台へ登場し、トーク終了後、いよいよ演奏開始です。編成は、各木管2、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、テューバティンパニ、弦。第1楽章 北国の風がそよぐような出だしの美しさ!否応なしに後に続く演奏への期待が高まりました。跳ねるような木管に続いた、ゆったりしたホルンの響きの良さ!第4楽章の先取りのようなところから、続いたヴァイオリンによる澄んだ音色の美しさ!弦による冷涼な空気と、管による温かさの共存が素敵でした。弦によるピッチカートから次第に盛り上がっていく流れにドキドキ。オーボエクラリネットが寂しげで影を感じる響きに。そして、ティンパニと一緒に浮かび上がってきた金管群が鳥肌モノでした!この大迫力、シベリウスの「闇」の底知れぬエネルギー!めちゃくちゃカッコイイ!各シーンが回想され、ひとしきり盛り上がった後、楽章締めくくりはとても穏やかにフェードアウトしていったのが印象的でした。第2楽章 ティンパニと低弦ピッチカートにドキドキし、ファゴットの暗く重い歌にゾクッとしました。木管群の歌のもの悲しさ。続いた弦が次第に加速していき、そこからの盛り上がりでは、またしても金管群がガツンと来ました!ティンパニと一緒にぐーっと盛り上がる金管群はメロディの高音も支える低音もすさまじいエネルギー!それを支える低弦が超男前!余韻がまた良くて、次第に音が小さくなっていくティンパニと低弦がとても印象に残っています。弦の高速演奏(すごい!)に乗っての、低音のインパクト!哀愁あるトランペット独奏がなんて素敵なこと!悲劇的な楽章締めくくりでは、弦が渾身のピッチカートを数回鳴らしたのが印象深かったです。言葉にできない思いが心の奥底にあるよう。第3楽章 冒頭から高速の弦の緊迫感がすごい!他の楽器が加わって激しさが増し、このヒリヒリした空気にゾクゾク。盛り上がった後、ティンパニの弱音が残ったのが印象的でした。来ましたオーボエ独奏!他の管による温かな響きに乗ってのオーボエはなんとも美しく、それにこたえるチェロ独奏は愛あふれる感じで超素敵!銃声のような金管(キレッキレ!ドキっとしました)を皮切りに緊迫感再び。第4楽章の先取りのようなところもあり、オーボエ&チェロの愛ある対話に再び出会えて、全員合奏でエネルギーをためつつじっくりと上昇していく流れがアツイ!盛り上がりの頂点から、そのまま続けて第4楽章へ。 弦が奏でるメロディは、強くかつ愛あふれる感じで、心に染み入りました。怒りややりきれなさを抱えながら、人は生きている事をこんなにも愛せるのかと思うと、涙がでます。華やかなトランペットは今この時を祝福してくれているよう!ベースで低音がぐおんぐおん鳴っていたのもカッコイイ!低音金管の勇ましさ!壮大な音楽に胸がすく思いでした。中低弦のうねうねした低音に乗って、木管群がほの暗く歌うのは胸がざわつく感じで、そこから再び盛り上がって力強い金管群につながる流れが良かったです。木管群メインのやや穏やかなところから、楽章はじめと同じような盛り上がり再び。盛り上がりの波が何度も来て、その度に胸が熱くなりました。クライマックスではさらに低音のうねりも高音の力強いメロディもパワーアップして、嵐の中にいるよう!弦のトレモロに彩られた金管のド迫力!低弦がピッチカートでメロディを奏でた後、高音弦の華やかなトレモロに乗って、低弦がぐおんぐおんうねりながら重低音でメロディを奏でたのが最高!ティンパニの大音量連打に、金管群の堂々たるメロディで、華々しく締めくくり。演奏の音が消えてから、しばらくの静寂の後、会場に割れんばかりの拍手が起きました。ああすごいものを聴きました……。私は今、生きている、そして生きていたいと思わせてくれた、心揺さぶる大熱演に大感激です!ありがとうございます!

カーテンコールで指揮の藤岡さんは何度も舞台へ戻ってきてくださいました。口頭でアンコールの曲名が伝えられ、演奏へ。アンコールは、エルガー「夕べの歌」。2年前のクリスマスコンサート(2021/12/21)でもアンコールで聴かせてくださったあの曲!待ってました!調べたところ、藤岡さんと関西フィルによるシベ2のCDにも収録されている、藤岡さん十八番の演目のようです。牧歌的なホルンのリズムと木管群の柔らかな響きをベースに、弦による落ち着いた低めの音程での艶っぽい歌がとっても素敵!少し切ないメロディになっても、管楽器の温かさが良い感じで深刻になりすぎない、とても優しい音楽に癒やされました。終盤では、ふとまどろんだように一瞬沈黙があり、澄んだ音色でしっとり優しく締めくくり。素敵な序曲の数々とシベ2の大熱演の後、心穏やかになれる素敵なアンコールまで、ありがとうございます!藤岡さんと札響の共演をこれからも楽しみにしています!


札幌交響楽団 hitaruシリーズ定期演奏会 第15回」(2023/11/21)。オピッツさんの「ブラームスのピアノ」と、バーメルトさん率いるオケの演奏によるブラームスピアノ協奏曲第2番は、あこがれの曲と最高の出会い!間宮芳生さんの作品、モーツァルトではオーケストラの奥深さと面白さを改めて実感しました。

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森の響フレンド 札響名曲コンサート~発掘!発見!オペラ名序曲集」(2023/09/16)。スケール無限大、クライマックスしかないオペラ序曲の数々をアンコール含め全10曲。重厚・壮大なオベロン序曲や極限弱音が印象深かったルスランとリュドミラ序曲など、まっさらな気持ちで思いっきり楽しめました!CD化を切望します!

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

青木晃一&石田敏明 ビオラ&ピアノ デュオコンサート(2023/11) レポート

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江別振興公社が主催する「身近で楽しむクラシック」。今回は青木晃一さんと石田敏明さんのデュオによる演奏会が開催されるとのことで、私は野幌までプチ遠征して聴きにうかがいました。なおチケットは前売り完売したとのことです。


身近で楽しむクラシック 青木晃一&石田敏明 ビオラ&ピアノ デュオコンサート
2023年11月26日(日)14:00~ 野幌公民館 ホール

【演奏】
青木 晃一(ヴィオラ) ※札幌交響楽団副首席ヴィオラ奏者
石田 敏明(ピアノ)

【曲目】
プッチーニ:オペラ「つばめ」より“ドレッダの美しい夢”
シューベルト:楽に寄す D.547
メンデルスゾーン:歌の翼に op.34-2
チャイコフスキー:ただ憧れを知る者のみが op.6-6
レーガー:無伴奏ヴィオラ組曲 第1番 ト短調 op.131d-1 より 第1曲 第2曲 ※ヴィオラ独奏
リスト:愛の夢 第3番 ※ピアノ独奏

