自由にしかし楽しく!クラシック音楽

クラシック音楽の演奏会や関連本などの感想を書くブログです。「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ(http://nyaon-c.hatenablog.com/)」の姉妹ブログです。

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音楽日和 札幌公演 in hitaru~JAF会員のための音楽会 (2021/3)レポート

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シベリウスの演目2つが聴きたくて申し込んだ演奏会です。カレリア組曲は「音楽宅急便2020の動画」、ヴァイオリン協奏曲は昨年購入した「ジネット・ヌヴーのCD」がきっかけで好きになりました。いずれも出会ったばかりにもかかわらず私はすっかり魅了されてしまい、録音を繰り返し聴いては「いつか生演奏で聴きたい」と願ってきました。その「いつか」がうんと早くに実現してうれしいです。

なお今回の演奏会は、2020年2月に予定され中止となった企画から、指揮者および1曲目の演目を変更した形での開催だったようです。

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指揮・飯森範親さんは「音楽宅急便2020」では全国各地のオケを指揮されていらっしゃいました。その動画で好きになったカレリア組曲、まさか同じ飯森範親さん×札響 in hitaruで生演奏を聴けるなんて!またソリスト金川真弓さんは1年越しで札響との協演が実現したのですね。当初の想いをそのままに演目はシベリウスにしてくださり、ありがとうございます!


音楽日和 札幌公演 in hitaru~JAF会員のための音楽会
2021年3月16日(火)19:00~ 札幌文化芸術劇場 hitaru

【指揮】
飯森範親

【独奏】
金川真弓(ヴァイオリン)

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島高宏)

【曲目】


お目当ての曲だけでなく、最初から最後までとても楽しかったです!ロードサービスのみで年会費の元は取れている私ではありますが(それは自分でもどうなのと思ってはいます)、初めてロードサービス以外で「JAF会員でよかった」と心から思えました。個人的にちょうど今は家のことでバタバタしているとはいえ、いやだからこそ慌ただしい現実世界から離れて音楽の世界に浸れるほんの数時間はとても大事。私には音楽があってよかった!また、ソリスト金川真弓さんの演奏の凄みには圧倒されました。素晴らしいヴァイオリニストとの出会いに感謝します。過去の名演を録音で聴くのも良いけれど、今まさにその生演奏に触れることができる現役の演奏家のかたにもっと目を向けようと、私は心からそう思いました。過去の名演奏家と比べてどうこう考えるのはナンセンスで、おひとりおひとりの個性と熱量に直接触れる瞬間は唯一無二のもの。やはり私はライブが好きですし、これからも生演奏を聴ける機会を大切にしていきたいです。そして今後も、私がまだ知らずにいる素晴らしい演奏家との出会いがあることをとても楽しみにしています。

なお事前に席は割り振られ、私は期せずしてまたもやソリストかぶりつき席に。自分で選ぶときは中低弦の近くのR側にするのですが、今回は第1ヴァイオリンに近いL側になりました。会場収容率は50%以下の、前数列を空けた上で座席は1席飛ばし。人が少ないおかげでhitaruの音の響きは大変素晴らしく、とても贅沢な時間を過ごせました。興行的には厳しい条件にもかかわらず、リーズナブルなチケット料金で聴かせてくださりありがとうございます!なにより、このご時世に演奏会開催くださり感謝です。

前半はシベリウス。1曲目は「カレリア」組曲です。冒頭、ごく小さな音から始まるティンパニと弦にぞわぞわ。ホルンの響きで視界が開けた感じがしました。特定の情景を描いたわけではないのでしょうが、私には雪解け時期のまだ風が冷たい大地が思い浮かびます。トランペットがカッコイイ!続くもの悲しい「バラード」が個人的に大好きで、ひたすら聴くのに没頭しゾクゾクしていました。「行進曲風に」は一転して明るい雰囲気。しかし大喜びしているのではなく幸せを噛みしめているように感じられるのが好きです。どの楽器も見せ場があるので、私は自席から見える範囲でそれを追いかけました。動画で繰り返し聴いたけれど、生演奏はやはり良いですね。空気を肌で感じられ、同じ会場で同じ時間を共有する喜びは格別です。今後動画を視聴するときは、きっとこの日の生演奏を思い出すことになると思います。

2曲目はお待ちかね「ヴァイオリン協奏曲」。ソリスト金川真弓さんの衣装はベージュのノースリーブドレスでした。冒頭は哀しげな独奏ヴァイオリンから。もうここで私は心掴まれ、ずっとソリストに全集中する体勢に。そしてこの曲のキモとも言える、独奏ヴァイオリンが高音で奏でるところ。私は勝手に「女性が泣き崩れるイメージ」で捉えているのですが、例えば悲鳴を上げて感情を露わにするとか、あるいは演歌のような情念込めた感じ(それらも素敵だとは思いますが)ではなく、なんというか純粋な泣き方だと私は感じ、はっとさせられました。ストレートに胸に刺さり、思わず涙が。そして同じ旋律がもう一度出てきたときは、支えてくれるオケも一緒に聴くことができて、ああ一人じゃなかったのねとまた涙。長い独奏と、楽章終わりの方の超高速の演奏もお見事でした。木管から始まる第2楽章、絶対にシベリウスブラームスを意識してるなといつも思います。しかしブラームスとは違い早々に独奏ヴァイオリンが登場。ソリストはあまり休む時間がなくて大変かも?この楽章の独奏ヴァイオリンはゆったりした大人っぽい雰囲気で、たっぷり素敵な演奏を聴かせてくださいました。オケのターンでは金川さんはスマイルを見せ、余裕すら感じさせられました。第3楽章は、独特のリズムがたまらなく好きです。はじめから独奏ヴァイオリンが駆け抜けていきます。素人目から見ても、細かな技巧を難なくクリアしつつ細かくテンポを変えながらかつ歌うヴァイオリンってすごすぎます。独奏が少しでも乱れたらおそらくリズムが台無しになってしまうと思われますが、そんな心配はご無用で、重厚なオケと見事にシンクロしていました。オケが重低音で演奏したメロディを、引き継いだ独奏ヴァイオリンが高音で演奏するところ、超素敵でした!オケに負けない存在感!もう第1楽章とは違って「泣いてない」、強い意志でぐいぐい突き進む独奏ヴァイオリンの力強さ。全体的に哀しげな曲が、最後は希望が垣間見える締めくくりをするんですね。聴いていてとても気持ちが良かったです。素晴らしい!

ソリストアンコールは、金川さん自ら「シューベルト、魔王」とおっしゃって演奏開始。編曲はエルンストでしょうか?有名な歌曲をヴァイオリン一つでの演奏です。目の前で繰り広げられる超絶技巧に圧倒されました。私はテレビでは別の演奏家による演奏を何度か聴いたことがありますが、やはり演奏家と同じ空間にいてその生演奏を聴くと迫力が違います。シベリウスの大熱演の後にお疲れを見せず、アンコールまで全力投球の演奏をありがとうございます!


休憩後の後半はオペラの序曲シリーズです。これから始まる物語への期待がふくらむ、いいとこ取りで印象的な要素が盛りだくさんの序曲が3つもあり、オペラ未経験の私でも音楽そのものを楽しむことが出来ました。はじめはモーツアルト魔笛」序曲。私でも部分的には聴いたことがある曲です。物語そのものはよく知らないのですが、序曲だけ聴くとモーツアルトらしい美しく心地よい音楽だなと素直に聴き入っていました。ヴァイオリンが弾くメロディに、夜の女王のアリアの超高音で歌う部分や、パパゲーノ?の「パ・パ・パ・パー」と似ているところが入っているのかも?と勝手に推測。こんなレベルで申し訳ないです。

続いてヴェルディシチリア島の夕べの祈り」序曲。短い曲の中で雰囲気が目まぐるしく変化し、不穏な空気だったり穏やかでありながらどこか哀しげだったり戦闘モードだったりと印象的なシーンが次々と。全員で強奏するパワフルなところは圧倒されつつも、ここはもう少し後ろの方の席で聴きたかったななんてわがままなことを思ったりもしました。そしてこの曲のハイライトはチェロです。チェロが全員で主役のところがあって、高めの少し甘い歌声がもう素敵すぎ!かぶりつき席で良かった!プログラムの解説を読むと、オペラ自体は結構血なまぐさいお話だったので驚きました。あのチェロパートは一体どんなシーンを想定されているのかが少し気になります。少しだけ。

プログラム最後の曲は、ワーグナーニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲ワーグナーを自分ではほぼ聴かない私でも知っている有名曲です。重厚・壮大な音楽を素晴らしい演奏と音響で楽しませて頂きました。パワフルな曲を堂々とした演奏で聴いていると、気分があがります!これを聴いただけでワーグナーを知った気になってはいけないのですが、ワーグナーは現代の特撮やRPG等とも通じる「男の子の夢」なのかも?と個人的には思います。

カーテンコールの後、控えていらした打楽器奏者の皆様が舞台へ。アンコールはエルガー「威風堂々」。曲名紹介がなくてもすぐにわかる超有名曲!私事ですが、息子の卒業式での卒業生入場BGMが「威風堂々」で、私はこの派手な曲を聴いて泣いた激レア経験をしたばかりでした(苦笑)。しかし改めて生演奏を聴くと、当然ながらこの大盛り上がりする曲に湿っぽい要素は皆無です。この日の演奏は、前へ進むすべての人達への熱烈応援として聴けました。ただ、もしこれが最初の演奏だったら、個人的には無理だったかもしれません。しかしこの時は前半から素晴らしい演奏をたっぷり楽しんできて、極めつけワーグナーを聴いた直後で気分が高揚して十分にあたたまっていましたから、思いっきり乗れました。演奏自体もリミッターを振り切ってガンガンくるスタイル、聴いているこちらも超楽しかったです!最後の最後まで気合いの入った最高の演奏をありがとうございました!


「音楽宅急便2020の動画」を含む、「2020年 札幌交響楽団 動画配信および非売品CDについてのまとめ」記事は以下のリンクからどうぞ。ロッシーニシベリウスも、私はノーマークからの不意打ちで好きになった曲です。そんな演奏を聴かせてくださる我が町のオケ・札幌交響楽団の皆様、愛しています! 

