自由にしかし楽しく!クラシック音楽

クラシック音楽の演奏会や関連本などの感想を書くブログです。「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ(http://nyaon-c.hatenablog.com/)」の姉妹ブログです。

「クラシック音楽館 札幌交響楽団演奏会」(NHK制作・2019年10月6日放送) レビュー

2019年8月23日に行われた札幌交響楽団第621回定期演奏会(金曜夜公演)の様子がテレビの地上波で全国放送されました!Eテレの番組「クラシック音楽館 札幌交響楽団演奏会」(2019年10月6日(日)21時放送)です。今回はこちらのレビューを書きます。

www4.nhk.or.jp

放送内容の概要につきましては上のリンクを参照願います。番組宣伝用の短い動画に、ブラームスの二重協奏曲が使われているのがとっても嬉しいです。

なお、私はこの放送で取り上げられた演奏会の生演奏を実際に聴いており、演奏会直後のレビュー記事は既に弊ブログにアップしています。放送では取り上げられませんでしたが、重厚な本プログラムの前には超楽しいロビーコンサートがあったんですよ。そのロビーコンサートについてもレポートしていますので、よろしければ以下のリンクからどうぞ。愛が重くて恐縮です。 

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

私はこの演奏会が全国放送されると知ったとき、もう小躍りしたくなるほどうれしかったです。我が街のオーケストラ札響を全国の皆様に知って頂ける!しかも個人的に好きなブラームス中心の演目が揃ったイチオシの演奏会!8月の公演が終わってからもずっと放送日が待ち遠しくて待ち遠しくて。そして放送当日、少し遅刻しましたがリアルタイム視聴しながらツイッターで実況しました。アニメレビューをやっていた頃のノリでポンポン連続ツイートしたものの、なんだか私は激しく浮いていましたね。大変失礼しました。

そして放送が終わってからもずっと録画をエンドレスリピートしてニヤニヤしています(笑)。まるで身内がテレビに出たかのような気分(※図々しい)。バーメルトさんへのインタビューにいちいちうなずき、すっかりお顔を覚えている奏者のかたが大写しになって大はしゃぎして、個人的にツボなポイントは何度も巻き戻して観ているほど(※ほとんど病気)。さすがのカメラワーク、わかってくださっているなという映像ばかりでありがたかったです。演奏会だと自席から見える部分は限られているため、正面から指揮者の表情を拝見でき、各パートを様々な角度から見ることが出来るなんて夢のよう。録画はもちろん永久保存版です!

私はこの感激を少しでも皆さんと共有したくて、番組の感想を書くことにしました。残念ながら本放送を見逃してしまったかたや録画がないかたにも、記録としてご活用頂けましたらうれしいです。クラシック音楽館の再放送は滅多にないようですが、もし叶うことなら再放送を希望します!できれば円盤化もお願いしたいです。

演奏内容の感想については繰り返しません。あくまでも番組オリジナルのインタビュー内容や練習風景等のドキュメンタリー要素について、私が感じたことを書きます。ちなみにバーメルトさんがインタビューで語った内容はすべて書き起こしています。私自身がバーメルトさんの言葉を余すところなく記録したいと考えたからです。そして私の実況ツイートについては…本記事で引用するのはやめておきます。なんというか、私って色々とアレだなって(汗)。「ああここ好き」とか「手元アップ!」とか、一体何の実況かと…どうかしている自覚はあります。

では本題に入ります。私の感想はあくまで個人的な考えですので、参考程度に留めて頂きたくお願いいたします。また、記事の内容に間違いを見つけた場合はおそれいりますが指摘くださいませ。


番組冒頭いきなり北海度の大自然の風景とキタキツネが映り、いつもの放送とは違う雰囲気。「透明感と壮大さを併せ持つ、この楽団ならではのサウンド」というナレーションが入って、プログラム紹介続いて札響とバーメルトさんの簡単な紹介がありました。


1961年、札幌市民交響楽団として発足。以来北海道唯一のプロオーケストラとして活動してきました。
2018年、マティアス・バーメルト首席指揮者就任。スイス出身の77歳。オーボエ奏者から指揮者になりました。ブーレーズシュトックハウゼンに学んだ現代音楽の作曲家としても活躍しています。

