自由にしかし楽しく!クラシック音楽

クラシック音楽の演奏会や関連本などの感想を書くブログです。「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ(http://nyaon-c.hatenablog.com/)」の姉妹ブログです。

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第30回パシフィック・ミュージック・フェスティバル札幌(PMF)(2019/07) ざっくりレポート(GARAコンサートほか)

今年のPMFにて開催されたイベントのうち、私が実際に聴いたものの簡単なレポートを書きました。と言っても、私が参加できたのはごくわずかで、大きなものはGARAコンサートのみ。連日コンサート三昧だったかたがうらやましいです!そして今回レポートが遅くなったため、詳細はうろ覚えで申し訳ありません。

いつものように素人コメントであることをご了承下さい。またひどい間違いは指摘くださいますようお願いします。


PMF公開マスタークラス I ヴァイオリン
2019年07月06日(土)18:30~ ザ・ルーテルホール

www.pmf.or.jp


【ヴァイオリン指導】

ライナー・キュッヒル

【曲目】
サン=サーンス 序奏とロンド・カプリチオーソ イ短調 作品28
モーツァルト ヴァイオリン協奏曲 第4番 ニ長調 K. 218 から第1楽章

ツイッターでの速報ツイートは以下。



少しだけ補足します。私は開放弦とかG線といった専門用語はわからないので、ざっくり感想になります。

まず、教わるかたはいずれも地元の学生さんで、PMFのアカデミー生ではありません。ちなみに私が以前聴いたことがあるリスト音楽院セミナーの公開指導も同様でした。地元で音楽を学ぶ若いかたが、世界的な音楽家に教わることができる機会は大変貴重ですし、聴き手としても自分自身に置き換えて考えやすいのはありがたいです。また、指導する先生の立場で考えた場合、厳しいオーディションを勝ち抜いた若手音楽家を相手にするのとはおそらく勝手が違うと思われます。にもかかわらず熱心な指導に頭が下がります。進め方は、学生さんが一度課題曲を通して演奏した後に細かな指導に入るスタイル。指導は英語でしたが、通訳が入るため学生さんも客席の私達も日本語で意味を把握出来ました。このあたりもリスト音楽院セミナーと同様です。

お一人目、サン=サーンスを演奏した学生さんについて。通し演奏はお上手でしたが、かなり緊張されていたのかもしれません。キュッヒルさんは姿勢が固すぎることを何度も指摘、また指づかいを固定するのではなく柔軟に変えるようにとも。「同じ指使いで何度も練習しても同じことしかできない」といった趣旨のお話は説得力がありました。しかし、学生さんにとって指づかいを変えることは想定外だったのか、何度言われてもうまく動かせず、時間いっぱいほぼ同じところの練習に。慣れない舞台で緊張している上に、何度弾いても先生はNOばかりで、おまけに客席からは失笑まで。20歳前後と思われる女性の学生さんは今にも泣き出しそうな表情で、見ているこちらはハラハラしました。「ヴァイオリンの演奏は難しくない」とキュッヒルさん。色々と考えすぎないことが大事なのかも。といっても、彼女なりに精一杯準備してきたことが全否定されたのは、本人にとってはショックが大きかったかもしれません。この先、彼女が楽しんで演奏を続けられることを祈っています。

休憩後のお二人目、モーツァルトを演奏した学生さんについて。キュッヒルさんは最初に学生さんとピアノ伴奏のかたと握手。学生さんは自作のカデンツァも披露し、表情も笑顔で少し余裕がある印象を受けました。アドバイスを受けて軌道修正した演奏では、明らかに音色が変化したのがわかり、同じ楽器を同じ奏者が演奏してもこんなに違う音楽になるのかと感心しました。また前半と同様にキュッヒルさんはピアノ伴奏を「オーケストラ」と呼び、その旋律をヴァイオリンで弾いてイメージを伝えるやり方で伴奏についても注文をしていました。