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ジネット・ヌヴーの録音は、CDであれば新品が1000円程度で手に入ります(元のLPレコードはプレミア価格がついているそうですが)。私はオンラインショップのポイント消化のために購入。そんな軽い気持ちで手にしたCDに、ここまで夢中になれるとは嬉しい誤算でした。シベリウスはもちろん、ブラームスの演奏も超ステキです!そしてシベリウスについては、図書館で借りたカミラ・ウィックスの演奏も気に入ったので、こちらは見つけ次第購入予定です。

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そしてブラームスのヴァイオリン協奏曲も、私は今年2月に素晴らしい生演奏を体験したばかりです。ソリストは札響ヴァイオリン奏者の鶴野紘之さん。この時の演奏はこの先ずっと忘れることはないと思います。「新進演奏家育成プロジェクト~オーケストラ・シリーズ 第58回札幌」レビュー記事は以下のリンクからどうぞ。 

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

札幌交響楽団 第635回定期演奏会(金曜夜公演)(2021/3)レポート

プログラム発表当初から気になっていた公演です。しかし一次販売では望む席が取れず、私は二次販売を待ってチケットゲット。札響の定期公演が金曜夜&土曜昼で開催される最後の演奏会でもあり、また尾高惇忠「チェロ協奏曲」が正真正銘の「世界初演」となる金曜夜を選びました。

ちなみに私が聴いた2021年3月5日の金曜夜公演は3月28日にNHK-FMで放送されるそうです。皆様ぜひお聴きください!

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なお、この日が世界初演となった「チェロ協奏曲」の作曲者・尾高惇忠さんが2021年2月16日に逝去され、その訃報が札響から発信されました。演奏会の前には舞台でも札響のかたからお話がありました。

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はじめから公演は2021年3月と決まっていたものの、尾高惇忠さん存命中に演奏されたうえでせめて中継か録音でもご本人に聴いて頂けたら……とつい思ってしまった私。とはいえ感染症拡大の影響で演奏会の中止が相次いだ今シーズン、もし早い時期に開催予定されていたら演奏機会自体がなくなっていた可能性もありますから、結果として予定通りに演奏会開催されて良かったと捉えたほうがよいのかもしれません。今回、お兄様をなくされたばかりの尾高忠明さんは、いつものようににこやかに当たり前のように見事な演奏を聴かせてくださいました。ありがとうございます。作曲家ご逝去から日が浅い今言うことではないかもしれませんが、命に限りはあっても作品は生き続けるという「クラシック音楽」の本質を、この定期公演に居合わせたすべての人が感じ取れたと思います。生前の希望が叶った尾高惇忠さんも天国で喜んでいらっしゃるに違いありません。


札幌交響楽団 第635回定期演奏会(金曜夜公演)
2021年3月5日(金)19:00~ 札幌文化芸術劇場 hitaru

【指揮】
尾高忠明

【独奏】
宮田大(チェロ)

管弦楽
札幌交響楽団(ゲスト・コンサートマスター:小林壱成)

【曲目】


「新・定期」とは違って容赦ない「定期」。しかし私は自分なりに聴いた上で、やはり聴いてよかったと思います。お目当てのチェロ協奏曲は、自分が耳慣れたスタイルとは違っていましたが、演奏の凄みと人間の内面をえぐるようなただならぬ雰囲気に引き込まれました。世界初演の瞬間に立ち会える機会は二度と無いわけですから、聴きたいのであればその時の自分で聴くしかありません。とはいえ我慢してお勉強のように聴いたわけではなく、いつの間にか演奏に没頭していましたし、たとえその本質的な良さまで完全にはわからなかったとしても、今の自分のレベルで感じ取れるものは確かにありました。また守備範囲外(私の場合全体の9割5分までがそうなのですが)の作曲家の曲でも、その美しさを素直に味わいリラックスして聴けました。管弦楽の魔術師ラヴェル、素敵ですね!木管金管打楽器の活かし方が上手いだけでなく、弦もピッチカートだけでない個性的な奏法が色々とあって、個人的にはとても新鮮でした。なお私は今回も知らない曲ばかりを予習なしの丸腰で臨みました。

今回はゲスト・コンサートマスターとして小林壱成さんがオケを牽引してくださいました。田島さんはそのお隣で演奏。協奏曲以外ではコンマスのソロパートが多く、小林さんは観客にも目に見える形でその素晴らしい演奏を披露してくださいました。ありがとうございます!今後も時々は札響にいらしてくださいね。


1曲目はリャードフ「魔法にかけられた湖」。札響演奏歴は過去3回。そのうち2回までもが尾高忠明さんによる指揮で、尾高忠明さんの隠れた十八番とお見受けしました。プログラムノートによると、リャードフ自身が「おとぎ話的な絵画」という副題をつけているそうです。本シーズンのテーマ「Fairy Tale フェアリーテール~おとぎ話」にぴったりの選曲。木管のゆったりした響きにハープやチェレスタも加わり、さらに高音の弦がとてもキレイでした。下支えしている低弦が奥行きを出してくれて、まさに「絵画」のよう。8分ほどの短い曲に、私は聴き入りました。この後に控える世界初演の協奏曲の前に、美しい曲を聴いてリラックスできてよかったです。


2曲目はいよいよ世界初演となる尾高惇忠「チェロ協奏曲」です。プログラムノートはなんと作曲家ご本人によるものでした。それによると、尾高惇忠さんは自身の作品「独奏チェロのための瞑想」を宮田大さんがコンサートで演奏したのを聴いて、協奏曲の独奏チェロを宮田大さんに、指揮は弟さんの尾高忠明さんにと心に決めたのだそう。初演のソリストと指揮者は作曲者である尾高惇忠さんの希望通りとなったのですね。さらに縁あってオケが札響となったことに感謝です。ソリストの宮田大さんは黒シャツをラフな着こなし。30代前半のお若い宮田さんですが、第一印象ではその佇まいから余裕と貫禄が感じられました。オケの編成は大きく、金管・打楽器も多彩でした。曲の冒頭は独奏チェロのごく小さな音から入り、私は1週間前に聴いたハイドンの協奏曲のような美しさを一瞬期待したものの、甘かったです。心地よい美メロとは違う、妖しげな雰囲気。チェロのことを私はまだまだ知らないと痛感しました。しかしこんな曲を見事に弾きこなし、大編成のオケと対等に渡り合える宮田さんは、やはり素晴らしいチェリストなのだと実感。よくテレビでお見かけして、流行の曲のアレンジでもジャンル違いの楽器とのコラボでも何でも演奏されていらっしゃいますが、それだけで彼の演奏を知った気になるのは大間違いですね。私はきちんと受け止められなかったにせよ、この日の演奏を目の当たりにできたのをありがたく思います。オケから入った第2楽章もまた「楽しい」わけではない独特な雰囲気。プログラムノートによると、第1楽章は「独奏チェロのための瞑想」からの発展、第2楽章は「12のピアノ作品」から「レクイエム」の編曲と、いずれも尾高惇忠さんの過去作品がベースなのだそうです。個人的に、少し慣れてきたのか、第3楽章は比較的聴けたように思います。はじめ短めの演奏を独奏チェロ→ヴィオラティンパニ→(鐘のような打楽器)とリレー、これが形を変えて何度か出てきました。独奏チェロがクラシックギターを弾くように弦をかきならす演奏もあり、目と耳は演奏に釘付けに。宮田さん、最近はクラシックギターとの協演も多いようですね。圧巻はラストの独奏チェロです。オケは沈黙する中、独奏チェロの高音がだんだんと小さくなっていって、ついには消えてしまう(でもいつ消えたのかははっきりとしない)ような終わり方。曲の始まりと終わりが対称になっている?私は演奏を聴いたその時、本当に不謹慎なのですが、自分が人生を終えるときはこんなふうに消え入りたいなと思ってしまいました。たとえば一定の明るさで燃えていたろうそくが消える直前に一瞬輝くのではなく、炎がやがて小さな火種となりいつの間にか消えていたような。できれば長くくすぶっていたくはなくて、でも最期くらいはひとり静かに少しずつ消えていきたいなと。勝手な妄想に発展させてごめんなさい!しかし私ははじめのうちは少し戸惑ってしまった曲でも、だんだんと演奏に引き込まれて最後の方は全集中していました。作品自体の素晴らしさはもちろん、作曲家の意思を受け止め演奏に昇華した指揮の尾高忠明さん、ソリストの宮田大さん、そして札響のお力によるものです。唯一無二の演奏をありがとうございました!

ソリストアンコールはJ.S.バッハ無伴奏チェロ組曲第1番」よりメヌエットジー。先ほどの協奏曲とはまるで違う表情、チェロって奥が深い!なじみのある舞曲のリズムと歌うようなメロディを素敵な演奏で楽しませてくださって、私はやっぱりチェロが好き!と再確認。推しのチェリストがまたおひとり増えました。宮田大さん、オケとの協演でも室内楽でも、今後何度でも演奏会でお目にかかれるのを楽しみにしています!テレビでも追いかけますよ!


後半はラヴェルの「おとぎ話」のような演目が2つ続き、私はリラックスして楽しみました。はじめはマ・メール・ロワ組曲。最初の曲から木管大活躍でヴァイオリンがキレイだったので、前半のリャードフ「魔法にかけられた湖」をつい思い出しました。コンマスのヴァイオリンが超高音で♪キュイキュイ♪と鳥の鳴き声のような音を鳴らしフルートと会話していたのがツボ。華やかな終曲まで、予備知識なしの私でも楽しく聴くことができました。尾高さんはカーテンコールの際、フルートから始まりオケ後方の皆様、続いて弦はソロパートがあったコンマスヴィオラ・チェロの首席のかたに順番に起立を促され、讃えられました。


トリを飾るのは「ダフニスとクロエ」第2組曲。先ほどよりも金管打楽器が増え、オケは大所帯となりました。はじめハープと木管と弦の美しさに感激。スケールの大きさで、まるで視界が開けたように感じました。ここでもフルートが大活躍。金管打楽器も入って大迫力のところには圧倒され、バレエ音楽らしいけどこれなら踊りよりも音楽の方が目立つのでは?と変なことを思ったり(失礼)。しかしこんなに楽器の種類が多いのに、カオスにならず一つの美しい音楽になるのには素直に驚きました。スイーツに例えるなら、様々な素材を集めて一つの芸術品に仕上げる、名前の通り完璧なパルフェなのかも。普段はザッハトルテのような、えり抜きの素材をガッツリ固めたドイツ系の音楽ばかり好んで聴く私にはとても新鮮でした。私はこの日の演奏を拝聴し、ラヴェルボレロだけじゃないんだ、今後他の曲も聴いてみたい、と思うように。素晴らしい演奏をありがとうございました!