バーメルトさんは作曲家としてもご活躍だったとは、失礼ながら私は初めて知りました。マエストロ、いつかぜひ自作品を演奏会で取り上げて、私達に聴かせてください。
コンサートから作曲まで、様々な経験を積み重ねてきたバーメルト。札響には初共演のときから何か特別なことを感じてきました」とのナレーションに続き、バーメルトさんのインタビュー映像へ。

最初に指揮をしたときから、とても相性がよかったのです。お互い音楽が好きで、うまくいきました。
オーケストラというのは難しい組織です。毎日100人ほどで集まって前に立つ。たった1人の指示に従う。このような職業はほとんどないでしょう。
自然な状況ではありません。ですから相性が大事なのです。指揮者とオケの間に、良い化学反応があるということです。

「相性がいい」なんて、すごくうれしいことを言ってくださる!人と人との相性は頭で考えてどうこうできるものではないので、バーメルトさんと札響はまさに幸せな出会いをしたのだと思いますし、このご縁に改めて感謝したいです。

ナレーション「2018年9月6日 北海道胆振東部地震。直後に予定されていた演奏会も取りやめになりました」。

ああ、函館の夜景が一斉停電で真っ暗に…。この映像は胸が締め付けられました。地震発生直後の名曲シリーズが中止されたのも記憶に新しいです。ちなみに今年9月に同じプログラムによる演奏会が開かれて、関係者およびファンの一年越しの想いが昇華したんですよ。

そして再びバーメルトさんのインタビューへ。

日本の皆さんに何かが起きると、人間として強く心が動かされます。アニメスタジオの事件も地震も、どのようなことでもです。日本でそのようなことが起きると心が痛むのです。
ある国のある楽団の首席指揮者になるのは、敬意や愛情のような特別な思いがあるからです。そうでなければ、私はここにいないでしょう。

バーメルトさん、こんなにも日本のことを思ってくださり本当にありがとうございます。こんなかたが我が街のオケ・札響の首席指揮者だなんて、私達は幸せ者です。

続いて、「札響メンバーによる被災地慰問」としてコンミス大平まゆみさんが被災地で演奏している写真が映され、続いて大平さんのお話がありました。が、演奏会メインの番組だから仕方が無いとはいえ尺が足りません(涙)。大平さんの被災地慰問については、HTB制作ドキュメンタリーで詳しく放送された内容が大変良かったです。参考までに、弊ブログの感想記事へのリンクを以下に置きます。ローカル放送でしたが、ぜひとも全国放送してほしい内容です。限られた尺の中でも札響の良さが余すところなく表現されていますし、地方の民放放送局でもここまで優れた番組が作れるということを、日本全国の皆様に知って頂きたいです。 

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ナレーション「地震からおよそ1年たって開かれる今回の公演。1曲目には武満徹作曲の『死と再生』が選ばれました。元は原爆をテーマにした映画のために書き下ろされた作品。地元の人に捧げる、バーメルトと楽団員からのメッセージです」。

私はてっきり原爆投下と終戦があった8月だからこの演目が選ばれたのだと思っていたのですが、地震からおよそ1年という意味もあったのですね。それを知ってから録画で聴くと、生演奏を聴いたときとはまた違う感じ方ができそうです。

“音楽の力”というのは人によって異なるでしょう。
しかし誰にでも理解できる、非常に強い力であることは間違いありません。
絶対的な力です。言葉では不可能な表現が、音楽にはできるのです。

バーメルトさんのこの言葉は、今の私にとってタイムリーでした。私はまさに今「言葉」についてあれこれ考えて堂々巡りになっているところです。言葉って結局受け手の捉え方次第なところがあって誤解が多いし、また発信した人自身もその言葉が最適だとは思えなくても使っている場合があるなと。それはたとえ母国語の語彙力が高くても、外国語の場合はたとえその言語に精通していても関係なく、頑張っても超えられない「壁」が存在するのかなとぼんやり考えています。一方、言葉だと超えられない「壁」は、音楽の場合は無い気がするんですよ。「気がする」としか言えないのがもどかしいですが。もちろん音楽の感じ方は十人十色で、またその人の素養によって解釈は違ってくるとは思います。それでも知識や語彙力や言語に左右されず、聞く力と意思さえあれば誰もがそのままの形で受け取ることができます。そしてもし作曲者や演奏者に迷いがあれば単なる音の並びにしかならず、人の心に響かないはず。なので音楽が成立している時点で、届ける側の考えや想いは完成しているのではないかと。まとまりませんがこの辺で。素人が生意気なことを書きました。