ブラームス:愛の歌 op.71-5
ブラームスヴィオラソナタ第2番 op.120-2
カッチーニ(伝):アヴェ・マリア

(アンコール)
シークレット・ガーデン:ユー・レイズ・ミー・アップ
見岳章川の流れのように


クラシック音楽の名曲の数々と、クラシック音楽の枠を超えたアンコールまで、盛りだくさん!青木さんと石田さんデュオの演奏をたっぷり堪能できて、トークも楽しく、幸せな時間を過ごす事ができました!昔ながらの公民館に地域の人々が集まり、参加費もリーズナブルな気取らない会。もちろん演奏中は皆様しっかりと聴き入っておられましたが、トークの時は時折笑いが起きて、とても温かい雰囲気でした。コンサートホールのかしこまった空気とは違う、こんなリラックスした会も良いものですね!言うまでもなく演奏のクオリティは高く、奥ゆかしい音色のヴィオラが様々な表情を見せるのも、そのヴィオラと思いをシンクロし安定感あるピアノも、そしてお2人の呼吸が驚くほどぴったりなのも、改めてすごい事だと今回実感しました。素人目にはそれらをさらっと実現しているように見えるのは、長く一緒に活動してこられたお2人だからこそですよね!

今回のメインのブラームスop.120-2について。今回の演奏を拝聴し、私が率直に感じたのは「なんて愛らしい!」でした。op.120-1の方はもう少し深刻(と個人的には思います)でも、op.120-2の方では色々と吹っ切れたのかも?最晩年のブラームスにこんな穏やかな気持ちの頃があったと思うとうれしくなり、私は今まで以上にこの曲が愛しくなりました。なお今回はクラリネットの音域での演奏(!)とのことですが、あまりにも自然で(もちろん演奏は思うほど簡単な事ではないと存じます)、私には通常のヴィオラ版との違いは明確にはわからなかったです(ごめんなさい!)。しかし、お2人がじっくりと作曲家最後のソナタ作品と向き合い、愛情を込めて演奏してくださったからこそ、作品の魅力が聴き手に伝わったのだと感じました。音域を変えたのはあくまで手段の1つであり、今回の魅力あふれる演奏に至るまでには様々な試行錯誤と努力の積み重ねがあったことと存じます。本番での一度きりの演奏を楽しく聴かせて頂くだけのお気楽な聴き手ではありますが、今回の演奏に出会えて私はとてもうれしかったです。ありがとうございます!


青木さんと石田さんが舞台へ。すぐに演奏開始です。1曲目は、プッチーニのオペラ「つばめ」より“ドレッダの美しい夢”。ピアノの序奏は、ダーン!とインパクトある低音から。少しずつ音階を上っていくのが輝かしい!メロディを歌うヴィオラは、はじめの方では(演出として)何か戸惑っているよう。ピアノのタタタン♪にシンクロするところが印象的でした。原曲でソプラノが「ああー」と感極まるところの、ヴィオラの丸みある音色の優しさ可憐さが素敵!後の方では戸惑いが確信に変わったように感じました。控えめでも思いがあふれる華やかな音楽に、はじめから気分があがりました!

ここで出演者のお2人によるごあいさつとトーク。以降も曲の合間には演目の解説をメインにしたトークが入りました。オーケストラで活躍するヴィオラ。しかしヴィオラ&ピアノのコンサートはめずらしく、今回はその魅力が伝えられたら、と仰っていました。楽器の大きさは厳密には決まっていないそうですが、ヴァイオリンよりも大きく、奥ゆかしい音色がします、と簡単に特徴を紹介。今回はブラームスソナタ第2番をメインに、他は歌曲を中心としたプログラム、とのこと。先に演奏した1曲目と次に演奏する2曲目の解説もありました。

シューベルト「楽に寄す」 D.547 。穏やかなピアノの和音に乗ってゆったり歌うヴィオラは、歌でいうところの1番を低音域、2番を高音域で歌うスタイルでした。低音域での艶っぽい音色も、高音域での美しさも素敵!音がふっと消え入るような儚さもあり、心地よく少し切ない歌がじんわり心に染み入りました。

メンデルスゾーン「歌の翼に」 op.34-2 。音楽の時間に歌ったのでは?と、青木さん。今回はライオネル・ターティスによる編曲版の演奏とのことです。ヴィオラは、歌でいうところの1番を低音域、2番を高音域で歌うスタイルでした。穏やかなピアノ伴奏に乗って、低音域で歌うヴィオラの一人語りのような落ち着き、高音域で滑らかに歌うところの可憐さ。高音域の重音のふくよかな響きは何とも優しく、癒やされました。終盤、ピアノが沈黙してのヴィオラ独奏は穏やかでもどこか哀しくて、ハッとしました。ヴィオラの少し影のある音色がぴったりな歌!もちろん控えめな主張を細やかに表現できるお力があってこそと思います。

チャイコフスキー「ただ憧れを知る者のみが」 op.6-6ゲーテによる詩(ドイツ語)をロシア語に訳したものに曲を付けたものだそうです(私はてっきりドイツ語のまま曲を付けたと思い込んでいました!)。プリムローズによる編曲版の演奏。ピアノの序奏から既に歌っていて、温かで優しい響きが素敵でした。ピアノとシンクロしながらしっとり歌うヴィオラは、独り言のようだったり時に少し駆け足になったりと、感情が揺れ動いているように感じられました。感極まったところでの高音の重音は、思いがあふれているよう!高音でフェードアウトするラストまでとても美しく、短いながらもドラマチックな歌でした。

ヴィオラ独奏で、レーガー「無伴奏ヴィオラ組曲 第1番 ト短調 op.131d-1」 より。日本ではあまり知られていない作曲家・レーガーは、ブラームスの後継者と言われた人物だそうです。ヴィオラのための無伴奏組曲を3つ作ったそうで、これらはヴィオラを弾く人は避けて通れない重要なものとのこと。高度な演奏技術が必要で、「(弦を押さえる)4本の指はフル稼働」(!)。その上で「きれいなハーモニーをごく自然に聴かせる」のが肝要なのだそうです。第1曲 重音から入り、私は思わずバッハの無伴奏ヴァイオリンを連想。重音が何度も登場し、高音も低音もインパクトありました。はじめのうちは厳しく、ふと温かな感じになったり、少し駆け足になったり、強弱の波を作ったりと変化が多い演奏でした。第2曲 A-B-A'の形式でしょうか?はじめタタタッタ♪と舞曲のリズムで切れ味鋭く進むヴィオラがカッコイイ!中間部は滑らかに歌い、何度も登場した重音に深みが感じられ存在感ありました。舞曲のリズム再び。はじめよりも速くなり音も増えたように感じました。素人目には難しさをまったく感じさせない軽やかな演奏で、バロックの薫りがする音楽を楽しめました。

ピアノ独奏で、リスト「愛の夢 第3番」。はじめにリストを「ピアノの魔術師」と紹介。今回取り上げる「愛の夢 第3番」は、元々は歌曲「おお、愛しうる限り愛せ」(石田さんは「どれだけ愛せばいいのか!」と仰って、会場の笑いを取っていました)で、思いがあふれるのはロマン派のスタイルと仰っていました。また、石田さんと青木さんが留学されていたドイツの話題になり、この時期はクリスマスマーケットを楽しみにしていた事や、そこでの料理の味が濃かった事をお話しくださいました。「濃い気持ちを持って演奏します」(!)と宣言されてから、演奏へ。はじめの落ち着いたところは艶っぽい音色で、愛を静かに語っているよう。やがて思いが隠しきれなくなり、メロディも重なる音も鮮やかになっていきました。クライマックスでは思いっきり華やかにタタンタタン!と高音を響かせ、キラキラした音は輝いている感じ!思いが「濃い」、美しくも力強く愛を語るような演奏でした!

