自由にしかし楽しく!クラシック音楽

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札幌交響楽団 hitaruシリーズ定期演奏会 第15回(2023/11) レポート

www.sso.or.jp


札響首席指揮者のマティアス・バーメルトさんがついにhitaruシリーズに初登場です!注目は、ドイツ・ピアノの正統派を代表するゲルハルト・オピッツさんをお迎えしてのブラームスピアノ協奏曲第2番」。また交響曲にはバーメルトさんと縁あるモーツァルトが、そしてhitaruシリーズ恒例・日本人作曲家の作品には旭川出身の間宮芳生さんの作品が取り上げられました。当日の会場は、平日夜の公演にもかかわらず9割近くの席が埋まる盛況ぶりでした。

なお、この日の公演に先立ち、ポッカサッポロ「リボンナポリン」のコラボ連載企画「バーメルト&リボンりぼん」が各SNSにて開催されました。事前にキャンペーン参加した上で申し出た先着50名には記念品、当日来場者にはリボンナポリンの500mlペットボトルのお土産を頂きました。楽しい企画をありがとうございます!


札幌交響楽団 hitaruシリーズ定期演奏会 第15回
2023年11月21日(火)19:00~ 札幌文化芸術劇場 hitaru

【指揮】
マティアス・バーメルト(首席指揮者)

【ピアノ】
ゲルハルト・オピッツ

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:会田 莉凡)

【曲目】
間宮 芳生:オーケストラのためのタブロー2005
モーツァルト交響曲第40番
ブラームスピアノ協奏曲第2番


あこがれのブラームスピアノ協奏曲第2番」に、最高の形で出会えました!オピッツさんによる「ブラームスのピアノ」と、バーメルトさんが率いる札響の演奏で聴けるなんて、良いに決まっている!と、期待ゲージMAXで臨んだ私。そして実際の演奏は当たり前のように期待をはるかに超えるものでした。「ピアノ付き交響曲」が、ピアノもオケも大変充実している上に互いに打ち消すことはなく、かつ繊細なところや室内楽的なところはじっくりと。ピアノもオケもシーン毎の切り替えが鮮やかで、メインとサブの交代はスムーズ。バーメルトさん流の強弱へのこだわりがとても良い形で実を結んでいると感じました。何より演奏の熱量たるや!自信に満ちた響きから、歌曲の優しさから、舞曲のリズムから、ブラームスの情熱と愛そして親しみやすさがひしひしと伝わってきました。そもそもが演奏機会の少ない曲で、限られた準備期間にもかかわらず、このクオリティの高さでの演奏!オケのお一人お一人に敬意を表し、心からお礼申し上げます。

これは極めて個人的な事ですが、実は今回、ブラームスのピアコン第2番を聴くのが私はちょっと怖かったのです。3年前の第1番での苦い経験(思い入れが強すぎてうまく聴けず……聴き手としてあまりに未熟でした)があり、今回も自分の思いだけが空回りしてしまったらどうしよう、もし大好きな曲がつらい思い出になってしまったら!?と。しかしそれは杞憂でした。今の私が聴き手として成熟したとは思っていません。ただ、今の私なりに全身全霊で受け止め、感激に打ち震えたこと。それは私の中で忘れ得ぬ記念となりました。オピッツさん、3年前に続き今回も堂々たる「ブラームスのピアノ」を聴かせてくださり、ありがとうございます。そしてバーメルトさんと札響の皆様、完成度も熱量も高い演奏をありがとうございます。我が町のオケ、最高です!3年の年月で私が変化した事があるとすれば、何度も聴いてきた札響に今や全幅の信頼を寄せていることかもしれません。信じてついていけるものがある私はとても幸せです。この出会いに感謝いたします。

前半2曲も素晴らしい演奏で、興味深く聴きました。旭川出身の間宮芳生さんの作品は、hitaru定期でなければまず出会えなさそうな曲。このような演目を地道に取り上げていくことが、聴き手にとってもオケにとっても、さらにはクラシック音楽のこれからにとっても大切なのだと思います。また定番曲であるモーツァルト交響曲第40番」は、以前に札響による演奏(私が前回聴いたのは2021/12。今回より弦の人数が少なく、クラリネットはナシでした)で聴いた時とは違った印象で、新鮮な気持ちで楽しめました。今回は弦の人数が多い(ブラームスに合わせ中低弦を強化した大編成)にもかかわらず、繊細な響きで数少ない木管群を活かし、かつ力強いところではガツンと来るスタイル!ちなみに、8月に聴いた名曲シリーズ・ドイツ3大Bでは、演目ごとに弦の人数を変えて変化を付けていたと思います。良し悪しの話ではなく、シンプルに奏者の人数だけでは決まらない、オーケストラの奥深さと面白さを改めて実感できました。ありがとうございます!


前半1曲目は、間宮芳生「オーケストラのためのタブロー2005」。今回が札響初演とのことです。弦は人数が多く、14型でしょうか?ヴァイオリンの人数は正確に把握できませんでしたが、ヴィオラ10・チェロ8・コントラバス7という、中低弦が厚い編成でした。管は基本の2管編成で、フルートはピッコロ、クラリネットはEsクラリネットの持ち替えあり。低音金管群はナシ。多彩な打楽器は正団員さん3名で次々と持ち替えての演奏でした。演奏は、インパクトある拍子木から。続いたオケも独特なリズムがあり、速いテンポで様々な音が飛び交うのに、私は祭り囃子をイメージしました。チーンという鈴の音や、パーンというムチ、カーンという鐘(「のど自慢」の鐘1つの音と同じ?)、ジャーンというドラ等、多彩な打楽器がアクセントに。喧噪の後の、フルート独奏の存在感!和笛のような雰囲気で、重なる大太鼓も相まって大迫力でした。コンマスソロはミステリアスな感じ。コントラバスの重低音は地の底から来るエネルギーのよう。そして、後半に登場したオーボエ独奏がすごい!他が沈黙する中、暗闇を1人で歩みを進めているような孤高の響きで、時折入る間合いにゾッとする演奏に引き込まれました。後から拍子木が重なり、ほどなくオケが合流。終盤の流れは不穏な雰囲気で、ラストの寂しげなフルートが印象的でした。今の私には難解な演目でしたが、このような作品を見事に演奏する札響のお力を再確認しました。

2曲目は、モーツァルト交響曲第40番」。札響の過去の演奏歴は70回(ほか楽章抜粋演奏9回)という定番曲で、今回はクラリネットを含む改定稿が取り上げられました。ちなみにブラームスはこの曲の自筆譜を持っていたそうです。オケの編成は、弦の人数そのまま、管はフルート1で他は2ずつ、金管打楽器ナシ。この管が少なく弦が多いのはバランス的にどうかな?と、演奏前は率直にそう思った私。しかし演奏が始まると、まったく違和感なく聴けて、最初の心配はどこかへ消えてしまいました。さすがバーメルトさん&札響ですね!第1楽章 中低弦からそっと始まった出だしの美しさ!この序奏があったおかげで、ヴァイオリンによる哀しげなメロディがすっと入ってきました。静かな弦楽合奏に、管も加わり一度盛り上がってから、再び静かな弦楽合奏に。そこに重なる木管群の長くのばす音が心に染み入りました。弦の強弱の波がとても良くて、ぐおんぐおん来る感じや強奏は大人数ならではの迫力!同じメロディでも次々と表情が変わり(転調?)、その変化を楽しめました。楽章終盤での、ヴァイオリンの揺らぐ音(トリル?)が続くところがカッコ良かったです。第2楽章 こちらも中低弦からの静かな序奏が良かったです。楽章全体を通して振り子時計のようなゆったりした規則的なテンポだったのが印象的でした。一定のテンポを保ちつつ、各パートで順番にリレーしたり、木管と弦が呼応したりと、職人技による静かで美しい音楽をゆったり楽しめました。第3楽章 前の楽章から一転して、舞曲のリズムがカッコイイ!やや切ないメロディの弦による力強い演奏にドキドキし、長調のところでの木管群の可憐な響きに癒やされました。第4楽章 強弱のメリハリくっきりで、短調のキャッチーなメロディの前のめりな演奏がぐっと来ました。強奏での低弦の力!ヴァイオリン&ヴィオラのみのところから木管群の歌が続いたところが美しかったです。厚みある弦の力強い響きと、木管メインの繊細なところの美しさの両方が楽しめた演奏。なじみ深い曲を新鮮な気持ちで聴けました。

後半は、ソリストゲルハルト・オピッツさんをお迎えして、ブラームスピアノ協奏曲第2番。なお、札響の過去の演奏歴は15回で、前回の演奏は2015年1月とのこと。オケの編成は、弦の人数そのままで、各木管2(フルートはピッコロ持ち替えあり)、ホルン4、トランペット2、ティンパニ。第1楽章 序奏のホルンとピアノの会話は、親密な温かさが素敵でじんわり心に染み入りました。音階をゆっくり上るピアノは、もうそれだけでブラームスの響き!と私は最初から気持ちが高揚。オケが優しく重なって、ピアノ独奏キター!低音が分厚く高音が輝かしいピアノに早くも胸いっぱいに。華やかでちょっと切ないピアノ独奏に聴き入りました。力強い和音の一打を受けての、オケの堂々たる響きの良さ!中低弦のピッチカートに乗って、メロディを歌うヴァイオリンの澄んだ音色がすごく素敵でした。そこから再びパワフルに盛り上げて、ピアノの力強い和音に繋がる流れが鮮やか!ここでのピアノに、私はなんとなくベートーヴェンの「皇帝」をイメージしました。オケとピアノが交互に出てきたり、ピアノに弦がピッチカートでリズミカルに合いの手を入れたりと、ピアノとオケが見事に一体化しての演奏は聴いていて気持ちが良かったです。オケがパワフルな盛り上がりから、さっと潮が引くように音量を下げていった仕事ぶりがすごい!ホルンの哀しげな響きの美しさ!最初に首席が明るく歌ったメロディを、ここでは副首席(楽器の種類も異なる?)が担当。呼応するピアノも切ない響きになり、この室内楽的なやり取りにもブラームス「らしさ」を感じました。ピアノのキラキラにうっとりし、緊迫感が増していく流れにドキドキ。来ましたオケの重厚なダーダーダー♪2回目にはティンパニの力強いドラムロールもあって最高にカッコイイ!この布陣による超イケイケの演奏で聴けたのが夢みたい。遠くにきこえる、冒頭と同じ温かなホルンの良さ!再現では、ピアノもオケもはじめの時よりも明るい響きになったのが素敵で、楽章締めくくりのパワフルなオケとピアノの連打(トリル?)の輝かしさに胸がすく思いでした。第2楽章 はじめの厚みあるピアノから中低弦&ファゴットの重厚な低音が重なるところで鳥肌が立ちました。ああこの激情!しびれる!力強く歩みを進めていたピアノが、最後の1音を意識的にピアニッシモでそっと奏でたのがとても印象に残っています。そこに続いたヴァイオリンの澄んだ響きがなんて美しいこと!メロディを引き継いだピアノは、内向的でもまっすぐな情熱が感じられ、私はブラームス若き日のピアノ・ソナタを連想しました。そっとリフレインする弦の優しさ!重厚で力強いオケが、弦とホルンによる明るく雄大な感じに変化したところで視界は開けたように感じました。自信に満ちたユニゾンの輝かしさ!遠くにきこえるホルンに続いたピアノ独奏は、最晩年のピアノ小品を思わせる切なさ美しさで、胸に来ました。もう一度オケがガツンと盛り上げ、木管群がふと寂しげにメロディを歌ったのが印象的でした。情熱的でやや悲劇的に楽章は締めくくり。第3楽章 はじめはチェロから。オケに乗って、高音域で歌曲「まどろみはますます浅く」 op.105-2 のメロディを優しくたっぷり歌う独奏チェロが素敵すぎました!夢のようです……。呼応するオーボエの温かさ!続いたピアノも優しく美しく、高音がキラキラしたところから少し低音が不穏な感じになったり、切なさ不安さが垣間見えたり等、繊細な表情の変化が素敵でした。オケと呼応して音階の駆け上り下りや連打(トリル?)が効いているところはまさに「ブラームスのピアノ」。これはオピッツさんだからこその貫禄ですよね!ピアノの穏やかな伴奏に乗って、クラリネットが歌曲「死へのあこがれ」 op.86-6 のメロディを歌ったのにハッとさせられました。なんて温かで優しい!クラリネットを引き継いだ弦は、子守歌のようでも鎮魂歌のようでもあり、その純粋な優しさ美しさが心に染み入りました。そして独奏チェロ再び。高音で感極まったところでの、ふとまどろんだような儚い響きの美しさが忘れられません。独奏チェロもオケもピアノも優しく静かにフェードアウトする楽章締めくくりに涙涙でした。そのまま続けて第4楽章へ。 冒頭から、ピアノのスキップするようなリズムとキラキラした音色、重なる爽やかな弦にウキウキしました。オケが同じリズムでタッタ タッタ♪と演奏するのが楽しい。オケが盛り上けてからの、きらびやかな高音&重厚な低音のピアノのインパクト!木管群と弦が対話するところの切なさに胸焦がされました。ウキウキするところで、ほんの一瞬だけ登場したピッコロがとても印象に残っています。ハンガリー舞曲のようなリズムが次々と登場する楽しさと、合間に来る胸焦がす部分とで、情緒が大忙し!しかし、オピッツさんとオケの一体感のおかげで流れが生き生きとしていて、すごく引き込まれる演奏でした。オケが華やかに盛り上げてから強奏による渋いダーダ♪で締めたのにガツンとやられて、続く情熱的なピアノにしびれました!この布陣による超絶カッコイイ演奏で聴けたのが超うれしい。音階駆け上りや高音を力強く鳴らすピアノの生命力を感じる強さ!終盤はスキップのリズムが小刻みに早くなって、ピアノもオケも同じ鼓動で前へ前へと進んで行くのが気分爽快でした。ラストは力強くジャン!ジャン!ジャーン!と、明るく前向きな締めくくり。夢じゃなくて本当に、あこがれの曲と最高の形で出会えました!この曲のはじめての生演奏がオピッツさん&バーメルトさん&札響でよかった!

カーテンコールにて、オピッツさんは指揮のバーメルトさん、コンマス、アシスタントコンマス、そしてチェロ首席と順番に握手。会場は拍手喝采で、出演者の皆様に賛辞を贈りました。私はこの日の事をずっと忘れないと思います。最高の出会いをありがとうございました!