いよいよ演奏会の映像へ。プログラム前半の2曲とソリストアンコールまでが続けて放送されました。何度聴いても良いです!ソリストの郷古さんと横坂さんについては、私はサイン会で少しお話しただけにも関わらずすっかり親近感を抱いてしまい、まるで親戚のおばちゃんが甥っ子たちを応援しているような気持ちになります(←)。ちなみに私は二重協奏曲は最初から最後まで大好きですが、一番のツボは放送開始から37分10秒くらい、第1楽章クライマックス直前の独奏ヴァイオリンと独奏チェロが重なるところです。細かすぎて伝わらないけど伝えたいです。

後半のブラシェンに入る前に、曲の解説やバーメルトさんへのインタビューそして札響との練習風景がたっぷり放送されました。ありがとうございます!

ナレーション「ピアノ四重奏曲第1番は、ブラームス1861年に作曲した名曲です。その76年後、ナチス迫害を逃れアメリカに渡ったシェーンベルクが、オーケストラのために編曲しなおしたものが今日お聞き頂く作品です」。

原曲の演奏と札響の本番演奏の映像が交互に流れました。原曲のほうはおそらく「クラシック倶楽部」のアーカイブだと思います。こんなコンテンツの蓄積があるのがNHKの強みですよね。

作曲家はなぜ他の作曲家の作品に手を加えるのでしょうか?
その作品が大好きだからという場合、あるいはより良くしたいから変えたいからという場合もあります。
シェーンベルクは編曲の理由として、「ピアノ四重奏曲ではいつもピアノの音が大きすぎるからだ」と言っています。

バーメルトさんの発言を裏付ける、シェーンベルクが出版社へあてた手紙の一部が映像で紹介されました。

すぐれたピアニストほど大きな音で演奏して、聴衆に弦がまったく聞き取れない、(中略)私は一度すべてを聞きたいと望んでおりました。
シェーンベルク評伝 保守的革命家」ヴィリー・ライヒ (著), 松原 茂 (翻訳), 佐藤 牧夫 (翻訳) 音楽之友社 (1974)

ナレーション「ブラームスが目指した音楽とは、一体何か?そう考えたシェーンベルクは、ピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの音を、大編成のオーケストラに置き換えました。ブラームスの時代にはまだ珍しかったシロフォンを使ったり、トランペットに弱音器をつけて演奏させるなど、ありとあらゆる楽器と奏法を駆使。ブラームスの音楽の全容を明らかにしようとしたのです」。またまた重ねる映像が札響での演奏会本番の映像で、各パートのアップがうれしいです!

この曲を聴いた人の多くが、あまりブラームスらしくないと言います。
でも「いかにもブラームス」という編曲をシェーンベルクがするわけがない。
ブラームスが1937年に作曲していたらこうしていただろう、そういう編曲をしたとシェーンベルクは言っています。
ご存じのようにシロフォンをはじめ、ブラームスも知らなかったいろいろな楽器を用いています。

バーメルトさんは、多くの人が疑問に思っていることについてお話してくださいました。「シェーンベルクは言っています」がミソなのかも。ちなみにブラームスが仮にシェーンベルクと同時代に生きた場合こんな編曲をしたかどうかと問われると、私は違うと考えます。しかし、ブラームス本人ではなく後の時代のシェーンベルクが編曲したことに意味があるとも思っています。

続いて芸術の森での練習風景をじっくりと。私はただの一聴衆にすぎませんが、それでも全国の皆様に、このあたたかな陽光がさす素敵なリハーサル会場を自慢したいです。芸術の森は札幌市内とは思えないほど自然豊かな場所で、毎年夏に行われるPMFのピクニックコンサート会場となる野外ステージもあります。同じ敷地内の札幌芸術の森美術館ではアートに触れることができ、少し足をのばせば、大規模な国営滝野すずらん丘陵公園大自然にどっぷり浸ることもできます。こんな恵まれた環境で、札響の皆様は音楽に磨きをかけているんですよ!ただし熊出没注意です。余談失礼。