ちなみに私、例によってソリスト宮田大さんをかぶりつきでガン見しようと(←)今回もかなり前の方の席をとっていました。大好きな弦の演奏を間近に見ることが出来るのは良いとしても、金管打楽器のパワフルな音がダイレクトに来てビックリ。聴けなくなる程ではなかったですが、音の響きに関しては席はもう少し後ろの方がより楽しめたかもしれません。今後は少しは予習をして、演目次第では舞台に近すぎない席を選ぼうと思いました。しかし個人的に「低音がよく響く」と勝手に思っていたhitaruが、実は高音も得意なんじゃないかと感じたのは今回の収穫でした。座る席を色々と試して、hitaruをもっと楽しみたいです。


この定期演奏会の約1週間前に聴いた「札幌交響楽団 hitaruシリーズ新・定期演奏会 第4回」のレポートは以下のリンクからどうぞ。佐藤晴真さんのチェロに夢中になれただけでなく、日本人の血が騒ぐ伊福部昭、一度聴いただけで好きになったチャイ5。最初から最後まで楽しかったです! 

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希望は言ってみる!私、尾高忠明さん×札響によるシベリウスフィンランディア」をぜひとも生演奏で拝聴したいです。クラウドファンディングのリターン「札響1961-2020特別CD」に収録された2013年3月の演奏録音に私は衝撃を受けました。一般販売されているCD「グリーグシベリウス 北欧音楽の新伝説」収録の2009年3月の演奏録音も素敵ですが、非売品CDの2013年3月の演奏は以前よりさらに磨きがかかって素晴らしいと感じます。なお弊ブログに「札響1961-2020特別CD」を含む「2020年 札幌交響楽団 動画配信および非売品CDについてのまとめ」の記事もありますので、よろしければお読みください。以下のリンクからどうぞ。 

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

札幌交響楽団 hitaruシリーズ新・定期演奏会 第4回 (2021/2)レポート

当初出演を予定していたホルンのラドヴァン・ヴラトコヴィチさんの来日が叶わず、急遽演目とソリストが変更された演奏会です。協奏曲はホルンではなくチェロの曲に変更され、しかもソリストは佐藤晴真さん!彼が演奏する協奏曲をこんなに早く札幌で聴けるなんて!私は2次販売でチケットゲット。チケットセンターに置かれたチラシは片面カラーコピーの急ごしらえでした。また演奏会の当日は、当日券売り場に列が出来ていました。

楽器は異なりますが、ラドヴァン・ヴラトコヴィチさんも佐藤晴真さんもミュンヘン国際音楽コンクールで第1位を獲得していらっしゃると後から知りました。それにしても、本来は1年ほど前にプログラムが決まり、時間をかけて心の準備をしてから演奏会当日を迎えるのだと思います。突然の決定にもかかわらず、大役をお引き受けくださった佐藤晴真さんには大感謝です。個人的には「いつか佐藤晴真さんと我が町のオケの協演を聴きたい」と願っていた「いつか」が思いの外早くに来てしまいましたが、もちろん聴きたいに決まっています!チケット2段階販売のおかげで直前でも良い席が取れるのはありがたいです。

なお、同じ日のお昼休みの時間帯に、「第48回北海道議会議場コンサート」が開催され、札響メンバーによる弦楽四重奏の演奏がありました。

www.gikai.pref.hokkaido.lg.jp


私は残念ながら会場には行けませんでしたが、ネットのライブ中継で拝聴。ハイドン弦楽四重奏曲「皇帝」に始まり、アンコールの「虹と雪のバラード」まで、とっても素敵でした!曲の合間には、夜の演奏会の宣伝も。演奏会前のロビーコンサートが取りやめになっている今、夜の演奏会の前にオケ精鋭メンバーによる室内楽が聴けてうれしかったです。しかも普段のロビコン5回分くらいのボリュームたっぷり!4名の奏者の皆様、夜の大本番が控えているにもかかわらず、素晴らしい演奏をありがとうございました。多くのかたに聴いて頂きたいので、録画の配信をぜひお願いします道議会さん!


札幌交響楽団 hitaruシリーズ新・定期演奏会 第4回
2021年2月25日(木)19:00~ 札幌文化芸術劇場 hitaru

【指揮】
広上淳一

【独奏】
佐藤晴真(チェロ)

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島高宏)

【曲目】


佐藤晴真さんが演奏する協奏曲がお目当てだった私。しかし佐藤さんのチェロに夢中になれただけでなく、ノーマークの曲でも最初から最後まで楽しかったです!私は音楽を聴き始めてまだ数年ですが、最初の頃よりも興味や許容範囲が広がり、聴いて楽しめる演奏が増えたのは自分でも本当にうれしくて。またhitaruシリーズ新・定期はプログラムが気が利いているんですよね。定番の交響曲を後半に置き、前半は注目のソリストを迎えての協奏曲と普段聴く機会が少ない日本人作曲家の曲。一度で3通りの楽しみがあって、私自身はまだ2回目の参加でもすっかり新・定期が好きになりました。ちなみに、私は思い入れが強すぎるとむしろきちんと聴けない経験をしているので(2020年12月の定期は指揮の広上さんにも奏者の皆様にも大変申し訳なかったです)、今回は知らない曲ばかりでもあえて予習なしで臨みました。


1曲目は伊福部昭「交響譚詩」。打楽器はティンパニのみで、管楽器と弦楽器の人数は多く、ハープが入った編成でした。1月に聴いた早坂文雄「左方の舞と右方の舞」のやんごとなき殿上人の世界とは違って、こちらは裸足で土の上に立っているイメージ。前半は「お祭り騒ぎ」のようで、後半は「祭りの後」のようでした。和楽器はいないのに、日本人の血が騒ぐ独特のリズムが心地よく、楽しかったです!ヴィオラが主役になるところも素敵でした。普段自分ではなかなか聴こうとしない日本人作曲家の管弦楽作品。生演奏で聴く機会があるのは良いですね。たとえこの後の協奏曲や交響曲がお目当てだったとしても、こんな機会に聴ければ、自分のルーツに思いをはせることができます。日本人作曲家を積極的に取り上げたいと考え、それを実現してくださっているバーメルトさんに感謝です。


2曲目はお待ちかね佐藤晴真さんの登場。ハイドン「チェロ協奏曲第1番」ソリストは暗譜での演奏でした。チェロを抱えて颯爽と登場した佐藤晴真さんは、指揮者やコンマスとは手を直接触れないエア握手。衣装は黒いスーツに白いシャツを首元まできちっとボタンを閉じ、ノータイでした。オケは1曲目よりずっとコンパクトな編成で、少数精鋭の弦にオーボエとホルンのみ。曲の冒頭はオケの演奏です。昼間に生配信で聴いた弦楽四重奏を思い出しながら、ハイドンって弦の活かし方がうまいなと聴き入りました。そして独奏チェロ登場。キタコレ!この「佐藤晴真さんのチェロの音色」を待っていたんです私。2019年7月にふきのとうホールで拝聴したときよりグレードアップした味わい深い音色に、一瞬でハートを鷲掴みにされ、もうここからはソリストだけに全集中。独奏チェロはとても優雅な響きでも、高音域を高速で演奏するのはきっと難しいのだと思います。それでも佐藤さんの演奏姿はクールで美しかったです。オケのターンでソリスト小休止のときに、hitaruの高い天井を見上げたその表情には既に大演奏家の風格すら感じられました。この演奏を目の当たりにしたら、「お若いのに」なんて色眼鏡は瞬時に消え去ります。第2楽章で、独奏チェロがごくごく小さな音からだんだん大きな音になって登場する(何度もありました)のがツボ。私は、ソリストの演奏姿をよーく見て耳をそばだてて、オケの音の中からグラデーションで現れる独奏チェロを追いかけました。独奏チェロは、前の楽章では低い音を重ねてバーンとインパクトを与える登場をした(これも好きです)のに、この楽章ではじわじわ来るスタイル。ハイドンさん、やりますね!曲の良さに夢中になれるのは、もちろん素晴らしい演奏があればこそです。第3楽章は、独奏チェロが高音域を超高速で演奏するのに圧倒されました。ただ、演奏の手元はあんなに忙しそうなのに、奏でる音色が滑らかで美しかったためか、聴く側はゆったりとした気持ちで音楽に浸れました。佐藤さんが十八番にされているブラームスのチェロ・ソナタとはまた違ったチェロの魅力満載。今の佐藤さんの演奏を目の前で聴けて、私はとてもうれしかったです。佐藤晴真さん、突然の抜擢にもかかわらず、はるばる札幌までいらしてくださり、素晴らしい演奏を聴かせてくださってありがとうございます!

ソリストアンコールはバッハ「無伴奏チェロ組曲第1番より サラバンド。たったお一人での演奏で、大きなhitaruを別世界にしてしまう力量。素晴らしいです!私、佐藤さんには室内楽を極めてほしいななんて勝手な願望を持っていたのですが、やはり室内楽だけではもったいない。大ホールでの演奏もどんどんお願いします!佐藤さんには、これからドヴォルザークシューマンほかチェロ協奏曲は何でも演奏して頂きたいです。あとは独奏チェロの高音が美しいベートーヴェンの三重協奏曲もぜひ!そしていつか必ずブラームスの二重協奏曲を聴かせてくださいね。私、佐藤晴真さんの演奏を一生追いかけます!


後半はチャイコフスキー交響曲第5番。私は第4楽章を部分的に知っていたものの、通しで聴くのはこの時が初めてでした。休憩時間中に読んだプログラムノートには「運命」のモチーフとあり、ん?ジャジャジャジャーンがどこかに仕込まれているの?なんて貧弱な想像をした始末。しかし演奏の冒頭、クラリネットの旋律を聴き、これは第4楽章にも形を変えて出てくるし重要なモチーフなのねと認識しました。その後も、全部ではないかもしれませんが、このモチーフが様々な形で登場するのに気づけたのはうれしかったです。第1楽章は、なんといっても冒頭クラリネットとそれに寄り添う中低弦がすてき!掴みって大事。また木管とシンクロする弦の美しさが個人的にツボでした。やっぱり先日の北広島でのオール・チャイコフスキー、特に「弦楽セレナーデ」は聴きたかったなと心の中で蒸し返してしまったほど。時折パンチの効いた金管ティンパニが入ってくるのも良くて、メリハリがあって退屈させない展開でしたが、やはりそこはビシッとキメてくれる演奏があるからこそですよね。コントラバスの重低音で静かに締めくくるところはぐっと来ました。しかもコントラバスは7台もいてうれしい!続く第2楽章も中低弦で始まるんですね。そこにホルンソロが加わるなんて、ブラームスのお得意分野じゃないですか。リアルで会う以前はブラームスの音楽をディスっていたらしいチャイコフスキーですが、実際はブラームスのこと好きだったのでは?なんて妄想したり。木管のリレーが美しく、それをいったんコントラバスが受け取ってからチェロのターンに。もう、もう大好きです。前半のチェロ協奏曲ではソリストしか見てなくてごめんなさい!そして曲が盛り上がってもどこか哀しげな雰囲気なのが心に染み入りました。第3楽章、ワルツはチャイコフスキーの本領発揮ですよね。耳慣れた白鳥の湖くるみ割り人形のワルツよりはおとなしめな印象で、それでもメロディメーカー・チャイコフスキーの美しいメロディを楽しませて頂きました。第4楽章の始まり、超イイです。これも運命のモチーフだったなんて!その弦が主役のところはもちろんイイのですが、木管のターンでのピッチカートや金管が主役のときの強奏も印象的でした。そしてクライマックスの盛り上がりが超絶すごくて、こちらのテンションもMAXに。チャイコフスキーさん、あなたはお強い!私、チャイコフスキーのことを何も知らなかったみたいです。某音楽アニメでは北国訛りの美少女設定にされたチャイコちゃん。そんなイメージとは裏腹に、こんなに骨太で男前な交響曲を書いていたんですね!例えばベートーヴェンの生命力爆発とは違うけれど、繊細な人イコール弱い人ではないと思える、芯の強さ。私は一度聴いただけでチャイ5のことを好きになりました。札響演奏歴は98回という定番曲。私は何度でも聴きたいので、これからもぜひ積極的に演奏をお願いします!