バーメルトさんとブラームスといえばこちらも。「札幌交響楽団 第653回定期演奏会」(土曜夕公演は2023/05/27)。最初の計画発表から3年の時を経てやっと出会えたドイツ・レクイエム。体温を感じる人の声はストレートに心に響き、遠いと感じていた作品が一番自分のハートに近いものと思えるように。会場全体の気持ちが一つになれたラストも素敵でした。

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森の響フレンド 札響名曲コンサート~ポンマーの贈り物 ドイツ3大B」(2023/08/26)。職人技のバッハ、新たな魅力を知ることができたベートーヴェン、重厚なブラームス。すべてが美味しい「親子丼、天丼、カツ丼」を一度に堪能でき大満足!元首席指揮者・ポンマーさんによる快演を気持ち良く聴くことが出来ました。

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チェロの石川祐支さんがソリストのお一人としてご出演。私は名古屋まで聴きにうかがいました。「セントラル愛知交響楽団 第196回定期演奏会~春・声~」(2023/05/13)。ディーリアスの美しさに誘われた、愛あふれる春のブラームス。魅力的な独奏とオケによる二重協奏曲に打ちのめされる快感!ブラ1の「苦悩から歓喜へ」の素晴らしさ!しらかわホール定期のラストイヤー初回公演に居合わせて幸せでした。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

R弦楽四重奏団 Vol.1 (2023/11) レポート

concert-search.ebravo.jp

札響メンバーと札響に縁あるメンバーで結成された、R弦楽四重奏団の初回公演が奥井理ギャラリーにて開催されました。チーム名の由来は、メンバーのお名前にすべて“R”が入っているからなのだそう。実力・キャリアともに十二分に兼ね備えたメンバーによるカルテットの旗揚げ公演ということで、札幌市民の期待は大きく、小さな会場にはぎっしりとイスが並べられ、多くのお客さん達が集まっていました。


R弦楽四重奏団 Vol.1
2023年11月18日(月)15:00~ 奥井理ギャラリー

【演奏】
飯村 真理(1stヴァイオリン) ※札幌交響楽団副首席ヴァイオリン奏者
坪田 規子(2ndヴァイオリン) ※元 新日本フィルハーモニー交響楽団ヴァイオリン奏者
廣狩 亮(ヴィオラ) ※札幌交響楽団首席ヴィオラ奏者
廣狩 理栄(チェロ) ※札幌交響楽団チェロ奏者

【曲目】
J.ハイドン弦楽四重奏曲 No.71 op.33-2 「冗談」
D.ショスタコーヴィチ弦楽四重奏曲 No.8 op.110
J.ブラームス弦楽四重奏曲 No.1 op.51-1

(アンコール)J.ハイドン弦楽四重奏曲第39番 op.33-3 「鳥」より 第4楽章


演奏家との距離が物理的にも心理的にも近いギャラリーにて、信頼のメンバーによる充実の演奏を肌で感じられる贅沢!お堅いイメージだった弦楽四重奏を身近に感じ、自然体で楽しめた幸せな時間でした。三者三様のカラーが異なる作品を取り上げたプログラムの良さはもちろんのこと、それぞれの作品の個性を際立たせる演奏で聴き手を魅了したチームのお力が素晴らしいです!まず、作曲家のサービス精神あふれる楽しい音楽に癒やされたハイドンでは、魅力的な1stヴァイオリンとそれを支える他の弦とのチームワークの良さが素敵!遊び心いっぱいの第4楽章での掛け合いの楽しさからは、メンバーの信頼関係がうかがえました。また、「癒やし」とは真逆の得体の知れなさやおそろしさに圧倒されたショスタコーヴィチは、気迫と緊迫感がすごい!一瞬の隙が命取りになりそうなこの作品で、4名の奏者の皆様は驚異の集中力にてピンと張り詰めた空気を作り、その堅牢な土台があった上で思い切り「狂気」を表現していたと感じました。そして、一見地味なブラームス弦楽四重奏曲を、今回とても面白く聴けたのが私にとって大収穫でした。交響曲にも引けを取らないガッツリ作り込まれた曲の、誠実で精力的な演奏は、個人的な作曲家への思い入れを差し引いても十分すぎるほどの聴き応え!その充実の演奏を通じ、シンプルな喜怒哀楽では言い表せないブラームスの複雑な内面がうかがえて、重厚で生真面目な中にもブラームスらしい情熱や愛、歌心があふれていると私は感じました。これこそ作曲家渾身の「第1番」!噛めば噛むほど味が出る、これは一生付き合っていきたい!とまで思えるように。弦楽四重奏は奥が深い世界ではありますが、今回感じるままに聴いても夢中になれたのは、ひとえにR弦楽四重奏団の皆様のおかげです。ありがとうございます!第2回以降の公演も楽しみにしています。


出演者の皆様が舞台へ。女性奏者の皆様のドレスはいずれも濃い青色、ヴィオラの廣狩亮さんは黒シャツの上に前身頃が濃い青色のベストを着用されていました。4名でリンクコーデの衣装、素敵です♪はじめは、J.ハイドン弦楽四重奏曲 No.71 op.33-2 「冗談」。第1楽章 他の弦が刻む(ン)タッタッタ♪のリズムに乗って、少し低めの音程で品よく歌う1stヴァイオリンがなんて素敵なこと!早速心掴まれました。1stヴァイオリンによる高速演奏が何度も登場し、私はその時々によって鳥のさえずりや春の突風をイメージ。優雅で明るい春のような音楽が心地良かったです。少し不穏なところがあったり強弱の波があったりと、変化が多い演奏は聴き手をずっと楽しませてくれました。第2楽章 ここでもはじめの1stヴァイオリンに心掴まれました!1stヴァイオリンに対し、他の弦がリズムを取ったり重なったりして下支え。一緒にダンスしているようで、明るいメロディとリズム感が楽しかったです。スキップから優雅なターンに変化し、1stヴァイオリンのフレーズ最後にキュン♪とあがる音の愛らしさに、私はもうメロメロになりました。第3楽章 冒頭はヴィオラとチェロのゆったりとした歌からで、今までとの違いにちょっと意表を突かれました。ゆったり穏やかな流れの中で、時折全員の強奏でアクセントが入るのに驚かされ、明るさの下に様々な感情を秘めているかのよう。ピアニッシモでフェードアウトするラストの温かさが素敵でした。第4楽章 想像以上に面白かったです!明るく軽快な音楽が楽しい……と、のんきに構えていると、ちょこちょこ休符で止まるようになって「おや?」となりました。この止まる時の絶妙な間合いと、メンバーのにこやかな表情がとても良かったです。もう一度最初のメロディが登場して、繰り返しかな?と思いきや、次は無かったのでようやく曲が終わったことがわかりました。会場は和み、仕掛けは大成功ですね♪明るく楽しい音楽に癒されました。

2曲目は、D.ショスタコーヴィチ弦楽四重奏曲 No.8 op.110」。すべての楽章が続けて演奏されました。第1楽章 はじめチェロ→ヴィオラ→2ndヴァイオリン→1stヴァイオリンの順に楽器が増えていき、弱音を重ねていくことで少しずつ浮かび上がってくる音楽に私は何やら得体の知れなさを感じ、ぞわっとしました。他の弦が低音を長くのばしている上を、1stヴァイオリンが少し掠れた音でゆっくり進むのには、先が見えない中をひとり彷徨っているよう。ゆっくりでも空気は研ぎ澄まされていて、主役がいつの間にか他のパートに移ったり、足並み揃えて強弱の波を作ったりと、一瞬たりとも隙のない緻密なアンサンブルに引き込まれました。第2楽章 突然速く激しくなったのに驚愕!1stヴァイオリンが超高音で駆け抜けていくのを他の弦がリズミカルに強奏で合いの手を入れたり、2つのヴァイオリンが速いテンポでダンスしているようだったり、ヴァイオリンが沈黙しヴィオラが駆け抜けたりと、次々と展開する流れは怒濤の勢い!次第に狂気を感じる歌とリズムになっていき、熱狂的な盛り上がりがすさまじかったです。ものすごい気迫と緊迫感に圧倒されっぱなしでした!第3楽章 はじめの1stヴァイオリン独奏は悲痛な叫びのようでガツンときました。中低弦の(ン)タッタ♪のリズム、2ndヴァイオリンのトレモロに乗ってのダンスは、それこそ骸骨の踊りのような恐ろしさ!ヴィオラと1stヴァイオリンの掛け合いの緊張感は半端なかったです。2つのヴァイオリンのざわざわした音に乗って、チェロが高音域で彷徨うように歌うのは、魂が連れていかれそうな不思議な感覚に。楽章の終わりには再び1stヴァイオリン独奏になり、今度は命の火が消えていくように低音で弱い音になっていくのがまた不気味でした。第4楽章 1stヴァイオリンが低音をぐーっと長くのばして、他の弦が時折ガッガッガと強奏する度にドキっとしました。1stヴァイオリン以外の弦がユニゾンでぐっと暗く重く歌うのが、個人的にはもう怖くて怖くて。この世ではない場所に来たかのようでした。極め付けは、チェロが超高音域で天国的に美しく歌ったところです。きっとここだけ取り出したら「きれい」とシンプルに思えたのかもしれませんが、他の弦によるぐーっと長くのばす暗い低音の上で歌うのは、奇妙な感じ(もちろん狙ってのことと存じます)で背筋が凍りました。第5楽章 ぐっと遅い流れの中で、各パートが順番に囁くように奏でる子守唄のようなメロディ。癒やしではなく、その得体の知れなさが強く印象に残っています。そして曲の締めくくりに向かう流れが圧巻でした。少しずつ音を小さくしながら消えゆくラストは、すべての終わりのようにも感じられ、自分も無になってしまった感覚に。今自分がどこにいるのかあやふやになるほど、演奏が作り出す世界に引き込まれ、のめり込んだ時間でした。今の私がきちんと受け止められたかどうかはわかりませんが、大変衝撃的な、忘れられない体験となりました。


後半は、J.ブラームス弦楽四重奏曲 No.1 op.51-1」。第1楽章 そっと始まる冒頭から次第に大きくなっていく深刻さ厳しさにドキドキ。頂点に達した後、ヴィオラが音を長くのばす余韻は鮮烈な印象で、私は思わず背筋が伸びました。最初の1stヴァイオリンのメロディを中低弦がぐっと重厚に演奏。痺れる!暗く深刻なところから、希望の光が見える明るいところへ。この堂々とした歌い方、すごく素敵でした!しかし一方で疾走感ある音の刻みはずっと続いていて、私は複雑な内面を垣間見たような気持ちに。1stヴァイオリンが高音で力強く弾く盛り上がりは、すごくカッコいいのに胃がキリキリしました。この悲鳴にも似た1stヴァイオリンに、終盤ではチェロが寄り添い、全員で並走しながら少し希望が見えるラストに向かうのが素敵!ラストの長くのばす音の余韻で、私はようやくほっと一息つけた気がします。それほどに引き込まれた、緊迫感に手に汗握る演奏でした。第2楽章 はじめのゆったりロマンティックに歌うところの優しさ美しさに聴き入りました。1stヴァイオリンだけでなく時々チェロも主役になる、これもブラームスらしさ!ふと寂しげに変化するところでの、ためらいがちに1歩ずつ歩みを進めるように休符が入る間合いが良かったです。締めくくりでの2つのヴァイオリンによるピッチカートが可愛らしい!第3楽章 ミステリアスな音楽は、チェロのリズムが心臓の鼓動のようで印象深かったです。全員で重厚に音階を駆け上ってから明るいところへ。ここでのヴィオラ(後から2ndヴァイオリンに)と1stヴァイオリンの親密な会話がとても素敵でした!中盤の温かな雰囲気のところでは、他の弦が順番にピッチカートをしていく中で、2ndヴァイオリンがずっと細かく弓を動かしてベースを作っていたのも印象に残っています。第4楽章 最初の強奏がガツンと来ました!情熱的な流れの中で、細かく入る休符がバシッと揃うのが気持ちイイ。肩で息をしているようにも再度力を込め直しているようにも感じられ、休符の後には切れ味鋭い音が登場し、私はその都度ガツンとやられていました。クライマックスではスピードを増し、曲のはじめに登場したメロディがほんの少し登場して、堂々たる締めくくり。シンプルな言葉では形容できない複雑な内面がうかがえる、充実した演奏に夢中になれました!

カーテンコールの後、チェロの廣狩理栄さんからごあいさつがあり、アンコールの曲目を紹介くださいました(J.ハイドンの「ロシア四重奏曲」の1つ、とのことです)。アンコールは、J.ハイドン弦楽四重奏曲第39番 op.33-3 「鳥」より 第4楽章。鳥がさえずるように歌う1stヴァイオリンが愛らしく、軽快なリズムが楽しい音楽。曲の締めくくりは、ふわっとした終わり方だったのが印象的でした。プログラム最初の「冗談」と似ているかも!会場は和み、出演者の皆様に温かな拍手を送り、会はお開きとなりました。弦楽四重奏の良さを十二分に堪能できた、素敵な時間をありがとうございます!第2回公演も楽しみにしています!


ショスタコーヴィチに衝撃を受けたのはこちら。「Trio MiinA トリオ・ミーナ第5回公演 小児がんチャリティコンサート」(2023/09/22)。彩り豊かな新作初演、凄まじさに打ちのめされたショスタコーヴィチ、お初のピアノカルテットによるシューマンの充実ぶり!今回もうれしい驚きの連続で、最初から最後までとても楽しかったです!

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第135回OKUI MIGAKUギャラリーコンサート 下川朗コントラバスリサイタル」(2023/11/05)。歌心の良さにキレッキレのリズム感、超絶技巧!アルペジョーネソナタコントラバスのための作品たちの演奏はうれしい驚きの連続で、下川さんによる「主役としてのコントラバス」に魅了された、あっという間の2時間でした!