この作品のため、3日間念入りにリハーサルを重ねた札幌交響楽団」とナレーションが入りました。私がいつも思うのは、指揮者と合わせるのがたった3日間であのクオリティに仕上げてくるのが本当にすごいなと。マイクを向けられたティンパニ・打楽器首席奏者の入川奨さんが「リハーサルでは整理整頓をしていく」とおっしゃっていましたが、まず各奏者のかたがご自分のパートを完璧にしてきた上で(!)、全体で合わせ指揮者の指示でブラッシュアップかけていくのでしょうか?さらっとおっしゃってましたが、普通に考えてこのかた達は只者ではないです…。それも次から次へとやってくる本番のたびにやっているというのは、プロ集団とはいえやはり大変だと思います。頭が下がります。

また入川さんは「バーメルトさんほど強弱にこだわる方は見たことがない」とも。確かに練習の映像でも、ピアニッシモ、フォルテ、クレッシェンド(だんだん強く)、ディミヌエンド(だんだん弱く)…と強弱に関する指示が多いように感じられました。バーメルトさんが強弱にこだわることに関しては、またもやHTB制作ドキュメンタリーで詳しく放送されています。先に紹介した番組とは別の番組で、こちらはローカル放送の後にBSで全国放送されました。参考までに、弊ブログの感想記事へのリンクを以下に置きます。HTB制作の札響ドキュメンタリー2本につきましては、できれば2つとも全国放送で再放送して頂きたいですし、手元にずっと持っていたいので円盤化を希望します!

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

そして練習風景に被せる形で「バーメルトは楽譜に対し、徹底して忠実であるべきと考えました」のナレーションが入りましたが、ここはおそらくマエストロへのインタビューが割愛されたのだと思います。尺の関係であれば仕方が無いとはいえ、できればマエストロ自身が語る言葉で知りたかったです。

マイクを向けられたファゴット首席奏者の坂口聡さんは「今回のプログラムはすごく難しい曲(ですけども)、彼がどのように作り上げていくか、(一種の)造形物みたいな形を(どのような)指揮の仕方で提示してくるのか。楽しみですね」とおっしゃっていました。バーメルトさんもブラシェンが難曲であることをわかったうえで、このようにインタビューでお話されていました。

難しいですが、オーケストラにはそれが必要なのです。
難しい曲に取り組むことで、どんどん上達しますからね。

エストロは意外にスパルタ気質があるのかも(嘘ですごめんなさいごめんなさい)。でももちろん、札響が高レベルの要求を乗り越えられるオケだからこその言葉ですよね!

そして本番の映像へ。前半2曲は編成が小さかったため、大活躍の金管や打楽器、低い音の木管も加わったオールスターキャストがうれしい!カメラも各パートの奏者の皆様を丁寧に追いかけてくださりありがとうございます。そしてバーメルトさんが暗譜だったことがはっきりとわかりました。

拍手喝采のカーテンコールの中、テロップが順番に出て番組終了。全国放送ありがとうございました!札響の皆様、愛しています!バーメルトさん、きっといつまでもお元気で、札響を末永くお願いします!

カメラ越しではありますが、番組をご覧になった全国の皆様にもきっと札響の魅力が伝わったと思います。そして札幌コンサートホールkitaraが大変良いホールだというのも感じて頂けたかなと。ここで札響の生演奏を聴くのは最高ですので、未体験のかたはぜひいらしてくださいね!隣接する中島公園も四季の移ろいが楽しめる素敵なところなんですよ。ちなみにkitaraは来年度の後半に改修工事に入るのですが、工事期間中は昨年竣工した札幌文化芸術劇場hitaruが札響定期の会場となります。都会のど真ん中にあり地下鉄駅直結のため便利で、オペラができるこちらも良いホールです。


最後に。2020年度の札響定期演奏会の速報が出ました。大変魅力的なプログラムが揃っています♪

www.sso.or.jp

どの回も垂涎モノではありますが、個人的に絶対外せないのはG.オピッツさんによるブラームスのピアノ協奏曲第1番です。彼の弾くブラームスピアノ曲が大好きなんです私。そしてまだ自分の中で苦手意識があるドイツレクイエムは頑張って勉強します!札響がある人生は素敵です♪


最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c