自由にしかし楽しく!クラシック音楽

クラシック音楽の演奏会や関連本などの感想を書くブログです。「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ(http://nyaon-c.hatenablog.com/)」の姉妹ブログです。

コメント・ご連絡はすべてツイッターにお願いします。ツイッターID:@faf40085924 ※アカウント変更しました。
※無断転載を禁じます。

鈴木勇人 ヴィオラリサイタル(2023/10) レポート

doshin-playguide.jp


札幌交響楽団ヴィオラ奏者・鈴木勇人さんのリサイタルが開催されました。有名なブラームスソナタのほか、ヴィオラのために書かれた様々な作品が取り上げられる会。ここ最近、鈴木さんがご出演された室内楽公演を続けて聴く機会に恵まれた私は、鈴木さんの単独リサイタルをぜひ拝聴したい!と、当日を楽しみにしていました。


鈴木勇人 ヴィオラリサイタル
2023年10月02日(月)19:00~ ふきのとうホール

【演奏】
鈴木 勇人(ヴィオラ
野平 枝里(ピアノ)

【曲目】
フンメル:ファンタジー
カリヴォダ:6つの夜想曲 作品186
エネスク:ヴィオラとピアノのための演奏会用小品
ブラームスヴィオラソナタ第2番 作品120

(アンコール)マスネ:タイスの瞑想曲


鈴木勇人さんのヴィオラはしみじみ素敵で、ずっと聴いていたい良さでした!個人的になじみ深いブラームスでは、鈴木さんの丁寧で誠実な演奏から、最晩年の作曲家が秘めている純粋さや情熱が感じられてうれしかったです。また私にとってはすべて「お初」だった他の演目は、様々に変化するヴィオラの表情が楽しい!鈴木さんは流麗に演奏されながらも、細かなところを一つ一つ着実に積み上げ、細やかな機微をしっかりと表現されていたとお見受けしました。その色合いの変化は味わい深く、私はヴィオラの良さを再確認。ヴィオラの色合いの変化は、華やかな音色のヴァイオリンと比べ「さりげない」と個人的には感じていますが、その「さりげなさ」を聴く人の心に響かせるのがヴィオリストの腕前なのかなと、私は今回の演奏に触れてそう思いました。主役として演奏する時はもちろんのこと、オケや室内楽で内声を担っているときもきっと同じなのでは?(私の勝手な想像ですが)。この確かな演奏と、振る舞いや話しぶりから感じられるお人柄の良さ。鈴木さんが室内楽のメンバーとして引っ張りだこなのも頷けます。なお当日の会場には札響の団員さん達も大勢いらしていました。鈴木さん、オケの皆様に愛されていますね!

また共演の野平枝里さんのピアノも素晴らしかったです!骨太&重厚な響きでガッチリした土台を作ってくださり、特にブラームス(作曲家本人は「ヴィオラとピアノための」ソナタとして、2つの楽器を対等の扱いで作曲しています)の演奏は大変聴き応えがありました。またピアノが主役の時はガツンと響かせる演奏で聴き手にインパクトを与えつつも、ヴィオラが主役の時はさっと音量を下げて支えに徹し、ヴィオラと細かく呼応し合うところはテンポ良く(これはきっとお互い様の事ですね)。大変気持ちの良い共演でした。地元札幌に、こんなに素晴らしい若手ピアニストがいらっしゃったことに感激!今後の野平さんのご活躍にも大注目です!


ヴィオラの鈴木勇人さんとピアノの野平枝里さんが舞台へ。鈴木さんは黒シャツ、野平さんはグレーのノースリーブのドレス姿でした。すぐに演奏開始です。1曲目はフンメル「ファンタジー。前奏のピアノが力強く厚みがあって、私は少しだけベートーヴェンをイメージ。しかしヴィオラが登場すると、ピアノはボリュームを下げて優しく和音を響かせる演奏に切り替わりました。ヴィオラは哀しげに始まるも、ぐっと深い低音やふと丸くなった高音など、細やかな変化が素敵!音の揺らぎがなんとも優しく美しく、感情の機微が感じられました。明るく楽しいところでは、ピアノとのスキップするようなテンポ良い掛け合いが心地よく、大はしゃぎはしないけどウキウキした感じ。突如嵐のような激しさになったところは充実の演奏でした。締めくくりの、力強く何度も弓を上から下に振り下ろす演奏が見た目にも華やか!短いながらも変化が多く、短編小説のように楽しめた演奏でした。

2曲目はカリヴォダ「6つの夜想曲 作品186」。第1曲 穏やかな歌曲のようで、私はメゾソプラノがささやくように歌っているのをイメージ。ヴィオラが丁寧に音を紡いで、言葉の語尾にまで血が通っているような、音の余韻も素敵でした。第2曲 楽しい舞曲のようで、ピアノとシンクロして跳ねるリズムが楽しく、軽快でウキウキした音楽が心地よかったです。第3曲 こちらも歌曲のようでしたが、第1曲よりも切なく感じられ、半音上がるところやフェードアウトする締めくくり等、複雑な心情が垣間見えるような音楽でした。第4曲 ステップを踏むリズムが楽しく、鳥のさえずりのようにヴィオラがコロコロ歌うところが印象深かったです。第5曲 なんて素敵なラブソング(と個人的には感じました)!温かなピアノと、思いを優しく語りかけるようなヴィオラがとても良くて、低い音に沈んでいくのに引き込まれました。中盤のドラマチックなピアノのターンでの、ヴィオラの深みある音が印象的。激しいところを経て、再び明るさを取り戻してからの歌い方がとっても素敵でした。最初の時よりさらに優しさが感じられ、とても温かな音色!これは愛ですね!第6曲 妖艶な舞曲がカッコイイ!暗と明が交互に来て、暗での独特のリズムで奏でるヴィオラの音色が艶っぽく、明での民族音楽のようなリズムと音色で歌うヴィオラが個性的で面白かったです。手首をひねりながらウィンウィン鳴らす弾き方(奏法の名前がわからずごめんなさい!)に、私はフィドル(詳しくはないのですが)を連想。1つの曲の中でも様々に表情が変化する6つの小品たち。ヴィオラのバラエティ豊かな音と表現、そして鈴木さん自身がお持ちの「音」の素晴らしさを味わうことができました。