後半。はじめはブラームスの歌曲「愛の歌 op.71-5」。「ドイツ三大B(バッハ、ベートーヴェンブラームス)」の一人であるブラームスは、石田さん曰く「ザ・ドイツ」。同じ愛に関する歌でも、リストの場合は「聞いて聞いて」と外向きで、ブラームスの場合は自分との対話。その響きの違いを楽しんで、と仰っていました。ゆりかごのような優しいピアノに乗って、低音域で一人語りのように歌うヴィオラ。音がまるくなるところの穏やかさ、前のめりなところの切なさ等、細やかな表情の変化が素敵でした!中間部は高音域で歌い、再び低音域に。ブラームスの歌曲にラブソングは多々あれど、こちらは大人の渋さや奥ゆかしさが感じられ、ヴィオラにぴったりの曲ですね!

いよいよ、ブラームスヴィオラソナタ第2番 op.120-2」。演奏前に、ブラームスが作った最後の大曲というお話や、作曲のきっかけはクラリネット奏者・ミュールフェルトとの出会いで、原曲は「クラリネットソナタ」といった紹介がありました。青木さんによると、ブラームスヴィオラ向けの編曲をした際に「気を遣いすぎて」ヴィオラが弾きやすい音域にしたため、部分的に演奏効果が出にくい(ピアノにかき消されてしまう等)ところが生じているそうです。もちろん「ブラームスの編曲に忠実に」という主張もあれば、「原曲に添った音域で」という考え方もあるとのこと。そしてこの日の演奏は、「原曲に添った音域で演奏し、重音奏法等の弦楽器特有の表現は取り入れる」(!)ものでした。第1楽章 そっと入った出だしから、ヴィオラがなんて愛らしい!早速心掴まれました。ピアノと呼応しながら歌う柔らかくも力強いヴィオラが素敵で、ピアノの情熱的な盛り上がりに続いたヴィオラの強奏が輝かしい!高音域で華やかに歌ったり、ぱっと切り替わっての存在感ある低音だったり、一方で一人語りのような奥ゆかしさや、音階を一歩すつ上るところ等だったり。そんな細部にわたり丁寧な演奏から、作品自体が持つ愛と演奏するお2人の音楽への愛情が伝わってきました。ヴァイオリンを思わせる高音域にて、思いを吐露するように歌うヴィオラがすごい!しかし押しつけがましくはなく、ピュアな感じがとても素敵でした。静かな締めくくりも愛らしい!第2楽章 少し深刻なヴィオラの最初の音にまた心掴まれ、ほの暗く情熱的に歌うヴィオラと激情のピアノが絡み合うダンスが超カッコイイ!交互に歌うところはもちろんのこと、両者が重なってからがまた良かったです。運命の荒波のようなピアノの上を、前のめりに進むヴィオラの存在感!情熱的な流れを静かに締めくくってから、来ましたピアノから始まるコラール風のところ。ピアノの音の厚みはまさしくブラームス!厳かなピアノに乗って、ヴィオラははじめそっと囁くように、次第に浮かび上がってきて、最高潮に達したところでの重音の連なりがとても崇高で美しい!弦楽器だからこその響き、素晴らしいです!楽章はじめの情熱的なところ再び。燃え上がった炎が少しずつ小さくなっていき、ふっと消えたようなラストでの、ピアノの低音の一打が印象的でした。第3楽章 はじめのゆったりと歌う主題の愛らしさ!優しいピアノも穏やかに歌うヴィオラもとっても素敵!続くいくつもの変奏は、長く一緒に活動しているお2人ならではの呼吸とリズム感で、自然な流れがとても良かったです。ヴィオラとピアノが交互になるところでの間合いや主役の入れ替わりが鮮やか!穏やかなところでも当たり前に足並みは揃っていて、華やかなピアノからの流れがドラマチック!ヴィオラの重音のインパクト!そしてその後、音の連なりの確かな足取りから、音階駆け上るピアノにつながる流れがアツイ!明るく輝かしい締めくくりは気分爽快でした!クラリネットでもヴィオラでも繰り返し聴いてきたop.120-2。私はこの日の演奏に出会ってこの曲が一層愛しくなりました。ありがとうございます!

カッチーニ(伝)「アヴェ・マリア。こちらはチラシには書かれていたものの、配布されたプログラムには「手違いで」載っていなかった演目、と仰ってから、プログラム最後に演奏してくださいました。丁寧にありがとうございます。ピアノの切ない前奏に続いたヴィオラは、初めの方は(演出として)内省的な印象で、その世界観に引き込まれました。後の方になると次第に力強くなり、感極まったところが美しい!ピアノの和音もヴィオラとシンクロして盛り上がりを作っていたのが素敵でした。さすが、青木さんと石田さんデュオにとって、ブラームスと並ぶ重要なレパートリーの1つですね!

カーテンコールでお2人は舞台に戻って来てくださいました。アンコール1曲目は、シークレット・ガーデン「ユー・レイズ・ミー・アップ」。曲名紹介の後、青木さんが「どういう意味でしたっけ?」と仰って、会場が和みました。直訳で「あなたが私を高みに上らせる」と仰ってから、演奏へ。はじめはヴィオラ独奏から。これがすごく素敵でした!ケルト音楽(イギリスのお隣のアイルランドの文化?私は詳しくないのですが……)を思わせる、色気と温かさがあるどこか懐かしい感じ。ヴィオラのかすれる音が印象的で、ほどなくピアノの和音が重なりました。歌のメロディに移ると、「ああこの曲!」とピンと来たお客さんが多数いらした様子。ヴィオラが高音域で“ You raise me up ”を繰り返す度に胸に来て、希望が見える歌に心癒やされました。「クラシック音楽」ではない洋楽の演奏も素敵です!

再びお2人が舞台へ。石田さんから「私事ですが」と、江別市へ最近お引っ越しされた事をお話しくださり、会場が温かな雰囲気になりました。「クラシックの垣根を越えて、歌い継がれていく曲ですね」とご紹介くださった、アンコール2曲目は、見岳章川の流れのように美空ひばりさんが歌った昭和の名曲!会場にはご年配のお客さんも多く、とても喜ばれたことと思います。ピアノによる序奏は、高音がキラキラして美しく優しい!ヴィオラは、はじめ低音域でしっとりと歌い、「ああー」からの盛り上がりは優しくも力強く、とても心に響きました。中間部では、ピアノが歌いヴィオラがハモるスタイルになり、語るように歌うピアノと優しく寄り添うヴィオラが素敵!高音でフェードアウトするラストまで、心温まるとっても素敵な演奏でした!今回は大曲のブラームスソナタに加え、小品をアンコール含め10曲と盛りだくさん!最初から最後まで私達を思いっきり楽しませてくださり、ありがとうございます!これからのお2人の演奏もとても楽しみにしています!


