はじめにお知らせ。今回の札幌交響楽団第621回定期演奏会は、Eテレ「クラシック音楽館」で10月に放送予定だそうです。皆様ぜひご視聴ください。私は最高画質で録画して永久保存版にします!
なお、本日(8/23)開催の『第621回定期演奏会』の模様は、NHK-Eテレ「クラシック音楽館」(毎週日曜21:00~23:00)にて今年10月に放送予定です。詳細が決まりましたらお知らせいたします。#札響 #クラシック音楽館
— 札幌交響楽団(公式) (@sapporosymphony) 2019年8月23日
テレビで全国放送されるのが本当にうれしいです。もちろん今回に限った話ではなく、札響の定期演奏会はいつも素敵です。しかし今回は特に素晴らしく、演目も演奏も最高でした!とにかく「私はこのすごい演奏をライブで聴いたんですよ!」と、全人類に自慢したい気持ちでいます。しかもご近所で聴けるありがたさ。私は両日とも家族の食事の準備をしてから来ましたからね。家から地下鉄ですぐに行ける距離にKitaraという良質なホールがあって、最高の演奏を聴けるこの環境はつくづく恵まれているなと改めて思います。
ブラームス命の私にとって、今回2019年8月の定期は絶対に外せない!年間プログラム発表の時からそう思っていました。ブラームスの管弦楽作品のうち、4つの交響曲と、協奏曲でも超有名なヴァイオリン協奏曲はよく演奏されますが、それらと比べて二重協奏曲の演奏機会は少ないようです。しかし二重協奏曲はブラームスの管弦楽作品の中で最高傑作だと私は思っていて、必ず生演奏で聴きたいとずっと願っていました。そしてメインプログラムのブラシェン(ブラームス「ピアノ四重奏曲第1番」のシェーンベルクによる管弦楽編曲版)も演奏機会が少ない曲ですし、原曲好きの私としては別の作曲家によって味付けを変えた管弦楽版はぜひとも聴いてみたいと思いました。当然2回あるなら2回とも聴きたいです。ということで、今回は「バーメルトの四季」と「マイフェイバリット3」の合わせ技で金曜夜と土曜昼の両方に行くことにしました。
8月下旬、札幌の短い夏はもう終盤。定期公演があった週末は時折雨がぱらつき肌寒かったです。「バーメルトの四季」の「夏」が意外に涼しくて、バーメルトさんは驚かれたかもしれませんね。しかし今年の8月上旬の札幌は異常なほど暑かったんですよ…。そしてKitaraに隣接する公園の池にいるカモたちは丸々と太って、美味しそうでした(←)。
それでは演奏会の感想に進みます。いつものように素人コメントであることをご了承下さい。またひどい間違いは指摘くださいますようお願いします。
札幌交響楽団 第621回定期演奏会(金曜夜および土曜昼公演)
2019年8月23日(金) 19:00~ 2019年8月24日(土) 14:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール
【指揮】
マティアス・バーメルト
【独奏】
郷古廉(ヴァイオリン)
横坂源(チェロ)
【管弦楽】
札幌交響楽団
【曲目】
- (ロビーコンサート)ベリオ オーパス・ナンバー・ズー(Opus Number Zoo)
- 武満徹 「死と再生」~「黒い雨」より
- ブラームス ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲
- (ソリストアンコール)ラヴェル ヴァイオリンとチェロのためのソナタ第2楽章
- ブラームス ピアノ四重奏曲第1番(シェーンベルクによる管弦楽版)
まずはツイッターでの速報を貼っておきます。初日の感激で動揺していたせいか、同じ写真を2枚アップしていて間抜けです。
日付変わりましたが今夜は札響定期へ。武満で鳥肌、二重協奏曲のお若い2人のソリストに心奪われオケの壮大さに圧倒され、編曲者の原曲へのリスペクトが感じられるブラシェンに感激そして本気で涙が。そしてやはり今回のロビコンはきっと伝説になる!ごめんなさいまだ消化できてませんがひとまず速報。 pic.twitter.com/IvSqXfDBKO
— にゃおん (@nyaon_c) 2019年8月23日
2日目には演奏を聴いて感じたことを思いつくまま連続ツイートしました。それらに補足する形で今回レビューを進めます。なお、ツイートはすべてつなげていますので、上の速報ツイートから辿れば全部読めます。
ロビーコンサートはベリオ「オーパス・ナンバー・ズー(Opus Number Zoo)」。
伝説になるロビコンはベリオのOpus Number Zoo。台詞劇入りの木管五重奏。笑いを堪えて演奏しているお姿も楽しかったです。最後の曲はすすきのやステラプレイスが出て、2匹の猫は郷古廉と横坂源と演奏会仕様に。猫に大喧嘩させたのはきっと二重協奏曲の「和解」を印象づけるためかな?と思ったり。