ところで、疑問がひとつだけ。チャイコフスキー交響曲第5番について、ブラームスは「4楽章の最後以外は素晴らしい」とチャイコフスキー本人に話し、チャイコフスキー自身もそう思っていたのだそうですね。なぜ?とっても素敵なフィナーレですよ!?当時は第6番悲愴が世に出る前だったから、チャイ5の華やかな締めくくりが浮いているように感じた?あるいはもっと単純な話で、本当は弱っているのに空元気だったとか?いえどうもピンとこないです。素晴らしい演奏を聴いた後だけに、私は以前から気になっていたこの逸話の真相がかえってわからなくなりました(苦笑)。なお、この有名なエピソードについては、指揮者・藤岡幸夫さんのオフィシャルファンサイトでも紹介されていましたので参考までに。リンク失礼します。

www.fujioka-sachio.com


カーテンコールでは、指揮の広上さんがオケの中のほうに入っていき、ホルン首席奏者のかたから始まり、順番に木管金管ティンパニの奏者のかたに起立を促されました。その度に会場からは大きな拍手が。私、今回は佐藤晴真さんをかぶりつきでガン見しようと(←)かなり前の方の席をとったせいで、演奏中はオケの後ろの方は見えなかったんですよね。最後に奏者の皆様のお顔を拝見できたのがよかったです。客演のかたも大活躍、ありがとうございます!広上さんは、オケ後方のメンバーを一通り讃えた後、弦は最前列の首席・副首席のかたたちと順番に肘タッチ。演奏中、広上さんは指揮台の上を所狭しと動き回り、踊るように楽しそうに全身全霊で指揮されていました。オケもノリノリでしたよね。特に今回は舞台に近い席だったため、熱気がダイレクトに伝わってきて、音楽ってこんなに楽しいんだ!と、私も肌で感じました。録音や動画配信ではこうはいかない、時間と空間と空気を共有するこの快感。やっぱりライブは最高です!素晴らしい演奏をありがとうございました!


佐藤晴真さんのデビュー・アルバム『The Senses ~ブラームス作品集~』。私は発売日当日に入手し、以来ヘビロテしています。いま現在の佐藤さんの演奏、必聴ですよ!弊ブログに他のCDを含む感想文をアップしていますので、よろしければお読みください。以下のリンクからどうぞ。 

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hitaruで平日夜に開催される札響の新・定期。第3回(2021年1月)のレポートは以下のリンクからどうぞ。最高のベートーヴェン「三重協奏曲」を聴かせてくださった葵トリオ。彼らもまたミュンヘン国際音楽コンクールで第1位を獲得しているのですね。世界の大舞台で実力を認められた日本人の若手演奏家の演奏を、地元オケで聴けるのは大変ありがたいです。 

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新進演奏家育成プロジェクト オーケストラ・シリーズ 第58回札幌(2021年2月)のレポートも弊ブログにアップしています。札響からはコントラバス下川朗さんとヴァイオリン鶴野紘之さんがソリストとしてご出演。大舞台で素晴らしい演奏を披露してくださいました!私はその演奏を拝聴し、お一人お一人が特別な演奏家でいらっしゃることを今更ながら強く認識。今回の演奏会ではもちろんオケの一員として演奏されていた下川さんと鶴野さん。オーケストラは、そんなすごい演奏家たちが大勢集まって一つの音楽を創りあげているんですね! 

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

新進演奏家育成プロジェクト~オーケストラ・シリーズ 第58回札幌 (2021/2)レポート

www.jfm.or.jp


オーディションで選ばれた若手演奏家がプロのオーケストラと協演する「新進演奏家育成プロジェクト~オーケストラ・シリーズ」。2021年2月に開催された今回(第58回)のオケは我らが札幌交響楽団です。その札響からもコントラバス下川朗さんとヴァイオリン鶴野紘之さんがソリストとして大舞台に立たれました。なお4名の若手演奏家の詳しいプロフィールは以下の演奏会詳細ページ、本番の様子は札響公式ツイッターの写真を参照ください。

www.sso.or.jp



私はいつも衣装のことを細かく書いちゃうのですが、百聞は一見にしかずですから、今回は公式ツイッターの写真でご確認頂ければと思います。皆様とってもお似合いでしたよ。そして4名とも暗譜での演奏、お見事でした。

出演者のかたならびに関係者の皆様におことわりです。私は音楽に関しては楽譜も読めないほどの素人で、弊ブログには思いつきしか書いていません。今回のレポートもおそらく勘違いや大事なところの見逃し等が多々あるかと思われます。大変申し訳ありませんが、私の勝手な感想についてはどうか真に受けずに受け流して頂けましたら幸いです。


新進演奏家育成プロジェクト~オーケストラ・シリーズ 第58回札幌
2021年2月11日(木)15:00~ 札幌市教育文化会館大ホール

【指揮】
現田茂夫

【独奏】
下川朗(コントラバス
三上結衣(ピアノ)
月下愛実(ソプラノ)
鶴野紘之(ヴァイオリン)

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島高宏)

【曲目】


最初から最後まで期待以上!これからの飛躍が楽しみな若手演奏家の皆様の大舞台、いずれも素晴らしい演奏でした。今の状況にもかかわらず、例年通りにプロジェクトを遂行してくださったことに感謝いたします。プログラム冊子には、今回の第58回札幌だけでなく令和2年度の各地での演奏会(第55回から第60回まで)すべての演目と出演者紹介、曲目解説が掲載されていました。また第1回からの出演者が一覧で載っていて、そこには現在プロとしてご活躍されている演奏家のお名前がずらり。札響奏者のお名前もたくさん見つけました。まさに若手演奏家の登竜門なのですね。文化庁委託の新進演奏家育成プロジェクト、今後も末永く続いてほしいです。

札幌市教育文化会館大ホール。私は以前一度だけ別のイベントで来たことがあるものの、管弦楽は今回が初。金管打楽器がうるさくなかったですし、木管や弦の響きもキレイで、音響は良いと私は感じました。無論kitaraやhitaruと比べてはいけません。なおチケットは完売。定員1100席のホールは1席飛ばしでの配席で、この演奏を聴けた観客は単純計算で550名のみです。今はkitaraが改修工事中ですし、感染症対策もあってのことなのは承知しています。しかしこの日の素晴らしい演奏をより多くの人と共有できたらよかったのにと、ついわがままなことを思ったりもしました。せめて私はその場にいたラッキーな聴衆のひとりとして、この日の感激を自分目線ではありますが文章で書き残したいと思います。

開演前に舞台では自主練をしているオケのメンバーがちらほら。この日の演目に混ざって、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番のメロディも聞こえてきました。本番が詰まったハードスケジュールですものね……。ご多忙な中いつもハイクオリティな演奏をありがとうございます。13日の北広島でのオールチャイコフスキー、叶うことなら聴きたかったです……特に協奏曲!そして開始時刻になり、まずはオケのメンバーが舞台へ。首席が降り番だったパートや客演が入ったパートもありましたが、言うまでも無く安定の演奏で若い演奏家のかたたちを支えてくださいました。手加減はしないけど、さりげなく寄り添うのが素晴らしいです。ありがとうございます!


トップバッターはコントラバス下川朗さんで、曲はクーセヴィツキー「コントラバス協奏曲」コントラバスが主役の協奏曲があるんですね。オケの編成はコンパクトでしたが、ハープが入っていました。オケのコントラバスパートはわずか2人で、首席と副首席が入って下川さんをベースで支える体制に。下川さんは大きなコントラバスを抱えて登場。指揮者の横にでんと構えるコントラバス、まず目に訴えてくるインパクトがすごいです。ホルンの第一声から勇ましく始まったオケ演奏、しかし続く独奏コントラバスは意外にもロマンティックな音色を奏でました。音域的にはチェロでもいけるかも?と一瞬思いましたが、むしろ雄弁なチェロよりも朴訥なコントラバスだからこそ響く美しさなのかもしれないと、演奏を聴きながら思い直しました。ハープが良い仕事をしています。コントラバスの場合、高い音を出すときは前屈みの無理な姿勢にならざるをえず、しかも基本的にメロディは高音の曲だったので、見た目ではソリストはかなりキツイ体勢をとり続けながらの演奏でした。また演奏姿を拝見していると、コントラバスで高い音を響かせるには、弓を動かすのに強い力が必要なのかも?と感じました(※実情を知らずに想像で言っています)。曲の終わりに近づくと少しお疲れが出たのか、下川さんは肩で大きく息をして渾身の力を込めて演奏されている感じに。しかし演奏自体は乱れずにきっちり聴かせてくださったのはさすがです。フィニッシュのオケの演奏では、オケのコントラバスパートを先輩達と一緒に演奏し、最後の最後まで全力で駆け抜けた下川さん。コントラバスの隠れた魅力満載の演奏をありがとうございます!


続いて、ピアノ三上結衣さんによるラフマニノフピアノ協奏曲第2番フィギュアスケート浅田真央選手がBGMに採用したり「のだめカンタービレ」でも使われたりした有名な楽曲ですが、私は部分的にしか知らず、通しで聴くのはこの日が初めてでした。ピアノ独奏から入るも、すぐにオケが参戦し最初からクライマックスのような壮大さに鳥肌が。素直にオケがすごいと思いつつ、まってピアノがのまれちゃうかも?と余計な心配をしてしまったことを白状します。ごめんなさい、ピアノは全然負けていませんでしたね。厳しいオーディションを勝ち抜いてこられたかたですから当然とはいえ、三上さんの堂々とした演奏に「肝が据わっていらっしゃるな」と感心しました。第1楽章のオケとのガチンコ勝負も良かったですし、第2楽章の語るようなピアノもとっても素敵でした。そして高速のピアノから始まる第3楽章、私は一度聴いただけで好きになってしまいました!オケは個人的に好きな中低弦がゾクゾクさせてくれて、大事なところでビシッと決めてくれる金管打楽器の使い方がツボ。そして華やかなピアノは絶対に外せません!素人目から見ても、低音と高音を高速で行き来したり、ゆったりかつ壮大に響かせたりと、ピアノは相当難しそうです。それでもピアノ演奏に危なっかしいところは皆無で、それどころか強弱やテンポがめまぐるしく変化するオケと一体化しているよう。私は演奏に感嘆しながら、ああイイ曲!と安心して音楽の流れに身を任せられました。ピアノ一台だけでもあるいはオケだけでもおそらくこの良さは味わえない、掛け算の良さ。私、今回の三上結衣さん×札響がラフマニノフピアノ協奏曲第2番」の生演奏初体験で本当によかったです。素晴らしい演奏をありがとうございます!