Kitaraアーティスト・サポートプログラムⅡ〉青木晃一×石田敏明 デュオリサイタル~ブラームスから拡がるヴィオラ×ピアノの響~」(2023/03/15)。雄弁さと歌心と超絶技巧による「主役としてのヴィオラ」の輝き!ブラームス最後のソナタでは、感情の機微を丁寧に表現する演奏によって作曲家の最晩年の境地を見ることができました。

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こちらも青木さんと石田さんがご出演された演奏会です。「ブラームス室内楽シリーズ イ調で結ぶ作品集」(2023/06/26)。会田莉凡さんのヴァイオリンを堪能できたソナタ、「音楽する」三重奏曲、ピアノ四重奏曲の「化学反応」の素晴らしさ!ブラームスの隠れた名曲たちの充実した演奏に浸れた、とても幸せな時間でした!

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ありがたいことに、ここ最近ブラームスを聴ける演奏会が続いています。数多の演奏会のうち、札響メンバーが出演した室内楽の公演から2つご紹介します。

R弦楽四重奏団 Vol.1 」(2023/11/18)。ハイドンショスタコーヴィチブラームス演奏家との距離が近いギャラリーにて、信頼のメンバーによる充実の演奏を肌で感じられる贅沢!お堅いイメージだった弦楽四重奏を身近に感じ、自然体で楽しめた幸せな時間でした。

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ウィステリアホール プレミアムクラシック 2023シーズン 23rd 」(2023/10/29)。信頼のメンバーによる室内楽ブラームスクラリネット三重奏曲とホルン三重奏曲は、作曲家の人生を思わせるものでした。V.ウィリアムズのめずらしい編成の五重奏曲は超充実の演奏!期待を大きく上回る幸せな演奏会でした!

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

クラシック・キャラバン2023 札幌公演 華麗なるガラ・コンサート~熱狂三協奏曲~(2023/11) レポート

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文化庁の助成を受けて、日本クラシック音楽事業協会が主催し全国各地で演奏会を開催するクラシック・キャラバン。3年目となる今年の札幌公演は、注目のソリストたちによる協奏曲が一度に3つも聴ける豪華な企画です!大好きな演目をこの布陣で聴けるとあって、私は企画発表当初から楽しみにしていました。


クラシック・キャラバン2023 札幌公演 華麗なるガラ・コンサート~熱狂三協奏曲~
2023年11月23日(木・祝)15:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
原田 慶太楼

管弦楽
スーパー・クラシック・オーケストラ(コンサートマスター:藤原 浜雄)

【曲目】
伊福部昭:ヴァイオリンと管弦楽のための協奏風狂詩曲 (ヴァイオリン:豊嶋 泰嗣)
ラフマニノフピアノ協奏曲第2番 (ピアノ:清水 和音)
ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 (ヴァイオリン:川久保 賜紀/チェロ:遠藤 真理)


大熱演による三者三様の個性を思いっきり楽しめた、幸せな時間でした!指揮の原田慶太楼さん、ソリストの皆様、そしてスーパー・クラシック・オーケストラの皆様、ようこそ札幌へ!スーパー・クラシック・オーケストラは、皆様ブロの音楽家とはいえ、常設オケとは異なり普段は別々に活動されているかた達の集まり。しかし原田さんの指揮のもと、目指す方向を同じくしての迷いが無い熱演が清々しかったです!札幌のプロオケは1つだけなので(札響は大好きです念のため)、異なるカラーのオケは新鮮でした。また今回は選曲も気が利いていました。北海道出身の伊福部に加え、今年(2023年)が生誕150年のラフマニノフと生誕190年のブラームスをチョイス。かつ独奏のスタイルはすべて異なり、それぞれ豪華なソリストをお招きする、とても贅沢な企画!バラエティに富んだ作品たちを豪華な独奏で聴けて、聴き手としては大満足でした。ありがとうございます!

はじめの伊福部昭は、耳慣れた西洋のヴァイオリン協奏曲たちのいずれとも似ていない、独特の個性を楽しめました。あくまで個人的な感じ方ですが、今回の演奏を聴いた限りは、オケが土着の音楽に近いイメージの一方、独奏ヴァイオリンは意外にも都会的な印象。なぜそのように感じたのか、自分でも理由はわからないのですが(ごめんなさい!)、2つの個性が同じリズムやメロディを共有して一つの音楽になるのが面白かったです。また、聴く機会が多いラフマニノフピアノ協奏曲第2番は、ピアノのすごさに圧倒されっぱなしでした!なんというか、「貫禄」なんて一言では言い表せない圧倒的な存在感!音の厚み、説得力、もちろん美しさもあって、余裕で大編成オケと渡り合っていたと感じました。これこそまさに「協奏」!そして個人的に様々な演奏で親しんできたブラームスの二重協奏曲は、ソリストお2人の個性と息ぴったりなやりとりに、オケの勢いある大熱演が素晴らしい!やっぱり私はこの曲が好き!と改めて実感しました。ただオケが大編成だったためか、独奏の音がオケの強奏にかき消された部分があったのは少しもったいないと感じました。弦の場合は、すごく大きな音を出そうとすると妙な音になったりするので、独奏の音の大きさはこれが最適だったのでは?そうするとオケが独奏の弦の繊細さをつぶさないためには、1曲目と同じくオケの弦の人数を少なくするか、大編成のままでいくなら独奏と重なる部分では音量をしっかりコントロールするか。いずれにせよオケ側で調整が必要かと思います。もちろん2つの独奏の美音と存在感は素晴らしく、ブラームスの分厚いオケを楽しめたのはうれしかったです。偉そうにごめんなさい。


開演に先立ち、司会(HBCアナウンサー:森 結有花 さん)が舞台へ出て、ごあいさつとお話がありました。クラシック・キャラバンの簡単な紹介の後、1曲目に取り上げる作曲家・伊福部昭さんについての解説へ。北海道出身の伊福部昭さんは、「ゴジラ」テーマ曲で有名。しかしクラシック音楽でも様々な作品を残しているとのこと。またヴァイオリンの演奏が得意だったそうです。司会の案内があり、スーパー・クラシック・オーケストラの皆様、続いて指揮の原田慶太楼さんとソリストの豊嶋泰嗣さんが舞台へ。拍手で迎えられました。オケの皆様の装いは、男性は燕尾服で女性はカラードレス。弦は舞台向かって左から1stヴァイオリン→チェロ(後方にコントラバス)→ヴィオラ→2ndヴァイオリンの対向配置でした。