— にゃおん (@nyaon_c) 2019年8月24日
4月は弦楽四重奏で幼稚園、6月は金管五重奏でサーカス、そして今回8月は木管五重奏で動物園!札響のロビコンは毎回レアな曲を取り上げてくださいます。また4月は無言の手遊びでしたが、今回は時折裏声も使う台詞入りで、立ち上がったりする動作がある等、4月の伝説を塗り替えてしまう勢いの楽しい曲。奏者の皆様も笑いを堪えて(特にオーボエ奏者のかた・笑)熱演してくださいました。聴いているこちらもとても楽しかったです。ちなみに台詞の日本語訳は谷川俊太郎さんだそう。短い曲が順番に演奏され、最後の4曲目の出だしは「すすきのの、どまんなか!」ええっ!?と変な声が出そうになりましたよ私。4曲目は今回の演奏会仕様に歌詞を変えての演奏でした。2匹の猫がいがみあって喧嘩するのですが、その猫の名がそれぞれ郷古廉と横坂源(!)。いいんでしょうか…。とりあえず、すすきのに繰り出す感じではなさそうなおふたり(※私の勝手なイメージです)。猫2匹は大喧嘩でボロボロになります。これはおそらく本番の二重協奏曲における「和解」の意味合いを強調するためかなと、私は勝手に解釈しました。ところで前回の金管五重奏に入っていたホルンが今回の木管五重奏にも入っていて、一体ホルンは金管楽器なのか木管楽器なのか少しだけ疑問に思いました。もちろんどっちもアリです大歓迎です!
今回のテーマは「再生」。1曲目の武満徹はタイトルに「再生」が入っているド直球。2曲目の二重協奏曲は、ブラームスが当時仲違いをしていた親友ヨアヒムと和解をするために作曲したいきさつがあり、友情の「再生」とも言えると思います。3曲目ブラシェンは、原曲の室内楽を管弦楽にアレンジしたことで新たな魅力が生まれたという意味で「再生」ですよねきっと。個人的には特に聴きたい演目が揃っていてありがたいです。
会場入りすると、金曜夜公演ではテレビカメラがあちこちに構えていて、いつもとは違う雰囲気。自分が映ることはないのにちょっとドキドキしました。カメラがそんなに席を幅広く占領してたら座れる席が減っちゃう…との心配はご無用。そもそものお客さんが少なくて空席が目立っていましたので(涙)。土曜昼はもう少し入っていましたが、金曜夜は7割程度の客入りだったでしょうか。本当にもったいない。今回のプログラムはバーメルトさんが「邦人作品を取り入れる」のと「若手ソリストを起用する」の2つの目標を実現していますし、演目だって滅多に聴けない名曲揃い。だからこそ全国放送に選ばれたのでしょう。せめて放送は多くの人達に観て頂きたいですし、放送を観た人達が札響の東京公演に足を運ぶ、あるいは札幌まで遠征してくれるようになるといいなと思います。もちろん地元民がもっと積極的に聴きに来たほうがよいのは言うまでもないこと。また今回の私の席はいずれも2階後方のRBとLBでした。少し舞台は遠いですが、全体を俯瞰できますし音は良かったです。
まず舞台に入ったのは弦の皆様のみ。私の大好きなコントラバスが7台も!私のためにありがとうございます(違)。このコントラバスの布陣は2曲目3曲目も変わらずでとってもうれしかったです。また今回のコンサートマスターは大平まゆみさん。指揮のバーメルトさんは赤のカマーバンドの勝負服でのお出ましです。1曲目は武満徹「死と再生」~「黒い雨」より。
武満「死と再生」。弦のみの曲で、札響の美しい弦が奏でる不気味さに鳥肌。クライマックスらしきものはなく、いつ終わったのかわからない終わり方で、それも印象的でした。1曲目に深刻な曲を組み込めたのは、その後にブラームスの重厚な協奏曲が来るからかも。演奏はもちろん選曲も素晴らしいです。
— にゃおん (@nyaon_c) 2019年8月24日
私は初めて聴く曲でしたが、その不気味な雰囲気に鳥肌が立ちました。かといって耳を覆いたくなるような音ではなく、むしろ弦の音色は美しいんです。札響の弦の魅力を再確認。曲が終わったタイミングがよくわからず、会場の拍手が起きたのはバーメルトさんが指揮棒を下ろしてしばらくしてからでした。この曲は原爆をテーマにした映画の音楽だったそう。私は原爆そのものというより、それを伝聞で知った現代人の心が静かにざわつくイメージで捉えました。私は被爆三世ですが、直接その惨状を知らないため平和教育等で見聞きしたものから想像するしかありません。はっきりとわからないからこその不気味さ…直接知らない人間がどんなに想像力を働かせたところで、被爆者自身が体感したものとは別物でしかないですが。それでもせめて想像することで、今の私達に出来ることは何かを考えるきっかけにはなるのかも。8月にふさわしい選曲でした。またこの後に控える曲が重厚だからこそ、ハマった選曲とも言えそうです。