休憩後、後半のはじめはソプラノ月下愛実さん。曲はベッリーニ「歌劇『夢遊病の女』から、“ああ、信じられない”」。月下さんは表情と身振り手振りで完全に役になりきった歌い方をされました。美しいお声を、キラキラして美しいけど儚げだなと、私ははじめのうちはイメージだけでそう感じました。きっとそんな曲なのだと思いますが、オケは比較的小さい音、木管を中心としたあたたかな音色で「夢見がちな女性」に寄り添うような演奏をしていたのが印象的(でも場面展開で一度大音量になったところはビックリしました……)。個人的にツボだったのは、独奏チェロがソプラノと会話しているようなところです。男性が地声より少し高めのやさしい声で女性に語りかけているようなのがステキ。妄想失礼。歌詞の意味はわからないにもかかわらず私がその世界に引き込まれたのは、なにより月下さんの歌声が「女性の揺れる気持ち」を直接ハートに訴えてきたからです。クライマックスの高くて長くのばす歌声には、この大声量が月下さんのぺたんこのお腹から発せられているなんて!とまず驚かされ、そして圧倒されました。素晴らしい!ありがとうございます!お声のキラキラは薄氷やガラスではなく硬度の高い宝石の輝きです!今回は「夢子ちゃん」を演じきった月下さんですが、この美しくかつ底力のあるお声ならきっと強い女性も見事に演じてくださるのでは?


トリはいよいよヴァイオリン鶴野紘之さんによるブラームス「ヴァイオリン協奏曲」。お若いソリストであればチャイコフスキーメンデルスゾーンあたりを選びそうなところを、あえてのブラームス!期待しちゃうに決まってます!私はチケット購入後、この曲の手持ちのCDを全部封印し、先入観をできるだけ消す努力をしてからこの日を迎えました。我ながら重いです。中低弦とホルンから始まる最初からブラームス節全開で、この重厚なオケだけで既に大満足な私(苦笑)。しかし独奏ヴァイオリンが登場して空気が一変、ここからが本番です。パガニーニの左手ピッチカートのような派手な超絶技巧は出てこなくても、例えば同時に複数の音を重ねて鳴らす等があるブラームスだって絶対に難しいはず。私、はじめのうちは、ヨシここは難なくクリア、ここは綱渡りだったかも、なんて変な聴き方をしてしまったことを申し訳なく思います。先入観は持つなとあれほど!しかしこの難曲を見事に弾きこなした鶴野さん、タダモノじゃないです。札響はこんなにすごいヴァイオリニストを秘密兵器に隠し持っていたんですね。またティンパニが小さめの音で併走してくれた、ソリストの見せ場がとっても素敵でした。ところで、カデンツァは誰の作品だったのでしょう?勉強不足で申し訳ありません。もしご存じのかたがいらっしゃいましたら教えてください。「オーボエの弱々しいアダージョ」で始まる第2楽章は、まずはオーボエのソロの美しさにうっとり。この部分はサラサーテにディスられたそうですが、そんな、とっても素敵じゃないですか!それに前の楽章で全力疾走した独奏ヴァイオリンもちょっと一息つかなきゃ、たぶんこの後がもちません。満を持して独奏ヴァイオリンの再登場。オーボエに負けない美しさに、大丈夫これなら最後まで素晴らしい音楽を聴かせてくださるはずと期待が膨らみます。そして聴き所しかない第3楽章へ。流れるような高速だったり逆にぐっと気を溜めたりとテンポが細かく変化する、情熱的な独奏ヴァイオリンが素晴らしい……これは私の頼りない耳で聴いた限りですが、この時のテンポの変化は、私が今まで聴いてきた数多くの録音のどれとも一致しない、鶴野さんオリジナルのテンポのように感じました。奇をてらっているわけではなく、一般的な(と思われる)演奏とは本当に微妙な違いではあっても、鶴野さんが大事にしていらっしゃるものが感じ取れる演奏。ブラームス好きな私はとてもうれしかったです。まってオケがズレちゃうのでは?と一瞬余計な心配が頭をよぎりましたが、まったくの杞憂でしたね大変失礼しました。我らが札響、ズレるわけがないって!コンマスは前後に小さく頭を振りながらテンポを掴んでいたようにお見受けしました。それでも無理をしている様子は微塵も感じさせず、驚くほど自然にソリストとシンクロするオケがすごいです。なによりも、いつもはオケの一員として全体の流れに合わせるのがお仕事の鶴野さんが、ソリストとして個性を発揮されたことに大拍手をおくります。しかも派手さでごまかせない上に、のっぺりと演奏した途端に退屈になるブラームスで!またソリストの個性をあたたかく受け止め、壮大な演奏で包みこむオケが素敵すぎました。これって愛ですよね愛!私が愛してやまないブラームス「ヴァイオリン協奏曲」、この日の演奏はこの先ずっと忘れることはないと思います。良いものを聴かせて頂きました。ありがとうございます!

カーテンコールでは、鶴野さんは指揮の現田さんとお互いに腕を回して胸を付けないハグ。きっと様々なものを背負い、ものすごいプレッシャーを感じながら大舞台に立たれたのですよね。そんな中でただ「こなす」のではなくご自身の芸術性を追求した演奏、お見事でした。そして先に演奏した下川さん、三上さん、月下さんも舞台に登場し、盛大な拍手が贈られました。この舞台に立てるだけでもすごいことなのに、4名全員がプロオケ札響と互角に渡り合って素晴らしい演奏を聴かせてくださいました。何度でも拍手喝采したいです!皆様大変お疲れ様でした。これからますますご活躍の場を広げていってくださいね。応援しています!


コントラバスは主役にもなれる!札響首席コントラバス奏者・吉田聖也さんご出演「ウィステリアホール ふれあいコンサートVol.3」のレポートは以下のリンクからどうぞ。いつもは縁の下の力持ちのコントラバスですが、時々はセンターになってお腹の下の方にくる重低音の主旋律を響かせてください! 

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冠婚葬祭の「あいプラン」さんも毎年「ラブ&サンクスコンサート」を開催(管弦楽はもちろん札響)し、「道内在住の音楽家応援企画」として若手演奏家の大舞台を用意してくださっています。私が聴いたのは2018年9月、この時の指揮も現田茂夫さんでした。ソリストはヴァイオリンの板倉竹香さんで、演目はチャイコフスキー。カーテンコールの際、コンサートマスター(当時)の大平まゆみさんが横でさりげなくアドバイスして板倉さんをサポートなさっていたのが印象的でした。その時のミニレポートは以下にあります。 

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健康上の理由で2019年11月末日に退団された大平まゆみさん。その著書『100歳まで弾くからね!』の、愛が重い読書感想文のリンクも以下に置いておきます。私のまとめかたではその魅力が伝わらないのがもったいない。ですから私の記事を読んでくださるかたは、必ず大平まゆみさんの著書そのものをお読みになってからにしてくださいね。 

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数多のエピソードの中から一つだけネタバレ。アメリカで活動されていた若き日のまゆみさんは、演奏家として思い悩み行き詰まったことがありました。しかし偶然ラジオから流れてきたヴァイオリンの音色に涙があふれ、「こういう演奏をしたい」と強く心に決めて、再起を果たしたのだそうです。その時の演奏は、ダヴィット・オイストラフによるブラームスのヴァイオリン協奏曲!魂に響く演奏は、誰かの人生を変えちゃうことだってあるんです!


最後までおつきあい頂きありがとうございました。

札幌交響楽団 hitaruシリーズ新・定期演奏会 第3回 (2021/1)レポート

プログラム発表当初から気になっていた公演です。バーメルトさんが指揮した2019年8月定期のブラームス二重協奏曲がとても良かったので、葵トリオをソリストに迎えてのベートーヴェン三重協奏曲はぜひとも聴きたいと願っていました。しかし当初は予定が未定だったため、私は1次販売を見送り、開催日の2週間前から始まった2次販売でチケットゲット。運良く1階の良い席を選べました。

渡航制限の影響により、当初予定のバーメルトさんに代わり札響指揮者の松本宗利音さんが指揮することに。1ヶ月前に同じhitaruで第九の副指揮者を務められた松本さんが、今回は正指揮者です。なお、1月定期と同じくプログラムにバーメルトさんからのメッセージが掲載されていました。同じ内容が札幌交響楽団公式ツイッターから発信されています。バーメルトさん、ありがとうございます!近い将来きっと再会できますように。



また、今回の公演前に札響動画配信プロジェクトでティンパニ『ギュンター・リンガー』の皮の張替えをレポートした動画が公開されました。なかなか見られない舞台裏、必見です!


『動画配信プロジェクト』~札響打楽器奏者によるティンパニの皮の張替え

 

札幌交響楽団 hitaruシリーズ新・定期演奏会 第3回
2021年1月28日(木)19:00~ 札幌文化芸術劇場 hitaru

【指揮】
松本宗利音

【独奏】
葵トリオ
A=秋元孝介(ピアノ)、
O=小川響子(ヴァイオリン)、
I=伊東裕(チェロ)の3人によるユニット

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島高宏)

【曲目】


指揮の松本さん、バーメルトさんの代打という大役お疲れ様でした!最初から最後まで素晴らしい演奏をありがとうございます。三重協奏曲で、葵トリオの皆様と並んだ姿がとても印象に残っています。松本さんは若いソリストお三方と同世代ですよね。これからの音楽界を引っ張ってくださる若い音楽家の皆様が、クオリティ高い演奏を聴かせてくださったのがうれしかったです。何もお若い指揮者だから大目に見ようとか、そんな色眼鏡で見たつもりはないのですよ。初めて聴く曲もよく知る曲も、私は気付いたら演奏に聴き入っていて、そういえば今日の指揮者は松本さんだったなと、そんな感じで気負わず聴けました。むしろご年配の大指揮者のほうが、過去の実績と比べてしまい私達は過度な期待を抱きがちなのかも。とはいえ私は、指揮者による味付けの違いはほんの少しわかってきたかな?のレベルです。そんな私が言うのは大変おこがましいのですが、松本さんのカラーが出てくるのはきっとこれからだと思います。これからの演奏も楽しみにしています!そして今後も札響をよろしくお願いします!