前半1曲目は、伊福部昭「ヴァイオリンと管弦楽のための協奏風狂詩曲」ソリストは豊嶋泰嗣さん。弦は1stヴァイオリンが8名(私の席からは他のパートの正確な人数は把握出来ませんでしたが、チェロは6、コントラバスは4)と人数少なめで、管は基本の2管編成に加え低音の木管金管も。他は多彩な打楽器にティンパニ、ハープという編成でした。第1楽章 ハープと弦ピッチカートの序奏が鮮烈な印象で、続いた独奏ヴァイオリンの低く深みある音がすごい!早速引き込まれました。日本の子守歌のようなメロディが、柔らかくもどこか哀しい感じで、重音に心がざわつき、次第に祭り囃子のようなリズムに変化したのにドキドキ。少しずつオケが重なり、中でもコールアングレの低音での哀しい歌がとても印象的でした。テンポが速くなってからは、独奏ヴァイオリンも軽快な感じに。オケも独奏もはじめの方にアクセントが来る、「ゴジラ」と似たリズムでした。独奏ヴァイオリンと重なってメロディを歌ったトロンボーンファゴットの存在感!来ましたオケによる「ゴジラ」のメロディ!そこに続いた独奏ヴァイオリンの掠れた音での歌に心かき乱されました。ホルンとバスクラリネットの暗さ、弦楽合奏の重々しさに、日本の子守歌の「本当は怖い」部分を垣間見た気持ちに。独奏ヴァイオリンの独特なテンポでの哀愁ある響きが刺さり、独奏チェロやハープとの重なりが一層印象深かったです。少しずつ盛り上がって、ダダダダン!の強奏の締めくくりのインパクト!第2楽章 序奏の力強いティンパニ&弦ピッチカートがアツイ!独奏もオケも前の楽章よりさらにテンポが速くなって、ますます血が騒ぐ感じに。また、はじめの方にアクセントが来る「ゴジラ」のリズムはずっとベースにあると感じました。独奏ヴァイオリンが高速で小刻みに音を繰り出すのに目と耳が釘付けになり、弦を擦るのとピッチカートをリズミカルに交互に演奏するのがすごい!目の前で展開する凄技に圧倒されました。低音が効いたオケが男前!オケが沈黙しての独奏ヴァイオリンは、掠れる音にインパクトがあり心かき乱されました。終盤はゴジラのリズムでオケ全体がお祭りのようなアツイ盛り上がりに。独奏ヴァイオリンのみの演奏が一瞬入って、オケ全体で力強くバシッと締めくくり。カッコイイ!演奏後、ソリストの豊嶋さんと指揮の原田さんがハグ。都会的で哀愁あるヴァイオリンの音色と、日本人の血が騒ぐリズムに、最初からガツンとやられました!

配置転換の時間に、司会が指揮者の原田さんにインタビュー。原田さんのインスタグラムには、札幌のグルメを満喫している様子がうかがえる写真がたくさんUPされているというお話から入りました。原田さんは「締めパフェ」を4種類の味で楽しみたいと考え、夜中に川久保さんと遠藤さんを呼び出して(!)、既に一緒にいた豊嶋さんと4人で実行に移したそうですよ。またアメリカでの活動が長い原田さんによると、アメリカでも「ゴズィーラ」(ゴジラ!)はよく知られているそう。ラヴェルのピアノ協奏曲にもゴジラのメロディが登場する事や、原田さんが日本人作曲家の作品を世界に広めたいと考えている事、等のお話がありました。

前半2曲目は、ラフマニノフピアノ協奏曲第2番ソリスト清水和音さん。弦の人数が倍近くに増え(14型でしょうか?)、オケは大所帯となりました。管は基本の2管編成で、打楽器はティンパニバスドラム、シンバル。第1楽章 ピアノによる鐘の音は、はじめごく小さな音から、次第に音が大きくなって浮かび上がってきたのに鳥肌が立ちました。これだけで世界を一変させてしまうピアノ、すごい……と、最初からピアノに気持ちを持って行かれた私。力強いピアノにガツンとやられてから、オケの登場。低音の効いた壮大なオケがカッコイイ!コントラバスのピッチカートがピアノとシンクロしていたのがとても刺さりました。遠くにきこえるホルン、ピアノ小品を思わせる美しいピアノから、オケがぐーっと盛り上がって、頂点に達した「ジャン!」と、続いたヴィオラパートがピアノと呼応しながら優しくメロディを奏でるのが素敵でした。木管群とピアノの重なりは温かく優しい響き。金管群の咆哮とキラキラしたピアノのコントラスト!ピアノとオケが少しずつ盛り上がっていく流れにゾクゾクし、オケに最初のメロディが戻って来てからの力強いピアノに打ちのめされました!心揺さぶられる悲劇的で美しい響き!オケのメロディを引き継ぎ、ゆったりと奏でたピアノがなんとも美しく、聴き入りました。チェロパートのメロディ(こちらも素敵でした!)と重なるピアノは、繊細なのに存在感抜群!オケがジャンジャン♪と力強く楽章締めくくったのがすごくカッコ良かったです。第2楽章 冒頭、ごく小さな音から次第に浮かび上がってくるオケがとっても素敵でした!私はロシアの広大な大地を連想。ほどなく登場したピアノは優しい響きで、歌曲を思わせる美しさ!ゆったり歌う木管群や弦に寄り添うピアノは、前の楽章よりずっと音が少なく、しかし1音1音にとても存在感がありました。音楽は、穏やかで幸せな感じだったのが、哀しみを感じる響きになり、盛り上がりへ。グラデーションで変化していたと個人的には感じました。ピアノの盛り上がりの頂点で、バン!とパワフル金管群の会心の一撃!ガツンとやられました。そしてカデンツァのピアノの貫禄がすごい!ダーン!と低音から高音へ駆け上るのは圧倒的なインパクトなのに、素人目にはまだまだ余裕があるように感じられました。穏やかなオケのターンでの、優しく重なるピアノも素敵!オケは遠くに聞こえるホルンと幸せな感じの木管群がとても良かったです。そのまま続けて第3楽章へ。 はじめ、ごく小さな音でリズムを刻むオケにドキドキ。オケが強奏になってから、音階駆け上りで華やかに登場したピアノがなんてパワフル!ダダダーン♪と弦が低音を力強く奏でた後のピアノは、舞曲のようにリズミカルでカッコイイ!弦がピッチカートで合いの手を入れたのが小気味よかったです。ジャズを思わせるところで、ゆったりと歌うピアノがなんて輝かしい!金管打楽器がキレッキレのチャイ4のような盛り上がりがアツイ!オケのメロディを引き継いだピアノが、情感たっぷりに奏でたのが心に染み入りました。ピアノと呼応しながら歌うチェロとヴィオラの美しさ!終盤ピアノとオケが一緒になって、自信に満ちた響きでの盛り上がりがとても清々しかったです。ジャンジャカジャン♪と力強い締めくくりが最高に素敵!演奏後、ソリストの清水さんと指揮の原田さんがハグ。ピアノの圧倒的な存在感と厚みあるオケに魅せられ、壮大な音楽を堪能できました!