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歌い、踊り、想うコントラバス」(2023/11/08)。東京音楽コンクール2023弦楽部門にて第1位となった水野斗希さんとピアノの鵜飼真帆さんの演奏会。歌心とリズム感、「想い」を音に映し出せる表現力!無条件に聴き手を惹きつける音楽に夢中になりました。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

歌い、踊り、想うコントラバス!(2023/11) レポート

https://www.rokkatei.co.jp/wp-content/uploads/2023/09/231108.pdf

↑今回の演奏会チラシです(pdfファイルです)。

真駒内六花亭ホールにて、コントラバスの水野斗希さんとピアノの鵜飼真帆さんの演奏会が開催されました。水野さんは2003年生まれで、先日の第21回東京音楽コンクール(2023)弦楽部門にて第1位となった注目の若手音楽家。また東京都交響楽団の客演首席奏者を務めていらっしゃるそうです。鵜飼さんは2002年生まれで、既に数々の受賞歴があるピアニスト。お2人とも東京芸術大学に在学中です。なお前売りチケットは120席完売したとのことです。


歌い、踊り、想うコントラバス
2023年11月08日(水)19:00~ 真駒内六花亭ホール

【演奏】
水野 斗希(コントラバス
鵜飼 真帆(ピアノ)

【曲目】
R.シューマンアダージョアレグロ イ長調 op.70
E.タバコフ:モティヴィ(コントラバスソロ)
G.ボッテジーニ:序奏とボレロ
F.ツェルニー夜想曲と間奏曲
K.シマノフスキ:変奏曲変ロ短調 op.3(ピアノソロ)
R.グリエール:4つの小品

(アンコール)R.シューマントロイメライ


なんという衝撃的な出会い!「お若いから」「コントラバスだから」という前置きは不要。その歌心とリズム感、そして水野斗希さんがお持ちの音の素晴らしさは、無条件に聴き手を惹きつけるものでした。超絶技巧で顕著に示された技術力の高さはもちろんのこと、個人的に驚愕したのは、コントラバスの素朴な音色を補って余りある表現力です。弓を小刻みに動かして豊かな響きを作ったり、おそらくはヴァイオリンよりも強い力で弦を擦ってインパクトある音を出したりといった事はもとより、恋心や情熱といった「想い」を音に映し出せるのがすごい!例えば大人の恋を思わせる艶っぽい音色は、20歳前後の若者が生み出した音だなんて、にわかには信じられないほど!しかしそう思ったのは冷静になった終演後のことです。その時の私は、目の前の音楽にただひたすら夢中になり、全身全霊で酔いしれていました。素晴らしい若手音楽家との出会いに感激!同時に、コントラバスの独奏楽器としての無限の可能性を感じ、私はとてもワクワクしています!また共演のピアニスト・鵜飼真帆さんのピアノも素晴らしかったです。独奏で見せて下さった、物語を展開するような表現力にリズム感の良さ!それは伴奏にも活かされていて、ピアノは音量を下げてコントラバスに寄り添いながら、一緒にリズムと感情を作り上げてくださいました。現在音大に在籍中というお若いお2人の、これからのご活躍に期待大です!

それにしても、六花亭さんの若手音楽家を見いだすお力にはただただ敬服します。今回のコントラバスの水野斗希さんは、演奏会の企画自体は今年の東京音楽コンクールよりも前でした(もちろん過去にも数多くの受賞がおありですが)。ちなみに私は、ふきのとうホールのランチタイムコンサートにて、全国的に名前が知られる前の水野優也さんや佐藤晴真さん(いずれもチェリスト)にも出会っています。これからも、私達がまだ知らない若手音楽家たちを見いだし、さらなる飛躍のステップとなる演奏会を継続して開催くださいませ。

今回初めてうかがった真駒内六花亭ホール、とても素敵なところでした!普段はお菓子を販売するお店で、演奏会の時はコンサートホールに早変わりするグッドデザインな仕様。もちろん六花亭本店ふきのとうホールの最高な音響にはかないませんが、真駒内六花亭ホールの音響は思っていたよりも良いと私は感じました。天井が高く、イスがゆったりサイズなのも開放感があって良かったです。真駒内公園と隣接する自然環境に恵まれた場所で、演奏以外の時は縦長のガラス窓(演奏中は厚い木の壁で塞がれました)から見える景色とホールが溶け込むのも素敵!また今回うれしかったのは、休憩時間に茶菓のサービスがあったこと。この時だけのオリジナルのプレートを美味しく頂きました。これでチケット代2000円(または六花亭ポイント200P)なんて、ありがたいやら申し訳ないやらです。これからも演奏と茶菓を楽しみに、折に触れてうかがいます!


出演者のお2人が舞台へ。コントラバスの水野斗希さんは黒シャツ、ピアノの鵜飼真帆さんはワインレッドのノースリーブドレスの装いでした。今回のコントラバスは通常の大編成オケで使われる、大きなサイズのものだったと思います。弦は4弦。水野さんは立奏でした。1曲目は、R.シューマンアダージョアレグロ イ長調 op.70」。優しいピアノの響きに乗って、ゆったり歌うコントラバスの美しさ!高音域の艶っぽい音は、コントラバスの無骨なイメージからは想像つかないもので、私は最初から水野さんの音に心掴まれました。寄せては返す強弱の波に、ピアノと優しくこだまし合うのが素敵!心地よい波長に浸りました。めいいっぱいの弱音(ピアニッシシシ……モ!)がすごい!水野さんのお力と、ホールの響きの良さに感服です!後半は快活な音楽に。力強いピアノに乗って、情熱的に歌うコントラバスの堂々たる響き!しかしパワーだけではなく、少し落ち着いたところでの歌い方になんとも色気があって良かったです。また、ピアノのターンでコントラバスがぐーっと低音をのばしていたのが印象的でした。想いが途切れること無くずっと続いているよう!クライマックスで音を盛り盛り弾くところの輝かしさ!華やかなピアノも相まって「シューマンらしさ」が感じられる清々しい演奏に、聴いている私達も気分爽快になりました。

ここで水野さんがマイクを持ってごあいさつとトーク。はじめに来場のお客さん達への御礼を述べられた後、コントラバスとピアノの演奏会は「めずらしいと思います」と仰っていました。1曲目のシューマン作品について、元々はホルンのための作品で、コントラバス用の編曲では半音上げた調に変更されている(変イ長調イ長調)と解説。コントラバスに適した調性になっているようです(もっと踏み込んだ内容でお話しされましたが、私がきちんと理解出来ているかどうか不安なため、ここでは概要のみで失礼します)。またこの後に演奏する2曲目については、はじめゆっくり→速く→とてもゆっくり→高速、とざっくり紹介して、演奏に移りました。

コントラバス独奏で、E.タバコフ「モティヴィ」。こちらの演奏には度肝を抜かれました!冒頭、掴みの重音から早速ぐっと引き込まれ、弦をおさえる左手を滑らせてキュン♪と鳴らすのがカッコイイ!高速演奏になってからは力強く弓をひきガンガン行くスタイルで、時折左手で全部の弦をガッとかき鳴らしたり重低音が登場したりと、目にも留まらぬ動きに驚愕しました。そこから生まれる音楽はモダンなダンスミュージックのようで、勢いとリズム感、そして個性的な音色が超クール!ゆっくりのターンになってからは、最初のメロディが超高音で演奏され、あたかも低い声の男性が裏声で歌っているかのような奇妙な響き(もちろん狙ってそのように演奏していらっしゃるはず)と、その上でゆらぐ音に、ぞわっとしました。再び速いターンになると、最初の時よりもメロディの存在感が増した、歌心ある演奏になったのにまたしても驚愕!勢いとリズム感の良さ、加えて情熱的に思いの丈を歌うのが超絶カッコイイ!コントラバスってこんなに魅力的な楽器だったんですね!聴き手にとって、衝撃的かつ素晴らしい出会いとなりました。ありがとうございます!

G.ボッテジーニ「序奏とボレロ。力強いピアノの前奏に続いて登場したコントラバスは、目が覚めるほどのインパクト!甘く語りかけるような艶っぽさ、コントラバスはこんな歌い方もできるんですね!しかしぐっと低い重低音はコントラバスならでは!思いを吐露するようだったり、高らかに歌ったりと、情熱的なコントラバスに惹きつけられました。そして中盤以降の、タッタタッタター♪と軽やかにステップを踏むようなリズム感と影のある音色の色気たるや!ピアノの間奏がドラマチック!高音域でもタッタタッタター♪が登場して、掠れた音にまたもや心かき乱されました。協奏曲のカデンツァのようなコントラバス独奏は、胸がすくような堂々たる響き!明るい締めくくりでは、これほどまでのコントラバスの超高音は個人的に初体験で、その想像を超えた音ともちろん演奏自体の気迫が強く印象に残っています。モダンで色気ある大人の雰囲気の音楽に魅せられました!


後半。はじめはF.ツェルニー夜想曲と間奏曲」。ピアノの前奏は星が瞬くような美しさ!ほどなく登場したコントラバスは、甘く柔らかな響きがとっても素敵で、まさにセレナーデ(夜に恋人の為に窓の下で演奏する曲)!何度か登場したゆらぐ音は、ソワソワした気持ちの表れと感じられ、思わず笑みがこぼれました。ピアノがコントラバスとリズミカルに呼応しながら、明るさやテンポを少しずつ変化させていたのも印象深かったです。中盤は舞曲風(フラメンコのよう?)になり、情熱的な音楽に魅了されました。華やかなピアノに乗って、コントラバスの前のめりな勢いと妖艶な音色が超素敵!また、くるっとスカートの裾を翻すような、タンタタタン♪とリズミカルに演奏するのがとても良くて、水野さんの表現力のすごさを改めて実感しました。ピアノの間奏を経て再びセレナーデに。はじめの時よりも少し落ち着いた(と私は感じました)コントラバスの歌い方がまた素敵で、ゆらぐ音にも大人の余裕が感じられました。めでたく恋は成就したのかも!?と妄想したりも。高音でフェードアウトするラストがとても美しかったです。まるで映画音楽のようで、ラブストーリーを見ている気持ちにもなれた、とてもドラマチックな演奏でした!

ピアノソロによる演奏で、K.シマノフスキ「変奏曲変ロ短調 op.3」。最初のテーマは低音の重い響きがインパクトあり、夜道を一歩一歩進んでいるようにも感じました。少し駆け足になったり、タラランタララン♪と転がるようだったりと、変奏はいずれも個性豊か。個人的には、神秘的に感じられたところ(第3変奏?)、ブラームスをイメージしたところ(第5変奏?)、葬送行進曲のようなところ(第8変奏?)、幸せな舞曲のようなところ(第9変奏?)が特に印象深かったです。そして最後の変奏(第12変奏?)は、速いテンポで進むダイナミックな演奏に引き込まれました。がっちりとした低音と華やかな高音が、心を一つにして一緒に駆け抜けていくようなのが素敵!フィナーレはさらに力強くなり、ホールに響き渡るピアノが輝かしい!変奏曲でありながらも、短編小説のようなストーリー展開が感じられた演奏でした!

ここで出演者のお2人によるトークが入りました。まずは鵜飼さんから、先ほど演奏したシマノフスキの作品について。シマノフスキは色々な性格の音楽を書いている、ポーランドの作曲家だそうです。今回取り上げた作品は、最初のテーマは暗くも美しく、ポーランドの歌のようで、華やかなフィナーレに向かう、とご紹介くださいました。続いて水野さんから、まずは後半はじめに演奏したツェルニーの作品について。最後はミュートを付けて演奏したため、最初との音色の違いを楽しんで頂けたのでは?といった趣旨の事を仰っていました。そしてこの後に演奏するグリエールの作品について。「小品」と言っても演奏は結構大変な作品で、この中では2曲(私には具体的にどの曲か確定できなかったため、ここでは明記を避けます。申し訳ありません)の演奏機会が多い、と簡単に紹介し、演奏に移りました。

プログラム最後の演目は、R.グリエール「4つの小品」。なおこの時の演奏順は作品番号順ではなかったかもしれません。ここでは演奏順でレビューを書きますが、諸々勘違いがありましたら申し訳ありません。1曲目 ちょっと切ないラブソングのよう(と私は感じました)で、コントラバスとピアノが語らうように交互にメロディをやり取りするのが素敵でした。しっとりと今この時を慈しむ感じがとても印象深かったです。ゆっくりと音階を上ってフェードアウトするラストまで愛しい!2曲目 明るく跳ねるようなリズムが楽しく、素朴な舞曲のようにも感じました。スキップから滑らかなターンへの変化も素敵。ラストの超高速演奏がすごい!3曲目 ゆっくり穏やかに歌うコントラバスが心地よく、まるで歌曲のよう!滑らかな流れの中で、強弱の波や感極まる盛り上がりがごく自然に作られていました。思いに寄り添ってくれるようで、親しみやすかったです。優しくフェードアウトするラストも素敵!4曲目 エスニックな舞曲のリズムが超カッコイイ!速いテンポでよどみなく音を繰り出す超絶技巧に圧倒されました。1音1音が小刻みにゆらぎながら個性的なリズムを刻むのにゾクゾクし、指板の上で弦をおさえる左手を滑らせて鳴らす音はこれ以上無いほどの躍動感で、見た目にもインパクト大!クライマックスではさらに勢いを増し、音盛り盛りで超充実の演奏でした!

カーテンコールで出演者のお2人は何度も舞台へ戻って来てくださいました。水野さんからお客さん達へのごあいさつの後、水野さんから曲名が紹介され、アンコールの演奏に。アンコールは、R.シューマントロイメライシューマンで始まりシューマンで終わる、粋な計らいですね!優しいピアノの響きに乗って、高音域でゆったりたっぷりメロディを歌うコントラバスがなんて素敵なこと!丸みのある音色で感極まるところの良さ!滑らかで優しい響きにうっとりしました。ひょっとすると一番高い音が出る弦1本だけで演奏していらしたかも?私は舞台から遠い席にいたので、違っていましたら申し訳ありません。「歌い、踊り、想うコントラバス!」にどっぷり浸れた、素晴らしい時間をありがとうございます!近い将来、きっと再び札幌にいらしてくださいませ。次はぜひ六花亭本店ふきのとうホールの主催公演で、お待ちしています!


この日の3日前、札幌交響楽団コントラバス奏者・下川朗さんのリサイタルを聴きました。「第135回OKUI MIGAKUギャラリーコンサート 下川朗コントラバスリサイタル」(2023/11/05)。歌心の良さにキレッキレのリズム感、超絶技巧!アルペジョーネソナタコントラバスのための作品たちの演奏はうれしい驚きの連続で、下川さんによる「主役としてのコントラバス」に魅了された、あっという間の2時間でした!

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若手音楽家による演奏会で、大変印象深かったものを1つご紹介します。チェロの水野優也さんがご出演。会場はふきのとうホールです(貸しホールとして)。「PMF REUNION CONCERT VOL.5」(2023/08/21)。弦楽六重奏曲(チャイコフスキーブラームス)とモーツァルト オーボエ四重奏曲。作曲家が伸び伸びと書いた曲たちが、生きた音楽として目の前に現れた事に大感激!「合わせる」を超えた期待以上のすごいアンサンブルでした!