1曲目は早坂文雄「左方の舞と右方の舞」。プログラムによると札響演奏歴は2回という演奏回数がとても少ない曲で、私も聴くのは初めてです。編成が大きく、弦や管楽器の人数が多い上に、多彩な打楽器やハープ、チェレスタが入りました。曲は、和風の雰囲気はあるものの、雅楽のようなゆーったりではなかったです。かといって西洋音楽のスピードとも違う、ドラや拍子木のような打楽器の数々がタイミング良く入ってくれて独特のリズムが新鮮。和楽器はいないのに、弦で笙、ハープとチェレスタで琴のような音を聴けたのも驚きでした。泥臭さや「懐かしい」とは違う、こんな東洋的な音楽もあるんですね。スケールの大きさで私はなんとなく「大河ドラマのテーマ曲のよう」だとも感じました。普段ノーマークの日本人作曲家の作品も、今後気にかけていこうと思います。


2曲目はいよいよベートーヴェン「三重協奏曲」ベートーヴェンの代表作の一つですし素敵な曲だと思うのに、札響演奏歴はわずか10回(ほか楽章抜粋演奏は1回)なんですね。プログラムノートの解説にあった通り、ソリストを3人も集める興行的な難しさも一因かも。札幌で生演奏を聴ける貴重な機会、背筋が伸びます。葵トリオのお三方は、秋元さんと伊東さんは黒シャツで、小川さんは全体にラメが入ったシルバーのキャミソールドレス姿でした。冒頭、オケのチェロ・コントラバスの控えめな音色からだん盛り上がってくるのだけでも既に大満足なのに、独奏チェロが入った途端に私は全部気持ちを持って行かれました。高めの甘い音色で歌う独奏チェロ、めちゃくちゃ好きです!続く独奏ヴァイオリン、独奏ピアノも高音域で幸せな気持ちを歌ってくれて、それをさらにオケが盛り上げてくれます。三重協奏曲は英雄交響曲と同時期に作曲されたとのことですが、この頃のベートーヴェンは遺書を書くほど思い悩んでいたのですよね確か。そんな時でもこんなに幸せを噛みしめる曲を生み出すなんて、やっぱりベートーヴェンには敵わないなと改めて思いました。頭の中がお花畑じゃないからこその「幸せ」の価値、素晴らしいです!第一楽章の終わりにパラパラと拍手が起きたのはご愛敬。まるでクライマックスの盛り上がりでしたよね。第2楽章、もうもう独奏チェロ素敵すぎです!ベートーヴェンはこの曲をはじめはチェロ協奏曲にする予定だったのかも?と一瞬思ったほど。しかし独奏ヴァイオリンとピアノが入るとやはり3つの独奏楽器がトリオで主役と思いなおしました。第2楽章の個性の掛け合い、ブラームス二重協奏曲がいぶし銀なら、ベートーヴェン三重協奏曲はまるでプラチナの光沢のようです。そしていつの間にか第3楽章に。独奏はまるで3人で親しく会話をしているよう。それでもソリストが我が道を突っ走るわけではなく、協演するオケと一緒に一つの音楽を創りあげているのがすごいです。ベートーヴェン三重協奏曲の場合、テレビ放送やネット動画でよく見るのはスターソリストを3人集めた「夢の共演」的な演奏が多い印象があります。豪華でも目移りしてしまい、一体どこに注目すれば良いかわからなくなる面も(私だけかも?)。しかし今回は葵トリオというピアノトリオの常設チームをお招きしての演奏、まさに目の付け所がシャープです。ピアノトリオを一つの人格のソリストと捉えれば良いのですね。またルドルフ大公への当て書きでピアノパートがやや簡単だという説がありますが、聴いている側の印象ではピアノだって絶対に難しそうです。クライマックスの一歩間違えばピアノの練習みたいになりそうな部分だって、今回はまるで「皇帝」のクライマックスのような華やかな盛り上がりで聴かせてくださいました。もちろん併走する独奏ヴァイオリンと独奏チェロのお力もあるからこそなのでしょう。やっぱりピアノトリオはイイですね!それぞれが主役でありながら時には脇役に回って、お互いに良さを高めあう感じ、私は大好きです。しかも今回はオケとの協演で素晴らしい演奏を聴けて、私はとても贅沢な気持ちになれました。ありがとうございました!

ソリストアンコールはピアノトリオによる演奏でした。どのパートも忙しそうで、わずかなズレがおそらく命取りになりそうな曲。しかしお三方の呼吸や間合いは完全にシンクロしていて、明るい曲をこちらは安心して楽しく聴くことができました。オケとの全力投球の直後にこんなにクオリティ高いソリストアンコール、素晴らしい!ありがとうございます!帰宅して札響公式サイトを確認したところ、曲はハイドンピアノ三重奏曲 第27番 ハ長調 第3楽章」でした。ハイドンピアノ三重奏曲は他のピアノトリオによる演奏を私は何度か聴いていますが、いずれも長調のあたたかな雰囲気がとても素敵だったと記憶しています。ハイドンピアノ三重奏曲の良い曲をたくさん書いているのですね。そして葵トリオの皆様、今度は本来のピアノトリオでの演奏を室内楽向けのホールでぜひとも拝聴したいです。札幌での公演、お待ちしています!


休憩をはさみ、後半はドヴォルジャーク交響曲第9番新世界より』」。ちなみに私はちょうど2年前、同じhitaruで海外オケによる「新世界より」を聴きました。陽気なティンパニ奏者がマレットをくるくる回しながら楽しそうに演奏なさっていたのが妙に印象に残っています。また2018年11月にはkitara尾高忠明さん指揮による札響の演奏も聴いています。プログラムによると、「新世界より」の札響演奏歴は実に326回(ほか楽章抜粋演奏は136回)。頻繁に登場するベト7の倍以上なのですから、その人気は半端ないです。もちろんどんな曲でも、聴く度に新鮮な気づきがあるので何度でも大歓迎です!冒頭のヴィオラ・チェロ・コントラバスで静かに始まるところから素敵。静かに木管も続いて、一転パワフルな演奏で世界ががらっと変わる感じが良いです!皮を張り替えたティンパニも大迫力!バーメルトさんに鍛えられた(?)強弱のメリハリはさすが。次々とキャッチーなメロディが出てきて退屈させない曲ではありますが、変化するところはビシッとキメる演奏があればこそです。第2楽章、チューバはここの「家路」のイントロで登場するだけなんですね。他の金管がパワフルなところに登場しないのは意外でした。イングリッシュホルンの素敵なソロで懐かしい気持ちになるのは、おそらく小学校時代の下校の時刻に毎日聴いていたせい。主に管楽器が奏でる2番目3番目の主題も素敵で、この時は伴奏にまわる弦のザワザワやピッチカートも好きです。弦の首席奏者で弦楽四重奏の演奏があるのには今回初めて気付きました。こんなレベルで申し訳ないです。第3楽章、トライアングルの発車ベルで出発進行(と私が勝手に思っています)からゾクゾク。木管のリレーがキレイなのはもちろん、低弦が良い仕事するなあと聴き入っていました。やっぱりhitaruって低弦がよく響く!私の勝手な思い込みかもしれませんが。第4楽章、金管がパワフル!頼りにしてますティンパニ!ホルンが世界を変えてくれるんですね。控えめに一度だけ鳴ったシンバルも今回はわかりました。私はドヴォルジャークのオリジナル版とブラームスが整えた版の違いに気づけるような聴き方はできませんが、列車の車窓から次々と新たな景色に出会うように曲の移り変わりを楽しめました。定番曲、何度聴いても良いです!素晴らしい演奏をありがとうございました!


演奏とは関係ないことで一つだけ。終演後、分散退場前にそそくさと立ち上がり会場の外へ出る人が多かったのは少し残念でした。急用やおトイレ等の事情がある人は致し方ないですが、そうでなければ少しだけ気持ちに余裕を持って順番を待ちましょうよ皆様。いい大人が自分さえ良ければいいとの振る舞いをするのはみっともないと私は思います。分散退場に意味があるのかうんぬんの主張は別の場所でどうぞ。お小言ごめんなさい。人のことを言う前にまずは我が身を省みるべきなのは承知しています。私自身ももろもろ気をつけます。

本年度から始まった平日夜のhitaruシリーズ新・定期。日本人作曲家の演奏機会が少ない作品に、華やかな協奏曲、そして超有名な交響曲という組み合わせは盛りだくさんで、思いっきり楽しめますね。通常の定期の演目が時にハードル高いと感じる人(私です)にも受け入れやすいです。今回私は初めてでしたが、これなら平日夜でも頑張って聴きに来たくなると思いました。札幌でお勤めのかたは大通駅直結のhitaruで19時開演なら足を運びやすいでしょうし、実際今回は真冬の夜にもかかわらず1階席は9割ほどの席が埋まっていました。週末にわくわくお出かけもいいけど、平日夜の帰宅前に演奏会に寄るのも素敵ですよね。今は大勢で集まってわいわいお酒を飲むことは難しい状況ですが、静かに座って楽しむクラシック音楽の演奏会なら感染症の心配が少なく、幸せな時間を過ごせると思います。何かと息苦しい昨今、たまにはささやかな楽しみがあっても良いのでは?札幌の皆様、お仲間同士でもお一人様でも、平日夜は札響のコンサートにぜひ♪


2021-2022『hitaruシリーズ新・定期演奏会』4回通し券発売のお知らせが発表されています。ラインナップは超豪華!4回通し券やhitaruシリーズ限定のラッキーhitaruパスならオトクな料金で楽しめますよ。

www.sso.or.jp


通常の定期とkitaraでの「名曲シリーズ」を含む、2021-2022シーズン『札幌交響楽団主催演奏会』のラインナップは以下のリンクから確認できます。

www.sso.or.jp


今回の公演の1ヶ月前に開催された「札響の第九」のレポート記事は以下のリンクからどうぞ。何より演奏が素晴らしかったからこそ、記憶に残る特別な第九でした。 

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ブラームスの二重協奏曲が聴けたバーメルトさん指揮の2019年8月定期演奏会は、Eテレクラシック音楽館」で放送されました。以下のリンクの番組レビューでは、バーメルトさんへのインタビュー内容はすべて書き起こしています。また演奏会レポート記事に遡ることができますので、よろしければあわせてお読みください。 

