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浅沼恵輔コンサートシリーズ Vol.3 ~ピアノ四重奏の世界~(2019/12) レポート

11月に引き続き、六花亭本店のふきのとうホールでブラームス室内楽がメインの演奏会を聴いてきました。11月はピアノ五重奏曲で、今回はヴァイオリンが1つ減った編成のピアノ四重奏曲第1番。ブラームス室内楽が聴けて、しかも弦のメンバーは札響コンマスと副首席奏者が揃っているわけですから、行きたいに決まっています!

レポートはいつものように素人コメントであることをご了承ください。また、ひどい間違いは指摘くださいますようお願いします。

浅沼恵輔コンサートシリーズ Vol.3 ~ピアノ四重奏の世界~
2019年12月11日(水) 18:30~ ふきのとうホール

【演奏】
浅沼恵輔(ピアノ)
田島高宏(ヴァイオリン)※札響コンサートマスター
青木晃一(ヴィオラ)※札響ヴィオラ副首席奏者
猿渡輔(チェロ)※札響チェロ副首席奏者

【曲目】

(アンコール)

なお会場のピアノはヤマハでした。


ツイッターでの速報は以下。


素晴らしい演奏でした!合うのは当たり前、加えて感情表現もメリハリが効いていてカッコイイ!勢いがあって素直に「乗れる」演奏でした。譜めくりのタイミングは長めの休符に合わせて行われており、不自然に曲が止まる印象はまったくなかったです。また、おそらくお一人ずつの演奏を聴いてもきっと素敵なのではないかと思うほど、各奏者のかたの演奏は完成度が高い上に個性的。それがアンサンブルになると足し算ではなく掛け算の相乗効果でもっと良くなるんですね。ピアノソロやオケとは勝手が違うはずなのにこの完成度、すごすぎます!札響奏者である弦のお三方のお顔とお名前は存じておりましたが、コンマス田島さんは別として、副首席奏者の青木さんと猿渡さんの単独での演奏をじっくり聴けたのは今回が初めてでした。なにこのクオリティの高さ!当たり前ですが、札響の音を作っているのは首席奏者だけじゃないことを再確認。もちろん札響丸ごと好きな前提の上で、私は今回また注目したい奏者が増えました。そして札響で普段一緒に活動している人達の中に入って弾いたピアノの浅沼さんも、まるで昔からユニットを組んでいるような演奏の完成度とチームワークでした。今回だけとは言わず、また同じチームでピアノ四重奏を演奏してほしいです。その際には演目にぜひまたブラームスを入れてくださいね。

今回は六花亭主催公演ではなかったため、スタッフの制服が違っていたり、開演前に流れたBGMがCMの「♪花咲く六花亭♪」のオルゴール版だったりと、会場の雰囲気はいつもとは少し違っていました。キャパ約220席の座席は9割以上が埋まっていたと思います。全席自由席で、私はいつものように前の方の中央よりの席に着席しました。

奏者の皆様は全員が黒い長袖シャツとスラックス姿でキメていて、シャツの首元のボタンは外したスタイルでした。華やかさはなく、見た目から既に漢(オトコ)集団(笑)。選曲もすべて短調の曲ですし、こちらは聴く前から骨太な演奏を期待してしまいました。実際に演奏が始まると、力強さは当然として、クールでありながら繊細さや甘美さも表現しちゃうんですからもう参りました!


演目に入ります。1曲目はW.A.モーツァルトのピアノ四重奏曲第1番。偉大なモーツァルトが前座だなんて、ブラームスも気後れしちゃうかもしれませんね。ブラームスの1番と同じト短調ということで、聴く前から期待が高まります。第1楽章、いきなり冒頭の低音が効いた全員合奏にズキュンとやられました。まだこちらの気持ちの準備ができていない段階でがしっと心掴まれ、もうこれは頑張ってついて行くしかないと最初からのめり込む姿勢に。掴みってすごく大事。ピアノがキラキラしていたり、ヴァイオリンがきれいに歌ったりするところは本来のモーツァルトらしさで素敵ですが、そんなところですら重ねる低音が効いていて「らしくない」感じ。だがそれがイイ!そしてやはり繰り返し出てくる冒頭の不穏なメロディが登場する度にゾクゾクして良いです。比較的穏やかな第2楽章は、最初のゆったり聴かせるピアノに続いて弦が重なるととても美しく、第1楽章の不穏さとは違った良さがありました。それでも病院の待合室で流れているタイプの曲とは違い、完全に明るいわけではなく少し影が感じられるのが素敵。また思いの外ヴィオラが活躍している印象を受けました。チェロが歌うときにヴァイオリンとヴィオラが音を細かく刻まず流れるように伴奏するのがモーツァルトっぽいなと思ったり。第3楽章、基本明るいのにやはりここも少し影がありそうでした。ピアノがずっとキラキラしていて、もしかするとピアノだけでも十分曲として成立するかもしれないのに、弦が一緒に演奏することでさらに深みが増している感じ。私の印象ではヴァイオリンとヴィオラがペアで演奏をすることが多く、チェロは通奏低音のように低い繰り返しの音でベースを作っているときもあれば、ヴァイオリンとヴィオラと同じメロディを同時にあるいは呼応するように演奏することも。そんな変化が楽しかったです。この曲は、作曲当時出版社から(家庭で楽しむアマチュア向きではない)難解な曲とクレームがついたそうなので、きっと演奏は難しいのだと思います。しかしモーツァルトお得意の次々と新しいメロディが展開されるのが流暢で自然体で、素人目と耳ではありますが、奏者が苦労しているとはまったく思えない演奏でした。この完成度、ただただ敬服します。おかげさまで聴いているこちらは肩凝らず素直に楽しめました。私は拍手を送りながら、そんな1曲目からこんなに良くて良いんでしょうか…前半はあと1曲あるし、後半は大曲が控えているんですよ…と変な心配をしていました。当たり前のことかもしれませんが、奏者の皆様は最初から全員集中しての全力投球。素晴らしいです!ありがとうございます!