舞台転換の後、管楽器とティンパニの奏者の皆様も入り、お待ちかね2曲目はブラームス「ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲」。
ブラームスの二重協奏曲。木管は各2管にホルン4とトランペット2そしてティンパニのザ・ブラームスの布陣。主役のヴァイオリンとチェロは対話するように交互に演奏したり、同じ旋律を一緒に奏でたり、しかも息ぴったり。編成小さくても支えるオケがすごく重厚。メロディが全部美しすぎて震えます。
— にゃおん (@nyaon_c) 2019年8月24日
打楽器はティンパニのみで、金管の数が少なく、木管もそれぞれ2管ずつ。とてもブラームスらしいです。大編成にしなくても重厚になるのがブラームス。そして弦で「二重」という、ピアノ以外でのソリスト2人体制の協奏曲は珍しいのでは。またこれは私の推測でしかないのですが、特に第1楽章のチェロ独奏を聴くと、ブラームスはこの曲をはじめチェロ協奏曲にするつもりだった気がしてなりません。二重協奏曲の少し前に出したチェロソナタ第2番は、ヨアヒム弦楽四重奏団のチェリストであるハウスマンの協力がありました。チェロソナタ第2番の成功を受け、ハウスマンが演奏することを前提に、チェロ協奏曲を書こうと考えるのはごく自然な流れだと思います。結局はヨアヒムとの和解のためにヴァイオリンを加え二重協奏曲にしたわけですが、ブラームスとヨアヒムの間にハウスマンが入ってくれたからこそうまくいった面もありそうです。結果としてブラームスの最後の管弦楽作品は唯一無二の傑作となったわけで、ブラームスにヨアヒムという相棒がいてくれたことに感謝しますし、この2人の気難しい芸術家の間に入って頑張ってくれたハウスマンにもお礼を言いたいです。とにかく独奏チェロがとても良くて、しかし独奏ヴァイオリンが肝心なところをバシッとキメてくれて、2人体制だからこそ「対話」や「協調」を感じられる良さがあります。支えるオケだって、まるでブラームスとヨアヒムの友情を長年見守ってきた周囲の人達のような包容力。美メロの連続を楽しめるだけでなく、交響曲第5番と言っても過言ではないオケの見事さも味わえます。そしてブラームスの決しておおっぴらにはしない優しさと懐の深さが曲全体に感じられる二重協奏曲、私は大好きです。私ははじめての生演奏直前、演奏を聴く前からドキドキが止まらなかったほど。
さて演奏本番。インパクトのある全員参加の冒頭の後すぐにチェロ独奏。重低音から入る掴みはバッチリです。聴きどころしかない第1楽章は、はじめチェロ独奏に酔いしれ、ほどなくそれに応えるようなヴァイオリン独奏が入ってきて緊迫した雰囲気に。その後もヴァイオリンとチェロは会話するように交互に演奏したかと思うと、重なっておなじメロディを高低で演奏したり。途中楽しげなところや切ないところと美メロの連続で、支えるオケは重厚。もうずっと聴いていたいほど。第1楽章終盤の、個人的に好きなヴァイオリンとチェロが一緒に奏でるところも文句なしの良さでした。少し穏やかになる第2楽章は、ヴァイオリンとチェロの重なりが美しくため息が出ます。でもこの美しさは、キラキラした輝きというよりはいぶし銀のような印象で、作曲当時のブラームスとヨアヒムのように私は感じました。ソリストお2人はお若いですが、深みのある音色を奏でてくださいました。牧歌的な雰囲気は木管楽器の皆様が良い仕事をしてくれています。第2楽章からそのまま続けて第3楽章へ。冒頭、独奏チェロと独奏ヴァイオリンが同じメロディを交互に演奏するところは艶めかしくて、ソリストお2人が間合いも含めて完成度の高い演奏を聴かせてくださったことに感激。その流れにピタッと寄り添ってくださり、さらにスケールの大きな演奏で世界を広げてくださるオケも素晴らしいです。息つく暇がない程に次々と美メロが来て、ブラームスをメロディメーカーじゃないと言った人は一体誰なんだろうと改めて思います。クライマックス直前のヴァイオリンソロはめちゃくちゃきれい。独奏チェロと独奏ヴァイオリンが駆け抜ける最後の最後まで、ソリストお2人は疲れを見せず見事に弾いてくださいました。ありがとうございます。ああ2回と言わずに何度でも聴きたい!プログラムによると、札響での前回の演奏は2011年でチェリストがなんと札響首席奏者の石川さん!1972年の初演は堤剛さん!お二方とも個人的に好きなチェリストです。今回のお若い2人のソリストはもちろん素晴らしかったですが、私は何度でも二重協奏曲を聴きたいので、今後もぜひ様々なソリストでの演奏をお願いします札響さん!
