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森の響フレンド名曲コンサート「ベートーヴェン、皇帝に捧ぐ」(2020/10)レポート

私にとっては本年度(2020年度)初めてにして最後の名曲シリーズになります。10/10名曲シリーズのメインは、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」。つい先月までほとんど演奏会を聴けなかった私ですが、10月上旬の1週間でなんと3つも札響のベートーヴェンを聴く機会に恵まれました。大変ありがたいことです。

森の響フレンド名曲コンサート「ベートーヴェン、皇帝に捧ぐ」
2020年10月10日(土)14:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
秋山和慶

【ピアノ】
小山実稚恵

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島高宏)

【曲目】

(アンコール)


幼い頃から父のレコードで何度も聴いた「皇帝」。それを地元オケの最高の演奏で聴けるなんて、こんなにうれしいことはありません。マイベスト皇帝はこの日の演奏に決まりです!この4日前に聴いたベト8の爆発的な生命力も素晴らしかったですが、この日の演奏には華やかさや風格が加わって、ベト8とはまた違った良さがありました。4日前の演奏会から続けて登板の指揮・秋山和慶さん、今回も札響の底力を引き出してくださりありがとうございます!当初指揮する予定だったマックス・ポンマーさんに代わってのご出演。海外からの渡航制限がある今、日本国内在住の指揮者の皆様は大忙しですよね。そんな状況でも毎回パワフルでハイクオリティな演奏をしてくださり感謝です。また、ソリスト小山実稚恵さんの堂々とした風格あるピアノが素敵すぎました。モダンピアノの端から端まで自在に動く手と、細い肩と腕から驚くほど力強い音が生み出されるのに、私は目が釘付けに。まったくピアノは弾けない素人のふわっとしたコメントで申し訳ありませんが、パワフルなのに華やかで美しいピアノに聞き惚れましたよ私。小山実稚恵さん、今度はぜひベートーヴェンのピアノ・ソナタでその演奏を拝聴したいです。

こんなに人が多いkitaraは久しぶりです。制限解除後に急遽座席の追加販売があり、その期間が短かったにもかかわらず9割近くの席が埋まっていました。やっぱりみんな大好きベートーヴェン!1階席にいた私の周りも人でぎっしり。こんな密な客席にまだ身体がついていけず、私は人に酔ってしまいましたが(苦笑)。しかしこれは私自身で少しずつ克服していけばよいだけのこと。やはり興行収入を考えればお客さんが多ければ多いほど良いに決まっていますし、奏者の皆様だって張り合いがあると思います。ですので、どうかこのまま座席制限解除の方向で進み、近い日に会場が満員御礼となりますように。


はじめはヘンデル(ハーティー編)「水上の音楽」組曲より3曲。プログラムノートによると、小編成にて船上で演奏された原曲より、大きなオケならではの聴き応えのある編曲になっているとのこと。第1曲の最初からホルン大活躍で、メリハリきいた弦や他の木管も素敵。第2曲は弦の透き通った音と下支えする低音、木管のまるい音を堪能。第6曲アラ・ホーンパイプでは、華やかなトランペットとティンパニもガツンと盛り上げてくれて、変化を楽しめました。メロディそのものも素敵ですが、各楽器の使い方がオリジナルのものかアレンジでそうなったか気になるので、音源を探して原曲と聞き比べてみたいと思います。

トロンボーンやチューバ、打楽器も入り、続いてはメンデルスゾーン真夏の夜の夢より5曲。私は結婚行進曲以外は初めて聴いたのですが、今回演奏された中では変化に富んだ「序曲」が最も好きになりました。「序曲」は全部聴きどころでも、特に弦が小さな音でザワザワするところが個人的にはツボで、全員参加の華やかなところではチューバの低音が効いていました。弦のザワザワは「スケルツォ」でも楽しめて、さらに木管が大活躍。途中で雰囲気ががらっと変化する「間奏曲」と「夜想曲」も素敵と私はその時はぼんやり聴いていて、後からプログラムノートを読んでどんな場面の曲かを把握。やはりこれは先に知ってから聴いたほうがよかったなと少し後悔しました。パパパパーン♪と超おなじみの出だしで「結婚行進曲」が始まると、一気に華やかな雰囲気に。金管とシンバルも加わり、美しくスケール大きい演奏は思いっきり楽しかったです。具体的な結婚式ではないけれど、生演奏を聴いているだけで誰かを祝福したい気持ちに。本来10月は結婚式のハイシーズンですから、それに合わせた選曲だったのかもと私はちらっと思いました。