2曲目はJ.トゥリーナのピアノ四重奏曲。私は作曲家の名前すら初耳でした。開演前にプログラムノートを熟読。それによると、トゥリーナはスペイン人作曲家で、パリで学んだ経験あり。このピアノ四重奏曲はパリからスペインに帰国後に作曲されたそう。第1楽章、冒頭は弦3つで力強く入り、ほどなくピアノも参戦。ピアノがモーツァルトのキラキラとはまったく違うパワフルで悲劇的な印象でした。弦がスペイン風なメロディを奏ではじめると舞曲のような雰囲気に。チェロが艶めかしく主旋律を奏でるときに、他の2つの弦が小刻みに弓を引いて音を刻むような伴奏をしたのがインパクト大でした。この後の楽章でも、担当は入れ替わるものの、弦の小刻みに音を刻む演奏が度々出てきて、私はそれが強く印象に残っています。演奏技術があってこそと思いますが、楽器内部から漏れ出る空気の音も含めてザワザワした感じに聞こえるのがたまらなく良かったです。第2楽章は、強めのピチカートが入りその後に伸びやかに弦が歌うところにほんの少しだけラヴェル風味を感じました。しかしすぐにピアノも弦もスペインの踊りのような音楽になって、ピチカートが合いの手を入れる打楽器のよう。メロディそのものの異国風味の良さだけでなく、リズム感がすごく良かったです。第3楽章はやはり冒頭の情熱的なヴァイオリンソロ!札響コンマスの貫禄!もちろんkitara大ホールでオケをバックにしてのソロも良いですが、ふきのとうホールでのソロも私はとても好きです。何せ奏者との物理的距離が近いですし、小さなホールで音に包まれる感じは素敵な演奏を独り占めしているような贅沢な気分になれます。合いの手のピチカートもカッコイイ!続くピアノソロも妖艶で素敵!情熱的で力強い演奏で駆け抜け最後バシッとしめてくださいました。すっごい!知らない曲は新鮮で当たり前ですが、それ以上に演奏の凄みに圧倒されました。耳慣れたドイツ・オーストリア圏の作曲家とはまったく違った個性に、最高の演奏で触れることが出来、感謝です。