公開マスタークラスは他にもあったので、来年はヴァイオリン以外の楽器も聴講してみようと思います。そしてルーテルホールは今回私は初めて入りましたが、小さいながらも良いホールだと感じました。札幌には小さいホールがたくさんあるので、それらも自分で足を運んだ上で少しずつ知っていきたいです。


PMF GALAコンサート
2019年07月14日(日) 12:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

演目および出演者はリンク先を参照ください。

www.pmf.or.jp


こちらもツイッターでの速報ツイートを貼り付けておきます。


とにかく盛りだくさん!私は直前金曜のリハーサルも聴き、めいいっぱい楽しませて頂きました。こんなにたっぷり聴けて、B席5000円。お得感があります。私は2階RAブロック前方を選びましたが、この席は札響定期だとA席に該当します。指揮者やソリスト、オーケストラメンバーの表情や手元がよく見えるステージ真横の席を私は気に入ってます。LAは何度か座ったので今回はRAを選択したところ、私が大好きなコントラバスが見切れてしまいちょっと悲しいことに。少し考えればわかることなのに迂闊でした。チェロとコントラバスはリハーサルでガン見したのでヨシとします。

まずはリハーサルについて簡単にメモします。今年からリハーサル見学のルールが変更され、本番のチケットを持っていれば無料で聴けました。同じプログラムのリハーサルは何度も公開されていて、私は本番直前の一回のみを見学。ちなみに本来SS席にあたる2階の中央最前列に着席しました。2階の客席には20名程度いたかと思います。1階の空いている席にはPMFのアカデミー生や関係者が自由に座っていました。この日の練習は本番のプログラムの一部で、J.アダムスとチャイコフスキーそして歌が入るヴェルディだったと記憶しています。私は帰宅時間の都合でヴェルディの途中で退席しました。やはり人が少ないとKitaraの音はものすごく良いです!他の日も来れば良かったと少しだけ後悔。リハーサルの進め方としては、一つの楽章は途中で止めずに通して演奏し、続けて指揮者のかたがお話した上で、強化したいところを部分的に練習するのが基本スタイル。既に何度もリハーサルを重ねていたためか、通し演奏も部分的な演奏も良くて、さらによくするために最終調整をしているのかなと素人目ではそう感じました。また、出身地は様々なアカデミー生やスタッフは、全員英語でやりとりしていました。拍手で迎えられたソリスト郷古廉さんも流暢な英語で指揮者や奏者とコミュニケーション。英語が母国語では無い人達にとっては、楽器の演奏そのものだけでなく英語もマスターしないとやっていけない世界なんだと改めて思いました。

そして当日、私は到着がちょっと遅れてファンファーレの後に会場入りしました。どうやら開演前はハープによるロビーコンサートがあったらしく、聞き逃してしまったことを後悔。第1部は若い女優さん(朝ドラ『なつぞら』に出演されているそう)が司会に入りました。最初は小山実稚恵さんによるピアノ独奏。オールショパンで3曲「小犬のワルツ」「ピアノ協奏曲 第2番より 第2楽章『ラルゲット』」「華麗なる円舞曲」。いずれも耳なじみのある曲で、外の暑さと少し急いだせいで心拍数が上がっていた私もゆったりとした気分に。私の席からは演奏の手元は見えませんでしたが、心を込めて演奏するその表情はしっかり拝見しました。続いて、郷古廉さんのヴァイオリン独奏。演奏前に司会者によるインタビューがあり、郷古さんの落ち着きと低音ボイスに私はすっかり魅了されました(※演奏とあまり関係ない)。演奏した2曲、J.S.バッハ無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第3番 ホ長調 BWV 1006から I. Preludio」イザイ「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第2番 イ短調 作品27-2(ジャック・ティボーに)から I. Obsession. Prelude. Poco vivace - Meno mosso」は、とても安定感があり、演奏姿も素敵で(ヴァイオリンは少し斜めに構えるため私の席からだと演奏姿が真正面に)、私は第2部の協奏曲も俄然楽しみになりました。PMFのアカデミー生や講師陣が出て来る前に、小山実稚恵さんと郷古廉さんの超豪華なソロ演奏を楽しめてありがたかったです。アカデミー生の皆様にとっても、第一線で活躍するかたの演奏に間近でふれたことは良い経験になったのでは?