ソリストアンコールは両日ともラヴェル「ヴァイオリンとチェロのためのソナタ」第2楽章。
ソリストアンコールは、もしかして別々にバッハとかの無伴奏の曲を演奏するのかな?と思っていたら、ラヴェルのヴァイオリンとチェロのためのソナタ第2楽章!こんな曲があるのですね。お二方とも息ぴったりで、協奏曲の準備も大変だった中、アンコールまでしっかり楽しませてくださり感激です!
— にゃおん (@nyaon_c) 2019年8月24日
これもまた珍しい編成ですね。私は浅学にしてこの曲の存在を知りませんでした。ブラームスとはやはりカラーが違う曲で、ピチカートを多用するのはラヴェルの弦楽四重奏曲にも似た雰囲気。テンポは速くて、お2人の息ぴったりな演奏にただ圧倒されました。素晴らしい!協奏曲の準備も大変な中、アンコールまで気合いの入った演奏をありがとうございます。郷古さんと横坂さんは室内楽でも共演を重ねているそうですので、いつかお2人の室内楽コンサートも聴きたいです。そのときはぜひブラームス作品を演目に入れてください!
休憩をはさみ、後半メインプログラムはブラームス「ピアノ四重奏曲第1番」のシェーンベルクによる管弦楽編曲版です。
ブラシェン。原曲にないコントラバスの使い方が私は「ブラームスらしい」と感じました。終楽章では、原曲とまったく同じヴァイオリン・チェロ・ヴィオラ3人だけの所が一瞬あって、各首席の名演に感激。しかもド派手な管弦楽の途中でも浮かないのは、演奏と編曲の両方が素晴らしいからこそですよね!
— にゃおん (@nyaon_c) 2019年8月24日
確かにブラームスは金管と打楽器で派手に盛り上げることはしないけど、この盛り上げ方好きですよ。ブラームスは絶対にしない、弓で弦をバンバンするのもこっそり仕込んでましたね(もう大好きです)。原曲のメロディは変えてないし、やはり原曲リスペクトがある編曲だと私は思います。聴けてよかった!