休憩後の後半はいよいよJ.ブラームスのピアノ四重奏曲第1番です。8月に札響定期でシェーンベルク編曲による管弦楽版が演奏され、全国放送もされたので、これで原曲の存在を知ったかたも多いかもしれません。もちろんブラシェンは良い曲で私も好きですが、それは原曲があってのこと。小さな編成でこんなに奥行きのある曲が作れる、ブラームスってやっぱりすごいと思います。それに原曲を聴くと、私の場合は特にピアノやヴィオラが良いところを弾くとうれしくなるんですよね。管弦楽版だと良いところは管楽器や打楽器に持って行かれちゃうから(笑)。第1楽章、冒頭はピアノから。続いてチェロ、ヴィオラ、ヴァイオリンがゆっくり順番に入ってきて、あっという間に切なくて情熱的な盛り上がりに。最初から奏者全員が同じように流れに乗っている上に感情まで込めて、すごいです…。のめり込みすぎてしまうと途中で燃え尽きてしまうのがイヤだったので、私はつとめて冷静に聴こうと心がけていましたが、どうしたって引き込まてしまいます!各弦が順番に良いところを奏でるときの、寄り添うピアノがキラキラしているところはブラームスらしいピアノで、同じキラキラでもモーツァルトのそれとはまったく違います。一方、弦に応戦してピアノが低音を弾くときもありここでも当たり前のようにシンクロ。私はピアノはまったく弾けませんが、ブラームス作品のピアノはどれも難易度高そうだなとは感じています。派手では無いけれどめちゃくちゃ凝っている印象。ピアノが主役のときの細かく休符を挟みながら伴奏する弦もとっても素敵。弦がピアニッシモで弾くときや控えめなピチカートでもちゃんと音が響いていて、札響でバーメルトさんに鍛えられた(?)強弱と、ホールの音響の良さに感激。力強く演奏するところになっても音がキレイですし、やはりこのかたたち只者じゃないです。第2楽章、哀愁漂うメロディをヴァイオリンやピアノがリレーしていくのが素敵。ヴィオラはヴァイオリンと一緒に動くことが多い印象ですが、時には主役になることも。ベースを作るチェロに着目すると、やはりブラームスはロックなんじゃないかと思いました。ブラシェンだったら木管がリードする、メロディが変わるところも疾走感があって良かったです。第3楽章、冒頭はやはり美メロ!キタラ大ホールのオケで聴いたときも素敵でしたが、小さなホールのピアノ四重奏という小さな編成で聴けるのも手が届く感があって好きです。中盤の盛り上げ方も美メロとの対比になっていて、比較的ゆったりした楽章でもだらだらしたところはまったくなく、ずっと夢中になって聴いていられました。途中、私の耳でミスタッチかなと思えた部分がありその後ほんの少しだけピアノがゆっくりになったように感じましたが、すぐに勢いを取り戻していました。これは私の聞き間違いかもしれませんし、もしかすると私が気づいていないレベルの細かなミスは他にもあるかもしれません。なによりお客さんは普通に聴いていましたし、リカバリーは早かったので、とにかく、まったく問題ないです!そして情熱的な第4楽章へ。もう、すごく良いです!ほら原曲だってこんなに情熱的なんですよ!誰一人遠慮しない本気の演奏にゾクゾクします。ピアノの超絶技巧の聴かせどころでは、ここでも弦のピチカートや音を細かく刻む演奏でのアシストが完璧。中盤ほんの少しゆっくりになるところ以外はとにかく展開が早くて演奏は大変だと思われるにもかかわらず、皆さんものすごい集中力で演奏されていました。一度だけ譜面がめくりにくかったのか、バサッと紙の音がしましたが、たいした問題では無いです。終盤、弦だけで演奏されるブラシェンでも原曲そのままの箇所があります。今回は当然8月の札響定期とは違う布陣での演奏で、なんだか胸が熱くなりました。オケでは各パート代表で弾くとなれば必ず首席奏者になるわけですが、誰だってこんな聴かせどころ弾きたいに決まってますよね。そしてとても良かったです!そんな感慨にふけっている暇もなく、曲はスピードを上げて最後まで駆け抜けました。素晴らしかったです!ありがとうございました!


カーテンコールで舞台へ何度も戻ってこられた奏者の皆様。何度目かに着席して、ピアノの浅沼さんがマイクを持ってお話されました。浅沼さんのコンサートシリーズは今回3回目で、初めてのピアノ四重奏だったそう。お話ぶりから弦のメンバーとすっかり意気投合している様子がうかがえました。アンコールはなんとブラームスの子守歌のピアノ四重奏アレンジ!誰もが知る超有名な歌曲をこんな素敵な演奏で聴けるなんて、大袈裟ではなく生きていてよかったなと思いました。ブラームスは深刻で重い曲ばかりと誤解している人にこそ聴いてほしい、かわいらしくちょっと切ない美しい曲。メロディは基本繰り返しでも、主役の楽器が次々と交代して演奏する形で、もうずっと聴いていたいと思えたほどでした。


お開き後はホワイエで奏者の皆様によるお見送り。お着替えはなく、奏者の皆様は舞台衣装のままでした。私は「ありがとうございました」とだけお声がけして失礼しました。ヴィオラの青木さんに、演奏後の拍手の時に目が合いましたねと言おうかと思いましたが、思っただけです(笑)。こんなこと言われたってご迷惑でしょうし、その先お話を続けられる自信は私にはないですから…申し訳ありません。重ねて、素晴らしい演奏をありがとうございました!


ブラシェンこと「ブラームス ピアノ四重奏曲第1番(シェーンベルクによる管弦楽版)」は2019年8月の第621回定期演奏会で演奏されました。今回はEテレで放送された番組レビュー記事ではなく、演奏会そのもののレポート記事の紹介です。以下のリンクからどうぞ。ブラシェン終盤に原曲と同じところが出てくるのですが、その時の布陣はコンマス大平まゆみさん、首席ヴィオラ奏者の廣狩さんそして首席チェロ奏者の石川さんでした。 

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11月にブラームスピアノ五重奏曲を聴いた演奏会についても弊ブログにレポートをUPしています。情熱的なピアノ四重奏曲第1番も好きですが、いつもきちんとしているブラームスが取り乱したような印象があるピアノ五重奏曲も私は大好きです!以下のリンクにありますので、よろしければお読みください。 

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c