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

WISTERIA HALL PREMIUM CLASSIC Ⅶ ピアソラ生誕100周年記念(2021/01) レポート

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昨年2020年2月17日のふれあいコンサート以来、実に11ヶ月ぶりにウィステリアホールで演奏会が開催されました。この間いくつもの企画が流れ、大変な思いをされながらこの日の開催に尽力くださった関係者の皆様に感謝です。再始動、おめでとうございます!私達もこの日を心待ちにしていました。

ホール定員の約半数90席での開催で、チケットは早々に完売。お客さん達は入場前に1階ロビーで検温と手の消毒を済ませ、地下のホールへ。自由席でしたが使える座席は決まっていて、1席飛ばしでの着席でした。小学生以上は入場可で、親子連れも数組お見かけしました。


WISTERIA HALL PREMIUM CLASSIC Ⅶ ピアソラ生誕100周年記念
2021年1月17日(日)14:00~ ウィステリアホール

【演奏】
岡部亜希子(ヴァイオリン)
小野木遼(チェロ)
新堀聡子(ピアノ)

【曲目】
A.ヒナステラ

  • 3つの小品 Op.6
  • パンペアーナ 第1番 Op.16
  • パンペアーナ 第2番 Op.21

A.ピアソラ

(アンコール)ピアソラアヴェ・マリア


ピアノはベーゼンドルファーでした。


約2時間、夢中になれる演奏を聴けて最高に幸せでした!自分では普段ほとんど聴かないジャンルの曲を聴いて新鮮だっただけでなく、あの場ですごい演奏の熱量を肌で感じられたのがうれしくて。やっぱりライブは最高です!うまく伝えられなくてもどかしいですが、演奏に聴き入っていると、何と言えばいいか時空が歪む感覚がしたんです。11ヶ月という長いブランクは瞬時に縮み、演奏を聴いているときはそれが永遠に続くとすら思えるのに、終わってからは一瞬の出来事だったような不思議な感覚。今は長距離の移動がままならず、世界的なアーティストの来札は激減している状況です。しかしご近所にこんなに素晴らしい演奏家がいらっしゃるんですよ!しかもその演奏を奏者と聴衆の距離が近いホールで聴けるなんて、大変ありがたいです。やはり札幌は恵まれていると改めて思いました。

札響の奏者でいらっしゃる岡部亜希子さんと小野木遼さん。オケとは勝手が違う環境での演奏、大変素晴らしかったです!こんなに個性的で素敵な演奏をなさるのに、札響の演奏会でいつもお見かけしてその演奏も聴いているはずなのに、私はうっかりしていました。いつも首席・副首席ばかりに注目していてごめんなさい!岡部さんと小野木さんのこと、次の演奏会からは絶対に見逃しません!そして新堀聡子さんのピアノがとてもステキでした。「ブラームスが大好き」と仰る新堀さん、ヒナステラピアソラブラームスとはまるで違うピアノなのに、独奏曲も伴奏もすべてクオリティ高い!プロのお仕事とはいえ、おそれいりました。おそらく演奏会の企画を進めているときから自主練を積み重ねてこられたのですよね。流れた数多の企画でもそうだったのかもと思うと、私は胸が痛みます。11ヶ月の間に公演中止となった企画の数々も、今後ぜひ実現して頂きたいです。

また曲の合間のトークも楽しかったです。岡部さんは、前日は札響の小樽ニューイヤーコンサートから戻って即リハーサルで、ウィンナ・ワルツとは毛色が違う曲を弾いて頭がぐちゃぐちゃになったとおっしゃっていました。その前日リハでは、小野木さんはチェロの弦が切れた(D線?)そうで、張り直す前の弦のほうが音が良かったとか。弦の種類や素材で価格が異なり、実際の購入価格といったちょっと生々しいお話も。小野木さんは「タンゴは2回目同じところが出てきても同じにはならない」ともおっしゃっていて、それに注意しながら演奏を聴くとより細かな変化を楽しめました。まったく楽器は弾けない素人の目から見ても、ピチカートがまるでクラシックギターをかき鳴らすような動作に見える部分もあり、耳だけでなく目でも刺激的な演奏が次々と。ご多忙な中、どんな音楽でも弾きこなした上で聴き手を思いっきり楽しませてくださりありがとうございます!


前半はヒナステラ。私は作曲家の名前からして初耳でした。プログラムノートによるとヒナステラピアソラの師匠なのだそうです。鮮やかな赤のノースリーブドレスで舞台に登場した新堀さんはすぐに演奏開始。ピアノ独奏曲「3つの小品」はアルゼンチンの各土地とその民族をイメージした曲とのことで、3つの個性的で美しいピアノを聴かせてくださいました。私がイメージする「タンゴ」とは違いましたが、ヨーロッパ圏の音楽とも違っていて、めったに聴けない曲を素敵な演奏で聴けてよかったです。この後はずっと伴奏になるピアノですが、この新堀さんがリードしてくださるなら大丈夫と、大船に乗った気分に。続くヴァイオリンとピアノによるパンペアーナ第1番では、岡部さんは黒のベアトップドレスで登場。きちんとまとめた髪には赤い小さな花の髪飾りをつけていらっしゃいました。岡部さんの演奏、超カッコイイです!小刻みに音を刻んだり高音がキュイーと鳴ったり、おそらく演奏はとても難しいのだと思われます。しかし緩急も音の変化もよどみなくつながっていて、曲がまるで生きているように感じられました。前半最後となる曲は、チェロとピアノによるパンペアーナ第2番。小野木さんは、黒の長袖シャツに赤いネクタイで女性お2人の衣装と色を揃えた装いでした。小野木さんはまさに全力投球、目まぐるしく雰囲気が変わる曲を低音がぐっとくる演奏で聴かせてくださいました。私チェロ好きを自認しているのに、この作品を知らずにいたなんて、もったいなかったです。またひとつチェロの好きな曲が増えました。

15分間の休憩中、舞台のスクリーンに次回公演の予告動画(※記事の末尾にその演奏会情報のリンクがあります)が流れました。バリトンの駒田敏章さん、お話するときの落ち着いた声もステキ。もう3月が楽しみすぎます!


後半はピアソラで、1曲目はヴァイオリンとピアノによるエスクアロ<鮫>。ほんの3分ほどの短い曲、良い意味で大変驚かされました。スリリングでドキドキして、「食われる」ような、こちらが獲物にされた気持ちに。演奏を聴いていると、華奢な岡部さんからものすごいオーラが放たれているように感じました。すごい……!そしてチェロとピアノのル・グラン・タンゴは、私は生演奏で聴くのは3回目。何度でも聴きたいので、全世界のチェリストに弾いて頂きたいほど大好きな曲です。ル・グラン・タンゴを書いたピアソラは偉大!この曲を47,8回は舞台で弾いているという小野木さんの演奏は、聴いている側の感覚では大人の余裕で変化を楽しませてくれて、独特のリズムも音色もたまらなくて、私は完全に小野木さんの演奏に呑まれてしまいました。だめ、ホテレマウ。困ったな。

ここからはピアノ三重奏による演奏でした。映画音楽のオブリビオン<忘却>は、映画そのものよりも曲のほうが有名になったのだそう。今までとはうってかわって少しスローテンポになり、イケイケドンドンではなく大人の哀愁に満ちた雰囲気がとっても素敵でした。これなら映画そっちのけでも聴きたい曲だと妙に納得。演奏は、ピアノがベースを作りながら、チェロが先に弾いたところをヴァイオリンが少し変化して再現するのが基本スタイルで、その変化を楽しめました。ああピアノトリオってイイですね!室内楽だとこの編成が一番好きかもしれないです私。

ブエノスアイレスの四季 より<夏>と<冬>は、バンドネオンが入った室内楽管弦楽等の様々な編曲をテレビ放送などで耳にする機会は多いものの、私はピアノトリオでの演奏を聴いたのは初めてでした。<夏>では、全員が同時に演奏するところも素敵でしたが、私は特にヴァイオリンが主役のところが下支えのチェロとセットで印象に残っています。私の中でブエノスアイレスの四季はイコール<夏>で、それを素晴らしい演奏で聴けてうれしかったです。続く<冬>は、ピアノソロのところでまず心奪われ、その後にシンクロする弦でゾクゾク。三者三様の個性がぶつかりながらも当たり前のように一つになっている印象でした。<春>と<秋>もいつか聴いてみたいです。

プログラム最後の曲はおなじみリベルタンゴ。真打ち登場、めちゃくちゃカッコイイ!私が以前聴いた別のピアノトリオの演奏でもそう感じましたし、何を基準にそう思うのか自分でもわからないのですが、テンポ速いんですねこの曲。新堀さんのお話によると、文字通り「自由な」タンゴなのだそうで、ネットにピアソラ自身のアレンジや演奏があるので聴いてみてくださいとのこと。そうですよね。今年2021年はピアソラ生誕100周年とのことですし、私も意識して色々と聴いてみたいと思いました。昨年のベートーヴェンアニバーサリーイヤーほどは騒がれないかもしれませんが、演奏会やテレビ放送でもピアソラの出番が増えるかも!

アンコールはピアソラアヴェ・マリアピアソラがこんな美しい曲も残しているなんて!それぞれのパートでのソロも楽しめる演奏で、私はうっとりと聴き入りましたよ。もちろん全部良かった上で、個人的には中でも特にヴァイオリンに魅了されました。だって先ほどまではハンターのようだったヴァイオリンが、この曲ではまるで乙女の祈り。同じ楽器を同じ演奏家が演奏しても、がらりと違う表情になるのですね。素晴らしい!岡部亜希子さん、小野木遼さん、新堀聡子さん、最後まで素敵な演奏をありがとうございました!