ソロがお二人続いた後は、いよいよPMFオーケストラとPMFヴォーカル・アカデミー4名そして指揮のギャレット・キーストさんの登場です。オーケストラメンバーが皆、黒い服に小さな赤いバラを挿していたのが印象的でした。実はその前に出場した郷古さんもそうだったのですが、そのとき私は「郷古さん、なんてキザなんだろう」と勝手に思ってしまってゴメンナサイ!オーケストラメンバーと足並みを揃えたのですね…。PMFヴォーカル・アカデミーの先生から簡単なお話があり(通訳が入りました)、演奏へ。曲はヴェルディ「歌劇『リゴレット』第3幕から四重奏『美しい恋の乙女よ』」。楽器の演奏と歌声を同時に楽しめるのがよかったです。4名のお若いヴォーカル・アカデミーの皆様の歌声、惚れ惚れしましたよ。そして来年hitaruでオペラをやる場合、今回のようにGARAコンサートで歌劇の一部を取り上げてくれるかしら?と少しだけ来年のことが心配に。鬼に笑われます。

大編成が退場後、「PMFウィーンとPMFベルリンの夢の共演」と司会者から紹介があり、講師陣の皆様がステージ中央に扇状に並びました。私の席からも見切れることはなく、演奏の手元をしっかり見ることができました。初めはJ.シュトラウスII「喜歌劇『ジプシー男爵』序曲」、続いてクラリネット奏者のかたも加わりヨーゼフ・シュトラウスのワルツ「うわごと」シュトラウスファミリーの曲は良いですね。世界的な奏者が全員集合ですごい演奏を聴かせて頂いているにもかかわらず、聴き手はリラックスして楽しく聴くことができました。

休憩をはさみ、第2部へ。第2部の指揮はすべてマリン・オルソップさん。女性の指揮者で、オーケストラメンバーと同じくジャケットとパンツは黒、胸に小さな赤いバラの装いです。そして中のシャツはバラと同じ深紅で、とてもおしゃれ。1曲目はJ.アダムス「ショート・ライド・イン・ア・ファスト・マシン」。最初からカンカンカンと木魚のような打楽器が鳴り、他の打楽器や金管楽器が大活躍する、気分があがる演奏でした。2曲目はいよいよお待ちかねチャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲 ニ長調。私のお目当てはこれでした。ソリストの郷古廉さんは8月の札響定期にソリストとして出演することが決まっていて、その演奏をKitaraで聴けるのならぜひ聴きたいと思ったのです。他の曲よりオケの編成は小さく、オケメンバーは一体どのように決まるのかが少し気になりました。素晴らしい演奏を、私はリハーサルの時にも堪能しましたが、本番はやはり空気が違います。郷古さんはこの曲は慣れていらしているのか、高速の部分もまったく不安要素はなく見事に弾いてくださいました。しかし、もちろんただお上手なだけではなく、比較的ゆっくりの部分の音色にはうっとりさせられました。8月の札響定期が待ち遠しくなりました。オケも練習で何度も繰り返したところがバッチリきまっていて、ほんの数週間前に顔を合わせたメンバーが限られた練習時間でここまで仕上げてきたことにただただ敬服します。3曲目はプロコフィエフ交響曲第1番『古典』」ハイドンの技法をもとに書かれたというこの作品。確かに古典派の雰囲気が感じられ、7月の札響定期で聴いたヴァイオリン協奏曲の妖艶さとはまた違う作曲家の一面がわかり、楽しく聴けました。