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

第135回OKUI MIGAKUギャラリーコンサート 下川朗コントラバスリサイタル(2023/11) レポート

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奥井理ギャラリーの主催公演で、札幌交響楽団コントラバス奏者・下川朗さんのリサイタルが開催されました。個人的に好きなシューベルトのアルペジョーネソナタコントラバスで聴ける!そしてもちろん下川さんによる「主役としてのコントラバス」の演奏をぜひ拝聴したくて、私は当日を楽しみにしていました。なお当日の会場には一般のお客さんのみならず、札響の団員さん達も大勢いらしていました。


第135回OKUI MIGAKUギャラリーコンサート 下川朗コントラバスリサイタル
2023年11月05日(日)15:00~ 奥井理ギャラリー

【演奏】
下川 朗(コントラバス
仲鉢 莉奈(ピアノ)

【曲目】
A.デサンクロ:アリアとロンド
F.ヘルトル:ソナタ
F.シューベルト:アルペジョーネソナタ

(アンコール)G.ボッケリーニ:エレジー


下川朗さんによる「主役としてのコントラバス」に魅了された、あっという間の2時間でした!オケの時の重低音ベース(こちらもとても素敵ですが)からは想像もつかない、高音で柔らかく歌ったり感情の揺らぎを表現したりの歌心の良さに、時にジャズを思わせるようなキレッキレのリズム感、さらに超絶技巧のすごさも!個人的に楽しみにしていたシューベルト「アルペジョーネソナタ」はもちろんのこと、私にとっては「お初」だったコントラバスのための作品たちの演奏でもうれしい驚きの連続で、最初から最後まで夢中になって聴くことができました。しかも、こんなにすごい演奏の連続なのに、聴く方の私達はリラックスして楽しめたのもうれしかったです。きっと下川さんの親しみやすいお人柄によるものですね!プログラムに掲載されたプロフィールにも、輝かしい経歴の最後にギリギリの残り文字数を使って「犬派」と書かれていて、下川さんはタダモノではないなと(笑)。おそらく「夢は牧場主」は字数が足りなかったから書けなかったのかも?会場にオケの同僚が大勢いても(下川さん愛されていらっしゃる!)、下川さんはプレッシャーを感じるどころか、傍目には力むことなく自然体で演奏していたようにお見受けしました。一見すごそうじゃないのに(超失礼・ごめんなさい!)、実はすごいって、最強ですね!

また仲鉢莉奈さんのピアノも素晴らしかったです!下川さんのコントラバスと音楽の鼓動を共有してリズミカルに、かつ気持ちもシンクロして感情が高ぶったり穏やかになったりと表情豊か。さらに独奏の時はとても輝かしく、存在感抜群!調べたところ、下川さんとは今年の1月にもKitara小ホールでの演奏会で共演されていらっしゃるようです。お互いに信頼関係があって、今回の息の合った演奏につながったのですね!ソロや室内楽等、仲鉢さんの今後のご活躍にも大注目です!

そして、こちらの素敵なギャラリーで生演奏を聴けることのありがたさを私は再確認しました。小さな空間で演奏を間近に感じられるのはとても贅沢!演奏家の息づかいや細かな動作(コントラバスの運指や、超高音を出すときに指板がない場所で弦を押さえている!の気づきなど。凝視してごめんなさい!)までわかるほど、演奏家との距離が近いのも魅力です。大きなガラス窓からは自然光が入り、演奏姿が景色と溶け込むのも素敵!今回は、秋の色づいた木々がキレイな明るい時間から暗くなるまでの色合いの変化を楽しめました。素敵な時間を過ごすために、私はこれからも折に触れて奥井理ギャラリーへうかがいたいと思います。


開演前に、まずギャラリーのオーナーである奥井さん(理さんのお父様)からごあいさつ。今年は雪虫が多いというお話から、雪虫についての詳細な解説になりました。かなり専門的な内容で、私はビックリ!続いて、フルーティストの阿部博光さんのトークに。阿部さんから、奥井さんが高校の生物の先生だった事と奥井さんが書かれた学術書の紹介がありました。道理でお詳しいわけですね!阿部さんはギャラリーのご近所にお住まいとのことで、20年前にギャラリーがオープンした時からご縁があるそう。OKUI MIGAKUギャラリーコンサートには阿部さんご自身も何度も出演されていらっしゃるようです。ギャラリーの建築家についての紹介や、音響に優れているという解説、過去のギャラリーコンサートに多くの札響メンバーが出演した事など、お話は多岐にわたりました。またこの日の会場に札響の団員さん達が大勢いらしている事に触れ、とても良い事と仰っていました。ちなみに阿部さんが日本フィルハーモニーに在籍中に何度か開催したリサイタルには、同僚が来てくれることは滅多になかったそう。「(同僚がたくさん来ているのが)下川さんにはプレッシャーになるかな?いえ、そんなかたではないと思います」と仰ってから、出演者のお2人をお呼びくださいました。お2人を客席は拍手で迎え、いよいよ開演です。

コントラバスの下川さんは黒シャツ、ピアノの仲鉢さんは黒いドレスの装いでした。今回使用されたコントラバスはオケで使うものより小ぶりで(後ほどインタビュー内でもそう紹介がありました)、弦は4弦。下川さんは、座面が高いイスに浅く腰掛けての演奏でした。1曲目は、A.デサンクロ「アリアとロンド」。アリアは、冒頭のコントラバスの重低音が「らしく」て、床から伝わる振動にゾクゾク。ほどなく高音域になり、ドラマチックなピアノに乗って、滑らかに穏やかに歌うコントラバスが素敵!ゆらぐ音が心地良く、まるでチェロのよう、とその時の私は率直にそう思いました。ロンドは、タタッターン♪とノリの良いリズムでのジャジーな音楽がカッコイイ!コントラバスは重低音から高音まで自在に行き来しながら、即興的で生き生きとした演奏。重低音のピッチカートはコントラバス「らしさ」全開で、重低音の響きが振動とともに来てゾクゾクしました。コントラバス小休止のときのピアノが華やか!終盤のコントラバス独奏は、数多の音の連なりをもりもり弾く超充実の演奏がすごい!クライマックスでの高音のトレモロは衝撃的で、コントラバスがこんな音を奏でるなんて!と、私は失礼ながらとても驚き、初めて出会う音に圧倒されました。コントラバス、超男前!私は1曲目から早くも下川さんのコントラバスのとりこになりました。

F.ヘルトル「ソナタ。こちらは下川さんが学生時代に熱心に取り組み、初めての演奏会でも取り上げた、思い入れがある作品とのことです。第1楽章 少し深刻な感じのところでは、ピアノと呼応しながらのリズム感が良くてドキドキしました。滑らかに歌うところでは、ふっとまるくなる高音が艶っぽく素敵!ピッチカートでメロディを奏でたのがカッコイイ!後半ではどんどん情熱的で前のめりな感じになり、ピアノと掛け合いながらガンガン弾くコントラバスに、聴く方もぐいぐい引っ張られていきました。第2楽章 穏やかに歌うコントラバスはなんとも温かく優しく、過去を懐かしむようにも今を慈しむようにも感じられました。中盤の感情が高まったところは、都会的な洗練された印象。ピアノと一緒に高音でフェードアウトしたラストがとても美しかったです!第3楽章 コントラバスとピアノがリズミカルに掛け合う、ノリの良さと勢いある音楽に、聴く方も血が騒ぎました。中盤のゆったりしたところでは、少しだけ登場したピッチカートによるメロディが個人的にぐっと来たツボ。そしてクライマックスでの超絶技巧が圧巻!ありえないほど加速して超高速で音を繰り出すのに圧倒され、目の前で繰り広げられる凄技に私は目と耳が釘付けになりました。すっごい!超充実の演奏に大拍手です!

休憩時間に入る前に、阿部さんから下川さんへのインタビューがありました。はじめに阿部さんは、チェロのような表現力を絶賛。下川さんは、まず(ゲネプロの時もお客さん達が入ってからも)ギャラリーの音響が良い事や、今回演奏会が開催できる運びになった事への感謝、先ほど演奏したF.ヘルトル「ソナタ」についての思い、等をお話されました。コントラバスの曲は「アカデミックなものは出尽くしている感があり、そうではない作品がこれから重要になってくる」といった趣旨の事を仰っていたのが印象に残っています。なお、下川さんのためにコントラバスの作品を作曲してもらえる事があれば「光栄」と、新作を献呈される事にとても前向きでいらっしゃいましたよ。「我こそは」という作曲家のかた、ぜひお願いいたします!下川さんが札響に入団されたのは2019年とのこと。札響については、(オケそのものも本拠地kitaraも)環境が素晴らしいと仰っていました。ただ、冬の雪にはまだ慣れないのだそう。阿部さんも札響の事を「素晴らしいオケ」と仰り、「後半も頑張って下さい」と下川さんを激励して、インタビュー終了となりました。

続けて奥井さん(理さんのお母様)のお話に。「コントラバスはこんなに表情豊か!」と、演奏についての感想の後、理さんの思い出話と理さんが残された詩の朗読がありました。「私達は子を亡くしたけれど、多くの出会いに恵まれた」とも。ちょうど18歳の息子がいる私は、お話も詩の内容自体も胸に来て、さらに理さんのお母様が今の境地に至るまでの事を思うと、こみ上げてくるものがありました。


後半は、F.シューベルト「アルペジョーネソナタ。下川さんご自身による編曲版の演奏です。私が今回拝聴した限りの印象では(もろもろ勘違いでしたら申し訳ありません)、ピアノは原曲そのままで、コントラバスのパートは演奏機会が多いチェロ版より数オクターブ低くして、調性の変更は無かったと思います。また単に平行移動で音を低くしただけではなく、同じフレーズが繰り返されるシーンでの2回目はあえて音程を変えていたり、コントラバス独奏が充実していたりといった、さりげないオリジナリティが感じられました。第1楽章 じっくり足取りを確かめるようなピアノの序奏に続き、低音でそっと登場したコントラバス。強弱の波やトレモロやゆらぐ音で抑揚を付けながら、切なく美しく歌うのがとっても素敵でした!ピアノと呼応しながらの、(ン)タ(ン)タ♪のリズムの良さ。ギターのように弦をかき鳴らす低音のピッチカートがカッコイイ!続くピアノのターンでの高音のピッチカートがまた良かったです!優しく可憐な響き、こんなピッチカートをコントラバスで聴けるなんて!悲しさを吐露するようなところから、コントラバス独奏にハッとさせられ、その後の楽章締めくくりに向かう流れがとても良かったです。前のめりな感じだったのが、次第に炎が消えゆくようにゆっくりになり、今まで登場したフレーズを繰り返しながら高音でフェードアウトする流れにゾクッとしました。そしてジャンジャン♪の強奏で締めくくり。この緊迫感、すごい!第2楽章 穏やかなピアノの和音に乗って、滑らかに歌うコントラバス。まるで歌曲のような美しさでした!コントラバスには全く休符がなかったようで(!)、音楽自体はゆったりでも演奏は細やかに神経を巡らせていた様子。ピアノが沈黙してのコントラバス独奏は、バリトンがゆっくり愛を語っているようで、すごく素敵でした!そのまま続けて第3楽章へ。 ピアノは温かな響きで希望の光が見えるよう。それに乗って穏やかに優しく歌うコントラバスは、ほんの少し切なさを垣間見せるのに色気があって素敵でした。一転して、速いテンポで情熱的に弾くところのシャープなカッコ良さ!中盤の明るいところはリズム感が素敵で、ピアノと一緒にダンスしているようにも感じられました。ピアノのターンでのピッチカートがまたまた素敵!タンタンタン♪と、少ない音で切なく美しく歌う表現力がすごいです!穏やかなところと激しいところが交互に来て、その切り替わりがごく自然で滑らかだったのも印象的でした。ラストは音をのばしすぎず、すぱっと締めくくり。個人的に愛してやまないこの曲を、下川さんと仲鉢さんの愛あふれる演奏で聴けて感激です!下川さんが奏でるコントラバスの表現力に驚愕したのと同時に、歌声あふれる音楽に魅了されどっぷり浸ることができた幸せな時間でした。

カーテンコールで何度も戻って来てくださったお2人。下川さんはごあいさつの後、「せっかくなのであと1曲弾きます」。会場に大きな拍手が起きました。下川さん自らアンコールの曲名を紹介くださり、「短い曲です。本日はありがとうございました」と仰ってから、演奏へ。アンコールは、G.ボッケリーニ「エレジー。優しいピアノの和音に乗って、高音域でゆったり歌うコントラバスが美しい!強弱の波やさらに高音になって消え入る音など、曲線を描くような優しく穏やかな波長に心身が癒やされました。大熱演の後、心穏やかになれるアンコールまで、ありがとうございます!下川さんによる「主役としてのコントラバス」、超素敵でした!リサイタルをはじめ、室内楽やもちろんオケでも、これからのご活躍に大期待です!

ここでも阿部さんから下川さんにインタビュー。語り尽くしていた(!)ようで、既出のトピックを再確認する感じでした。「今後の演奏会のご予定は?」の問いかけには、11/13に賛助出演する演奏会にてシューベルトピアノ五重奏曲「ます」をやります、と宣伝。「低音ならいくらでも弾きます!」と、高音が多かった今回の演奏の大変さが窺えるアピールの仕方をされていました。最後に阿部さんから今後のいくつかの演奏会(今回譜めくりを担当された、新進フルーティスト・金子愛英さんのリサイタルも!)の宣伝とごあいさつがあった後、会はお開きとなりました。


札響メンバーは室内楽でもご活躍です!今まで私が拝聴した演奏会はいずれも素晴らしいものでした。最近のものから、いくつかの弊ブログ記事をご紹介します。

ウィステリアホール プレミアムクラシック 2023シーズン 23rd」(2023/10/29)。信頼のメンバーによる室内楽ブラームスクラリネット三重奏曲とホルン三重奏曲は、作曲家の人生を思わせるものでした。V.ウィリアムズのめずらしい編成の五重奏曲は超充実の演奏!期待を大きく上回る幸せな演奏会でした!

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鈴木勇人 ヴィオラリサイタル」(2023/10/02)。最晩年の作曲家が秘めている純粋さや情熱が感じられた、ブラームスソナタ。丁寧で誠実な演奏による色合いの変化が味わい深く、ヴィオラの良さを再確認しました。共演の野平枝里さんのピアノも素晴らしかったです!