後半、はじめはエネスク「ヴィオラとピアノのための演奏会用小品」。ダーン!と重厚なピアノの和音から入り、ヴィオラの最初の深みある低音がインパクト大!その後スキップのようだったり、高音で儚く歌ったりと、目まぐるしく変化する演奏は滑らかにつながっていました。たくさんの音の連続を、ヴィオラが傍目には難なく優雅に奏でていたのがすごい!まるで即興演奏のようでした。重低音からの音階駆け上りや、高音でのトリルなど、見どころ聴きどころばかり!かわいらしいピッチカートで区切ってからの、後半がさらに充実の演奏でした。ダミ声で前のめりな感じにハッとさせられ、重音やトリルを多用するところは、まるで夢見心地に浮遊しているかのよう。クライマックスでの気迫あふれる超高速の演奏が圧巻!超絶技巧満載かつヴィオラの様々な表情が楽しめた、超充実の演奏でした!

プログラム最後の演目は、ブラームスヴィオラソナタ第2番 作品120」。第1楽章 大らかなピアノに乗って、そっと優しく歌い始めたヴィオラ。はじめの方での、(演出として)やや手探りな感じに、最晩年の作曲家の純粋さが感じられたのがうれしかったです。穏やかに歌うところの美しさ、力強く音階駆け上るところの輝かしさ!またピアノとささやくように呼応し合うところや、ピアノのターンでのじっくり紡いだ音など、細部にわたり神経が行き届いた、とても丁寧で誠実な演奏が素晴らしいです!ピアノが小休止の時、ヴィオラが次第に音階を下っていくところの儚さがとても印象に残っています。第2楽章 個人的にはこの楽章がハイライトでした。はじめから前のめりで情熱的な演奏は、熱い思いがあふれているようで、強く心に訴えかけてくきました。ピアノ独奏のパワフルさは若さあふれる感じ!またヴィオラが切なく歌うところでの、同じ音型を繰り返すピアノがとても良かったです。まるで運命に翻弄され揺らぐ心を表しているかのよう!そして中盤の、ピアノがじっくり歩みを進めるところからの良さを特筆したいです。ピアノと足並みを揃えてのヴィオラの歌は、高音の崇高な響きも、ぐっと低い音の渋さも、多幸感あふれる重音も、なんて素敵なんでしょう!いずれも敬虔でまっすぐな思いが心に響いてくる演奏でした。第3楽章 ヴィオラもピアノも柔らかく温かく穏やかに歌うのが素敵!心地よい響きに癒やされました。ヴィオラとピアノが細かく呼応し合いながら滑らかに歌うのはごく自然なタイミングで、お二人の息ぴったり!ピアノが荒ぶるところ(ドラマチックで超素敵!)では、低い音を紡ぐヴィオラがエネルギーをぐっと溜めているよう。個人的には、その後に続く演奏に感銘を受けました。ヴィオラが1音1音を積み重ねながら次第に盛り上がりを作っていくのがすごい!ハッピーエンドに繋げるための丁寧な積み重ねが、私はとてもブラームスらしいと感じ、それをしっかりと作りあげた演奏に胸が熱くなりました。明るく駆け抜けるラストは幸せいっぱいな感じ!愛してやまない作品の、素晴らしい演奏に出会えて感激です!ありがとうございます!

カーテンコールにて、鈴木さんはマイクなしで「お忙しい中、月曜夜からお越しいただきありがとうございます」とごあいさつされました。「帰ったら週末の(札響)定期の曲を急いでさらわないといけないのですが」と仰りながらも、「1曲だけ、アンコールを演奏してもよろしいでしょうか?」と控えめなお申し出。もちろんです、大変なところありがとうございます!アンコールは、マスネ「タイスの瞑想曲」。そっと入った出だしから優しく美しい響き!ゆりかごのようなピアノに乗って、ゆったり心を込めて歌うヴィオラがとっても素敵でした。ラスト直前に高音でフェードアウトした後の沈黙、そしてラストのメロディのリフレインは、今この瞬間を慈しむ感じですごく良かったです。素敵な時間をありがとうございました!これからのご活躍にも期待大&オケや室内楽での演奏を楽しみにしています。


この日の前日に聴いた公演です。「石田組 2023-24 アルバム発売記念ツアー 札幌公演」(2023/10/01)。カリスマ・ヴァイオリニストの石田泰尚さんが率いる弦楽アンサンブルが北海道初上陸。王道クラシックの正統派な良さに、「型破り」の想像を超えた面白さ!地元kitaraでの石田組初体験は、アメージングな出会いでした!

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

ヴィオラの鈴木勇人さんが賛助出演された室内楽の公演です。「Trio MiinA トリオ・ミーナ第5回公演 小児がんチャリティーコンサート」(2023/09/22)。彩り豊かな新作初演、凄まじさに打ちのめされたショスタコーヴィッチ、お初のピアノカルテットによるシューマンの充実ぶり!今回もうれしい驚きの連続で、最初から最後までとても楽しかったです!

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

最後までおつきあい頂きありがとうございました。