後半は、ブラームス「ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲」ソリスト川久保賜紀さんと遠藤真理さん。弦の人数は前半ラフマニノフと同じ、管は基本の2管編成、打楽器はティンパニのみの編成でした。第1楽章 オケ序奏が大迫力!続く独奏チェロの重低音もガツンと来て、思わず身震いがしました。独奏チェロは基本骨太でも、語尾がまるく(表現が上手くなくてごめんなさい!)、力強さの中でふっと良い感じに柔らさが入るのが印象的でした。柔らかな木管に続いた独奏ヴァイオリンは、柔らかく始まりほどなくシャープな切れ味に。2つの独奏の絡みの緊迫感にゾクゾクし、音階駆け上りは駆け足ではなくじっくりと着実に足元を固めていたように個人的には感じました。オケのターンでが、悲劇的な高音もぐっと重厚な低音も超パワフルでカッコイイ!肩で息をするような間合いが印象的で、フルートの転がす音がインパクトありました。2つの独奏の対話、高音と低音の重なりがぐっと来る良さ!オケの弦ピッチカートがリズミカルに重なるのも素敵でした。穏やかなところでの、さりげなく抑揚を付けて歌う独奏チェロの柔らかな響きが心地良い。再び盛り上がっていく流れでの独奏ヴァイオリンの悲鳴のような超高音がキレッキレ!終盤での二重奏で、独奏チェロの音がまるくなるところの美しさ!ラスト直前に一度沈黙してからの二重奏は、お2人が持つ艶っぽい音が重なる事でさらに深みある響きに。すごく素敵でした!オケ強奏の「ジャーン!」という重低音にしびれました。第2楽章 冒頭、穏やかなホルンと木管の美しさ!続いた2つの独奏のユニゾンが素敵すぎました!上手く言えないのですが、大はしゃぎはしないけど幸せを噛みしめているような、大人の落ち着きを感じさせる幸せな響き!優しく寄り添うオケも素敵で、中でも木管群のゆったりした歌がとても心地よかったです。2つの独奏が会話するように交互に演奏したところは、まるで恋人同士の語らいのよう!独奏が2ついることの良さとブラームスのさりげない愛に、うっとり聴き入りました。楽章終盤での、一瞬ささやくような弱音で重なった独奏2つが愛しい!2つの独奏が高音で重なり合いながらフェードアウトし、木管群がこだましたラストは幸せいっぱいな感じ!そのまま続けて第3楽章へ。 中低弦のピッチカートのリズムに乗って、艶めかしい独奏チェロと続いたミステリアスな独奏ヴァイオリンにドキドキ。全力で弦をかき鳴らし、大迫力オケが登場したのがアツイ!独奏2つの緊迫感あるやり取りに続いた、大らかで温かな独奏チェロが最高に良かったです!オケの中低弦のベースに乗って堂々と歌う独奏チェロは、まるで王者の風格!楽章冒頭の再現の後は、オケの勢いや力強さがさらに増し、その熱量に圧倒されました。一方で、独奏2つの音がかき消されたと感じたところも(私だけかもですが)。クライマックスでのソリストの二重奏は、2人で力強く希望へ向かって前進しているようで胸が熱くなりました。そしてラスト直前では、2人が交互に主役になりながら支え合う、見事な競演!2人一緒に明るく輝かしく上り詰め、ティンパニとオケの堂々たる強奏で締めくくり。気分爽快になるラストでした!演奏後、ソリストの川久保さんと遠藤さんがハグ。素晴らしいお2人のソリストと力強いオケによる、この日ならではのブラームスの二重協奏曲を楽しめました!

カーテンコールでは、指揮の原田さんとオケの皆様の清々しい表情が印象的でした。全力投球の熱量高い演奏をありがとうございます!アンコールはナシで、司会による今後のクラシック・キャラバン2023の公演予定の紹介とあいさつがあり、会はお開きとなりました。主役を3つというボリューム満点のプログラムで、最初から最後まで大熱演をありがとうございました!今後の各地での公演のご盛会をお祈りいたします。


この日の2日前に聴いた公演です。「札幌交響楽団 hitaruシリーズ定期演奏会 第15回」(2023/11/21)。オピッツさんの「ブラームスのピアノ」と、バーメルトさん率いるオケの演奏によるブラームスピアノ協奏曲第2番は、あこがれの曲と最高の出会い!間宮芳生さんの作品、モーツァルトではオーケストラの奥深さと面白さを改めて実感しました。

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ヴァイオリンの川久保賜紀さんがソリストとしてご出演。「札幌コンサートホール開館25周年〈Kitaraワールドオーケストラシリーズ〉山田和樹指揮 横浜シンフォニエッタ」(2023/03/17)。新作初演の爽快さ!川久保賜紀さん共演のブラームス ヴァイオリン協奏曲は、交響曲のようにも感じられた濃密さ。そして何度も聴いたベト7は初めて出会ったような新鮮さ!想像を遙かに超えた体験でした。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

札幌交響楽団 hitaruシリーズ定期演奏会 第15回(2023/11) レポート

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札響首席指揮者のマティアス・バーメルトさんがついにhitaruシリーズに初登場です!注目は、ドイツ・ピアノの正統派を代表するゲルハルト・オピッツさんをお迎えしてのブラームスピアノ協奏曲第2番」。また交響曲にはバーメルトさんと縁あるモーツァルトが、そしてhitaruシリーズ恒例・日本人作曲家の作品には旭川出身の間宮芳生さんの作品が取り上げられました。当日の会場は、平日夜の公演にもかかわらず9割近くの席が埋まる盛況ぶりでした。

なお、この日の公演に先立ち、ポッカサッポロ「リボンナポリン」のコラボ連載企画「バーメルト&リボンりぼん」が各SNSにて開催されました。事前にキャンペーン参加した上で申し出た先着50名には記念品、当日来場者にはリボンナポリンの500mlペットボトルのお土産を頂きました。楽しい企画をありがとうございます!