最後の曲はR.シュトラウス「歌劇『ばらの騎士組曲 作品59」PMFの講師陣もオケに加わり、それぞれのパートの首席の位置へ。もちろんコンサートマスターはキュッヒルさんです。これはもうファンサービスですよね。たとえ講師陣が演奏に加わらなくても、今年のアカデミー生たちは十分に素晴らしい演奏ができることは、会場にいた全員がよくわかっていたはず。キュッヒルさんのヴァイオリンソロパートはやはり素敵で、こんな機会に聴けてありがたいです。全員で一斉に足踏みするといった演出もあり、楽しい演奏でした。そして通常の演目だけでも盛りだくさんな上に、アンコールまでありました。エデュ・ロボ(エアリス編)「ページ・ヴェント」、私は作曲家も曲名も初耳でしたが、実際演奏を聴いてみると、なんとなく聞き覚えがあるような曲でした。全員参加の賑やかな演奏で、最後の最後まで盛り上げてくださりありがとうございます!PMFのコンサートはたくさんあり、残念ながら私はすべてを聴くことはできないのですが、GARAコンサートを選んでよかったと大満足の演奏会でした。来年もGARAコンサートをマストにしようと思います。


第474回 市民ロビーコンサート
2019年07月26日(金)12:25~ 札幌市役所1階ロビー

www.pmf.or.jp


【出演】
デイヴィッド・チャン(ヴァイオリン/PMFアメリカ)
佐久間晃子(ピアノ)

【曲目】

 

ツイッターでの速報ツイートは以下。

 



私は開演の30分ほど前に到着しましたが、用意された席は既にほぼ埋まっている状態でした。それでも私は前の方の空いていた席に着席。立ち見となった人も多く、空調があまりきかない上に人口密度が高いため会場はとんでもなく蒸し暑かったです。しかしヴァイオリンのデイヴィッド・チャンさんは黒い長袖シャツに長いパンツの隙の無い装いで、にこやかに登場。演奏技術だけでなく、こんな姿勢にもプロフェッショナルの心意気がうかがえます。本当に、こんなところで(!)演奏してくださるなんて、ありがとうございます。1曲目、モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ第21番は、モーツァルトには数少ない短調の曲。哀しみを感じさせる冒頭から引き込まれます。ヴァイオリンはもちろん素晴らしいですが、伴奏のピアノもとっても素敵。ベートーヴェン以前のヴァイオリン・ソナタでも、ヴァイオリンはピアノと対等のように感じました。実は第1楽章後に一度大きな拍手が起き、デイヴィッド・チャンさんはスマイルでお辞儀をされていて、こちらはなんだか申し訳ない気持ちになりました。第2楽章は哀しさがありながらも少しゆったりとした印象で、聴いているこちらも気持ちが穏やかに。2楽章構成のこの曲。第2楽章が終わり今度こそ盛大な拍手を送りました。司会の若いかたがこの段階でシメの挨拶をしようとするハプニング(※せめて演目の予習をお願いします…)がありましたが、司会者は続きがあるのに気付いたようで何とか場が中断されずに済みました。

2曲目はおそらく完璧に身体で覚えている曲なのでしょう、デイヴィッド・チャンさんは譜面台を下げて演奏に入りました。おなじみマスネの「タイスの瞑想曲」。美しく艶っぽい音色にうっとりします。ヴァイオリンの音色は弾く人や弾き方でまるで違うというのを、私は先日の公開マスタークラスで知ったばかり。デイヴィッド・チャンさんはリラックスして演奏しているように見えて、ここに至るまでには大変な努力と様々な経験の積み重ねがあったことと拝察します。このようなかたが、後進の若いかたの指導をしてくださることに改めて感謝です。そしてピアノ伴奏は昨年のライナー・キュッヒルさんのときと同じく佐久間晃子さん。オーケストラが中心となるPMFにおいて、ピアノの指導と演奏で支えてくださりありがとうございます。

演奏が終わってからお見送りまで会場は大きな拍手。私のお隣にいらしたかなり年輩の女性が「ありがとうございます。ありがとうございます…」とおっしゃっていたのが印象に残っています。約25分間の短いコンサートには、赤ちゃんからお年寄りまで様々な年齢層の人達が集まっていました。どんな人でも、思い立ったらすぐに足を運べてしかも無料で本物の演奏を聴くことが出来る、この環境はありがたいです。PMF教授陣による演奏は7月のみですが、せっかくなのでPMF以外の普段の市民ロビーコンサートにも足を運びたいなと思いました。


最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c