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あかまかるてっと 札幌公演」(2023/07/24)。空間全体がまるで絵画のようなギャラリーにて異空間に旅した1時間半。メンデルスゾーンの充実ぶりや、ウェーベルンの美しさと深み等、独墺の弦楽四重奏曲の数々を優美かつ重厚に聴かせてくださいました。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

ウィステリアホール プレミアムクラシック 2023シーズン 23rd (2023/10) レポート

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ウィステリアホールのプレミアムクラシック。今回は、ピアノの新堀聡子さんと札響メンバーによる室内楽です。ブラームスクラリネット三重奏曲とホルン三重奏曲、そしてヴォーン・ウィリアムズのめずらしい編成の五重奏曲という、演奏機会が少ない演目揃い。当日はkitaraでの注目公演と開催日時が被っていたにもかかわらず、客席は9割近くの席が埋まる盛況ぶりでした。


ウィステリアホール プレミアムクラシック 2023シーズン 23rd
2023年10月29日(日)14:00~ ウィステリアホール

【演奏】
桐原 宗生(ヴァイオリン) ※札幌交響楽団首席ヴァイオリン奏者
小野木 遼(チェロ) ※札幌交響楽団チェロ奏者
白子 正樹(クラリネット) ※札幌交響楽団副首席クラリネット奏者
山田 圭佑(ホルン) ※札幌交響楽団首席ホルン奏者
新堀 聡子(ピアノ)

【曲目】
ブラームスクラリネット三重奏曲 イ短調 作品114
ブラームス:ホルン三重奏曲 変ホ長調 作品40
ヴォーン・ウィリアムズ:五重奏曲 ニ長調クラリネット、ホルンとピアノ三重奏のための)


個人的に愛してやまないブラームスをもっともっと好きになれた、幸せな演奏会でした!信頼のメンバーによるブラームス室内楽ですから、期待ゲージMAXで当日を迎えた私。その期待を大きく上回る素晴らしい演奏に出会えて感激です!ブラームスが特に好んだ楽器たち――自身が名手だったピアノ、演奏経験があるチェロとホルン、朋友ヨアヒムのヴァイオリン、そしてクラリネット奏者ミュールフェルトとの出会いで引退撤回するほど惚れ込んだクラリネット。そのすべてがなんて魅力的なこと!やはりブラームスはこれらの楽器に並々ならぬ思い入れがあった事がうかがえ、おのずと自身の思いを投影していると、私は今回の演奏を拝聴して感じました。作曲家の思いを汲んだ誠実な演奏のおかげで、私は作曲当時のブラームスに思いをはせ、その人生を重ねてしまったほどです(勝手に物語をつけてはいけないのは重々承知の上ですが)。やっぱり私はブラームスが好き!ブラームスを素敵に演奏してくださる音楽家の皆様のことは最大限にリスペクトします!

後半のヴォーン・ウィリアムズの五重奏曲も超充実の演奏で、楽しく聴くことができました。作曲家がどのような考えでこのめずらしい編成にしたのかは不明ですが、様々な楽器が一度に聴ける「お得さ」はもちろんのこと、とにかく明るい音楽の生き生きとした演奏が素敵!聴いていて気分があがりました!しかし演奏する方はとても大変だったことと存じます。メンバー全員がこの作品に取り組むのは初めてで、しかも他ではまず見られない編成。それを限られた準備期間で習得し、さらにリズム感も勢いもある熱量高いアンサンブルにて、私達に聴かせてくださいました。ありがとうございます!こんな出会いは素直にうれしいです。あと、これは私の感じ方なので参考までに。後半の五重奏では、全員合奏の際にホルンの音がかき消された?と感じるところが部分的にありました。おそらくこのホールにて金管を大音量で鳴らすと音が割れてしまう(と私は思っています)ため、音量を絞りホールに最適な音にて演奏くださったのでは?(違っていましたら申し訳ありません)。大ホールとは勝手が違う上に、ホールの特性に合わせて常に音量をコントロールしての演奏は、きっと並大抵の事ではなかったと存じます。しかし最初から最後まで安定した、柔らかで美しい響きを保っての演奏でした。プロのお仕事とはいえ頭が下がります。加えて管弦楽作品での咆哮とはまた違った、室内楽ならではの繊細な表現によって、ホルンの魅力をたっぷり味わうことができました。重ねてありがとうございます!


出演者の皆様が舞台へ。ピアノの新堀さんはエメラルドグリーン色のドレス、男性奏者の皆様は黒シャツの装いでした。すぐに演奏開始です。1曲目は、ブラームスクラリネット三重奏曲 イ短調 作品114」。席順は舞台に向かって左側にクラリネット、右側にチェロ。第1楽章 冒頭チェロと続いたクラリネットの、暗闇の中でかすかに灯がともったような音色の良さ!早速心掴まれました。運命の動機のようなピアノの低音にドキドキ。次の展開までの間、クラリネットがごく小さな音を切れ目無く伸ばし続けていたのがすごいです……もしかして息継ぎナシ!?ピアノの強奏からの情熱的な展開では、クラリネットをチェロが追いかけ、ついに重なるのがアツイ!それでも若い頃の作品とは違い、熱いだけではなく、時に暗さやためらいを感じるシーンも。クラリネットとチェロが鏡映しのように感情を共有して、細かなニュアンスの変化でほんの少し幸せそうだったり寂しげだったりを演出していたと私は感じ、その感情の機微と移り変わりがとても面白くて引き込まれました。第2楽章 ゆったりメロディを歌うクラリネットの素朴な美しさ!それに優しく寄り添うチェロ&ピアノの良さ!1拍毎に入る休符に(演出として)慎重さが感じられたのが印象的でした。クラリネットとチェロがゆっくり会話した後は、一緒に穏やかに歌い、次第に幸せな感じに変化していく流れが素敵!支えるピアノは胸の高鳴りのよう!第3楽章 ピアノの(ン)タッタ♪のリズムに乗って、クラリネットとチェロが手を取り合いダンスしているような、幸せな音楽が心地よかったです。ピアノの(ン)タッタ♪は一辺倒ではなく、穏やかなところもあれば少し感情が高ぶるところもあり、その繊細な変化が素敵でした。第4楽章 厚みあるピアノに乗って、チェロ、続いてクラリネットが切なく歌うのがとっても素敵で、それぞれの楽器のソナタ第3番とも呼べそうな充実の演奏でした。そんな個性がぶつかる三重奏の情熱的な盛り上がりがカッコイイ!クラリネットとチェロが足並み揃えてピアノと呼応しながら進むところは、絶妙な間合いで生きた鼓動が感じられたのが良かったです。再び情熱に火がついたような、終盤の盛り上がりがドラマチックで圧倒されました。創作意欲を失っていた晩年のブラームスが、クラリネット奏者のミュールフェルトに出会い情熱を取り戻した。まさにそのドラマを目の当たりにしたような、心震える演奏でした!

2曲目は、ブラームス「ホルン三重奏曲 変ホ長調 作品40」。席順は舞台に向かって左側にヴァイオリン、右側にホルン。第1楽章 はじめの穏やかに歌うヴァイオリンが素敵すぎました!ブラームスは、ヴァイオリンソナタ第1番よりもずっと前にこんなに美しいヴァイオリンのためのメロディを書いていたんですね!メロディを引き継いだホルンは、牧歌的な響きが優しく美しく、木管楽器のようにも感じられました。ホルンとヴァイオリンが重なると、明るさに少し陰りが見えて、ぱっと激しくなり(議論白熱!?)、静まってからのホルンが音を長くのばすのがすごい……もしかして一息で吹ききりました!?優しいピアノに乗って、独り言のように歌うホルンの温かさ、それにそっと寄り添うヴァイオリンの優しさ!ヴァイオリンは陰に陽にホルンを支えていたように感じられ、寂しげだったホルンが次第に明るくなっていったのが素敵でした。第2楽章 タタタタ……と駆け足のピアノの序奏が助走となり、思いっきり飛躍したようにホルンとヴァイオリンがパワフルに登場。聴いている方も一気に気分があがりました!まっすぐな情熱がまぶしい!ヴァイオリンはホルンに併走しながらも、時折入る重音やトレモロや装飾音が存在感あって、とても華やか。またホルンがピアノの序奏と同じように音を細かく区切りながら(タンギング?)高速演奏したのには驚かされました。こんなホルンは新鮮!中間部の穏やかなところでは、物憂げなホルンとピアノが印象的でした。第3楽章 ピアノの序奏は、ギターをかき鳴らすような響き。悲劇的でゾクッとしました。一人語りのように歌うホルンは、大泣きはしなくとも深い悲しみを感じさせ、とても引き込まれました。そのホルンを支えるヴァイオリンとピアノの良さ!ヴァイオリンとピアノの音色の変化によって、静かに涙したり時には慟哭したりといった感情の移り変わりが絶妙に表現されていたと私は感じました。そして再び明るくなる第4楽章へ。 タタタタ……と駆け足のリズムで、うんと華やかに盛り上げてくる強奏の潔さ!三者が一緒に駆け抜けた演奏から、ヴァイオリンが沈黙してからのホルンの歌い方が素敵!悩みながらも前へ進む事を決意したような、次第に明るくなっていったのが印象的でした。クライマックスでの三者が一体となった情熱的な盛り上がりは圧巻!苦悩が多かった若き日のブラームスに、寄り添い時に鼓舞する朋友ヨアヒムがいた事。それを私は強く認識し、胸が熱くなった演奏でした!

後半。演奏に入る前に、ピアノの新堀さんとクラリネットの白子さんによるトークがありました。お2人で「前半、重かったですね」(!)。会場が和みました。後半のヴォーン・ウィリアムズの作品はめずらしい編成の事もあり、今回のメンバー全員が初めて弾くとのこと。聴くのも生演奏では初めてのかたが多いのでは?という問いかけに、会場はうんうんと頷いていたようでした。なお、ヴォーン・ウィリアムズにはもう一つのピアノ五重奏曲(帰宅後に調べたところ、編成はピアノとヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスシューベルトの「ます」と同じですね)があり、そちらは比較的演奏機会が多いそう。今回のニ長調の五重奏曲について、白子さんは「思っていたより良い曲」「(ピアノも弦も木管金管も)全部楽しめるのがお得」と感じたとのことです。新堀さんが「(演奏するのは)最初で最後かも?ぜひ楽しんでください」と仰って、トーク終了となりました。

ヴォーン・ウィリアムズ「五重奏曲 ニ長調クラリネット、ホルンとピアノ三重奏のための)」。今回の出演者5名全員が揃っての演奏です。席順は舞台に向かって左からヴァイオリン、クラリネット、ホルン、チェロでした。第1楽章 冒頭、ピアノに乗ってクラリネット続いてヴァイオリン&チェロが登場。その伸びやかで美しい響きに私は空の広がりをイメージしました。ホルンの一声を皮切りにピアノが力強くドラマチックになり、まるでブラームスのような重厚さに!またピアノの間奏を挟む度に、シーンが切り替わっていたと私は感じました。流麗な流れの中で、クラリネットとホルンがピアノと足並み揃えて音を切る演奏(タンギング?)したり、弦が高音で滑らかに美しく歌ったり、他の楽器が沈黙する中でホルンの独奏(孤高な感じにハッとさせられました)があったり。また、クラリネットにはヴァイオリン、ホルンにはチェロが寄り添う事が多かったと思います。その弦によるさりげないアシストが素敵でした。ユニークな編成に、はじめこそやや戸惑った私ですが、ピアノ三重奏の発展形と考えると追いかけやすかったです。ピアノの穏やかな和音に乗って、クラリネットとホルンが長く音をのばし、弦がピッチカートやごく小さな音で支え、フェードアウトする楽章締めくくりが温かで優しい感じ。第2楽章 ジャーン♪の全員合奏を合図に、シリアスなシーンとそれを茶化すシーンが交互にくるのが面白く、「真面目に不真面目」を地で行く職人技の演奏(崩壊するとカオスになりそう)にやられました!部分的には、チェロの妖艶な演奏に心掴まれたり、ヴァイオリンのツィゴイネルワイゼンのような音階駆け上りに圧倒されたり、しかし一方でクラリネットのコミカルな響きにほっとしたり。シリアスでもそうじゃなくても、リズム感がすごく良かったです!第3楽章 穏やかなピアノに乗って、伸びやかに歌うホルンが美しい!他の楽器が加わるとさらに優しく美しく、心洗われるよう。中間部の激しいところでは、パワフルなクラリネットが存在感抜群でした!ホルンの消え入る音から、そのまま続けて第4楽章へ。 祭り囃子にも似た、陽気な音楽が楽しい!イギリスのパブで即興演奏が始まったかのような自由な感じで、スピード感とノリの良さにぐいぐい引っ張られていくのが快感でした。音盛り盛りで快活なピアノに、高速で華やかな弦、コロコロ歌うクラリネット、音を区切りながらパワフルに歌うホルン。息つく間もない盛り上がりで、全員合奏でパワフルに駆け抜けたラストまで、超充実の演奏!めずらしい編成の曲をすごい演奏で聴くことができて感激&超面白かったです!

拍手喝采の会場に、出演者の皆様は何度も戻って来てくださいました。今回アンコールはナシで会はお開きに。超重量級の室内楽を3つも、充実の演奏で聴かせてくださり、ありがとうございました!これからも室内楽の充実した演奏をぜひ!期待ゲージMAXでお待ちしています♪


1年半ほど前の公演になりますが、ブラームスクラリネット五重奏曲が聴けた演奏会です。クラリネットの白子正樹さん、ヴァイオリンの桐原宗生さん、チェロの小野木遼さんが出演されています。「Kitaraアーティスト・サポートプログラムⅡ>2人が最後に愛したクラリネット五重奏曲~モーツァルトブラームス」(2022/03/14)。表情豊かなクラリネットと、やさしい響きの弦。晩年にクラリネットを愛した2人の作曲家の名曲を、札響メンバー5名による愛あふれる演奏で聴けた、素晴らしい演奏会でした!

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めずらしい演目が並んだ会はこちらも。Kitara小ホールでの演奏会で、ピアノの新堀聡子さんが出演されています。「札幌・リトアニア文化交流コンサート」(2023/08/28)。リトアニアの大スター・ミシュクナイテさんの圧倒的なお声と表現。信頼のメンバーによるピアノと弦。「歌の国」リトアニアの精神に触れ、その音楽にどっぷり浸れた幸せな時間でした。

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ウィステリアホール5周年記念事業 ジングシュピールファウスト」(2023/05/28)。ミニマムなキャストと仕掛けによる、歌とお芝居で作るオリジナル舞台。魅力的な登場人物と音楽に心揺さぶられ、壮大な世界にどっぷり浸れた得がたい体験でした。再演&映像作品化をぜひ!