札幌交響楽団 hitaruシリーズ定期演奏会 第15回
2023年11月21日(火)19:00~ 札幌文化芸術劇場 hitaru

【指揮】
マティアス・バーメルト(首席指揮者)

【ピアノ】
ゲルハルト・オピッツ

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:会田 莉凡)

【曲目】
間宮 芳生:オーケストラのためのタブロー2005
モーツァルト交響曲第40番
ブラームスピアノ協奏曲第2番


あこがれのブラームスピアノ協奏曲第2番」に、最高の形で出会えました!オピッツさんによる「ブラームスのピアノ」と、バーメルトさんが率いる札響の演奏で聴けるなんて、良いに決まっている!と、期待ゲージMAXで臨んだ私。そして実際の演奏は当たり前のように期待をはるかに超えるものでした。「ピアノ付き交響曲」が、ピアノもオケも大変充実している上に互いに打ち消すことはなく、かつ繊細なところや室内楽的なところはじっくりと。ピアノもオケもシーン毎の切り替えが鮮やかで、メインとサブの交代はスムーズ。バーメルトさん流の強弱へのこだわりがとても良い形で実を結んでいると感じました。何より演奏の熱量たるや!自信に満ちた響きから、歌曲の優しさから、舞曲のリズムから、ブラームスの情熱と愛そして親しみやすさがひしひしと伝わってきました。そもそもが演奏機会の少ない曲で、限られた準備期間にもかかわらず、このクオリティの高さでの演奏!オケのお一人お一人に敬意を表し、心からお礼申し上げます。

これは極めて個人的な事ですが、実は今回、ブラームスのピアコン第2番を聴くのが私はちょっと怖かったのです。3年前の第1番での苦い経験(思い入れが強すぎてうまく聴けず……聴き手としてあまりに未熟でした)があり、今回も自分の思いだけが空回りしてしまったらどうしよう、もし大好きな曲がつらい思い出になってしまったら!?と。しかしそれは杞憂でした。今の私が聴き手として成熟したとは思っていません。ただ、今の私なりに全身全霊で受け止め、感激に打ち震えたこと。それは私の中で忘れ得ぬ記念となりました。オピッツさん、3年前に続き今回も堂々たる「ブラームスのピアノ」を聴かせてくださり、ありがとうございます。そしてバーメルトさんと札響の皆様、完成度も熱量も高い演奏をありがとうございます。我が町のオケ、最高です!3年の年月で私が変化した事があるとすれば、何度も聴いてきた札響に今や全幅の信頼を寄せていることかもしれません。信じてついていけるものがある私はとても幸せです。この出会いに感謝いたします。

前半2曲も素晴らしい演奏で、興味深く聴きました。旭川出身の間宮芳生さんの作品は、hitaru定期でなければまず出会えなさそうな曲。このような演目を地道に取り上げていくことが、聴き手にとってもオケにとっても、さらにはクラシック音楽のこれからにとっても大切なのだと思います。また定番曲であるモーツァルト交響曲第40番」は、以前に札響による演奏(私が前回聴いたのは2021/12。今回より弦の人数が少なく、クラリネットはナシでした)で聴いた時とは違った印象で、新鮮な気持ちで楽しめました。今回は弦の人数が多い(ブラームスに合わせ中低弦を強化した大編成)にもかかわらず、繊細な響きで数少ない木管群を活かし、かつ力強いところではガツンと来るスタイル!ちなみに、8月に聴いた名曲シリーズ・ドイツ3大Bでは、演目ごとに弦の人数を変えて変化を付けていたと思います。良し悪しの話ではなく、シンプルに奏者の人数だけでは決まらない、オーケストラの奥深さと面白さを改めて実感できました。ありがとうございます!


前半1曲目は、間宮芳生「オーケストラのためのタブロー2005」。今回が札響初演とのことです。弦は人数が多く、14型でしょうか?ヴァイオリンの人数は正確に把握できませんでしたが、ヴィオラ10・チェロ8・コントラバス7という、中低弦が厚い編成でした。管は基本の2管編成で、フルートはピッコロ、クラリネットはEsクラリネットの持ち替えあり。低音金管群はナシ。多彩な打楽器は正団員さん3名で次々と持ち替えての演奏でした。演奏は、インパクトある拍子木から。続いたオケも独特なリズムがあり、速いテンポで様々な音が飛び交うのに、私は祭り囃子をイメージしました。チーンという鈴の音や、パーンというムチ、カーンという鐘(「のど自慢」の鐘1つの音と同じ?)、ジャーンというドラ等、多彩な打楽器がアクセントに。喧噪の後の、フルート独奏の存在感!和笛のような雰囲気で、重なる大太鼓も相まって大迫力でした。コンマスソロはミステリアスな感じ。コントラバスの重低音は地の底から来るエネルギーのよう。そして、後半に登場したオーボエ独奏がすごい!他が沈黙する中、暗闇を1人で歩みを進めているような孤高の響きで、時折入る間合いにゾッとする演奏に引き込まれました。後から拍子木が重なり、ほどなくオケが合流。終盤の流れは不穏な雰囲気で、ラストの寂しげなフルートが印象的でした。今の私には難解な演目でしたが、このような作品を見事に演奏する札響のお力を再確認しました。

2曲目は、モーツァルト交響曲第40番」。札響の過去の演奏歴は70回(ほか楽章抜粋演奏9回)という定番曲で、今回はクラリネットを含む改定稿が取り上げられました。ちなみにブラームスはこの曲の自筆譜を持っていたそうです。オケの編成は、弦の人数そのまま、管はフルート1で他は2ずつ、金管打楽器ナシ。この管が少なく弦が多いのはバランス的にどうかな?と、演奏前は率直にそう思った私。しかし演奏が始まると、まったく違和感なく聴けて、最初の心配はどこかへ消えてしまいました。さすがバーメルトさん&札響ですね!第1楽章 中低弦からそっと始まった出だしの美しさ!この序奏があったおかげで、ヴァイオリンによる哀しげなメロディがすっと入ってきました。静かな弦楽合奏に、管も加わり一度盛り上がってから、再び静かな弦楽合奏に。そこに重なる木管群の長くのばす音が心に染み入りました。弦の強弱の波がとても良くて、ぐおんぐおん来る感じや強奏は大人数ならではの迫力!同じメロディでも次々と表情が変わり(転調?)、その変化を楽しめました。楽章終盤での、ヴァイオリンの揺らぐ音(トリル?)が続くところがカッコ良かったです。第2楽章 こちらも中低弦からの静かな序奏が良かったです。楽章全体を通して振り子時計のようなゆったりした規則的なテンポだったのが印象的でした。一定のテンポを保ちつつ、各パートで順番にリレーしたり、木管と弦が呼応したりと、職人技による静かで美しい音楽をゆったり楽しめました。第3楽章 前の楽章から一転して、舞曲のリズムがカッコイイ!やや切ないメロディの弦による力強い演奏にドキドキし、長調のところでの木管群の可憐な響きに癒やされました。第4楽章 強弱のメリハリくっきりで、短調のキャッチーなメロディの前のめりな演奏がぐっと来ました。強奏での低弦の力!ヴァイオリン&ヴィオラのみのところから木管群の歌が続いたところが美しかったです。厚みある弦の力強い響きと、木管メインの繊細なところの美しさの両方が楽しめた演奏。なじみ深い曲を新鮮な気持ちで聴けました。