— にゃおん (@nyaon_c) 2019年8月24日
編成がブラームスのそれとは大きく異なります。多彩な打楽器に加え、数が増えた金管にはチューバもいて、持ち替え含め各3管になる木管には、Esクラリネットやバスクラリネット、ピッコロやコントラファゴットが。といってももっと編成が大きい作品はいくらでもありますし、シェーンベルクはこれでも遠慮したのかも。曲自体も、あくまで主旋律は弦と木管がメインで、ここぞという盛り上げるときに打楽器と金管楽器を使ってメリハリを持たせている編曲だと私は感じました。もちろんブラームスのオリジナル作品と比べて派手な印象は否めないですが、始終ドンチャカしているわけではないですし、個人的にこの盛り上げ方は好きですよ。これは私の主観ですが、ブラームス20代の作品である原曲は、若きリビドーの発露を隠しきれないのに力づくで押さえ込んでいる感があります。もちろんそれが若き日のブラームスの良さで私も大好きです。しかし一方で「もう少しはっちゃけてもいいのに」と思うことも。その情熱が迸る部分を素直に表現するために多彩な楽器で盛り上げる、いいじゃないですか大賛成です!もしかするとブラームス本人は草葉の陰で「やめて」とじたばたしているかもしれませんね。おあいにくさま、やめませんから(笑)。そして盛り上げるところ以外の編曲もよく考えられているなと思います。私は楽譜を見たわけでないので聴いた印象だけで書きますが、例えばブラームスの管弦楽作品で重要なコントラバスは、単に原曲のチェロの低音を移行しただけでなく音を加えているように聞こえます(違っていたらごめんなさい)。他の楽器の使い方だって、ピアノの旋律をそのまま置き換えただけではなさそうです。これだけしっかり作り込んでおきながら、クライマックス直前に原曲そのままのところが一瞬出てきたりするんですよね。シェーンベルクが本気で原曲を愛してくれたからこその編曲と言えるのでは?シェーンベルクさんありがとうございます!この編曲が素晴らしいだけに、できれば他のブラームス作品の編曲もやってほしかったです…。原曲の候補は、やはりブラームスの若きリビドーの発露が色濃く感じられる、ピアノ四重奏曲第3番やピアノ五重奏曲あたりで。
演奏本番。第1楽章、出だしの木管楽器と続く弦楽器の「ブラームスらしい」美しい旋律に早速心掴まれ、少しずつ盛り上がってきて全員参加の賑やかなところになっても違和感なく乗れました。「ほぼブラームス」と思えるところとそうでないところが交互に来ますが、ブツ切れではなく一つの音楽として流れているように感じるのは、編曲のうまさに加えやはり演奏のクオリティが高いからこそですよね。こんなに変化に富んだ流れの中、各パートの演奏を違和感なく合わせていくのはきっと難しいのでは?第2楽章、木管楽器の主旋律リレーが素敵で、哀しげなホルンの響きに奥行きを感じます。原曲では主役になる弦楽器が、サブの旋律を奏でるところも好きです。第3楽章、冒頭の弦楽器と木管楽器による美しい音色にうっとり。ここに関して言えば、おそらくブラームス本人がアレンジしたとしてもこうなった気がします。私は1月に聴いたバーメルトさん指揮のブラ2を少し思い出しました。でも徐々に打楽器と金管が入ってきてシェーンベルク節になっていくんですけどね。そして終楽章である、ハンガリー舞曲風の第4楽章は映画「仕立て屋の恋」にも使われたという情熱的なメロディが印象的です。冒頭から全員参加の盛り上がりで、弦の一部が弓でバンバン(5月の「幻想交響曲」で知ったコル・レーニョ奏法)をしていて、最初から飛ばしてきます。さあ、いけいけどんどん!打楽器パートはタンバリンやらシンバルやら次々と持ち替えて忙しそう。木琴の超高速演奏がんばって!クラリネットもかなり速いテンポで吹いていて、演奏技術もさることながら息が続くのがすごいなと、私は妙なところで感心していました。曲はメリハリがしっかり効いていて、弦と木管中心の美しいところと全員参加の大盛り上がりが交互にきます。これが一つの曲として違和感なく調和するのはすごいです。そして終盤、ほんの一瞬ヴァイオリン、チェロそしてヴィオラの各首席奏者による演奏で原曲とまったく同じところが!私は初日にこれに気づき、哀愁を帯びたメロディに酔いしれつつ、演奏の素晴らしさと曲自体の良さそして編曲者の原曲へのリスペクトを感じて自然と涙が出たんですよね。ほら原曲だってこんなに美しく情熱的なのよって。そして他の楽器が少しずつ入ってきてテンポも速くなりクライマックスに向かいます。最後は全員参加の大盛りあげでビシッと締めくくり。素晴らしい演奏でした!ありがとうございます!私の席からはよく見えませんでしたが、バーメルトさんは暗譜だったとツイッターで知りました。他のオケで何度も演奏されてきた十八番だったのでしょうか?そんな曲を今回のメインに選んでくださり感謝です。プログラムによると、ブラシェンの札響での演奏は過去1回のみ(1999年12月・指揮:円光寺雅彦)で今回が2回目。首席指揮者に就任して1年ちょっとのバーメルトさんにとっても、また今の楽団員の皆様にとっても、もちろん聴いている私達ファンにとっても、「きちっとしたブラームスがはっちゃける」この曲の演奏はきっと新時代の幕開けとなったのではないでしょうか。ここまで準備を進め最高の演奏を実現してくださったすべての関係者の皆様に、重ねてお礼申し上げます。ありがとうございます。楽しかったです!そしてバーメルトさん、これからも札響をどうぞよろしくお願いします!