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

クァルテット・エクスプローチェ Quartet Explloce TOUR 2023 札幌公演(2023/10) レポート

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チェロ四重奏のクァルテット・エクスプローチェが、昨年の初来札に続き今年(2023年)も札幌に来て下さいました!札幌は、全国6カ所(札幌・福岡・広島・大坂・名古屋・東京)で行うツアー2023の初回公演。昨年の公演でクァルテット・エクスプローチェに惚れ込んだ私は、今年もワクワクしながら当日を迎えました。なお当日の客席には、一般のお客さん達のみならず、地元札幌で活躍するチェリストの皆様も大勢いらしていました。


クァルテット・エクスプローチェ Quartet Explloce TOUR 2023 札幌公演
2023年10月23日(月)19:00~ ふきのとうホール

【演奏】
市 寛也(N響チェロ奏者)
髙木 慶太
辻本 玲(N響首席チェロ奏者)
森山 涼介(都響チェロ奏者)

【曲目】
J.S.バッハ(ヴァルガ編):シャコンヌ

S.ラフマニノフ小林幸太郎 編):プレリュード ト短調 op.23-5
R.ワーグナー:歌劇「ローエングリン」より エルザの大聖堂への行進
 ※配布されたプログラムには「歌劇『タンホイザー』より 『婚礼の合唱』」と記載されていましたが、後日公式X(旧ツイッター)にて訂正のお知らせがありました。

A.タンスマン:4本のチェロのための2章

C.ガルデル(鈴木崇朗 編):首の差で
A.ピアソラ小林幸太郎 編):アディオス・ノニーノ
A.ピアソラ小林幸太郎 編):天使の死

A.L.ウェバー(小林幸太郎 編):ミュージカル「オペラ座の怪人」より

(アンコール)V.アザラシヴィリ(小林幸太郎 編):無言歌


「響炎する4本のチェロ」の完全燃焼に身も心も焦がされた、熱いアツイ夜でした!やっぱりクァルテット・エクスプローチェは半端なくカッコイイ!4名ともそれぞれ魅力的な音をお持ちの「推せる」チェリストなのに加え、カルテットになると驚異の一体感と誰一人遠慮しない全力の演奏で私達を魅了。大学時代からの気心知れた間柄という4人は、トーク等の演奏以外の時は和気あいあいとした雰囲気でした。しかしいざ演奏となると、4人の間にピンと空気が張り詰め、演奏中は(演出としての揺らぎはあっても)4人の絶妙なバランスで空気をきっちりコントロール。加えてお互いの信頼関係があるからこそ、思い切り行くときは清々しいほど全力!そこから生まれる音楽は、熱く流れる血が脈打ち、厳しさや艶っぽさや甘さといった感情がとてもリアルに感じられ、まさに生きているようでした。それを五感で体感できる喜び!今年もクァルテット・エクスプローチェに会えてよかった!今回の熱さめやらぬ中、私は早くも来年の公演が待ち遠しくなっています。来年度のツアーにもきっと札幌が組み込まれまように!

定番のシャコンヌでは、堅牢なアンサンブルが創り出す世界はまるで宇宙空間のように感じられました。またチェロカルテットのためのオリジナル作品ではチェロの「らしい」魅力を、ワーグナーの楽劇やアンコールの無言歌では優しく美しい世界を見せてくださり、ラフマニノフピアノ曲とタンゴの数々では「生きた音楽の鼓動」に胸の高鳴りが止まらない!そして今回の目玉である「オペラ座の怪人」は、ミュージカルのシーンが目の前に浮かぶようなカラフルで超充実の演奏。とても聴き応えあり、最高に面白かったです!この場限りなのは実にもったいない。ぜひ「オペラ座の怪人」はじめ今回初登場の演目たちを収録した2枚目のCDリリースを!生演奏至上主義の私ではありますが、ライブの思い出を胸に、記念としてCDを手元の置いて繰り返し聴きたいです。お待ちしています!


クァルテット・エクスプローチェの皆様が舞台へ。皆様の衣装は黒シャツでした。すぐに演奏開始です。なお、演目毎に席順(第1奏者から第4奏者まで)が入れ替わり、役割分担は演目によってフレキシブルでした。1曲目は、J.S.バッハ(ヴァルガ編)「シャコンヌ。原曲は無伴奏ヴァイオリンですが、ヴァルガ編曲のチェロ四重奏版はチェロカルテットにとって重要なレパートリーになっていますね。クァルテット・エクスプローチェにとっても大切な作品で、演奏会では必ず取り上げる曲のようです。ちなみにCDの1曲目に収録されています。最初からガツンとくる厳格な響きにしびれる!重厚な音の重なりはチェロ四重奏ならでは!4名でメロディを順番に受け渡していく流れでは、主役が次々と交代するのが鮮やかすぎて、「まるでソロ演奏のよう」と率直に思った私。しかし4名それぞれが個性的な音をお持ちで、それぞれの良さを味わえるのはソロ演奏にはない良さですね!またメロディと呼応する、支える側の演奏がぴたっとハマるのも素敵で、(独奏である原曲には存在しない伴奏部分なのに)まるでバッハ自身が書いたよう!とも感じました。張り詰めた空気に、がっちりした積み重ねは、職人技の安定感。そして中盤の穏やかになるところでは、その美しさにハッとさせられ、とても純粋な祈りのようにも感じました。重音×4のなんて贅沢で温かな響き!そこから少し駆け足になるところは、希望の光が見えるようで、私は胸が熱くなりました。CDで繰り返し聴いてきて、昨年の演奏会で一度実演に触れているにもかかわらず、です。やはり生演奏の感激はその場限りの貴重なもの!そして再び厳格になる終盤からラストまでの重厚さ&堂々たる風格が素晴らしかったです。4人が創り出す世界に没頭した、15分ほどの演奏時間はあっという間。そのスケールの大きさは、まさに宇宙空間を旅したようでした!最初から大トリのようなすごい演奏!私は心震えたのと同時に、クァルテット・エクスプローチェが札幌に帰ってきてくれた!と実感して、うれしくなりました。

ここで髙木さんがマイクを持ち、ごあいさつとトーク。「東京との気温差に驚いています」と仰って(そうですよね!)、早速メンバー紹介へ。お名前と所属、そして(自分または実家で)飼っているペットという内容でした。はじめに「市くんは実家で犬を飼っています」と髙木さんが紹介したところ、市さんがすかさず「しんじゃった」……なんだか微妙な空気になりました(苦笑)。次に紹介された森山さんは猫を飼っていて、「生きてます」と強調。なんか良かったです(笑)。なお、辻本さんは実家で猫を飼っているそうで、髙木さんは「猫を2匹飼っています」と胸を張って仰っていました。それにしてもネコ率高し!また髙木さんが読響を退団した事については、「自分の意思」であり、「やめさせられたわけじゃないですよ!」。そのお話ぶりに、会場が和みました。

続く2曲はいずれも今回初登場!続けて演奏されました。はじめはS.ラフマニノフ小林幸太郎 編)「プレリュード ト短調 op.23-5」。原曲はピアノ独奏です。ステップを踏むようなリズムにゾクゾクし、盛り上がりでの情熱的な演奏がぐっと来ました。悲しげなメロディのインパクトはもちろんのこと、それを支える側のタタタンタンタン♪のリズムがカッコイイ!また中盤では、ステップがターンになったような変化で、鮮やかに艶やかに歌うのが素敵!少しずつフェードアウトし、ラストは4人揃っての繊細なピッチカートの1音。ぱっと燃えさかった情熱の炎がふっと消えたようで、とても印象的な締めくくりでした。リズムがとても素敵な、まるで舞曲のような音楽を楽しめました。

続いて、R.ワーグナーの歌劇「ローエングリン」より エルザの大聖堂への行進(※編曲者は記載なしでした)。原曲は楽劇(管弦楽と声楽)で、帰宅後に少し調べたところ、吹奏楽アレンジの演奏機会が多い曲のようです。祈りのような、穏やかで温かな響きが素敵!ゆったりとしたメロディはどこか切なくて、「お花畑」なウキウキ感とは違った複雑な内面を表しているようでした。それに寄り添うあと3つのチェロは、穏やかに対旋律を奏でていたり、メロディをさりげなく追いかけていたりと、とても優しい感じ。極めつけは、主役が感極まったところでの、2つのチェロによるトレモロ&1つのチェロによる優しいピッチカート。この包容力、まさに愛ですね!ラストの消え入る高音の余韻まで美しかったです。ちなみに有名なワーグナーの結婚行進曲(おそらく同じ「ローエングリン」の「婚礼の合唱」)のタータータター♪のメロディが終盤ほんの少しだけ登場して(髙木さんが囁くように演奏されていたと思います)、私は「お!?」となりました。このスタイルにしたのは、チェロカルテットのオリジナル曲であるクレンゲル即興曲 op.30」(終盤にメンデルスゾーンの結婚行進曲が登場します)のオマージュなのかも?(違っていたらごめんなさい!)。チェロの美しい響きと表現力の深さをたっぷり堪能できた演奏でした!

ここで森山さんによるトークが入りました。チェロ四重奏のオリジナル作品は少なく、演奏会はそれだけでは物足りないので、「チェロ4本に合うんじゃないか?」と思える曲を編曲してもらっている、とのこと。次に登場するA.タンスマンは、現在残されている作品は少ないのだそう。しかし今回の演目はチェロ四重奏のために書かれた曲だけあって、チェロの響きを考えて作られているのが魅力、と仰っていました。また、ロビーでクァルテット・エクスプローチェのCDを販売しているとの案内もありました。スマートなお話ぶりでも、宣伝は忘れない(笑)。さすが、抜かりなしですね!

前半最後は、A.タンスマン「4本のチェロのための2章」。今回の演目の中では唯一、チェロカルテットの編成のために書かれたオリジナル作品で、2楽章で構成されています、とトークの中で解説がありました。第1楽章 ゆったりかつ滑らかに流れる音楽は、しかし緊迫感がある不思議(と私は感じました)。例えるなら、景色を愛でながら森に入ったら、どんどん深く暗いところへ迷い込んでしまったような?一定のテンポを保ちつつ、4名とも一瞬たりとも休む間はなく、じっくりゆっくり弓を動かしていたのが印象的でした。第2楽章 前の楽章からガラリと変わって、こちらはアップテンポで即興的な演奏でした。ジャズっぽい(?)キャッチーなメロディを、ユニゾンで艶っぽく弾くのが超カッコイイ!次々とメロディをリレーしたりピッチカートやトレモロを繰り出したりと、前のめりな勢いある演奏がすごい!作曲家の名前からして私には初耳だったこちらは、短いながらもチェロの職人技とカッコ良さ盛り盛りで、聴き応えある演奏でした!ポッパーやクレンゲルだけじゃない、チェロのための隠れた名曲に出会えたのもうれしかったです。


後半。はじめは、C.ガルデル(鈴木崇朗 編)「首の差で」。帰宅後に少し調べたところ、元々は映画の劇中曲で、フィギュアスケート浅田真央さんがエキシビションで使った事でも知られている作品のようです。穏やかで幸せな感じのところでは、曲線的な響きになんとも色気があって素敵でした。そして情熱的で激しいタンゴが超カッコイイ!2つのチェロが絡み合うように艶っぽく歌うのは、まさに男女2人がタンゴを踊っているよう!あと2つのチェロがピッチカート等で支え、その組み合わせはフレキシブルに変化。勢いとテンポを生かしたまま役割を次々とスイッチし、4人のバランスが絶妙!それぞれの重なりで色合いが少しずつ変化するのも面白かったです。弦を細かく動かして力強く刻むタタッタッタ♪のリズムがアツイ!胸焦がされるメロディとドキドキするリズムにどっぷり浸れたひとときでした。

タンゴ続きで、CD収録曲からピアソラの曲が2つ取り上げられました。はじめはA.ピアソラ小林幸太郎 編)「アディオス・ノニーノ」。緊迫感あるところと穏やかなところが交互に来るスタイルで、緊迫感も滑らかさも地続きと感じられる、生き生きとした演奏が超素敵!またここでは弦を押さえる手を滑らせながら音階を変える演奏が何度か登場し、目で見ても楽しい演奏でした。しかしそれが2人同時に来た時は(1人が音階駆け上り、もう1人が逆に音階を下る)、私はどちらを追いかければいいかわからず軽くパニックに。内緒です(たぶん私だけなのでちょっと恥ずかしい・笑)。

続いて、A.ピアソラ小林幸太郎 編)「天使の死」。キレッキレのリズムに、チェロ本体を打楽器のように叩く音が小気味よく入り、超絶カッコイイ演奏にドキドキしました。穏やかではないタイトルなのに、中間部の柔らかで清らかな歌の美しさに思わずほっとしたりも(いいのかしら?と戸惑いつつ……)。加速して駆け抜ける締めくくりまで、テンポ良く勢いがある妖艶な音楽にドキドキゾクゾクさせられっぱなしでした。あと個人的に録音を聴いたときから気になっていた「キュイキュイ♪」の高音の出し方を、今回ついに実演で知ることができました!どうやら弦を指先で強く擦って発している?リアルに火花が散っているようにも見えて、指先が切れそう(もしかすると実際に切っていたかも?)、ああ痛そう……と、見ていて率直に思いました。しかし痛手を負いながらも(!?)、何事も無かったかのように勢いを止めることなく弾ききったのが素晴らしいです!プロのお仕事とはいえ頭が下がります。

ここで辻本さんによるトークが入りました。「タンゴが終わりました」「小話をしたいと思います」。こ、小話……!全国ツアーは4名の出身地を基本に回るそうで、明日は(市さんの出身地)福岡に行きます、というお話から、メンバーの役割分担についての話になりました。市さんは「しっかり者」で、ほとんどすべて(!)の事を引き受け、また総指揮を担当しているとのこと。髙木さんは、ホールを取る係で、これは半年から1年前に動く必要があり「結構大変」と仰っていました。また辻本さんご自身については「あんまり働いていない」とご謙遜。それでも、写真を撮ってSNS更新をやっています、とは仰っていました。ラストの森山さんについては「ご覧の通りのイケメンです」(!)と、役割分担とは関係なさそうな紹介から入りました。森山さんは「譜面管理(ライブラリアン?)」と「(事前にネットで調べてお店を予約する)グルメ担当」だそうです。しかし続けて、「でも(森山さんは)刺身食うときすごく醤油をつけるんですよ!泳がせる、って言うてましたけど、舌バカなんじゃないかと」と、大坂人のノリでケチョンケチョンに言っていました。会場は大ウケ。えええ辻本さん、イケメンに何か恨みでも!?(笑)。でもでも、こんなに超絶カッコ良くチェロを弾く皆様、4名とも超イケメンでいらっしゃいますよ!そしてこの後の演目である「オペラ座の怪人」についてのお話に。多くは語らず、「歌っていいなーと思って弾きます。よろしく」と締めくくり、演奏に移りました。