後半は、ソリストゲルハルト・オピッツさんをお迎えして、ブラームスピアノ協奏曲第2番。なお、札響の過去の演奏歴は15回で、前回の演奏は2015年1月とのこと。オケの編成は、弦の人数そのままで、各木管2(フルートはピッコロ持ち替えあり)、ホルン4、トランペット2、ティンパニ。第1楽章 序奏のホルンとピアノの会話は、親密な温かさが素敵でじんわり心に染み入りました。音階をゆっくり上るピアノは、もうそれだけでブラームスの響き!と私は最初から気持ちが高揚。オケが優しく重なって、ピアノ独奏キター!低音が分厚く高音が輝かしいピアノに早くも胸いっぱいに。華やかでちょっと切ないピアノ独奏に聴き入りました。力強い和音の一打を受けての、オケの堂々たる響きの良さ!中低弦のピッチカートに乗って、メロディを歌うヴァイオリンの澄んだ音色がすごく素敵でした。そこから再びパワフルに盛り上げて、ピアノの力強い和音に繋がる流れが鮮やか!ここでのピアノに、私はなんとなくベートーヴェンの「皇帝」をイメージしました。オケとピアノが交互に出てきたり、ピアノに弦がピッチカートでリズミカルに合いの手を入れたりと、ピアノとオケが見事に一体化しての演奏は聴いていて気持ちが良かったです。オケがパワフルな盛り上がりから、さっと潮が引くように音量を下げていった仕事ぶりがすごい!ホルンの哀しげな響きの美しさ!最初に首席が明るく歌ったメロディを、ここでは副首席(楽器の種類も異なる?)が担当。呼応するピアノも切ない響きになり、この室内楽的なやり取りにもブラームス「らしさ」を感じました。ピアノのキラキラにうっとりし、緊迫感が増していく流れにドキドキ。来ましたオケの重厚なダーダーダー♪2回目にはティンパニの力強いドラムロールもあって最高にカッコイイ!この布陣による超イケイケの演奏で聴けたのが夢みたい。遠くにきこえる、冒頭と同じ温かなホルンの良さ!再現では、ピアノもオケもはじめの時よりも明るい響きになったのが素敵で、楽章締めくくりのパワフルなオケとピアノの連打(トリル?)の輝かしさに胸がすく思いでした。第2楽章 はじめの厚みあるピアノから中低弦&ファゴットの重厚な低音が重なるところで鳥肌が立ちました。ああこの激情!しびれる!力強く歩みを進めていたピアノが、最後の1音を意識的にピアニッシモでそっと奏でたのがとても印象に残っています。そこに続いたヴァイオリンの澄んだ響きがなんて美しいこと!メロディを引き継いだピアノは、内向的でもまっすぐな情熱が感じられ、私はブラームス若き日のピアノ・ソナタを連想しました。そっとリフレインする弦の優しさ!重厚で力強いオケが、弦とホルンによる明るく雄大な感じに変化したところで視界は開けたように感じました。自信に満ちたユニゾンの輝かしさ!遠くにきこえるホルンに続いたピアノ独奏は、最晩年のピアノ小品を思わせる切なさ美しさで、胸に来ました。もう一度オケがガツンと盛り上げ、木管群がふと寂しげにメロディを歌ったのが印象的でした。情熱的でやや悲劇的に楽章は締めくくり。第3楽章 はじめはチェロから。オケに乗って、高音域で歌曲「まどろみはますます浅く」 op.105-2 のメロディを優しくたっぷり歌う独奏チェロが素敵すぎました!夢のようです……。呼応するオーボエの温かさ!続いたピアノも優しく美しく、高音がキラキラしたところから少し低音が不穏な感じになったり、切なさ不安さが垣間見えたり等、繊細な表情の変化が素敵でした。オケと呼応して音階の駆け上り下りや連打(トリル?)が効いているところはまさに「ブラームスのピアノ」。これはオピッツさんだからこその貫禄ですよね!ピアノの穏やかな伴奏に乗って、クラリネットが歌曲「死へのあこがれ」 op.86-6 のメロディを歌ったのにハッとさせられました。なんて温かで優しい!クラリネットを引き継いだ弦は、子守歌のようでも鎮魂歌のようでもあり、その純粋な優しさ美しさが心に染み入りました。そして独奏チェロ再び。高音で感極まったところでの、ふとまどろんだような儚い響きの美しさが忘れられません。独奏チェロもオケもピアノも優しく静かにフェードアウトする楽章締めくくりに涙涙でした。そのまま続けて第4楽章へ。 冒頭から、ピアノのスキップするようなリズムとキラキラした音色、重なる爽やかな弦にウキウキしました。オケが同じリズムでタッタ タッタ♪と演奏するのが楽しい。オケが盛り上けてからの、きらびやかな高音&重厚な低音のピアノのインパクト!木管群と弦が対話するところの切なさに胸焦がされました。ウキウキするところで、ほんの一瞬だけ登場したピッコロがとても印象に残っています。ハンガリー舞曲のようなリズムが次々と登場する楽しさと、合間に来る胸焦がす部分とで、情緒が大忙し!しかし、オピッツさんとオケの一体感のおかげで流れが生き生きとしていて、すごく引き込まれる演奏でした。オケが華やかに盛り上げてから強奏による渋いダーダ♪で締めたのにガツンとやられて、続く情熱的なピアノにしびれました!この布陣による超絶カッコイイ演奏で聴けたのが超うれしい。音階駆け上りや高音を力強く鳴らすピアノの生命力を感じる強さ!終盤はスキップのリズムが小刻みに早くなって、ピアノもオケも同じ鼓動で前へ前へと進んで行くのが気分爽快でした。ラストは力強くジャン!ジャン!ジャーン!と、明るく前向きな締めくくり。夢じゃなくて本当に、あこがれの曲と最高の形で出会えました!この曲のはじめての生演奏がオピッツさん&バーメルトさん&札響でよかった!

カーテンコールにて、オピッツさんは指揮のバーメルトさん、コンマス、アシスタントコンマス、そしてチェロ首席と順番に握手。会場は拍手喝采で、出演者の皆様に賛辞を贈りました。私はこの日の事をずっと忘れないと思います。最高の出会いをありがとうございました!


バーメルトさんとブラームスといえばこちらも。「札幌交響楽団 第653回定期演奏会」(土曜夕公演は2023/05/27)。最初の計画発表から3年の時を経てやっと出会えたドイツ・レクイエム。体温を感じる人の声はストレートに心に響き、遠いと感じていた作品が一番自分のハートに近いものと思えるように。会場全体の気持ちが一つになれたラストも素敵でした。

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森の響フレンド 札響名曲コンサート~ポンマーの贈り物 ドイツ3大B」(2023/08/26)。職人技のバッハ、新たな魅力を知ることができたベートーヴェン、重厚なブラームス。すべてが美味しい「親子丼、天丼、カツ丼」を一度に堪能でき大満足!元首席指揮者・ポンマーさんによる快演を気持ち良く聴くことが出来ました。

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チェロの石川祐支さんがソリストのお一人としてご出演。私は名古屋まで聴きにうかがいました。「セントラル愛知交響楽団 第196回定期演奏会~春・声~」(2023/05/13)。ディーリアスの美しさに誘われた、愛あふれる春のブラームス。魅力的な独奏とオケによる二重協奏曲に打ちのめされる快感!ブラ1の「苦悩から歓喜へ」の素晴らしさ!しらかわホール定期のラストイヤー初回公演に居合わせて幸せでした。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。