今回はアンケートはwebで、出演者とのふれあいはナシでした。分散退場後に内装が黒いホールから外へ出ると真っ白な雪景色が広がり、一気に現実世界へ。言うまでも無く外の世界は何一つ変わってはいません。しかし私は確かに別次元へ行って帰ってくる特別な体験をしました。誰だって生きている限り色々とあるけれど、生きづらい世の中を一生懸命に生きているんですから、ほんの少し夢を見る時間があってもいいですよね。当たり前のように生演奏が聴ける環境があることを、私はしみじみとありがたく思います。ウィステリアホールさん、様々なハードルを乗り越えて演奏会を再開してくださり本当にありがとうございます!チケット代はリーズナブル設定な上、ホール定員半数で演奏会を開催するとなると、興行的には大変かと存じます。本来の意味での満員御礼でコンサート開催される日が一日も早く来ますように。


ちょうど11ヶ月前に開催された「ウィステリアホール ふれあいコンサートVol.3」のレポートは以下のリンクからどうぞ。コントラバスが主役の演奏会、最高でした!ピアノは新堀聡子さんで、コントラバスは札響首席奏者の吉田聖也さん。ピアソラの曲「キーチョ」も聴けたんですよ。 

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WISTERIAHALL WEB CAST では、無観客収録の演奏動画が無料で公開されています。ウィステリアホールの企画構成ご担当の新堀聡子さんはもちろん、今回の演奏会にご出演のヴァイオリン岡部亜希子さん、次回の連作歌曲が楽しみなバリトン駒田敏章さんの演奏も聴けますよ。演奏会が出来なかった間もこのような形で音楽を届けてくださり感謝です。

www.msnw-wishall.jp


2021年3月28日(日)に開催予定の WISTERIA HALL PREMIUM CLASSIC Ⅷ は「朗読と歌で綴るマゲローネのロマンス」。若き日のブラームスが書いた連作歌曲、札幌で生演奏を聴けるなんて夢のようです。どうか無事に開催されますように。リンク先では予告動画を観ることが出来ます。

www.msnw-wishall.jp


最後までおつきあい頂きありがとうございました。

「札響の第9」2020 in hitaru(日曜昼公演)(2020/12)レポート

年末恒例の第九。今年2020年に限っては絶対に聴きたくて、私はチケット発売初日に席を求め、当日を楽しみに待っていました。私が聴いたのは、2回公演のうちの2回目、日曜昼です。今年は年をまたぐジルベスターコンサートがないため、この第九が今年最後の札響の公演となりました。


「札響の第9」2020 in hitaru(日曜昼公演)
2020年12月27日(日)13:00~ 札幌文化芸術劇場 hitaru

【指揮】
秋山和慶

副指揮者 / 松本宗利音

ソプラノ / 田崎尚美
メゾソプラノ / 清水華澄
テノール / 村上公太
バリトン / 大西宇宙
合唱 / 札響合唱団 ほか

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島高宏)

【曲目】


今年の年末に我が町のオケで第九を聴けて、しみじみ良かったです。この状況の中で今健康に生きていられて、年末恒例の第九を聴けたなんて、つくづく私は幸せ者だと思います。なにより、今年の特別な第九を、最高の演奏で聴かせてくださったことに感謝します。指揮の秋山和慶さんは、当初予定の飯守泰次郎さんに代わって急遽ご出演。秋山さんは今あちこちでひっぱりだこですよね。私は今年10月に初めて秋山和慶さん×札響の演奏を聴き、もう秋山さん大好きになってしまったわけですが、そんな演奏をきっと日本中のオケでなさっているのだと拝察します。そりゃあモテるに決まってますよね。秋山さん、超ご多忙の中で突然の代役をお引き受けくださりありがとうございます!今回の第九も、最初から最後まで最高でした!ご高齢でいらっしゃいますし、来年以降はできるだけご無理の無いスケジュールでのご活躍を祈っています。時々は札響にもいらしてくださいね。

そして、今回の舞台設営は独特でした。今年9月に予定されていたドイツレクイエムは演奏が見送られたほどですから、今の状況で合唱を入れるのはとても難しいのだと思います。そんな中で感染症対策を万全にした上での開催、頭が下がります。hitaruのステージがいつもより広く(オーケストラピットをせり上げた感じ?)、オケが通常より前のほうに。その後方はアクリル板で2段階に仕切られ、手前のブースにソリスト4名および副指揮者、奥に合唱団が入りました。ソリスト4名と合唱団は第4楽章のはじめに登場。合唱団はいつもよりずっと人数が少なく、口元は白い布のようなもので覆っていました。しかしじゅうぶんに迫力ある歌声を披露くださいました。練習時間は限られていた中でこのクオリティ、素晴らしいです!また今回副指揮者として登場された松本さん、モニターをチェックされながらの影武者お疲れ様でした。来月はバーメルトさんの代役が控えていますね。ご武運を!

今回私の席は2階席の前の方でした。2階席を見渡すと、なぜか2列目が全部空席だったのですが、これは感染症対策ではなく視界の確保のためかもしれません。おかげさまで視界が遮られることはなく快適でしたし、前の方であれば急勾配ではなく居心地よかったです。音の響きも良かったと私は思っています。低音がぐっと来る感じがするのは、ホールの特長なのかあるいは演奏で低音を強調していたのか、はたまた私が単に低音贔屓だからなのかはわかりません。

開演前に札響事務局長の多賀さんがごあいさつ。奏者から転身したその年に、この感染症拡大。前例の無いこと続きで大変だったことと存じます。演奏会の再開そして年末に第九を実現することだって、筆舌に尽くしがたいご苦労があったはず。本当にありがとうございます。


1曲目はベートーヴェン「序曲『レオノーレ』第3番」。はじめティンパニ会心の一撃に私は気持ちを持って行かれて、その後も大事なところでガツンと来るティンパニを追いかけることに。もちろん演奏が素晴らしいからこそですが、ティンパニの使い方上手すぎですベートーヴェンブラームスがなかなかティンパニを鳴らせなかった理由が少しだけわかった気がしました。あと、弦の強弱のメリハリが個人的にツボで、小さな音での高音の美しさと大音量での低音がぐっとくる感じが好き。コントラバスは7台いましたね。フルートがとってもキレイ、舞台袖(バンダ)からトランペットの音が!?と、そんな聴き方ではありますが、曲の雰囲気や音の強弱がどんどん変化して、オペラそのものをほぼ知らない私でも楽しく聴けました。カーテンコールでは、秋山さんが舞台袖からトランペット奏者のかたを連れてきてくださり、会場は盛大な拍手。15分ほどの序曲であってもベートーヴェンワールド炸裂で、メインの第九の前にテンションあがりました。

休憩後は、メインプログラムのベートーヴェン交響曲第9番ニ短調『合唱付き』」。ごく小さな音から始まり、あっという間にベートーヴェンワールドに引き込まれる第1楽章は、なんだか深刻そうな弦の合間に美しくやわらかな木管の音色が入ってくるのが印象的。第2楽章、ガツンとティンパニにまたやられて、もちろんそれ以外のパートもクールでカッコイイ。個人的に大好きな第3楽章は、全部美しい中でも、私は特に管楽器がパパパーと鳴った後の弦のまるい音がツボで(伝わっている気がしない)、第2楽章のクールな弦と同じかたたちなのよねと当たり前のことを思ったり。しかしやはり第4楽章が本番ですよね!ソリストと合唱団そして打楽器およびピッコロ奏者の皆様が入場し、パワフルに演奏開始。チェロとコントラバスの低音、しびれます。もうこれだけでもかなり満足できるのに、さらにバリトンの開口一番の歌声がすっごいです!低い声LOVEな私のひいき目を差し引いても、一瞬で世界が変わる感じがしました。次はテノール、そしてメゾソプラノにソプラノとだんだん高い声が参戦してくるのにシンクロして気持ちも自然に高揚します。合唱で盛り上がるところではもう泣けて泣けて、マスクとハンカチがぐしゃぐしゃに。ドイツ語はわからないけれど、歌声は言葉を超える想いを直接ハートに訴えてきますね。クライマックスでのオケの力強い演奏がまたすごかったです。10月にベト8で感じたあの生命力をさらに超える力を感じました。もうどこまでいっちゃうんでしょう我が町のオケ。いえ、どんどんいっちゃってください!限界なんて無いですよね。どこまでも私ついて行きます!

演奏終了した瞬間、おひとり「ブラボー」のかけ声が。ですから禁止なんですって!もう何度もやられると面白くないですよ。しかし目立ちたがり屋さん約一名を除き、会場は出演者の皆様に最大限の拍手をおくりました。秋山さんは副指揮者の松本さんと合唱指揮の長内さんを舞台の前に連れてきてくださり、ソリスト4名とは肘タッチではなく両手で握手。カーテンコール終了後は、奏者の皆様がお互いに肘タッチされていらしたのがとても印象的でした。札響の皆様、何もかもがイレギュラーだったこの一年、大変お疲れ様でした。素晴らしい演奏をありがとうございました!来年も素敵な演奏を聴かせてください!

こんな言い方しかできないのがもどかしいですが、やっぱりベートーヴェンってすごいです。圧倒的な生命力!どんな言葉も敵わない、魂に響く力!人生何があっても生きているって素晴らしいですし、第九の本気の演奏を聴けば、自分が抱える日常の悩みが些細なことに思えてきます。歴史の中で第九は政治利用されたこともあったようですが、この尊さを前にそんなことを思いつくなんてとんでもないですよね。しかしこの曲に本気で向き合った人なら、邪な思惑が入り込む余地なんて無いとわかるのでは?むしろどんな人であれ、第九の圧倒的な力に触れれば煩悩さえも吹き飛ぶはず。また、冷静に考えれば大真面目に1時間近くも演奏してきたのに「おお友よこのような調べではない」と全部ひっくり返しちゃうなんて(ドタバタ喜劇なら全員でずっこけるところ)、しかもその後に合唱も入って大盛り上がりさせちゃうなんて、誰も真似できないですよね。第九は唯一無二の曲。また今年2020年はベートーヴェンの生誕250年アニバーサリーイヤーでもありました。内緒ですが実は私、どの演奏会もベートーヴェンばっかり!なんてこっそり思ったり、テレビの特集番組ではいくらなんでも褒めすぎと感じたりしたこともあったんです。それでも、今回の第九を聴いて「やっぱりベートーヴェンには敵わない」となり、この歴史的な一年の締めくくりには第九こそふさわしいとまで思い至りました。個人的には音楽に音楽以外の意味を持たせることは好まないのですが、今年は特に色々ありましたから、聴く人それぞれがご自身の想いをのせて聴くのもアリですよアリ!第九にはそんな懐の深さだってあると感じました。やっぱりすごい!

分散退場の後、晴れやかな気持ちでHitaruを後に。とても寒い日でしたが、しばらくコートを羽織らなくてよいほど身体が熱くなっていました。今年の年末にこの第九が聴けて本当によかったです。来年の年末もきっと第九が演奏されますように。その前に2021年9月に予定されているドイツレクイエム!今度こそ聴けますように。オケ以上に演奏会が激減してしまった室内楽だって聴きたいです。言うまでもなく、当たり前のようにコンサートに通えることと健康に生きていられることに感謝して。


札響に関する動画配信と非売品CD(2020年)をまとめた記事は、以下のリンクからどうぞ。もちろん生演奏は最高ですが、ネット配信にはその良さもあるので、今後も配信のメリットを活かした企画があるといいなと思います。 

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今年、ありがたいことに私は秋山和慶さん×札響のベートーヴェンを3回も聴くことができました。ベト8および皇帝を聴いた演奏会レポートのリンクを以下に置いておきます。私、秋山さんと札響にブラームス4つの交響曲をぜひ演奏して頂きたいです。できれば4つの協奏曲も。希望は言ってみる! 

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。