今回は終演後のロビーでソリストお2人のサイン会がありました。私は金曜夜公演の後にCDを購入して列に並びました。
そしてソリストお二人のCDを購入しサイン頂いてきました!家宝にします。ヴァイオリンもチェロもすごく素敵で、私、選べません(笑)。お若いお二方は普段着にお着替えしたら本当に気の良いお兄ちゃん的な雰囲気でしたが、この人当たりのいい男子達があんなすごい演奏をするなんてミラクル! pic.twitter.com/km3RNAi1Jl
— にゃおん (@nyaon_c) 2019年8月23日
郷古廉さんは慣れた手つきでささっとサインしてくださいました。私はあがってしまって何をお話ししたのか覚えていません…。そして横坂源さんは、緊張している私に「札幌は涼しくていいですね」と声をかけてくださり、私も少し和んだのでソロ演奏が素敵だったことをなんとかお伝えしました。そしていざサインするときになって「お名前は?」と横坂さん。えっえっ?しどろもどろしながら私の本名(姓でなく下の名前)をお伝えしたところ、「(にゃおんの本名)さんへ」と私の名前を口に出して書き込みながらサインしてくださったんですよ(きゃあああー)。低めのお声も素敵で、私はうっかりときめいてしまいました。ごめんなさい。だって私は普段名前を呼ばれる生活をしてなくて、呼ばれるとしてもせいぜい夫の姓で呼ばれるわけで…。私ってチョロいなと自分でもあきれますが仕方がありません。横坂さんはきっとどなたにも同じように接していらっしゃるし、私が並んでいたときは私と似た感じの中高年女性ばかりが列にいたので、私のことはきっと覚えてはいらっしゃらないとは思います。しかし私の方は忘れられない良い思い出になりました。本当にありがとうございます。本番中、ヴァイオリンの郷古さんは落ち着いた演奏をなさるのにチェロの横坂さんは一生懸命すぎて荒い呼吸が気になる、なんて少しでも思ってしまってごめんなさい!もう私は横坂さんの大ファンです!ぜひまた札幌にいらしてくださいね。次にお目にかかるときには勇気を出して握手をお願いしたいと思います(←ちょっと落ち着け私)。
おまけ。ブラームス「ピアノ四重奏曲第1番」はブラームス自身がピアノ連弾用に編曲したバージョンもあります。こちらもぜひ聴いてください。ピアノ弾きのブラームスは、自分の作品を連弾や2台ピアノ版に編曲することが多かったようです。管弦楽でも弦が入る室内楽でももちろんピアノでも、どんな編成になろうと素晴らしい音楽になるのは、やはり原曲自体がしっかり構成されているからこそ。ブラームスは少しでも難ありと自己判断した曲は徹底的に処分する人だったので、現存する作品は思いの外少ないのですが、珠玉の作品たちを様々なアレンジで味わえる楽しみはあります。ちなみにブラームスの自作品ピアノアレンジのシリーズはNAXOSレーベルから18枚出ていて、私はすべて持っています。
Brahms: Four-Hand Piano Music, Vol. 12
- アーティスト: Silke-Thora Matthies
- 出版社/メーカー: Naxos
- 発売日: 2004/09/19
- メディア: MP3 ダウンロード
- この商品を含むブログを見る
最後に。9月1日に札幌交響楽団名誉指揮者のラドミル・エリシュカ氏が逝去されたとのことです。
訃報が入ってからのここ数日、ネットでは多くの人がエリシュカさんを悼むコメントを表明しています。それらを拝読すると、マエストロは日本特に札幌の人達に大変愛されたかただとよくわかります。その演奏を録音でしか知らない私は、偉大なマエストロがどこか遠い存在だという意識がもしかするとあったのかもしれません。まだ皆様気持ちの整理がつかない早い段階で、私はツイッターに拙速なツイートを投稿してしまい反省しています。大変申し訳ありませんでした。エリシュカさんは紛れもなく札幌の地に足を付けて、札響と札幌の聴衆を導いてくださったのですよね。新参者の私が言うのはおこがましいですが、こうして今私達が札響の素晴らしい演奏を聴かせて頂けるのは、エリシュカさんのお力が大きいと思います。エリシュカさん本当にありがとうございました。どうぞ安らかにお眠りください。
最後までおつきあい頂きありがとうございました。
※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽(https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c