いよいよ今回の目玉です!A.L.ウェバー(小林幸太郎 編)のミュージカル「オペラ座の怪人」より。なお私は原曲をよく知らないため、以下の劇中曲タイトルは間違っていましたら申し訳ありません。最初に「メインテーマ」がガツンと来ました!全員のユニゾンによる重低音のド迫力がビリビリくる!地鳴りのような重低音、パイプオルガンのような厳かさ。そんな底力ある音で奏でるキャッチーなメロディがとてもドラマチックで、ゾクゾクしました。続いて「シンク・オブ・ミー」。辻本さんのチェロが歌うメロディは、前向きな思いに少しの切なさが感じられる味わい深さ!支える側のタンタターン♪の繰り返しは、気持ちを優しく鼓舞するようで素敵でした。「エンジェル・オブ・ミュージック」での、チェロの深みある音による、跳ねるようなリズムの愛らしさ!そしてこの後に続いたラブソング(「オール・アイ・アスク・オブ・ユー」でしょうか?)が最高に素敵でした!メインで歌ったのは森山さんのチェロ。甘い音色での歌、なんて美しい……!この優しさ包容力に私はすっかり魅了されてしまいました。最初の厳しさからは想像もつかない、柔らかで優しい音。皆様そうですが、本当に引き出しが多くていらっしゃいます!華やかなところ(「マスカレード」でしょうか?)を経て、「メインテーマ」再び。しかし最初の時よりもさらにパワフルかつ勢いがある、テンション盛り盛りMAXな熱い熱い演奏に!威厳あるメロディを速いテンポでガンガン弾いていくのに圧倒されました。またそのメロディを支えていた、グオングオンと激しく鳴らし続ける重低音のベースがすごすぎて!主に髙木さんが担当されていた、このベースがド迫力の源流とも感じました。誰一人遠慮しないでぶつかり合った上で、どこまでも高みに連れて行ってくれる、ものすごい演奏!これを全身全霊で体感できるのはまさにライブの醍醐味!ラスト直前では、二重奏で囁くようになったのにハッとさせられ、ラストは四重奏でビシッと締めくくり。すごいものを聴かせて頂きました!編曲も演奏自体もめちゃくちゃカッコイイ!超充実の音楽をありがとうございます!

カーテンコールを経て、市さんによるごあいさつとトークがありました。演奏したばかりの「オペラ座の怪人」は、演奏に休みがなくずっと弾き続けるため、楽譜は4枚開きになっているそうです。続いて、「また聴きたいというかたは」、プログラムの裏表紙に掲載されているQRコードスマホで読み込むと、クァルテット・エクスプローチェのLINE公式アカウントにアクセスできる旨の案内。最新情報をチェックしてください、と仰っていました。自主公演のため、あの手この手の宣伝を模索していらっしゃる様子。それにしてもLINE公式アカウントとは、イマドキですね!私も早速「友だち追加」しました!また次の日は福岡に行く事に関連して、昨年は余裕で取れた札幌からの直行便が今年は(おそらく旅行者が増えて)取れなかった(!)というお話がありました。チェリストの場合はチェロの席も必要となるため、4人で移動するとなると合計8席(!)取らなければならないとか。今回は結局羽田で乗り継ぐ形になったそうです。ああ飛行機代が余計にかかってしまったこと、札幌市民としてなんだか申し訳ないです……。しかし「来年についてはまだ決まっていないけど、(札幌に)帰ってきたい」とも仰って下さいました。ありがとうございます(感涙)!

市さんからアンコール曲の紹介があり、アンコールはCD収録曲からV.アザラシヴィリ(小林幸太郎 編)「無言歌」。大好きな曲、キター!今回の公演、CD収録曲の1曲目(シャコンヌ)から始まり、アンコールにはCD収録曲の最後の曲(無言歌)を持ってきたんですね。なんて粋な計らい!演奏は、まさに歌詞の無い歌のようで、チェロによるゆったり優しい歌に私はうっとり聴き入りました。メロディ担当、ピアノの和音のように同じ音の並びを繰り返す担当、ぐっと重低音のベース担当、高音で彩る担当と、4人が別々の役割をしながらも当然のように1つの音楽になる、アンサンブルの素晴らしさを改めて実感。メロディを順番に受け渡していく流れでは、4人それぞれの個性ある音色を味わえてうれしかったです。熱いアツイ本プログラムの後に、こんなにも優しく美しい歌のアンコールまで、ありがとうございます!

終演後、ロビーではクァルテット・エクスプローチェの皆様がお客さん達との歓談に応じていらっしゃいました。私はどなたにもお声がけできないまま失礼してしまいましたが、既に持っているCDを持参してサインを頂けば良かったと帰宅後に後悔……。ぜひ来年(来て下さることを信じて!)は遠慮無くお近づきできるよう、グッズ販売(今回のツアーでは翌日の福岡公演からで、札幌会場には準備が間に合わなかったようです)やサイン会の実施がありますように。お待ちしています!


2016年7月リリースのCD「クァルテット・エクスプローチェ~響炎する4本のチェロ~」。私は昨年の出会いから文字通りすり切れるほど聴いています。今回はCD収録曲から何曲も実演で聴けて、超うれしかったです!今後、他の演目もぜひ積極的に演奏会で取り上げてくださいませ。そして、2枚目のCDがリリースされます事を切に願っています!

※以下のリンク先で試聴および単品購入ができます。

www.e-onkyo.com


クァルテット・エクスプローチェのメンバーのうち3名が弦楽アンサンブル「石田組」の組員!この日の9日前に開催された網走公演では、チェロの髙木慶太さんがご出演され、トークでも大活躍されていました♪「石田組 2023-24 アルバム発売記念ツアー 網走公演」(2023/10/14)。公演数日前に決めた遠征。やはり組の面白さはリアルに体感しなくちゃわからない!本気のパフォーマンスにネタ付きアンコール4つ、お見送りまでサービス満載!わずか2週間前(10/1の札幌公演)に出会った石田組に、2度目の体験にしてすっかりとりこになりました。

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

最後までおつきあい頂きありがとうございました。

石田組 2023-24 アルバム発売記念ツアー 網走公演(2023/10) レポート

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札幌での石田組初体験の熱冷めやらぬ中、私は公演数日前に参戦すると決めて(ANAのトクたびマイルさまさまです♪)、網走に遠征しました。なんと夫と小5の娘も一緒です!あっという間に迎えた当日。自由席のため、既に開演1時間前には入場を待つお客さん達の長蛇の列が出来ていました。お客さんは地元のかたがほとんどで、一部遠征組もいた様子。私がざっと見た限り、キャパ約1000名の市民会館の8割ほどの席が埋まっていました。


石田組 2023-24 アルバム発売記念ツアー 網走公演
2023年10月14日(土)14:00~ 網走市民会館

【出演】
石田組メンバー(編成は弦のみで3-2-2-2-1)
 1stヴァイオリン : 石田泰尚 / 塩田脩 / 伊東翔太
 2ndヴァイオリン : 佐久間聡一 / 田村昭博
 ヴィオラ : 古屋聡見 / 小中澤基道
 チェロ : 江口心一 / 髙木慶太
 コントラバス : 米長幸一

【曲目】
グリーグ:2つの悲しき旋律 op.34
ラター:弦楽のための組曲
グリーグ:ホルベルク組曲op.40
バルトーク(ウィルナー編曲):ルーマニア民俗舞曲

シルヴェストリ(松岡あさひ編曲):バック・トゥ・ザ・フューチャー
モリコーネ(近藤和明編曲):ニュー・シネマ・パラダイス
レッド・ツェッペリン(松岡あさひ編曲):天国への階段
オアシス(松岡あさひ編曲):ホワットエバ
クイーン(松岡あさひ編曲):ボーン・トゥ・ラブ・ユー

(アンコール)
見岳章(松岡あさひ編曲):川の流れのように
ファリャ:火祭りの踊り
ビゼー:「カルメン」より 第1幕への前奏曲
松山千春(松岡あさひ編曲):大空と大地の中で

※アンコール曲については、会場での掲示や公式発表が見つけられなかったため、編曲者は私が分かる範囲で記載しました。曲目自体は合っていると思います。


いやあなんて楽しいの!「会場とメンバーが変わることで毎回違った面白さがある」とか理屈を言う以前に、やはり「石田組」の面白さはリアルに体感しなくちゃわからない。思い切って遠征して本当に良かった!私はわずか2週間前に出会った石田組に、2度目の体験にしてすっかりとりこなりました。なお、成り行きで一緒に参戦することになった夫と娘もそれなりに楽しんでいたようです。もっとも、私の熱狂ぶりを見るのが面白かった面もあるようですが(大汗)。自分ではかしこまって聴いているつもりでも、傍目には大興奮しているのがバレているんですね……。だってこんなに楽しいんだもの、仕方ない!しかしこれからは周りのご迷惑にならないよう、出来るだけクールビューティを装うよう心がけます。できるだけ!

今回の主催は「網走市クラシック音楽鑑賞会実行委員会」によるもので、一般3500円、高校生以下1000円のサービス価格にて楽しませて頂きました。地元の方のための会に、遠方からお邪魔してしまい恐縮です。ただ私が言うのはおこがましいですが、今回含め地方公演では、地元のお客さん達がとても熱心に聴いていらっしゃるのが本当に素晴らしいといつも思います。演奏の合間(楽章間にあたるタイミング)に拍手が起きるのはご愛敬。心からの素直な拍手は素敵です。地元のお客さん達が楽しんでいらっしゃる様子を拝見すると、供給過多かもしれない札幌で贅沢している身としては、我が身を振り返り反省することしきり。私も一期一会の出会いをもっと大切にしていこうと、改めて思いました。そんな地元のお客さん達の期待に、サービス満載でこたえてくださった石田組の皆様。本当にありがとうございます!本プログラムの本気のパフォーマンスだけでなく、まさかのネタ付きアンコール4つに、コロナ禍で見合わせていたお見送りも復活なんて、感激で泣いちゃいます!加えて、超ご多忙なはずの石田組長はチェロの江口さん(お2人は子供の頃からよく知る間柄のようです)と一緒にアウトリーチ活動もされていたそう。頭が下がります。ますます惚れてまうやろー!

今回の会場となった網走市民会館は、昔ながらの市民会館でした。様々な地域の市民会館を経験してきた私の印象では、音響は良い方だったと思います。それにkitara等のクラシック音楽専用ホールとは違った、ダイレクトに届く音を楽しめるのも市民会館の良いところ。ちなみに開演前のチャイムのメロディは、モーツァルトクラリネット五重奏曲 第4楽章でした。このニッチな選曲、きっとクラシック音楽好きのかたが運営にいらっしゃいますね!


組員の皆様が舞台へ。一呼吸置いてから、石田組長が登場し、拍手で迎えられました。皆様黒シャツの装いでしたが、よく見ると石田組長の黒シャツだけはエリと胸ポケットに紫色のパイピングが施されていて、さりげなくオシャレさん♪配置は舞台向かって左から1stヴァイオリン→2ndヴァイオリン→チェロ→ヴィオラの順に扇型に並び、チェロの後方にコントラバス。チェロ以外は立奏でした。すぐに演奏開始です。1曲目は、グリーグ「2つの悲しき旋律 op.34」。「傷ついた心」は、北海道の冷涼な空気を思わせる、全員合奏による悲しいメロディが美しい!何かを恨んだり憎んだりするのではなく、ただまっすぐに悲しみを受け入れているような、優しい響きが印象的でした。そして後半は有名な「過ぎにし春」。悲しいだけでなく、昔を懐かしむような温かさも感じられました。ヴァイオリンによる超高音のささやきが美しいこと!広大な大地の広がりを思わせるラストの余韻まで、とっても素敵でした!北海道にふさわしい選曲ともちろん素晴らしい演奏による、幸先良いスタートでした。

ラター「弦楽のための組曲。まずサブタイトルの並びからしてコメディ的な展開で面白い!実際の演奏もとっても楽しいものでした。「さすらい」は、跳ねるようなリズムが楽しく、掛け合いや休符の間合いが絶妙で、聴いていてワクワクしました。「私の青い縁切りのボンネット」では、木管楽器がコロコロ歌うような楽しさと、弦楽器らしい澄んだ音色による上品な歌が素敵!石田組長のヴァイオリンと古屋さんのヴィオラの会話が良くて、これはもしかして男女の会話かも?と感じました。「ああ悲しい」は、失恋しちゃったのでしょうか?しかし「この世の終わり」みたいな嘆き方ではなく、素朴な明るさと優しさが感じられる音楽でした。石田組長のヴァイオリンの嘆きを、古屋さんのヴィオラが優しくリフレイン。癒やされます!そして最後は「アイロンをかけまくる」。何かで発散しなきゃやってられないですよね、わかる!舞曲のリズムが楽しく、そのリズムでどんどんアイロンをかけている様子を想像するともっと楽しかったです。家事がはかどっていいわぁ♪このテンポとリズム感の良さは、聴いていてウキウキしてきました。私が知らなかっただけで、「クラシック」のジャンルにも面白い曲があるんですね!こんな演奏との出会いはうれしいです!

グリーグ「ホルベルク組曲 op.40」。札幌公演でも取り上げられた演目ですが、編成が小さくなった(13名→10名)こともあり、奏者が別れて演奏するところは適宜変更されていました。個人的には、札幌と今回の網走とでこの曲の印象がガラリと変化したのにビックリ!あくまで私の感じ方ですが、札幌の方が「宮廷音楽」風なら、今回の網走は「フォークソング」風!編成・メンバーの違いに加えて会場の音響の違いも影響してなのか、同じ曲でもまったく違う印象できこえたのがとても面白かったです。またこの曲は2ndヴァイオリン&ヴィオラの大活躍ぶりも楽しいと再確認。疾走感と軽快なピッチカートの前奏曲から、サラバンド、ガヴォットとミュゼットの流れは札幌公演の時よりも素朴で温かみがあるように感じられ、私は「フォークソングみたい」と率直に思いました。しかし厳かで美しいアリアは別世界な崇高さ!明→暗→明のリゴドンもしっかり作り込まれていて、堂々たる締めくくりは気分爽快でした。今後また別会場にて、異なる編成と組員による演奏も聴いてみたいです!