休憩後は、いよいよベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」ソリスト小山実稚恵さんは、色はボルドーでビロード地のキャミソールロングドレスで登場。暗譜での演奏でした。第1楽章、インパクト大の出だしからピアノが一気に駆け上るのとシンクロしてこちらのテンションもMAXに。弦の美しい音に導かれて壮大な世界が広がるのにワクワクし、少しゆったりするところの木管、とりわけホルンの音が胸に響きました。ベートーヴェンもホルンの使い方が上手いんですね(生意気言ってごめんなさい!)。もちろん素晴らしい演奏があればこそです。ピアノは高音の主旋律が素敵なのに加えて、対する低音の演奏にも私は引き込まれました。改めて、ピアノの低音部分、とても良いですね!私は今後録音を聴く際にもピアノの低音が気になりそうです。またピアノ独奏中にも、秋山さんが小さくタクトを振っていたのを目撃。これはそれぞれの指揮者のスタイルだとは思いますが、秋山さんはおそらくご自身の中でテンポやリズムの流れがずっと続いていて、オケが一時休戦のときでもそこで分断させないかたとお見受けしました。ピアノが控えめになる第2楽章も私は好きで、弦も管も超キレイ!もう札響の皆様大好き!と私はひとり勝手に盛り上がっていました。そしてピアノは比較的おとなしいとはいえ、オケを立てながらも要所要所で存在感のある小さな音を響かせていたのも印象に残っています。ブラームスがピアノの生徒に言ったという「本当に純粋なppなら大きなホールの一番後ろにまで聞こえるはず」が、私は少しわかった気がしました。そのまま続けて第3楽章へ。冒頭、華やかなピアノから気分があがります。そうそう皇帝はこうでなくっちゃ!しかし力強さだけでなく、ピアノもオケもメリハリがあるからこそ、華やかさや少し影のあるところも際立つのかも。音楽がまるで意思を持って生きているみたいで、この楽章はずっと聴いていたいほど。いったん静かになってから駆け上るクライマックスが最高!もう大好きです!演奏終了後、どなたかが「ブラボー!」のかけ声。声出すのは禁止ですよ……でも気持ちはすごくよくわかります。会場にいたお客さん達は最大限の拍手で感激を伝えました。やはり人数が多いと拍手の迫力も違いますね。カーテンコールで何度も舞台に戻ってきてくださった小山さん。今の状況だと握手やハグはできないので、指揮秋山さんやコンマス田島さんとは会釈しあっていました。指揮者とコンマスが肘をあわせる挨拶は何度も見ましたが、女性にもそれに代わる何かがあると良いのかもしれませんね。

アンコールはJ.S.バッハ/グノー編曲「アヴェ・マリア。演奏開始と同時に私が「この曲!」とピンときたのは、つい先日の10/4のコンサートにてソプラノの歌を聴いたばかりだったからです。ソリストアンコールという形ではなく、小山実稚恵さんほどのソリストがピアノ伴奏で参加してくださいました。なんと1番は田島高宏コンマスのヴァイオリンが歌う演奏。ヴァイオリンの音色の美しさに、じわっと涙が出ます。2番はトロンボーン等の金管も入ったオケ全員参加での演奏でした。この演奏会が自粛明け初の札響というお客さんにもきっと喜ばれる、札響の良さをしみじみ味わえる素敵なアンコール。コンマス田島さんの見せ場を用意してくださったのがとてもよかったです。コンマスは一人体制のまま、ずっと札響を牽引してくださっている田島さん。本当にありがとうございます!このところ演奏会が続いていて大変かと存じます。どうぞお身体は大切になさってくださいね。オケの要として頼りにしています!


分散退場の後、大勢の人達が晴れやかな表情で思い思いの感想をお話ししながら地下鉄の駅を目指して歩いていました。公園の中を通るその道を、私も歩きました。そうそう、演奏会はこうでなくっちゃ!私はいつもひとりですが、多くの人と同じ演奏を聴けて、言葉は交わさなくても感激を共有できるのはとてもうれしいです。2021年度の名曲シリーズは、2021年8月からKitaraで開催予定とのこと。どんな企画が揃うのか、今からとても楽しみです!また、札幌コンサートホールKitara大規模修繕工事(2020年11月2日から翌2021年6月30日まで休館)後、どのように生まれ変わるのかも期待して待っています。札響のベートーヴェンとして9/23,24の定期演奏会での「田園」も聴きたかったですが、私は残念ながら都合が合いませんので、そちらは皆様の感想を楽しみにしています。


この4日前に開催された、秋山和慶さん指揮による「オーケストラでつなぐ 希望のシンフォニー」札幌交響楽団公演(2020/10/6)のレポートもアップしています。よろしければ以下のリンクからどうぞ。生命力あふれるベト8がメインで、他もすごい演奏ばかりでした。皆様、11/22の放送は必見ですよ! 

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

おまけ。父がヘビロテしていた「皇帝」のレコード、ソリストルドルフ・ゼルキンでした。ちなみにカップリングは「月光」で、幼い頃に私がベートーヴェンに興味を持ったのはこの「月光」を聴いてからです。私の父は、こう言っては可哀想ですが「クラシック音楽を趣味にしているオレ、カッコイイ」のレベルで、本物のファンの足下にも及びません。それでも娘である私が今こんなふう(?)になっているのは、父自慢のオーディオ機器から流れてくる音楽を聴いて育ったおかげだとは思っています。今の私の最推しであるブラームスのレコードがかかっていた記憶はないのですが(笑)。


最後までおつきあい頂きありがとうございました。