休憩後、はじめはバルトーク(ウィルナー編曲)「ルーマニア民俗舞曲」。札幌公演でも休憩後の1曲目はこの演目でした。個人的に大好きな曲、何度でも聴きたい!前奏のターターターター♪に、石田組長の独奏の妖艶さ、やっぱり素敵!なお「フレーズ最後の音をリフレインする1stヴァイオリンへの合図」については、今回の石田組長は「優しく目線を送る」スタイルでした。あれ?「大きく振り返ってガン飛ばし」はナシですか??その時によって違うんですね?私の方も2回目なので、今回は少し意識してメロディ以外の部分にも着目してみました。メロディを追いかける低弦のぐっと低い音が男前!ゆらぐリズムの余韻や、組長のミステリアスな独奏に負けず劣らず神秘的な雰囲気を作り出すなど、組員お一人お一人のお力が存分に発揮されていて、素晴らしかったです!そして終盤「ルーマニアポルカ」から「速い踊り」の流れは圧巻でした。舞曲のリズムでどんどん加速していく演奏に引き込まれ、血が騒ぐ鼓動を全身全霊で感じるのは快感!クラシックだけど最高にロックな演奏は、石田組ならではですね!

お待ちかね、トークのお時間です♪石田組長は少しだけお色直ししました(黒地に赤と白のパッチワークがされた上着。札幌の時と同じ?)。マイクを持った石田組長は、はじめにごあいさつ。組長は「個人的に」網走に来るのを楽しみにしていたそうで、「観光もして、うれしいっす」。会場が和みました。この言葉、地元のかた達はうれしいっすよね!続いて組員紹介に移りました。今回は、所属や経歴→面白エピソード→担当楽器とお名前、という順番で、お一人お一人を紹介。組員の身内には「オレ(石田組長)のファン」が多いようですが、中でも破壊力があったのは「飛行機に乗り遅れて、練習に4時間遅刻」したという組員の紹介での事。そのかたを組長は「怒らなかった」そうです。「なぜなら(彼の)家族全員、オレのファン」(!)。ぶっきらぼうに言ってはいても、「オレのファン」の存在には、まんざらではない組長♪また別の組員のエピソード紹介では「ある投票で『いま最も聴きたいヴァイオリニスト』の27位」と言った後に、「ちなみに1位……オレ」。客席からは「おー」と感嘆の声。「ぶっちぎり、ダントツ」(!)と畳みかけ、客席がどっと沸きました。さすが組長♪そんな組長の面白トーク炸裂だった組員紹介の後、「石狩のカリスマ」であるチェロの髙木さんにマイクが渡されました。石田組には2回目の登場で「ぺーぺー組員」と名乗った髙木さんは、当別町ご出身とのこと。「地元北海道で、石田組で演奏できてうれしい」と仰っていました。なおご本人は覚えていないそうですが、幼い頃に両親に連れられて網走に来たことがあるとのことです。石田組長(実は魚介類が苦手だそう)が、ニシンの刺身を美味しいと食べていたことも紹介くださいました。「組長の美音と組員の熱い演奏をお楽しみ下さい」と仰って、次にマイクは広報担当という1stヴァイオリンの塩田さんのもとへ。「石田組は来年10周年」とのことです。「石田組は初めての人?」と会場に問いかけると、多くの人の手が上がりました。ちなみに「2週間前のkitara(札幌)に来た人?」の問いかけにも、前方席を中心に挙手がちらほら。お仲間がこんなにたくさん(笑)。「来年11月にも札幌のkitaraで公演があります」と宣伝し、「網走から車でたったの5時間!」などと、デジャヴな発言で会場の笑いを取っていました。ただ、あくまで私の感じ方ですが、札幌のお客さん達は「網走遠い(汗)」的な消極的反応がほとんどだったのに、網走のお客さん達には「来年の札幌、興味ある!」のような前向きな反応も少なからず見受けられました。札幌市民としてちょっと反省です。そしてこれは地方公演ならではでしょうか?今回の網走公演に先駆けて、前乗りした石田組長とチェロの江口さんが地元小学生たちに演奏のレッスンを行った「アウトリーチ活動」についてのお話もありました。「こんな機会(石田組が子ども達へレッスンする等の機会ですね)をどんどん作ってほしい」とのこと。これは子ども達にとって絶対に良い経験になりますよ!全国各地で子ども達の指導にあたっている皆様、ご検討の程よろしくお願いします!最後に石田組のCDと石田組長の著書の宣伝をしてから、「後半もぜひお楽しみください」で、トーク終了となりました。

石田組長の譜面台が舞台の中央に移動し、ここからは舞台中央(扇形に並ぶ組員の要となる位置)が組長の定位置となりました。開口一番は、シルヴェストリ(松岡あさひ編曲)「バック・トゥ・ザ・フューチャー。最初の超高音のトレモロに、力強い低音による船出。ああしびれる!あまりにも有名なメロディの輝かしい演奏にゾクゾク。メロディを彩る装飾音もカッコイイ!石田組長による突き抜けた超高音の美メロが最高&支える低音の渋さ!後半の幕開けにふさわしい、テンションMAXにまで引き上げてくれた演奏、超良かったです!ちなみに「知っている曲がない」とぼやいていた小5娘は、ここで「M-1グランプリの曲!」と喜び、スイッチが入ったようでした。

モリコーネ(近藤和明編曲)「ニュー・シネマ・パラダイス。はじめ石田組長は沈黙し、9名の組員による穏やかなアンサンブルから。「メインテーマ」の、どこか懐かしく、なんとも優しい響きにうっとり聴き入りました。2ndヴァイオリンやチェロによるリフレインの余韻まで素敵!「トトとアルフレード」では、音階をゆっくり登っていった1stヴァイオリンに心温まり、続いたヴィオラの切ない歌い方が素敵すぎて、泣きたくなるほど胸に来ました。チェロの温かさ包容力!そして来ました「愛のテーマ」。ああなんて温かで優しい響き!ここでも全力で泣かせに来られました……これはまさに愛!ソロ演奏は石田組長だけでなく、各パートのトップに引き継がれ、その度に私は涙腺が崩壊してちょっと大変でした。ああなんと、石田組は「愛」の集団だったんですね!

レッド・ツェッペリン(松岡あさひ編曲)「天国への階段」。冒頭、原曲ではギターソロの有名なところは、石田組長とチェロの江口さんによる二重奏で。これがすごかったです!なんとも寂しく切ない音色が胸に刺さり、私はリアルに鳥肌が立ちました。語るように歌う石田組長のソロは美しくも哀しくて、とても崇高な感じ。終盤では各パートのトップが順番にガンガン弾いていき、その気迫と刺さる音に私は震えが止まりませんでした!言いようのない感情が音に込められているようで、それを組員お一人お一人がご自分の音で表現できる、「石田組」のすごさを改めて実感しました。

オアシス(松岡あさひ編曲)「ホワットエバー」。深刻でガツンと来た先ほどの曲とはガラリと変わり、こちらはカントリー調のフレンドリーな音楽。ヴィオラから入るスキップのような前奏から楽しい!メロディを歌う石田組長のヴァイオリンも素敵なら、合いの手を入れながら温かく包み込む組員達の合奏も素敵!今回のチームも本当に素晴らしい一体感!聴いている私達も心が温まりました。また中盤に、極限まで音量を絞ったピアニッシシシシ……モがあったのには「お?」となりました。地方の昔ながらの市民会館でここまでできることと、何より弱音の美しさに感激です!ちなみに今回、中間部での手拍子の音頭取りは2ndヴァイオリンの田村さんがご担当。客席も手拍子で楽しく演奏に参加できました。ありがとうございます!

プログラム最後の演目は、クイーン(松岡あさひ編曲)「ボーン・トゥ・ラブ・ユー」。はじめの全員による喧噪、キター!今回もゾクゾクする良さ、大好き!石田組長の"I Was Born To Love You "~♪のピュアさにビリビリする!そして、全員合奏による爽やかな"An amazing feelin' "~♪が、やっぱり胸熱です。なんて素敵なの……何度でも言いたい、この出会いこそアメージング!この演奏を前にしたら、「私は、あなたを愛するために生まれてきた」と、誰もがまっすぐに言えるはず!

拍手喝采の舞台に戻ってきてくださった石田組の皆様。アンコール1曲目は、美空ひばりさんが歌った昭和の名曲でした!見岳章(松岡あさひ編曲)「川の流れのように。石田組長の美音でゆったりと歌うのがすごく素敵!優しい川の流れのような高音弦、ぐっと低音で支える低弦も良い仕事しています。江口さんのチェロソロも素敵でした。石田組は歌謡曲のしっとりした演奏もハマりますね!会場にはご年配のお客さんもたくさんいらっしゃいましたので、とても喜ばれたと思います。

再び組の皆様が舞台へ。組長は例の袴みたいなパンツをはき、皆様揃って黒のTシャツ姿!石田組の新作Tシャツかな?と思いきや、組の皆様が一斉に客席に背中を向けて、客席がどよめきました。これはもしや網走監獄のTシャツ!組長の背中には「脱獄集団」、組員はそれぞれ「模範囚」「指名手配中」などと書かれていて、客席は大ウケでした。アイデアも絵面も最高に面白い!しかし私の方は、背中で語る男達のカッコ良さに思わずクラクラしてしまい、もう情緒がぐちゃぐちゃでした(笑)。それにしても、4時間遅刻で「終身刑」とは刑が重すぎやしませんか!?しかも「怒らない」って言ってたのにこの仕打ちとは!組長ってばドSなんだから(わー、ごめんなさいごめんなさい!)。「まだまだ弾きます」と石田組長。なんてお優しい、ありがとうございます!アンコール2曲目は、演奏が始まってすぐ私はピンときました。個人的にはチェロ&ピアノの演奏でなじんでいる、大好きな曲!ファリャ「火祭りの踊り」。はじめのヴィオラによるタラララララー♪が超カッコ良くて、最初からノックアウトされた私(まだ早いって)。低弦ピッチカートのリズムにドキドキ。そして来ました石田組長の高速演奏!炎が燃えさかるように情熱的な音でぐいぐい来るのが超絶カッコイイ!組員もガッガッガッ♪と激しく弦を擦ったりリズミカルなピッチカートをしたりと、お祭りをガンガン盛り上げてくれて、メロディを順番に演奏した各パートのトップもすごかったです。クライマックスでは信じられないほど加速し、大熱狂の締めくくり!うわーすっごい!この曲の演奏をもう一度聴きたい!と、私は心の中で「アンコールのアンコール」を願ったほどです。

またまた組の皆様が舞台へ。今度の装いは石田組のTシャツでした。ほとんどが札幌公演と同じデザインでしたが、数名は別デザインのものを着用。石田組長は、最前列に座っていた小学生くらいの女の子に「石田組」のクリアファイルをプレゼントして(いいなあ、と娘が言ってました・笑)、演奏へ移りました。アンコール3曲目は、きっと皆様ご存じの有名曲、ビゼーカルメン」より 第1幕への前奏曲。全員合奏による冒頭からド迫力!低弦による2拍のリズムや、クレッシェンドでぐーっと浮かび上がるところなど、メリハリくっきりで、明るい音楽を思い切り元気よく聴かせてくださいました。

なんと4度目!?組の皆様が再び舞台へ。皆様裸足です!まぶしい♪組長はさらに裾の長いジレ(背中には大きく「石田組」のロゴ)を羽織っていました。「あと1曲弾きます。みんな疲れているけど、あと1曲」と石田組長。ありがとうございます(感涙)。アンコール4曲目は、松山千春(松岡あさひ編曲)「大空と大地の中で」。最後の最後にご当地ソング、キター!穏やかなイントロの後、石田組長が美しくメロディを奏ではじめると、会場から自然と拍手が起きました。さすが道民にとっての第二の国歌、すごく喜ばれている!私は札幌では特に終盤ボロ泣きできちんと聴けていなかった事もあって、今回改めてじっくり聴けたのがうれしかったです。石田組長のソロも、チェロのソロ(今回は江口さん)も、爽やかな全員合奏も、しみじみ素敵でした。ああ、私は石田組を丸ごと大好きです!

会場はスタンディングオベーション!カーテンコールでは、出演者10名全員が舞台を下手から上手へ歩いて通過(!?せっかく出てきたのに、何もせず帰っちゃった!?)したり、石田組長だけ反響板の影から客席をチラ見(「お分かりいただけただろうか」シリーズのように、本当によく見ないとわからないレベルの奥ゆかしさ)していたり、ようやく全員が舞台に横一列に並んだ後、石田組長が率先して客席に大きく手を振って(満面の笑み!)くれたり。大盛り上がりで、会はお開きとなりました。しかしお楽しみはまだ続いていたのでした!終演後、なんと石田組の皆様がロビーに出てきてお客さん達をお見送り。石田組長は、熱心にアンケートを書いている人にそっと近づいて驚かせたり、既に会場を出てしまったお客さん達にもガラス越しに手を振ったりと、大サービスでした。直接言葉を交わすことはありませんでしたが、先ほどまで舞台に立っていたスター達が今自分たちと同じ床に立ち、すぐ近くにいるなんて感激です!お疲れのところ、ここまでやってくださり、本当にありがとうございます!私は2回目の参戦にして、すっかり石田組に夢中です。またすぐにでも会いたい!これからの大躍進にも大期待&私も可能な限り日本各地の会場に駆けつけたいです!


この日の2日前に札幌で聴いた室内楽の公演です。石田組の新組員であるチェロの石川祐支さんがご出演されています。「カルメン組曲」「ニュー・シネマ・パラダイス メドレー」も登場♪「第1568回札幌市民劇場 石川祐支・宮下祥子・大平由美子トリオコンサート」(2023/10/12)。「新しいトリオによる多彩な音楽」の演奏会。直江さん編曲・カルメン組曲や南米&スペインの作品での独特のリズムやメロディに魅せられ、「初めて」の感激がいっぱいの幸せに満ちた時間でした!

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網走公演の約2週間前に聴いた札幌公演のレビューはこちら。「石田組 2023-24 アルバム発売記念ツアー 札幌公演」(2023/10/01)。カリスマ・ヴァイオリニストの石田泰尚さんが率いる弦楽アンサンブルが北海道初上陸。王道クラシックの正統派な良さに、「型破り」の想像を超えた面白さ!地元kitaraでの石田組初体験は、アメージングな出会いでした!

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。